(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176136
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
A47J27/00 103Z
A47J27/00 109F
A47J27/00 109K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088257
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊木 彰
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】田中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA71
4B055CD63
4B055GB25
4B055GC33
4B055GD05
4B055GD06
(57)【要約】
【課題】白米や玄米のみだけでなく麦を含む被調理物でも、焦げ付きを抑制しながら加熱ムラなく調理でき、長時間の被調理物の保温に対応できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器が、予約時刻を取得し、予約時刻から、調理を開始するまでの待機時間を算出する予約設定手段54と、待機時間が所定の時間以内の場合に、調理を開始するまでの間、被調理物を入れた容器本体の内部を減圧脱気する減圧脱気制御手段53とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予約時刻を取得し、前記予約時刻から、調理を開始するまでの待機時間を算出する予約設定手段と、
前記待機時間が所定の時間以内の場合に、調理を開始するまでの間、被調理物を入れた容器本体の内部を減圧脱気する減圧脱気制御手段とを備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記待機時間が所定の時間以内の場合に、調理を開始するまでの間、前記容器本体内の水を所定の温度に所定の時間だけ加温保持する加熱制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記被調理物を調理後に、前記被調理物を所定の温度に加温保持する加熱制御手段を備え、
前記減圧脱気制御手段が、前記加温保持の間、前記容器本体の内部を減圧脱気することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記減圧脱気制御手段が、前記加温保持の間の減圧脱気度合を、前記容器本体内の温度に応じて可変に調整することを特徴とする請求項3に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麦を含む被調理物を調理可能な加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白米炊飯コースとは別に白米・麦混合炊飯コースを設けて、白米・麦混合炊飯コースの吸水工程における吸水時間を白米炊飯コースにおける吸水時間よりも長くし、米および麦の適切な炊飯を可能とする炊飯器が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ご飯の上に雑穀類を置いて加熱する際に、内鍋上部の温度を内鍋下部の温度よりも高く保持するように加熱手段を制御することで雑穀類の温度を高くし、吸水工程において雑穀類の吸水がよくなるようにする炊飯器が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、タイマ予約の炊飯待機中や、炊飯後の保温中に鍋内を減圧する炊飯器が知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-221159号公報
【特許文献2】特開2010-012138号公報
【特許文献3】特開2007-209481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の炊飯器では、炊飯コースを別に選択する必要があるとともに、水への浸漬時間が長くなると、焦げやすい鍋内底面に食物繊維成分が沈澱し、被調理物が焦げやすくなる要因となるおそれがあった。
【0007】
特許文献2の炊飯器では、最も昇温が遅くなる鍋内中心部および鍋内中心部の下層部の白米の昇温が遅くなって白米の吸水が少なくなり、白米が硬く、膨らみがない状態になり、全体として炊きムラが生じるおそれがあった。
【0008】
特許文献3の炊飯器では、麦ご飯や麦混ぜ玄米、玄米、玄米混ぜご飯、各種の雑穀混ぜご飯など、精白米よりもポリフェノール含有が多い褐変要因のある被調理物の保温可能時間は、12時間程度に制約されていた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、白米や玄米のみだけでなく麦を含む被調理物でも、焦げ付きを抑制しながら加熱ムラなく調理でき、長時間の被調理物の保温に対応できる加熱調理器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる課題を解決するため、予約時刻を取得し、前記予約時刻から、調理を開始するまでの待機時間を算出する予約設定手段と、前記待機時間が所定の時間以内の場合に、調理を開始するまでの間、被調理物を入れた容器本体の内部を減圧脱気する減圧脱気制御手段とを備えることを特徴とする加熱調理器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱調理器によれば、麦を含む被調理物を、白米や玄米のみの場合と併用可能な調理工程で、焦げ付きを抑制しながら加熱ムラなく調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の好適な一実施形態に係る加熱調理器の縦断面概略図である。
