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特開2023-176148耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176148
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/52 20230101AFI20231206BHJP
   G21C 17/003 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H04N5/225 430
G21C17/003
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088275
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 真司
(72)【発明者】
【氏名】増永 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】桑名 諒
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
【テーマコード(参考)】
2G075
5C122
【Fターム(参考)】
2G075CA04
2G075CA11
2G075FA13
5C122DA30
5C122EA02
5C122GE11
5C122HA81
(57)【要約】
【課題】装置寿命の短縮やイメージセンサの暗電流増加を抑制しつつ、熱処理による耐放射線性向上とカメラヘッド部の小型・軽量化を両立する耐放射線カメラを提供する。
【解決手段】画像を撮像するカメラヘッド部1と、映像信号を信号処理するカメラボディ部2とを有し、カメラヘッド部は、イメージセンサ3とデジタル回路4と熱処理機構5とを備え、イメージセンサは、映像を検出してデジタル回路に配信し、デジタル回路は、イメージセンサからの撮像信号を処理して、カメラボディ部に送信し、デジタル回路とイメージセンサとは熱的に分離され、熱処理機構は、ヒータ6と特性劣化検出器8とを備え、特性劣化検出器は、デジタル回路の電気特性劣化を検出し、ヒータは、特性劣化検出器が検出するデジタル回路の電気特性劣化に応じて、デジタル回路を加熱して熱処理する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐放射線性に優れた耐放射線カメラであって、
前記耐放射線カメラは、画像を撮像するカメラヘッド部と、該カメラヘッド部から送られる映像信号を信号処理するカメラボディ部とを有し、
前記カメラヘッド部は、高い放射線環境に適するように構成され、
前記カメラボディ部は、低い放射線環境に適するように構成され、
前記カメラヘッド部は、イメージセンサとデジタル回路と熱処理機構とを備え、
前記イメージセンサは、カメラとしての映像を検出して前記デジタル回路に撮像信号を配信し、
前記デジタル回路は、前記イメージセンサからの撮像信号を処理して、前記カメラボディ部に送信し、
前記デジタル回路と前記イメージセンサとは熱的に分離され、
前記熱処理機構は、ヒータと特性劣化検出器とを備え、
前記特性劣化検出器は、前記デジタル回路の電気特性劣化を検出し、
前記ヒータは、前記特性劣化検出器が検出する前記デジタル回路の電気特性劣化に応じて、前記デジタル回路を加熱して熱処理する、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項2】
請求項1において、
前記特性劣化検出器は、第一のコンパレータと第一のリレー回路とを備え、
前記第一のコンパレータは、第一の基準電圧と前記デジタル回路の出力電圧とを比較することで電気特性劣化を検出し、
前記第一の基準電圧は、前記デジタル回路が放射線劣化をしていない初期状態における出力電圧の少なくとも1/2の電圧を有し、
前記第一のリレー回路は、前記第一のコンパレータの出力に応じて、前記ヒータに電力を供給する、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項3】
請求項2において、
前記熱処理機構は、前記デジタル回路の温度を検出する温度センサを備え、
前記特性劣化検出器は、第二のコンパレータと第二のリレー回路とを備え、
前記第二のコンパレータは、前記温度センサの出力電圧と第二の基準電圧とを比較し、
前記第二のリレー回路は、前記第二のコンパレータの出力に応じて、前記ヒータに電力を供給する、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項4】
請求項3において、
前記第一のリレー回路は、NC仕様のリレーで構成され、
前記第二のリレー回路は、NO仕様のリレーで構成される、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項5】
請求項1において、
前記デジタル回路は、MOSFETを備えて構成される、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項6】
請求項1において、
前記カメラヘッド部に金属製の筐体を備え、
前記筐体と、前記イメージセンサが実装された基板とは熱的に接続される、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項7】
請求項6において、
前記筐体と、前記イメージセンサが実装された基板との間に支持体を備え、
前記支持体が、前記基板を前記筐体に保持するとともに、前記基板の熱を前記筐体に伝搬する、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、
前記熱処理機構は、前記デジタル回路の温度を検出する温度センサを備え、
前記デジタル回路と前記ヒータと前記温度センサとが実装された基板と、前記筐体との間に、熱拡散を防止する断熱機構が挿入されている、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項9】
請求項8において、
前記デジタル回路および前記ヒータと、前記イメージセンサとの間に、輻射熱を遮断する遮熱シートを備える、
ことを特徴とする耐放射線カメラ。
【請求項10】
耐放射線性に優れた耐放射線カメラを用いる耐放射線カメラシステムであって、
前記耐放射線カメラは、画像を撮像するカメラヘッド部と、該カメラヘッド部から送られる映像信号を信号処理するカメラボディ部とを有し、
前記カメラヘッド部は、高い放射線環境に配置され、
前記カメラボディ部は、低い放射線環境に配置され、
前記カメラヘッド部は、イメージセンサとデジタル回路と熱処理機構とを備え、
前記イメージセンサは、カメラとしての映像を検出して前記デジタル回路に映像信号を配信し、
