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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176162
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20231206BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/511 110
A61F13/47 300
A61F13/475 130
A61F13/475 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088306
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永島 真里子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA13
3B200CA11
3B200DA08
3B200DB01
3B200DB05
3B200DC06
(57)【要約】
【課題】臀部へのフィット性が高く、伝い漏れの発生を防止できる吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品において、少なくとも前記トップシート及び前記吸収体に、前記トップシート側から前記バックシート側へ窪む圧搾溝が形成されており、前記圧搾溝が、長手方向に沿って延在する一対の中央圧搾溝と、前記一対の中央圧搾溝の後方に、当該一対の中央圧搾溝と所定の長手方向間隔で離隔した一対の第1後方圧搾溝とを含み、前記所定の長手方向間隔が、前記一対の中央圧搾溝の後端の横方向間隔及び前記一対の第1後方圧搾溝の前端の横方向間隔より大きく、長手方向中心線の各側で、前記一対の中央圧搾溝の後端と前記一対の第1後方圧搾溝の前端とを通る仮想線が長手方向に略平行に延びる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側のトップシートと、前記肌側と反対側の非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備える細長の本体を有する吸収性物品であって、
少なくとも前記トップシート及び前記吸収体に、前記トップシート側から前記バックシート側へ窪む圧搾溝が形成されており、
前記圧搾溝が、
長手方向に沿って延在する一対の中央圧搾溝と、
前記一対の中央圧搾溝の後方に、当該一対の中央圧搾溝と所定の長手方向間隔で離隔した一対の後方圧搾溝とを含み、
前記所定の長手方向間隔が、前記一対の中央圧搾溝の後端の横方向間隔及び前記一対の後方圧搾溝の前端の横方向間隔より大きく、
長手方向中心線の各側で、前記一対の中央圧搾溝の後端と前記一対の後方圧搾溝の前端とを通る仮想線が長手方向に略平行に延びる、吸収性物品。
【請求項2】
前記一対の中央圧搾溝が、後端を含み且つ後方に向かうほど長手方向中心線に近付くよう傾斜する部分を含み、且つ前記一対の後方圧搾溝が、前端を含み且つ前方に向かうほど長手方向中心線に近付くよう傾斜する部分を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記中央圧搾溝の後端部分の長手方向中心線に対する傾斜角度と、前記後方圧搾溝の前端部分の長手方向中心線に対する傾斜角度との差が10°以下である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一対の後方圧搾溝が後方で連結している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記一対の後方圧搾溝の前端の横方向間隔が、前記一対の中央圧搾溝の後端の横方向間隔と同じ、又は当該横方向間隔より小さい、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記圧搾溝がさらに、前記一対の後方圧搾溝の横方向外側にそれぞれ、長手方向に沿って延在する側方圧搾溝を含み、
前記側方圧搾溝の後端部分はそれぞれ、前記後方圧搾溝に向かうよう湾曲している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品おいて、長時間にわたる又は夜間就寝時での使用に対応するために、本体の後方領域を長くした構成が知られている。
【0003】
上記のような後方領域の長い吸収性物品では、トップシート側から圧搾されてなる圧搾溝(エンボス)が、長手方向に沿って体液排出口に対応させる領域から後方領域まで広い範囲にわたり、長手方向で見て連続して形成されているものが多い(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-100846号公報
