(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176069
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20231206BHJP
B01J 39/07 20170101ALI20231206BHJP
B01J 41/07 20170101ALI20231206BHJP
B01J 47/14 20170101ALI20231206BHJP
B01J 49/53 20170101ALI20231206BHJP
B01J 49/57 20170101ALI20231206BHJP
【FI】
C02F1/42 A
B01J39/07
B01J41/07
B01J47/14
B01J49/53
B01J49/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088150
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】加藤 港
(72)【発明者】
【氏名】松本 唯
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA01
4D025AB19
4D025BA10
4D025BA15
4D025BB01
4D025BB02
4D025BB07
4D025BB09
4D025CA06
4D025CA10
(57)【要約】
【課題】イオン交換樹脂の再生工程完了に要する時間を短縮可能な軟水化装置を提供する。
【解決手段】軟水化装置は、軟水槽と、中和槽と、原水を軟水槽及び中和槽に通水することなく中和槽の下流側に未処理水として送水するバイパス流路と、バイパス流路から送水された未処理水と中和槽から送水された中和軟水とを混合し混合水を生成する混合部と、混合部への未処理水及び/又は中和軟水の供給量を調節する流量調節部と、流量調節部による未処理水と中和軟水の混合比を制御する制御部と、を備える。制御部は、再生工程を実施可能な時間である再生時間と、軟水化度と、の少なくとも一方に関する指示情報に基づいて、未処理水及び中和軟水の混合比を決定する混合比決定部と、混合比決定部が決定した混合比となるように流量調節部による供給量を調節する流量制御部とで構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化して酸性軟水を生成する軟水槽と、
前記軟水槽を通過した酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和して中和軟水を生成する中和槽と、
前記原水を前記軟水槽及び前記中和槽に通水することなく前記中和槽の下流側に未処理水として送水するバイパス流路と、
前記バイパス流路から送水された前記未処理水と前記中和槽から送水された前記中和軟水とを混合し混合水を生成する混合部と、
前記混合部への前記未処理水及び/又は前記中和軟水の供給量を調節する流量調節部と、
前記流量調節部による前記未処理水と前記中和軟水の混合比を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
弱酸性陽イオン交換樹脂または弱塩基性陰イオン交換樹脂の少なくとも一方を再生する再生工程を実施可能な時間である再生時間と、軟水化度と、の少なくとも一方に関する指示情報に基づいて、前記未処理水及び前記中和軟水の混合比を決定する混合比決定部と、
前記混合比決定部が決定した前記混合比となるように前記流量調節部による前記供給量を調節する流量制御部と、を備える軟水化装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記指示情報から特定される前記再生時間と、前記原水の硬度である原水硬度と、に基づいて前記再生時間での再生を達成するために前記軟水槽が処理可能な前記原水の量である原水量を特定する軟水量特定部と、
単位時間当たりに前記混合部から送水される前記混合水の水量である記憶混合水量を記憶する流量記憶部と、
単位時間当たりの前記未処理水と前記中和軟水を混合した軟水の総通水量と前記軟水量特定部が特定した前記原水量との差分を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記差分に基づいて前記未処理水の供給量を決定する未処理水量決定部と、
を備える請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
前記混合比決定部は、
前記指示情報から特定される前記軟水化度となるように、前記原水の硬度である原水硬度に基づいて前記未処理水及び前記中和軟水の混合比を決定する硬度混合比決定部を備え、
前記制御部は、
単位時間当たりに前記混合部から送水される前記混合水の水量である記憶混合水量を記憶する流量記憶部と、
前記硬度混合比決定部が決定した前記混合比と、前記流量記憶部が記憶した前記記憶混合水量と、から前記軟水槽への前記原水の供給量を特定する軟水量特定部と、
単位時間当たりの前記未処理水と前記中和軟水を混合した軟水の総通水量と前記軟水量特定部が特定した前記原水の供給量との差分を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記差分に基づいて前記未処理水の供給量を決定する未処理水量決定部と、
を備える請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記再生時間での再生を達成するために前記軟水槽へ吸着可能な硬度成分量を特定する硬度成分量特定部を備え、
前記軟水量特定部は、
前記原水硬度と、前記硬度成分量特定部が特定した前記硬度成分量と、に基づいて前記軟水槽が処理可能な前記原水量を特定する請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記再生工程開始からの経過時間を記憶する時間記憶部と、
前記時間記憶部が記憶した前記経過時間と前記再生時間とを比較する時間比較部と、を備え、
前記経過時間が前記再生時間を超過した場合、前記再生工程を終了する請求項2または4に記載の軟水化装置。
【請求項6】
前記再生工程時に用いられ、前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に供される酸性電解水と前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生に供されるアルカリ性電解水とを生成する電解槽を備え、
前記混合部から送水された前記混合水の水量が前記総通水量以上となった場合、又は前記軟水槽への前記原水の供給量が前記軟水量特定部の特定した前記原水量以上となった場合に、前記電解槽を起動し、前記再生工程を開始する請求項2または3に記載の軟水化装置。
【請求項7】
前記流量調節部は、
開口度を可変に設定可能なバルブを備え、
前記未処理水量決定部が決定した前記未処理水の供給量に基づいて前記バルブの開口度を変更する請求項2または3に記載の軟水化装置。
【請求項8】
ユーザからの前記再生時間又は前記軟水化度に関する入力を受け付けて前記指示情報を生成する受付部と、
前記受付部が生成した前記指示情報に基づいて複数の運転モードの中から一つの運転モードを選択するモード選択部と、
を備え、
前記混合比決定部は、
前記モード選択部が選択した前記運転モードに対応する前記混合比となるように前記未処理水及び前記中和軟水の混合比を決定する請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項9】
前記混合水の水質を測定し、第一水質情報を得る水質測定部を備え、
前記制御部は、
前記指示情報に応じた前記混合水の水質情報が記憶された水質記憶部と、
前記第一水質情報と前記水質記憶部に記憶された記憶水質情報とを比較する水質比較部と、を備え、
前記未処理水量決定部は、
前記第一水質情報が前記記憶水質情報の範囲外となった場合に、前記第一水質情報が前記記憶水質情報の範囲内と一致するように前記未処理水及び/又は前記中和軟水の前記供給量を変更する請求項2または3に記載の軟水化装置。
【請求項10】
前記水質記憶部は、
前記再生工程終了後の水質情報を前記記憶水質情報として記憶する請求項9に記載の軟水化装置。
【請求項11】
前記軟水化度は、前記混合部から送水される前記混合水の軟水化度である請求項2または3に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軟水化装置では、弱酸性陽イオン交換樹脂は、官能基の末端に水素イオンを有しており、原水中の硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンに交換して原水を軟水化している。食塩を使用しない陽イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成した酸性電解水により陽イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化された水は、硬度成分の代わりに水素イオンが放出されるために酸性となる。これを中和するために、弱酸性陽イオン交換樹脂に弱塩基性陰イオン交換樹脂を組み合わせて利用されることがある。弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成したアルカリ性電解水を用いる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-30973号公報
【特許文献2】特開2010-142674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような軟水化装置では、イオン交換樹脂の再生を行っている間には軟水化を行うことができないため、軟水化工程を比較的必要としない夜間などの時間帯にイオン交換樹脂の再生工程を完了させる必要があり、再生工程の完了に要する時間を短縮することが求められている。
【0006】
再生工程の完了に要する時間は、主に、イオン交換樹脂に吸着した硬度成分量と、電気分解で生成した酸性電解水及びアルカリ性電解水の電解水濃度と、により決定される。電解水濃度は、電極の耐久性を決定する因子の一つであり、主に電極に印加される電流値に依存する。高電流を電極に印加し電解水濃度を増加させれば、再生工程完了にかかる時間を短縮させることは可能だが、電解槽の耐久性が著しく低下してしまうため、実用的ではない。そのため、電解槽への印加電流値を抑制しつつ、再生工程を短時間で完了させることは困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、イオン交換樹脂の再生工程完了に要する時間を短縮可能な軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る軟水化装置は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化して酸性軟水を生成する軟水槽と、前記軟水槽を通過した酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和して中和軟水を生成する中和槽と、前記原水を前記軟水槽及び前記中和槽に通水することなく前記中和槽の下流側に未処理水として送水するバイパス流路と、前記バイパス流路から送水された前記未処理水と前記中和槽から送水された前記中和軟水とを混合し混合水を生成する混合部と、前記混合部への前記未処理水及び/又は前記中和軟水の供給量を調節する流量調節部と、前記流量調節部による前記未処理水と前記中和軟水の混合比を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、弱酸性陽イオン交換樹脂または弱塩基性陰イオン交換樹脂の少なくとも一方を再生する再生工程を実施可能な時間である再生時間と、軟水化度と、の少なくとも一方に関する指示情報に基づいて、前記未処理水及び前記中和軟水の混合比を決定する混合比決定部と、前記混合比決定部が決定した前記混合比となるように前記流量調節部による前記供給量を調節する流量制御部と、を有する。これにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軟水化工程における軟水化度を調整し、イオン交換樹脂の再生工程完了に要する時間を短縮可能な軟水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る軟水化装置の軟水化流路を示す構成図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る軟水化装置の軟水槽再生循環流路及び中和槽再生循環流路を示す構成図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る軟水化装置の再生流路洗浄流路を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る軟水化装置の電解槽洗浄流路を示す概念図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る軟水化装置の捕捉部洗浄流路を示す構成図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る軟水化装置の制御方法を示す構成図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る軟水化装置の機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る軟水化装置の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1の構成を示す概念図である。なお、
