(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176150
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231206BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H02J7/00 X
H02J1/00 306L
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088277
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 勇輝
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
【Fターム(参考)】
5G165BB02
5G165CA02
5G165DA01
5G165DA08
5G165EA02
5G165EA03
5G165EA07
5G165GA09
5G165HA01
5G165HA07
5G165HA17
5G165JA04
5G165JA07
5G165KA02
5G165KA05
5G165LA01
5G165LA02
5G165MA10
5G165NA10
5G165PA01
5G165PA02
5G165PA05
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA02
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】制御装置内のメモリに記憶されたデータの消失およびデータ化けの発生を抑制する。
【解決手段】ECUは、電池情報の書き換え要求があるか否かを判定するステップ(S100)と、電池情報の書き換え要求があると判定される場合に(S100にてYES)、組電池のSOCを算出するステップ(S102)と、組電池のSOCがしきい値SOC(0)以上であるか否かを判定するステップ(S104)と、SOCがしきい値SOC(0)以上であるときに(S104にてYES)、電池情報の書き換え処理を実行するステップ(S106)と、SOCがしきい値SOC(0)よりも低いときに(S104にてNO)、組電池の充電を要求するステップ(S108)とを含む、処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置される電気機器との間で電力の授受が可能であって、前記建物に設置される蓄電装置と、
不揮発性メモリを含み、前記蓄電装置と前記電気機器との間で授受される電力に関する情報を監視する制御装置と、
前記蓄電装置の電力を用いて前記制御装置を動作させる電力を生成する電源回路とを備え、
前記制御装置は、
前記蓄電装置のSOC(State Of Charge)を取得し、
前記不揮発性メモリの記憶内容を書き換える書き換え処理の実行が要求される場合には、前記SOCがしきい値よりも高いときに前記書き換え処理を実行し、前記SOCが前記しきい値よりも低いときに前記書き換え処理を実行しない、蓄電システム。
【請求項2】
前記建物には、前記蓄電装置と異なる電源装置が設けられ、
前記制御装置は、前記書き換え処理の実行が要求される場合には、取得された前記SOCが前記しきい値よりも低いときに前記電源装置に対して前記蓄電装置の充電を要求する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、直近の予め定められた期間における前記SOCの低下量が大きくなるほど前記しきい値を大きく設定する、請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、直近の予め定められた期間における前記蓄電装置から前記電気機器への放電量が大きくなるほど前記しきい値を大きく設定する、請求項1または2に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電システムの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物に設置される電気機器の電源として商用電源以外に定置式の蓄電システムが用いられる場合がある。定置式の蓄電システムには、建物の電気機器に電力を供給する蓄電装置の電流、電圧あるいは温度等の状態を監視したり、電気機器との間の電気的な接続状態を制御したりする制御装置が設けられる。
【0003】
この制御装置内には、蓄電装置の状態を示すデータや各種プログラムを記憶するメモリが搭載されている。メモリとしては、たとえば、書き換え可能で、かつ、電源遮断後も記憶内容の保持が可能な不揮発性メモリ等を含む。
【0004】
このようなメモリにおいては、制御装置に蓄電装置からの電力が供給された状態でメモリの記憶内容を書き換える書き換え処理が実行される。この書き換え処理の実行中に制御装置への電力供給が遮断されると、書き換え処理を正常に完了できない場合がある。
【0005】
