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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176159
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】光学ユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/04 20060101AFI20231206BHJP
   G02B 7/18 20210101ALI20231206BHJP
   G03B 19/02 20210101ALI20231206BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20231206BHJP
【FI】
G02B5/04 G
G02B7/18 100
G03B19/02
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088296
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】新井 努
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【テーマコード(参考)】
2H042
2H043
2H054
5C122
【Fターム(参考)】
2H042CA16
2H042CA17
2H043BA00
2H043CA02
2H043CA09
2H054BB02
5C122DA09
5C122EA57
5C122FB15
5C122GE04
5C122GE11
5C122GE17
5C122GE22
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】プリズムと、プリズムが接着固定されるプリズムホルダとを備える光学ユニットにおいて、プリズムの入射面および射出面への接着剤の付着を容易に防止することが可能な光学ユニットを提供する。
【解決手段】光学ユニット1は、三角柱状に形成されるプリズム10と、プリズム10が接着固定されるプリズムホルダ11とを備えている。プリズム10には、外部から光が入射する入射面10aと、入射面10aから入射した光を反射する反射面と、反射面で反射した光を射出する射出面10cとが形成され、プリズムホルダ11には、プリズム10の反射面が当接する当接面11cと、プリズム10の反射面に付着してプリズム10をプリズムホルダ11に接着固定するための接着剤が配置される接着用穴11dとが形成されている。接着用穴11dは、プリズムホルダ11を貫通している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角柱状に形成されるプリズムと、前記プリズムが接着固定されるプリズムホルダとを備え、
前記プリズムには、外部から光が入射する入射面と、前記入射面から入射した光を反射する反射面と、前記反射面で反射した光を射出する射出面とが形成され、
前記プリズムホルダには、前記反射面が当接する当接面と、前記反射面に付着して前記プリズムを前記プリズムホルダに接着固定するための接着剤が配置される接着用穴とが形成され、
前記接着用穴は、前記プリズムホルダを貫通していることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記当接面は、環状に形成され、
前記接着用穴は、前記当接面の内周側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記プリズムホルダを回動可能に保持する保持体と、前記保持体に対して前記プリズムホルダを回動させる磁気駆動機構とを備え、
前記磁気駆動機構は、前記プリズムホルダおよび前記保持体のいずれか一方に固定される駆動用磁石と、前記プリズムホルダおよび前記保持体のいずれか他方に固定されるとともに前記駆動用磁石に対向配置される駆動用コイルとを備え、
前記接着用穴は、前記駆動用磁石と前記駆動用コイルとが対向する方向である対向方向に対して傾いた方向において前記プリズムホルダを貫通していることを特徴とする請求項1または2記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記接着用穴は、前記対向方向に対して90°傾いた方向において前記プリズムホルダを貫通していることを特徴とする請求項3記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記プリズムホルダには、前記接着用穴の中に配置される補強用のリブが形成され、