前記デジタル回路は、前記イメージセンサからの撮像信号を処理して、前記カメラボディ部に送信し、
前記デジタル回路と前記イメージセンサとは熱的に分離され、
前記熱処理機構は、ヒータと特性劣化検出器とを備え、
前記特性劣化検出器は、前記デジタル回路の電気特性劣化を検出し、
前記ヒータは、前記特性劣化検出器が検出する前記デジタル回路の電気特性劣化に応じて、前記デジタル回路を加熱して熱処理する、
ことを特徴とする耐放射線カメラシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の耐放射線カメラを用いる耐放射線カメラシステムであって、
前記耐放射線カメラの前記カメラヘッド部は、高い放射線環境に配置され、
前記耐放射線カメラの前記カメラボディ部は、低い放射線環境に配置され、
前記特性劣化検出器は、前記デジタル回路の電気特性劣化を検出し、
前記ヒータは、前記特性劣化検出器が検出する前記デジタル回路の電気特性劣化に応じて、前記デジタル回路を加熱して熱処理する、
ことを特徴とする耐放射線カメラシステム。
【請求項12】
請求項2に記載の耐放射線カメラを用いる耐放射線カメラシステムであって、
前記耐放射線カメラの前記カメラヘッド部は、高い放射線環境に配置され、
前記耐放射線カメラの前記カメラボディ部は、低い放射線環境に配置され、
前記特性劣化検出器の第一のコンパレータの出力がオフになると前記第一のリレー回路がオンして導通状態となり、前記ヒータに電力が供給され前記デジタル回路の加熱して熱処理する、
ことを特徴とする耐放射線カメラシステム。
【請求項13】
請求項3に記載の耐放射線カメラを用いる耐放射線カメラシステムであって、
前記耐放射線カメラの前記カメラヘッド部は、高い放射線環境に配置され、
前記耐放射線カメラの前記カメラボディ部は、低い放射線環境に配置され、
前記カメラヘッド部の前記デジタル回路が正常な場合には、前記第一のリレー回路が非導通状態であって、前記ヒータは加熱動作をせず、
前記カメラヘッド部の前記デジタル回路が劣化した場合には、前記第一のコンパレータが前記デジタル回路の出力電圧の低下を検出し、前記第一のリレー回路が導通状態となって、前記ヒータを発熱させて、前記デジタル回路を加熱することによって、前記デジタル回路の放射線劣化を回復し、
前記デジタル回路が加熱されて所定の加熱温度に到達した場合に、前記第二のコンパレータが前記温度センサの加熱温度の到達信号を検出し、前記第二のリレー回路が非導通状態となって、前記ヒータをオフして前記デジタル回路への加熱動作を停止することによって、前記デジタル回路の過度の加熱を防止する、
ことを特徴とする耐放射線カメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の廃炉プロセスにおいて、小型・軽量な耐放射線カメラの開発が望まれている。耐放射線カメラは、放射線環境に晒されるカメラヘッド部と通常環境下で信号処理するカメラボディ部に分離される。
このカメラヘッド部において、カメラヘッド部に組み込まれるイメージセンサは、放射線に対して脆弱なMOS(Metal Oxide Semiconductor)界面をもつフォトダイオードと読み出し回路、そしてA/Dコンバータなどのデジタル回路とから構成されるため、放射線に弱いことが知られている。
また、カメラヘッド部に組み込まれるフォトダイオードや読み出し回路に関しては、埋め込み層や冗長化回路の検討、そしてワイドバンドギャップ半導体を用いた試作などにより耐放射線性の向上が進んでいる。
【0003】
一方、カメラヘッド部に組み込まれるデジタル回路は、MOS界面をもつ多数のデバイスから構成されるため、耐放射線性の改善はいまだ敷居が高く、特に放射線に弱いと考えられる。
前記のイメージセンサを保護するため、従来のカメラヘッド部は、遮蔽壁を備える。しかし、遮蔽壁は重く、大きいためこれを備える耐放射線カメラの小型・軽量化は難しい。
そこで遮蔽壁を用いず、耐放射線性を向上する手段の一つとして、熱処理が挙げられる。熱処理はアニール効果により、MOS界面を有するデバイスの電気特性劣化の主要因であるシリコン酸化膜への正電荷蓄積と、シリコン酸化膜とシリコンの界面に発生する界面準位の増加を低減させることができる。
これらの技術分野に関連するものとしては、特許文献1や特許文献2がある。
【0004】
特許文献1の要約には「[目的]本発明の目的は高線量率の放射線環境において使用される電子装置の寿命を延長することにある。[構成]放射線に照射される電子装置(CCDカメラ)1を構成する半導体部品(CCD素子4とバッファアンプ6)に加熱手段(ヒータ10,11)を設け加熱することにより、半導体部品の放射線による主要な特性劣化の原因であるシリコン酸化膜中への正電荷の蓄積と、シリコン酸化膜とシリコンとの界面に発生する界面準位の増加を抑制し、前記半導体部品の放射線による特性劣化を抑制する。」と記載され、電子装置の技術が開示されている。このように、特許文献1においては、半導体部品に加熱手段を設け、電子装置の駆動中は使用温度の上限まで加熱して、そして電子装置の休止中は加熱上限温度まで加熱することにより、電子装置の耐放射線性を向上させる。
【0005】
また、特許文献2の要約には「本発明は,放射性環境内で画像を取り込むデバイスに関し,デバイスは,画像検出器(11,12,13);画像を取り込む領域(16);検出器を再生させるための加熱領域(17);検出器を冷却する領域(18);及び検出器を連続的に各領域内に移動させる支持部(14)を備える。本発明は,そのようなデバイスを備えるカメラにも関し,より詳細には,核環境内でガンマ線源画像を作成するカメラに関する。」と記載され、デバイスの技術が開示されている。このように、特許文献2においては、複数のイメージセンサを備え、画像を取り込む(駆動)領域と熱処理領域と冷却領域を連続的に移動させる機構を有している。この機構とすることで放射線劣化したイメージセンサを熱処理する間、別のイメージセンサが駆動するため、装置寿命の短縮や暗電流増加を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07-63878号公報
【特許文献2】特表2017-505909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の特許文献1においては、イメージセンサ駆動中の熱処理は装置寿命の短縮や暗電流増加による画像の劣化を引き起こすことが懸念されるという課題(問題)がある。
また、特許文献2においては、カメラとして複数のイメージセンサを備えるため、カメラヘッド部の小型・軽量化が難しいという課題(問題)がある。
