(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176119
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】コラーゲン分解阻害能を測定する方法及びその利用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/37 20060101AFI20231206BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20231206BHJP
C12N 9/50 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
C12Q1/37
C07K14/78
C12N9/50
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088230
(22)【出願日】2022-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦川 李花
(72)【発明者】
【氏名】有田 卓矢
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050KK18
4B050LL03
4B063QA05
4B063QQ36
4B063QR16
4B063QR48
4B063QR57
4B063QX01
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA50
(57)【要約】
【課題】コラーゲン分解阻害能を簡便に評価する方法の提供。
【解決手段】(A)被験物質、及び歯周病関連マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに(B)前記コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、前記被験物質の、コラーゲン分解阻害能を測定する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)被験物質、及び歯周病関連マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)前記コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
前記被験物質の、コラーゲン分解阻害能を測定する方法。
【請求項2】
(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、
(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)被験物質、及び歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
前記被験物質の、コラーゲン分解阻害能を測定する方法。
【請求項3】
前記歯周病関連MMPが、2種以上のMMPを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記歯周病関連MMPが、
少なくとも2種の歯周病関連コラゲナーゼ、及び
少なくとも1種の歯周病関連ゼラチナーゼを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記歯周病関連MMPが、MMP-1、MMP-8、及びMMP-9を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記コラーゲン含有固形物が、I型コラーゲン含有固形物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
(A)被験物質、及び歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)前記コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
コラーゲン分解阻害能を有する物質をスクリーニングする方法。
【請求項8】
(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、
(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)被験物質、及び歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
コラーゲン分解阻害能を有する物質をスクリーニングする方法。
【請求項9】
前記歯周病関連MMPが、2種以上のMMPを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記歯周病関連MMPが、
少なくとも2種の歯周病関連コラゲナーゼ、及び
少なくとも1種の歯周病関連ゼラチナーゼを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記歯周病関連MMPが、MMP-1、MMP-8、及びMMP-9を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項12】
前記コラーゲン含有固形物が、I型コラーゲン含有固形物である、請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コラーゲン分解阻害能を測定する方法及びその利用等に関する。
【背景技術】
【0002】
マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase;MMP)は、活性部位に亜鉛(II)イオンを保有する細胞外マトリックス分解酵素の総称である。その主たる基質は、コラーゲン、ラミニン、ゼラチン、フィブロネクチン等の生体高分子である。
【0003】
MMPは、生体内における組織のリモデリングや創傷治癒の過程において、不要な細胞外マトリックスを分解し、血管新生や新たな組織の構築を制御することによって恒常性を維持する働きをすると考えられている。しかし、MMPの活性が亢進しすぎると組織破壊が進行し、歯周病、関節リウマチ、腫瘍浸潤やその転移現象等に関わるとされているため、MMPによるコラーゲン等の分解を阻害する成分の探索が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Int. J. Environ. Res. Public Health 2020, 17(14), 4923
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでに、繊維芽細胞を用いたコラーゲン分解阻害剤のスクリーニング方法が検討されている(特許文献1)。しかしながら、当該方法は、細胞を用いた評価系であることから、繊維芽細胞が分泌するMMPしか評価できないこと、操作が煩雑であること、及びコラーゲンゲルを用いた評価系であるところコラーゲンゲルはゲルを均一に作製することが難しいこと等から、より簡便な評価方法の開発が望まれていた。
【0007】
今回、本発明者らは、コラーゲン分解阻害能を簡便に評価する方法について、検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、歯周病関連マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)及びコラーゲン含有固形物を用いることによって、MMPによるコラーゲン分解に対する阻害能を簡便に測定し得ることを見出し、さらに改良を重ねた。
【0009】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)被験物質、及び歯周病関連マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)前記コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
前記被験物質の、コラーゲン分解阻害能を測定する方法。
項2.
(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、
(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)被験物質、及び歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
前記被験物質の、コラーゲン分解阻害能を測定する方法。
項3.
前記歯周病関連MMPが、2種以上のMMPを含む、項1又は2に記載の方法。
項4.
前記歯周病関連MMPが、
少なくとも2種の歯周病関連コラゲナーゼ、及び
少なくとも1種の歯周病関連ゼラチナーゼを含む、項1又は2に記載の方法。
項5.
前記歯周病関連MMPが、MMP-1、MMP-8、及びMMP-9を含む、項1又は2に記載の方法。
項6.
前記コラーゲン含有固形物が、I型コラーゲン含有固形物である、項1~5のいずれか1項に記載の方法。
項7.
(A)被験物質、及び歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)前記コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
コラーゲン分解阻害能を有する物質をスクリーニングする方法。
項8.
