(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176164
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】吸収性物品、及び吸収性物品用の吸収体の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20231206BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20231206BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/15 321
A61F13/533 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088308
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永島 真里子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA13
3B200BA14
3B200CA08
3B200CA11
3B200DA13
3B200DB05
3B200EA02
(57)【要約】
【課題】装着者の身体の前後にわたってフィット性に優れ、体液の漏れを防止できる吸収性物品を提供する。
【解決手段】肌側のトップシートと、非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備える細長の吸収性物品であって、前記吸収体が、中目付部と、前記中目付部に隣接し当該中目付部よりも目付の低い低目付部を有し、前記低目付部が、前方低目付部と、前記前方低目付部よりも短い幅を有する後方低目付部とを含み、前記前方低目付部の長手方向長さが、前記吸収体の横方向長さの40~120%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌側のトップシートと、非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備える細長の吸収性物品であって、
前記吸収体が、中目付部と、前記中目付部に隣接し当該中目付部よりも目付の低い低目付部を有し、
前記低目付部が、前方低目付部と、前記前方低目付部よりも短い幅を有する後方低目付部とを含み、
前記前方低目付部の長手方向長さが、前記吸収体の横方向長さの40~120%である、吸収性物品。
【請求項2】
前記前方低目付部の横方向長さが前記吸収体の横方向長さと等しい、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記後方低目付部の横方向長さが、前記吸収体の横方向長さの5~25%である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中目付部が、前記前方低目付部の前方に隣接する前方中目付部と、前記前方低目付部の後方に隣接し且つ前記後方低目付部の両側方及び後方に隣接する後方中目付部とを含み、
少なくとも前記トップシート及び前記吸収体に、前記トップシート側から前記バックシート側へ窪む圧搾溝が形成されており、前記圧搾溝が、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向領域の長手方向に沿って延在する一対の中央圧搾溝を含み、
前記一対の中央圧搾溝が、前記前方低目付部の後端を後方に越えて延在している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記前方低目付部と前記後方中目付部との間に目付変化部が形成されており、
前記目付変化部における目付が、前記前方低目付部の目付より高く、前記後方中目付部の目付より低く、且つ後方に向かうほど漸次又は段階的に高くなっている、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体がさらに、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向領域に、前記前方中目付部に周囲を囲まれ且つ前記前方中目付部の目付よりも高い目付を有する高目付部を有する、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項7】
吸収性物品用の吸収体の製造方法であって、
前記吸収体が、中目付部と、前記中目付部に隣接し当該中目付部よりも目付の低い低目付部を有し、
前記低目付部が、前方低目付部と、前記前方低目付部よりも短い幅を有する後方低目付部とを含み、
前記前方低目付部の長手方向長さが、前記吸収体の横方向長さの40~120%であり、
前記吸収体となる吸収体材料を、底面に複数の吸引用の開孔が設けられた吸収体型内に積繊して、脱型することを含み、
前記前方低目付部に対応する領域における開孔の面積率が、前記中目付部に対応する領域における前記開孔の面積率よりも小さく、
前記後方低目付部に対応する領域に、非孔凸部材が設けられている、吸収体の製造方法。
【請求項8】
前記中目付部が、前記前方低目付部の前方に隣接する前方中目付部と、前記前方低目付部の後方に隣接し且つ前記後方低目付部の両側方及び後方に隣接する後方中目付部とを含み、
前記前方低目付部と前記後方中目付部との間に目付変化部が形成されており、前記目付変化部における目付が、前記前方低目付部の目付より大きく、前記後方中目付部の目付より小さく、且つ後方に向かうほど漸次又は段階的に大きくなっており、
前記目付変化部に対応する領域における前記開孔の面積率が、前記前方低目付部に対向する領域における開孔の面積率より大きく、前記後方中目付部に対応する領域における開孔の面積率より小さく、且つ後方に向かうほど漸次又は段階的に大きくなっている、請求項7に記載の吸収体の製造方法。
【請求項9】
前記吸収体がさらに、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向領域に、前記前方中目付部に周囲を囲まれ且つ前記前方中目付部の目付よりも高い目付を有する高目付部を有し、
前記高目付部に対応する領域が、前記前方中目付部に対応する領域内に形成された凹部である、請求項8に記載の吸収体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品、及び吸収性物品用の吸収体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品として、長時間用若しくは夜間用の、装着者の臀部後方にまで対向できるようにした全長の長い製品が知られている。このような吸収性物品においては、身体の形に沿って後方まで本体を密着できるようにし、体液の漏れを防止する構成が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウイングの前後方向の中心よりも後側且つ吸収コアの後端縁よりも前側に、幅方向に延在する中間領域が形成され、当該中間領域における吸収材料の目付がその前後の第1領域及び第2領域の目付よりも低くなっている吸収性物品が記載されている。そして、当該構成によって、装着者が仰向けに寝た状態における体液の後方への漏れを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の構成であっても、例えば装着者が装着中に大きな動作をした場合には、身体へのフィット性を保てないことがあり、体液の漏れに対する懸念が依然としてある。よって、動作時にも身体へのフィット性を維持できることが求められている。