【0008】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、装置寿命の短縮やイメージセンサの暗電流増加を抑制しつつ、熱処理によるカメラの耐放射線性向上とカメラヘッド部の小型・軽量化を両立する耐放射線カメラを提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決して、本発明の目的を達成するために、以下のように構成した。
すなわち、本発明に係る耐放射線カメラは、耐放射線性に優れた耐放射線カメラであって、前記耐放射線カメラは、画像を撮像するカメラヘッド部と、該カメラヘッド部から送られる映像信号を信号処理するカメラボディ部とを有し、前記カメラヘッド部は、高い放射線環境に適するように構成され、前記カメラボディ部は、低い放射線環境に適するように構成され、前記カメラヘッド部は、イメージセンサとデジタル回路と熱処理機構とを備え、前記イメージセンサは、カメラとしての映像を検出して前記デジタル回路に撮像信号を配信し、前記デジタル回路は、前記イメージセンサからの撮像信号を処理して、前記カメラボディ部に送信し、前記デジタル回路と前記イメージセンサとは熱的に分離され、前記熱処理機構は、ヒータと特性劣化検出器とを備え、前記特性劣化検出器は、前記デジタル回路の電気特性劣化を検出し、前記ヒータは、前記特性劣化検出器が検出する前記デジタル回路の電気特性劣化に応じて、前記デジタル回路を加熱して熱処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置寿命の短縮やイメージセンサの暗電流増加を抑制しつつ、熱処理によるカメラの耐放射線性向上とカメラヘッド部の小型・軽量化を両立する耐放射線カメラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図4A】本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラの熱処理機構および特性劣化検出器の正常状態(室温)における動作例について説明する図である。
図4B】本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラの熱処理機構および特性劣化検出器の劣化状態(昇温中)における動作例について説明する図である。
図4C】本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラの熱処理機構および特性劣化検出器の劣化状態で所望の加熱温度に到達したときの動作例について説明する図である。
図4D】本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラの熱処理機構および特性劣化検出器の回復後の正常状態(温度低下中)における動作例について説明する図である。
図5】本発明の第4実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図6】本発明の第5実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図7】本発明の第6実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において参照する図面は、実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは部材の一部の図示が省略されている場合もある。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、適宜、省略する。
【0013】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態に係る耐放射線カメラの構成を、図1を参照して説明する。なお、以下の耐放射線カメラの説明において、耐放射線カメラシステムの説明を兼ねる。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図1において、耐放射線カメラ101は、カメラヘッド部1とカメラボディ部2とを備えて構成される。
耐放射線カメラ101は、高い放射線環境下にある被写体の撮像を目的とするために、カメラヘッド部1は、高い放射線環境に晒される場合がある。ただし、信号処理をするカメラボディ部2は、低い放射線環境に配置される。
【0015】
そのため、カメラヘッド部1とカメラボディ部2は分離して配置され、単数または複数本からなる信号線S1~S3で各種の信号や電力(電圧)を、互いに伝達する構成となっている。
例えば、カメラヘッド部1で取得した映像信号や温度情報等の信号を、カメラボディ部2に送信する。また、カメラボディ部2からは、制御信号や電力(電圧)をカメラヘッド部1に送信する。
【0016】
カメラヘッド部1は、イメージセンサ3と、デジタル回路4と熱処理機構5を備えて構成される。なお、イメージセンサ3は、基板31に、デジタル回路4は基板41に、それぞれ設置されている。
また、イメージセンサ3とデジタル回路4は、空間において離れて配置され、熱的に分離されている。
【0017】
また、イメージセンサ3とデジタル回路4は、基板31と基板41とを介して、信号線S6で接続されている。なお、信号線S6は、複数の信号線と電力線(電源線)を含んでいる。
また、デジタル回路4からデジタル処理をされた映像信号が、基板41を介して、信号線S3でカメラボディ部2に送られている。なお、信号線(配線)S3は、複数本で構成され、前記した映像信号の信号線のみならず、例えば基板41に供給する電力線(配線)も含まれている。
【0018】
熱処理機構5は、ヒータ6と、温度センサ7と、特性劣化検出器8を備えて構成されている。
特性劣化検出器8は、デジタル回路4からの信号を、信号線S5を介して入力し、デジタル回路4の電気特性劣化を検出している。
ヒータ6は、特性劣化検出器8の判定によって、信号線S4を介し、状況に応じて、デジタル回路4(基板41)を加熱する。
【0019】
温度センサ7は、デジタル回路4(基板41)の温度を検出している。そして検出した温度情報を、信号線S2を介して、カメラボディ部2に送信している。温度センサ7が過度に加熱されていると判定した場合には、デジタル回路4の加熱を中止する。
特性劣化検出器8とカメラボディ部2との間に、主としてヒータ6の加熱動作を制御するための単数または複数の信号線(配線)S1が接続されている。
熱処理機構5は、以上の構成によって、デジタル回路4の電気特性の劣化に応じて、デジタル回路4を熱処理する。また、温度センサ7によって、適宜、熱処理を解除する。
【0020】
以上の図1に示した耐放射線カメラ101の構成において、カメラヘッド部1とカメラボディ部2とを別々に構成したので、カメラボディ部2を低い放射線環境に配置できる。
また、放射線の影響を受けやすいカメラヘッド部1においても、放射線対策が比較的に実施しやすいアナログ信号を扱うイメージセンサ3と、特に放射線に弱いと考えられるデジタル回路4を熱的に分離して配置している。