このような問題に鑑み、たとえば、特開2013-166453号公報(特許文献1)には、制御装置に供給される電圧値がしきい値よりも低い場合に、書き換え処理を実行しない技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、建物の電気機器への電力の供給により蓄電装置のSOC(State Of Charge)が大きく低下した状態になると、制御装置に供給される電圧が短時間の間に低下する場合がある。そのため、制御装置に供給される電圧がしきい値以上であると判定された後に書き換え処理を実行しても、短時間の電圧低下によって書き換え処理を正常に完了できない場合が生じ得る。書き換え処理を正常に完了できないと、メモリに記憶されたデータの消失やデータ化けが発生する場合がある。
【0008】
本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、制御装置内のメモリに記憶されたデータの消失およびデータ化けの発生を抑制する蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある局面に係る蓄電システムは、建物に設置される電気機器との間で電力の授受が可能であって、建物に設置される蓄電装置と、不揮発性メモリを含み、蓄電装置と電気機器との間で授受される電力に関する情報を監視する制御装置と、蓄電装置の電力を用いて制御装置を動作させる電力を生成する電源回路とを備える。制御装置は、蓄電装置のSOCを取得する。制御装置は、不揮発性メモリの記憶内容を書き換える書き換え処理の実行が要求される場合には、SOCがしきい値よりも高いときに書き換え処理を実行し、SOCがしきい値よりも低いときに書き換え処理を実行しない。
【0010】
たとえば、電気機器への電力供給により蓄電装置のSOCが低下し、低下したSOCがしきい値よりも低いときには電源回路において制御装置を動作させる電力を生成できない可能性がある。そのため、不揮発性メモリの書き換え処理の実行が要求される場合でも、書き換え処理が実行されないため、不揮発性メモリのデータの消失やデータ化けの発生を抑制することができる。一方、SOCがしきい値よりも高い場合には、制御装置の動作を維持することができるため、不揮発性メモリにおいてデータの消失やデータ化けを発生させることなく書き換え処理を完了させることができる。その結果、不揮発性メモリに記憶されるデータを保護することができる。
【0011】
ある実施の形態においては、建物には、蓄電装置と異なる電源装置が設けられる。制御装置は、書き換え処理の実行が要求される場合には、取得されたSOCがしきい値よりも低いときに電源装置に対して蓄電装置の充電を要求する。
【0012】
このようにすると、電源装置を用いて蓄電装置が充電されることにより、SOCをしきい値よりも高くすることができるため、制御装置の動作を維持することができる。これにより、不揮発性メモリへの情報の記憶をデータの消失やデータ化けを発生させることなく書き換え処理を完了させることができる。
【0013】
さらにある実施の形態においては、制御装置は、直近の予め定められた期間におけるSOCの低下量が大きくなるほどしきい値を大きく設定する。
【0014】
このようにすると、直近のSOCの変化量を用いてしきい値を適切に設定することができるため、制御装置の動作を維持した状態で書き換え処理を完了させることができる。
【0015】
さらにある実施の形態においては、制御装置は、直近の予め定められた期間における蓄電装置から電気機器への放電量が大きくなるほどしきい値を大きく設定する。
【0016】
このようにすると、直近の放電量を用いてしきい値を適切に設定することができるため、制御装置の動作を維持した状態で書き換え処理を完了させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によると、制御装置内のメモリに記憶されたデータの消失およびデータ化けの発生を抑制する蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】蓄電システムの全体構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】電池ユニットの構成の一例を説明するための図である。
【
図3】ECUにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】蓄電システムの動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
図1は、蓄電システム1の全体構成の一例を概略的に示す図である。蓄電システム1は、建物内(屋内)あるいは建物の外(屋外)に設置される。建物内の電気負荷10には、分電盤4を介在させて、商用電源等に接続される電力網2と後述する蓄電システム1とが接続されている。
【0021】
分電盤4は、蓄電システム1と、電力網2と、電気負荷10との間における電力の伝達経路を選択可能に構成される。
【0022】
分電盤4は、たとえば、電力網2から供給される電力を、分電盤4を経由して電気負荷10に供給する電力の伝達経路を選択し得る。さらに分電盤4は、蓄電システム1から供給される電力を、分電盤4を経由して電気負荷10に供給する電力の伝達経路を選択し得る。さらに、分電盤4は、電力網2から供給される電力を、分電盤4を経由して蓄電システム1に供給する電力の伝達経路を選択し得る。さらに、分電盤4は、蓄電システム1から供給される電力を、分電盤4を経由して電力網2に対して供給する電力の伝達経路を選択し得る。
【0023】