【0006】
よって、本発明の一態様は、装着者の身体の前後にわたってフィット性に優れ、体液の漏れを防止できる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、肌側のトップシートと、非肌側のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを備える細長の吸収性物品であって、前記吸収体が、中目付部と、前記中目付部に隣接し当該中目付部よりも目付の低い低目付部を有し、前記低目付部が、前方低目付部と、前記前方低目付部よりも短い幅を有する後方低目付部とを含み、前記前方低目付部の長手方向長さが、前記吸収体の横方向長さの40~120%である。
【0008】
上記第一の態様によれば、装着持に、後方に位置する横方向長さの短い後方低目付部が、トップシート側に容易に盛り上がることができる。この盛り上がりによって、臀裂の狭い位置にフィットするサイズの山を形成できる。これにより、臀裂へのフィット性が向上し、臀裂での漏れ、例えば体液が体液排出口から臀裂を伝って後方に移行して漏れること(伝い漏れともいう)も防止できる。
【0009】
また、本態様では、所定の長手方向長さを有する前方低目付部が形成されている。そのため、後方低目付部よりも前方の部分を、広い範囲でフレキシブルに変形させることが可である。そのため、例えば装着者が脚の開閉動作又は前後に動かす動作をした場合であっても、臀裂よりも前方の、股下の部位の形の変化に追随して、吸収性物品本体を変形させることができる。特に、上述の後方低目付部の盛り上がりを臀裂に比較的深く入り込ませた場合、本体の臀裂対向領域は動きにくく変形しにくくなるので、その影響で、臀裂対向領域の前方の領域も変形しにくくなる場合がある。しかしながら、本態様によれば、後方低目付部の前方に、広い範囲にわたるフレキシブルな変形を可能にする前方低目付部が形成されているので、吸収性物品本体を臀裂へ深くフィットさせつつ、臀裂よりも前方の身体部位への優れたフィット性も得られる。このように、本態様によれば、身体の前後方向に沿った広い範囲での、特に会陰から臀裂後方にかけての高いフィット性が得られ、そのフィット性を動作時にも維持できる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記前方低目付部の横方向長さが前記吸収体の横方向長さと等しい。
【0011】
上記第二の態様によれば、横方向にわたって前方低目付部のフレキシブルな変形が可能になるので、装着者の動作時のフィット性も向上できる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記後方低目付部の横方向長さが、前記吸収体の横方向長さの5~25%である。
【0013】
上記第三の態様によれば、後方低目付部によって形成される上述の山の幅を、臀裂の深い部位に対応させるための適切なサイズにすることができる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記中目付部が、前記前方低目付部の前方に隣接する前方中目付部と、前記前方低目付部の後方に隣接し且つ前記後方低目付部の両側方及び後方に隣接する後方中目付部とを含み、少なくとも前記トップシート及び前記吸収体に、前記トップシート側から前記バックシート側へ窪む圧搾溝が形成されており、前記圧搾溝が、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向領域の長手方向に沿って延在する一対の中央圧搾溝を含み、前記一対の中央圧搾溝が、前記前方低目付部の後端を後方に越えて延在している。
【0015】
上記第四の態様によれば、一対の中央圧搾溝が形成されていることで、体液の横方向への急激な拡散を抑制し、体液を長手方向に沿って誘導することで漏れを防止できる。また、体液排出口対向領域の適切な変形を促すこともできる。
【0016】
また、一般に、圧搾溝が吸収体の目付の低い領域に形成される場合、適用される圧搾力が他の領域に比べて弱くなるため、圧搾溝の確実な形成ができない場合がある。そして、圧搾溝の先端での圧搾が不十分な場合には、圧搾されて厚み方向に接合されていた部分が剥がれ(いわゆる浮きが生じて)、圧搾溝がその機能を果たせない場合がある。これに対し、本態様では、一対の中央圧搾溝が、前方低目付部の後端を後方に越えて延在しており、すなわち、一対の中央圧搾溝の後端が前方低目付部の後方に隣接する後方中目付部内にまで延びているので、中央圧搾溝の端部における浮きを防止でき、圧搾溝が適切に機能できる。
【0017】
本発明の第五の態様では、前記前方低目付部と前記後方中目付部との間に目付変化部が形成されており、前記目付変化部における目付が、前記前方低目付部の目付より高く、前記後方中目付部の目付より低く、且つ後方に向かうほど漸次又は段階的に高くなっている。
【0018】
上記第五の態様によれば、目付変化部によって、長手方向での目付の急激な変化を回避できるので、前方低目付部から後方中目付部にかけての領域に不要な応力が生じることなく、身体の形に沿った変形が可能になる。よって、会陰対向領域から臀裂対向領域にかけての領域のフレキシブルな変形を促すことができる。
【0019】
本発明の第六の態様では、前記吸収体がさらに、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向領域に、前記前方中目付部に周囲を囲まれ且つ前記前方中目付部の目付よりも高い目付を有する高目付部を有する。
【0020】
上記第六の態様によれば、体液排出口対向領域における高目付部があることで、吸収性物品本体を体液排出口に密着させることができ、漏れを防止できる。本態様では、吸収体が、目付の異なる少なくとも3つの領域(低目付部、中目付部、及び高目付部)を含むことになる。
【0021】
本発明の第七の態様は、吸収性物品用の吸収体の製造方法であって、前記吸収体が、中目付部と、前記中目付部に隣接し当該中目付部よりも目付の低い低目付部を有し、前記低目付部が、前方低目付部と、前記前方低目付部よりも短い幅を有する後方低目付部とを含み、前記前方低目付部の長手方向長さが、前記吸収体の横方向長さの40~120%であり、前記吸収体となる吸収体材料を、底面に複数の吸引用の開孔が設けられた吸収体型内に積繊して、脱型することを含み、前記前方低目付部に対応する領域における開孔の面積率が、前記中目付部に対応する領域における前記開孔の面積率よりも小さく、前記後方低目付部に対応する領域に、非孔凸部材が設けられている。
