(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176070
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
F04F 5/20 20060101AFI20231206BHJP
F04F 5/46 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F04F5/20 E
F04F5/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088151
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山森 和晃
(72)【発明者】
【氏名】村上 季己
(72)【発明者】
【氏名】河合 均
(72)【発明者】
【氏名】吉川 翔太
【テーマコード(参考)】
3H079
【Fターム(参考)】
3H079AA18
3H079AA24
3H079BB10
3H079CC03
3H079DD03
3H079DD16
3H079DD22
(57)【要約】
【課題】閉じた居室空間において面気流の流れが還流気流により乱れることを抑制可能な送風装置を提供する。
【解決手段】送風装置1は、床面(フロアボード12)と床面から立設する壁面(サイドパネル14)と床面に対向する天面(トップボード16)とを有する居室空間26と、天面との間に空間を設けて配置され床面へ向けて気流を吹き出す複数のノズル60と、誘引気流AF2を流通する誘引風路70と、還流気流AF3を流通する還流風路80と、を備える。誘引風路70は、隣り合うノズル60の間に設けられ、還流風路80は、壁面とノズル60との間に設けられる。送風装置1は、誘引風路70を形成する隣り合うノズル60の間の距離に比べて還流風路80を形成する壁面とノズル60との間の距離を大きくした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面と前記床面から立設する壁面と前記床面に対向する天面とを有する居室空間と、
前記天面との間に空間を設けて配置され前記床面へ向けて気流を吹き出す複数のノズルと、
複数の前記ノズルから吹出す前記気流に誘引され前記空間から前記床面へ向かう誘引気流を流通する誘引風路と、
前記床面から前記天面へ向かうと共に前記空間へ流れ込む還流気流を流通する還流風路と、を備え、
前記誘引風路は、
隣り合う前記ノズルの間に設けられ、
前記還流風路は、
前記壁面と前記ノズルとの間に設けられ、
前記誘引風路を形成する前記隣り合う前記ノズルの間の距離に比べて前記還流風路を形成する前記壁面と前記ノズルとの間の距離を大きくした、送風装置。
【請求項2】
前記ノズルは、
短辺と長辺を有するノズル下面と、
前記ノズル下面が有する前記長辺から前記天面側に延設されたノズル側面と、を有し、
前記誘引風路は、
前記短辺の方向に沿って並列に配置された前記ノズル側面の間に設けられ、
前記還流風路は、
前記並列に配置された前記ノズルのうちの端部に配置される端部ノズルが有する前記ノズル側面と前記壁面との間に設けられる、請求項1記載の送風装置。
【請求項3】
前記端部ノズルに隣り合う前記ノズルとの間の距離は、
前記端部ノズルと異なる隣り合う前記ノズルの間の距離に等しいか、またはそれ以上である、請求項2記載の送風装置。
【請求項4】
前記端部ノズルは、
前記並列に配置された前記ノズルのうちの一端に配置される一端側ノズルと、
前記並列に配置された前記ノズルのうちの前記一端と異なる他端に配置される他端側ノズルと、であり、
前記還流風路は、
前記一端側ノズルが有する前記ノズル側面と前記壁面との間と、
前記他端側ノズルが有する前記ノズル側面と前記壁面との間と、に設けられる、請求項2または3に記載の送風装置。
【請求項5】
前記一端側ノズルが有する前記ノズル側面と前記他端側ノズルが有する前記ノズル側面との間の距離は、
前記短辺の方向における前記壁面の間の距離の2/3以下である、請求項4記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、吹出方向に沿った直進性の高い気流(以下、これを「面の風」または「面気流」などと呼ぶ場合がある)を生成する送風装置を開示する。この送風装置901について、
図4を用いて説明する。