【
図2】本発明の好適な一実施形態に係る加熱調理器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の好適な一実施形態に係る加熱調理器の操作パネル部の位置例を示す概略図である。
【
図4】本発明の好適な一実施形態に係る加熱調理器のタイマ予約開始から待機工程、炊飯工程、保温工程における、容器温度の経時的な変化、容器本体内の減圧脱気の有無、および、容器本体の加熱の有無の一例を示すグラフ図である。
【
図5】本発明の好適な一実施形態に係る加熱調理器のタイマ予約開始から待機工程、炊飯工程、保温工程における、容器温度の経時的な変化、容器本体内の減圧脱気の有無、および、容器本体の加熱の有無の別な例を示すグラフ図である。
【
図6】本発明の好適な一実施形態に係る加熱調理器のタイマ予約開始から待機工程、炊飯工程、保温工程における、容器温度の経時的な変化、容器本体内の減圧脱気の有無、および、容器本体の加熱の有無の別な例を示すグラフ図である。
【
図7】本発明の好適な一実施形態に係る加熱調理器の保温工程における、容器温度の経時的な変化、容器本体内の減圧脱気度合と減圧脱気の有無、および、容器本体の加熱の有無の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の加熱調理器の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、または、発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。そのような変形や変更もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0014】
「麦ご飯」は、精白米に押麦や粒麦を混ぜて炊いたご飯であり、市販の粒麦にはもち性の大麦もある。米と同じように、「うるち性」の大麦と「もち性」の大麦があり、もち性の大麦を「もち麦」と呼び、うるち性の大麦を「うるち麦」と呼ぶ。また白米と混ぜずに大麦だけで炊く場合もある。
【0015】
大麦は、白米に比べて食物繊維が多く、ミネラルなどの栄養が豊富で、特に水溶性食物繊維β―グルカンを多く含み、食後の血糖値上昇を穏やかにしたり、悪玉コレステロールを正常にしたり、腸内環境を整えたりといた効果が期待される。
【0016】
大麦は、加工して市販されており、押麦はうるち麦をローラで押しつぶして平たく加工し、平たくすることで白米と同じ時間で炊くことを可能にしており、白米に混ぜて「白米コース」で炊飯を行うのが一般的である。一方、もち麦など粒状の粒麦を混ぜて炊くことも考慮した麦ご飯専用の炊飯コースを搭載する炊飯器がある。
【0017】
大麦は、白米(うるち米)よりも多く水を吸うので、炊飯後の重量増加は白米が約2.3倍であるのに対し、大麦は約2.8倍である。水加減は重量比で大麦1:水2の割合で、大麦100gの場合は水200g(ml)が加水量とされている。
【0018】
大麦を白米や玄米と混ぜて炊く場合は、容器に白米または玄米を入れ、所定の水加減を行った後に、大麦と所定の水を加える。1.5割麦ごはんの場合は、白米2合の水加減に大麦50gと水100ml、3割麦ごはんの場合は、白米2合の水加減に大麦100gと水200ml、5割麦ごはんの場合は、白米2合の水加減に大麦200gと水400ml、玄米に3割混ぜる場合は、玄米2合の水加減に大麦100gと水200ml、大麦だけで炊く場合は、大麦150gと水300mlとなる。
【0019】
大麦の初期吸水時間は、最低でも30分といわれ、夏場でも1時間程度、冬場は2時間以上が好ましいとされる。押麦11.6%、ローラで押しつぶさない粒麦12.3%、コシヒカリ13.2%の浸漬前の含水率は、水に2時間浸漬した後に、押麦73.2%(6.3倍)、粒麦78.2%(6.4倍)、コシヒカリ22.2%(1.7倍)の含水率に増加し、2時間浸漬した飽和吸水状態では、白米に比べて大麦の吸水量は多い一方で、押麦と粒麦の差異はわずかであった。
【0020】
しかしながら、押しつぶさない粒麦は、押麦に比べて、飽和吸水までの浸漬初期に吸水しにくいので、吸水効果を促進する手段を設けることが有効である。なお、吸水を促進するための加温について、押麦は加熱圧ぺん処理により酵素が失活しているが、多孔質になるため吸水特性が良好になり、白米と混ぜて炊飯することで白米の酵素の影響を受けやすくなるので、押麦、粒麦(もち麦)とも、大麦や白米(うるち米)に含まれる酵素(アミラーゼ、グルコシターゼ)活性を促し、甘みの生成を促す酵素活性促進による食味の向上が可能となる。
【0021】
図1および
図2は、本発明をオーブンレンジに適用した一実施形態を示している。先ず、
図1に基づいて、本実施形態におけるオーブンレンジの全体構成を説明すると、1は上面を開口した本体、2は本体1の開口上面を覆う開閉可能な蓋体であり、これらの本体1と蓋体2とによりオーブンレンジの外観が構成される。本体1は上面を開口した容器収容部3を有し、蓋体2を開けたときに、被調理物である水や米、麦などを収容する容器としての有底筒状の容器本体13aが着脱自在に収容される構成となっている。そして本体1に容器本体13aを入れて蓋体2を閉じると、蓋体2の下面部に装着された内蓋13bが容器本体13aの開口上面を塞ぐように構成される。
【0022】
蓋体2の上部には、表示や報知や操作のために、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6と、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする、例えば表示手段6の表面に設けられる操作手段7としてのタッチセンサとが配設される。表示手段6の裏側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板8が配置される。また、本体1には、家庭用のコンセントに挿抜が可能な電源プラグが設けられた電源コード(図示せず)が配設される。