【0022】
上記第七の態様によれば、第一の態様と同様の効果を奏する吸収性物品を製造できる。また、本態様による製造方法で使用される吸収体型では、前方低目付部に対応する領域における吸収体型の底面の開孔の面積率が、中目付部に対応する領域における底面の開孔の面積率よりも小さくなっている。すなわち、前方低目付部と中目付部との間での目付の違いを、吸収体型の底面の開孔の面積率を相違させることによって得られている。吸収体内で目付を相違させるためには、吸収体型の底面に部分的に凸部を形成したり凹部を形成したりすることによって底面レベルを異ならせるという手段もある。当該手段によって、目付の差を比較的容易に確実に作り出すことができる。しかしながら、底面レベルを異ならせることによって領域間に段差が生じるので、広範囲の低目付部を形成しようとした場合には、吸収体材料(特にパルプ等の繊維材料)が段差のエッジにて分断されやすくなる。そのため、吸収体材料の積繊、材料の掻き取り、脱型等の工程において、段差にて吸収体が千切れてしまったり、吸収体の所望の厚みが得られなかったりすることがある。本態様における前方低目付部は、横方向長さが比較手長い低目付部であるので、底面レベルを異ならせるのではなく、底面の開孔の面積率を異ならせることで低目付を得て、それにより、中目付部との間で発生し得る千切れ等の不具合を防止できる。
【0023】
一方、本態様では、後方低目付部に対応する領域には非孔凸部材が設けられており、この非孔凸部材によって後方低目付部の低目付が獲得されている。非孔凸部材上に集積される吸収体材料の層は、積繊後の掻き取り工程後には、非孔凸部材の厚みの分だけ周囲の領域よりも薄くなるので、低い目付が確実に得られる。ここで、仮に、後方低目付部の低目付を、非孔凸部材を用いずに、前方低目付部と同様に吸収体型底面の開孔の面積率を小さくすることで獲得しようとした場合、幅狭の非孔凸部材の両側方の領域(中目付部に対応する領域)で引き寄せられた吸収体材料が互いに重なって境界が曖昧になってしまい、後方低目付部の領域を確保できない可能性がある。しかしながら、本態様によればそのような可能性が回避される。このように、本態様では、前方低目付部と後方低目付部とが、各低目付部の形状に応じた異なる手段で形成されている。そのため、吸収体が千切れる等の不具合なしに、低目付部の領域を確実に確保できる。
【0024】
本発明の第八の態様では、前記中目付部が、前記前方低目付部の前方に隣接する前方中目付部と、前記前方低目付部の後方に隣接し且つ前記後方低目付部の両側方及び後方に隣接する後方中目付部とを含み、前記前方低目付部と前記後方中目付部との間に目付変化部が形成されており、前記目付変化部における目付が、前記前方低目付部の目付より大きく、前記後方中目付部の目付より小さく、且つ後方に向かうほど漸次又は段階的に大きくなっており、前記目付変化部に対応する領域における前記開孔の面積率が、前記前方低目付部に対向する領域における開孔の面積率より大きく、前記後方中目付部に対応する領域における開孔の面積率より小さく、且つ後方に向かうほど漸次又は段階的に大きくなっている。
【0025】
上記第八の態様によれば、第五の態様と同様の効果を奏する吸収性物品を製造できる。また、後方低目付部と後方中目付部との間で目付を変化させることによって、両者の間での目付の急激な変化を回避することにより、吸収体の長手方向での連続性が損なわれる可能性を低減できる。
【0026】
本発明の第九の態様では、前記吸収体がさらに、装着時に装着者の体液排出口に対向させる体液排出口対向領域に、前記前方中目付部に周囲を囲まれ且つ前記前方中目付部の目付よりも高い目付を有する高目付部を有し、前記高目付部に対応する領域が、前記前方中目付部に対応する領域内に形成された凹部である。
【0027】
上記第九の態様によれば、第六の態様と同様の効果を奏する吸収性物品を製造できる。また、前方中目付部内の領域において、さらに高い目付の領域である高目付部を形成することができる。その場合、高目付部に対向する領域の底面における開孔面積率は、前方中目付部に対応する領域の開孔面積率と同じとしてもよい、前方中目付部に対応する領域の開孔面積率より大きくすることもできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、装着者の身体の前後にわたってフィット性に優れ、体液の漏れを防止できる吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態による吸収性物品を肌側から見た平面図である。
【
図4】
図1の吸収性物品の吸収体を露出させた状態の平面図である。
【
図6】吸収性物品の装着状態を示す模式断面図である。
【
図7】低目付部の別の平面視形状のバリエーションを示す図である。
【
図8】変形例による吸収性物品の、吸収体を露出させた状態の平面図である。
【
図10】吸収性物品の製造装置を示す模式図である。
【
図11】本形態による吸収性物品の製造方法で使用される吸収体型の平面図である。
【
図12】
図11の部分拡大図(部分P1及び部分P2の拡大図)である。
【
図14】変形例による吸収性物品の製造方法で使用される吸収体型の平面図である。
【
図17】個装の際の折り位置について説明するための平面図である。
【
図19】
図17の状態から得られた個装吸収性物品の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0031】
<吸収性物品の基本構造>
まず、本形態による吸収性物品の基本構造について、夜用又は長時間用の生理用ナプキンを例に挙げて説明する。
図1に、吸収性物品1の平面図を示す。また、
図2に、
図1のI-I線断面図を、
図3に、
図1のII-II線断面図を示す。
【0032】
図1~
図3に示すように、吸収性物品1は、装着時に装着者の肌に対向させる側、すなわち肌側に配置された透液性のトップシート3と、上記肌側と反対側の非肌側(下着側)に配置された不透液性のバックシート2とを備える。さらに、バックシート2とトップシート3との間には吸収体(吸収性コア)4が配置されている。これらのバックシート2、吸収体4、及びトップシート3が積層されて、本体(吸収性物品本体)8が形成されている。吸収体4は、平面視でバックシート2及びトップシート3からはみ出ないように配置されている。そして、長手方向D1の両端縁においては、バックシート2の縁部とトップシート3の縁部とが、接着剤、ヒートシール等によって接合されていてよい。
【0033】
