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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176103
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】支持台および血管穿刺装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/42 20060101AFI20231206BHJP
   A61M 5/52 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61M5/42 520
A61M5/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088203
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 太輝人
(72)【発明者】
【氏名】福田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 雅司
(72)【発明者】
【氏名】桑野 陽一郎
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF04
4C066HH12
4C066LL13
4C066LL16
(57)【要約】
【課題】穿刺位置がずれることを抑制できるとともに、本体と支持台との間にドレープを容易に配置でき、本体側を清潔野、支持台側を不潔野とした状態を容易に維持できる支持台および血管穿刺装置を提供する。
【解決手段】血管穿刺装置10は、人体の腕Aの皮膚表面に接触して腕Aの断面画像を取得できる撮像部40と、穿刺針を移動させる駆動部60と、駆動部60の移動を制御できる制御部70と、を有する本体20を支持可能な支持台30であって、腕Aを保持可能な保持部80を備え、本体20を支持可能であり、かつ本体20に対して分離可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の腕の皮膚表面に接触して前記腕の断面画像を取得できる撮像部と、穿刺針を移動させる駆動部と、前記駆動部の移動を制御できる制御部と、を有する本体を支持可能な支持台であって、
前記腕を保持可能な保持部を備え、前記本体を支持可能であり、かつ前記本体に対して分離可能であることを特徴とする支持台。
【請求項2】
前記本体に連結するための連結部を有する請求項1に記載の支持台。
【請求項3】
前記支持台の前記連結部は、前記本体に設けられる凹部または凸部に篏合可能な凸部または凹部を有し、前記凸部が前記凹部に直接的に篏合する際に前記凸部と前記凹部との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項2に記載の支持台。
【請求項4】
前記支持台の前記連結部に、視認可能な視認部を有することを特徴とする請求項2に記載の支持台。
【請求項5】
前記支持台の前記凹部または前記凸部に、視認可能な視認部を有することを特徴とする請求項3に記載の支持台。
【請求項6】
前記支持台は、異なる位置に複数の前記連結部を有する請求項2~5のいずれか1項に記載の支持台。
【請求項7】
前記保持部は、前記腕の肘側を保持可能な第1保持面と、前記腕の手首側を保持可能な第2保持面と、を有し、
前記支持台の底面から前記第2保持面までの高さは、前記底面から前記第1保持面までの高さよりも高いことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の支持台。
【請求項8】
前記保持部は、柔軟であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の支持台。
【請求項9】
前記保持部は、前記支持台の前記底面に対して傾斜する保持面を有すること特徴とする請求項7に記載の支持台。
【請求項10】
人体の腕の皮膚表面に接触して前記腕の断面画像を取得できる撮像部と、穿刺針を移動させる駆動部と、前記駆動部の移動を制御できる制御部と、を有する本体と、
前記腕を保持可能な保持部を備え、前記本体を支持可能であり、かつ前記本体に対して分離可能である支持台と、を有することを特徴とする血管穿刺装置。
【請求項11】