【0023】
容器収容部3は、加熱調理すべき被調理物を収容した容器本体13aを内部に収容する調理室12を形成する。調理室12の内面を形成する周壁は、底壁12bと、前壁12cと、後壁12dとからなり、蓋体2下面部に内蓋12bの温度を検出する温度検出手段としての、サーミスタや湿度センサで構成される蓋温度センサ14が設けられる。調理室12の底壁12bには容器本体13aを載置するマイクロ波透過部24が設けられる。マイクロ波透過部24は、マイクロ波を透過するガラスやセラミックなどからなる。
【0024】
本実施形態のマイクロ波加熱手段は調理室12のマイクロ波透過部24の下方から調理室12の内部空間に向けてマイクロ波を放射する構成を採用しており、本体1の側部空間18の下部に、調理室12内に電波であるマイクロ波を供給するためのマイクロ波発生手段としてのマグネトロン19が設けられ、調理室12の底壁12bとマイクロ波透過部24との間に導波管21が設けられる。マイクロ波発生装置は、マグネトロン19やこのマグネトロン19を駆動するマグネトロン駆動装置37(
図2参照)、導波管21の他に、マイクロ波透過部24の下方に設けられる回転アンテナ28と、この回転アンテナ28を回転させるアンテナ回転モータ29と、により主に構成される。また27は、導波管21の一部および金属板材で構成され、回転アンテナ28を収納している凹状のアンテナ収納部であり、このアンテナ収納部27の上面開口をマイクロ波透過部24で覆っている。
【0025】
回転アンテナ28は、マグネトロン19で発振されて導波管21により回転アンテナ28の直下に導かれたマイクロ波を撹拌して、このマイクロ波をマイクロ波透過部24に載置された容器本体13aに万遍なく照射するものであり、マイクロ波透過部24に対向して、回転アンテナ28の全体がマイクロ波透過部24と平行に配置される。
【0026】
30は、オーブン庫11の下部に設けられ、容器本体13aの下部の表面温度を検知する底温度センサである。この底温度センサ30は、容器本体13aに非接触の赤外線センサなどで構成され、容器本体13a内の温度を検出する容器温度検出手段として作用している。
【0027】
41は、本体1の内部において、調理室12の室外側方に具備されるオーブン加熱用の熱風ヒータユニットである。この熱風ヒータユニット41は、被調理物を収容した容器本体13aの加熱手段として設けられており、後壁12dに取付けられる凸状のケーシング42と、空気を加熱する熱風ヒータ43と、調理室12内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン44と、熱風ファン44を所定方向に回転させる電動の熱風モータ45と、により概ね構成される。後壁12dとケーシング42との間の内部空間として、調理室12の室外側方に形成された加熱室46には、熱風ヒータ43と熱風ファン44がそれぞれ配設される。
【0028】
熱風ファン44は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ43は熱風ファン44の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ43は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。後壁12dは、その中央に吸込み口47を備えており、吸込み口47の周囲には複数の熱風吹出し口48を備えている。これらの吸込み口47や熱風吹出し口48は、調理室12と加熱室46との間を連通する通風部として機能するものである。
【0029】
そして本実施形態では、熱風モータ45への通電に伴い熱風ファン44が回転駆動すると、調理室12の内部から吸込み口47を通して吸引された空気が、熱風ファン44の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ43により加熱され、熱風が熱風吹出し口48を通過して、調理室12内に供給される。これにより、調理室12の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室12内の被調理物や容器本体13aを熱風コンベクション加熱でオーブン加熱する構成となっている。
【0030】
その他、蓋体2には蓋ヒータとしての庫内天面ヒータ22が配設され、アンテナ収納部27内の回転アンテナ28と干渉しない外周付近に、シーズヒータなどで構成される下ヒータとしての庫内底面ヒータ23が配設される。これらの庫内天面ヒータ22および庫内底面ヒータ23から輻射加熱することにより被調理物や容器本体13aをグリル加熱する構成となっている。庫内天面ヒータ22により、後述する内蓋13bを加熱し、容器本体13a内から発生する蒸気が内蓋13b内面へ結露することを防止する。
【0031】