図4(a)は、送風装置901の構成を示す斜視図である。
図4(b)は、
図4(a)のA面における断面図である。この送風装置901は、筐体910に、空気を取り入れる吸込口920と、高圧空気を発生するための羽根車と羽根車を駆動するためのモータで構成された高圧空気発生部930と、筐体910の一面から起立させた複数のノズル940と、を備える。ノズル940は、側部に、ノズル940を起立させた方向に対して垂直方向に高圧空気発生部930で発生した高圧空気を吹き出す吹出口941と、高圧空気を吹出口941に導くためのダクト942を有する。ノズル940は、垂直方向の断面が吹出方向に縦長であり、複数それぞれの吹出口941が同一面となるように間隙を設けて備えられ、この間隙によって、吹出口941から吹き出す空気AF901に誘引される空気(誘引空気AF902)の誘引風路950が形成される。送風装置901は、複数のノズル940から吹き出す空気AF901と、誘引風路950を流通する誘引空気AF902とによって、吹出方向に沿った直進性の高い気流である吹出空気流AF903を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブースなど閉じた居室空間において天井面側から床面側に向けて面気流を生成するために従来の送風装置をブースへ設置する場合について考える。ブースの限られた空間においては、誘引気流を生成するため誘引風路へ流れ込む還流気流を導く還流風路を十分に確保できない場合、意図しない部分から誘引風路へ空気が流れ込む可能性がある。その場合、誘引風路に空気が安定して誘引されなくなり、面気流の条件のひとつである「吹出方向に沿った直進性の高い気流」が損なわれる。つまり、特許文献1に記載された技術は、ブースなど閉じた居室空間において面気流を生成するにあたり、面気流の流れが還流気流により乱されるという観点から改善すべき余地がある。
【0005】
本開示の目的のひとつは、閉じた居室空間において面気流(吹出方向に沿った直進性の高い気流)の流れが還流気流により乱れることを抑制可能な送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における送風装置は、床面と床面から立設する壁面と床面に対向する天面とを有する居室空間と、天面との間に空間を設けて配置され床面へ向けて気流を吹き出す複数のノズルと、複数のノズルから吹出す気流に誘引され空間から床面へ向かう誘引気流を流通する誘引風路と、床面から天面へ向かうと共に空間へ流れ込む還流気流を流通する還流風路と、を備える。誘引風路は、隣り合うノズルの間に設けられる。還流風路は、壁面とノズルとの間に設けられる。還流風路を形成する壁面とノズルとの間の距離は、誘引風路を形成する隣り合うノズルの間の距離に比べて大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示における送風装置は、閉じた居室空間において面気流(流吹出方向に沿った直進性の高い気流)の流れが還流気流により乱れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1における送風装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における送風装置により生成される空気の流れを模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1における送風装置により生成される空気の流れを模式的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、従来の送風装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図3を用いて、実施の形態1を説明する。
図1は、実施の形態1における送風装置1を示す斜視図である。より詳細には、
図1(a)は、送風装置1の構造体を示す斜視図であり、
図1(b)は、送風装置1の内部構造を示す透過斜視図である。
図2は、送風装置1により生成される気流の流れを示す側面図である。
図3は、送風装置1により生成される気流の流れを示す正面図である。なお、
図2では、第一ノズル61、第二ノズル62、第三ノズル63および第四ノズル64を区別せずに気流の流れを示している。
【0012】
[1-1.構成]