【特許文献2】特開2014-223215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、夜間就寝時、或いは長時間にわたって吸収性物品を使用した場合、装着の仕方、装着者の装着中の動き等によっては、体液が臀裂を伝って臀裂の後方又は後側方に漏れてしまう懸念が依然としてある。よって、臀部へのフィット性、特に臀裂へのフィット性をさらに向上させ、伝い漏れを防止することが求められている。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、臀部へのフィット性が高く、伝い漏れの発生を防止できる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、肌側のトップシートと、前記肌側と反対側の非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備える細長の本体を有する吸収性物品であって、少なくとも前記トップシート及び前記吸収体に、前記トップシート側から前記バックシート側へ窪む圧搾溝が形成されており、前記圧搾溝が、長手方向に沿って延在する一対の中央圧搾溝と、前記一対の中央圧搾溝の後方に、当該一対の中央圧搾溝と所定の長手方向間隔で離隔した一対の後方圧搾溝とを含み、前記所定の長手方向間隔が、前記一対の中央圧搾溝の後端の横方向間隔及び前記一対の後方圧搾溝の前端の横方向間隔より大きく、長手方向中心線の各側で、前記一対の中央圧搾溝の後端と前記一対の後方圧搾溝の前端とを通る仮想線が長手方向に略平行に延びる。
【0008】
上記第一の態様では、本体の両側から圧力を掛けた場合、一対の中央圧搾溝の後端間の部分、及び一対の後方圧搾溝(後述の一対の第1後方圧搾溝)の前端間の部分が肌側に盛り上がり易い。ここで、中央圧搾溝の後端と後方圧搾溝の前端とは、長手方向中心線の各側で両者を通る仮想線が長手方向に略平行になるように配置されていることから、一対の中央圧搾溝の後端間の盛り上がりと、後方圧搾溝の前端間の盛り上がりとが連動し、一対の中央圧搾溝と一対の後方圧搾溝との間の領域にも長手方向に沿って盛り上がりが形成され得る。さらに、一対の中央圧搾溝と一対の後方圧搾溝との間の間隔が、一対の中央圧搾溝の後端の横方向間隔よりも大きく、且つ一対の後方圧搾溝の横方向間隔よりも大きいことから、長手方向に沿ってある程度の長さを有し且つ横方向に比較的幅狭の山を形成できる。すなわち、一対の中央圧搾溝の後端及び一対の後方圧搾溝の前端の計4箇所(前方で2箇所及び後方で2箇所)を基点とした長手方向に沿って延びる山を形成できる。そして、このような山を、吸収性物品の装着時には臀裂の深くなっている場所に入り込ませることができるので、吸収性物品を臀裂に沿って密着させることができる。また、装着者が身体を動かしても、形成された上記山が臀裂から離れにくく、密着が維持される。そのため、体液排出口から後方に伝ってきた体液が漏れること(以下、伝い漏れともいう)を防止できる。
【0009】
また、一対の中央圧搾溝の後端と一対の後方圧搾溝の前端とが離隔していることから、一対の中央圧搾溝と一対の後方圧搾溝との間の領域を柔軟にでき、当該領域を状況に応じてフレキシブルに変形できる。よって、一対の中央圧搾溝と一対の後方圧搾溝との間に形成される上述の山を、装着者の身体の形状、装着の仕方に応じて、フレキシブルに変形させることができる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記一対の中央圧搾溝が、後端を含み且つ後方に向かうほど長手方向中心線に近付くよう傾斜する部分を含み、且つ前記一対の後方圧搾溝が、前端を含み且つ前方に向かうほど長手方向中心線に近付くよう傾斜する部分を含む。
【0011】
上記第二の態様によれば、一対の中央圧搾溝の後端部分の間隔が他の部分より狭く、一対の後方圧搾溝の前端部分の間隔が他の部分より狭くなっているので、一対の中央圧搾溝と一対の後方圧搾溝との間の領域に形成される山を、圧搾溝の他の部分より幅狭に形成できる。これにより、臀裂に入り込むのにより適した形状の山を形成できる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記中央圧搾溝の後端部分の長手方向中心線に対する傾斜角度と、前記後方圧搾溝の前端部分の長手方向中心線に対する傾斜角度との差が10°以下である。
【0013】
本発明の第三の態様では、中央圧搾溝の後端部分の傾斜と、後方圧搾溝の前端部分の傾斜とが同じ又は近いことで、吸収性物品を捩る若しくは捻るような力が掛かった場合でも、長手方向中心線の一方側の中央圧搾溝と、他方側の後方圧搾溝とを結ぶ方向に力を逃がし易くなるため、不要な応力によって、一対の中央圧搾溝と一対の後方圧搾溝のとの間に形成される山が潰れる可能性を低減できる。装着者が脚を大きく動かした場合等でも、臀裂対向領域を装着者の身体に追随して変形させることが可能になる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記一対の後方圧搾溝が後方で連結している。
【0015】
上記第四の態様によれば、後方圧搾溝間を後方に拡散してきた体液を、後方圧搾溝の後方で塞き止めることができ、漏れ防止の効果が向上する。
【0016】
本発明の第五の態様では、前記一対の後方圧搾溝の前端の横方向間隔が、前記一対の中央圧搾溝の後端の横方向間隔と同じ、又は当該横方向間隔より小さい。
【0017】
上記第五の態様によれば、一対の中央圧搾溝と一対の後方圧搾溝との間の領域に形成される山の横方向の長さ(幅)を、長手方向に同じか、又は後方にいくにつれて小さくすることができる。臀裂は後方に向かうほど徐々に浅くなっていくので、本形態による構成によって、上述の山を臀裂の形状により沿わせ易くなる。
【0018】
本発明の第六の態様では、前記圧搾溝がさらに、前記一対の後方圧搾溝の横方向外側にそれぞれ、長手方向に沿って延在する側方圧搾溝を含み、前記側方圧搾溝の後端部分はそれぞれ、前記後方圧搾溝に向かうよう湾曲している。
【0019】