(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、
(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに
(B)被験物質、及び歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、
コラーゲン分解阻害能を有する物質をスクリーニングする方法。
項9.
前記歯周病関連MMPが、2種以上のMMPを含む、項7又は8に記載の方法。
項10.
前記歯周病関連MMPが、
少なくとも2種の歯周病関連コラゲナーゼ、及び
少なくとも1種の歯周病関連ゼラチナーゼを含む、項7又は8に記載の方法。
項11.
前記歯周病関連MMPが、MMP-1、MMP-8、及びMMP-9を含む、項7又は8に記載の方法。
項12.
前記コラーゲン含有固形物が、I型コラーゲン含有固形物である、項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
MMPによるコラーゲン分解に対する阻害能を簡便に測定する方法が提供される。また、MMPによるコラーゲン分解に対する阻害能を有する物質を簡便にスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各種MMPを添加した場合の、コラーゲンディスクの顕微鏡観察写真を示す。
【
図2】MMP阻害剤を添加した場合の、コラーゲンディスクの顕微鏡観察写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示は、(A)被験物質、及び歯周病関連マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに(B)前記コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、前記被験物質の、コラーゲン分解阻害能を測定する方法を包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示の測定方法」と表記することがある。また、前記(A)及び(B)の各工程を「(A)工程」、「(B)工程」等と表記することがある。
また、「本開示の測定方法」は、(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに(B)被験物質、及び歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、前記被験物質の、コラーゲン分解阻害能を測定する方法をも包含する。また、前記(A-1)、(A-2)及び(B)の各工程を「(A-1)工程」、「(A-2)工程」、「(B)工程」等と表記することがある。
【0013】
歯周病関連マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)としては、歯周病に関連することが知られているMMPである限り、特に限定されない。
歯周病関連MMPとしては、例えば、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-7、MMP-8、MMP-9、MMP-13、MMP-14等が挙げられる(非特許文献1)。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
また、本開示の測定方法に用いられるMMPは、2種以上のMMPを含むことが好ましい。
理論に拘束されることを望むものではないが、MMPは他のMMPを活性化する(例えば、MMP-13がMMP-9を活性化する、MMP-9がMMP-2を活性化する等)ことが報告されていることから、2種以上のMMPを組み合わせることによって、効率的にコラーゲン含有固形物を分解することができると期待される。
【0015】
また、本開示の測定方法に用いられるMMPは、少なくとも2種の歯周病関連コラゲナーゼ、及び少なくとも1種の歯周病関連ゼラチナーゼを含むことが好ましい。
本明細書において、「コラゲナーゼ」とは、主に三重らせん構造を持つ繊維状のコラーゲンを分解する酵素を意味する。歯周病関連コラゲナーゼとしては、例えば、MMP-1、MMP-8、MMP-13等が挙げられる(非特許文献1)。
本明細書において、「ゼラチナーゼ」とは、主にコラーゲンの繊維状構造が壊れ、末端が露出したポリペプチド鎖を分解する酵素を意味する。歯周病関連ゼラチナーゼとしては、例えば、MMP-2、MMP-9等が挙げられる(非特許文献1)。
理論に拘束されることを望むものではないが、主に三重らせん構造を持つ繊維状のコラーゲンを分解する歯周病関連コラゲナーゼと、主にコラーゲンの繊維状構造が壊れ、末端が露出したポリペプチド鎖を分解する歯周病関連ゼラチナーゼとを組み合わせることによって、より効率的にコラーゲン含有固形物を分解することができると推測される。
【0016】
中でも、本開示の測定方法に用いられるMMPとしては、MMP-1、MMP-8、及びMMP-9からなる群より選択される少なくとも2種(例えば、MMP-1及びMMP-8、MMP-1及びMMP-9、又はMMP-8及びMMP-9)を含むことが好ましく、MMP-1、MMP-8、及びMMP-9全てを含むことが好ましい。
【0017】
コラーゲン含有固形物としては、コラーゲンを含む固形物である限り、特に限定されない。なお本明細書において、「固形物」は、ゲル状物(液体分散媒のコロイドうち固体状のもの)を包含しないことが好ましい。例えば、固形物の形状としては、ディスク状、ブロック状、シート状、粉末状等が挙げられる。
また、コラーゲン含有固形物は、例えば、コラーゲン含有乾燥固形物等であってもよい。
また、コラーゲン含有固形物は、例えば、コラーゲンにより形成されるポア(孔)構造(例えば、ハニカム構造等)等を有していてもよい。
【0018】
コラーゲン含有固形物に含まれるコラーゲンとしては、例えば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、I型コラーゲンが好ましい。