送風装置1は、少なくとも一人が滞在可能な空間(居室空間26)を有し、その天井面側に居室空間26に対して空気を吹き出すノズル60を配置した設備ユニットである。送風装置1は、リモート業務あるいは学習を行うための机200及び椅子300等を備える1人用の個室(居室空間26)を有し、個室ブースとも呼べる。
【0013】
送風装置1は、フロアボード12と、サイドパネル14と、トップボード16と、インナーパネル18と、扉20と、給気口22と、排気口24と、居室空間26と、中空空間28と、チャンバ30と、ダクト40と、送風機50と、ノズル60と、誘引風路70と、還流風路80と、を備える。
【0014】
フロアボード12は、送風装置1において床面側に配置される方形状の板材である。
【0015】
サイドパネル14は、第一サイドパネル14a、第二サイドパネル14b、第三サイドパネル14c、及び第四サイドパネル14dの4つの方形状の板材によって構成され、フロアボード12の4つの外周端から鉛直方向上方に立設している。
【0016】
第一サイドパネル14aは、扉20が設けられたサイドパネル14であり、第三サイドパネル14cの一側端と第四サイドパネル14dの一側端とに隣接する。
【0017】
第二サイドパネル14bは、第一サイドパネル14aと対向する位置に配置されたサイドパネル14であり、第三サイドパネル14cの他側端と第四サイドパネル14dの他側端とに隣接する。
【0018】
第三サイドパネル14cは、給気口22が設けられたサイドパネル14であり、第一サイドパネル14aの一側端と第二サイドパネル14bの一側端とに隣接する。
【0019】
第四サイドパネル14dは、第三サイドパネル14cと対向する位置に配置され、排気口24が設けられたサイドパネル14であり、第一サイドパネル14aの他側端と第二サイドパネル14bの他側端とに隣接する。
【0020】
トップボード16は、サイドパネル14が立設することで形成される開口を覆う方形状の板材である。トップボード16は、フロアボード12に対して上方に設けられ、フロアボード12を送風装置1における床面とする場合、送風装置1における天井面に相当する。
【0021】
インナーパネル18は、フロアボード12、サイドパネル14およびトップボード16により形成される空間を、送風装置1の使用者が滞在する居室空間26と、中空空間28とに区切る方形状の板材である。インナーパネル18は、フロアボード12上において、扉20よりも第三サイドパネル14cの側に位置して設けられる。
【0022】
居室空間26は、送風装置1の使用者が入退室及び滞在可能な空間である。居室空間26は、フロアボード12と、サイドパネル14(第一サイドパネル14a、第二サイドパネル14bおよび第四サイドパネル14d)と、トップボード16と、インナーパネル18と、により形成される。居室空間26には、
図1(b)に示すように、机200および椅子300が所定の位置に配置される。
【0023】
扉20は、居室空間26に滞在する使用者が入退室する際に使用する。扉20は、第一サイドパネル14aに設けられる。
【0024】
机200は、居室空間26に滞在する使用者がパソコンあるいは書類などを置いて作業する什器である。机200は、第四サイドパネル14dに当接して設けられる。
【0025】
椅子300は、居室空間26に滞在する使用者が着座するための什器である。椅子300は、インナーパネル18に当接して設けられる。
【0026】
中空空間28は、フロアボード12と、サイドパネル14(第一サイドパネル14a、第二サイドパネル14bおよび第三サイドパネル14c)と、トップボード16と、インナーパネル18と、により形成されると共に、居室空間26と連通する。中空空間28は、チャンバ30、ダクト40および送風機50を内包する。
【0027】
給気口22は、送風装置1の外周側空間から居室空間26に空気を供給するための方形状の開口であり、居室空間26の高さ方向の中心よりも下方であって、第三サイドパネル14cに設けられる。給気口22は、送風機50が動作することにより、送風装置1の外周側空間から空気を吸い込む。
【0028】
排気口24は、居室空間26の空気を送風装置1の外周側空間へ排出するための方形状の開口であり、居室空間26の高さ方向の中心よりも下方であって、第四サイドパネル14dに設けられる。排気口24は、送風機50が動作することにより、居室空間26から空気を排出する。
【0029】