上記第六の態様によれば、後方圧搾溝と、その横方向外側に形成された側方圧搾溝との間の領域の剛性がやや高くなる。これにより、後方圧搾溝と側方圧搾溝間の部分に不要なシワやヨレが生じることを回避でき、当該部分を臀裂の両側の臀部の面に沿わせることが可能になる。臀部の両側でも吸収性物品をより密着させることができるようになり、漏れ防止の効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、臀部へのフィット性が高く、伝い漏れの発生を防止できる吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態による吸収性物品の、肌側から見た平面図である。
図2図1のI-I線断面図である。
図3図1の部分拡大図である。
図4】圧搾溝の機能について説明するための模式図である。
図5】第1実施形態の変形例を示す図である。
図6】第1実施形態の別の変形例を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態による吸収性物品の、肌側から見た平面図である。
図8図7のIII-III線断面図である。
図9図7の部分拡大図である。
図10】圧搾溝の機能について説明するための模式図である。
図11】第2実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0023】
[第1実施形態]
<吸収性物品の基本構造>
まず、吸収性物品の基本構造について、夜用又は長時間用の生理用ナプキンを例に挙げて説明する。図1に、第1実施形態による吸収性物品1の平面図を示す。また、図2に、図1のI-I線に沿って切った断面図を示す。
【0024】
図1及び図2に示すように、吸収性物品1は、装着時に装着者の肌に対向させる側、すなわち肌側に配置された透液性のトップシート3と、上記肌側と反対側の非肌側(下着側)に配置された不透液性のバックシート2とを備える。さらに、バックシート2とトップシート3との間には吸収体4が配置されている。これらのバックシート2、吸収体4、及びトップシート3が積層されて、本体(吸収性物品本体)8が形成されている。吸収体4は、平面視でバックシート2及びトップシート3からはみ出ないように配置されている。そして、長手方向D1の両端縁においては、バックシート2の縁部とトップシート3の縁部とが、接着剤、ヒートシール等によって接合されていてよい。
【0025】
吸収性物品1は、図示のように、細長のパッド状(幅及び長さに比べ厚みが小さい形状)である。本明細書においては、吸収性物品1の長手方向(前後方向)をD1、当該長手方向D1に直交する横方向(左右方向若しくは幅方向)をD2とする。長手方向D1は、吸収性物品1を装着した時に装着者の身体の前後方向に対応する方向であり、横方向D2は、身体の左右方向に対応する方向である。
【0026】
図1及び図2に示す形態では、本体8は、長手方向D1に延びる中心線(長手方向中心線)CLに対して略線対称の平面視形状を有しているが、本体8の形状は必ずしも線対称でなくてよい。また、吸収性物品1及び本体8の形状以外の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝の大きさ及び位置、本体8から横方向D2外方に延出するフラップの形状及び大きさ等を含む)は、中心線CLを対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0027】
バックシート2は、少なくとも遮水性を有するシートであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシートであってよい。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。バックシート2は、吸収性物品1の外形形状と同じ外形形状を有するシートであってよい。
【0028】
トップシート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートとすることができる。トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0029】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0030】
吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用でき、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0031】
吸収体4は、全面にわたり均一な目付を有してなくともよく、吸収体の横方向D2の中央の領域、例えば装着時に体液排出口(排血口)に対応する範囲に、目付を増やした部分、すなわち高目付部4Hを有していてもよい。高目付部4Hは、肌側に膨出してよい。よって、吸収体4は、全面にわたり均一な厚みを有していなくともよい。吸収体4の厚み(長手方向D1及び横方向D2に直交する方向の長さ)は、0.5~25mm、好ましくは1.5~15mmであってよい。
【0032】
吸収体4は、ヨレや割れの防止又はポリマー粒子のこぼれ等の防止のために、着色又は無着色(白色)のクレープ紙、不織布等から形成された被包シートによって包まれていてもよい。
【0033】