吸収性物品1は、図示のように、細長のパッド状(幅及び長さに比べ厚みが小さい形状)である。本明細書においては、吸収性物品1の長手方向(前後方向)をD1、当該長手方向D1に直交する横方向(左右方向若しくは幅方向)をD2とする。長手方向D1は、吸収性物品1を装着した時に装着者の身体の前後方向に対応する方向であり、横方向D2は、身体の左右方向に対応する方向である。
【0034】
図1~
図3に示す形態では、本体8は、長手方向D1に延びる中心線(長手方向中心線)CLに対して略線対称の平面視形状を有しているが、本体8の形状は必ずしも線対称でなくてよい。また、吸収性物品1及び本体8の形状以外の構成(吸収体4の厚みや密度、圧搾溝の大きさ及び位置、本体8から横方向D2外方に延出するフラップの形状及び大きさ等を含む)は、中心線CLを対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0035】
バックシート2は、少なくとも遮水性を有するシートであってよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂製のシートであってよい。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。バックシート2は、吸収性物品1の外形形状と同じ外形形状を有するシートであってよい。
【0036】
トップシート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートとすることができる。トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし且つ融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0037】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))、及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0038】
吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用でき、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。
【0039】
吸収体4には、部分的にトップシート3側からバックシート2側へと窪む吸収体圧搾部が複数、平面視で互いに離隔して形成されていてもよい。また、吸収体4は、ヨレや割れの防止又はポリマー粒子のこぼれ等の防止のために、着色又は無着色(白色)のクレープ紙、不織布等から形成された被包シートによって包まれていてもよい。吸収体4の具体的構成、及び好ましい製造方法については後に詳述する。
【0040】
吸収性物品1の両側部、すなわち横方向D2の側部には、肌側に、長手方向D1に沿って、サイドシート7、7が配置されている。サイドシート7は、体液の浸透を防止する、或いは肌触り感を高める等の目的に応じて、適切な撥水処理又は親水処理を、全体に若しくは部分的に施した素材を用いて構成されたものであってよい。サイドシート7は天然繊維、合成繊維、再生繊維等を含む、若しくはこれらの繊維からなる不織布であると好ましい。サイドシート7が不織布である場合、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等であってよいが、折り癖が付きにくく、シワになりにくく柔らかいことから、肌触りを向上できるという観点でエアスルー不織布であると好ましい。なお、サイドシート7は、シリコン系、パラフィン系等の撥水剤等で撥水処理されていてもよい。
【0041】
サイドシート7は、横方向D2の内側で折り返され、本体8の側部に沿って延在する複数層の帯状部が形成されていてよい。そして、複数層の層間に、長手方向D1に沿って弾性伸縮部材を伸長状態で配置することで、ギャザーが形成されていてもよい。本明細書では、サイドシート7の折返し及びギャザーの構成については説明を省略し、図面においても図示を省略する。
【0042】
吸収性物品1は、装着時に装着者の体液排出口(図示の例では膣口)に対向させる体液排出口対向領域Cと、体液排出口対向領域Cの前方に隣接し且つ吸収性物品1の前端までの領域である前方領域Fと、体液排出口対向領域Cの後方に隣接し且つ装着時に装着者の会陰付近に対向させる会陰対向領域(中間領域)Mと、会陰対向領域Mの後方に隣接し且つ吸収性物品1の後端までの領域であって、装着時に装着者の臀部に対向させる臀部対向領域Bとを有していてよい。さらに、臀部対向領域Bは、会陰対向領域Mに隣接する前方臀部対向領域B1と、当該前方臀部対向領域B1の後方に隣接する後方臀部対向領域B2とを含む。前方臀部対向領域B1は、臀裂(臀部の溝)に主として対向する領域であって、肛門を含む部位に対向する領域である。後方臀部対向領域B2は、臀裂の後方若しくは臀裂の後端付近からさらに後方の部位、特に臀部と脚の境ともいえる臀溝よりも後方(起立状態では上方)の部位に対向できる領域であってよい。なお、上記の本体8の領域と装着者の身体との対向関係についての説明は、装着者が臥位での通常の装着の仕方で吸収性物品を装着した場合の凡その範囲とすることができるが、あくまで目安である。
【0043】
体液排出口対向領域Cの長手方向D1長さは、50~120mm、臀部対向領域Bの長手方向D1長さは、90~230mmであってよい。また、本形態による構成は、例えば、会陰対向領域M及び臀部対向領域Bの合計長さが、好ましくは臀部対向領域Bの長手方向D1長さが、ウィングフラップWFが設けられている長手方向D1の長さより大きい、後方が長い吸収性物品において好適である。また、前方臀部対向領域(臀裂対向領域)B1の長手方向D1長さは、40~100mm、後方臀部対向領域B2の長手方向D1長さは、40~120mmであってよい。また、吸収性物品1の長手方向D1の全長は、250~450mmであってよい。
【0044】
吸収性物品1は、体液排出口対向領域Cの両側部からそれぞれ横方向D2外方に延出した一対のウィングフラップWF、WFを備えていてよい。ウィングフラップWF、WFの非肌側にはズレ止め材(図示せず)が設けられていてよく、このズレ止め材によって、装着時にはウィングフラップWF、WFと本体8とで下着を挟むように、ウィングフラップWF、WFを非肌側に折り返して下着に貼着できる。これにより、吸収性物品1を下着に確実に固定できる。ウィングフラップWF、WFは、サイドシート7、7の横方向D2外方への延出部と、バックシート2の横方向D2外方への延出部とが接合されて形成されている。
【0045】
また、会陰対向領域Mから臀部対向領域Bにかけて、本体8の側部から横方向D2外方に延出する一対のヒップホールドフラップHF、HFが形成されていてよい。ヒップホールドフラップHF、HFは、吸収性物品1の後方における体液の漏れを防止するとともに、臀部との接触面積を大きくすることで、吸収性物品1全体が下着に対して、特に横方向D2にズレにくくなり、吸収性物品1の装着位置を安定させる機能も有する。ヒップホールドフラップHF、HFも、サイドシート7、7の横方向D2外方への延出部と、バックシート2の横方向D2外方への延出部との接合によって形成されていてよい。