前記本体は、前記撮像部により撮像された断面画像を表示可能な表示部を有することを特徴とする請求項10に記載の血管穿刺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エコー装置で取得された画像から、血管の位置を検出して穿刺できる本体を支持可能な支持台および血管穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤投与や血管内治療のための血管へのアクセスルートの確保のため、鋭利な針先を備える内針に柔軟な外筒を被せて人体に穿刺する血管穿刺が行われる。内針とともに外筒を血管内に到達させた後に内針のみを抜去することで、外筒によりアクセスルートを確保できる。血管穿刺において、術者は、皮膚表面から血管を目視できないため、標準的な血管走行の知識や血管脈動の触知などの技量によって、血管位置を推定している。
【0003】
近年では、血管穿刺を自動で行うデバイスが存在する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9999440号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のデバイスは、穿刺ロボットを支持できる台を有しているが、この台は、穿刺する腕を保持する機能を備えていない。このため、穿刺する際に、穿刺位置がずれやすい。したがって、自動穿刺を患者の目的の位置へ高い精度で穿刺を行うことは困難である。
【0006】
ところで、穿刺する手技において、穿刺を行う装置および腕の穿刺される部位は、清潔野に配置され、それ以外は不潔野に配置される。通常、清潔野と不潔野はドレープにより区切られる。清潔野と不潔野の関係は、穿刺する手技において、穿刺完了まで維持されることが望ましい。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、穿刺位置がずれることを抑制できるとともに、本体と支持台との間にドレープを容易に配置でき、本体側を清潔野、支持台側を不潔野とした状態を、穿刺完了まで容易に維持できる支持台および血管穿刺装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る支持台は、人体の腕の皮膚表面に接触して前記腕の断面画像を取得できる撮像部と、穿刺針を移動させる駆動部と、前記駆動部の移動を制御できる制御部と、を有する本体を支持可能な支持台であって、前記腕を保持可能な保持部を備え、前記本体を支持可能であり、かつ前記本体に対して分離可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した支持台は、保持部に腕を保持できるため、穿刺位置がずれることを抑制できる。また、支持台が本体から分離可能であるため、本体と支持台との間にドレープを容易に配置できるとともに、本体側を清潔野、支持台側を不潔野とした状態を、穿刺完了まで容易に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の血管穿刺装置の斜視図である。
図2】本実施形態の血管穿刺装置の側面図である。
図3図2のB-B線に沿う断面図である。
図4図2の矢線Cから見た支持台の正面図である。
図5】第1変形例に係る血管穿刺装置の側面図である。
図6】第2変形例に係る血管穿刺装置の側面図である。
図7】第3変形例に係る血管穿刺装置の断面図である。
図8】第4変形例に係る血管穿刺装置を示す図であり、(A)は駆動部の一部を示す斜視図、(B)は支持台および本体の連結部を示す断面図である。
図9】第5変形例に係る血管穿刺装置を示す図であり、(A)は駆動部の一部を示す斜視図、(B)は支持台および本体の連結部を示す断面図である。
図10】第6変形例に係る血管穿刺装置を示す図であり、(A)は駆動部の一部を示す斜視図、(B)は支持台および本体の連結部を示す断面図である。
図11】第7変形例に係る血管穿刺装置の保持部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の実施形態に係る血管穿刺装置10は、人体の腕Aへの穿刺を行う際に用いられ、腕Aの断面画像を取得して穿刺する血管の位置を検出し、その血管を自動的に穿刺するものである。
【0013】
図1~4に示すように、血管穿刺装置10は、血管の穿刺を自動で行う本体20と、本体20と高さ方向Zに重なり、本体20の下側に配置されて本体20を支持する支持台30とを備えている。高さ方向Zは、血管穿刺装置10を水平な面に配置した際に、水平な面と垂直な方向である。本体20は、上フレーム21と、皮膚表面に接触して人体の断面画像を取得する撮像部40と、穿刺を行う穿刺部50と、穿刺部50を撮像部40(または上フレーム21)に対して移動させる駆動部60と、断面画像の画像解析および駆動部60の制御を行う制御部70と、断面画像を表示可能な表示部90とを有している。
【0014】