図1では、軟水化装置1の各要素を概念的に示している。
【0013】
(全体構成)
軟水化装置1は、外部から供給される硬度成分を含む原水から、中性の軟水を生成する装置である。なお、原水とは流入口2から装置内に導入された水(処理対象水)であり、例えば市水や井戸水である。原水は、硬度成分(例えばカルシウムイオンまたはマグネシウムイオン)を含む。軟水化装置1を用いて軟水化処理を行うことにより、硬度の低減した中性の軟水が得られ、原水の硬度が高い地域であっても、軟水を利用することができる。軟水化装置1における軟水化とは、軟水化後の水中の硬度成分量が原水中の硬度成分量よりも少ない状態になることを指す。
【0014】
具体的には、
図1に示すように、軟水化装置1は、流入口2と、軟水槽と、中和槽と、取水口7と、再生装置8と、制御部15とを備えている。
【0015】
また、軟水化装置1は、排水口13と、複数の開閉弁(開閉弁18、開閉弁19、開閉弁20、開閉弁21、開閉弁22、及び開閉弁23)と、複数の流路切り替えバルブ(流路切り替えバルブ24~27)とを含んで構成される。これらについての詳細は後述する。
【0016】
(流入口及び取水口)
流入口2は、原水の供給元に接続されている。流入口2は、原水を軟水化装置1内に導入するための開口である。
【0017】
取水口7は、軟水化装置1内を流通し、軟水化処理された水を装置外に供給する開口である。軟水化装置1は、流入口2から流入する原水の圧力により、取水口7から軟水化処理後の水を取り出すことができる。
【0018】
軟水化装置1では、軟水化処理を行う軟水化工程において、外部から供給される原水が、流入口2、流路28、第一軟水槽3、流路29、第一中和槽4、流路30、第二軟水槽5、流路31、第二中和槽6、流路32、取水口7の順に流通して、中性の軟水として排出される。
【0019】
(軟水槽)
軟水槽(第一軟水槽3及び第二軟水槽5)は、弱酸性陽イオン交換樹脂の作用により、硬度成分を含む原水を軟水化する。具体的には、軟水槽は、流通する水(原水)に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンと交換するため、原水の硬度が下がり、原水を軟水化する。本実施の形態1における軟水化装置1では、軟水槽として第一軟水槽3と第二軟水槽5が備えられる。
【0020】
第一軟水槽3は、流入口2から流入した原水の軟水化を行う。第一軟水槽3は、流路切り替えバルブ24を備える。流路切り替えバルブについての詳細はまとめて後述する。
【0021】
第二軟水槽5は、後述する第一中和槽4を流通した水の軟水化を行う。第二軟水槽5は、流路切り替えバルブ26を備える。
【0022】
第一軟水槽3及び第二軟水槽5には弱酸性陽イオン交換樹脂33が充填されている。
【0023】
弱酸性陽イオン交換樹脂33は、官能基の末端に水素イオンを有するイオン交換樹脂である。弱酸性陽イオン交換樹脂33は、通水される原水に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を吸着し、水素イオンを放出する。弱酸性陽イオン交換樹脂33で処理された軟水は、硬度成分と交換されて出てきた水素イオンを多く含む。つまり、第一軟水槽3及び第二軟水槽5から流出する軟水は、水素イオンを多く含んで酸性化した軟水(酸性軟水)である。
【0024】
弱酸性陽イオン交換樹脂33の官能基の末端が水素イオンであるため、後述する再生処理において、酸性電解水を用いて弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生を行うことができる。この際、弱酸性陽イオン交換樹脂33からは、軟水化処理の際に取り込んだ硬度成分である陽イオンが放出される。
【0025】
弱酸性陽イオン交換樹脂33として、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、カルボキシル基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。また、カルボキシル基の対イオンである水素イオン(H+)が、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4+)等の陽イオンとなっているものでもよい。
【0026】
(中和槽)
中和槽(第一中和槽4及び第二中和槽6)は、弱塩基性陰イオン交換樹脂34の作用により、軟水槽から出てきた水素イオンを含む軟水(酸性化した軟水)のpHを中和し、中性の軟水とする。具体的には、中和槽は、軟水槽からの軟水に含まれる水素イオンをアニオン(陰イオン)とともに吸着するため、軟水のpHが上がり、中性の軟水とすることができる。本実施の形態1における軟水化装置1では、中和槽として第一中和槽4と第二中和槽6が備えられる。
【0027】
第一中和槽4は、第一軟水槽3を流通した酸性軟水の中和を行う。第一中和槽4は、流路切り替えバルブ25を備える。
【0028】
第二中和槽6は、第二軟水槽5を流通した酸性軟水の中和を行う。第二中和槽6は、流路切り替えバルブ27を備える。
【0029】
第一中和槽4及び第二中和槽6には弱塩基性陰イオン交換樹脂34が充填されている。
【0030】
弱塩基性陰イオン交換樹脂34は、通水される水に含まれる水素イオンを中和し、中性の水を生成する。弱塩基性陰イオン交換樹脂34は、後述する再生処理において、アルカリ性電解水を用いて再生を行うことができる。
【0031】
弱塩基性陰イオン交換樹脂34として、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、遊離塩基型となっているものが挙げられる。
【0032】
また、軟水化装置1における中和処理では、処理された水のpHが6.5以上となればよく、pH7.0まで完全に中和されなくともよい。
【0033】
(再生装置)
再生装置8は、第一軟水槽3及び第二軟水槽5に充填されている弱酸性陽イオン交換樹脂33を再生させ、且つ、第一中和槽4及び第二中和槽6に充填されている弱塩基性陰イオン交換樹脂34を再生させる機器である。
【0034】
再生装置8は、電解槽9と、捕捉部10と、第一送水ポンプ11と、第二送水ポンプ12とを含んで構成される。そして、再生装置8は、第二軟水槽5、第二中和槽6、流路28、流路29に対して、第一供給流路35、第二供給流路36、第一回収流路37、第二回収流路38、がそれぞれ接続されている。各流路の詳細は後述する。なお、第一供給流路35、第二供給流路36、第一回収流路37、第二回収流路38、中和槽バイパス流路42、軟水槽バイパス流路44により、後述する軟水槽再生循環流路39と中和槽再生循環流路40が形成される。
【0035】
((電解槽))
電解槽9は、内部に設けた一対の電極41(電極41a及び電極41b)を用いて、入水した水(流入口2から供給される水)を電気分解することによって、酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成して排出する。より詳細には、再生工程での電気分解の際に陽極となる電極41aでは、電気分解により水素イオンが生じ、酸性電解水が生成する。また、再生工程での電気分解の際に陰極となる電極41bでは、電気分解により水酸化物イオンが生じ、アルカリ性電解水が生成する。そして、電解槽9は、酸性電解水を、第一供給流路35及び中和槽バイパス流路42を介して第一軟水槽3と第二軟水槽5に供給し、アルカリ性電解水を、第二供給流路36及び軟水槽バイパス流路44を介して第一中和槽4と第二中和槽6に供給する。詳細は後述するが、電解槽9によって生成された酸性電解水は、第一軟水槽3と第二軟水槽5の弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生に使用され、電解槽9によって生成されたアルカリ性電解水は、第一中和槽4と第二中和槽6の弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生に使用される。なお、電解槽9は、後述する制御部15によって、一対の電極41への通電状態を制御できるように構成されている。
【0036】
((送水ポンプ))
第一送水ポンプ11は、再生装置8による再生処理の際に、軟水槽再生循環流路39(
図3参照)に酸性電解水を流通させる機器である。第一送水ポンプ11は、第一軟水槽3と電解槽9との間を連通接続する第一回収流路37に設けられている。このような配置とするのは、第一送水ポンプ11だけで、軟水槽再生循環流路39に酸性電解水を循環させやすくなるためである。
【0037】
第二送水ポンプ12は、中和槽再生循環流路40(
図3参照)にアルカリ性電解水を流通させる機器である。第二送水ポンプ12は、第一中和槽4と電解槽9との間を連通接続する第二回収流路38に設けられている。このような配置とするのは、第二送水ポンプ12だけで、中和槽再生循環流路40にアルカリ性電解水を循環させやすくなるからである。
【0038】
また、第一送水ポンプ11及び第二送水ポンプ12は、後述する制御部15と無線または有線により通信可能に接続されている。
【0039】
((捕捉部))
捕捉部10は、電解槽9と第二中和槽6とを連通接続する第二供給流路36に設けられている。
【0040】
捕捉部10は、電解槽9から送出されたアルカリ性電解水に含まれる析出物を捕捉する。析出物とは、電解槽9内において、再生処理の際に第一軟水槽3及び第二軟水槽5から放出された陽イオンである硬度成分がアルカリ性電解水と反応することにより生じる反応生成物である。より詳細には、電解槽9で水の電気分解が行われている間、再生処理時の第一軟水槽3と第二軟水槽5から放出される硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)は、陰極(電極41b)側に移動する。陰極側ではアルカリ性電解水が生成しているため、硬度成分とアルカリ性電解水が反応し、析出物となる。例えば、硬度成分がカルシウムイオンの場合、アルカリ性電解水と混合されることにより、炭酸カルシウムが生じる反応が起こったり、水酸化カルシウムが生じる反応が起こったりする。そして、硬度成分に由来する析出物は、第二供給流路36に設けられた捕捉部10で析出物として捕捉される。そして、硬度成分に由来する析出物を捕捉部10で捕捉することにより、析出物が第二中和槽6に流入し、堆積することを抑制できる。したがって、再生処理の終了後に軟水化処理を再開する場合には、第二中和槽6に堆積した析出物が第一軟水槽3及び第二軟水槽5から放出された水素イオンと反応してイオン化することを原因とした、第二中和槽6から送出される軟水の硬度上昇を抑制できる。
【0041】
また、再生処理の際に、硬度成分に由来する析出物が捕捉部10を通過したアルカリ性電解水は、第二中和槽6と第一中和槽4を流通した後、電解槽9で再度電気分解され、再度アルカリ性電解水として、弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生に供される。この時、酸性電解水は、捕捉部10を備えない場合と比較し、含有する硬度成分が減少している。つまり、捕捉部10で析出物を捕捉することにより、酸性電解水の硬度が低下するため、第一軟水槽3と第二軟水槽5に流入する硬度成分を減少させることができ、弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生効率の低下を抑制できる。
【0042】
なお、「硬度成分が反応する」とは、硬度成分すべてが反応することのみならず、反応しない成分もしくは溶解度積を超えない成分が含まれている状態も含むものとする。
【0043】
捕捉部10は、硬度成分とアルカリ性電解水との反応により生じる析出物を分離可能であればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0044】
捕捉部10の形態として一般的に使用される手段としては、カートリッジタイプのフィルターが挙げられる。カートリッジタイプのフィルターとして、糸巻きフィルターのような深層ろ過型、プリーツフィルター及びメンブレンフィルターのような表面ろ過型、またはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0045】
糸巻フィルターは、1~150マイクロメートルの粒子径に対応し、主にプレフィルターとして使用される。プリーツフィルター及びメンブレンフィルターは、0.03~100マイクロメートル程度と幅広い粒子径に対応したものが存在する。ただし、特に本発明の実施にあたっては、フィルターの閉塞の可能性を低減するために0.5マイクロメートル以上の精度のものを使用することが好ましい。また、析出物の捕捉性能を担保するために1.5マイクロメートル以下の精度のものを使用することが好ましい。捕捉部10には後述する再生処理ではアルカリ性電解水が流れ、洗浄処理では酸性電解水が流れるため、カートリッジタイプのフィルターの材質は、酸及びアルカリに対して耐食性が高い素材(例えばポリプロピレン)が好ましい。
【0046】
ろ過層に用いられる粒状ろ材は、硬度成分を捕捉して除去することを目的としているが、粒状ろ材に吸着するような表面電位を持つ粒子、原水中のイオン等の存在状態によっては粒子径約が1~10マイクロメートルの粒子あるいは色度も除去可能となる。粒状ろ材には、ろ過砂をはじめ、ペレット状の繊維ろ材等、除去対象物に適したろ材を用いることができる。粒状ろ材の材質は、例えば、砂、アンスラサイト、ガーネット、セラミックス、粒状活性炭、オキシ水酸化鉄、マンガン砂など、水中で沈降し、圧力で変形しにくい硬度をもつものであればよい。粒子径は、例えば0.3~5.0ミリメートル、均等係数が1.2~2.0などのものを用いるとよい。