前記リブの、前記当接面側の端面と前記反射面とが接触せずに離れていることを特徴とする請求項1または2記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記リブの、前記当接面側の端面には、面取り加工が施されていることを特徴とする請求項5記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記プリズムホルダは、三角柱状に形成される前記プリズムの端面に対向する対向面が形成される側壁部を備え、
前記側壁部には、前記反射面が前記当接面に当接している状態の前記プリズムを前記プリズムホルダに対して位置決めするための位置決め用突起が形成され、
前記入射面または前記射出面が前記位置決め用突起に接触することで、前記プリズムホルダに対して前記プリズムが位置決めされていることを特徴とする請求項1または2記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムと、プリズムが接着固定されるプリズムホルダとを備える光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レンズユニットと反射ユニットとイメージセンサとを備える光学システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の光学システムでは、反射ユニットは、プリズムとプリズム駆動機構とを備えている。プリズム駆動機構は、可動部と固定部と駆動モジュールとを備えている。可動部は、プリズムが接着固定されるプリズムホルダを備えている。プリズムは、三角柱状に形成されている。プリズムには、外部から光が入射する入射面と、入射面から入射した光を反射する反射面と、反射面で反射した光を射出する射出面とが形成されている。
【0003】
特許文献1に記載の光学システムでは、プリズムの反射面に対向する対向面がプリズムホルダに形成されている。また、プリズムホルダには、三角柱状に形成されるプリズムの両端面の外側に配置される取付用壁部が形成されている。取付用壁部には溝が形成されている。特許文献1に記載の光学システムでは、プリズムホルダにプリズムを固定するときに、プリズムホルダの対向面上に配置されるスペーサの上にプリズムが配置された状態で、取付用壁部の溝に接着剤が充填される。取付用壁部の溝に充填された接着剤は、取付用壁部とプリズムの端面との間で広がる。プリズムは、取付用壁部とプリズムの端面との間で広がる接着剤によってプリズムホルダに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/227300号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光学システムでは、プリズムホルダの取付用壁部とプリズムの端面との間で広がる接着剤によってプリズムがプリズムホルダに固定されているため、プリズムホルダにプリズムを接着固定するときに、取付用壁部とプリズムの端面との間から接着剤が溢れるとともに、溢れた接着剤が入射面や射出面に向かって流れて、入射面や射出面に接着剤が付着するおそれがある。入射面や射出面に接着剤が付着すると、入射面や射出面を通過する光が接着剤によって遮られてプリズムの機能が低下する。取付用壁部の溝に充填される接着剤の量を厳密に管理することで、接着剤の溢れ出しを防止して入射面や射出面への接着剤の付着を防止することも可能であるが、この場合には、プリズムの接着工程が煩雑になる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、プリズムと、プリズムが接着固定されるプリズムホルダとを備える光学ユニットにおいて、プリズムの入射面および射出面への接着剤の付着を容易に防止することが可能な光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の光学ユニットは、三角柱状に形成されるプリズムと、プリズムが接着固定されるプリズムホルダとを備え、プリズムには、外部から光が入射する入射面と、入射面から入射した光を反射する反射面と、反射面で反射した光を射出する射出面とが形成され、プリズムホルダには、反射面が当接する当接面と、反射面に付着してプリズムをプリズムホルダに接着固定するための接着剤が配置される接着用穴とが形成され、接着用穴は、プリズムホルダを貫通していることを特徴とする。
【0008】