容器本体13aは、有底筒状を有し、容器本体13aの上面開口部を覆う内蓋13bとで容器を構成し、オーブン加熱時の調理室12の庫内温度である250℃以上で使用可能にするため、例えば400℃以上、好ましくは500℃以上の熱分解温度、250℃以上、好ましくは350℃以上の熱変形温度、および250℃以上、好ましくは350℃以上の、1,000時間の使用に耐える耐熱老化性を確保する材料で構成されており、一般的にマイクロ波加熱用の容器に使用されるプラスチック樹脂、例えば融点が略170℃で熱変形温度が100~140℃のポリプロピレン、融点が略300℃で昇温により軟化してしまうシリコーンゴム、融点が略260℃で熱変形温度が略200℃のPET(ポリエチレンテレフタレート)、熱硬化性で熱変形温度が110~130℃のメラニン樹脂などよりも高温に耐える材料で構成される。また被調理物を容器本体13aに収容したときに容器本体13a全体が重くなってしまうと、この容器本体13aの取り扱いに難を生じるため、容器本体13aを軽量化するために、1.7g/cm3以下、好ましくは1.5g/cm3の比重を確保する材料で構成され、比重が2.0g/cm3以上であるセラミックス製、陶器、ガラス製の容器よりも軽量化している。そしてオーブン加熱時に容器本体13aに加えられた熱が、容器本体13aに収容された被調理物に効率的に移動可能にし、熱が容器の一部に集中してしまう局部加熱も防止するため、容器本体13aは、例えば0.4W/mK以上、好ましくは0.45W/mK以上の熱伝導率を確保する材料で構成され、熱伝導率が0.1~1.5W/mKのポリプロピレン、熱伝導率が0.2~0.33W/mKのPETなどのプラスチック樹脂よりも熱伝導性が良好な材料を使用している。またレンジ加熱時にマイクロ波が容器を効果的に透過し、容器本体13aに収容された被調理物を効率的に加熱するため、容器本体13aは、例えば水の80に対して10以下、好ましくは5.0以下の比誘電率を有する材料で構成され、例えば比誘電率が59.5のアルミニウムや17.5の鉄などの金属材料よりも比誘電率が小さく、一般にマイクロ波加熱用容器に使用される、例えば比誘電率が8.0~11のアルミナセラミックス磁器や、3.7~10のガラス、2.0~2.3のポリプロピレンなどと比誘電率が同等程度の材料を使用している。したがって本実施形態の容器本体13aでは、これらの特性を満たす材料として合成樹脂材料であるLCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)樹脂を採用して構成しており、そのため容器本体13aでは、一般的なマイクロ波加熱用容器と同程度にマイクロ波を透過するため、容器本体13a内に収納した被調理物の主に水分をマイクロ波加熱できるようにし、融点を考慮すれば短時間では400℃以下の耐熱性、熱変形を考慮した長時間であれば250℃以下の耐熱性を有するため、調理室12において容器本体13aの外側からのオーブン加熱もできるようにしている。
【0032】
容器本体13aは、調理室12内に吊設状態で収容されることで、容器本体13a下面とマイクロ波透過部24との間に隙間が形成され、調理室12内を熱風循環加熱する熱風が隙間を通り、容器本体13aの全面を加熱することができる。また蓋体2と、内蓋としての金属製の内蓋13bとが接続されて一体になるように形成され、蓋体2に図示しない蒸気通路および蒸気口63が設けられ、内蓋13bと蒸気通路および蒸気口63とが連通している。そして蓋体2を閉めることにより、内蓋13bが容器本体13aの開口部を覆うように構成される。
【0033】
図2は、本実施形態のオーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、31はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段31は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶媒体としてのメモリなどの記憶手段32や、時刻や調理に関する時間など様々な時間を計時するタイマなどの計時手段33や、入出力デバイスなどを備えている。
【0034】
制御手段31の入力ポートには、前述した操作手段7や、蓋温度センサ14、底温度センサ30の他に、蓋体2の開閉状態を検出する蓋体開閉検出手段34と、熱風ファン44の回転速度を検出する熱風モータ回転検出手段35と、マイクロ波発生装置を構成する回転アンテナ28の原点位置を検出するアンテナ位置検出手段36とが、それぞれ電気的に接続される。また制御手段31の出力ポートには、前述した表示手段6やマグネトロン駆動装置37の他に、調理室12内にマイクロ波を放射する回転アンテナ28を回転駆動させるアンテナ回転モータ29を動作させるための回転アンテナ駆動手段38と、オーブン加熱用の熱風ヒータ43や、グリル加熱用の庫内天面ヒータ22および庫内底面ヒータ23をそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段39と、熱風モータ45を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段40と、が、それぞれ電気的に接続される。
【0035】
制御手段31は、操作手段7からの操作信号と、蓋温度センサ14や、蓋体開閉検出手段34や、熱風モータ回転検出手段35や、アンテナ位置検出手段36からの各検出信号を受けて、計時手段33からの計時に基づく所定のタイミングで、マグネトロン駆動装置37や、回転アンテナ駆動手段38や、ヒータ駆動手段39や、熱風モータ駆動手段40に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体32に記憶したプログラムを、制御手段31が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段31を加熱制御手段51と、表示制御部52と、減圧脱気制御手段53と、予約設定手段54として機能させるプログラムを備えている。
【0036】
加熱制御手段51は、主に被調理物の加熱調理に係る各部の動作を制御するもので、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、蓋体開閉検出手段82からの検出信号により、蓋体2が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マグネトロン駆動装置37や、回転アンテナ駆動手段38や、ヒータ駆動手段39や、熱風モータ駆動手段40に制御信号を送出して、被調理物に対する種々の加熱調理を制御する。またオーブンレンジで加熱調理を行なうことが可能な全ての調理メニューの調理情報が記憶手段32に記憶保持されており、加熱調理制御部51は、記憶手段32に記憶された調理メニューの中から選択された一つの調理メニューについて、操作手段7から調理開始を指示する操作が行われると、その選択された調理メニューの調理情報に従う所定の手順で、被調理物を加熱調理する構成となっている。調理メニューの一例は後述する。