【0047】
また、比重が異なる複数の種類のろ材を混合して使用する複層ろ過法は、ろ過を行う層としてサイズの異なる粒子を小さい粒子から順に下から積層する方法である。複層ろ過法では、比重が大きくサイズが小さい粒子と、比重が小さくサイズが大きい粒子を混合して多層構造にするのが一般的である。複層ろ過法は、単一の種類のろ材を用いるのに比べて、単位体積あたりのろ過効率が高く、一方で損失水頭が低く抑えられるなどのメリットがあるため好ましい。粒状ろ材としては、例えば、ガーネットの0.3ミリメートルと、砂の0.6リメートル、アンスラサイトの1.0ミリメートルのものを、2:1:1で混合して使用するが、濁質の粒子特性に応じて混合比率あるいは粒子径を調整することが好ましい。
【0048】
捕捉部10は、開閉弁22及び捕捉部排水口14を備える。
【0049】
開閉弁22は、捕捉部10の下部に設けられる弁であり、捕捉部10内の排水を制御する弁である。開閉弁22を開放することにより、捕捉部10内の水を捕捉部排水口14から装置外に排出できる。
【0050】
捕捉部排水口14は、捕捉部10内の水を装置外に排出する開口である。捕捉部排水口14の上流に設けられる開閉弁22を開放することにより、捕捉部排水口14から捕捉部内の水を装置外に排出できる。
【0051】
(混合部)
混合部55は、流量調節部56を備える。混合部55は、原水である未処理水と、軟水槽および中和槽を通水した軟水と、を混合し、混合水とする。混合水とすることにより、取水口7から得られる水の軟水化度を調節することができる。つまり、同じ量の原水の軟水化を行う場合において、未処理水と軟水とを混合しなかった場合と比較し、軟水槽への硬度成分の吸着量を低減することができる。したがって、軟水槽の再生に要する時間を短縮することが可能となる。
【0052】
流量調節部56は、バルブ57を有し、流量制御部59から送信された未処理水及び軟水の混合比に基づいて、バルブ57の開口度を調節する。
【0053】
バルブ57は、所定の開口度に設定可能な弁であり、流量調節部56によって開口度を任意の値に設定可能である。例えば、バルブ57の開口度が「80%」の場合には、混合部55を流通する水の内訳は、バイパス流路53から流入する未処理水が80%、流路32から流入する軟水が20%となる。
【0054】
(開閉弁及び流路切り替えバルブ)
複数の開閉弁(開閉弁18~開閉弁23)は、各流路にそれぞれ設けられ、各流路において「開放」した状態と、「閉止」した状態とを切り替える。
【0055】
複数の開閉弁(開閉弁18、開閉弁19、開閉弁21、及び開閉弁23)は、弁の開閉により、各流路への水の流通を開始あるいは停止する。
【0056】
開閉弁20及び開閉弁22は、後述する再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程の際に、開放した状態となり、再生循環水を装置外に排出する。
【0057】
複数の流路切り替えバルブ(流路切り替えバルブ24~流路切り替えバルブ27)は、第一軟水槽3、第二軟水槽5、第一中和槽4、及び第二中和槽6にそれぞれ設けられる。複数の流路切り替えバルブはいずれも、3つの開口を備え、1つ目の開口は水の流入及び流出が可能な流入流出口、2つ目の開口は流出口としては機能せず流入口として機能する流入口、3つ目の開口は流入口としては機能せず流出口として機能する流出口である。複数の流路切り替えバルブはいずれも、流入流出口は常に「開放」しており、通水方向により、流入口か流出口のうちどちらか一方が「開放」している時には、他方の流出口は「閉止」している。流路切り替えバルブ24~27を備えることにより、軟水化装置1内の各流路に必要な開閉弁の数を減少でき、軟水化装置1のコストの低減ができる。
【0058】
また、複数の開閉弁(開閉弁18~開閉弁23)と複数の流路切り替えバルブ(流路切り替えバルブ24~流路切り替えバルブ27)はそれぞれ、後述する制御部15と無線または有線により通信可能に接続されている。
【0059】
(排水口)
排水口13は、排水流路54の端部に設けられる開口であり、再生経路洗浄工程及び電解槽洗浄工程において装置内の水を装置外に排出する開口である。排水口13の上流には開閉弁20が設けられており、開閉弁20を開放することにより、排水口13から排水を行うことができる。
【0060】
(流路)
バイパス流路53は、流入口2と流路74とを連通接続する流路であり、流路上には開閉弁18、未処理の原水(未処理水)と軟水を混合する混合部55、および流量調節部56が設けられている。バイパス流路53により、原水を軟水槽及び中和槽に通水することなく、中和槽の下流側に未処理水として送水することが可能である。また、バイパス流路53により、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程のいずれかを実施している場合でも、軟水化装置1の利用者は、取水口7から原水を得ることが可能である。
【0061】
(軟水化流路)
図2を参照して、軟水化装置1の軟水化工程の際に形成される軟水化流路43について説明する。
図2は軟水化装置1の軟水化流路43を示す構成図である。
【0062】
軟水化流路43(
図2の斜線矢印)は、原水の軟水化を行う流路であり、軟水化流路43を流通した原水は中性の軟水となり、取水口7から装置外に排出される。
【0063】
軟水化流路43は、軟水槽及び中和槽を通水するルートである流入口2、流路28、第一軟水槽3、流路29、第一中和槽4、流路30、第二軟水槽5、流路31、第二中和槽6、流路32、混合部55と、原水を通水させるルートをそれぞれ通水し、混合部55において原水と中和軟水を混合し、取水口7から軟水を送水する流路である。
【0064】
流路28は、流入口2から第一軟水槽3までを接続する流路である。つまり、流路28は、硬度成分を含む原水を流入口2から第一軟水槽3へ導く流路である。
【0065】
流路29は、第一軟水槽3から第一中和槽4までを接続する流路である。つまり、流路29は、第一軟水槽3で軟水化された水を第一中和槽4に導く流路である。
【0066】
流路30は、第一中和槽4から第二軟水槽5までを接続する流路である。つまり、流路30は、第一中和槽4で中和された水を第二軟水槽5へ導く流路である。
【0067】
流路31は、第二軟水槽5から第二中和槽6までを接続する流路である。つまり、流路31は、第二軟水槽5で軟水化された水を第二中和槽6に導く流路である。
【0068】
流路32は、第二中和槽6から混合部55までを接続する流路である。つまり、流路32は、軟水化された原水を第二中和槽6から混合部55に導く流路である。
【0069】
流路74は、混合部55から取水口7までを接続する流路である。つまり、流路74は、原水と軟水を混合し軟水化度が調整された軟水を取水口7に導く流路である。
【0070】
バイパス流路53は、流入口2から混合部55までを接続する流路である。つまり、バイパス流路53は、原水を流入口2から混合部55に導く流路である。
【0071】
図2に示すように、流入口2の下流側且つ第一軟水槽3の上流側の流路28上に開閉弁19が設置されている。また、バイパス流路53には、開閉弁18が設置されている。そして、開閉弁18を閉止して、開閉弁19を開放することにより、第一軟水槽3と流入口2が連通接続される。また、流路切り替えバルブ24を第一軟水槽3と第一中和槽4とが連通接続するように切替え、流路切り替えバルブ25を第二軟水槽5と第二中和槽6が連通接続するように切り替え、流路切り替えバルブ26を第一中和槽4と第二軟水槽5が連通接続するように切り替え、流路切り替えバルブ27を第二軟水槽5と第二中和槽6が連通接続するように切り替える。混合部55に設置された流量調節部56のバルブ57を中和軟水が連通接続できるように完全開放する。これにより、流入口2から流路28、第一軟水槽3、流路29、第一中和槽4、流路30、第二軟水槽5、流路31、第二中和槽6、流路32、取水口7までを連通接続する軟水化流路43が形成される。また、指示情報に基づく設定により原水の混合が必要になる場合には、バイパス流路53に設置されている開閉弁18を開放し、混合部55においてバルブ57の開口度を調整し、原水と中和軟水を混合させ、取水口7まで連通させることもできる。この時、開閉弁20、開閉弁21、開閉弁23は閉止している。
【0072】
(再生循環流路)
次に、
図3を参照して、軟水化装置1の再生工程の際に形成される軟水槽再生循環流路39と中和槽再生循環流路40について説明する。
図3は、軟水化装置1の軟水槽再生循環流路39と中和槽再生循環流路40を示す構成図である。
【0073】
まず、軟水槽再生循環流路39について説明する。
【0074】
軟水槽再生循環流路39は、再生工程時に酸性電解水が流通することにより、第一軟水槽3及び第二軟水槽5の再生を行う流路であり、
図3(白矢印)に示すように、第一送水ポンプ11によって送出された水が、電解槽9、第二軟水槽5、及び第一軟水槽3を流通し、電解槽9に戻って循環する流路である。
【0075】
具体的には、軟水槽再生循環流路39は、電解槽9、第二軟水槽5、第一軟水槽3、第一送水ポンプ11を接続する第一供給流路35、中和槽バイパス流路42、第一回収流路37の各流路によって構成される。
【0076】
第一供給流路35は、電解槽9の下流側から第二軟水槽5の下流側までを連通接続する流路であり、電解槽9から第二軟水槽5へ酸性電解水を供給する流路である。
【0077】
中和槽バイパス流路42は、第一中和槽4を迂回して第二軟水槽5の上流側から第一軟水槽3の下流側までを連通接続する流路であり、第二軟水槽5から第一軟水槽3へ酸性電解水を供給する流路である。
【0078】
第一回収流路37は、第一軟水槽3の上流側から電解槽9までを連通接続する流路であり、第一軟水槽3と第二軟水槽5を通過した硬度成分を含む酸性電解水を電解槽9へ回収する流路である。第一回収流路37には、第一送水ポンプ11が設けられる。
【0079】
また、軟水槽再生循環流路39は、電解槽9から送出された酸性電解水を、第一軟水槽3及び第二軟水槽5の下流側から第一軟水槽3及び第二軟水槽5に導入し、軟水槽の下流側に比べて硬度成分の吸着量が多い上流側から流出させる流路である。なお、下流側とは、軟水化処理時の流路における下流側を指す。
【0080】
次に、中和槽再生循環流路40について説明する。
【0081】
中和槽再生循環流路40は、再生工程時にアルカリ性電解水が流通することにより、第一中和槽4及び第二中和槽6の再生を行う流路であり、
図3(黒矢印)に示すように、第二送水ポンプ12によって送出された水が、電解槽9、第二中和槽6、及び第一中和槽4を流通し、電解槽9に戻って循環する流路である。
【0082】
具体的には、中和槽再生循環流路40は、電解槽9、第二中和槽6、第一中和槽4、第二送水ポンプ12を接続する第二供給流路36、軟水槽バイパス流路44、第二回収流路38の各流路によって構成される。
【0083】
第二供給流路36は、電解槽9の下流側から第二中和槽6の下流側までを連通接続する流路であり、電解槽9から第二中和槽6へアルカリ性電解水を供給する流路である。第二供給流路36には、捕捉部10、開閉弁21、及び開閉弁23が設置されている。
【0084】
軟水槽バイパス流路44は、第二軟水槽5を迂回して第二中和槽6の上流側から第一中和槽4の下流側までを連通接続する流路であり、第二中和槽6から第一中和槽4へアルカリ性電解水を供給する流路である。
【0085】
第二回収流路38は、第一中和槽4の上流側から電解槽9までを連通接続する流路であり、第一中和槽4と第二中和槽6を通過したアルカリ性電解水を電解槽9へ回収する流路である。第二回収流路38には、第二送水ポンプ12が設けられる。
【0086】
(再生流路洗浄流路)
次に、
図4を参照して、軟水化装置1の再生流路洗浄工程の際に形成される再生流路洗浄流路45について説明する。
図4は、軟水化装置1の再生流路洗浄流路45を示す構成図である。
【0087】
再生流路洗浄流路45は、後述する再生流路洗浄工程の際に、流路内に残存する高硬度水を第一中和槽4及び第二中和槽6に流入させずに装置外に排出する流路である。再生流路洗浄流路45は、第一排水流路46及び第二排水流路47を含んで構成される。
【0088】
第一排水流路46は、
図4(白矢印)に示すように、流入口2から、第一送水ポンプ11、電解槽9、開閉弁20、排水口13を接続する各流路によって構成される。具体的には、第一排水流路46は、流入口2から流入した原水を、流路28、第一回収流路37、第一送水ポンプ11、電解槽9、排水流路54、開閉弁20、排水口13の順に流通させる流路である。
【0089】
排水流路54は、一端部で第一供給流路35と接続する流路であり、他端部で排水口13と接続する流路である。排水流路54には開閉弁20が設けられており、開閉弁20を開放することで流路内の水を装置外に排水し、開閉弁20を閉止することで排水口13からの排水を停止可能である。
【0090】
第二排水流路47は、
図4(黒矢印)に示すように、流入口2から、第一軟水槽3、第二軟水槽5、開閉弁20、排水口13までを連通接続する各流路によって構成される。具体的には、第二排水流路47は、流入口2から流入した原水を、流路28、第一軟水槽3、中和槽バイパス流路42、第二軟水槽5、第一供給流路35、開閉弁20、排水口13の順に流通させる流路である。
【0091】