なお、前記したように、アナログ信号を扱うイメージセンサ3は、放射線対策が比較的に実施しやすいので、記載しない別途の対策が行われるものとして、以下では、放射線の影響を受けやすいデジタル回路4の放射線対策について、主として説明する。
【0021】
図1におけるデジタル回路4は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)で構成されている。
ヒータ6でデジタル回路4を加熱するのは、放射線によってデジタル回路4がダメージを受けた場合に、デジタル回路4を熱処理することによるアニール効果を目的とするものである。
すなわち、アニール効果で、MOS界面を有するデバイスの電気特性劣化の主要因であるシリコン酸化膜への正電荷蓄積と、シリコン酸化膜とシリコンの界面に発生する界面準位の増加を低減させ、デジタル回路4としての特性を回復させるためである。
【0022】
また、前記のように、イメージセンサ3とデジタル回路4とを熱的に分離して配置し、デジタル回路4のみを熱処理することで、前記イメージセンサ3は熱処理されず、イメージセンサ3としての暗電流増加を抑制できる。
そして、前記デジタル回路4の電気特性劣化に応じて熱処理することで、熱処理時間を必要最小限に抑えることができ、装置寿命の短縮を抑制できる。
また、本発明の耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムは、単一のイメージセンサで駆動でき、遮蔽壁を用いない構成であることから小型・軽量化が期待できる。
【0023】
<第1実施形態の効果>
本発明の第1実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムによれば、イメージセンサ3とデジタル回路4を熱的に分離して配置しているので、状況に応じてデジタル回路4のみを熱処理して、デジタル回路4が放射線劣化から回復することが可能な耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムを提供できる。
また、イメージセンサ3は熱処理されないので、イメージセンサ3としての暗電流増加を抑制できる。
そして、前記デジタル回路4の電気特性劣化に応じて熱処理することで、熱処理時間を必要最小限に抑えることができ、耐放射線カメラとしての装置寿命の短縮を抑制できる。
また、本発明の耐放射線カメラは、単一のイメージセンサで駆動でき、遮蔽壁を用いない構成であることから小型・軽量化が期待できる
【0024】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係る耐放射線カメラの構成を、図2を参照して説明する。なお、以下の耐放射線カメラの説明において、耐放射線カメラシステムの説明を兼ねる。
【0025】
図2は、本発明の第2実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図2において、第2実施形態の耐放射線カメラ102が、図1で示した第1実施形態の耐放射線カメラ101との異なる点は、図2における特性劣化検出器8Bの構成を、より具体的な構成例で示したことである。
そのため、次に、図2における特性劣化検出器8Bの構成について、詳しく説明する。なお、その他の重複する説明は、適宜、省略する。
【0026】
図2において、特性劣化検出器8Bは、コンパレータ(第一のコンパレータ)9とリレー回路(第一のリレー回路)10とを備えて構成される。
【0027】
なお、図2においては、「コンパレータ」と「リレー回路」は、それぞれ1個しかないので、「第一」という表記は、必ずしも適当ではない。ただし、図2を参照する第2実施形態に係る耐放射線カメラの構成の説明において、前記のように、コンパレータ(第一のコンパレータ)9、およびリレー回路(第一のリレー回路)10という表記を、適宜、用いる場合がある。このような表記を用いる理由は、それぞれ2個の「コンパレータ」と「リレー回路」を用いた図3における「第一のコンパレータ9」、「第二のコンパレータ13」および「第一のリレー回路10」、「第二のリレー回路14」との機能の対応を明確にするためである。
また、基準電圧(第一の基準電圧)11という表記についても、同様の理由である。
【0028】
図2において、コンパレータ9の第1入力端子は、基準電圧(第一の基準電圧)11が入力し、第2入力端子は、デジタル回路4からの信号が信号線S5Bを介して入力している。
リレー回路10は、紙面視で左側に第1信号端子と第2信号端子を有し、右側に第1切替端子と第2切替端子を有している。
コンパレータ9の出力信号は、リレー回路10の第1信号端子に入力している。リレー回路10は、NC(Normally Close)仕様のリレーであって、コンパレータ9の出力がオフ(0)の状態において、リレー回路10の切替スイッチが導通状態(Close)となる。
【0029】
コンパレータ9とリレー回路10の具体的な動作を次に説明する。
信号線S5Bに出力されるデジタル回路4の劣化状況を反映する所定の回路における出力電圧を電圧Vaとする。なお、「デジタル回路4の劣化状況を反映する所定の回路における出力電圧」という表記を簡略化して、「デジタル回路4の出力電圧」、もしくは「出力電圧」と適宜、表記する。
【0030】
デジタル回路4の出力電圧Vaは、放射線の影響によって変動する可能性がある。放射線の影響を受けない初期状態の出力電圧を、初期値として出力電圧Va0とする。この初期値の出力電圧Va0に対して、基準電圧11を少なくとも電圧(Va0)/2と設定する。
すなわち、コンパレータ9の第1入力端子は、基準電圧11の電圧(Va0)/2であり、コンパレータ9の第2入力端子は、デジタル回路4の所定の回路の出力電圧Vaが入力している。
【0031】
この初期状態の場合において、コンパレータ9の第1入力端子の電圧(Va0)/2と、第2入力端子の出力電圧Va(=Va0)とには、十分な電圧差があるので、コンパレータ9の出力は、オン(1)の状態となる。この場合の電流が流れる回路構成としては、コンパレータ9の出力端子からリレー回路10の紙面視で左側に配置された第1信号端子と第2信号端子を介して、信号線S1Bに所定の電流が流れる。
【0032】
前記したように、リレー回路10は、NC(Normally Close)仕様のリレーであり、コンパレータ9の出力は、オン(1)の状態であるので、リレー回路10の紙面視で右側に配置された第1切替端子と第2切替端子の間で構成される切替スイッチは、非導通状態(Open)である。
つまり、リレー回路10の第1切替端子に接続された信号線S4Bと、第2切替端子に接続された信号線(配線)S1Cとは、非導通状態(Open)であるので、ヒータ6には、電流が流れず、非加熱の状態である。