電気負荷10は、建物内あるいは建物外に設置された電気機器を含む。電気負荷10は、たとえば、照明装置や各種家電製品を含む。
【0024】
蓄電システム1は、太陽光発電装置20と、パワーコンデショナシステム(以下、PCSと記載する)30と、AC/DCコンバータ40と、車両50と、双方向DC/DCコンバータ60と、電池ユニット70とを含む。
【0025】
太陽光発電装置20は、たとえば、建物の屋根などの屋外に設置されるソーラパネル等によって構成される。太陽光発電装置20は、PCS30に接続される。太陽光発電装置20は、太陽光を受けて直流電力を発電し、発電した直流電力をPCS30に供給する。
【0026】
車両50は、高圧バッテリと、高圧バッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータ等の電力変換装置と、電力変換装置に接続されたACソケット(いずれも図示せず)とを含む。ACソケットに電気機器のプラグが接続されると、電気機器に交流電力(たとえば、100Vの交流電力)が供給され得る。
【0027】
AC/DCコンバータ40のDC出力端子は、PCS30に接続される。AC/DCコンバータ40のAC入力端子は、たとえば、車両50のACソケットに接続可能に構成される。AC/DCコンバータ40は、車両50のACソケットに入力端子が接続されている場合には、車両50から供給される交流電力を直流電力に変換してPCS30に供給する。
【0028】
双方向DC/DCコンバータ60は、PCS30から供給される直流電力を電池ユニット70の組電池90の充電が可能な電力に変換(昇圧または降圧)したり、電池ユニット70から供給される直流電力をPCS30への入力電力として適切な電圧の電力に変換(昇圧または降圧)したりする。双方向DC/DCコンバータ60は、たとえば、後述するECU(Electronic Control Unit)80からの制御信号に応じて動作してもよいし、あるいは、PCS30の制御装置(図示せず)からの制御信号に応じて動作してもよい。
【0029】
PCS30は、各種電力変換装置と、電池ユニット70に含まれるECU80と通信可能に接続される制御装置を含む。PCS30は、電池ユニット70、太陽光発電装置20および車両50のうちの少なくともいずれかから供給される直流電力を交流電力に変換して分電盤4に供給する。あるいは、PCS30は、車両50から供給される直流電力を双方向DC/DCコンバータ60に供給する。あるいは、PCS30は、太陽光発電装置20から供給される直流電力を双方向DC/DCコンバータ60に供給する。あるいは、PCS32は、電力網2から供給される交流電力を直流電力に変換して電池ユニット70に供給する。
【0030】
電池ユニット70は、ECU80と、組電池90とを含む。組電池90は、たとえば、複数のセルを用いて構成される。組電池90は、複数のセルが直列に接続されて構成される。なお、組電池90は、たとえば、所定数のセルを並列で接続して構成された電池群を複数個直列で接続して構成されてもよい。
【0031】
ECU80は、組電池90と、双方向DC/DCコンバータ60との間に設けられるシステムメインリレー(図示せず)の動作を制御して、電気的に導通した導通状態と電気的に遮断された遮断状態とのうちのいずれか一方の状態から他方の状態に切り替える。
【0032】
さらに、ECU80は、組電池90を管理する。ECU80は、たとえば、組電池90内の温度、電流および電圧を用いて組電池90のSOCを推定する。SOCは、満充電容量に対する残存する電力量の割合を示す。なお、SOCの算出方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、または、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法など、種々の公知の手法を採用できる。
【0033】
さらに、ECU80は、組電池90の満充電容量を推定する。ECU80は、たとえば、SOCの増加量に対する充電量あるいはSOCの減少量に対する放電量との関係を用いて満充電容量を推定してもよい。
【0034】
さらに、ECU80は、タイマー等を内蔵しており、組電池90の使用時間等をタイマーを用いて取得可能に構成される。
【0035】
図2は、電池ユニット70の構成の一例を説明するための図である。
図2に示すように、ECU80は、マイクロコントローラユニット(以下、MCUと記載する)82と、電源回路88とを含む。
【0036】
MCU82は、CPU(Central Processing Unit)などのプログラムを実行するプロセッサ(図示せず)と、揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)84と、ROM(Read-Only Memory)86とを含むコンピュータである。ROM86は、たとえば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などを含む不揮発性メモリである。MCU82は、電池ユニット70に設けられる各種センサ(たとえば、電圧センサ94)からの出力値を取得し、RAM84に記憶させる。MCU82は、たとえば、RAM84に記憶されたデータを用いて組電池90のSOCを推定したり、組電池90の満充電容量を推定したり、組電池90の使用時間を算出したりする。