吸収性物品1の両側部、すなわち横方向D2の側部には、肌側に、長手方向D1に沿って、サイドシート7、7が配置されている。サイドシート7は、体液の浸透を防止する、或いは肌触り感を高める等の目的に応じて、適切な撥水処理又は親水処理を、全体に若しくは部分的に施した素材を用いて構成されたものであってよい。サイドシート7は天然繊維、合成繊維、再生繊維等を含む、若しくはこれらの繊維からなる不織布であると好ましい。サイドシート7が不織布である場合、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等であってよいが、折り癖が付きにくく、シワになりにくく柔らかいことから、肌触りを向上できるという観点でエアスルー不織布であると好ましい。なお、サイドシート7は、シリコン系、パラフィン系等の撥水剤等で撥水処理されていてもよい。
【0034】
サイドシート7は、横方向D2の内側で折り返され、本体8の側部に沿って延在する複数層の帯状部が形成されていてよい。そして、複数層の層間に、長手方向D1に沿って弾性伸縮部材を伸長状態で配置することで、ギャザーが形成されていてもよい。本明細書では、サイドシート7の折返し及びギャザーの構成については、説明を省略し、図面においても図示を省略する。
【0035】
吸収性物品1は、装着時に装着者の体液排出口(図示の例では膣口)に対向させる体液排出口対向領域Cと、体液排出口対向領域Cの前方に隣接し且つ吸収性物品1の前端までの領域である前方領域Fと、体液排出口対向領域Cの後方に隣接し且つ装着時に装着者の会陰付近に対向させる会陰対向領域(中間領域)Mと、会陰対向領域Mの後方に隣接し且つ吸収性物品1の後端までの領域であって、装着時に装着者の臀部に対向させる臀部対向領域Bとを有していてよい。さらに、臀部対向領域Bは、会陰対向領域に隣接する前方臀部対向領域B1と、当該前方臀部対向領域B1の後方に隣接する後方臀部対向領域B2とを含む。前方臀部対向領域B1は、臀裂(臀部の溝)に主として対向する領域であって、肛門を含む部位に対向する領域である。後方臀部対向領域B2は、臀裂の後方部分若しくは臀裂の後端付近からさらに後方の部位、特に臀部と脚の境ともいえる臀溝よりも後方(起立していた場合には上方)の部位に対向できる領域であってよい。なお、上記の本体8の領域と装着者の身体との対向関係についての説明は、装着者が臥位での通常の装着の仕方で吸収性物品を装着した場合の凡その範囲とすることができるが、あくまで目安である。
【0036】
体液排出口対向領域Cの長手方向D1長さは、50~120mm、臀部対向領域Bの長手方向D1長さは、90~230mmであってよい。また、本形態による構成は、例えば、会陰対向領域M及び臀部対向領域Bの合計長さが、好ましくは臀部対向領域Bの長手方向D1長さが、ウィングフラップWFが設けられている長手方向D1の長さより大きい、後方が長い吸収性物品において好適である。また、前方臀部対向領域(臀裂対向領域)B1の長手方向D1長さは、40~100mm、後方臀部対向領域B2の長手方向D1長さは、40~120mmであってよい。また、吸収性物品1の長手方向D1の全長は、250~450mmであってよい。
【0037】
吸収性物品1は、体液排出口対向領域Cの両側部からそれぞれ横方向D2外方に延出した一対のウィングフラップWF、WFを備えていてよい。ウィングフラップWF、WFの非肌側にはズレ止め材(図示せず)が設けられていてよく、このズレ止め材によって、装着時にはウィングフラップWF、WFと本体8とで下着を挟むように、ウィングフラップWF、WFを非肌側に折り返して下着に貼着できる。これにより、吸収性物品1を下着に確実に固定できる。ウィングフラップWF、WFは、サイドシート7、7の横方向D2外方への延出部と、バックシート2の横方向D2外方への延出部とが接合されて形成されている。
【0038】
また、会陰対向領域Mから臀部対向領域Bにかけて、本体8の側部から横方向D2外方に延出する一対のヒップホールドフラップHF、HFが形成されていてよい。ヒップホールドフラップHF、HFは、吸収性物品1の後方における体液の漏れを防止するとともに、臀部との接触面積を大きくすることで、吸収性物品1全体が下着に対して、特に横方向D2にズレにくくなり、吸収性物品1の装着位置を安定させる機能も有する。ヒップホールドフラップHF、HFも、サイドシート7、7の横方向D2外方への延出部と、バックシート2の横方向D2外方への延出部との接合によって形成されていてよい。
【0039】
<圧搾溝>
図1及び図2に示すように、本形態の吸収性物品1の本体8には、複数の圧搾溝(エンボス)が形成されている(図1の例では、符号10、11、12、13で図示)。圧搾溝は、平面視で、吸収性物品1の長手方向中心線CLを対称線とする線対称に形成されていてよいが、必ずしも線対称でなくともよい。圧搾溝は、トップシート3側からバックシート2側へと窪む溝として形成されたものである。圧搾溝は、例えば、少なくともトップシート3及び吸収体4が積層されてなる積層体を、一対の加圧ロールの間に通過させることによって形成することができる。その場合、上記積層体のトップシート3側に凸状のロールが、吸収体4側に平坦なロールが配置されるようにして、両ロールによって挟むことで加圧できる。なお、圧搾溝は、低圧搾部と、当該低圧搾部内においてより高圧で圧搾された高圧搾部とを含んでいてよい。図面においては、高圧搾部は黒色で表示する。
【0040】
図1に示す形態では、主として体液排出口対向領域Cから会陰対向領域Mにおいて、一対の中央圧搾溝10、10が長手方向D1に沿って延在している。一対の中央圧搾溝10、10は、長手方向中心線CLの両側に、互いに離隔して形成されている。一対の中央圧搾溝10、10は、高目付部4Hと重ならないように配置されている。一対の中央圧搾溝10、10同士の横方向D2の離隔距離は一定であってもよいが、変動していてもよい。例えば図1に示すように、体液排出口対向領域Cと会陰対向領域Mとの境界付近で小さくなり、その後方で再び大きくなり、後端に向かうにつれて小さくなっていてよい。