撮像部40は、上フレーム21に固定され、下端に、超音波を発生させて送信するとともに、生体内から反射した超音波(エコー)を受信するプローブ41を有している。プローブ41は、血管穿刺装置10に配置される人体の腕Aの延在する方向に対応する長さ方向Xに対して直交する幅方向Yに長く形成され、人体内部の血管の軸方向と直交する断面画像を得ることができる。なお、長さ方向Xおよび幅方向Yは、互いに直交し、高さ方向Zと垂直な方向である。撮像部40の内部にはプローブ41を高さ方向Zに移動させるプローブ駆動部を有している。プローブ駆動部によってプローブ40と腕Aとの距離を調整することで、よりノイズの少ない画像を撮像したり過度の接触による皮膚や血管の変形を防止したりできる。プローブ駆動部は撮像部40の内部にあってもよく、上フレーム21と撮像部40の間に配置して撮像部40全体を移動させるようにしてもよい。
【0015】
上フレーム21は、長さ方向Xから見て上側へ凸となる略アーチ状に形成される。上フレーム21は、幅方向Yの両側に形成される2つの上側壁22と、2つの上側壁22をつなぐ天面部23と、撮像部40および穿刺部50が配置される開口部24とを有している。上フレーム21は、例えば硬質の樹脂材料により形成される。
【0016】
各々の上側壁22は、下端に本体連結面25を有している。各々の本体連結面25は、支持台30に連結可能な連結部として、少なくとも1つの凸部26を有している。本実施形態では、各々の本体連結面25は、1つの凸部26を有している。
【0017】
天面部23は、上側を向く面に、撮像部40により撮像された画像を表示する表示部90が配置される。天面部23は、上フレーム21の長さ方向Xの中枢側(腕Aの肩に近い側)の面に、長さ方向Xの末梢側(腕Aの指先に近い側)へ向かって把持穴27が形成されている。把持穴27は、術者が手を入れて本体20を持ち上げるために使用可能である。把持穴27は、天面部23の中枢側から、本体20の重心に向かって延在する。なお、把持穴27は、本体20の重心まで到達しても、到達しなくてもよい。把持穴27が重心の近くまで形成されることで、術者が本体20を落とさずに片手で容易に持ち上げることができる。
【0018】
開口部24は、上フレーム21の長さ方向Xの末梢側に、上方から見て凹状に形成される。すなわち、天面部23が上側壁22よりも長さ方向Xの末梢側に短く形成されることで、上フレーム21に開口部24が形成される。開口部24は、天面部23の末梢側に配置される。開口部24からは、撮像部40による撮像および穿刺部50による穿刺を行う腕Aが露出する。開口部24には、撮像部40が連結される。撮像部40は、開口部24に対して取り外し自在であっても、取り外し不能であってもよい。
【0019】
穿刺部50は、図1および2に示すように、鋭利な針先53が先端に形成された金属製の内針51と、内針51の外周面に被さるように配置される柔軟な管状の外筒52とを備えている。内針51の外側に外筒52が被さった状態において、内針51の針先53は、外筒52から突出している。内針51および外筒52は、駆動部60の針保持部61に着脱可能である。
【0020】
駆動部60は、制御部70により制御されて、穿刺部50の位置および/または角度を変化させて、穿刺する位置の調整や穿刺動作を自動で行うことための駆動源である。駆動部60は、撮像部40または上フレーム21に連結されて、開口部24に配置される。駆動部60は、穿刺部50を上フレーム21に対して、穿刺部50の全体を傾ける機構と、穿刺部50の全体を幅方向へ移動させる機構と、穿刺部50を上下方向へ移動させる機構と、内針51を穿刺する方向へ前進および後退させる機構と、外筒52を内針51に沿って前進および後退させる機構とを有している。駆動部60は、例えばモータ等の回転駆動源と、回転駆動源の回転運動を直線運動に変換する構造(例えば、送りねじ機構)と、角度を変化させる構造(例えば、ヒンジ)等を組み合わせて構成されるが、構成は限定されない。駆動部60は、内針51および外筒52を着脱可能に保持する針保持部61を有する。
【0021】
制御部70は、撮像部40のプローブ41から画像情報を受信し、断面画像を形成できる。さらに、制御部70は、得られる断面画像を表示部90に表示させることができる。制御部70は、物理的な構成として、記憶回路および演算回路を備えている。記憶回路は、プログラムや、各種パラメータを格納できる。演算回路は、演算処理を行うことができる。
【0022】
制御部70は、上フレーム21に配置されてもよく、または撮像部40や駆動部60に配置されてもよい。または、制御部70は、本体20とは別体で構成されてもよい。
【0023】
制御部70は、取得した断面画像を画像解析することで、画像中の血管の位置を特定できる。また、制御部70は、画像解析することで、撮像部40に対する内針51の相対位置を検出できる。なお、外筒52は樹脂製であるため、超音波により検出されない。しかしながら、例えば外筒52が金属を含有した樹脂製である場合には、超音波により検出できるため、制御部70は、撮像部40に対する外筒52の相対位置を検出できる。また、制御部70は、得られた断面画像を画像解析することで、断面画像を表示部90に表示させることができる。さらに、制御部70は、駆動部60を制御して穿刺部50の位置や角度を調節し、望ましい位置および角度で、内針51および外筒52による穿刺を自動で行うことができる。