【0046】
<吸収体の具体的な構成>
図4に、
図1の吸収性物品1からトップシート3及びサイドシート7、7を取り外し、吸収体4を露出させた状態の平面図を示す。
図4に示すように、吸収体4の目付、具体的にはパルプ目付(若しくは繊維目付)は全体的に均一ではなく、場所によって異なっている。吸収体4は、主として中程度の目付を有する中目付部4Mと、中目付部4Mよりも目付の高い高目付部4Hと、中目付部4Mよりも目付の低い低目付部4Lとを有する。低目付部4Lは、会陰対向領域Mに配された吸収体4と同じ幅を有する前方低目付部4Lfと、臀裂対向領域B1に配された長手方向D1に細長の後方低目付部4Lbとを有する。後方低目付部4Lbは、横方向D2の中央に、長手方向中心線を跨るようにして形成されていると好ましい。また、中目付部4Mは、主として体液排出口対向領域Cに形成された前方中目付部4Mfと、主として後方臀部対向領域B2に形成された後方中目付部4Mbとを有していてよい。なお、吸収体4には、上述のようにパルプ(若しくはパルプを主とする繊維状材料)と吸水性ポリマーとが含まれているが、吸水性ポリマーの目付は吸収体4全体において同程度であると好ましい。その場合、パルプ目付の大小関係が目付の大小関係に反映される。
【0047】
低目付部4Lの目付は、好ましくは200~500gsm、より好ましくは300~400gsmであってよい。中目付部4Mの目付は、好ましくは300~600gsm、より好ましくは400~500gsmであってよい。高目付部4Hの目付は、好ましくは500~850gsm、より好ましくは600~750gsmであってよい。なお、本形態における低目付部4Lによる効果を発揮させるためには、低目付部4Lの目付は、中目付部4Mの目付に対して60~90%であってよい。上記目付は、パルプ目付とすることができる。
【0048】
低目付部4L、中目付部4M、及び高目付部4Hは、各部分内において目付がほぼ均一な目付均一領域であってよい。所定部分若しくは所定領域内で目付がほぼ均一であるとは、目付が多少異なる箇所があっても、当該所定部分若しくは所定領域内の目付の平均との差が、目付の平均の20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下であることを指す。前方低目付部4Lfと後方低目付部4Lbとでは目付が異なっていて、それぞれでほぼ均一な目付を有していてもよい。その場合、後方低目付部4Lbの目付が、前方低目付部4Lfよりもやや小さくなっていてよい。
【0049】
図5に、
図4における低目付部4Lを含む領域の拡大図を示す。
図4及び
図5に示すように、後方低目付部4Lbは、その両側方及び後方を中目付部4Mで囲まれている。後方低目付部4Lbは周囲よりも曲げ易く、横方向D2外側から力が掛かった場合には、トップシート3側に容易に盛り上げることができる。そして、臀裂の狭い位置にもフィットする狭いサイズの山を形成できる。また、
図4及び
図5に示すように、後方低目付部4Lbの後方には、より高い目付を有する中目付部4Mが配されている。すなわち、上記後方低目付部4Lbの後方への延在範囲は吸収体4の後端より手前、好ましくは臀裂対向領域B1と後方臀部対向領域B2との境界付近までとなっている。そのため、後方低目付部4Lbによって形成される上記山が、例えば吸収体4の後端まで続いてしまうことが抑制される。そのため、後方臀部対向領域B2を、装着者の臀裂が浅くなっている部位、若しくは臀裂の終端位置よりさらに後方の比較的平らな部位に対してフィットさせやすくなる。
【0050】
なお、後方低目付部4Lbの両側方及び後方は中目付部4Mになっているので、臀裂対向領域B1の横方向D2の側部は、横方向D2中央よりもやや剛性が高いため、変形時であっても、不要なシワやヨレが生じにくい。よって、臀裂対向領域B1の中目付部4Mを臀裂の側部の臀部の面に沿わせやすくなる。また、個装時に吸収性物品1を折り畳む際に、中目付部4Mに折り線が位置していても折り癖がつきにくく、装着動作時に素早く広げて下着に沿わせることができる。
【0051】
また、前方低目付部4Lfの長手方向D1長さは、吸収体の横方向長さの40~120%であり、広い範囲にわたるフレキシブルな変形が可能である。よって、例えば、装着者が脚の開閉動作又は前後に動かすといった大きな動作をした場合であっても、股下の身体部位の形の変化に追随して、吸収性物品本体8を変形でき、漏れを効果的に防止できる。特に、上述の後方低目付部4Lbの盛り上がりによる山を臀裂に比較的深く入り込ませた場合、本体の臀裂対向領域B1は動きにくくなるので、その影響で、臀裂対向領域B1より前方の会陰対向領域Mも変形しにくくなることがある。これに対し、横方向D2にわたって延在する前方低目付部4Lfが上述のようにフレキシブルに変形できるので、後方低目付部4Lbによる臀裂への密着状態を維持しつつ、臀裂より前方の身体部位の形の変形にも追随できる。このように、本態様によれば、身体の前後方向に沿った広い範囲での、特に会陰から臀裂後方にかけての高いフィット性が得られ、そのフィット性を動作時にも維持できる。
【0052】
図6に、装着時の吸収性物品1を横方向D2に沿って切った断面図を模式的に示す。
図6(a)は、吸収性物品1を会陰対向領域Mにて切った断面模式図であり、
図6(b)は、吸収性物品1を臀裂対向領域B1にて切った断面模式図であり、
図6(c)は、吸収性物品1を後方臀部対向領域B2にて切った断面模式図である。
図6(a)に示すように、会陰対向領域Mは、両脚Lg間の股下で会陰に対向している。この状態から、脚Lgを閉じたり、前後に動かしたりした場合にも、会陰対向領域Mには柔軟性の高い前方低目付部4Lfが含まれているので、会陰対向領域Mは、会陰及びその付近の身体部位に密着して追随できる。また、
図6(b)に示すように、臀裂対向領域B1には後方低目付部4Lbが含まれているので、当該後方低目付部4Lbが盛り上がって山が形成され、臀部Denの割れ目(臀裂)に入り込んで密着させることができる。さらに、
図6(c)に示すように、後方臀部対向領域B2には、横方向D2全体にわたる中目付部4Mが含まれているので、臀裂の浅くなっている又は臀裂がない身体部位の比較的平らな面に、密着させることができる。すなわち、本形態によれば、身体の前後にわたる各部位の形に適合するよう変形可能な吸収性物品が提供される。
【0053】
なお、前方低目付部4Lfの横方向D2の長さxfは、好ましくは30~110mm、より好ましくは60~100mmであってよい。また、前方低目付部4Lfの横方向D2の長さxfは、横方向D2にわたる本体8の柔軟性を向上させるという観点では、吸収体4の横方向D2の長さの70%以上、好ましくは80%以上であってよく、吸収体4の横方向D2の長さに等しいことがより好ましい。長手方向D1の長さyfは、好ましくは55~80mm、より好ましくは60~70mmであってよい。さらに、長手方向D1の長さyfは、吸収体4の横方向D2の長さの40~120%であるが、より好ましくは50~110%、さらに好ましくは60~100%であってよい。上記長さyfによって、会陰に対向する領域を低目付部によってカバーでき、脚の開閉等の動作にも追随できる柔軟性を確保できる。