ノズル60は、送風機50によって搬送される空気が流入する方形状の通風管である。ノズル60は、居室空間26のトップボード16の側の所定の位置に設置され、トップボード16の側からフロアボード12の側に向かって流れる空気(気流AF1)を吹き出す。ノズル60は、
図2~
図3に示すように、トップボード16からオフセットして配置される。つまり、ノズル60とトップボード16との間には、所定の空間が形成される。
【0030】
図2に示すように、ノズル60は、インナーパネル18の上方を起点として第四サイドパネル14dに向かって水平に延設される。ノズル60は、インナーパネル18を起点とする側においてチャンバ30と連通接続される。『インナーパネル18の上方』とは、起立した人体の頭部よりも高い位置であって、具体的には居室空間26においてフロアボード12から200cmの高さの位置以上を指し示す。『水平に延設される』とは、居室空間26において床面となるフロアボード12および天井面となるトップボード16に対して略平行となる向きに起立することを指し示す。
【0031】
実施の形態1においてノズル60は、第一ノズル61、第二ノズル62、第三ノズル63および第四ノズル64の合計4本が、第一サイドパネル14aから第二サイドパネル14bに向けて並列に配置される。
【0032】
第一ノズル61は、ノズル下面61aとノズル側面61bとノズル側面61cとを有し、ノズル60のうち最も第一サイドパネル14aに近い場所に配置される。
【0033】
ノズル下面61aは、短辺と長辺で形成される矩形の平板であり、フロアボード12に対向して配置される。ノズル下面61aは、吹出口61dを有する。
【0034】
吹出口61dは、短辺と長辺を有する矩形の開口であり、第一ノズル61に搬送された空気を気流AF1aとして吹き出す。吹出口61dの短辺とノズル下面61aの短辺とは略並行に設けられる。吹出口61dの長辺とノズル下面61aの長辺とは略並行に設けられる。
【0035】
ノズル側面61bおよびノズル側面61cは、ノズル下面61aが有する長辺からトップボード16の側に延設された矩形の平板である。ノズル側面61bは、第一サイドパネル14aと対向して設けられる。ノズル側面61cは、第二ノズル62と対向して設けられる。
【0036】
第二ノズル62は、ノズル下面62aとノズル側面62bとノズル側面62cとを有し、第一ノズル61と第三ノズル63との間に配置される。
【0037】
ノズル下面62aは、短辺と長辺で形成される矩形の平板であり、フロアボード12に対向して配置される。ノズル下面62aは、吹出口62dを有する。
【0038】
吹出口62dは、短辺と長辺を有する矩形の開口であり、第二ノズル62に搬送された空気を気流AF1bとして吹き出す。吹出口62dの短辺とノズル下面62aの短辺とは略並行に設けられる。吹出口62dの長辺とノズル下面62aの長辺とは略並行に設けられる。
【0039】
ノズル側面62bおよびノズル側面62cは、ノズル下面62aが有する長辺からトップボード16の側に延設された矩形の平板である。ノズル側面62bは、第一ノズル61と対向して設けられる。ノズル側面62cは、第三ノズル63と対向して設けられる。
【0040】
第三ノズル63は、ノズル下面63aとノズル側面63bとノズル側面63cとを有し、第二ノズル62と第四ノズル64との間に配置される。
【0041】
ノズル下面63aは、短辺と長辺で形成される矩形の平板であり、フロアボード12に対向して配置される。ノズル下面63aは、吹出口63dを有する。
【0042】
吹出口63dは、短辺と長辺を有する矩形の開口であり、第三ノズル63に搬送された空気を気流AF1cとして吹き出す。吹出口63dの短辺とノズル下面63aの短辺とは略並行に設けられる。吹出口63dの長辺とノズル下面63aの長辺とは略並行に設けられる。
【0043】
ノズル側面63bおよびノズル側面63cは、ノズル下面63aが有する長辺からトップボード16の側に延設された矩形の平板である。ノズル側面63bは、第二ノズル62と対向して設けられる。ノズル側面63cは、第四ノズル64と対向して設けられる。
【0044】
第四ノズル64は、ノズル下面64aとノズル側面64bとノズル側面64cとを有し、ノズル60のうち最も第二サイドパネル14bに近い場所に配置される。
【0045】