【0037】
MCU82は、たとえば、予め定められた条件が成立する場合に、RAM84に記憶された情報を用いてROM86に記憶された情報を書き換える(更新する)書き換え処理を実行する。予め定められた条件は、たとえば、SOC、満充電容量および使用時間のうちの少なくともいずれかが所定量以上変化した(変動が生じた)という第1条件と、蓄電システム1の動作の停止が要求されたという第2条件とのうちの少なくともいずれかの条件を含む。このようにすると、後述する電源回路88からECU80への電力供給が遮断された後においてもROM86に記憶された情報を保持することができる。そのため、蓄電システム1が再度動作する場合において、直近のSOC、満充電容量および使用時間についての情報をROM86から取得することが可能となる。
【0038】
電源回路88は、電力網2、太陽光発電装置20、車両50あるいは組電池90の電力を双方向DC/DCコンバータ60で変換される電力を用いてMCU82が動作可能な電圧を生成して、MCU82に供給する。電源回路88は、たとえば、組電池90の電圧をECU80の動作が可能な範囲内の電圧に変換する変換回路を含む。変換回路としては公知の構成が用いられればよくその詳細な説明は行なわない。
【0039】
組電池90は、複数のセル92が直列に接続されて構成される。組電池90には、組電池90の電圧を検出する電圧センサ94が設けられる。電圧センサ94は、組電池90の電圧を示す信号をMCU82に出力する。なお、組電池90には、特に図示しないが、電圧センサ94に加えて、組電池90の電流を検出する電流センサと、組電池90の温度を検出する温度センサとが設けられる。なお、温度センサは、たとえば、セル92毎に設けられてもよい。
【0040】
以上のような構成を有する蓄電システム1において、ECU80には、双方向DC/DCコンバータ60および電源回路88を経由して組電池90の電力が供給されることによりECU80が動作する。あるいは、電力網2、太陽光発電装置20および車両50からの電力が供給されることによりECU80が動作する。ECU80は、この動作中において予め定められた条件が成立するときに上述の書き換え処理を実行する。
【0041】
しかしながら、組電池90から電気負荷10への電力の供給が継続する場合であって、停電等によって太陽光発電装置20や、車両50や、電力網2から電池ユニット70への電力供給が見込めない場合には、組電池90のSOCが大きく低下した状態になる場合がある。このような状態では、ECU80に供給される電圧が短時間の間に低下する場合がある。そのため、ECU80に供給される電圧がECU80の動作が可能な電圧であることを確認して書き換え処理を実行することも考えられるが、短時間の電圧低下が発生すると、RAM84に記憶される情報を保持することができなかったり、あるいは、ROM86への情報の書き込みができなかったりするなどして、書き換え処理を正常に完了できない場合が生じ得る。書き換え処理を正常に完了できないと、ROM86に記憶されたデータの消失やデータ化けが発生する場合がある。
【0042】
そこで、本実施の形態においては、ECU80が、ROM86の書き換え処理の実行が要求される場合に、組電池90の残存電力量を示すSOCがしきい値SOC(0)よりも高いときには、書き換え処理を実行するものとする。一方、ECU80は、ROM86の書き換え処理の実行が要求される場合に、組電池90のSOCがしきい値SOC(0)よりも低い場合には、書き換え処理を実行しないものとする。
【0043】
たとえば、組電池90から電気負荷10への電力の供給が継続する場合であって、停電等によって太陽光発電装置20や、車両50や、電力網2から電池ユニット70への電力供給が見込めない場合には、組電池90のSOCが低下し、低下したSOCがしきい値SOC(0)よりも低いときには双方向DC/DCコンバータ60においてECU80を動作させる電力を生成できない状態になる可能性がある。そのため、ROM86の書き換え処理の実行が要求される場合でも、書き換え処理が実行されないことにより、ROM86のデータの消失やデータ化けの発生を抑制することができる。組電池90から電源供給する場合においても同様である。一方、組電池90のSOCがしきい値よりも高い場合には、ECU80の動作を維持することができるため、ROM86においてデータの消失やデータ化けを発生させることなく書き換え処理を完了させることができる。その結果、ROM86に記憶されるデータを保護することができる。
【0044】
以下、ECU80において実行される処理の一例について
図3を参照しつつ説明する。
図3は、ECU80において実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、ECU80により、所定の周期毎に繰り返し実行される。