【0033】
次に、MOSFETで構成されるデジタル回路4が放射線の影響を受けて、所定の回路の出力電圧Vaが低下したとする。
そして、放射線の影響が次第に蓄積し、出力電圧Vaが次第に低下して、基準電圧11(≧(Va0)/2)との電圧差が減少すると、それに伴いコンパレータ9の出力も減少する。そして、コンパレータ9の出力がオフ(0)になると、NC(Normally Close)仕様のリレーであるリレー回路10の切替スイッチがオン(Close)する。
【0034】
すると、リレー回路10に接続された信号線S1Cと信号線S4Bは、導通状態となって、ヒータ6に電流(電力)が供給され、デジタル回路4に対する熱処理が開始される。
なお、ヒータ6の他方の端子は、基板41における配線に接続されている。
そして、デジタル回路4に対する熱処理が充分(温度と時間)に実施されると、デジタル回路4は、放射線劣化から回復する。
【0035】
一般的にデジタル信号は、デジタル回路を構成するMOSFETの出力電圧の中央値を基準に0,1判定がされる。つまり、MOSFETの出力電圧Vaが放射線により低下して、電圧Vbとなる場合、出力電圧の初期値をVa0として、Vbが(Va0)/2を下回ると正しい0,1判定ができなくなる。そのため、熱処理開始のタイミングを決める基準電圧11は、少なくとも(Va0)/2の電圧を有しているものとする。
実際は、デジタル信号に含まれるノイズの振幅分の余裕を取って(Va0)/2より大きい電圧値に設計することが望ましい。
なお、出力電圧Vaは、可変値であるが、出力電圧の初期値Va0、および基準電圧(第一の基準電圧)の(Va0)/2の値は、固定値であるとして扱う。
【0036】
≪第2実施形態の変形例≫
前記の第2実施形態におけるリレー回路10の説明として、NC(Normally Close)仕様のリレーであるとしたが、NCの仕様に限定されない。
すなわち、NO(Normally Open)の仕様のリレーでも構成できる。
その場合には、前記した基準電圧11をVa0とする。このとき、放射線によるMOSFETの出力電圧が低下することで、前記のコンパレータ9の出力が増大する。そして、コンパレータ9の出力増大に応じて、前記のリレー回路10がオンして、熱処理が開始される機構とする。
【0037】
<第2実施形態の効果>
本発明の第2実施形態によれば、特性劣化検出器8Bは、所定の基準電圧で比較判定するコンパレータ9と、NC仕様またはNO仕様のリレー回路10とを備えて構成される。この比較的に簡単な構成の特性劣化検出器8Bを備える熱処理機構5Bによって、デジタル回路4は、放射線劣化した場合においても、加熱処理されて、放射線劣化から回復する。
【0038】
≪第3実施形態≫
本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラの構成を、図3、および図4A図4Dを参照して説明する。なお、以下の耐放射線カメラの説明において、耐放射線カメラシステムの説明を兼ねる。
【0039】
図3は、本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図3において、第3実施形態の耐放射線カメラ103が、図2で示した第2実施形態の耐放射線カメラ102と異なる点は、図3における特性劣化検出器8Cの構成である。
そのため、図3における特性劣化検出器8Cの構成について、詳しく説明する。その他の重複する説明は、適宜、省略する。
【0040】
図3において、特性劣化検出器8Cは、第一のコンパレータ9と第一のリレー回路10と、更に、第二のコンパレータ13と第二のリレー回路14とが備えられている。
なお、図3における第一のコンパレータ9と第一のリレー回路10は、前記したように、図2におけるコンパレータ9とリレー回路10にそれぞれ相当している。そのため、同一の符号「9」および同一の符号「10」を用いている。
なお、図3における第一のコンパレータ9と第一のリレー回路10における接続関係は、図2で示したコンパレータ9とリレー回路10との接続関係と同様である。
【0041】
また、図3において、第一のリレー回路10は、前記したようにNC(Normally Close)仕様のリレーであるのに対し、第二のリレー回路14は、NO(Normally Open)仕様のリレーである。
そのため図3においては、第一のリレー回路10がNC(Normally Close)仕様のリレーであることを明確に示すために、第一のリレー回路10のブロックの中に「NC」と表記している。
【0042】
同様に、第二のリレー回路14がNO(Normally Open)仕様のリレーであることを明確に示すために、第二のリレー回路14のブロックの中に「NO」と表記している。
また、第一のリレー回路10は、紙面視において、第一のリレー回路10の右側に第1切替端子と第2切替端子が配置されているのに対し、第二のリレー回路14は、紙面視において、第二のリレー回路14の左側に第1切替端子と第2切替端子が配置されている。
【0043】
そして、第一のリレー回路10の切替スイッチの第1切替端子は、信号線S4Dを介して第二のリレー回路14の第2切替端子に接続されている。また、第二のリレー回路14の第1切替端子が信号線S4Cを介してヒータ6に接続されている。
また、第二のコンパレータ13の第1入力端子は、第二の基準電圧12が入力している。
また、第二のコンパレータ13の第2入力端子は、温度センサ7からの信号(温度検出信号)が信号線S2Bを介して入力している。
第二のコンパレータ13の出力信号が信号線S4Eを介して、第二のリレー回路14の第1信号端子に入力している。第二のリレー回路14の第2信号端子は、信号線S1Dに接続されている。
【0044】
<熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの動作について>
次に、熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの動作について、図4A図4Dを参照して説明する。
【0045】
《正常状態(室温)における熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの動作》
図4Aは、本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラ103(図3)の熱処理機構5C、および特性劣化検出器8Cの正常状態(室温)における動作例について、説明する図である。
図4Aにおいて、耐放射線カメラ103が放射線の影響を受けていないために、デジタル回路4の出力電圧Vaが初期値の出力電圧Va0である状況を示している。また、正常状態(室温)であるので、ヒータ6も加熱動作はしていない。