本発明の光学ユニットでは、プリズムの反射面に付着してプリズムをプリズムホルダに接着固定するための接着剤が配置される接着用穴がプリズムホルダを貫通している。そのため、本発明では、プリズムの反射面に接着剤が付着するように、接着用穴の開口側から接着用穴に接着剤を注入することでプリズムをプリズムホルダに接着固定することが可能になる。したがって、本発明では、接着用穴に注入される接着剤の量を厳密に管理しなくても、接着用穴に注入された接着剤が接着用穴から溢れてプリズムの入射面および射出面に向かって流れるのを防止することが可能になる。その結果、本発明では、プリズムの入射面および射出面への接着剤の付着を容易に防止することが可能になる。
【0009】
本発明において、当接面は、環状に形成され、接着用穴は、当接面の内周側に形成されていることが好ましい。このように構成すると、接着用穴が全周に亘って当接面に囲まれているため、接着用穴に入った接着剤が当接面側においてプリズムの入射面および射出面に向かって流れるのを確実に防止することが可能になる。また、このように構成すると、プリズムの反射面が当接する当接面が環状に形成されているため、プリズムホルダに接着固定されるプリズムの状態を安定させることが可能になる。
【0010】
本発明において、光学ユニットは、プリズムホルダを回動可能に保持する保持体と、保持体に対してプリズムホルダを回動させる磁気駆動機構とを備え、磁気駆動機構は、プリズムホルダおよび保持体のいずれか一方に固定される駆動用磁石と、プリズムホルダおよび保持体のいずれか他方に固定されるとともに駆動用磁石に対向配置される駆動用コイルとを備え、接着用穴は、駆動用磁石と駆動用コイルとが対向する方向である対向方向に対して傾いた方向においてプリズムホルダを貫通していることが好ましい。
【0011】
このように構成すると、駆動用磁石または駆動用コイルをプリズムホルダに固定した後に接着用穴の開口側から接着用穴に接着剤を注入してプリズムホルダにプリズムを接着固定することが可能になる。したがって、駆動用磁石または駆動用コイルをプリズムホルダに固定するときに、プリズムホルダに接着固定されたプリズムに塵埃が付着するといった問題の発生を防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、接着用穴は、対向方向に対して90°傾いた方向においてプリズムホルダを貫通していることが好ましい。このように構成すると、接着用穴の開口を大きくすることが可能になるため、接着用穴への接着剤の注入作業を容易に行うことが可能になる。
【0013】
本発明において、プリズムホルダには、接着用穴の中に配置される補強用のリブが形成され、リブの、当接面側の端面と反射面とが接触せずに離れていることが好ましい。このように構成すると、リブの、当接面側の端面と、プリズムホルダの反射面との間に接着剤を入れることが可能になる。したがって、リブの、当接面側の端面を利用して、プリズムホルダに対するプリズムの接着面積を広げることが可能になり、その結果、プリズムホルダに対するプリズムの接着強度を高めることが可能になる。
【0014】
本発明において、リブの、当接面側の端面には、面取り加工が施されていることが好ましい。このように構成すると、リブの、当接面側の端面と、プリズムの反射面との間に接着剤が入りやすくなる。
【0015】
本発明において、プリズムホルダは、三角柱状に形成されるプリズムの端面に対向する対向面が形成される側壁部を備え、側壁部には、反射面が当接面に当接している状態のプリズムをプリズムホルダに対して位置決めするための位置決め用突起が形成され、入射面または射出面が位置決め用突起に接触することで、プリズムホルダに対してプリズムが位置決めされていることが好ましい。このように構成すると、プリズムホルダにプリズムを接着固定する際のプリズムの状態を安定させることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、プリズムと、プリズムが接着固定されるプリズムホルダとを備える光学ユニットにおいて、プリズムの入射面および射出面への接着剤の付着を容易に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかる光学ユニットの斜視図である。
図2図1に示す光学ユニットが内蔵されるスマートフォンの斜視図である。
図3図2に示すスマートフォンに内蔵されるカメラの構成を説明するための概略図である。
図4図1に示す光学ユニットの分解斜視図である。
図5図1に示すプリズムおよびプリズムホルダの断面図である。