【0037】
表示制御部52は、加熱制御手段51と連携して、表示手段6の表示に係る動作を制御するものである。表示制御部52の制御対象となる表示手段6は、液晶パネルや照明灯により構成されるが、それ以外の表示器を用いてもよい。
【0038】
図3は表示手段6の平面図である。同図を参照して説明すると、表示手段6において、各表示要素が示されており、現在時刻を表示する「時計」表示の表示要素72-1と、予約時刻としての炊上り時刻を表示する「炊上り」表示の表示要素72-2と、「時計」キーの表示要素72-3と、「選択」キーの表示要素72-4と、調理メニューとしての「朝炊く」キーの表示要素72-5と、調理メニューとしての「夕炊く」キーの表示要素72-6と、調理メニューとしての「直炊く」キーの表示要素72-7と、「切」キーの表示要素72-8、「保温」キーの表示要素72-9と、「炊飯」キーの表示要素72-10とが表示されている。また、表示手段6の上方には、予約中であることを点灯などにより示す予約表示要素72-11と、炊飯中であることを点灯などにより示す炊飯表示要素72-12と、保温中であることを点灯などにより示す保温表示要素72-13とが表示されている。
【0039】
操作手段7は、導電性ポリマーによる透明電極部と操作パネルPCに接続する接点部との間をパターン配線で繋いだ構成要素が、タッチキーとして複数配設されるものであり、操作手段7の下の表示手段6に表示される複数の表示要素の何れかに指先のタッチ操作を行なうことで、その表示要素の上に配設され、当該表示要素に対応したタッチキーがタッチ操作されて、この表示要素が選択される構成となっている。
【0040】
「朝炊く」キーの表示要素72-5の上に配設されたタッチキーがタッチ操作されると、表示制御部52がこのタッチキーからの操作信号を受け付けて、記憶手段32に記憶された炊上り時刻(例えば6:00)が、「炊上り」表示の表示要素72-2に表示される。炊上り時刻は炊飯工程が完了する時刻であり、炊飯工程が完了すると、保温工程へ移行する。
【0041】
「夕炊く」キーの表示要素72-6の上に配設されたタッチキーがタッチ操作されると、表示制御部52がこのタッチキーからの操作信号を受け付けて、記憶手段32に記憶された炊上り時刻(例えば18:00)が、「炊上り」表示の表示要素72-2に表示される。
【0042】
「直炊く」キーの表示要素72-7の上に配設されたタッチキーがタッチ操作されると、表示制御部52がこのタッチキーからの操作信号を受け付けて、記憶手段32に記憶された炊上り時刻(例えば12:00)が、「炊上り」表示の表示要素72-2に表示される。
【0043】
炊上り時刻は、「選択」キーの表示要素72-4の操作に織り所望の時刻に調整可能であり、「選択」キーの表示要素72-4の上に配設されたタッチキーがタッチ操作されると、表示制御部52がこのタッチキーからの操作信号を受け付けて、「炊上り」表示の表示要素72-2に表示される炊上り時刻を変更する。なお、現在時刻に対し、最短炊飯時間(例えば30分)より短い炊上り時刻設定の場合は、最短炊飯時間を確保したときの炊上り時刻を表示し、表示を点滅させるなどして報知する。
【0044】
「炊飯」キーの表示要素72-10は加熱調理を開始する際に操作されるもので、「炊飯」キーの表示要素72-10の上に配設されたタッチキーがタッチ操作されると、表示制御部52がこのタッチキーからの操作信号を受け付けて、加熱制御手段51が調理室12に収容された容器本体13a内の被調理物に対する調理開始の制御をする構成となっている。
【0045】
「切」キーの表示要素72-8は加熱調理をやめる際に操作されるもので、「切」キーの表示要素72-8の上に配設されたタッチキーがタッチ操作されると、表示制御部52がこのタッチキーからの操作信号を受け付けて、加熱制御手段51が調理室12に収容された容器本体13a内の被調理物に対する加熱調理を中止して切状態にする制御を行なう。
【0046】
「保温」キーの表示要素72-9は調理後の被調理物を保温する際に操作されるもので、「保温」キーの表示要素72-9の上に配設されたタッチキーがタッチ操作されると、表示制御部52がこのタッチキーからの操作信号を受け付けて、加熱制御手段51が調理室12に収容された容器本体13a内の被調理物を保温する制御を行なう。
【0047】
本実施形態の加熱調理器では、容器本体13aの内部の減圧脱気を制御する減圧脱気制御手段53を備えて構成される。
図1を参照して本実施形態のオーブンレンジの減圧脱気手段を説明すると、65は、蓋体2を閉じた状態で、容器本体13aの内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧ポンプである。また66は、減圧ポンプ65と容器本体13aの内部とを連通する図示しない減圧経路を開閉する減圧調整弁であり、67は、蒸気通路を開閉する加圧調整弁である。減圧ポンプ65は、容器本体13aを調理室12に収容し、蓋体2を閉じた後に加圧調整弁67が蒸気通路を塞ぎ、減圧調整弁66が開いた状態で、密閉した容器本体13aの内部圧力を低下させる。また容器本体13a内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプ65の動作を停止し、減圧調整弁66が閉じる一方で加圧調整弁67が開いて蒸気通路を開放する。つまり減圧脱気制御手段53は減圧脱気手段としての減圧ポンプ65、減圧調整弁66および加圧調整弁67を制御し、これらは容器本体13a内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。また加圧調整弁67は、食材や調味液の水分が沸騰したときに、蒸気通路を閉塞して蒸気口63からの蒸気の放出を制限して、容器本体13a内部を例えば105℃~120℃の所定の加圧水蒸気状態に保持可能にするように構成される。