なお、第二排水流路47を流通する水の流量は、第一排水流路を流通する水の流量よりも大きくなるよう制御されることが好ましい。これにより、軟水化工程時に使用される軟水槽を含む流路である第二排水流路内の高硬度水を優先的に原水に置換することができる。したがって、軟水化工程を開始した際の高硬度水の影響を抑制できる。
【0092】
(電解槽洗浄流路)
次に、
図5を参照して、軟水化装置1の電解槽洗浄工程の際に形成される電解槽洗浄流路49について説明する。
図5は、軟水化装置1の電解槽洗浄流路49を示す構成図である。
【0093】
電解槽洗浄流路49は、後述する電解槽洗浄工程の際に、電解槽9内及び中和槽再生循環流路40内の硬度成分に起因する析出物を除去する流路である。電解槽洗浄流路49は、第一排水流路46及び第三排水流路50を含んで構成される。
【0094】
第三排水流路50は、
図5(黒矢印)に示すように、流入口2から、第一軟水槽3、第二送水ポンプ12、電解槽9、開閉弁21、捕捉部10、開閉弁22、捕捉部排水口14までを連通接続する各流路によって構成される。具体的には、第三排水流路50は、流入口2から流入した原水を、流路28、第一軟水槽3、第二回収流路38、第二送水ポンプ12、電解槽9、第二供給流路36、開閉弁21、捕捉部10、開閉弁22の順に流通させ、捕捉部排水口14から装置外に排出する流路である。より具体的には、第三排水流路50では、流入口2から流入した原水を、流路28を介して第一軟水槽3に流入させ、酸性軟水とする。生成した酸性軟水を、第二回収流路38により第二送水ポンプ12を介して、電解槽9に流入させる。その後、酸性軟水を、第二供給流路36を介して、開閉弁21、捕捉部10、開閉弁22の順に流通させ、捕捉部10の析出物を溶解させ、捕捉部排水口14から装置外に排出する。
【0095】
(捕捉部洗浄流路)
次に、
図6を参照して、軟水化装置1の捕捉部洗浄工程の際に形成される捕捉部洗浄流路51について説明する。
図6は、軟水化装置1の捕捉部洗浄流路51を示す構成図である。
【0096】
捕捉部洗浄流路51は、後述する捕捉部洗浄工程の際に、捕捉部10に析出した硬度成分由来の析出物を除去する流路である。捕捉部洗浄流路51は、第四排水流路52を含んで構成される。
【0097】
図6に示すように、捕捉部洗浄流路51は、流入口2から、第一軟水槽3、第一中和槽4、第二軟水槽5、第二中和槽6、捕捉部10、捕捉部排水口14までを連通接続する各流路によって構成される。具体的には、捕捉部洗浄流路51は流入口2から流入した原水を、流路28、第一軟水槽3、流路29、第一中和槽4、流路30、第二軟水槽5、流路31、第二中和槽6、第二供給流路36、開閉弁23、捕捉部10、開閉弁22の順に流通させ、捕捉部排水口から装置外に排出する流路である。
【0098】
(原水硬度測定部)
原水硬度測定部70は、軟水化装置1に流入する原水の硬度を測定する。ここで、原水硬度測定部70としては、汎用的なものを使用することができ、例えば、液体の電気伝導率を測定する検出器あるいは水中に含まれるTDS(Total Dissolved Solid:総溶解固形物)の量を測定する検出器が挙げられる。
【0099】
(入力部)
入力部76は、例えば軟水化装置1の天面に備えられ、利用者からの軟水化度の設定、再生時間に関する設定、軟水化工程の開始、再生工程の開始等の命令を入力可能とする。入力部76に入力された命令は、制御部15に送られる。なお、入力部76は、必ずしも軟水化装置に設けられる必要はなく、利用者の保有する携帯端末内のアプリ等から命令を入力するようにしてもよい。
【0100】
(表示部)
表示部75は、例えば軟水化装置1の天面に備えられ、軟水化装置1の運転状況、各種運転モードの状態、混合水の軟水化度や硬度等の情報を表示する。表示部75は、軟水化装置1の天面に備えられなくてもよい。例えば携帯端末が表示部を備え、携帯端末と制御部15とを無線通信可能とすることで、無線通信により送信された情報を携帯端末が表示部に表示させてもよい。
【0101】
(制御部)
図8を参照して、本実施の形態に係る制御部15の各機能について説明する。
図8は、実施の形態1に係る軟水化装置の機能ブロック図である。
【0102】
制御部15は、軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程の各工程の実行及び各工程間の切替えを制御する。
【0103】
各工程間の切替えの制御とは、具体的には、制御部15は、軟水化工程から再生工程への切替え、再生工程から再生流路洗浄工程への切替え、再生流路洗浄工程から電解槽洗浄工程への切替え、電解槽洗浄工程から捕捉部洗浄工程への切替え、及び捕捉部洗浄工程から軟水化工程への切替えを制御する。また、制御部15は、開閉弁20と開閉弁22を制御し、再生流路洗浄工程と電解槽洗浄工程と、捕捉部洗浄工程の際の排水を制御する。
【0104】
また、制御部15は、流路切り替えバルブ24~流路切り替え27、開閉弁18、開閉弁19、開閉弁21、及び開閉弁23を制御し、流路の切替えを実行する。
【0105】
また、制御部15は、使用者の指示情報によって後述する再生時間設定モードと軟水化度設定モードの選択を可能にする。
【0106】
制御部15には、予め想定される原水硬度、軟水槽への通水量、および電解槽9の電解性能に基づき、樹脂の再生完了にかかる時間がインプットされている。
【0107】
制御部15は、受付部68と、モード選択部69と、硬度成分量特定部60と、硬度混合比決定部67と、軟水量特定部61と、流量記憶部62と、算出部63と、未処理水量決定部64と、混合比決定部58と、流量制御部59と、を備える。
【0108】
受付部68は、使用者(ユーザ)からの再生時間または軟水化度に関する入力を受け付けて指示情報を生成する。ユーザからの入力は、例えば、所望の再生時間または軟水化度を数値で入力する形式でもよいし、再生時間または軟水化度を段階的に区分けして設定したモードの中から所望のモードを選択する形式でもよい。指示情報としては、例えば樹脂の再生時間や取水口から得られる水の軟水化度が挙げられる。生成した指示情報が再生時間である場合、指示情報は、モード選択部69、硬度成分量特定部60、及び軟水量特定部61へ送信される。生成した指示情報が軟水化度である場合、指示情報は、モード選択部69及び硬度混合比決定部67へ送信される。
【0109】
モード選択部69は、受付部68が生成した指示情報に基づいて複数の運転モードの中から一つの運転モードを選択し、決定した運転モードでの制御を行う。具体的には、例えば、指示情報が再生時間の場合には、制御部15は再生時間設定モードでの制御を行い、指示情報が軟水化度の場合には、制御部15は軟水化度設定モードでの制御を行う。なお、指示情報における軟水化度は、混合部55を通水した後の中和軟水の軟水化度である。
【0110】
なお、運転モードの中に、さらに段階的に運転モードを設定してもよい。例えば、指示情報が「再生時間6時間」という情報であった場合、「再生時間設定モードA」を選択し、「再生時間8時間」という情報であった場合、「再生時間設定モードB」を選択するとしてもよい。軟水化度設定モードについても同様に、例えば、指示情報が「軟水化度50」という情報であった場合、「軟水化度設定モードA」を選択し、「軟水化度150」という情報であった場合、「軟水化度設定モードB」を選択するとしてもよい。これにより、より細かい入力に対応した運転制御を行うことができる。
【0111】
硬度成分量特定部60は、入力された再生時間に関する指示情報に基づいて、再生時間内に樹脂再生を完了させるために軟水槽へ吸着可能な硬度成分量を特定する。吸着硬度量の特定方法について説明する。まず、樹脂を再生するためにはプロトンを軟水槽に供給する必要があり、樹脂再生を完了させるためには、軟水槽の弱酸性陽イオン交換樹脂33に吸着した硬度成分量と同等のプロトン量を樹脂に供給する必要がある。電解槽9におけるプロトン生成量(mоl)は、電流値(A=C/sec)、ファラデー定数(C/mоl)、プロトン生成効率(%)、再生時間(h)により導出される。具体的には、「プロトン生成量(mоl)=電流値(A=C/sec)×プロトン生成効率(%)×再生時間(h)×3600÷×ファラデー定数(C/mоl)」により導出される。なお、電流値及びプロトン生成効率は、所定の電解性能情報により設定されるため、固定値となる。したがって、再生時間に関する指示情報に基づいて再生時間が決定すれば、電解槽9から供給されるプロトン生成量が導出可能である。また、2R-COOH+Ca2+⇔(R―COO)2Ca+2H+の関係性より、弱酸性陽イオン交換樹脂33に硬度成分イオン1mоlが吸着した場合、再生に必要なプロトン量は2mоlとなる。すなわち、所定の再生時間内に樹脂再生を完了させるために軟水槽へ吸着可能な硬度成分量は、プロトン生成量の導出から可能となる。特定した硬度成分量に関する情報は、軟水量特定部61へ送信される。
【0112】
硬度混合比決定部67は、使用者の指示情報によって設定された軟水化度と、取得した原水硬度の情報から、混合部55における原水である未処理水と軟水槽を通過後の軟水の混合比を決定する。
【0113】
軟水量特定部61は、運転モードに応じた計算を行い、軟水槽が処理可能な原水量を特定する。
【0114】
具体的には、軟水量特定部61は、再生時間設定モードでの運転の場合には、再生時間に関する指示情報と、硬度成分量特定部60で特定した硬度成分量と、原水硬度の情報に基づき、再生時間内に樹脂再生を完了するために軟水槽が軟水化処理可能な原水量を特定する。より具体的には、再生時間と電解槽9の設定値である電流値とプロトン生成効率から軟水槽に吸着可能な硬度成分量が算出される。また、樹脂に吸着する硬度成分量は、原水硬度から中和軟水の硬度を減算して算出された値に、軟水槽が処理可能な原水量を乗算することで導出可能である。中和軟水の硬度を0ppmと仮定すれば、硬度成分量と原水硬度から、軟水槽が処理可能な原水量を特定することが可能となる。なお、中和軟水の硬度には、予めインプットした値を用いてもよいし、硬度計等により測定した実測値を用いてもよい。原水硬度から特定した原水量に関する情報は、算出部63と、混合比決定部58へ送信される。
【0115】
軟水量特定部61は、軟水化度設定モードでの運転の場合には、硬度混合比決定部67で特定した混合比と、原水硬度の情報に基づき、所定の軟水化度とするために軟水槽が軟水化処理可能な原水量を特定する。具体的には、軟水槽を通過後の軟水の硬度は0ppmと仮定し、混合比を決定する。混合比設定の例としては、指示情報の軟水化度が40ppmであり、原水硬度が100ppmである場合、混合比としては、未処理水:中和軟水=2:3と決定される。混合部55より送水された原水と中和軟水の混合水の流量を指定すれば、硬度混合比決定部67で決定された混合比に基づき、軟水槽が処理可能な原水量が特定される。例えば、未処理水:中和軟水=2:3の混合比の場合、混合水の流量が600Lであれば、軟水槽が処理可能な原水量は360Lである。また、混合水の流量は、流量記憶部62で記憶する実測値でもよいし、予めインプットした指定値でもよい。特定した原水量に関する情報は、算出部63へ送信される。
【0116】
なお、原水硬度の情報は、硬度計等により測定した実測値でもよいし、例えば予め原水硬度を入力しておき、使用地域等の情報に対応した原水硬度を選択して用いてもよい。
【0117】
流量記憶部62は、記憶混合水量を記憶する。記憶混合水量とは、混合部55から送水される混合水の単位時間当たりの水量であり、軟水化装置1から外部へと送水される通水流量である。記憶混合水量の単位は、例えばL/minなどで表される。記憶混合水量に関する情報は、算出部63へ送信される。なお、記憶混合水量として、流量計等により測定される実測値を用いることを想定しているが、使用者の使用履歴情報に基づく想定値、予めインプットされた定格値などを用いてもよい。また、単位時間は、任意に設定可能であるが、ここでは例えば1日である。つまり、流量計等に測定した実測値を用いてもよいし、使用者の使用状況や家族構成等の情報を基に、軟水化装置1から装置外に送水される単位時間あたりの総通水量を指定しておいてもよい。
【0118】
算出部63は、記憶混合水量と軟水量特定部61が特定した原水量とから差分を算出する。具体的には、算出部63は、記憶混合水量から、軟水槽が軟水化処理可能な原水量を減算することで差分を算出する。算出した差分に関する情報は、未処理水量決定部64へ送信される。
【0119】
未処理水量決定部64は、算出部63で算出した差分から未処理水の供給量を決定する。なお、単位時間が1日である場合には、ここで決定される未処理水の供給量は、1日あたりの水量となる。決定された未処理水の供給量に関する情報は、混合比決定部58に送信される。
【0120】
混合比決定部58は、再生時間設定モードの場合に、軟水量特定部61において特定した原水量と、未処理水量決定部64において決定した未処理水の供給量の情報に基づき、未処理水と軟水の混合比を決定する。なお、決定した混合比から、混合水の軟水化度を算出することが可能である。決定された混合比に関する情報は、流量制御部59へ送信される。
【0121】
流量制御部59は、混合比決定部58または硬度混合比決定部67において決定した混合比になるように、流量調節部56による未処理水及び軟水の流量を制御する。なお、流量とは単位時間当たりの通水量を指し、決定した混合比に流量比を合わせる調節を行う。
【0122】
時間記憶部65は、再生工程開始からの経過時間を記憶する。
【0123】
時間比較部66は、時間記憶部65が記憶した経過時間と受付部68が生成した指示情報に基づく再生時間とを比較する。
【0124】