【0045】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU80は、電池情報の書き換え要求があるか否かを判定する。ECU80は、書き換え処理の実行条件である予め定められた条件が成立したときに電池情報の書き換え要求があると判定する。予め定められた条件は、上述したとおり、第1条件と、第2条件とのうちの少なくともいずれかの条件を含む。ECU80は、たとえば、ROM86に記憶される満充電容量とRAM84に記憶される満充電容量との差の大きさが所定量以上になるときに、第1条件が成立したと判定する。あるいは、ECU80は、ROM86に記憶されるSOCとRAM84に記憶されるSOCとの差の大きさが所定量以上になるときに、第1条件が成立したと判定する。あるいは、ECU80は、ROM86に記憶される使用時間とRAM84に記憶される使用時間との差の大きさが所定量以上になるときに、第1条件が成立したと判定する。電池情報の書き換え要求があると判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
【0046】
S102にて、ECU80は、組電池90のSOCを取得する。ECU80は、予め定められた時間間隔毎に算出され、RAM84に記憶される組電池90のSOCをRAM84から読み出すことによってSOCを取得してもよい。あるいは、ECU80は、たとえば、電圧センサ94によって検出される組電池90の電圧を用いてOCVを算出し、算出されたOCVを用いてSOCを算出することによってSOCを取得してもよい。あるいは、ECU80は、組電池90の電圧に加えて、組電池90の温度と電流と組電池90の内部抵抗等を用いてOCVを算出してもよい。その後処理はS104に移される。
【0047】
S104にて、ECU80は、組電池90のSOCがしきい値SOC(0)以上であるか否かを判定する。しきい値SOC(0)は、たとえば、予め定められた値であって、少なくとも電源回路88からMCU82に対してMCU82の動作が継続可能な電圧の供給が維持可能な値である。しきい値SOC(0)は、実験等によって適合される。しきい値SOC(0)は、たとえば、書き換え処理が実行される期間を用いて設定されてもよい。なお、書き換え処理が実行される期間としては、たとえば、十数秒程度の期間である。なお、しきい値SOC(0)は、たとえば、十数%程度の値である。組電池90のSOCがしきい値SOC(0)以上であると判定される場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。
【0048】
S106にて、ECU80は、電池情報の書き換え処理を実行する。すなわち、ECU80は、RAM84に記憶される電池情報を用いてROM86に記憶される電池情報を書き換えて更新する。電池情報は、上述したように組電池90のSOC、満充電容量および使用時間のうちの少なくともいずれかについての情報を含む。その後この処理は終了される。
【0049】
なお、組電池90のSOCがしきい値SOC(0)よりも低いと判定される場合(S104にてNO)、処理はS108に移される。
【0050】
S108にて、ECU80は、組電池90の充電を要求する。ECU80は、たとえば、充電電力が組電池90に供給されるように双方向DC/DCコンバータ60を制御してもよい。あるいは、ECU80は、PCS30の制御装置に対して組電池90の充電を要求するための信号を送信し、PCS30の制御装置は、ECU80から当該信号を受信したときに、充電電力が組電池90に供給されるように双方向DC/DCコンバータ60を制御してもよい。あるいは、ECU80は、双方向DC/DCコンバータ60に制御装置が設けられている場合には、当該制御装置に組電池の90の充電を要求するための信号を送信してもよい。その後処理はS104に戻される。なお、電池情報の書き換え要求がないと判定される場合(S100にてNO)、この処理は終了される。
【0051】
以上のような構造およびフローチャートに基づく蓄電システム1の動作の一例について
図4を参照しつつ説明する。
図4は、蓄電システム1の動作の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図4の横軸は、時間を示す。
図4の縦軸は、SOCと書き換え処理の実行の有無とを示す。
図4のLN1がSOCの変化を示す。
図4のLN2が書き換え処理の実行の有無の変化を示す。
【0052】
たとえば、組電池90からPCS30に電力が供給されている場合を想定する。組電池90からPCS30に電力が供給されている間には、ECU80により組電池90のSOC、満充電容量および使用時間が予め定められた時間間隔毎に算出され、RAM84に記憶される。このとき、
図4のLN1に示すように、算出された組電池90のSOCがしきい値SOC(0)よりも大きい場合を想定する。
【0053】
組電池90からPCS30への電力の供給が継続されると、組電池90のSOCは、時間の経過ともに低下していく。そして、時間t(0)に組電池90のSOCがしきい値SOC(0)よりも低い値になるものとする。
【0054】
時間t(1)にて、たとえば、RAM84に記憶される満充電容量がROM86に記憶された満充電容量との差の大きさが所定量以上になると、電池情報の書き換え要求があると判定する(100にてYES)。
【0055】
そのため、組電池90のSOCが取得される(S102)。取得されたSOCがしきい値SOC(0)よりも低いと判定される場合には(S104にてNO)、書き換え処理は実行されずに、組電池90の充電が要求される(S108)。
【0056】