【0046】
なお、第二のコンパレータ13の第1入力端子における第二の基準電圧12は、ヒータ6の加熱を停止する際の所定の加熱温度時の出力電圧Vcに設定されている。
また、第二のコンパレータ13の第2入力端子には、温度センサ7の出力信号が入力している。ただし、ヒータ6は加熱動作をしていないので、室温における温度センサ7の出力電圧Vc0が、第二のコンパレータ13の第2入力端子への入力信号となっている。
【0047】
以上の状況によって、NC(Normally Close)仕様のリレーである第一のリレー回路10の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、非導通状態(Open)である。
また、NO(Normally Open)仕様のリレーである第二のリレー回路14の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、導通状態(Close)である。
ただし、第一のリレー回路10と第二のリレー回路14が共に導通状態でないと、ヒータ6は、加熱動作をしない。
そのため、前記したように、第一のリレー回路10が非導通状態(Open)であるので、図4Aにおいては、ヒータ6は、加熱動作をしていない。そのため、熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cは、正常状態(室温)の動作となっている。
【0048】
なお、図4Aにおいて、第一のリレー回路10の切替スイッチが非導通状態(Open)であることを示すために、第1切替端子と第2切替端子の間を太い線が斜め方向となって、開いている状態で表記している。
また、第二のリレー回路14の切替スイッチが導通状態(Close)であることを示すために、第1切替端子と第2切替端子の間を太い線が平行方向となって、閉じている状態で表記している。
【0049】
《劣化状態(昇温中)における熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの動作》
次に、耐放射線カメラ103が放射線の影響を受けて、デジタル回路4が劣化して出力電圧Vaが低下し、ヒータ6が加熱動作を開始した状況について説明をする。
【0050】
図4Bは、本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラ103の熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの劣化状態(昇温中)における動作例について説明する図である。
図4Bにおいて、耐放射線カメラ103のカメラヘッド部1が放射線の影響を受けて、デジタル回路4の出力電圧Vaが低下し、初期値の出力電圧Va0の半分であるVa=(Va0)/2となった状況を示している。
【0051】
そのため、第一のコンパレータ9は、第1入力端子と第2入力端子の電圧が等しくなったので、第一のコンパレータ9の出力がオフ(0)となる。
その結果、NC(Normally Close)仕様のリレーである第一のリレー回路10がオン、つまり第一のリレー回路10の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、導通状態(Close)となる。
【0052】
また、第二のコンパレータ13の第1入力端子がVc、第2入力端子がVc0と差があるので第二のコンパレータ13は、出力がオン(1)である。
そのため、NO(Normally Open)仕様のリレーである第二のリレー回路14の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、導通状態(Close)である。
【0053】
すなわち、第一のリレー回路10の切替スイッチと、第二のリレー回路14の切替スイッチは、共に導通状態(Close)であるので、信号線(配線)S1Cからヒータ6に電圧(電力)が供給され、ヒータ6は加熱動作を開始する。
そして、耐放射線カメラ103のデジタル回路4の周囲環境は、室温から徐々に上昇を開始する。
【0054】
《劣化状態(所望の加熱温度に到達)における熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの動作》
次に、ヒータ6が加熱動作を続けたために、デジタル回路4の周囲環境が所望の加熱温度に到達した状況について説明する。
【0055】
図4Cは、本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラ103の熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの劣化状態で所望の加熱温度に到達したときの動作例について説明する図である。
図4Cにおいて、ヒータ6がデジタル回路4への加熱動作を続けた結果、デジタル回路4が所望の加熱温度に到達する。このヒータ6による加熱動作が所定時間、実施されると、デジタル回路4は、放射線劣化から次第に回復し、デジタル回路4の出力電圧Vaが初期値の出力電圧Va0に向かって上昇する(Va→Va0)。
【0056】
ただし、図4Cにおいては、加熱を開始しての経過時間は短く、デジタル回路4の放射線劣化からの回復状況は、不充分であるので、第1のコンパレータ9の出力はオフ(0)であり、NC(Normally Close)仕様のリレーである第一のリレー回路10の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、導通状態(Close)である。
【0057】
また、デジタル回路4が加熱されると、放射線劣化からの回復状況は、不充分であっても、デジタル回路4は温度が上昇する。そして、温度センサ7が、設定した加熱温度における出力電圧Vcを出力するようになる。
このように、第二のコンパレータ13の第2入力端子に入力する電圧が出力電圧Vcとなると、第1入力端子の第二の基準電圧が電圧Vcであるので、第1入力端子と第2入力端子に電圧差はなくなり、第二のコンパレータ13は、出力がオフ(0)となる。
【0058】
そのため、NO(Normally Open)仕様のリレーである第二のリレー回路14の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、非導通状態(Open)となる。
その結果、信号線(配線)S1Cから第一のリレー回路10、第二のリレー回路14を経由して、ヒータ6に至る経路が、第二のリレー回路14で遮断されるので、ヒータ6による加熱動作が停止する。
このようにヒータ6による加熱動作を停止することによって、必要以上のデジタル回路4への加熱を防止する。
また、加熱動作の停止によって、次第にデジタル回路4の温度は低下を始める。
【0059】