ノズル下面64aは、短辺と長辺で形成される矩形の平板であり、フロアボード12に対向して配置される。ノズル下面64aは、吹出口64dを有する。
【0046】
吹出口64dは、短辺と長辺を有する矩形の開口であり、第四ノズル64に搬送された空気を気流AF1dとして吹き出す。吹出口64dの短辺とノズル下面64aの短辺とは略並行に設けられる。吹出口64dの長辺とノズル下面64aの長辺とは略並行に設けられる。
【0047】
ノズル側面64bおよびノズル側面64cは、ノズル下面64aが有する長辺からトップボード16の側に延設された矩形の平板である。ノズル側面64bは、第三ノズル63と対向して設けられる。ノズル側面64cは、第二サイドパネル14bと対向して設けられる。
【0048】
吹出口61d、吹出口62d、吹出口63dおよび吹出口64dは、ある水平面を仮想したとき同一平面上に配置されている。つまり、居室空間26において、吹出口61d、吹出口62d、吹出口63dおよび吹出口64dは、フロアボード12から同じ高さに配置されている。
【0049】
誘引風路70は、ノズル60(第一ノズル61、第二ノズル62、第三ノズル63および第四ノズル64)から吹き出す気流AF1(気流AF1a、気流AF1b、気流AF1cおよび気流AF1d)に誘引され、ノズル60とトップボード16との間の空間からフロアボード12へ向かう誘引気流AF2を流通する。実施の形態1において誘引風路70は、誘引風路71、誘引風路72および誘引風路73の3つが、それぞれ隣り合うノズル60の間に設けられる。より詳細には、誘引風路71、誘引風路72および誘引風路73は、ノズル下面61a、ノズル下面62a、ノズル下面63aおよびノズル下面64aの短辺方向に沿って並列に配置されたノズル60の間に設けられる。
【0050】
誘引風路71は、第一ノズル61から吹き出す気流AF1aと第二ノズル62から吹き出す気流AF1bとに誘引され、ノズル60とトップボード16との間の空間からフロアボード12へ向かう誘引気流AF2aを流通する。誘引風路71は、ノズル側面61cとノズル側面62bとの間に設けられる。ノズル側面61cとノズル側面62bとの間の距離(間隔)は、d1=145mmとする。
【0051】
誘引風路72は、第二ノズル62から吹き出す気流AF1bと第三ノズル63から吹き出す気流AF1cとに誘引され、ノズル60とトップボード16との間の空間からフロアボード12へ向かう誘引気流AF2bを流通する。誘引風路72は、ノズル側面62cとノズル側面63bとの間に設けられる。ノズル側面62cとノズル側面63bとの間の距離(間隔)は、d2=100mmとする。
【0052】
誘引風路73は、第三ノズル63から吹き出す気流AF1cと第四ノズル64から吹き出す気流AF1dとに誘引され、ノズル60とトップボード16との間の空間からフロアボード12へ向かう誘引気流AF2cを流通する。誘引風路73は、ノズル側面63cとノズル側面64bとの間に設けられる。ノズル側面63cとノズル側面64bとの間の距離(間隔)は、d1=145mmとする。
【0053】
還流風路80は、フロアボード12からトップボード16へ向かうと共にノズル60とトップボード16との間の空間へ流れ込む還流気流AF3を流通する。実施の形態1において還流風路80は、還流風路81および還流風路82が、それぞれサイドパネル14とノズル60との間に設けられる。
【0054】
還流風路81は、還流気流AF3のうち気流AF1aに隣接する還流気流AF3aを流通する。還流風路81は、ノズル側面61bと第一サイドパネル14aとの間に設けられる。ノズル側面61bと第一サイドパネル14aとの間の距離(間隔)は、D=390mmとする。
【0055】
還流風路82は、還流気流AF3のうち気流AF1dに隣接する還流気流AF3bを流通する。還流風路82は、ノズル側面64cと第二サイドパネル14bとの間に設けられる。ノズル側面64cと第二サイドパネル14bとの間の距離(間隔)は、D=390mmとする。
【0056】
距離D、距離d1および距離d2の大小関係を整理すると、D>d1>d2である。また、ノズル側面61bとノズル側面64cとの間の距離d3は、第一サイドパネル14aと第二サイドパネル14bとの間の距離d4の2/3以下とする。
【0057】