図6図1に示すプリズムおよびプリズムホルダを異なる方向から示す斜視図である。
図7図4に示すプリズムホルダの斜視図である。
図8図7に示すプリズムホルダの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(光学ユニットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる光学ユニット1の斜視図である。図2は、図1に示す光学ユニット1が内蔵されるスマートフォン2の斜視図である。図3は、図2に示すスマートフォン2に内蔵されるカメラ3の構成を説明するための概略図である。図4は、図1に示す光学ユニット1の分解斜視図である。
【0020】
本形態の光学ユニット1は、光学像の振れを補正するための振れ補正機能を備えている。光学ユニット1は、たとえば、スマートフォン2に内蔵されている。また、光学ユニット1は、スマートフォン2に内蔵されるカメラ3の一部を構成している。カメラ3は、スマートフォン2の外部からの光が入射するレンズ4と、撮像素子5が実装される基板6とを備えている。なお、光学ユニット1は、スマートフォン2以外の携帯機器等に内蔵されていても良い。
【0021】
カメラ3では、レンズ4の光軸L1と撮像素子5の撮像面の中心を通過する法線L2とが直交している。すなわち、レンズ4の光軸Lと撮像素子5の撮像面とは平行になっている。光学ユニット1は、レンズ4から撮像素子5に向かう光路において、レンズ4と撮像素子5との間に配置されている。光学ユニット1と撮像素子5との間には、レンズ7が配置されている。レンズ7の光軸は、法線L2と一致している。
【0022】
光学ユニット1は、三角柱状に形成されるプリズム10を備えている。プリズム10には、外部からの光が入射する入射面10aと、入射面10aから入射した光を反射する反射面10bと、反射面10bで反射した光を射出する射出面10cとが形成されている。入射面10aと射出面10cとがなす角度は90°となっており、プリズム10の断面形状は、直角三角形状となっている。より具体的には、プリズム10の断面形状は、直角二等辺三角形状となっている。入射面10aには、レンズ4を介してスマートフォン2の外部からの光が入射する。反射面10bは、反射面10bに入射する光の光軸を略90°折り曲げる。射出面10cは、反射面10bで反射した光を撮像素子5に向かって射出する。
【0023】
以下の説明では、レンズ4の光軸L1の方向(図1等のZ方向)を上下方向とし、撮像素子5の撮像面の法線L2の方向(図1等のX方向)を前後方向とし、上下方向と前後方向とに直交する図1等のY方向を左右方向とする。また、上下方向のうちの、光学ユニット1に対してレンズ4が配置される側(図1等のZ1方向側)を「上」側とし、その反対側である図1等のZ2方向側を「下」側とする。また、前後方向のうちの、光学ユニット1に対して撮像素子5が配置される側(図1等のX1方向側)を「前」側とし、その反対側である図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。
【0024】
光学ユニット1は、プリズム10に加えて、プリズム10が接着固定されるプリズムホルダ11と、プリズムホルダ11を回動可能に保持する保持体12と、保持体12に対してプリズムホルダ11を回動させる磁気駆動機構13とを備えている。また、光学ユニット1は、保持体12に対するプリズムホルダ11の回動中心を構成する回動軸部14を備えている。プリズムホルダ11は、保持体12に対して左右方向を回動の軸方向として回動可能となっている。
【0025】
プリズムホルダ11が所定の基準位置に配置されているときには、プリズム10の入射面10aは、上下方向に直交し、射出面10cは、前後方向に直交している。また、三角柱状に形成されるプリズム10の端面10d(図4参照)は、左右方向に直交する平面となっている。光学ユニット1は、保持体12に対するプリズムホルダ11の回動動作を行うことで、光学像の振れを補正する。なお、振れ補正が行われるときの、保持体12に対するプリズムホルダ11の回動角度はそれほど大きくないため、振れ補正時においても、入射面10aは上下方向に略直交し、射出面10cは前後方向に略直交している。
【0026】