【0024】
表示部90は、図1~3に示すように、断面画像を表示可能なモニター等である。表示部90は、穿刺を行う穿刺部50の近くに配置されることが好ましい。表示部90は、例えば、穿刺部50が配置される開口部24に隣接する天面部23の上側を向く面に配置される。これにより、術者は、表示部90によって血管の断面画像を視認しつつ、腕Aの穿刺される皮膚を目視することができる。なお、表示部90は、本体20および支持台30から離れて配置されてもよい。
【0025】
支持台30は、図1~4に示すように、下フレーム31と、腕Aを保持する保持部80とを有している。下フレーム31は、長さ方向Xから見て下側へ凸となる略アーチ状に形成される。下フレーム31は、幅方向Yの両側に形成される2つの下側壁32と、2つの下側壁32をつなぐ底面部33とを有している。下フレーム31は、例えば硬質の樹脂材料により形成される。
【0026】
各々の下側壁32は、上端に支持台連結面34を有している。支持台連結面34は、本体20の本体連結面25と対向して、本体連結面25を支持できる。支持台連結面34と本体連結面25の間には、ドレープ100を挟むことができる。ドレープ100とは、柔軟なシート状の部材であり、清潔野と不潔野を区切るために使用可能である。ドレープ100の構成は、柔軟なシート状であれば、特に限定されない。各々の支持台連結面34は、本体20に連結可能な連結部として、少なくとも1つの凹部35を有している。本実施形態では、各々の支持台連結面34は、長さ方向Xに沿って所定の間隔で並ぶ複数の凹部35を有している。凹部35は、支持台連結面34を貫通しても、貫通しなくてもよい。各々の凹部35には、ドレープ100を介して、本体連結面25の凸部26を篏合可能である。このため、ドレープ100を介さずに凸部26が凹部35に直接的に篏合する際には、凸部26と凹部35との間に隙間が形成される。各々の凹部35の近傍又は凹部35の窪み部分には、ドレープ100を介して術者が視認可能な視認部36が形成される。視認部36は、例えばLED等の発光可能な照明部である。支持台30には、視認部36へ電力を供給する電源およびケーブル(図示せず)が配置される。術者は、ドレープ100を透過して発光する視認部36を視認できるため、ドレープ100に覆われた支持台30の凹部35の位置を把握して、凹部35に凸部26を容易に篏合させることができる。さらに、視認部36が凹部35の窪み部分にある場合には、術者が凹部35に凸部26を篏合させると、凹部35の窪み部分に位置する視認部36を凸部26が覆う。それによって、視認部36の発光が術者に見えなくなるので、術者が完全に篏合したことを認識できる。なお、連結部として、本実施形態では本体20に凸部26が形成され、支持台30に凹部35が形成されるが、本体20に凹部が形成され、支持台30に凸部が形成されてもよい。この場合、支持台30の凸部の突出している部分に視認部が配置されてもよい。これにより、術者が凹部に凸部を篏合させると、凸部の突出する部分に位置する視認部を凹部が覆う。それによって、視認部の発光が術者に見えなくなるので、術者が完全に篏合したことを認識できる。
【0027】
底面部33は、手術台等に接する底面37と、上側を向く載置面38とを有している。載置面38には、腕Aを保持する保持部80が固定されている。
【0028】
保持部80は、図2~4に示すように、上側の面に、腕Aを保持できる保持面81を有する。保持面81は、長さ方向Xに沿って腕Aを安定して保持できるように、腕Aの形状に合わせて溝状に形成される。保持面81は、腕Aの肘側(中枢側)を保持可能な第1保持面82と、腕Aの手首側(末梢側)を保持可能な第2保持面83とを有する。支持台30の底面37から第2保持面83までの高さは、底面37から第1保持面82までの高さよりも高いことが好ましい。保持面81の底面37からの高さは、長さ方向Xの肘側(中枢側)から手首側(末梢側)へ向かって徐々に高くなっている。これにより、手首の掌側を上に向けて反らせて腕Aの皮膚を伸長させた状態で、腕Aを保持部80に安定して保持できる(図2を参照)。保持面81の底面37からの高さは、長さ方向Xの本体20の穿刺部50へ向かって徐々に高くなっている。すなわち、保持面81は、底面37に対して傾斜している。これにより、本体20の穿刺部50が接触する位置に位置する腕Aの皮膚を伸長させた状態で、本体20の穿刺部50を接触させることができる。これらのため、穿刺の際に、皮膚がずれるように移動して穿刺位置がずれることを抑制できる。保持部80は、柔軟であることが好ましい。これにより、保持部80が腕Aの形状に応じて変形できるため、腕Aを安定して保持できるとともに、患者の痛みを軽減できる。保持部80は、例えば、柔軟な多孔質の樹脂材料により形成される。保持部80は、柔軟でなくてもよく、下フレーム31と一体的な構造であってもよい。