チャンバ30は、ノズル60とダクト40とを連通接続する筐体である。チャンバ30は、ノズル60へ向かう空気の流れ(気流の向き)を制御する。チャンバ30は、チャンバ30の側面にノズル60が接続され、チャンバ30の下面にダクト40が接続される。チャンバ30は、ダクト40から流入する空気の流れる方向を、ノズル60へ向かう方向となるように制御する。チャンバ30は、1本のノズル60に対して一つが接続される。すなわち、チャンバ30は、ノズル60と同数の4個が配置される。チャンバ30は、インナーパネル18の上方に配置される。チャンバ30は、ノズル60とダクト40とを連通接続できれば、特に形状は指定しない。
【0058】
ダクト40は、給気口22から送風機50へ吸い込まれた空気をチャンバ30へ搬送するための通風管である。ダクト40は、一端がチャンバ30に接続し、他端が送風機50に接続する。ダクト40は、一つのチャンバ30に対して1本が配置される。すなわち、ダクト40は、4本が配置される。ダクト40は、例えば公知のフレキシブルダクトが採用可能である。
【0059】
送風機50は、給気口22からダクト40及びチャンバ30を介してノズル60の吹出口(吹出口61d、吹出口62d、吹出口63dおよび吹出口64d)へ向かう気流を生成する。送風機50は、例えば、遠心送風機など公知のターボ機械を採用可能である。送風機50は、1本のノズル60に対して一つが設けられる。すなわち、送風機50は、ノズル60と同数の4基が配置される。
【0060】
[1-2.動作]
以上のように構成された送風装置1について、その動作を以下説明する。
図2~
図3を参照して、送風装置1の動作により生成される気流の流れについて説明する。
【0061】
図2に示すように、送風機50の運転動作が開始されると、送風装置1の外周側空間の空気が、気流AF4となって給気口22から吸い込まれる。給気口22から吸い込まれた空気(気流AF4)は、ダクト40の内部を気流AF5として流通して、チャンバ30へ搬送される。
【0062】
チャンバ30へ搬送された空気(気流AF5)は、チャンバ30によって、その進行方向が垂直(フロアボード12の側からトップボード16の側へ向かう)方向から水平(第三サイドパネル14cの側から第四サイドパネル14dの側へ向かう)方向へ切り換えられる。チャンバ30へ搬送された空気は、気流AF6としてノズル60の内部を流通する。
【0063】
ノズル60へ流入した空気(気流AF6)は、気流AF1(気流AF1a、気流AF1b、気流AF1cおよび気流AF1d)として吹出口(吹出口61d、吹出口62d、吹出口63dおよび吹出口64d)から下方に向けて、即ちフロアボード12に向けて吹き出される。
【0064】
気流AF1が居室空間26に吹き出されると、気流AF1の周囲の空間の空気が気流AF1に引き寄せられ、吹き出される風量に応じて、隣り合うノズル60の間の空間に負圧領域S1が生成される。ここで、負圧(陰圧とも呼ぶ)とは、周囲に比べて気圧が低い状態のことを指す。つまり、負圧領域S1は、周囲に比べて気圧の低い領域のことである。
【0065】
負圧領域S1が生成されると、負圧を解消しようとする力が働き、ノズル60の周囲の空間から負圧領域S1を解消するための空気の流れである誘引気流AF2(誘引気流AF2a、誘引気流AF2bおよび誘引気流AF2c)が生成される。誘引気流AF2は、誘引風路70(誘引風路71、誘引風路72および誘引風路73)を介して下方、すなわちフロアボード12の側へ流通する。
【0066】
吹出口61d、吹出口62d、吹出口63dおよび吹出口64dから吹き出した気流AF1a、気流AF1b、気流AF1cおよび気流AF1dは、誘引気流AF2a、誘引気流AF2b及び誘引気流AF2cと合わさって面気流AF7として居室空間26をフロアボード12に向かって流通する。
【0067】
また、居室空間26のような限られた空間(閉空間)においては、誘引気流AF2の周囲の空間(誘引風路70の流入口近傍の空間)の空気が気流AF2によって引き寄せられ、ノズル60とトップボード16との間の空間に負圧領域S2が生成される。これにより、負圧領域S3を解消するための空気の流れである還流気流AF3(還流気流AF3aおよび還流気流AF3b)が生成される。還流気流AF3は、還流風路80(還流風路81および還流風路82)を介して負圧領域S2(ノズル60とトップボード16との間の空間)へ流れ込む。
【0068】
フロアボード12に到達する空気の一部は、気流AF8として排気口24から送風装置1の外周側空間に排気される。
【0069】