【0054】
後方低目付部4Lbの横方向D2長さxbは、好ましくは5~30mm、より好ましくは10~20mmであってよい。さらに、後方低目付部4Lbの横方向D2長さxbは、吸収体4の横方向D2長さ(幅)の5~25%であってよい。上記長さxbによって、後方低目付部4Lbの盛り上がりによって形成される上述の山を、臀裂に入り込ませて密着するのに適切なサイズにすることができる。また、後方低目付部4Lbの長手方向D1長さybは、好ましくは40~80mm、より好ましくは50~70mmであってよい。上記長さybによって、装着時に形成される上述の山が、臀裂に対応する適切な長さで形成され、且つ臀裂の浅い若しくは臀裂のない部位に対応する領域まで続いてしまうことを抑制できる。
【0055】
後方低目付部4Lbの長手方向D1長さybの、横方向長さxbに対する比の値(yb/xb)は、2~8であってよい。当該比の値によって、後方低目付部4Lbの盛り上がりによって形成される上述の山を、臀裂に入り込ませて密着するのに適切なサイズにすることができる。
【0056】
なお、フレキシブルな変形という観点では、低目付部4Lに代えて、吸収体4にスリット(厚み方向に貫通する線状若しくは条状の隙間)を形成することも考えられるが、低目付部4Lは、スリットとは異なり、吸収体の存在を確保できるため、体液の吸収・保持の作用が高まり、好ましい。
【0057】
前方低目付部4Lf及び後方低目付部4Lbは、会陰対向領域Mから臀裂対向領域B1にかけて長手方向中心線CLに沿って柔軟性が得られるという観点からは、
図4に示すように連続していていると好ましい。一方、前方低目付部4Lf及び後方低目付部4Lbは、両部分の上述の効果を妨げないのであれば、連続していなくてもよく、例えば、前方低目付部4Lfと後方低目付部4Lbとの間に中目付部4Mが配置されていてもよい。
【0058】
図1に示すように、高目付部4Hは、体液排出口対向領域Cにおいて、横方向D2の中央に形成されている。体液排出口(膣口等)が接触する部分となる。
図1に示す例では、高目付部4Hは、前方中目付部4Mfによって周囲を囲まれているが、後方に位置する前方低目付部4Lfと接していてもよい。高目付部4Hは、周囲の前方中目付部4Mfよりも大きな厚みを有していてよい。
【0059】
図7に、低目付部4Lの変形例を示す。
図4及び
図5に示す例では、前方低目付部4Lfの平面視形状は、横方向D2に長辺を有する長方形であり、後方低目付部4Lbの平面視形状は、長手方向D1に長辺を有する長方形である。これに対し、
図7(a)に示す例では、後方低目付部4Lbの前方が、前方に向かうほど徐々に幅広になり、前方低目付部4Lfと連結する位置で、前方低目付部4Lfの横方向D2長さに等しい横方向D2長さを有する。このような形状では、後方低目付部4Lbの盛り上がりにより形成される上述の山の前方が幅広になり、臀裂の開始位置付近にフィットしやすくなる。
【0060】
図7(b)に示す例においても、
図7(a)に示す例と同様に、後方低目付部4Lbの前方が前方に向かうほど徐々に幅広になっていて、同様の利点が得られる。そして、
図7(b)に示す例では、前方低目付部4Lfと後方低目付部4Lbとの境界付近では、輪郭線がなだらかな曲線となっている。さらに、前方低目付部4Lfの前方の輪郭線も、横方向D2の端部ではなだらかな曲線となっている。曲線の部分があると、目付の違いによって発生し得る応力もわずかとなる。
【0061】
<圧搾溝>
図1~
図3を再び参照すると、本形態の吸収性物品1の本体8には、少なくともトップシート3及び吸収体4がトップシート3側から圧搾されてなる圧搾溝(フィットエンボスともいう)が形成されている。圧搾溝は、体液を引き込んで保持する機能があるので、体液の拡散の阻止、或いは体液の誘導に寄与することができる。図示の例では、圧搾溝は、複数の圧搾溝を含んでいてよい(符号10、11、12、13で図示)。圧搾溝は、平面視で、吸収性物品1の長手方向中心線CLを対称線とする線対称に形成されていてよいが、必ずしも線対称でなくともよい。圧搾溝は、例えば、少なくともトップシート3及び吸収体4が積層されてなる積層体を、一対の加圧ロールの間に通過させることによって形成することができる。その場合、上記積層体のトップシート3側に凸状のロールが、吸収体4側に平坦なロールが配置されるようにして、両ロールによって挟むことで加圧できる。なお、圧搾溝は、低圧搾部と、当該低圧搾部内においてより高圧で圧搾された高圧搾部とを含んでいてよい。図面においては、高圧搾部は黒色で表示する。
【0062】
図1に示すように、主として体液排出口対向領域Cから会陰対向領域Mにおいて、一対の中央圧搾溝10、10が長手方向D1に沿って延在している。一対の中央圧搾溝10、10は、長手方向中心線CLの両側に、互いに離隔して、高目付部4Hと重ならないように配置されている。一対の中央圧搾溝10、10同士の横方向D2の離隔距離は一定であってもよいが、変動していてもよい。例えば
図1に示すように、体液排出口対向領域Cと会陰対向領域Mとの境界付近で小さくなり、その後方で再び大きくなり、後端に向かうにつれて小さくなっていてよい。一対の中央圧搾溝10、10は、体液排出口対向領域Cにおける横方向D2外側への漏れを防止し、体液を長手方向D1に誘導する機能を有する。また、体液排出口対向領域Cの横方向D2の中央を肌側に盛り上げる変形を促すこともできる。
【0063】
一対の中央圧搾溝10、10の後方には、当該一対の中央圧搾溝10、10と離隔して第1後方圧搾溝11が形成されている。第1後方圧搾溝11は、臀部対向領域Bに、主として臀裂対向領域B1に形成されている。第1後方圧搾溝11は、長手方向中心線CLを跨って形成され、且つ全体として後方に凸の形状を有する。より具体的には、第1後方圧搾溝11は、長手方向中心線CLに重なる蹄鉄形状(若しくはU字において終端同士を近づけた形状)を有する蹄鉄形状圧搾溝11hと、当該蹄鉄形状圧搾溝11hの側方から枝分かれして前方に延びる側方圧搾溝11s、11sとを含む形状を有していてよい。
【0064】
第1後方圧搾溝11の後方には、当該第1後方圧搾溝11から離隔して第2後方圧搾溝12が形成されていてよい。第2後方圧搾溝12は、横方向D2に沿って延在する溝であり、後方に凸の形状を有する。また、一対の中央圧搾溝10、10の前方には、前方圧搾溝13が形成されている。
図1に示す例では、前方圧搾溝13は、異なる曲率半径で前方に凸に湾曲した形状の圧搾溝が組み合わされてなる閉じた形状を有する。
【0065】
図1及び
図4に示すように、一対の中央圧搾溝10、10(