【0029】
図4に示すように、底面37から支持台30の最上面までの高さ、すなわち支持台連結面34までの高さH1は、底面37から保持部80により保持された腕Aの最も高い位置まで高さH2を超えないことが好ましい。高さH2が高さH1を超えると、腕Aの穿刺する位置が、ドレープ100を支持する支持台連結面34よりも下に位置することになり、穿刺の作業性が低下する。一般的なヒトの腕Aの甲側から掌側までの厚さが50mm程度であることから、保持面81のうちで高く形成される第2保持面83の最も低い位置から支持台連結面34までの高さH3が、50mm以下であることが好ましい。
【0030】
次に、本実施形態に係る血管穿刺装置10の使用方法を説明する。まず、術者は、手術台等の不潔野に支持台30を載せ、患者の腕Aを、保持面81に配置する。このとき、手首の掌側を上に向けて反らせた状態で、腕Aを保持面81に配置する。これにより、この後の穿刺の際に、皮膚がずれるように移動して穿刺位置がずれることを抑制できる。
【0031】
次に、術者は、図2~3に示すように、支持台30および腕Aを、滅菌されたドレープ100で覆う。このとき、ドレープ100に設けられる穴を、腕Aの穿刺を行う部位に合わせる。これにより、腕Aの穿刺を行う部位が、ドレープ100から露出する。そして、ドレープ100は、支持台30の両側の支持台連結面34を覆う。これにより、ドレープ100より下側の支持台30を含む範囲を不潔野、ドレープ100より上側の範囲を清潔野として維持することができる。
【0032】
次に、術者は、支持台30の視認部36を発光させて、ドレープ100を透過する光により凹部35の位置を把握する。続いて、術者は、本体20の凸部26を嵌合させる凹部35を、長さ方向Xに並ぶ複数の凹部35から選択し、凸部26を凹部35に嵌合させる。これにより、術者は、支持台30の視認部36により凹部35の位置を把握できるため、本体20の凸部26を支持台30の凹部35に容易かつ確実に嵌合(連結)できる。また、術者は、凸部26を嵌合させる凹部35を選択できるため、支持台30に対する本体20の長さ方向Xの位置を、カテーテル手技のために望ましい位置に容易に調節できる。
【0033】
凹部35と凸部26との間には隙間が設けられるため、ドレープ100を挟みつつ、凸部26を凹部35に嵌合させることができる。ドレープ100は、支持台連結面34と本体連結面25との間に挟まれて保持される。術者は、支持台30と本体20の間にドレープ100を挟むのみで、ドレープ100を破損したり除去したりすることなく、血管穿刺装置10に腕Aおよびドレープ100を容易に配置できる。
【0034】
この後、術者は、血管穿刺装置10を作動させる。これにより、制御部70により駆動部60および撮像部40が制御されて、血管の穿刺が自動で行われる。なお、穿刺の実行のために、血管穿刺装置10は、ボタンやマイクを有してもよい。術者がボタンを押すか、またはマイクを介して音声により指示することで、制御部70は、駆動部60を作動させて穿刺を実行させることができる。血管の穿刺の際には、術者は、表示部90により血管の断面画像を視認しつつ、腕Aの穿刺される皮膚を目視することができる。このため、術者は、血管の狙った位置に穿刺できているかを容易に確認できる。
【0035】
制御部70により制御された駆動部60は、内針51の先端を、外筒52とともに血管内へ到達させる。この後、駆動部60は、外筒52の先端を血管内に残した状態で、内針51を後退させ、外筒52から引き抜く。なお、内針51の後退は、術者が手作業で行ってもよい。
【0036】
血管穿刺装置10による血管穿刺が完了すると、術者は、内針51および外筒52の両方または一方を、駆動部60から取り外す。次に、術者は、把持穴27を把持して本体20を持ち上げて、本体20を支持台30から離脱させて取り除く。このとき、駆動部60から取り外した内針51および外筒52の両方または一方が、本体20の抹消側に開いた開口部24に配置されているため、内針51および外筒52の両方または一方を本体20に引っ掛けることなく、本体20を取り除くことができる。このため、外筒52を血管内に挿入した状態を良好に維持できる。本体20は、ドレープ100にほとんど影響を与えずに、取り除くことができる。このため、本体20を取り除く際に、清潔野と不潔野の関係を維持できる。術者は、本体20を取り除いた後に、外筒52を介してカテーテル手技を行うことができる。