図3に示すように、フロアボード12に到達する空気の他の部分は、フロアボード12にて反射され、サイドパネル14(第一サイドパネル14aまたは第二サイドパネル14b)に沿ってトップボード16に向かう還流気流AF3aおよび還流気流AF3bとして流れる。
【0070】
気流AF1(気流AF1a、気流AF1b、気流AF1cおよび気流AF1d)のうち机200の上面に到達する空気の一部は、机200の上面にて反射して気流AF9となる。気流AF9は、サイドパネル14(第一サイドパネル14aまたは第二サイドパネル14b)に沿ってトップボード16に向かう還流気流AF3(還流気流AF3aおよび還流気流AF3b)の一部として流れる。
【0071】
居室空間26の中央領域において面気流AF7が下降気流となって流通するのに伴い、居室空間26の端領域において還流気流AF3が流通する。つまり、居室空間26の端領域には、サイドパネル14(第一サイドパネル14aまたは第二サイドパネル14b)の表面近傍に沿って還流気流AF3が流通する。
【0072】
[1-3.効果等]
送風装置1は、第一ノズル61と第一サイドパネル14aとの間の距離Dおよび第四ノズル64と第四サイドパネル14dとの間の距離Dを、隣り合うノズル60の間の距離d1および距離d2よりも大きくした。このため、還流風路80の通風抵抗(圧力損失)を距離Dが距離d1および距離d2と等しい場合と比べて小さくすることができるので、還流気流AF3を還流風路80へ集中させ、還流気流AF3が意図しない場所(例えば誘引風路70)に発生することを抑制できる。これにより、面気流AF7、すなわち吹出方向(トップボード16の側からフロアボード12の側)に沿った直進性の高い気流を閉じた居室空間26において生成するにあたり、意図しない場所に発生した還流気流AF3によって面気流AF7の流れが乱されることを抑制することが可能となる。
【0073】
また、還流気流AF3は、ノズル60とトップボード16との間の空間(負圧領域S2)に向かう空気であるが、気流AF1および誘引気流AF2とは気流の流れる方向が異なる。このため、還流気流AF3は、還流気流AF3と隣接する気流AF1の流れを乱し、面気流AF7の直進性を妨げる要因となり得る。しかしながら、送風装置1は、気流AF1の風量が一定の場合、距離Dが距離d1および距離d2と等しい場合と比べて還流風路80の開口面積を大きくすることができるので還流気流AF3の風速を小さくすることができる。これにより、還流気流AF3の流れに巻き込まれる気流AF1の空気の量を少なくすることができるので、還流気流AF3による面気流AF7の乱れを抑制することが可能となる。
【0074】
(変形例)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。
【0075】
そこで、以下、変形例を例示する。
【0076】
送風装置1は、4本のノズル60、すなわち第一ノズル61、第二ノズル62、第三ノズル63および第四ノズル64の4本を備えたが、これに限られない。例えば、3本のノズル、あるいは、5本以上のノズルを用いて面気流を生じさせるようにしてもよい。
【0077】
また、送風装置1は、4本のノズル60毎に送風機50を設置したが、これに限られない。例えば、分岐管を用いてひとつの送風機により生成される気流を複数のノズルへ搬送する構成としてもよい。
【0078】
給気口22は、矩形としたがこれに限定されず、矩形以外の多角形または円形であってもよい。
【0079】
排気口24は、矩形としたがこれに限定されず、矩形以外の多角形または円形であってもよい。
【0080】
送風装置1は、例えば給気口22など気流AF1が通過する風路上に、送風装置1の外周側空間の空気に含まれる塵埃を捕集するためのフィルタを備えてもよい。これにより、フィルタを通過する前に比べて塵埃などの異物が含まれる量が少ない清浄化された空気を居室空間26へ供給することができる。また、送風機50は、フィルタに対して下流側に配置することが好ましい。これにより、送風機50に塵埃などの異物が堆積することを抑制することができる。そのため、送風機50に堆積した塵埃などの異物と水分とによりトラッキング現象が発生する可能性を低減することができる。
【0081】
居室空間26は、個人が滞在可能な狭小の空間としたが、これに限定されない。例えば、居室空間26として、25m^2以下の会議室など複数人が滞在可能な空間を適用してもよい。