制御部15の各機能ブロックは、ハードウェアとしては、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェアとしてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックである。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0125】
以上が軟水化装置1の構成である。
【0126】
次に、軟水化装置1の動作について説明する。
【0127】
(軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、及び捕捉部洗浄工程)
次に、
図7を参照して、軟水化装置1の軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、及び捕捉部洗浄工程について説明する。
図7は、軟水化装置1の動作時の状態を示す図である。
【0128】
軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、及び捕捉部洗浄工程では、制御部15は、
図7に示すように、開閉弁18~開閉弁23、流路切り替えバルブ24~流路切り替えバルブ27、電解槽9の電極41、第一送水ポンプ11及び第二送水ポンプ12を切り替えてそれぞれの流通状態となるように制御する。
【0129】
ここで、
図7中の「ON」は、該当の開閉弁が「開放」した状態、電極41が通電している状態、及び該当の送水ポンプが動作している状態をそれぞれ示す。空欄は、該当の開閉弁が「閉止」した状態、電極41が通電していない状態、該当の送水ポンプが停止している状態をそれぞれ示す。
【0130】
また、
図7中の「(構成要素の番号)から(構成要素の番号)へ」は、該当の流路切り替えバルブが該当の構成要素から該当の構成要素へと送水される方向へと流路を接続している状態を示す。例えば、軟水化工程の流路切り替えバルブ24は、流路28から流路29へと送水可能となるように各流路を接続している。
【0131】
また
図7中の「(構成要素の番号)へ」は、該当の流路切り替えバルブが、該当の構成要素へ送水される可能性のある方向へと流路を接続している状態を示す。この際には、流路は接続されているものの、該当の流路切り替えバルブが設けられた軟水槽あるいは中和槽への水の流出入が発生しづらい環境下にあるため、該当の流路切り替えバルブからの送水は極めて起こりづらい。
【0132】
(軟水化工程)
まず、軟水化装置1による軟水化工程時の動作について、
図2及び
図7の「軟水化時」の欄を参照して説明する。
【0133】
軟水化装置1では、
図7に示すように、軟水化工程において、開閉弁18を閉止した状態で流路28に設けた開閉弁19を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する。流入した原水は、第一軟水槽3、第一中和槽4、第二軟水槽5、及び第二中和槽6の順で流通するので、軟水化装置1は、取水口7から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、流路切り替えバルブ24は流路28から流路29へ送水可能な接続状態、流路切り替えバルブ25は流路29から流路30へ送水可能な接続状態、流路切り替えバルブ26は流路30から流路31へ送水可能な接続状態、流路切り替えバルブ27は流路31から流路32へ送水可能な接続状態になっている。開閉弁20~開閉弁23は、いずれも閉止した状態になっている。また、電解槽9の電極41、第一送水ポンプ11、及び第二送水ポンプ12の動作も停止した状態である。また、運転モードの設定によって軟水化度を調整する必要がある場合は、開閉弁18を開放し混合部55のバルブ57の開口度を調整することにより、原水と中和軟水を混合可能な状態にする。
【0134】
具体的には、
図1に示すように、軟水化工程では、外部から流入する原水の圧力によって、原水は、流入口2から流路28を通って、第一軟水槽3に供給される。そして、第一軟水槽3に供給された原水は、第一軟水槽3内に備えられた弱酸性陽イオン交換樹脂33を流通する。このとき、原水中の硬度成分である陽イオンは弱酸性陽イオン交換樹脂33の作用により吸着され、水素イオンが放出される(イオン交換が行われる)。そして、原水から陽イオンが除去されることで原水が軟水化される。軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを多く含むため、酸性化してpHが低い酸性水(第一軟水)となっている。ここで、硬度成分として永久硬度成分(例えば、硫酸カルシウム等の硫酸塩もしくは塩化マグネシウム等の塩化物)を多く含有する水は、軟水化を行う際、一時硬度成分(例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩)を多く含有する水よりpHが低下しやすい。pHが低下した状態では軟水化が進行しにくくなるため、第一軟水槽3を流通した水を、第一中和槽4へ通水させ、中和を行う。
【0135】
軟水化された水は、第一軟水槽3に設けられた流路切り替えバルブ24を介して流路29を流通し、第一中和槽4へ流入する。第一中和槽4では、弱塩基性陰イオン交換樹脂34の作用によって、軟水化された水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、第一軟水槽3により軟水化された水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇して中和される。そのため、第一軟水槽3において軟水化した水をそのまま第二軟水槽5で軟水化する場合と比較して、第二軟水槽5での軟水化処理が進行しやすくなる。
【0136】
第一中和槽4により中和された水(中和第一軟水)は、第一中和槽4に設けられた流路切り替えバルブ25を介して流路30を流通し、第二軟水槽5に流入する。第二軟水槽5では、弱酸性陽イオン交換樹脂33の作用により、硬度成分である陽イオンが吸着され、水素イオンが放出される。第二軟水槽5は、第一軟水槽3で除去できなかった硬度成分を、弱酸性陽イオン交換樹脂33の有する水素イオンと交換する。つまり、第二軟水槽5に流入した水がさらに軟水化され、軟水(第二軟水)となる。
【0137】
第二軟水は、第二軟水槽5に設けられた流路切り替えバルブ26を介して流路31を流通し、第二中和槽6に流入する。第二中和槽6では、弱塩基性陰イオン交換樹脂34の作用により、流入した第二軟水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、第二軟水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇し、生活用水として使用可能な中性の軟水(中和第二軟水)となる。中和第二軟水は、第二中和槽6に設けられた流路切り替えバルブ27を介して流路32及び混合部55を流通し、取水口7から取り出すことができる。
【0138】
つまり、軟水化処理では、原水は、第一軟水槽3、第一中和槽4、第二軟水槽5、及び第二中和槽6の順に流通する。これにより、硬度成分を含む原水は、第一軟水槽3での軟水化処理によって原水のpHの低下が進行する前に第一軟水槽3を流出し、第一中和槽4において中和され、第二軟水槽5で軟水化され、第二中和槽6において中和されるようになる。そのため、軟水槽及び中和槽をそれぞれ単体で構成する場合と比較して、軟水槽内を流通する水のpHの低下すなわち酸性化を抑制できるので、硬度成分と軟水槽(特に第二軟水槽5)の弱酸性陽イオン交換樹脂33が保持する水素イオンとの交換が起こりやすくなる。したがって、軟水化性能を向上させることが可能となる。
【0139】
そして、軟水化装置1では、混合部55において、バイパス流路53を流通した原水である未処理水と中和軟水とを混合させることができ、使用者の指示情報をもとに設定された運転モードに応じて、制御部15において混合部55のバルブ57の開口度を調整する。これにより、所定の混合比で原水と中和軟水を混合可能になるため、軟水化度を調節した混合水を得ることができる。また、軟水化度を調節することで、同時に再生時間も調節可能である。
【0140】
軟水化装置1では、特定された時間帯になった場合もしくは軟水化工程における総通水量(混合部から送水された混合水の水量)がインプット情報(記憶混合水量)を超えた場合に軟水化工程を終了し、再生工程を実行する。
【0141】
(再生工程)
次に、軟水化装置1の再生装置8による再生工程時の動作について、
図3及び
図7の「再生時」の欄を参照して順に説明する。
【0142】
軟水化装置1において、弱酸性陽イオン交換樹脂33を充填した第一軟水槽3及び第二軟水槽5は、使用を続けると陽イオン交換能力が低下または消失する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基である水素イオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。水素イオンすべてが硬度成分と交換される前であっても、水素イオンが減少するにしたがってイオン交換反応が起こりにくくなるため、軟水化性能が低下する。このような状態になると、硬度成分が処理水中に含まれるようになる。このため、軟水化装置1では、再生装置8による第一軟水槽3、第二軟水槽5、第一中和槽4、及び第二中和槽6の再生処理を行う必要が生じる。
【0143】
再生工程時において、開閉弁19、開閉弁20、開閉弁22を閉止して、開閉弁18、開閉弁21、開閉弁23を開放し、流路切り替えバルブ24は中和槽バイパス流路42から第一回収流路37へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ25は軟水槽バイパス流路44から第二回収流路38へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ26は第一供給流路35から中和槽バイパス流路42へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ27は第二供給流路36から軟水槽バイパス流路44へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3と第二軟水槽5とが連通接続する状態、第一中和槽4と第二中和槽6とが連通接続する状態、排水口13及び捕捉部排水口14の排水を停止した状態とする。これにより、
図3に示すように、軟水槽再生循環流路39及び中和槽再生循環流路40がそれぞれ形成される。
【0144】
そして、第一送水ポンプ11及び第二送水ポンプ12を動作させると、電解槽9内の酸性電解水及びアルカリ性電解水が軟水槽再生循環流路39及び中和槽再生循環流路40のそれぞれを循環する。
【0145】
また、電解槽9は、陰極に対して陽極が高電位となるように通電する(正電解)。これにより、電気分解の際に、陽極では水素イオンが生じ、陽極付近では酸性電解水が生成する。一方、陰極では水酸化物イオンが生じ、陰極付近ではアルカリ性電解水が生成する。
【0146】
電解槽9で生成した酸性電解水は、第一供給流路35を流通し流路切り替えバルブ26を介して第二軟水槽5内に送水され、内部の弱酸性陽イオン交換樹脂33を流通する。そして、第二軟水槽5を流通した酸性電解水は、中和槽バイパス流路42を流通し流路切り替えバルブ24を介して、第一軟水槽3内に送水され、内部の弱酸性陽イオン交換樹脂33を流通する。すなわち、酸性電解水を弱酸性陽イオン交換樹脂33に通水することで、弱酸性陽イオン交換樹脂33に吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性電解水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱酸性陽イオン交換樹脂33が再生される。
【0147】
その後、第一軟水槽3を流通した酸性電解水は、陽イオンを含み、第一回収流路37へ流入する。すなわち、弱酸性陽イオン交換樹脂33を流通した陽イオンを含む酸性電解水は、第一回収流路37を介して電解槽9に回収される。
【0148】
このように、軟水槽再生循環流路39は、酸性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置する軟水槽であり、上流側の軟水槽より硬度成分の吸着量が少ない弱酸性陽イオン交換樹脂33を有する軟水槽である第二軟水槽5の下流側から流通させ、上流に位置しており第二軟水槽5に比べて硬度成分がより多く吸着している弱酸性陽イオン交換樹脂33を有する第一軟水槽3の下流側へと流入させるように構成される。つまり、軟水槽再生循環流路39は、電解槽9から送出された酸性電解水を、第二軟水槽5に流通させた後、中和槽バイパス流路42によって第一軟水槽3へと送出し、第一軟水槽3を流通させ、第一回収流路37を介して電解槽9へ流入させる流路である。これにより、再生工程の際には、第一軟水槽3と比べて硬度成分の吸着量が少ない第二軟水槽5に、電解槽9から吐出された酸性電解水が流入し、硬度成分を含んだ酸性電解水が第二軟水槽5から第一軟水槽3へと吐出される。第二軟水槽5の弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生では、第一軟水槽3と比較し、酸性電解水中の水素イオンの消費が少ないため、第一軟水槽3の再生と比べ、水素イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、水素イオンを多く含有する酸性電解水が第一軟水槽3に流入し、硬度成分が第一軟水槽3において再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0149】