プリズムホルダ11は、樹脂材料で形成されている。プリズムホルダ11は、三角柱状に形成されるホルダ本体部11aと、ホルダ本体部11aの両端に繋がる2個の側壁部11bとを備えている。本形態のプリズムホルダ11は、ホルダ本体部11aと2個の側壁部11bとから構成されている。ホルダ本体部11aは、三角柱状に形成されるホルダ本体部11aの軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。側壁部11bは、ホルダ本体部11aの左右方向の両端に繋がっている。側壁部11bは、長方形の平板状に形成されている。側壁部11bは、側壁部11bの厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。プリズムホルダ11の具体的な構成については後述する。
【0027】
保持体12は、樹脂材料で形成されている。保持体12は、保持体12の左右方向の側面を構成する2個の側面部12aと、保持体12の底面を構成する底面部12bと、保持体12の後面を構成する背面部12cとから構成されている。プリズムホルダ11は、左右方向において2個の側面部12aの間に配置されている。また、プリズムホルダ11は、底面部12bの上側に配置されるとともに、背面部12cの前側に配置されている。
【0028】
磁気駆動機構13は、プリズムホルダ11に固定される駆動用磁石15と、駆動用磁石15に対向配置される駆動用コイル16とを備えている。駆動用磁石15は、ホルダ本体部11aの後面に固定されている。駆動用コイル16は、駆動用磁石15の後ろ側に配置されており、前後方向で駆動用磁石15と対向している。本形態の前後方向(X方向)は、駆動用磁石15と駆動用コイル16とが対向する方向である対向方向となっている。駆動用コイル16は、フレキシブルプリント基板(FPC)17に実装されている。FPC17は、保持体12に固定されている。すなわち、駆動用コイル16は、FPC17を介して保持体12に固定されている。保持体12の背面部12cには、駆動用コイル16が配置される貫通穴が形成されている。
【0029】
回動軸部14は、左右方向におけるプリズムホルダ11の外側に配置される球状の2個のボール20と、ボール20が固定される2枚のボール固定板21と、ボール20を左右方向の内側に向かって付勢する2枚の板バネ22とを備えている。ボール20、ボール固定板21および板バネ22は、鋼材等の金属材料で形成されている。ボール固定板21は、平板状に形成されるボール固定部21aを備えている。ボール固定部21aは、ボール固定部21aの厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。
【0030】
ボール固定板21は、プリズムホルダ11の側壁部11bの左右方向の外側の面に形成される凹部の中に配置された状態でプリズムホルダ11に固定されている。また、ボール固定板21は、プルズムホルダ11に接着されて固定されている。ボール固定部21aの中心には、ボール20の固定状態を安定させるための貫通穴が形成されている。ボール20の一部は、ボール固定部21aの貫通穴の中に配置されている。ボール20は、左右方向におけるボール固定部21aの外側の面に溶接されて固定されている。
【0031】
板バネ22は、保持体12に固定される被固定部22aと、被固定部22aに繋がるバネ部22bとを備えている。被固定部22aは、保持体12の側面部12aの左右方向の内側の面に取り付けられている。バネ部22bは、左右方向において被固定部22aの内側に配置されている。バネ部22bには、ボール20が接触する凹曲面状の受け面が形成されている。この受け面は、左右方向の外側に向かって窪んでいる。2個のボール20は、上下方向において同じ位置に配置されている。プリズムホルダ11は、2個のボール20の中心を通過する軸線を回動中心にして保持体12に対して回動する。
【0032】
(プリズムホルダの構成)
図5は、図1に示すプリズム10およびプリズムホルダ11の断面図である。図6は、図1に示すプリズム10およびプリズムホルダ11を異なる方向から示す斜視図である。図7は、図4に示すプリズムホルダ11の斜視図である。図8は、図7に示すプリズムホルダ11の平面図である。
【0033】
上述のように、プリズムホルダ11は、三角柱状に形成されるホルダ本体部11aと、ホルダ本体部11aの左右方向の両端に繋がる2個の側壁部11bとから構成されている。ホルダ本体部11aは、ホルダ本体部11aの後面が前後方向と略直交し、ホルダ本体部11aの下面が上下方向と略直交するように配置されている。プリズム10は、ホルダ本体部11aの前上側に配置されている。また、プリズム10は、左右方向において2個の側壁部11bの間に配置されている。ホルダ本体部11aには、プリズム10の反射面10bが当接する当接面11cと、プリズム10をプリズムホルダ11に接着固定するための接着剤Gが配置される接着用穴11dと、接着用穴11dの中に配置される補強用のリブ11e、11fとが形成されている。