【0019】
コラーゲン含有固形物は、コラーゲンを主成分として含有することが好ましい。
コラーゲン含有固形物中、コラーゲンの含有量は、特に限定されないが、例えば、55質量%以上であることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100質量%程度であってもよい。より具体的には、60~100質量%程度等であってもよい。
【0020】
コラーゲン含有固形物は、コラーゲンを含み、さらに他の成分を含んでいてもよい。当該他の成分としては、基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤、コーティング剤、着色料、pH調整剤等が例示される。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
被験物質としては、特に制限されず、例えば、化合物、組成物等であり得る。化合物としては、例えば低分子化合物や、核酸(例えばDNA、RNA等)やタンパク質(例えば抗体又はその一部等)、ポリマー等の高分子化合物であってよい。組成物としても、生物(例えば動物、植物、微生物等)から得た抽出物等であってもよく、化合物を2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0022】
(A)被験物質、及び歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程とは、換言すれば、被験物質及び歯周病関連MMPを同時にコラーゲン含有固形物と接触する工程(接触時に被験物質及び歯周病関連MMPを予め混合した後にコラーゲン含有固形物と接触する工程を含む)を意味する。
被験物質及び歯周病関連MMPを予め混合する場合、被験物質と歯周病関連MMPとの接触時間としては、例えば、10秒~7日程度、又は3分~1日程度等とすることができる。
被験物質及び歯周病関連MMPを予め混合する場合、接触方法としては、特に限定されない。例えば、被験物質を含む水溶液に歯周病関連MMPを添加する方法、歯周病関連MMPを含む水溶液に被験物質を添加する方法等が挙げられる。
被験物質及び歯周病関連MMPを予め混合する場合、接触時の温度としては、特に限定されない。例えば、25~40℃程度、又は30~40℃程度等とすることができる。
【0023】
(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、及び(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程の順序は特に限定されない。つまり、本開示の測定方法は、(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、及び(A-2)歯周病関連MMPと、被験物質と接触したコラーゲン含有固形物とを接触する工程を含んでいてもよく、(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、及び(A-1)被験物質と、歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物とを接触する工程を含んでいてもよい。
【0024】
被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触した後、歯周病関連MMPと、被験物質と接触したコラーゲン含有固形物とを接触するまでの期間、又は歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触した後、被験物質と、歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物とを接触するまでの期間は、特に限定されず、例えば、10秒~7日程度、又は3分~1日程度等とすることができる。
【0025】
本開示の測定方法は、例えば、(A-1)工程と(A-2)工程の間に、洗浄工程を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0026】
接触方法(被験物質及び/又は歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物との接触方法)としては、特に限定されない。例えば、被験物質及び/又は歯周病関連MMPを含む水溶液にコラーゲン含有固形物を浸漬する方法、被験物質及び/又は歯周病関連MMPを含む水溶液をコラーゲン含有固形物に添加する方法等が挙げられる。
【0027】
接触時(被験物質及び/又は歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物との接触時)の温度としては、特に限定されない。例えば、25~40℃程度、又は30~40℃程度等とすることができる。
【0028】
接触時間(被験物質及び/又は歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物との接触時間)としては、特に限定されない。例えば、10秒~14日程度、3分~7日程度、又は1~5日程度等とすることができる。
【0029】
歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物との接触時における歯周病関連MMPの濃度としては、MMPによりコラーゲンを分解し得る限り、特に限定されない。例えば、0.1~100μg/mL程度、又は100~20000U/ml程度等とすることができる。
【0030】
(B)コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する方法としては、特に限定されない。例えば、目視によりコラーゲン含有固形物の大きさを確認する方法、顕微鏡観察等によりコラーゲン含有固形物の構造の変化を確認する方法、コラーゲン染色により定量する方法等が挙げられる。
【0031】
本開示の測定方法によれば、被験物質のコラーゲン分解阻害能(より具体的には、MMPによるコラーゲン分解に対する阻害能)を測定することができる。