一方、電解槽9の陰極付近で生成したアルカリ性電解水は、第二供給流路36、捕捉部10を流通し流路切り替えバルブ27を介して第二中和槽6内に送水され、内部の弱塩基性陰イオン交換樹脂34を流通する。そして、第二中和槽6を流通したアルカリ性電解水は、軟水槽バイパス流路44を流通し、流路切り替えバルブ25を介して第一中和槽4内に送水され、内部の弱塩基性陰イオン交換樹脂34を流通する。すなわち、アルカリ性電解水を弱塩基性陰イオン交換樹脂34に通水させることで、弱塩基性陰イオン交換樹脂34に吸着されている陰イオンが、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱塩基性陰イオン交換樹脂34が再生される。
【0150】
その後、第一中和槽4を流通したアルカリ性電解水は、陰イオンを含み、第二回収流路38へ流入する。すなわち、弱塩基性陰イオン交換樹脂34を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水は、第二回収流路38を介して電解槽9に回収される。
【0151】
このように、中和槽再生循環流路40は、アルカリ性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置する中和槽であり、上流側の中和槽と比較して陰イオンの吸着量が少ない弱塩基性陰イオン交換樹脂34を有する第二中和槽6の下流側から流通させ、上流に位置しており第二中和槽6に比べて陰イオンがより多く吸着している弱塩基性陰イオン交換樹脂34を有する第一中和槽4の下流側へと流入させるように構成した。つまり、中和槽再生循環流路40は、電解槽9から送出されたアルカリ性電解水を、第二中和槽6に流通させた後、軟水槽バイパス流路44によって第一中和槽4へと送出し、第一中和槽4を流通させ、第二回収流路38を介して電解槽9へ流入させる流路である。これにより、再生工程時には、第一中和槽4と比べて陰イオンの吸着量が少ない第二中和槽6に、アルカリ性電解水が流入し、陰イオンを含んだアルカリ性電解水が第二中和槽6から第一中和槽4へと吐出される。第二中和槽6の弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生では、第一中和槽4と比較し、アルカリ性電解水中の水酸化物イオンの消費が少ないため、第一中和槽4の再生と比べ、水酸化物イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、水酸化物イオンを多く含有するアルカリ性電解水が第一中和槽4に流入し、陰イオンが第一中和槽4において再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0152】
また、中和槽再生循環流路40は、電解槽9から送出されたアルカリ性電解水を、第一中和槽4及び第二中和槽6の下流側から第一中和槽4及び第二中和槽6に導入し、各中和槽の下流側に比べて陰イオンの吸着量が多い上流側から流出させる。これにより、より陰イオン成分の吸着量が少ない下流側からアルカリ性電解水が流入し、中和槽の再生を行う。下流側の弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生では、上流側と比較し、アルカリ性電解水中の水酸化物イオンの消費が少ないため、アルカリ性電解水の水酸化物イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、下流側からのアルカリ性電解水に含まれる陰イオンが上流側において再吸着するのを抑制することができる。したがって、中和槽の再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。なお、下流側とは、軟水化処理時の流路における下流側を指す。
【0153】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合、もしくは、再生工程が一定時間(例えば4時間)または指示情報に基づく再生時間を超えた場合に再生工程を終了し、再生流路洗浄工程を実行する。
【0154】
なお、再生工程中に利用者が軟水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口(不図示)等を開放することにより、原水が流入口2からバイパス流路53を通り、取水口7から流出するため、再生工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0155】
(再生流路洗浄工程)
次に、軟水化装置1の再生流路洗浄工程時の動作について、
図4及び
図7の「再生流路洗浄時」の欄を参照して順に説明する。
【0156】
軟水化装置1において、再生工程中には、第一軟水槽3及び第二軟水槽5から硬度成分が酸性電解水中に放出され、酸性電解水は軟水槽再生循環流路39から排出されることなく流路内を循環する。したがって、再生工程終了後の軟水槽再生循環流路39内には、第一軟水槽3及び第二軟水槽5から放出された硬度成分を含む高硬度水で満たされている。この高硬度水の硬度は、原水の硬度(例えば450ppm)よりも著しく高くなっており、例えば2000ppm程度まで上昇する場合がある。この高硬度水が軟水化装置1内に残存した状態で軟水化工程に移行すると、取水口7からは高硬度水もしくは原水と高硬度水の混合水が排出される。したがって、軟水化装置1の利用者は、再生工程終了後に軟水化工程を実行した場合には、軟水化工程開始直後には軟水を得られないどころか原水よりも硬度の高い水を得ることになるという問題が生じる。また、高硬度水が第一軟水槽3及び第二軟水槽5内の弱酸性陽イオン交換樹脂33を流通することになり、再生工程で子吸着した硬度成分を水素イオンと置換して再生を行ったにもかかわらず、再度硬度成分を含む水が流通するため、せっかく行った再生処理により充填された水素イオンと硬度成分とが交換反応を起こし、弱酸性陽イオン交換樹脂33に再度硬度成分が吸着する。したがって、原水の軟水化に利用可能な水素イオンが減少し、軟水化性能が低下してしまう。これらの問題を解決するために、軟水槽再生循環流路39内の高硬度水を排水する再生流路洗浄工程を行う。
【0157】
再生流路洗浄工程時において、開閉弁21~開閉弁23を閉止して、開閉弁18~開閉弁20を開放し、流路切り替えバルブ24は流路28から中和槽バイパス流路42へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ25は軟水槽バイパス流路44へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ26は中和槽バイパス流路42から第一供給流路35へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ27は第二供給流路36へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3と第二軟水槽5とが連通接続する状態、第二軟水槽5と排水口13とが連通接続する状態、電解槽9と排水口13とが連通接続する状態、及び捕捉部排水口14の排水を停止した状態とする。これにより、
図4に示すように、第一排水流路46及び第二排水流路47がそれぞれ形成される。なお、この時、電極41、第一送水ポンプ11、及び第二送水ポンプ12の動作は停止している。
【0158】
再生流路洗浄工程において、具体的には、開閉弁19を開放することにより、外部から原水が第一排水流路46及び第二排水流路47に流入する。
【0159】
第一排水流路46では、流入した原水の圧力により、流路28、第一回収流路37、第一送水ポンプ11、電解槽9、第一供給流路35内の高硬度水が押し流され、排水流路54へと流入する。排水流路54へ流入した高硬度水は、排水口13から装置外に排出される。
【0160】
第二排水流路47では、流入した原水の圧力により、流路28、第一軟水槽3、中和槽バイパス流路42、第二軟水槽5、第一供給流路35内の高硬度水が押し流され、排水流路54へと流入する。排水流路54へ流入した高硬度水は、排水口13から装置外に排出される。
【0161】
このようにして、再生流路洗浄工程により、再生工程後の主な高硬度水の残留箇所である第一排水流路46及び第二排水流路47内の高硬度水を、中和槽への流通を抑制しつつ原水に置換可能である。したがって、再生流路洗浄工程において、中和槽内の弱塩基性陰イオン交換樹脂34への水素イオンの吸着を抑制可能なため、充填された水酸化物イオンの消費を抑制でき、中和性能を保つことができる。したがって、高硬度水を原因とする軟水化性能の低下を抑制できる。
【0162】
なお、制御部15は、第二排水流路47を流通する原水の流量が第一排水流路46を流通する原水の流量よりも大きくなるように、各流路に原水を供給する。
【0163】
これにより、軟水化工程時に使用される軟水槽を含む流路であり、流路内の高硬度水の排水が必須な流路である第二排水流路47内の高硬度水を優先的に原水に置換することができる。したがって、軟水化工程を開始した際の高硬度水を原因とする軟水化性能の低下を抑制できる。また、軟水化工程時には利用しない流路であり、高硬度水が残存していても軟水化工程への影響が少ない流路である第一排水流路46からの排水量を低減できるため、無駄な排水を防ぐことができ、再生流路洗浄工程に要する水量を抑制できる。
【0164】
また、これにより、高硬度水は中和槽を含まない流路によって装置外へ排水される。つまり、高硬度水中の硬度成分を中和槽内の弱塩基性陰イオン交換樹脂34への吸着を抑制して排水することができるため、再生工程の際に発生する高硬度水に起因して生じる軟水化性能の低下を防ぎ、軟水化性能を維持できる。
【0165】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合、もしくは再生流路洗浄工程が一定時間(例えば1分)を超えた場合、あるいは再生流路洗浄工程での通水量が一定値を超えた場合に再生流路洗浄工程を終了し、電解槽洗浄工程を実行する。
【0166】
なお、再生流路洗浄工程中に利用者が軟水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口(不図示)等を開放することにより、原水が流入口2からバイパス流路53を通り、取水口7から流出するため、再生流路洗浄工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0167】
(電解槽洗浄工程)
次に、軟水化装置1の電解槽洗浄工程時の動作について、
図5及び
図7の「電解槽洗浄時」の欄を参照して順に説明する。
【0168】
再生工程において、電解槽9が動作していると、陰極には水中の硬度成分(カルシウムイオンあるいはマグネシウムイオン)が固体(スケール)として析出する。陰極へ析出した析出物は不導体であるため、電解槽9の運転電圧を上昇させ、再生工程時の消費電力を上昇させてしまう。そこで、陰極に析出した析出物を除去する電解槽洗浄工程を行う必要がある。
【0169】
電解槽洗浄工程において、開閉弁18~開閉弁22を開放し、開閉弁23を閉止する。また、流路切り替えバルブ24は流路28から流路29へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ25は軟水槽バイパス流路44へと送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ26は第一供給流路35へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ27は第二供給流路36へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3と電解槽9とが連通接続する状態、電解槽9と排水口13とが連通接続する状態、電解槽9と捕捉部排水口14とが連通接続する状態とする。これにより、
図5に示すように、第一排水流路46及び第三排水流路50がそれぞれ形成される。
【0170】
電解槽洗浄工程において、具体的には、開閉弁19を開放することにより、外部から原水が第一排水流路46及び第三排水流路50に流入する。
【0171】
第一排水流路46では、流入した原水は、流路28、第一回収流路37、第一送水ポンプ11を流通し、電解槽9に流入する。
【0172】
一方、第三排水流路50では、流入した原水は、流路28、第一軟水槽3、第二回収流路38、第二送水ポンプ12を流通し、電解槽9に流入する。
【0173】
電解槽洗浄工程では、制御部15は、陽極に対して陰極が高電位となるように通電する(逆電解)。そのため、電解槽9は、電解槽内に流入した原水を電気分解し、陽極付近ではアルカリ性電解水を生成し、陰極付近では酸性電解水を生成する。
【0174】
この際、陰極で生成された酸性電解水により、陰極に析出した析出物を溶解させることができる。したがって、電極41表面への析出物の付着を原因とした電解性能の低下を抑制できる。
【0175】
陽極で生成されたアルカリ性電解水は、第一供給流路35を流通して排水流路54に流入し、排水口13から装置外に排出される。
【0176】
一方、陰極で生成された酸性電解水は、陰極に析出した析出物を溶解し、第二供給流路36を流通して捕捉部10に流入する。捕捉部10に流入した酸性電解水は、捕捉部10に固着した析出物を溶解させることができ、捕捉部10を予備的に洗浄できる。したがって、次の工程である捕捉部洗浄工程に要する時間を短縮することができる。そして酸性電解水は、捕捉部10の下部に設けられた捕捉部排水口14から装置外に排出される。