図4では配置を点線で表示)は、前方低目付部4Lfに延在し、さらに前方低目付部4Lfの後端を越えて延びている。すなわち、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btは、当該中央圧搾溝10、10が主として配置されている低目付部4Lよりも目付の高い中目付部4M内に位置している。
【0066】
一方に、圧搾溝を吸収体の目付の低い領域に形成する場合、適用される圧搾力が他の領域に比べて弱くなるため、十分な圧搾が行われず、圧搾溝が適切に形成できない場合がある。そして、圧搾溝の先端での圧搾が不十分な場合、圧搾されて厚み方向に接合されていた部分に剥がれ(浮き)が生じて、圧搾溝がその機能を果たせない場合がある。これに対し、
図1及び
図4に示すように、中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btが、前方低目付部4Lfの後端を後方に越えて後方中目付部4Mb内に延びて配置されていれば、中央圧搾溝10、10の端部における浮きを防止でき、圧搾溝が適切に機能できる。
【0067】
一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10bt付近は、会陰対向領域Mから臀裂対向領域B1にかけて形成されており、装着時には、会陰から臀裂に移行する身体の形の変化が部位に対向する。そのため、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btには力が掛かりやすく、浮きが生じやすい。このような観点から、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btが後方中目付部4Mbに位置するようにすることが好ましい。
【0068】
なお、一対の中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btは、後方低目付部4Lbに部分的に重なっていてもよいが、圧搾溝の浮きを防止するという観点からは、後方低目付部4Lbに接するか(
図5)、重なっていたとしてもごく一部であることが好ましい。
【0069】
<吸収体の変形例>
図8に、変形例による吸収体4'を示す。
図8は、
図4に対応する図であり、吸収性物品1からトップシート3及びサイドシート7、7を取り外した状態の図である。
図8に示す例でも、
図4に示す例と同様に、吸収体4'は、低目付部4L、中目付部4M、高目付部4Hを有しているが、本例では、前方低目付部4Lfと後方中目付部4Mbとの間に目付変化部4Vが形成されている。目付変化部4Vは、前方低目付部4Lfの後端と、後方中目付部4Mbの前端との間に位置しており、これにより、後方低目付部4Lbは、目付変化部4V及び後方低目付部4Lbによって横方向D2で挟まれることになる。目付変化部4Vは、低目付部4Lの目付より高く且つ中目付部4Mの目付より低い目付を有している。そして、目付変化部4Vの目付は、前方から後方に向かうにつれ、すなわち後方中目付部4Mbに近付くにつれ漸次又は段階的に高くなっている。
【0070】
目付変化部4Vが形成されていることで、長手方向D1の目付の急激な変化を回避できる。前方低目付部4Lfの目付と後方中目付部4Mbの目付との差が大きい場合、前方低目付部4Lfと後方中目付部4Mbとの境界で不要な応力が生じて本体8の所望の変形が得られなかったり、吸収体4'の厚みの差が過度に大きくなり違和感に繋がったりすることあるが、本形態によればそのような不都合を阻止できる。本形態の低目付部4Lの平面視形状では、前方低目付部4Lfと後方中目付部4Mbとの間の境界線の長さの合計は比較的長く、場合によっては吸収体4'の横方向D2長さの75~95%になるので、上記の不都合が強調されやすい。そのため、前方低目付部4Lfの目付と後方中目付部4Mbの目付との差が大きい場合には特に、両者の間に目付変化部4Vを設けることが好ましい。
【0071】
図9に、
図8における低目付部4Lを含む領域の拡大図を示す。
図9に示す例では、目付変化部4Vは、目付が2段階で異なる部分、第1部4V
1及び第2部4V
2によって構成されている。しかしながら、目付変化部4Vは、3段階又は4段階で目付の異なる部分となっていてもよいし、上述のように目付が漸次変化する部分であってもよい。
【0072】
第1部4V1及び第2部4V2のうち、前方の、前方低目付部4Lfに隣接して配置されている第1部4V1の目付は、後方の、後方中目付部4Mbに隣接して配置されている第2部4V2の目付よりも低い。また、目付変化部4Vの長手方向D1長さyvは、2~15mmであってよく、後方低目付部4Lbの長手方向D1長さybの5~20%であってよい。
【0073】
また、
図9に示すように、一対の中央圧搾溝10、10は、目付変化部4V上にも延在していることが好ましい。さらに、一対の中央圧搾溝10、10が、目付変化部4Vの後端を越えて、後方中目付部4Mbにまで延びていることが好ましい。すなわち、中央圧搾溝10、10が目付変化部4Vを跨るように長手方向D1に延びていて、中央圧搾溝10、10の後端10bt、10btが後方中目付部4Mb内に配されていることが好ましい。これにより、中央圧搾溝10、10の後端付近の部分は、低目付部4Lから中目付部4Mまでの、漸次又は段階的に目付が変化する領域に配置されることになる。上述のように目付が高い領域での圧搾によれば圧搾部がより確実に形成できるので、中央圧搾溝10、10の後端付近の部分は、先端(後端)10bt、10btに向かうほど漸次又は段階的に、すなわち徐々により確実により深く圧搾されることになり、後端付近での剥がれ(浮き)を防止できるととともに、圧搾溝に触れた時の違和感等も防止できる。
【0074】
<吸収体の製造方法>
続いて、上述の吸収体4の製造方法について説明する。
図10に、吸収体4を製造するための製造装置60を模式的に示す。このような装置において、吸収体となる吸収体材料を供給し、底面に複数の吸引用の開孔が設けられた吸収体型内に積繊して、脱型することで、吸収体4を得る。
図10に示すように、製造装置60の上流には、主としてパルプを含む繊維材料を供給するパルプ供給部61が設けられている。パルプ供給部61は解繊機を備えていてよく、当該解繊機によってパルプシート等を解繊して、ダクト62内に供給する。ダクト62の途中には、高吸水ポリマー粒子を供給するためのポリマー粒子導入部63が設けられていてよい。よって、ダクト62内で、パルプ及び高吸水ポリマー粒子が混合されて、混合されて得られた吸収体材料が積繊ドラム65へと供給される。
【0075】
積繊ドラム65の外周面には、吸収体型50が周方向に離隔して複数配置されている。積繊ドラム65が回転することで、吸収体型50、50、…が順次、吸収体材料を受容することができる。吸収体型50の底面は多孔プレート又はメッシュプレートで構成されており、開孔を通して気体を吸引することで吸収体材料を吸収体型50の底面に集積できるようになっている。また、開孔を通して気体が排出されることで、吸収体4を、ベルトコンベア等の搬送手段66へと供給することができる。積繊ドラム65の内部には、負圧チャンバ及び正圧チャンバが設けられており、各チャンバによって気体の吸引及び排出がそれぞれ可能になっている。