【0041】
さらに、一対の中央圧搾溝10、10の後方には、当該一対の中央圧搾溝10、10と離隔して一対の第1後方圧搾溝(一対の後方圧搾溝)11、11が形成されている。一対の第1後方圧搾溝11、11は、臀裂対向領域B1に形成されており、臀部対向領域B内に収まっていると好ましい。図示の例では、一対の第1後方圧搾溝11、11は、横方向D2に互いに離隔している。
【0042】
一対の第1後方圧搾溝11、11の後方には、当該一対の第1後方圧搾溝11、11から離隔して第2後方圧搾溝12が形成されている。第2後方圧搾溝12は、横方向D2に沿って延在する溝であり、後方に凸の形状を有する。また、一対の中央圧搾溝10、10の前方には、前方圧搾溝13が形成されている。前方圧搾溝13は、異なる曲率半径で前方に凸に湾曲した形状の圧搾溝が組み合わされてなる閉じた形状を有する。
【0043】
図3に、一対の中央圧搾溝10、10の後方部分から、第2後方圧搾溝12までの部分の拡大図を示す。図3に示すように、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btは互いに離隔している。また、一対の第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ftも互いに離隔している。そして、長手方向中心線CLの各側で、中央圧搾溝10の後端10btと第1後方圧搾溝11の前端11ftとが、長手方向D1に整列している。より具体的には、長手方向中心線CLの左側で、一対の中央圧搾溝10のうち左溝の後端10btと一対の第1後方圧搾溝11のうち左溝の前端11ftとを通る仮想線X1を引いた場合、仮想線X1は長手方向に略平行になっている。また、長手方向中心線CLの右側で、一対の中央圧搾溝10のうち右溝の後端10btと一対の第1後方圧搾溝11のうち右溝の前端11ftとを通る仮想線X1'を引いた場合、仮想線X1'は長手方向に略平行になっている。なお、本明細書において、所定方向に略平行である方向には、所定方向に完全に平行であることのみならず、所定方向に対して、好ましくは±10°、より好ましくは±5°の角度をなして延在する方向を含む。
【0044】
吸収性物品1の装着時には、体液排出口対向領域C及び会陰対向領域Mは、横方向D2の外側から脚の力を受けるので、臀裂対向領域B1もその影響で、横方向D2の外側から長手方向中心線CLに向かって力が掛かる。また、装着時に装着者が自ら吸収性物品1の本体8を両側から押して、臀裂対向領域B1の横方向D2の中央が臀裂に沿うように変形させることがある。このような横方向D2の外側からの力P、P(図3)が掛かった場合、互いに離隔している一対の中央圧搾溝10、10間の部分は肌側へと盛り上がり、互いに離隔している一対の第1後方圧搾溝11、11間の部分も肌側に盛り上がる。ここで、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11とは長手方向D1に離隔しているものの、上述のように、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btと、一対の第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ftとが長手方向中心線CLの各側で長手方向D1に整列していることから、一対の中央圧搾溝10、10の挙動と一対の第1後方圧搾溝11、11の挙動とが長手方向に連続性を有する。すなわち、一対の中央圧搾溝10、10間の盛り上がりと、一対の第1後方圧搾溝11、11間の盛り上がりとが、長手方向D1で連動し、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の領域に肌側への盛り上がりが形成される。
【0045】
本形態では、図3に示すように、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の長手方向D1の間隔Lが、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btの横方向D2間隔d10よりも大きく、且つ一対の第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ftの横方向D2間隔d11よりも大きい(L>d10、且つL>d11)。このため、上述の盛り上がりは、長手方向D1に沿ってある程度の長さを有し且つ横方向D2には比較的幅狭の山がとなる。別の言い方をすると、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10bt及び一対の第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ftの計4箇所を基点とした長手方向D1に沿って延びる、肌側に盛り上がる山が形成され得る。図3には、装着時に盛り上がって山となり得る山形成領域20をクロスハッチングで示す。
【0046】