《回復後の正常状態(温度低下中)における熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの動作》
次に、デジタル回路4のダメージが修復され、特性が改善され、ヒータ6がオフされて、温度がさらに低下中の状況について説明する。
【0060】
図4Dは、本発明の第3実施形態に係る耐放射線カメラ103の熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの回復後の正常状態(ただし温度低下中)における動作例について説明する図である。
図4Dにおいて、デジタル回路4のダメージが修復され、特性が改善されるとデジタル回路4の出力電圧Vaが初期値の出力電圧Va0に回復している。
すると第一のコンパレータ9は、第1入力端子の第一の基準電圧(Va0)/2と第2入力端子の出力電圧Va0に大きな差が生じたので、オン(1)する。
そのため、NC(Normally Close)仕様のリレーである第一のリレー回路10がオフする。つまり第一のリレー回路10の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、非導通状態(Open)となる。したがって、ヒータ6に電圧(電力)は供給されない。
【0061】
また、温度が低下したことによって、温度センサ7の出力電圧は、正常状態における電圧Vc0に戻る。すると、第二のコンパレータ13の第2入力端子の出力電圧Vc0と第1入力端子の第二の基準電圧Vcとには、電圧差があるので、第二のコンパレータ13はオン(1)する。
そのため、NO(Normally Open)仕様のリレーである第二のリレー回路14の切替スイッチの第1切替端子と第2切替端子は、導通状態(Close)となる。
【0062】
以上の図4Dに示した、第一のコンパレータ9、第一のリレー回路10、第二のコンパレータ13、第二のリレー回路14の状態は、図4Aの第一のコンパレータ9、第一のリレー回路10、第二のコンパレータ13、第二のリレー回路14の状態に対応している。
すなわち、デジタル回路4のダメージが修復され、かつ温度も低下して、図1に示した初期状態に、ほぼ戻ったことを意味している。
【0063】
以上の図4A図4Dを参照して説明した熱処理機構5Cの手順によって、耐放射線カメラ103のデジタル回路4の放射線によるダメージが回復できる。
【0064】
また、図3の熱処理機構5Cおよび特性劣化検出器8Cの構成によれば、次のような機能、動作をするとも言える。
すなわち、第二の基準電圧12は、デジタル回路4の加熱温度に対応する温度センサ7の出力電圧に等しい電圧Vcであり、デジタル回路4の温度が加熱温度に達していない場合に、第二のリレー回路14がオンして加熱が継続される。
また、デジタル回路4の温度が加熱温度に達したとき、温度センサ7の出力電圧と第二の基準電圧12は等しくなり、前記第二のリレー回路14がオフされ加熱は終了する。
【0065】
<第3実施形態の効果>
本発明の第3実施形態によれば、特性劣化検出器8Cは、第一のコンパレータ9、第一のリレー回路10、第二のコンパレータ13、第二のリレー回路14を組み合わせて、構成し、デジタル回路4の出力電圧の下限と、温度センサ7によるデジタル回路4の温度の上限とによって、ヒータ6を制御する。
そのため、ヒータ6による前記デジタル回路4の加熱温度を所望の値に設定でき、環境温度の変化や、素子の動作状況の変化によっても、半導体部品の動作温度が所定の範囲に留まり、電気特性を仕様範囲内に納めて正常に使用できるという効果がある。
【0066】
≪第4実施形態≫
本発明の第4実施形態に係る耐放射線カメラの構成を、図5を参照して説明する。なお、以下の耐放射線カメラの説明において、耐放射線カメラシステムの説明を兼ねる。
【0067】
図5は、本発明の第4実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。
図5において、第4実施形態の耐放射線カメラ104が、図1で示した第1実施形態の耐放射線カメラ101と異なる点は、図5における金属製の筐体15と、熱を伝搬する支持体32を設けた構成である。
その他の重複する説明は、適宜、省略する。
【0068】
図5において、耐放射線カメラ104は、カメラヘッド部1において、金属製の筐体15と熱を伝搬する支持体32を備えている。
金属製の筐体15は、イメージセンサ3、基板31、デジタル回路4、基板41、熱処理機構5を囲うように構成されている。
また、支持体32は、基板31と筐体15とを支持、保持する形状で配置されている。
支持体32は、基板31を介して、イメージセンサ3で発生した熱を、金属製の筐体15に伝搬している。
ただし、支持体32は、絶縁物で構成され、基板31(イメージセンサ3)と金属製の筐体15との間は、電気的に隔離されている。
【0069】
以上の構成によって、金属製の筐体15は、イメージセンサ3で発生した熱を受けて、空気中に放熱することによって、イメージセンサ3の温度上昇を軽減している。
また、金属製の筐体15は、前記のようにイメージセンサ3、基板31、デジタル回路4、基板41、熱処理機構5を囲うように構成されているので、カメラヘッド部1(耐放射線カメラ104)の放射線の影響を軽減する役目もしている。
【0070】
<第4実施形態の効果>
本発明の第4実施形態の耐放射線カメラ104は、金属製の筐体15と熱を伝搬する支持体32を備え、前記筐体15と前記イメージセンサ3が実装された基板31が熱的に接続されている。
このような構成とすることによって、前記デジタル回路4の熱が、複数の配線を内包するケーブルを介して、もしくはヒータ6の輻射熱が、前記イメージセンサ3に伝搬してもその熱を金属製の筐体15に拡散することができる。
そのため、イメージセンサ3の温度は安定し、暗電流増加の抑制効果が高くなる。
また、金属製の筐体15で耐放射線カメラ104のカメラヘッド部1を覆うことによって、放射線の影響も軽減できる。
【0071】
≪第5実施形態≫
本発明の第5実施形態に係る耐放射線カメラ105の構成を、図6を参照して説明する。なお、以下の耐放射線カメラの説明において、耐放射線カメラシステムの説明を兼ねる。
【0072】
図6は、本発明の第5実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。また、カメラヘッド部1におけるA-A軸の断面として、カメラヘッド部1の紙面視で左側に、A-A軸に対応する円形の断面を断面図として示している。
図6において、第5実施形態の耐放射線カメラ105が、図5で示した第4実施形態の耐放射線カメラ104と異なる点は、図6における断熱機構16を設けた構成である。
【0073】
図6に示すように、断熱機構16が設けられ、基板41と金属製の筐体15との間に挿入されている。