【0034】
ホルダ本体部11aの前上面が当接面11cとなっている。当接面11cは、前側に向かうにしたがって下側に向かうように傾斜する平面状の傾斜面となっている。当接面11cは、環状に形成されている。また、当接面11cは、長方形の枠状に形成されている。具体的には、当接面11cは、左右方向を長辺の方向とする長方形の枠状に形成されている。プリズム10の反射面10bは、前上側から当接面11cに当接している。
【0035】
接着用穴11dは、当接面11cの内周側に形成されている。すなわち、当接面11cの内周側が接着用穴11dとなっている。接着用穴11dは、プリズムホルダ11を貫通している。本形態では、接着用穴11dは、駆動用磁石15と駆動用コイル16とが対向する方向である前後方向に対して傾いた方向においてプリズムホルダ11を貫通している。具体的には、接着用穴11dは、前後方向に対して90°傾いた上下方向においてプリズムホルダ11を貫通している。より具体的には、プリズムホルダ11が所定の基準位置に配置されているときに、接着用穴11dは、上下方向においてプリズムホルダ11を貫通している。接着用穴11dは、ホルダ本体部11aの下面からホルダ本体部11aの前上面まで貫通している。
【0036】
上述のように、リブ11e、11fは、接着用穴11dの中に形成されている。本形態では、複数のリブ11e、11fが接着用穴11dの中に形成されている。具体的には、接着用穴11dの左右方向の両端のそれぞれにリブ11eが形成されるとともに、2個のリブ11eの間に3個のリブ11fが形成されている。3個のリブ11fは、たとえば、左右方向において所定のピッチで配置されている。2個のリブ11eの前下端および3個のリブ11fの前下端は、互いに繋がっている。
【0037】
接着用穴11dの一部は、リブ11e、11fによって塞がれている。本形態では、接着用穴11dの、リブ11e、11fの間の部分が上下方向でプリズムホルダ11を貫通している。すなわち、本形態では、長方形状の4個の穴が上下方向でプリズムホルダ11を貫通している。この4個の穴の、上下方向から見たときの形状は、前後方向を長辺の方向とする長方形状となっている。
【0038】
リブ11e、11fの、当接面11c側の端面(すなわち、リブ11e、11fの前上端面、以下、「端面11g」とする。)は、平面となっている。端面11gは、当接面11cよりも下側に配置されている。そのため、端面11gと反射面10bとは接触せずに離れている。本形態では、当接面11cと端面11gとが平行になっており、端面11gと反射面10bとの間には一定の間隔が形成されている。端面11gには、面取り加工が施されている。すなわち、端面11gの端部には、面取り加工によって形成された面取り部11hが形成されている。
【0039】
左右方向における側壁部11bの内側面は、プリズム10の端面10dに対向する対向面11jとなっている。すなわち、側壁部11bには、対向面11jが形成されている。対向面11jは、わずかな隙間を介して端面10dと対向している。側壁部11bには、プリズム10の反射面10bが当接面11cに当接している状態のプリズム10をプリズムホルダ11に対して位置決めするための位置決め用突起11kが形成されている。位置決め用突起11kは、側壁部11bの前端側に形成されている。位置決め用突起11kは、左右方向の内側に向かって突出している。
【0040】
位置決め用突起11kの後面は、前後方向に直交する平面となっている。本形態では、プリズム10の射出面10cが位置決め用突起11kに接触することで、プリズムホルダ11に対してプリズム10が位置決めされている。具体的には、左右方向における射出面10cの端部が位置決め用突起11kの後面に接触することで、反射面10bが当接面11cに当接している状態のプリズム10がプリズムホルダ11に対して位置決めされている。
【0041】
プリズムホルダ11にプリズム10を接着固定するときには、プリズム10の反射面10bを当接面11cに当接させるとともに射出面10cを位置決め用突起11kの後面に当接させた後、この状態を維持したまま、プリズム10およびプリズムホルダ11を上下反転させる。この状態では、リブ11e、11fの端面11gと反射面10bとの間には一定の隙間が形成されている。また、この状態では、接着用穴11dの一端は、プリズム10によって塞がれている。
【0042】