ここで、図4を参照して、中央圧搾溝10、10及び第1後方圧搾溝11、11の上述の構成による効果について説明する。図4には、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の位置で切った模式断面(図3のII-II線断面)を、装着者の臀部Denと共に示す。吸収性物品1の臀裂対向領域B1が横方向D2の外側から中央に向かって(図3の矢印P、P方向に)押されると、図4(a)に示すように、図3における山形成領域20が、幅狭の山となって盛り上がる。そして、装着時には、図4(b)に示すように、山が臀部Denの割れ目(臀裂)に入り込むようにして、山の両側の領域は臀部の面に沿わせるようにして、吸収性物品1を身体に密着させることができ、高いフィット性が得られる。また、装着者が身体を動かしても、例えば就寝時に寝返りを打っても、一旦密着させた山が臀裂内に維持され易い。これにより、体液排出口から後方に伝わってきた体液も、より確実に受容し、吸収させることができる。このように、体液が臀裂に沿って伝わって後方又は後側方に漏れる、いわゆる伝い漏れを防止できる。
【0047】
なお、臀裂から臀裂のさらに後方までの臀部に対向できる領域を含む、後方の領域が長い吸収性物品に関しては、吸収性物品1の本体8を、当該本体8の横方向D2の中央が臀裂に入り込むように変形させて装着する装着者が多い。本形態は、このような、装着時に自ら本体8を変形させて密着させる使用形態で、特に吸収性物品1の臀部における密着性を向上できる。
【0048】
さらに、図3に示すように、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11とが離隔していることから、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の領域は柔軟性を保つことができ、当該領域を状況に応じてフレキシブルに変形できる。よって、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間に形成される上述の山を、装着者の身体の形状、装着の仕方に応じて、フレキシブルに変形させることができる。例えば、山は、身体の前後方向の湾曲に沿って長手方向D1に容易に湾曲することができ、またその湾曲度合も容易に変えることができる。さらに、山の部分が捩じられるような力が掛かったとしても、そのような捩じりに合せて変形が可能であるので、身体に密着した状態を維持できる。なお、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間には、トップシート3及び吸収体4を圧搾して形成される圧搾溝又は圧搾部が形成されていないことが好ましい。
【0049】
一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10bt同士の横方向D2の間隔d10は、好ましくは5~30mm、より好ましくは10~20mmであってよい。一対の第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ft同士の横方向D2の間隔d11も、好ましくは5~30mm、より好ましくは10~20mmであってよい。また、間隔d10は、吸収体の横方向D2長さ(吸収体の幅)の、好ましくは5~30%、より好ましくは10~25%であってよい。間隔d11も、吸収体の横方向D2長さ(吸収体の幅)の、好ましくは5~30%、より好ましくは10~25%であってよい。間隔d10及び間隔d11を上記範囲とすることで、形成される山の幅を、通常の使用方法で山の形成が可能であるように且つ臀裂に入り込めるようにすることができる。
【0050】
さらに、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との長手方向D1の間隔Lは、好ましくは10~60mm、より好ましくは20~40mmであってよい。間隔Lを上記範囲とすることで、臀裂の前後方向の長さに適合する適切な長手方向D1長さの山を形成できる。
【0051】
圧搾溝の構成が長手方向中心線CLを対称軸として線対称である場合、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10bt間の横方向D2の間隔d10と、一対の第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ft間の横方向D2の間隔d11とは、等しいか、又は異なっていても、一方の他方に対する比の値(d10/d11又はd11/d10)が、好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.9~1.1程度である。さらに、一対の第1後方圧搾溝11、11の横方向D2の間隔d11は、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btの横方向D2の間隔d10と同じ、又は当該間隔d10より小さいことが好ましい。これにより、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の領域に形成される山の幅が後方に向かうほど小さくなる。これにより、後方に向かうほど徐々に浅くなっている臀裂の形状に適合できる。
【0052】
また、図3に示すように、一対の第1後方圧搾溝11、11の溝幅は、一対の中央圧搾溝10、10の溝幅よりも大きくなっていると好ましい。後方に向かうほど両脚から受ける力が小さくなり、装着時の変形が起こりにくくなる。そのため、中央圧搾溝10、10よりも後方に位置する第1後方圧搾溝11、11の溝幅を大きくしておくことで、第1後方圧搾溝11、11の曲げの基点としての機能を高めることができ、上述の山をさらに形成しやすくなる。