双方向DC/DCコンバータ60が充電電力を組電池90に供給するように動作する場合には、組電池90のSOCが時間の経過とともに増加することとなる。
【0057】
時間t(2)にて、組電池90のSOCがしきい値SOC(0)以上になると(S104にてYES)、電池情報の書き換え処理が実行される(S106)。組電池90のSOCがしきい値SOC(0)以上に確保した状態で書き換え処理が実行されるので、停電等により組電池90の充電を行なえない状態になった場合でも、書き換え処理は中断することなく完了される。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係る蓄電システム1によると、組電池90のSOCがしきい値SOC(0)よりも低いときにはROM86の書き換え処理の実行が要求される場合でも、書き換え処理が実行されない。これにより、たとえば、停電等によって組電池90への電力供給が見込めない場合において、組電池90のSOCが低下し、電源回路88においてECU80の動作を維持する電力を生成できない状態になる可能性があるときに書き換え処理の実行を抑制できる。その結果、ROM86に記憶されるデータを保護することができる。一方、組電池90のSOCがしきい値よりも高い場合には、ECU80の動作を維持することができるため、ROM86においてデータの消失やデータ化けを発生させることなく書き換え処理を完了させることができる。そのため、ROM86のデータの消失やデータ化けの発生を抑制することができる。したがって、制御装置内のメモリに記憶されたデータの消失およびデータ化けの発生を抑制する蓄電システムを提供することができる。
【0059】
さらに、組電池90のSOCが確保されている間においては、組電池90からPCS30に電力が供給されているときに電力供給を停止させることなくROM86の書き換え処理を完了させることができる。
【0060】
さらに、組電池90のSOC、満充電容量あるいは使用時間などの情報について予め定められた条件が成立したときにROM86に記憶された内容を更新することによって、ECU80への電源が一旦遮断されてその後に復帰する場合にも、組電池90に関する直近の情報を取得することができる。そのため、それらの情報を劣化状態の判定などの他の制御に用いることができる。
【0061】
さらに、組電池90のSOCがしきい値SOC(0)よりも低いときには、充電が要求されるので、組電池90への充電が行なわれることにより、書き換え処理を完了できるSOCを確保することができる。
【0062】
以下、変形例について記載する。
【0063】
上述の実施の形態では、しきい値SOC(0)は、固定値である場合を一例として説明したが、しきい値SOC(0)は、たとえば、組電池90からPCS30への電力の供給量(たとえば、電流)の大きさに応じて設定されてもよい。ECU80は、たとえば、PCS30への電力の供給量の大きさが大きくなるほど値が大きくなり、供給量の大きさが小さくなるほど値が小さくなるようにSOC(0)を設定してもよい。
【0064】
さらに上述の実施の形態では、SOCがしきい値SOC(0)よりも低い場合に、書き換え処理を実行しないものとして説明したが、たとえば、SOCがしきい値SOC(0)よりも低い場合でも、太陽光発電装置20における発電量がしきい値よりも大きいという条件と、電気負荷での消費電力量がしきい値よりも小さいという条件と、車両50のAC/DCコンバータ40に接続されているという条件とのうちの少なくともいずれかの条件が成立する場合には、書き換え処理を実行するものとしてもよい。あるいは、少なくともいずれかの条件が成立している場合には、しきい値SOC(0)を初期値よりも低い値に設定してもよい。
【0065】
さらに上述の実施の形態では、書き換え要求がある場合に、SOCがしきい値SOC(0)よりも低いと、書き換え処理を実行せずに組電池90の充電を要求するものとして説明したが、たとえば、SOCがしきい値SOC(0)よりも低い場合に、書き換え処理の実行を禁止してもよい。
【0066】
さらに上述の実施の形態では、しきい値SOC(0)が予め定められた値であるものとして説明したが、直近の予め定められた期間(たとえば、十数秒の期間)におけるSOCの低下量を算出し、算出されたSOCの低下量を用いてSOC(0)を設定してもよい。ECU80は、たとえば、SOCの下限値に算出されたSOCの低下量を加算した値以上の値をSOC(0)として設定してもよい。予め定められた期間は、たとえば、書き換え処理の実行期間であってもよいし、書き換え処理の実行期間の最大値あるいは最小値を用いて設定されてもよい。ECU80は、たとえば、予め定められた期間におけるSOCの移動平均を算出して、予め定められた期間の終期におけるSOCが始期におけるSOCよりも小さい場合には、予め定められた期間の始期におけるSOCから終期におけるSOCを減算することによってSOCの低下量を算出してもよい。
【0067】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 蓄電システム、2 電力網、4 分電盤、10 電気負荷、20 太陽光発電装置、40 AC/DCコンバータ、60 双方向DC/DCコンバータ、50 車両、70 電池ユニット、80 ECU、82 MCU、84 RAM、86 ROM、88 電源回路、90 組電池、92 セル、94 電圧センサ。