この状態で、接着用穴11dの他端の開口から接着用穴11dに接着剤Gを注入する。接着用穴11dに注入された接着剤Gは、反射面10bに付着する。また、接着剤Gは、端面11gと反射面10bとの間にも入り込む。なお、本形態では、プリズムホルダ11にプリズム10が固定される前に、駆動用磁石15がプリズムホルダ11に固定される。また、図6では、接着剤Gの図示を省略している。
【0043】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、プリズム10の反射面10bに付着してプリズム10をプリズムホルダ11に接着固定するための接着剤Gが配置される接着用穴11dがプリズムホルダ11を貫通している。そのため、本形態では、上述のように、反射面10bに接着剤Gが付着するように、接着用穴11dの開口側から接着用穴11dに接着剤Gを注入することでプリズム10をプリズムホルダ11に接着固定することが可能になる。したがって、本形態では、接着用穴11dに注入される接着剤Gの量を厳密に管理しなくても、接着用穴11dに注入された接着剤Gが接着用穴11dから溢れてプリズム10の入射面10aおよび射出面10cに向かって流れるのを防止することが可能になる。その結果、本形態では、プリズム10の入射面10aおよび射出面10cへの接着剤Gの付着を容易に防止することが可能になる。
【0044】
また、本形態では、プリズム10の反射面10bが当接するプリズムホルダ11の当接面11cが環状に形成されており、接着用穴11dは、環状に形成される当接面11cの内周側に形成されている。すなわち、本形態では、接着用穴11dが全周に亘って当接面11cに囲まれている。そのため、本形態では、接着用穴11dに入った接着剤Gが当接面11cの側においてプリズム10の入射面10aおよび射出面10cに向かって流れるのを確実に防止することが可能になる。また、本形態では、当接面11cが環状に形成されているため、プリズムホルダ11に接着固定されるプリズム10の状態を安定させることが可能になる。
【0045】
本形態では、接着用穴11dは、駆動用磁石15と駆動用コイル16とが対向する前後方向に対して90°傾いた上下方向においてプリズムホルダ11を貫通している。そのため、本形態では、上述のように、駆動用磁石15をプリズムホルダ11に固定した後に、接着用穴11dに接着剤Gを注入してプリズム10をプリズムホルダ11に固定することが可能になる。したがって、本形態では、駆動用磁石15をプリズムホルダ11に固定するときに、プリズムホルダ11に固定されたプリズム10に塵埃が付着するといった問題の発生を防止することが可能になる。
【0046】
また、本形態では、接着用穴11dが前後方向に対して90°傾いた方向においてプリズムホルダ11を貫通しているため、接着用穴11dの下側の開口を大きくすることが可能になる。したがって、本形態では、接着用穴11dへの接着剤Gの注入作業を容易に行うことが可能になる。
【0047】
本形態では、接着用穴11dの中に配置されるリブ11e、11fの端面11gと、当接面11cに当接するプリズム10の反射面10bとが接触せずに離れている。そのため、本形態では、上述のように、リブ11e、11fの端面11gと反射面10bとの間にも接着剤Gが入り込む。したがって、本形態では、リブ11e、11fの端面11gを利用して、プリズムホルダ11に対するプリズム10の接着面積を広げることが可能になり、その結果、プリズムホルダ11に対するプリズム10の接着強度を高めることが可能になる。また、本形態では、リブ11e、11fの端面11gに面取り加工が施されているため、リブ11e、11fの端面11gとプリズム10の反射面10bとの間に接着剤Gが入りやすくなる。
【0048】
本形態では、プリズムホルダ11の側壁部11bに位置決め用突起11kが形成されており、プリズム10の射出面10cが位置決め用突起11kに接触することで、反射面10bが当接面11cに当接している状態のプリズム10がプリズムホルダ11に対して位置決めされている。そのため、本形態では、プリズムホルダ11にプリズム10を接着固定する際のプリズム10の状態を安定させることが可能になる。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0050】
上述した形態において、プリズム10の入射面10aが位置決め用突起11kに接触することで、プリズムホルダ11に対してプリズム10が位置決めされているように、位置決め用突起11kが形成されていても良い。この場合には、位置決め用突起11kは、側壁部11bの上端側に形成されており、位置決め用突起11kの下面は、上下方向に直交する平面となっている。また、左右方向における入射面10aの端部が位置決め用突起11kの下面に接触する。