【0177】
つまり、電解槽洗浄工程では、電解槽9内の析出物の除去と捕捉部10内の析出物の除去を同時に行うことができ、再生工程終了から軟水化工程開始までに要する時間を短縮することができる。
【0178】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは電解槽洗浄工程が一定時間(例えば5分)を超えた場合に電解槽洗浄工程を終了し、捕捉部洗浄工程を実行する。
【0179】
なお、第三排水流路50において、原水が第一軟水槽3を通過するため、酸性になった水が捕捉部10を通過する。そのため、捕捉部10が酸性下になり、捕捉部10に固着した析出物が酸性水により溶解する。したがって、捕捉部10を予備的に洗浄できるため、次の工程である捕捉部洗浄工程に要する時間を短縮することができる。つまり、電解槽9内の析出物の除去と捕捉部10内の析出物の除去を同時に行うことができ、再生工程終了から軟水化工程開始までに要する時間を短縮することができる。
【0180】
なお、電解槽洗浄工程中に利用者が軟水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口(不図示)等を開放することにより、原水が流入口2からバイパス流路53を通り、取水口7から流出するため、電解槽洗浄工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0181】
(捕捉部洗浄工程)
次に、軟水化装置1の捕捉部洗浄工程時の動作について、
図6及び
図7の「捕捉部洗浄時」の欄を参照して順に説明する。
【0182】
再生工程において、電解槽9には第一軟水槽3及び第二軟水槽5から放出された硬度成分を含む高硬度水が流入する。硬度成分は、電気分解の際に陰極側へと移動し、陰極で生成される水酸化物イオンと反応し、析出物となる。析出した析出物の一部は、電解槽9から放出されるアルカリ性電解水に含まれ、第二供給流路36を流通し、捕捉部10によって捕捉される。したがって、再生工程中の捕捉部10には、析出物が徐々に堆積するため、捕捉部10を原因とした圧力損失が徐々に増大し、中和槽再生循環流路40を流通するアルカリ性電解水の流量が徐々に低下する。したがって、析出物を放置すると、第一中和槽4及び第二中和槽6の弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生に要する時間が延び、最終的には弱塩基性陰イオン交換樹脂34への水酸化物イオンの充填が完了しなくなる恐れがある。そのため、捕捉部10に固着あるいは析出した析出物を除去する捕捉部洗浄工程を行う必要がある。
【0183】
捕捉部洗浄工程において、開閉弁18、開閉弁19、開閉弁22、及び開閉弁23を開放し、開閉弁20及び開閉弁21を閉止する。また、流路切り替えバルブ24は流路28から流路29へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ25は流路29から流路30へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ26は流路30から流路31へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ27は流路31から第二供給流路36へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3と第一中和槽4とが連通接続する状態、第一中和槽4と第二軟水槽5とが連通接続する状態、第二軟水槽5と第二中和槽6とが連通接続する状態、第二中和槽6と捕捉部排水口14とが連通接続する状態とする。これにより、
図6に示すように、第四排水流路52が形成される。
【0184】
捕捉部洗浄工程において、具体的には、開閉弁19を開放することにより、外部から原水が流路28に流入する。流入した原水は、流路28、第一軟水槽3、流路29、第一中和槽4、流路30、第二軟水槽5、流路31、第二中和槽6、第二供給流路36を流通し、捕捉部10に流入する。
【0185】
捕捉部10では、再生工程の通水方向とは反対側から中性軟水が流入する。つまり、流入した中性軟水により、捕捉部10の逆洗浄が行われる。この時、電解槽洗浄工程によって捕捉部10に固着あるいは析出した析出物の一部が予め溶解しているため、中性軟水による捕捉部10の洗浄を容易に行うことができる。析出物を含む中性軟水は、捕捉部10の下部に設けられた捕捉部排水口14から装置外に排出される。
【0186】
このようにして、捕捉部10を逆洗浄することができるため、捕捉部10に残留する析出物を除去できる。したがって、捕捉部10の閉塞を抑制でき、再び再生工程を行う際に、捕捉部10に起因する圧力損失を低減できる。その結果、捕捉部10を含む再生流路である中和槽再生循環流路40の流量低減を抑制でき、アルカリ性電解水の流量を担保できるため、再生性能を確保できる。
【0187】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは捕捉部洗浄工程が一定時間(例えば5分)を超えた場合に捕捉部洗浄工程を終了し、軟水化工程を実行する。
【0188】
なお、流入口2から第二中和槽6までの流路は、軟水化工程時の流路と同様の流路である。つまり、第四排水流路52を使用することにより、軟水化工程における最後段の中和槽である第二中和槽6は軟水化された水で充填された状態となる。したがって、第四排水流路52を用いて捕捉部洗浄工程を行った後に軟水化工程を行うことにより、軟水化装置1の利用者は、軟水化工程開始直後から軟水化処理され硬度の低減した軟水を取水口7から得ることができる。
【0189】
なお、捕捉部洗浄工程中に利用者が軟水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口(不図示)等を開放することにより、原水が流入口2からバイパス流路53を通り、取水口7から流出するため、捕捉部洗浄工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0190】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程がこの順で繰り返し実行される。軟水化工程の直前に捕捉部洗浄工程を実施することで、軟水化工程における最後段の中和槽は、軟水化された水で充填された状態になる。したがって、軟水化装置1の利用者が蛇口を開けた際に、取水口7からの高硬度水の排出を抑制でき、軟水化工程開始直後から硬度の安定した軟水を提供することができる。
【0191】
また、再生流路洗浄工程を行ってから電解槽洗浄工程を行うことにより、電解槽洗浄工程での転極時には、高硬度水が既に装置外に排水されており、高硬度水を電解する可能性を抑制できる。したがって、硬度の高い水の電解を抑制でき、転極時にアルカリ性電解水が送水される流路における多量のスケール発生を抑制できる。
【0192】
続いて、上記構成において、制御部15により実行される制御について
図9を用いて説明する。
図9は、実施の形態1に係る軟水化装置の制御を示すフローチャートである。ここで、フローチャートではSを頭文字にして番号を割り振った。例えばS1などは処理ステップを指す。但し、処理ステップを示す数値の大小と処理順序は関係しない。
【0193】
(軟水化装置1の制御方法)
軟水化装置1における軟水化工程時に実行される制御について説明する。
【0194】
まず、受付部68は、使用者(ユーザ)からの再生時間または軟水化度に関する入力を受け付けて指示情報を生成する(S001)。指示情報としては、例えば樹脂の再生時間や取水口から得られる水の軟水化度が挙げられる。
【0195】
モード選択部69は、受付部が生成した指示情報に基づいて複数の運転モードの中から一つの運転モードを選択する。
【0196】
指示情報が再生時間に関する情報である場合には、制御部15は再生時間設定モードでの制御を行う(S002→S103)。
【0197】
指示情報が軟水化度に関する情報である場合には、制御部15は軟水化度設定モードでの制御を行う(S002→S203)。
【0198】
以下では、まず再生時間設定モードの一連の制御(S103~S111)について説明した後に、軟水化度設定モードの一連の制御(S203~S211)について説明する。
【0199】
((再生時間設定モード))
硬度成分量特定部60は、入力された再生時間に関する指示情報に基づいて、再生時間内に樹脂再生を完了させるために軟水槽へ吸着可能な硬度成分量を特定する(S104)。
【0200】
軟水量特定部61は、再生時間に関する指示情報と、硬度成分量特定部60で特定した硬度成分量と、原水硬度の情報に基づき、再生時間内に樹脂再生を完了するために軟水槽が軟水化処理可能な原水量を特定する(S105)。
【0201】
流量記憶部62では、混合部55から送水される混合水の単位時間当たりの水量である記憶混合水量を記憶する(S106)。
【0202】
算出部63は、流量記憶部62が記憶した記憶混合水量と、軟水量特定部61が特定した軟水化処理可能な原水量に基づき、その差分を算出する(S107)。具体的には、記憶混合水量から原水量を減算することにより、差分を算出する。
【0203】
そして、未処理水量決定部64は、算出部63で算出した差分から、混合部55への未処理水の供給量を決定する(S108)。具体的には、記憶混合水量から原水量を減算した値が、未処理水の供給量である。
【0204】
次に、混合比決定部58は、軟水量特定部61において特定した原水量と、未処理水量決定部64において決定した未処理水の供給量の情報に基づき、未処理水と軟水の混合比を決定する(S109)。
【0205】
そして流量制御部59は、混合比決定部58において決定した混合比になるように、流量調節部56による未処理水及び軟水の流量を制御する(S110)。
【0206】
流量調節部56は、未処理水量決定部64において決定した未処理水の流量に基づき、バルブ57の開口度を調節する(S111)。
【0207】
以上のように、使用者の指示情報(再生時間)と原水硬度の情報に基づき、軟水化処理可能な原水量を特定し、未処理水と軟水の混合水の情報も合わせることで未処理水の供給量が決定される。これにより、未処理水と軟水の混合比が決定され、バルブ57の開口度を調節することで、所定時間での樹脂再生を実現することが可能な軟水化度に調節された軟水を利用することが可能である。
【0208】
なお、混合部55から送水された混合水の水量を測定し、軟水化工程開始時からの混合水の累積水量が、予めインプットした混合部55からの総通水量を上回った場合または軟水槽への原水の供給量が軟水量特定部61の特定した原水量以上となった場合には、電解槽9を起動し、樹脂の再生工程を開始するようにしてもよい。
【0209】
なお、使用者が設定した再生時間に対応して指示情報を生成し、軟水化装置1の制御を行うようにしたが、これに限られず、例えば、再生時間設定モードでの運転を行う、と直接指示するようにしてもよい。
【0210】
((軟水化度設定モード))
原水硬度測定部70は、原水硬度の実測情報を取得する(S204)。なお、原水硬度は、原水硬度測定部70により測定した実測値でなくてもよく、予め入力された想定の原水硬度を参照してもよい。その場合、原水硬度測定部70を設けずとも、以下の処理を行うことができる。
【0211】
硬度混合比決定部67は、使用者の指示情報によって設定された軟水化度と、取得した原水硬度の情報から、混合部55における原水である未処理水と軟水槽を通過後の軟水の混合比を決定する(S205)。具体的には、軟水槽を通過後の軟水の硬度は0ppmと仮定し、混合比を決定する。混合比設定の例としては、指示情報の軟水化度が40ppmであり、原水硬度が100ppmである場合、混合比としては、未処理水:中和軟水=2:3と決定される。
【0212】
流量記憶部62は、混合部55から送水される混合水の単位時間当たりの水量である記憶混合水量を記憶する(S206)。
【0213】
軟水量特定部61は、硬度混合比決定部67で決定された未処理水と中和軟水の混合比と、流量記憶部62で記憶した記憶混合水量の情報に基づき、軟水槽が軟水化処理可能な原水量を特定する(S207)。なお、原水量を特定することにより、硬度成分量特定部60において、軟水槽へ吸着可能な硬度成分量を特定できるため、樹脂の再生完了にかかる時間を導出することが可能となる。
【0214】
次に、算出部63は、流量記憶部62が記憶した記憶混合水量と、軟水量特定部61で特定した原水量に基づき、その差分を算出する(S208)。具体的には、記憶混合水量から原水量を減算することにより、差分を算出する。
【0215】
未処理水量決定部64は、算出部63で算出した差分から未処理水の供給量を決定する(S209)。
【0216】
そして、流量制御部59は、硬度混合比決定部67において決定した混合比になるように、流量調節部56による未処理水及び軟水の流量を制御する(S210)。なお、流量とは単位時間当たりの通水量を指し、決定した混合比に流量比を合わせるように調節を行う。
【0217】
最後に、流量調節部56は、未処理水量決定部64において決定した未処理水の流量に基づき、バルブ57の開口度を調節する(S211)。
【0218】
以上のように、使用者の指示情報(軟水化度)と原水硬度の情報に基づき、原水である未処理水と軟水槽を通過後の中和軟水の混合比を決定し、軟水化処理可能な原水量と未処理水と軟水の混合水の情報も合わせることで未処理水の供給量が決定される。これにより、所定の混合比に対応して、バルブ57の開口度を調節することで、所定の軟水化度の軟水を軟水化装置1から送水することが可能となる。
【0219】