【0037】
以上のように、本実施形態における支持台30は、人体の腕Aの皮膚表面に接触して腕Aの断面画像を取得できる撮像部40と、穿刺針(内針51)を移動させる駆動部60と、駆動部60の移動を制御できる制御部70と、を有する本体20を支持可能な支持台30であって、腕Aを保持可能な保持部80を備え、本体20を支持可能であり、かつ本体20に対して分離可能である。これにより、支持台30は、保持部80に腕Aを保持できるため、穿刺位置がずれることを抑制できる。このため、支持台30は、術者が人体の望ましい穿刺位置に穿刺針(内針51)を高い精度で穿刺することを補助できる。また、支持台30が本体20から分離可能であるため、本体20と支持台30との間にドレープ100を容易に配置できるとともに、本体20側を清潔野、支持台30側を不潔野とした状態を、穿刺完了まで容易に維持できる。
【0038】
支持台30は、本体20に連結するための連結部を有する。これにより、本体20と支持台30を、適切な位置関係で連結できる。なお、連結部の構造は、ドレープ100を挟んだ状態で本体20および支持台30を連結可能であれば、特に限定されない。
【0039】
支持台30の連結部は、本体20に設けられる凹部または凸部26に篏合可能な凸部または凹部35を有し、凸部26が凹部35に直接的に篏合する際に凸部26と凹部35との間に隙間が形成される。これにより、凸部26と凹部35との間の隙間にドレープ100を挟みつつ、ドレープ100を介して凸部26を凹部35に篏合させることができる。
【0040】
支持台30は、支持台30の連結部に、視認可能な視認部36を有してもよい。これにより、術者は、視認部30を視認できなくなるため、支持台30の連結部に本体20が連結されたことを確実に認識できる。
【0041】
支持台30は、支持台30の凹部35または凸部に、視認可能な視認部36を有してもよい。これにより、術者は、支持台30の凹部35に本体20の凸部26が嵌合することで、視認部30を視認できなくなるため、支持台30に本体20が連結されたことを確実に認識できる。
【0042】
支持台30は、異なる位置に複数の連結部(例えば凹部35)を有する。これにより、本体20と支持台30を異なる位置で連結することが可能となる。
【0043】
保持部80は、腕Aの肘側を保持可能な第1保持面82と、腕Aの手首側を保持可能な第2保持面83と、を有し、支持台30の底面37から第2保持面83までの高さは、底面37から第1保持面82までの高さよりも高い。これにより、手首の掌側を上に向けて反らせて腕Aの皮膚を伸長させた状態で、腕Aを保持部80に安定して保持できる。このため、穿刺の際に、皮膚がずれるように移動して穿刺位置がずれることを抑制できる。
【0044】
保持部80は、柔軟である。これにより、保持部80が腕Aの形状に応じて変形できるため、腕Aを安定して保持できるとともに、患者の痛みを軽減できる。
【0045】
保持部80は、支持台30の底面37に対して傾斜する保持面81を有する。これにより、腕Aの肘側よりも手首側を高くして腕Aを保持面81に配置でき、腕Aを保持面81に安定して保持できる。
【0046】
また、本実施形態における血管穿刺装置10は、人体の腕Aの皮膚表面に接触して腕Aの断面画像を取得できる撮像部40と、穿刺針(内針51)を移動させる駆動部60と、駆動部60の移動を制御できる制御部70と、を有する本体20と、腕Aを保持可能な保持部80を備え、本体20を支持可能であり、かつ本体20に対して分離可能である支持台30と、を有する。これにより、血管穿刺装置10は、支持台30の保持部80に腕Aを保持できるため、穿刺位置がずれることを抑制できる。このため、血管穿刺装置10は、人体の望ましい穿刺位置に穿刺針(内針51)を高い精度で穿刺できる。また、支持台30が本体20から分離可能であるため、本体20と支持台30との間にドレープ100を容易に配置できるとともに、本体20側を清潔野、支持台30側を不潔野とした状態を、穿刺完了まで容易に維持できる。
【0047】
本体20は、撮像部40により撮像された断面画像を表示可能な表示部90を有する。これにより、術者は、腕Aの穿刺している部位と表示部90の両方を、視線を大きく変化させずに確認できるため、穿刺における操作性が向上する。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、本体20および/または支持台30に配置される連結部は、篏合可能な凹部や凸部に限定されず、例えば段差であってもよい。段差には、対向する部材の他の段差や角部が嵌合可能である。
【0049】
また、図5に示す第1変形例のように、支持台30の凹部35は、長さ方向Xに長く溝状またはスリット状に形成されてもよい。これにより、本体20の凸部26を凹部35に沿ってスライドするように移動可能である。これにより、本体20を、支持台30に対して長さ方向Xへ任意の位置で連結することができる。