基板41には、例えば図1に示したように、デジタル回路4、ヒータ6、温度センサ7が搭載され、実装されている。
前記したように、デジタル回路4を放射線によるダメージから回復する際に、熱処理機構5に備えられたヒータ6を用いてデジタル回路4を加熱する工程がある。そのため、この加熱工程において、デジタル回路4やヒータ6で発生する熱が金属製の筐体15に拡散することを防止する必要がある。
【0074】
この筐体15への熱拡散を、断熱機構16を設けることによって防止する。そして、ヒータ6で発生する熱がデジタル回路4の熱処理に有効に使用されるようにしている。すなわち、断熱機構16を設けることによって、ヒータ6によるデジタル回路4の加熱効率を高めている。
また、デジタル回路4の熱が金属製の筐体15を介して、イメージセンサ3に伝搬するのを防ぐ役割もある。
なお、その他の重複する説明は省略する。
【0075】
<第5実施形態の効果>
本発明の第5実施形態の耐放射線カメラ105は、基板41と金属製の筐体15との間に断熱機構16が挿入されて、設けられている。
この断熱機構16を設けることによって、ヒータ6によるデジタル回路4の加熱効率を高める効果がある。
また、デジタル回路4の熱を金属製の筐体15を介して、イメージセンサ3に伝搬するのを防ぐ役割もある。
【0076】
≪第6実施形態≫
本発明の第6実施形態に係る耐放射線カメラ106の構成を、図7を参照して説明する。なお、以下の耐放射線カメラの説明において、耐放射線カメラシステムの説明を兼ねる。
【0077】
図7は、本発明の第6実施形態に係る耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムの構成例を示す図である。また、カメラヘッド部1におけるB-B軸の断面として、カメラヘッド部1の紙面視で左側に、B-B軸に対応する円形の断面を断面図として示している。
図7において、第6実施形態の耐放射線カメラ106が、図6で示した第5実施形態の耐放射線カメラ105と異なる点は、図7における遮熱シート17を設けた構成である。
なお、前記したように、熱処理機構5には、ヒータ6が備えられている。
【0078】
このように、図7において、デジタル回路4およびヒータ6と、イメージセンサ3との間に、輻射熱を遮断する遮熱シート17が備えられている。
また、このように、デジタル回路4およびヒータ6の発生する輻射熱を遮断する遮熱シート17を設けることによって、デジタル回路4およびヒータ6の輻射熱が、イメージセンサ3に伝搬するのを防ぐことができる。
その他の重複する説明は、省略する。
【0079】
<第6実施形態の効果>
本発明の第6実施形態の耐放射線カメラ106は、イメージセンサ3とヒータ6との間に、輻射熱を遮断する遮熱シート17が設けられている。
この遮熱シート17を設ける構成とすることで、ヒータ6の輻射熱が前記イメージセンサ3に伝搬するのを防ぐ効果がある。
すなわち、イメージセンサ3の特性の悪化を防止できる。
【0080】
≪その他の実施形態と補足≫
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を加えることも可能である。
以下に、その他の実施形態や変形例、補足について、さらに説明する。
【0081】
《NC仕様のリレーとNO仕様のリレーの選択と組み合わせ》
第2実施形態において、図2では、NC(Normally Close)仕様のリレーを用いて、特性劣化検出器8Bの構成を説明した。
また、「第2実施形態の変形例」として、第2実施形態におけるリレー回路10をNO(Normally Open)仕様のリレーでも構成できることを説明した。
ただし、第2実施形態や第2実施形態の変形例のみならず、図3を参照して説明した第3実施形態の特性劣化検出器8Cにおいても、NC仕様のリレーやNO仕様のリレーを様々に組み合わせて、特性劣化検出器を構成できる。なお、その際に、コンパレータの構成や基準電圧の様々な選択をして、様々な機能を有する特性劣化検出器、熱処理機構の耐放射線カメラ、および耐放射線カメラシステムが実現する。
【0082】
《MOSFETについて》
第1実施形態において、デジタル回路4は、単にMOSFETで構成されていると説明した。ただし、このMOSFETは、プレーナ型(横型)の構造のMOSFET、あるいはトレンチ型(縦型)の構造のMOSFET、さらにはスーパージャンクションMOSFETにおいても、前記した効果がある。
また、MOSFETは、シリコン基板を用いたものに限定されない。例えば、SiC(Silicon Carbide:炭化ケイ素)基板を用いたものにも適用できる。
なお、SiCは、放射線の影響を受けにくいワイドバンドギャップ半導体であるので、耐放射線カメラに用いるデジタル回路4においては、さらに好適な素材である。
【0083】
《筐体》
図5を参照して説明した第4実施形態の耐放射線カメラ104においては、金属製の筐体15を備えて、主にイメージセンサ3で発生した熱を筐体15に拡散し、イメージセンサの温度上昇を避ける役目をしている。
すなわち、筐体は、熱を効率よく発散すればよいのであるから、必ずしも金属には限定されない。
例えば、カーボンナノファイバやカーボンナノチューブの繊維状カーボンに、環動高分子を複合化させた複合材料を用いてもよい。なお、これらの複合材料には、金属に匹敵する高い熱伝導性を示すものがある。また、ゴム状で隣接する材料を傷つけずに、取り扱いが容易な特徴を有するものもある。
【0084】
また、図5においては、金属製の筐体15は、一方ではイメージセンサ3の発熱を効率よく吸収するが、他方ではデジタル回路4の発熱を吸収することは避けたい要請のある構造物である。
そのため、イメージセンサ3の近傍と、デジタル回路4の近傍とでは、筐体15として別の素材を用い、この熱伝導率の異なる複数の素材を合体し、一つの筐体15として構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 カメラヘッド部
2 カメラボディ部
3 イメージセンサ
4 デジタル回路
5,5B,5C 熱処理機構
6 ヒータ
7 温度センサ
8,8B,8C 特性劣化検出器
9 コンパレータ、第一のコンパレータ
10 リレー回路、第一のリレー回路(NC仕様のリレー回路)
11 基準電圧、第一の基準電圧
12 第二の基準電圧
13 第二のコンパレータ
14 第二のリレー回路(NO仕様のリレー回路)
15 筐体
16 断熱機構
17 遮熱シート
31,41 基板
32 支持体
101,102,103,104,105,106 耐放射線カメラ
S1,S1B,S1C,S1D,S2,S2B,S3,S4,S4B,S4C,S4D,S4E,S5,S5B,S6,S7 信号線(配線)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7