【0053】
図3に示すように、一対の中央圧搾溝10、10が後方にて傾斜して、一対の第1後方圧搾溝11、11が前方にて傾斜していてよく、それにより、一対の中央圧搾溝10、10の後端部分及び一対の第1後方圧搾溝11、11の前端部分の、計4つの部分がそれぞれ長手方向中心線に向かうように傾斜し、放射状に配置されていてよい。より具体的には、一対の中央圧搾溝10、10は、後端側で長手方向中心線CLに近付くように傾斜している。すなわち、一対の中央圧搾溝10、10は、後端を含み且つ後方に向かうほど長手方向中心線CLに近付くよう傾斜した傾斜部分(傾斜後端部分)10b、10bを含んでいてよい。この傾斜部分10b、10bは、直線状になっていてもよいし、湾曲していてもよい。傾斜部分10bの傾斜角度αは、長手方向中心線CLに対して、好ましくは0°超~60°、より好ましくは10~40°であってよい。なお、圧搾溝の傾斜部分の傾斜角度とは、圧搾溝の中心線と長手方向中心線CLとがなす角度であってよく、圧搾溝の中心線の圧搾溝先端における接線と長手方向中心線CLとがなす角度とすることができる。また、一対の第1後方圧搾溝11、11も、前端側で長手方向中心線CLに近付くように傾斜している。すなわち、一対の第1後方圧搾溝11、11は、前端を含み且つ前方に向かうほど長手方向中心線CLに近付くように傾斜した傾斜部分(傾斜前端部分)11f、11fを含んでいてよい。但し、図3に示す例では、一対の第1後方圧搾溝11、11全体がそれぞれ、長手方向中心線CLに向かうように傾斜した傾斜部分となっている。第1後方圧搾溝11、11(若しくは第1後方圧搾溝11、11に含まれる傾斜前端部分)の傾斜角度βも、長手方向中心線CLに対して、好ましくは0°超~60°、より好ましくは10~40°であってよい。
【0054】
上記構成では、吸収性物品1を捩る若しくは捻るような力が掛かった場合、例えば、長手方向中心線CLの一方側(例えば左側)の中央圧搾溝10の傾斜部分10bと、他方側(例えば右側)の第1後方圧搾溝11の傾斜部分10fとが連動し易くなって、両者を結ぶ方向に力を逃がし易くなる。よって、吸収性物品1が捩じられるような力が掛かっても不要な応力によって、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11のとの間に形成される山が潰れにくくなる。臀裂対向領域B1の臀裂へのフィット性を維持できる。
【0055】
さらに、中央圧搾溝10、10の傾斜部分10b、10bの傾斜角度αと、第1後方圧搾溝11、11(若しくは第1後方圧搾溝11、11に含まれる傾斜前端部分)の傾斜角度βとは、同じであってもよいし異なっていてもよいが、傾斜角度αと傾斜角度βとの差(α-β又はβ-α)は10°以下であると好ましく、5°以下であるとより好ましい。すなわち、中央圧搾溝10、10の後端側の部分の延在方向と、第1後方圧搾溝11、11の前端側の部分の延在方向とが同じ又は近いことが好ましい。これにより、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の領域に形成される山が潰れにくくなるという効果を向上できる。
【0056】
<第1実施形態の変形例>
図5に、第1実施形態の変形例を示す。図5に示す例では、一対の第1後方圧搾溝11、11の形状が異なること以外は、図1に示す例と同じ構成を有する。また、図5に示す例も、図1に示す例と同様の効果を奏する。さらに、図5に示す例では、一対の第1後方圧搾溝11、11はその後方で互いに連結して、全体として後方に凸のU字形状若しくは蹄鉄形状となっている。一対の第1後方圧搾溝11、11が後方で連結していることで、後方に拡散してきた体液を圧搾溝で塞き止めることができる。また、一対の第1後方圧搾溝11、11の連結部分で本体8が長手方向D1に折れ曲がり易くなるので、本体8を身体の前後方向に合わせて湾曲させ易くなる。
【0057】
図6に、第1実施形態の別の変形例を示す。図6に示す例でも、吸収性物品の基本的な構成は図1に示す例と同じであるが、一対の中央圧搾溝10、10及び一対の第1後方圧搾溝11、11の形状が異なる例を示す。より具体的には、一対の中央圧搾溝10、10がそれぞれ後方において長手方向D1に対して略平行になっており、一対の第1後方圧搾溝11、11もそれぞれ前方において長手方向D1に対して略平行になっている。本例においても、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との長手方向D1の間隔が、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btの横方向D2の間隔及び一対の第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ftの横方向D2の間隔より大きく、且つ長手方向中心線CLの各側で、一対の中央圧搾溝10の後端10btと、第1後方圧搾溝11の前端11ftとが長手方向D1に整列していることから、図1に示す例と同様に、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の領域に、長手方向D1に沿った幅狭の山(図4)を形成できる。よって、臀裂に適合するように臀部対向領域Bを変形させることができ、体液の伝い漏れ等を防止できる。
【0058】
[第2実施形態]