なお、使用者が設定した軟水化度に対応して指示情報を生成し、軟水化装置1の制御を行うようにしたが、これに限られず、例えば、軟水化度設定モードでの運転を行う、と直接指示するようにしてもよい。
【0220】
(フィードバック制御)
軟水化装置1は、再生時間設定モードあるいは軟水化度設定モードにおいて軟水化装置1を運転する場合に、設定した軟水化度と実際に得られる水の軟水化度にずれが生じた場合に、実際の軟水化度を設定軟水化度に近づけるために、フィードバック制御を行う。
【0221】
水質測定部71は、混合部55の下流側、且つ、取水口7の上流側に設けられ、混合部55を通水後の混合水の水質を測定し、第一水質情報を得る。なお、第一水質情報は、混合部55を通過した水の水質情報である。水質情報として、硬度や軟水化度が挙げられる。また、再生工程終了後、軟水化工程の開始から間もないタイミングでの混合水の水質を測定し、第一水質情報とすることが好ましい。これにより、軟水槽及び中和槽の硬度成分吸着量が少ないタイミングでの水質情報を第一水質情報とすることができる。
【0222】
水質記憶部72は、混合水の水質情報である記憶水質情報を記憶する。なお、記憶水質情報は、予めインプットされた値であり、各運転モードにおいて未処理水と軟水を混合した場合に得られる混合水の水質情報である。
【0223】
水質比較部73は、第一水質情報と、記憶水質情報を比較する。そして、比較した結果、第一水質情報が記憶水質情報の範囲外になった場合に、第一水質情報が記憶水質情報の範囲内の値となるように、流量制御部59で決定される未処理水又は中和軟水の供給量を制御する。
【0224】
具体的には、制御方法は、例えば、混合水の軟水化度が所定の範囲より上回っている場合には、未処理水と軟水の混合比を変更し、未処理水の供給量を減らす、あるいは中和軟水の供給量を増やす等の処理を行うことにより、軟水化度を下げる。また、混合水の軟水化度が所定の範囲より下回っている場合には、未処理水と軟水の混合比を変更し、未処理水の供給量を増やす、あるいは中和軟水の供給量を減らす等の処理を行うことにより、軟水化度を上げる。これにより、軟水化装置1の運転中に、設定した軟水化度と実際の軟水化度にずれが生じた場合であっても、ずれを修正することが可能となる。したがって、より確実に所望の硬度または軟水化度の水を得ることができる。
【0225】
なお、フィードバック制御は必ずしも行う必要はないが、フィードバック制御を行うことにより、運転中に生じる硬度あるいは軟水化度のずれを修正することができる。ただし、フィードバック制御を行わない場合には、水質測定部71を設けなくてもよいため、軟水化装置1の構成を簡略化することができる。
【0226】
(再生工程の終了制御)
軟水化装置1における再生工程時に実行される制御について説明する。
【0227】
時間記憶部65は、再生工程開始からの経過時間を記憶する。
【0228】
時間比較部66は、時間記憶部65が記憶した経過時間と、受付部68が生成した指示情報に基づく再生時間または混合比決定部58が算出した混合比から得られる再生時間と、を比較する。
【0229】
比較した結果、経過時間が再生時間以下の場合には、再生工程を継続する。経過時間が再生時間を超過した場合には、再生工程を終了する制御を行う。これにより、指示情報に基づいて算出された再生時間を超過して再生工程が進行することを抑制可能である。したがって、利用者の要望に応じた時間で再生工程を終了することができる。
【0230】
なお、時間記憶部65及び時間比較部66を用いた再生工程の終了制御は、必ずしも行う必要はないが、行うことにより、利用者の要望に応じた時間で再生工程を終了することができるため、有用である。
【0231】
以上、本実施の形態1に係る軟水化装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0232】
(1)軟水化装置1は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂33により軟水化して酸性軟水を生成する軟水槽と、軟水槽を通過した酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂34により中和して中和軟水を生成する中和槽と、原水を軟水槽及び中和槽に通水することなく中和槽の下流側に未処理水として送水するバイパス流路53と、バイパス流路53から送水された未処理水と中和槽から送水された中和軟水とを混合し混合水を生成する混合部55と、混合部55への未処理水及び/又は中和軟水の供給量を調節する流量調節部56と、流量調節部56による未処理水と中和軟水の混合比を制御する制御部15と、を備え、制御部15は、弱酸性陽イオン交換樹脂33または弱塩基性陰イオン交換樹脂34の少なくとも一方を再生する再生工程を実施可能な時間である再生時間と、軟水化度と、の少なくとも一方に関する指示情報に基づいて、未処理水及び中和軟水の混合比を決定する混合比決定部58と、混合比決定部58が決定した混合比となるように流量調節部56による供給量を調節する流量制御部59と、を備える。
【0233】
こうした構成によれば、未処理水と中和軟水の混合水の軟水化度を調節可能であるため、弱酸性陽イオン交換樹脂33に吸着する硬度成分量を減らすことができる。すなわち、電解槽9を稼働させる再生工程にかかる時間を短縮させることが可能である。
【0234】
(2)軟水化装置1では、制御部15は、指示情報から特定される再生時間と、原水の硬度である原水硬度と、に基づいて再生時間での再生を達成するために軟水槽が処理可能な原水の量である原水量を特定する軟水量特定部61と、単位時間当たりに混合部55から送水される混合水の水量である記憶混合水量を記憶する流量記憶部62と、単位時間当たりの未処理水と中和軟水を混合した軟水の総通水量と軟水量特定部が特定した原水量との差分を算出する算出部と、算出部が算出した差分に基づいて未処理水の供給量を決定する未処理水量決定部と、を備える。
【0235】
こうした構成によれば、使用者が再生時間の指示情報を入力すると、インプット情報に基づき、所定の再生時間で再生工程が完了できる未処理水と中和軟水の混合比および供給量がわかる。また、混合部55から送水される軟水の軟水化度についても導出可能である。
【0236】
(3)軟水化装置1では、混合比決定部58は、指示情報から特定される軟水化度となるように、原水の硬度である原水硬度に基づいて未処理水及び中和軟水の混合比を決定する硬度混合比決定部67を備え、制御部15は、単位時間当たりに混合部55から送水される混合水の水量である記憶混合水量を記憶する流量記憶部62と、硬度混合比決定部67が決定した混合比と、流量記憶部62が記憶した記憶混合水量と、から軟水槽への原水の供給量を特定する軟水量特定部61と、単位時間当たりの未処理水と中和軟水を混合した軟水の総通水量と軟水量特定部61が特定した原水の供給量との差分を算出する算出部63と、算出部63が算出した差分に基づいて未処理水の供給量を決定する未処理水量決定部64と、を備える。
【0237】
こうした構成によれば、使用者が軟水化度の指示情報を入力すると、インプット情報に基づき、所定の軟水化度に調節可能な未処理水と中和軟水の混合比及び供給量がわかる。軟水槽への原水供給量がわかるので、樹脂の再生工程完了にかかる時間を導出することができる。
【0238】
(4)軟水化装置1では、制御部15は、再生時間での再生を達成するために軟水槽へ吸着可能な硬度成分量を特定する硬度成分量特定部60を備え、軟水量特定部61は、原水硬度と、硬度成分量特定部60が特定した硬度成分量と、に基づいて軟水槽が処理可能な原水量を特定する。
【0239】
こうした構成によれば、指示情報に基づく再生時間での樹脂再生を達成する条件において、軟水槽に吸着する硬度成分量を算出することができるので、軟水化装置1を駆動させた際の軟水化処理可能な原水量を導出することができる。
【0240】
(5)軟水化装置1では、制御部15は、再生工程開始からの経過時間を記憶する時間記憶部65と、時間記憶部65が記憶した経過時間と再生時間とを比較する時間比較部66と、を備え、経過時間が再生時間を超過した場合、再生工程を終了する。
【0241】
こうした構成によれば、再生工程の進行時に、所定の再生時間を上回った場合には、再生工程を終了させることができる。したがって、使用者が指示した再生時間の範囲外になることを抑制でき、軟水化装置1の利便性を高めることができる。また、再生時間が所定の時間より延長されることによる、電解槽9への想定外の負荷を低減することができる。
【0242】
(6)軟水化装置1では、再生工程時に用いられ、弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生に供される酸性電解水と弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生に供されるアルカリ性電解水とを生成する電解槽9を備え、混合部55から送水された混合水の水量が総通水量以上となった場合、又は軟水槽への原水の供給量が軟水量特定部61の特定した原水量以上となった場合に、電解槽9を起動し、再生工程を開始する。
【0243】
こうした構成によれば、混合水の総通水量が、所定の通水量を超えた場合に発生し得る軟水化度の悪化を防ぐことができる。したがって、利用者が軟水化されていない水を利用することとなる可能性を抑制できる。
【0244】
(7)軟水化装置1では、流量調節部56は、開口度を可変に設定可能なバルブ57を備え、未処理水量決定部64が決定した未処理水の供給量に基づいてバルブ57の開口度を変更する。
【0245】
こうした構成によれば、特定された未処理水と中和軟水の混合比に合わせた未処理水と中和軟水の供給が可能となる。これにより、混合水の軟水化度を所定の値に調節できる。
【0246】
(8)軟水化装置1では、ユーザからの再生時間又は軟水化度に関する入力を受け付けて指示情報を生成する受付部68と、受付部68が生成した指示情報に基づいて複数の運転モードの中から一つの運転モードを選択するモード選択部69と、を備え、混合比決定部58は、モード選択部69が選択した運転モードに対応する混合比となるように未処理水及び中和軟水の混合比を決定する。
【0247】
こうした構成によれば、予めインプットした情報に基づき、使用者が想定する運転モードを自身で選択することが可能となり、使用者の要望に合わせた軟水化装置1の稼働が可能となる。
【0248】
(9)軟水化装置1では、混合水の水質を測定し、第一水質情報を得る水質測定部71を備え、制御部15は、指示情報に応じた混合水の水質情報が記憶された水質記憶部72と、第一水質情報と水質記憶部72に記憶された記憶水質情報とを比較する水質比較部73と、を備え、未処理水量決定部64は、第一水質情報が記憶水質情報の範囲外となった場合に、第一水質情報が記憶水質情報の範囲内と一致するように未処理水及び/又は中和軟水の供給量を変更する。
【0249】
こうした構成によれば、軟水化装置1の軟水化工程使用時の混合水の水質をモニタリングでき、運転モード設定等で入力した所定の軟水化度と実際の測定軟水化度の差をリアルタイムで把握することができる。そのため、これらの水質情報をもとに、随時所定の軟水化度に調節し直すフィードバック制御が可能である。
【0250】
(10)軟水化装置1では、水質記憶部72は、再生工程終了後の水質情報を記憶水質情報として記憶する。
【0251】
こうした構成によれば、フィードバック制御時に必要となる水質の基準値を特定することが可能である。
【0252】
(11)軟水化装置1では、軟水化度は、混合部55から送水される混合水の軟水化度であるとした。これにより、取水口から得られる水の軟水化度を特定することができる。したがって、利用者は所望の軟水化度の混合水を利用することができる。
【0253】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【産業上の利用可能性】
【0254】
本発明に係る軟水化装置は、使用場所設置型浄水装置(POU:Point of Use)あるいは建物入口設置型浄水装置(POE: Point of Entry)に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0255】
1 軟水化装置
2 流入口
3 第一軟水槽
4 第一中和槽
5 第二軟水槽
6 第二中和槽
7 取水口
8 再生装置
9 電解槽
10 捕捉部
11 第一送水ポンプ
12 第二送水ポンプ
13 排水口
14 捕捉部排水口
15 制御部
18、19、20、21、22、23 開閉弁
24、25、26、27 流路切り替えバルブ
28、29、30、31、32、74 流路
33 弱酸性陽イオン交換樹脂
34 弱塩基性陰イオン交換樹脂
35 第一供給流路
36 第二供給流路
37 第一回収流路
38 第二回収流路
39 軟水槽再生循環流路
40 中和槽再生循環流路
41 電極
41a 電極
41b 電極
42 中和槽バイパス流路
43 軟水化流路
44 軟水槽バイパス流路
45 再生流路洗浄流路
46 第一排水流路
47 第二排水流路
49 電解槽洗浄流路
50 第三排水流路
51 捕捉部洗浄流路
52 第四排水流路
53 バイパス流路
54 排水流路
55 混合部
56 流量調節部
57 バルブ
58 混合比決定部
59 流量制御部
60 硬度成分量特定部
61 軟水量特定部
62 流量記憶部
63 算出部
64 未処理水量決定部
65 時間記憶部
66 時間比較部
67 硬度混合比決定部
68 受付部
69 モード選択部
70 原水硬度測定部
71 水質測定部
72 水質記憶部
73 水質比較部
75 表示部
76 入力部