【0048】
本実施形態の加熱調理器では、加圧調整弁67に圧力センサ74をさらに備えて構成され、後述する減圧脱気度合を所定の値に可変可能にしている。
【0049】
予約設定手段54は、ユーザの操作による上記の炊上り時刻の入力を取得して、炊上り時刻から、炊飯工程(炊飯容器加熱開始からむらし容器加熱終了まで)の時間を差し引くことで調理を開始するまでの待機時間T(
図4参照)を算出し、記憶手段32に記憶させる。炊飯工程の時間は例えば45分であり、炊上り時刻の45分前になると調理を開始し、炊上り時刻に調理が完了し、保温工程へ移行する。
【0050】
次に
図4~
図7を参照して、本実施形態において上記構成のオーブンレンジについて、その作用を説明する。
図4は、本実施形態のオーブンレンジのタイマ予約開始から待機工程、炊飯工程、保温工程における、容器温度の経時的な変化、容器本体13a内の減圧脱気の有無、および、容器本体13aの加熱の有無を示すグラフ図である。
【0051】
まず、容器本体13a内に水分を含む被調理物として例えば白米、大麦および水を入れ、容器本体13aを調理室12に入れて吊設状態で収納保持し、蓋体2を閉める。それと前後して、電源コードの電源プラグをコンセントに差し込んで本体1を通電させ、操作手段7により炊上り時刻および調理メニューを選択操作した後に、被調理物の加熱調理開始を指示すると、制御手段31の記憶手段32に組み込まれた制御プログラムに従って、選択した炊上り時刻および調理メニューに対応して生成された制御信号が、制御手段31の出力ポートから所定のタイミングで出力され、被調理物が加熱調理される。
【0052】
予約設定手段54は、上記で選択された炊上り時刻から、調理を開始するまでの待機時間Tを算出する。
【0053】
ここで、算出された待機時間Tが例えば2時間以内である場合、白米や大麦が飽和吸水量に至らず浸漬時間が不足する可能性があるので、制御手段31の減圧脱気制御手段53は、減圧脱気手段としての減圧ポンプ65、減圧調整弁66および加圧調整弁67を制御し、容器本体13aの内部を例えば0.6atm~0.7atmに減圧することで脱気し、白米と大麦の吸水を促進させる。容器本体13a内の水面に接する上部空間を減圧して脱気すると、ヘンリーの法則により、水に溶けていた気体が抜け、水の純度が高くなり、白米や大麦の吸水効率が良くなる。また、減圧により水面に加わる空気の圧力が低下し、水の沸点が下がって水分子が活発に動くようになり、白米や大麦の吸水性が良くなる。具体的には、減圧脱気制御手段53は、加圧調整弁67で蒸気通路を閉塞し、この状態で、減圧調整弁66を開いて減圧経路を開放すると共に、減圧ポンプ65を連続動作させ、密閉した容器本体13aの内部の空気を減圧ポンプ65で抜き取る真空引きを行なう。その後、減圧脱気制御手段53は、容器本体13a内部の圧力が一定値以下になる減圧状態で維持されるように減圧ポンプ29を制御する。こうして、待機時間Tの全期間に亘って、容器本体13a内部を減圧状態に保ち、容器本体13a内の米と大麦の吸水を効果的に促進させている。待機時間Tが例えば2時間よりも長い場合は、減圧脱気を行わなくてもよい。
【0054】
容器本体13a内の米と大麦の吸水を効果的に促進させる別な例として、
図5に示すように、待機時間Tが例えば2時間以内である場合に、加熱制御手段51が、調理を開始するまでの間、容器本体13a内の水を所定の温度に所定の時間だけ加温保持するひたし炊き加熱を行うようにしてもよい。この場合、加熱制御手段51は、底温度センサ30からの検出信号を受けて、マグネトロン駆動装置33や回転アンテナ駆動装置38に制御信号を送出してレンジ加熱を行ない、所定の時間、容器本体13a内の水温を例えば40℃~60℃にまで昇温させて米と大麦の吸水を促進させる。40℃~60℃の高水温で1時間を超えるような長時間保持すると、バクテリアの繁殖や乳酸の増殖のおそれがあるので、例えば調理を開始する1時間前程度の待機工程中に水を加温する構成とすることが好ましい。待機時間Tが例えば2時間よりも長い場合は、加温保持を行わなくてもよい。
【0055】
また、
図6に示すように、待機時間Tが例えば2時間以内である場合に、上記の減圧脱気とひたし炊き加熱を併用するようにしてもよい。
【0056】
待機時間Tが経過すると、次の炊飯容器加熱工程に移行する。被調理物の沸騰検知を行なうまでの加熱で、加熱制御手段51は、底温度センサ30からの検出信号を受けて、マグネトロン駆動装置33や回転アンテナ駆動装置38に制御信号を送出して、マグネトロン19を連続して駆動する制御を行なうことにより、容器本体13a内の被調理物をレンジ加熱で加熱する炊飯容器加熱を行い、被調理物を、例えば10分程度の短時間で例えば100℃など沸騰の温度まで上昇させる。
【0057】