【0050】
また、図6に示す第2変形例のように、連結部は、磁力により連結可能であってもよい。本体20に配置される第1連結部29と、支持台30に配置される第2連結部39は、いずれも強磁性体であり、少なくとも一方が磁性を帯びていることで、互いに引き合うことができる。なお、第1連結部29または第2連結部39の一方が磁性を帯びた強磁性体であれば、他方は、磁性を帯びていても、磁性を帯びていなくてもよい。
【0051】
また、図7に示す第3変形例のように、支持台30および/または本体20は、幅方向Yの長さを変更可能であってもよい。支持台30および/または本体20は、幅方向Yの長さを変更できるように、例えばスライド機構を有している。これにより、支持台30および/または本体20は、腕Aの幅に合わせて、適切な幅に変更できる。したがって、血管穿刺装置10は、腕Aの幅によらずに使用可能である。
【0052】
また、図8に示す第4変形例のように、血管穿刺装置10は、内針51が血管に挿入された状態では本体20を支持台30から除去できないストッパー機構110を備えてもよい。ストッパー機構110は、穿刺部50の近傍で内針51の有無の有無を検出する検出部111と、支持台30と本体20を取り外し不能に連結するロック機構112とを有している。検出部111は、例えば、穿刺部50を保持する針保持部61に配置される近接センサや変位センサ等である。ロック機構112は、例えば、制御部70により制御されるモータ等の駆動源によって本体20の凸部26から高さ方向Zと交差する方向へ突出可能であり、突出することで、ドレープ100を貫通して支持台30の凹部35に形成される係合部113に引っ掛かることができる。なお、ロック機構112は、ドレープ100を貫通せずに、係合部113に引っ掛かることもできる。制御部70は、検出部111により内針51を検出している場合には、ロック機構112を係合部113に係合させて本体20と支持台30とを取り外し不能とし、検出部111により内針51を検出できない場合には、ロック機構112を作動させて係合部113から離脱させて、本体20を支持台30から取り外し可能とする。
【0053】
また、図9に示す第5変形例のように、ストッパー機構110は、例えば、制御部70により制御されるモータ等の駆動源によって移動する強磁性体である第1磁性体114と、第1磁性体114と磁力により引き合うことが可能な強磁性体である第2磁性体115とを有してもよい。第1磁性体114および第2磁性体115は、いずれも強磁性体であることで、少なくとも一方が磁性を帯びていることで、互いに引き合うことができる。第1磁性体114は本体20に配置され、第2磁性体115は支持台30に配置される。制御部70は、検出部111により内針51を検出している場合には、第1磁性体114を第2磁性体115に近づけて磁力により本体20と支持台30とを取り外し不能とし、検出部111により内針51を検出できない場合には、第1磁性体114を第2磁性体115から離して、本体20を支持台30から取り外し可能とする。
【0054】
なお、本体20を支持台30から取り外し不能とするストッパー機構110の検出部111は、電気的に信号を出力するものではなく、機械的な機構であってもよい。例えば、図10に示す第6変形例のように、穿刺部50を保持する針保持部61を内針51とともに取り外せる構造である場合、検出部111は、針保持部61とロック機構112を連結する少なくとも1つの部品116を有する。針保持部61が上フレーム21から取り外されると、これらの部品116がてこの原理などで動き、ロック機構112を作動させて係合部113から離脱させて、本体20を支持台30から取り外し可能とする。
【0055】
また、図11に示す第7変形例のように、腕Aを反らせる機構として、保持部80は、腕Aを保持する面に、拡張および収縮可能なバルーン84を有してもよい。また、腕Aを反らせる機構として、保持部80は、掌に引っ掛けることが可能なループ状の紐体85と、紐体85を移動させることが可能な紐体駆動部86とを有してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 血管穿刺装置
20 本体
24 開口部
26 凸部(連結部)
29 第1連結部
30 支持台
35 凹部(連結部)
37 底面
39 第2連結部
40 撮像部
50 穿刺部
51 内針(穿刺針)
52 外筒
60 駆動部
70 制御部
80 保持部
81 保持面
82 第1保持面
83 第2保持面
90 表示部
100 ドレープ
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