【0051】
上述した形態において、接着用穴11dは、前後方向においてプリズムホルダ11を貫通していても良い。具体的には、プリズムホルダ11が所定の基準位置に配置されているときに、接着用穴11dが前後方向においてプリズムホルダ11を貫通していても良い。また、上述した形態において、リブ11e、11fの端面11gに面取り加工が施されていなくても良い。さらに、上述した形態において、リブ11e、11fの端面11gが当接面11cと同一平面上に配置されていて、端面11gとプリズム10の反射面10bとが接触していても良い。また、上述した形態において、プリズムホルダ11にリブ11e、11fが形成されていなくても良い。また、上述した形態において、当接面11cは環状に形成されていなくても良い。
【0052】
上述した形態において、駆動用磁石15が保持体12に固定され、駆動用コイル16がプリズムホルダ11に固定されていても良い。また、上述した形態において、光学ユニット1は、保持体12を回動可能に保持する固定体を備えていても良い。この場合には、保持体12は、上下方向を回動の軸方向として固定体に対して回動可能になっている。光学ユニット1は、固定体に対して保持体12を回動させる磁気駆動機構と、固定体に対する保持体12の回動中心を構成する回動軸部とを備えている。
【0053】
(本技術の構成)
なお、本技術は以下のような構成を取ることが可能である。
(1)三角柱状に形成されるプリズムと、前記プリズムが接着固定されるプリズムホルダとを備え、
前記プリズムには、外部から光が入射する入射面と、前記入射面から入射した光を反射する反射面と、前記反射面で反射した光を射出する射出面とが形成され、
前記プリズムホルダには、前記反射面が当接する当接面と、前記反射面に付着して前記プリズムを前記プリズムホルダに接着固定するための接着剤が配置される接着用穴とが形成され、
前記接着用穴は、前記プリズムホルダを貫通していることを特徴とする光学ユニット。
(2)前記当接面は、環状に形成され、
前記接着用穴は、前記当接面の内周側に形成されていることを特徴とする(1)記載の光学ユニット。
(3)前記プリズムホルダを回動可能に保持する保持体と、前記保持体に対して前記プリズムホルダを回動させる磁気駆動機構とを備え、
前記磁気駆動機構は、前記プリズムホルダおよび前記保持体のいずれか一方に固定される駆動用磁石と、前記プリズムホルダおよび前記保持体のいずれか他方に固定されるとともに前記駆動用磁石に対向配置される駆動用コイルとを備え、
前記接着用穴は、前記駆動用磁石と前記駆動用コイルとが対向する方向である対向方向に対して傾いた方向において前記プリズムホルダを貫通していることを特徴とする(1)または(2)記載の光学ユニット。
(4)前記接着用穴は、前記対向方向に対して90°傾いた方向において前記プリズムホルダを貫通していることを特徴とする(3)記載の光学ユニット。
(5)前記プリズムホルダには、前記接着用穴の中に配置される補強用のリブが形成され、
前記リブの、前記当接面側の端面と前記反射面とが接触せずに離れていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の光学ユニット。
(6)前記リブの、前記当接面側の端面には、面取り加工が施されていることを特徴とする(5)記載の光学ユニット。
(7)前記プリズムホルダは、三角柱状に形成される前記プリズムの端面に対向する対向面が形成される側壁部を備え、
前記側壁部には、前記反射面が前記当接面に当接している状態の前記プリズムを前記プリズムホルダに対して位置決めするための位置決め用突起が形成され、
前記入射面または前記射出面が前記位置決め用突起に接触することで、前記プリズムホルダに対して前記プリズムが位置決めされていることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の光学ユニット。
【符号の説明】
【0054】
1 光学ユニット
10 プリズム
10a 入射面
10b 反射面
10c 射出面
10d プリズムの端面
11 プリズムホルダ
11b 側壁部
11c 当接面
11d 接着用穴
11e、11f リブ
11g 端面(リブの、当接面側の端面)
11j 対向面
11k 位置決め用突起
12 保持体
13 磁気駆動機構
15 駆動用磁石
16 駆動用コイル
G 接着剤
X 対向方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8