【0082】
送風装置1は、距離d1を距離d2に比して大きくなるようにノズル60を設けたがこれに限定されない。送風装置1は、距離d1と距離d2とが等しくなるように、即ちノズル60を等間隔に設けてもよい。
【0083】
(発明の概要)
本発明の概要を以下に記載する。
【0084】
送風装置1は、床面(フロアボード12)と床面から立設する壁面(サイドパネル14)と床面に対向する天面(トップボード16)とを有する居室空間26と、天面との間に空間を設けて配置され床面へ向けて気流を吹き出す複数のノズル60と、複数のノズル60から吹出す気流に誘引され空間(トップボード16とノズル60との間の空間)から床面へ向かう誘引気流AF2を流通する誘引風路70と、床面から天面へ向かうと共に空間(トップボード16とノズル60との間の空間)へ流れ込む還流気流AF3を流通する還流風路80と、を備える。誘引風路70は、隣り合うノズル60の間に設けられ、還流風路80は、壁面とノズル60との間に設けられる。送風装置1は、誘引風路70を形成する隣り合うノズル60の間の距離(距離d1および距離d2)に比べて還流風路80を形成する壁面とノズル60との間の距離Dを大きくした。
【0085】
ノズル60は、短辺と長辺を有するノズル下面(61a、62a、63a、64a)と、ノズル下面が有する長辺から天面側に延設されたノズル側面(61b、61c、62b、62c、63b、63c、64b、64c)と、を有する。誘引風路70は、短辺の方向に沿って並列に配置されたノズル側面の間(ノズル側面61cとノズル側面62bとの間、ノズル側面62cとノズル側面63bとの間、ノズル側面63cとノズル側面64bとの間)に設けられる。還流風路80は、並列に配置されたノズル60のうちの端部に配置される端部ノズル(第一ノズル61、第四ノズル64)が有するノズル側面(ノズル側面61b、ノズル側面64c)と壁面との間に設けられる。
【0086】
端部ノズル(第一ノズル61、第四ノズル64)に隣り合うノズル60との間の距離d1は、端部ノズルと異なる隣り合うノズル60の間の距離d2に等しいか、またはそれ以上である。
【0087】
端部ノズルは、並列に配置されたノズル60のうちの一端に配置される一端側ノズル(第一ノズル61)と、並列に配置されたノズル60のうちの一端と異なる他端に配置される他端側ノズル(第四ノズル64)と、である。還流風路80は、一端側ノズル(第一ノズル61)が有するノズル側面(ノズル側面61b)と壁面との間と、他端側ノズル(第四ノズル64)が有するノズル側面(ノズル側面64c)と壁面との間と、に設けられる。
【0088】
一端側ノズル(第一ノズル61)が有するノズル側面(ノズル側面61b)と他端側ノズル(第四ノズル64)が有するノズル側面(ノズル側面64c)との間の距離d3は、ノズル下面(61a、62a、63a、64a)の短辺の方向における壁面の間の距離d4の2/3以下である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示は、閉じた居室空間において面気流(吹出方向に沿った直進性の高い気流)を生成するにあたり、還流気流による面気流の乱れが発生し得る送風装置に適用可能である。具体的には、面気流を生成し得る送風機能を備えた個室ブース、会議室などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 送風装置
12 フロアボード
14 サイドパネル
14a 第一サイドパネル
14b 第二サイドパネル
14c 第三サイドパネル
14d 第四サイドパネル
16 トップボード
18 インナーパネル
20 扉
22 給気口
24 排気口
26 居室空間
28 中空空間
30 チャンバ
40 ダクト
50 送風機
60 ノズル
61 第一ノズル
61a ノズル下面
61b ノズル側面
61c ノズル側面
61d 吹出口
62 第二ノズル
62a ノズル下面
62b ノズル側面
62c ノズル側面
62d 吹出口
63 第三ノズル
63a ノズル下面
63b ノズル側面
63c ノズル側面
63d 吹出口
64 第四ノズル
64a ノズル下面
64b ノズル側面
64c ノズル側面
64d 吹出口
70 誘引風路
71 誘引風路
72 誘引風路
73 誘引風路
80 還流風路
81 還流風路
82 還流風路
200 机
300 椅子