例えば、本開示の測定方法が、歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触した後に、被験物質と当該コラーゲン含有固形物とを接触し、コラーゲン含有固形物の分解の程度が抑制された場合、当該被験物質は、MMPによるコラーゲン分解の進行を抑制することが期待される。
例えば、本開示の測定方法が、被験物質及び歯周病関連MMPを同時にコラーゲン含有固形物と接触し、コラーゲン含有固形物の分解の程度が抑制された場合、当該被験物質は、MMPによるコラーゲン分解を予防することが期待される。
例えば、本開示の測定方法が、歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する前に、被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触し、コラーゲン含有固形物の分解の程度が抑制された場合、当該被験物質は、歯周組織破壊の早期段階においてMMPによるコラーゲン分解を予防することが期待される。
【0032】
また、本開示は、(A)被験物質、及び歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに(B)前記コラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、コラーゲン分解阻害能を有する物質をスクリーニングする方法をも包含する。本明細書において、当該方法を、「本開示のスクリーニング方法」と表記することがある。また、前記(A)及び(B)の各工程を「(A)工程」、「(B)工程」等と表記することがある。
また、「本開示のスクリーニング方法」は、(A-1)被験物質とコラーゲン含有固形物とを接触する工程、(A-2)歯周病関連MMPとコラーゲン含有固形物とを接触する工程、並びに(B)被験物質、及び歯周病関連MMPと接触したコラーゲン含有固形物の分解の程度を評価する工程を含む、コラーゲン分解阻害能を有する物質をスクリーニングする方法をも包含する。また、前記(A-1)、(A-2)及び(B)の各工程を「(A-1)工程」、「(A-2)工程」、「(B)工程」等と表記することがある。
【0033】
本開示のスクリーニング方法における(A)工程、(A-1)工程、(A-2)工程、及び(B)工程については、上述した本開示の測定方法における(A)工程、(A-1)工程、(A-2)工程、及び(B)工程についての記載を援用することができる。
【0034】
本開示のスクリーニング方法によれば、コラーゲン分解阻害能(より具体的には、MMPによるコラーゲン分解に対する阻害能)を有する被験物質をスクリーニングすることができる。
【0035】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0036】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0037】
本開示の内容を以下の実験例を用いて具体的に説明する。しかし、本開示はこれらに何ら限定されるものではない。下記において、特に言及する場合を除いて、実験は大気圧及び常温条件下で行っている。また特に言及する場合を除いて、「%」は「容量%」を意味する。
【0038】
MMP-1 assay buffer(50mM HEPES,10mM CaCl
2,0.05% Brij-35,pH7.5)を純水で5倍に希釈し、最終の濃度が10mM HEPES,2mM CaCl
2,0.01% Brij-35となるよう調製した。表1に示すように100μlのMMP溶液を作製し、コラーゲンディスク(AteloCell ハニカムディスク96(ウシ皮由来I型コラーゲン含有)、高研社製)に処理した。36℃にて3日間インキュベートし、ディスク添加直後、添加から1日後、2日後、及び3日後の時点で顕微鏡にて観察した。なお、MMPの終濃度は、MMP-1 10μg/ml(7000U/ml)、MMP-8 10μg/ml(1500U/ml)、MMP-9 12μg/ml(240U/ml)であった。結果を
図1に示す。
【0039】
【0040】
図1に示すとおり、Assay bufferを添加したNCでは、コラーゲンディスクは溶解しなかった。
MMP-1、MMP-8、又はMMP-9を単独で添加した場合、コラーゲンディスクの構造に変化は見られなかった。
MMP-1及びMMP-8、あるいはMMP-8及びMMP-9を添加した場合、コラーゲンディスクは、添加2日後に厚さが薄くなり始めたが、3日後でも構造が崩れることはなかった。
MMP-1、MMP-8、及びMMP-9を添加したコラーゲンディスクは添加2日後に構造が崩れ溶解した。
【0041】
MMP-1 assay buffer(50mM HEPES,10mM CaCl
2,0.05% Brij-35,pH7.5)を純水で5倍に希釈し、最終の濃度が10mM HEPES,2mM CaCl
2,0.01% Brij-35となるよう調製した。表2に示すように100μlのMMP溶液を作製したものに、水で200倍希釈したMMP Inhibitor(NNGH、阻害剤)またはコントロールとして水を50μl添加し混合して、コラーゲンディスク(AteloCell ハニカムディスク96(ウシ皮由来I型コラーゲン含有)、高研社製)に処理した。36℃にて7日間インキュベートし、ディスク添加直後、添加から1日後、2日後、3日後、4日後、及び7日後の時点で顕微鏡にて観察した。なお、MMPの終濃度は、MMP-1 10μg/ml(7000U/ml)、MMP-8 10μg/ml(1500U/ml)、MMP-9 12μg/ml(240U/ml)であった。結果を
図2に示す。
【0042】
【0043】
阻害剤に代えて水を添加したコントロールでは、添加2日後にコラーゲンディスクが溶解した。一方で、阻害剤を添加した場合は添加7日後も構造を保っており、MMPの阻害によってコラーゲンディスクの分解が妨げられた。これにより、MMPのはたらきによりコラーゲンディスクが分解されていることが示された。