図7に、本発明の第2実施形態による吸収性物品1Aを肌側から見た平面図を示す。また、図8に、図7のIII-III線断面図を示す。第2実施形態による吸収性物品1Aも、基本的な構成は第1実施形態(図1~6)と同様であるが、第1実施形態とは、臀裂対向領域B1における圧搾溝の形状が異なっている。すなわち、一対の第1後方圧搾溝11、11の両側部にそれぞれ、側方圧搾溝11S、11Sが形成されている。第2実施形態による吸収性物品1Aにおいても、第1実施形態と同様の効果が得られるが、本形態では、側方圧搾溝11S、11Sによってさらなる効果が得られる。
【0059】
図9に、図7における一対の中央圧搾溝10、10から第2後方圧搾溝12にかけての部分の拡大図を示す。図9に示すように、側方圧搾溝11Sは、第1後方圧搾溝11から枝分かれして横方向D2に沿って延び、さらに前方へと長手方向D1に沿って延在している。側方圧搾溝11Sが形成されていることで、第1後方圧搾溝11及び側方圧搾溝11Sによって、後方に凸の圧搾溝が形成される。そして、第1後方圧搾溝11及び側方圧搾溝11Sによって囲まれた領域30、30(図9における斜線)の剛性をやや高くすることができるため、当該領域におけるヨレ等を防止できる。また、上記領域30、30のある程度の面積を確保する観点からは、側方圧搾溝11S、11S同士の横方向D2の離隔距離が、中央圧搾溝10、10と第1後方圧搾溝11、11との間の長手方向D1の範囲において、中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btの横方向D2間隔d10又は第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ftの横方向D2間隔d11の2.5~4.5倍であると好ましく、3~4倍であるとより好ましい。
【0060】
図9に示すように、第1後方圧搾溝11、11及び側方圧搾溝11S、11Sによってそれぞれ囲まれた領域30、30は、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間に形成される長手方向D1に沿った山形成領域20(図9におけるクロスハッチング)の横方向D2外側に形成されている。
【0061】
図10に、一対の中央圧搾溝10、10と一対の第1後方圧搾溝11、11との間の位置で切った模式断面(図9のIV-IV線断面)を、装着者の臀部Denと共に示す。図10は、図4に対応する図であるが、第2実施形態における側方圧搾溝11S、11Sの位置が示されている。図10に示すように、領域30、30は、吸収性物品1の装着時には、臀裂の浅い位置、若しくは臀裂の両側の臀部表面に接触する領域となる。そのため、領域30、30を臀裂の両側の表面にも、その丸みに沿って接触させることができる。これにより、臀裂の両側におけるフィット性が向上するので、臀裂を伝ってきた体液がさらに横方向D2外方に移行してきても、漏れを防止できる。
【0062】
側方圧搾溝11S、11Sの前端11St、11Stは、第1後方圧搾溝11、11の前端11ft、11ftよりも前方に位置していることが好ましい。これにより、中央圧搾溝10、10と第1後方圧搾溝11、11との間の領域の横方向D2外側に圧搾溝を延在させることができ、横方向D2外方への体液の漏れ防止を可能にする。
【0063】
なお、上記領域30、30の剛性におけるヨレ等の防止の効果をさらに高めるために、第1後方圧搾溝11及び側方圧搾溝11Sによって囲まれる領域30の吸収体4に複数の圧搾溝を点状に離隔して形成することもできる。吸収体4に形成される圧搾部の形態(形状、大きさ、形成方法)は、領域30、30のヨレ等が防止され且つ臀部の表面に沿うための柔軟性も確保できるのであれば、特に限定されない。
【0064】
側方圧搾溝11Sは、第1後方圧搾溝11と連結していてもよいし、連結してなくてもよい。第1後方圧搾溝11及び側方圧搾溝11Sによって囲まれる領域30の剛性を高めてヨレを防止するという観点及び後方への体液の漏れ防止という観点からは、図7及び図9に示すように、側方圧搾溝11Sが第1後方圧搾溝11に連結していることが好ましい。
【0065】
一方、臀裂対向領域B1の柔軟性が高まるという観点からは、図11に示すように、側方圧搾溝11Sと第1後方圧搾溝11とが連結していない構成とすることもできる。その場合、側方圧搾溝11Sは、第1後方圧搾溝11に対して、例えば横方向に10mm以下、好ましくは5mm以下の間隔を置いて離隔していてもよい。
【0066】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0067】
1、1A 吸収性物品(生理用ナプキン)
2 バックシート
3 トップシート
4 吸収体
4H 吸収体の高目付部
7 サイドシート
8 本体(吸収性物品本体)
10 中央圧搾溝
10b 中央圧搾溝の傾斜部分(傾斜後端部分)
10bt 中央圧搾溝の後端
11 第1後方圧搾溝
11f 第1後方圧搾溝の傾斜部分(傾斜前端部分)
11ft 第1後方圧搾溝の前端
11S 側方圧搾溝
11St 側方圧搾溝の前端
12 第2後方圧搾溝
13 前方圧搾溝
C 体液排出口対向領域
CL 長手方向中心線
D1 長手方向
D2 横方向
F 前方領域
HF ヒップホールドフラップ
M 中間領域(会陰対向領域)
B 臀部対向領域
B1 前方臀部対向領域(臀裂対向領域)
B2 後方臀部対向領域
WF ウィングフラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11