被調理物の水温が70℃付近になると被調理物から蒸気が発生し始め、蓋温度センサ14が内蓋13bを介して当該蒸気の温度を検知する。その後、加熱制御手段51は、内蓋13bを介した被調理物からの蒸気の温度が、例えば90℃以上になったことを蓋温度センサ14からの検知信号により検出すると、この沸騰を検知した時間を記憶手段32に記憶させると共に、加圧調整弁67を開いて蒸気通路62を開放して容器本体13a内を外気と同じ圧力に戻す。その後、加熱制御手段51が加圧調整弁67を短時間で閉じて蒸気通路62を閉塞させ、容器本体13aの内部を再び密閉した状態にすると、引き続き、容器本体13a内部で被調理物を強く加熱しているため容器本体13a内部で加圧され、容器本体13a内部を例えば105℃~120℃の所定の加圧水蒸気状態に保持する。これにより、加圧状態における米の糊化最適温度である105℃(1.2atmの場合)で被調理物を沸騰させることで、米の硬さと粘りのバランスを確保し、芯まで一気に米を糊化させることができる。加熱制御手段51が蓋温度センサ14からの検知信号により沸騰を検出すると、次のむらし容器加熱工程に移行する。
【0058】
むらし容器加熱工程では水の比熱が小さくなるため、加熱制御手段51は、例えば炊飯容器加熱工程における加熱量に対して半分に減少させた加熱量を目安に加熱量を少なくし、主にオーブン加熱で被調理物を、例えば3~7分程度沸騰状態を継続させるように熱風ヒータ43を通電して熱風ファン44を回転駆動する制御を行ない、容器本体13a内部の被調理物の沸騰を継続させるむらし容器加熱を行う。また加熱制御手段51は、蒸気通路62を閉塞して蒸気口63からの蒸気の放出を制限して、容器本体13a内部を例えば105℃~120℃の所定の加圧水蒸気状態に保持する。そして加熱制御手段51は、庫内天面ヒータ22を通電させる制御を行ない、内蓋13bを加熱して容器本体13a内から発生する蒸気が内蓋13bの内面に付着して結露することを防止している。またむらし容器加熱工程に移行したら、加熱制御手段51は容器本体13a内を常圧と大気圧よりも高い圧力との間に繰り返し変化させるために、加圧調整弁67で蒸気通路62を周期的に開閉している。
【0059】
むらし容器加熱工程で、加熱制御手段51は、むらし容器加熱工程で容器本体13a内部の水が無くなり、底温度センサ30からの容器本体13a内の温度検知信号により、例えば所定のドライアップ温度の120℃に達したことを検出することで、底温度センサ30の検知温度に基づき被調理物の水が無くなったことを検出し、オーブン加熱を停止させる。このとき加熱制御手段51は、内蓋13bを引き続き加熱するように庫内天面ヒータ22を制御している。
【0060】
むらし容器加熱工程が終了すると、炊飯工程が終了し、次の保温工程に移行する。保温工程では、加熱制御手段51は、オーブン加熱による保温容器加熱を行ない、被調理物の温度が例えば60℃~80℃の所定の温度を保持するように熱風ヒータ43を通電して熱風ファン44を回転駆動する制御を行なう。60℃以上は、被調理物の腐敗を防止する温度であり、腐敗菌や食中毒菌の増殖を防止し、またご飯(澱粉)の老化を抑え、さらに保温中のご飯を美味しく食べる温度として設定される。80℃以下は、メイラード反応による褐変が80℃を超えると加速するので、メイラード反応の進行を抑制する温度として設定される。より好ましくは、被調理物の温度を例えば70℃~76℃程度に保持し、保温中の腐敗防止と褐変の抑制を行う。
【0061】
図4~
図6に示すように、減圧脱気制御手段53は、保温工程に移行した後、容器本体13a内の温度が例えば80℃以下になったら、容器本体13aの内部を減圧脱気する。減圧脱気制御手段53は、底温度センサ30からの容器本体13a内の温度検知信号が所定の値(例えば80℃を示す値)になると、加圧調整弁67で蒸気通路を閉塞し、この状態で、減圧調整弁66を開いて減圧経路を開放すると共に、減圧ポンプ65を連続動作させ、密閉した容器本体13aの内部の空気を減圧ポンプ65で抜き取る真空引きを行なう。その後、減圧脱気制御手段53は、容器本体13a内部の圧力が一定値以下になる減圧状態で維持されるように減圧ポンプ29を制御する。こうして、容器本体13a内部を減圧状態に保ち、容器本体13a内の被調理物の長時間の保温を可能にする。
【0062】
例えば0.4atm以下に減圧した場合、沸点は約76℃となり、保温中に容器本体13a内の水分が沸騰してしまうので、保温温度で沸騰しない減圧脱気度合に調整する。ここで、減圧脱気度合は容器本体13a内の圧力値を示すものである。例えば、保温温度の上限を80℃に設定した場合は、例えば0.5atm(沸点約82℃)が減圧脱気度合の下限とし、実際には減圧脱気度合を例えば0.6atm(沸点約86℃)~0.7atm(沸点約90℃)程度に調整する。
【0063】
容器本体13a内を脱気して酸素量を低減するので、麦ご飯のみならず、麦混ぜ玄米、玄米、玄米混ぜご飯、各種の雑穀混ぜご飯など、精白米よりもポリフェノール含有が多い被調理物を保温したときの、ポリフェノールの酸化による褐変と嫌気臭を抑制することができる。これにより、従来の保温可能時間は12時間程度であったが、12時間以上の保温が可能になる。また、炊き込みご飯の具材や、保温機能を有する電気鍋などでの煮込み料理の食材として使用される、ポリフェノール含有が多い赤ワイン、トマト、牛蒡などを使用した場合に、保温中のポリフェノールの酸化による褐変と嫌気臭を抑制し、風味の低下を抑制することができる。
【0064】
例えば保温可能時間を18時間とした場合、朝食用に朝6:00に炊き上げると、深夜0:00までの保温が可能となり、朝炊いた麦ご飯を保温しておけば、昼食、夕食まで食べることが可能で、帰宅が遅い場合や、また夜食にも食べることも可能になる。また、夕食用に夕方7:00に炊き上げた場合は、翌日の昼1:00まで保温が可能なので、夕方炊いた麦ご飯を保温しておけば、朝食、昼食まで食べることが可能になる。
【0065】
保温可能時間は、減圧脱気度合に応じて調整が可能である。例えば、減圧脱気度合が0.6atmの場合は40時間まで保温可能、減圧脱気度合が0.7atmの場合は24時間まで保温可能などとすることができる。減圧脱気度合が大きければすなわち脱気量が多いことになり、ポリフェノールの酸化を抑制する効果が高くなる。
【0066】
保温工程中の減圧脱気は、減圧脱気制御手段53が、加温保持の間の減圧脱気度合を、容器本体13a内の温度に応じて可変に調整するようにしてもよい。減圧脱気制御手段53は、底温度センサ30からの容器本体13a内の温度検知信号に応じて、加圧調整弁67で蒸気通路を閉塞し、この状態で、減圧調整弁66を開いて減圧経路を開放すると共に、減圧ポンプ65を連続動作させ、密閉した容器本体13aの内部の空気を減圧ポンプ65で抜き取る真空引きを行なう。その後、減圧脱気制御手段53は、容器本体13a内部の圧力が一定値以下になる減圧状態で維持されるように減圧ポンプ29を制御する。減圧脱気度合は、容器本体13a内の温度の降下にしたがって、容器本体13a内の温度よりも沸点が高くなるように調整される。容器本体13a内の温度と減圧脱気度合の対応の一例として、例えば
図7に示すように、95℃になったら0.9atm(沸点約97℃)、90℃になったら0.8atm(沸点約94℃)、85℃になったら0.7atm(沸点約90℃)、80℃になったら0.6atm(沸点約86℃)になるように調整される。
【0067】
保温工程開始後に、容器本体13a内の温度が約100℃から所定の保温温度(
図7では73℃)に降下するまでの時間Hは、保温対象の被調理物の量が多ければ長く(例えば2時間程度)、保温対象の被調理物の量が少なければ早く(例えば1時間程度)、環境温度が高ければ長く(35℃で保温対象の被調理物の量が多い場合、例えば3時間程度)、環境温度が低ければ早く(5℃で保温対象の被調理物の量が少ない場合、例えば0.5時間程度)なるなど、保温対象の被調理物の量や環境温度、蓋開閉の温度、電圧の高低などにより、変動する。これにより、メイラード反応の度合やポリフェノールの酸化の度合も変わるが、加温保持の間の減圧脱気度合を、容器本体13a内の温度に応じて可変に調整することで、被調理物の保温による食味の低下を抑制することができる。すなわち、時間Hが長くなればそれに応じて温度降下期間中の脱気保持期間が長くなるので、時間Hに変動があっても被調理物の保温による食味の低下幅を少なくすることができる。
【0068】
以上のように本実施形態の加熱調理器では、予約時刻を取得し、予約時刻から、調理を開始するまでの待機時間Tを算出する予約設定手段54と、待機時間Tが所定の時間以内の場合に、調理を開始するまでの間、被調理物を入れた容器本体13aの内部を減圧脱気する減圧脱気制御手段53とを備える。
【0069】
このような構成にすることにより、麦を含む被調理物を、白米や玄米のみの場合と併用可能な調理工程で、加熱ムラなく調理することができる。また、麦が米よりも軽く、麦が上層、米が下層となり吸水量が少ない場合は米が焦げるおそれがあるが、吸水量が多ければ麦と米が2層に分かれ難くなると共に吸水によって焦げ付きが抑制される。また、従来は待機時間T中に容器本体13aの内部を減圧脱気していたが、待機時間Tが短いときに限定的に減圧脱気する構成なので、減圧脱気手段の機械的消耗や摩耗を少なくすることができる。また、大麦は吸水量が多く、白米だけの場合に比べてか水量が多くなり、沸騰時に未吸収の水分が白米炊飯時よりも多く、蒸気口からの吹きこぼれが生じやすくなるが、炊飯前に大麦に飽和吸水量まで十分に吸水されていれば、吹きこぼれを抑制することができる。
【0070】
また本実施形態の加熱調理器では、待機時間Tが所定の時間以内の場合に、調理を開始するまでの間、容器本体13a内の水を所定の温度に所定の時間だけ加温保持する加熱制御手段51を備える。
【0071】
このような構成にすることにより、水分子の動きが活性化し、水の粘度が低下し、また水に含まれる気体が脱気し、白米と大麦の吸水が促進され、押麦、粒状のもち麦、うるち麦のいずれの大麦を白米に混ぜて炊く場合でも、麦ご飯専用コースを必要とせず、白米コースのままで麦ご飯炊くことが可能になる。また、大麦の吸水を促進するとともに、酵素活性温度帯の温度に所定の時間以上浸漬することで、還元糖量を増加させて甘みを引出し、かつ初期吸水ムラに起因する麦ご飯の炊きムラを少なくすることができる。
【0072】
また本実施形態の加熱調理器では、被調理物を調理後に、被調理物を所定の温度に加温保持する加熱制御手段51を備え、減圧脱気制御手段53が、加温保持の間、容器本体13aの内部を減圧脱気する。
【0073】
このような構成にすることにより、容器本体13a内を脱気して酸素量を低減するので、麦ご飯のみならず、麦混ぜ玄米、玄米、玄米混ぜご飯、各種の雑穀混ぜご飯など、精白米よりもポリフェノール含有が多い被調理物を保温したときの、ポリフェノールの酸化による褐変と嫌気臭を抑制することができる。これにより、従来の保温可能時間は12時間程度であったが、12時間以上の保温が可能になる。また、炊き込みご飯の具材や、保温機能を有する電気鍋などでの煮込み料理の食材として使用される、ポリフェノール含有が多い赤ワイン、トマト、牛蒡などを使用した場合に、保温中のポリフェノールの酸化による褐変と嫌気臭を抑制し、風味の低下を抑制することができる。
【0074】
また本実施形態の加熱調理器では、減圧脱気制御手段53が、加温保持の間の減圧脱気度合を、容器本体13a内の温度に応じて可変に調整する。
【0075】
このような構成にすることにより、保温工程開始後に、容器本体13a内の温度が約100℃から所定の保温温度に降下するまでの時間Hが長くなればそれに応じて温度降下期間中の脱気保持期間を長くすることで、時間Hに変動があっても被調理物の保温による食味の低下幅を少なくすることができる。
【0076】
以上、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、上記で述べた容器本体13aの内部の圧力値や温度、各種の時間などは例示したものであり、上記したものに限定されない。
【符号の説明】
【0077】
1 本体
13 容器
51 加熱制御手段
53 減圧脱気制御手段
54 予約設定手段
T 待機時間