【0076】
ダクト62内の下流位置には、スカッフィングロール(若しくはブラシ)64が設けられていてよい。スカッフィングロール64によって、積繊された過剰な吸収体材料を掻き取り、吸収体型50に集積された吸収体材料の表面を均一化することができる。
【0077】
搬送手段66に供給された吸収体4は、圧縮手段67によって厚み方向に圧縮することができる。圧縮手段67は、
図10に示すように一対のロールであっても、吸収体4の両側から接近する一対の押圧部材であってもよい。圧縮手段67によって、吸収体4の保形性が高まる。
【0078】
図11に、積繊ドラム65に設けられている吸収体型50の一例の平面図を示す。また、
図12(a)に、
図11の部分P1の拡大図を、
図12(b)に、
図11の部分P2の拡大図を示す。さらに、
図13(a)に、
図11のY1-Y1断面を、
図13(b)に、
図11のY2-Y2断面を示す。
図11~13に示す吸収体型50は、上述の吸収体4(
図1~
図5)を製造するために使用される型である。吸収体型50の長手方向は、得ようとする吸収体4の長手方向D1に対応し、吸収体型50の横方向は、吸収体4の横方向D2に対応しているので、図面においては、吸収体型50の長手方向及び横方向も、それぞれD1及びD2の符号で示す。
【0079】
図11及び
図13に示すように、吸収体型50は、吸収体材料を集積できるよう全体として凹形状となっている。本例では、吸収体型50の底面は多孔プレートとなっている、すなわち、吸収体型50の底面には多数の開孔55、55、…が形成されている(
図12)。開孔の形態は、吸収体型50全体で均一ではなく、開孔面積率、すなわち底面の単位面積当たりの開孔の面積の合計の割合が場所によって異なっている。より具体的には、吸収体型50の底面は、開孔の面積率の低い低集積ゾーンZ
Lと、当該孔の低集積ゾーンZ
Lにおける開孔面積率より高い開孔面積率を有する前方中集積ゾーンZ
Mf及び後方中集積ゾーンZ
Mb(合わせて中集積ゾーンZ
Mと呼ぶ場合がある)とを有していている。前方中集積ゾーンZ
Mfと後方中集積ゾーンZ
Mbとでは、開孔面積率及び構成は、同じであってもよいし異なっていてもよいが、同じであると吸収体型50の製作の煩雑さが低減されるので、好ましい。なお、吸収体型50の底面は、ワイヤが組み合わせてなるメッシュプレートから形成されていてもよい。
【0080】
低集積ゾーンZ
L、前方中集積ゾーンZ
Mf、及び後方中集積ゾーンZ
Mbはそれぞれ、得られる吸収体4(
図4等)のうちの前方低目付部4Lf、前方中目付部4Mf、及び後方中目付部4Mbに対応するゾーンである。前方中集積ゾーンZ
Mfには、凹部51が形成されており(
図13)、この凹部51は、吸収体4の高目付部4H(
図4等)に対応している。前方中集積ゾーンZ
Mfに凹部51が形成されている場合、凹部51の底面の開孔面積率は、その周囲との開孔面積率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、前方中集積ゾーンZ
Mfにおいて凹部51の底面の開孔面積率を大きくすることで、凹部51に集積される吸収体材料の量をさらに大きくすることもできる。この構成は、高目付部4Hのさらなる高目付化を図り、高目付部4Hと前方中目付部4Mfとの目付差を大きくしたい場合に好適である。また、低集積ゾーンZ
L内には、非孔凸部材52が設けられており、この非孔凸部材52は、吸収体4の後方低目付部4Lbに対応する。
【0081】
図12(a)及び(b)に示すように、吸収体型50の底面の1つの開孔55の形状は、平面視で正方形である。しかしながら、開孔55の形状は図示のものに限られず、正方形以外の四角形、四角形以外の多角形、円形、楕円形等であってもよい。また、本例では、前方中集積ゾーンZ
Mf(中集積ゾーンZ
M)における1つの開孔55の形状及び面積と、低集積ゾーンZ
Lにおける1つの開孔55の形状及び面積とは同じになっている(
図12(a)及び(b)。よって、低集積ゾーンZ
Lと前方中集積ゾーンZ
Mf(中集積ゾーンZ
M)とでの開孔面積率の違いは、開孔55の密度、若しくは密集度合の違いになる。なお、中集積ゾーンZ
Mの開孔面積率が、低集積ゾーンZ
Lの開孔面積率より大きいのであれば、中集積ゾーンZ
Mの底面に形成されている開孔55の形状及び面積と、低集積ゾーンZ
Lの底面に形成されている開孔55の形状及び面積とは異ならせてもよい。但し、1つの開孔の形状及び面積が全体として同じ場合には、吸収体型50の製作の煩雑さが低減するので好ましい。
【0082】
なお、中集積ゾーンZM(前方中集積ゾーンZMf及び後方中集積ゾーンZMb)の開孔面積率は、25~50%であってよい。また、低集積ゾーンZLの開孔面積率は、5~20%であってよい。
【0083】
本形態で用いられる吸収体型50では、吸収体4(
図4等)の前方低目付部4Lfに対応する領域である低集積ゾーンZ
Lにおける底面の開孔面積率が、中目付部4Mに対応する領域である中集積ゾーンZ
Mにおける底面の開孔面積率よりも小さくなっている。別の言い方をすると、前方低目付部4Lfの低目付は、底面における開孔面積率を小さくすることで獲得されている。ここで、吸収体4内の場所によって目付の異なる領域を形成するには、吸収体型の底面に部分的に凸凹を形成すること等によって底面レベル(底面の高さ)を異ならせ、集積する吸収体材料の厚みを小さくするという手段もある。このような手段によって目付の違いを確実にすることができるが、底面レベルを異ならせると領域間に段差が生じるので、広範囲の低目付部を形成しようとした場合には、吸収体材料が段差のエッジにて分断されやすくなる。そのため、吸収体4の製造工程において、例えばスカッフィングロール64による材料の掻き取り工程において、段差にて吸収体が不連続になりやすく、吸収体4が千切れた状態ができたり、吸収体4の所望の厚みが得られなかったりすることがある。特に、前方低目付部4Lf(
図4及び
図5等)は、横方向D2の長さが比較的長く、中目付部4Mとの間で比較的長い境界線を有する部分であるので、段差による千切れ等が生じやすい。これに対し、本形態では、
図11及び
図13に示すように、底面の開孔面積率を周囲の領域と異ならせることで、前方低目付部4Lfのための低目付を獲得するようにしており、低集積ゾーンZ
Lと中集積ゾーンZ
Mとの境界には段差はない(底面レベルは同じである)。よって、前方低目付部4Lf中目付部4Mとの間で発生し得る千切れ等の不具合を防止できる。
【0084】
一方、上述のように、後方低目付部4Lbに対応する領域には非孔凸部材52が設けられている(
図11及び
図13)。非孔凸部材52があることで、その分の厚みだけ集積される吸収体材料の厚みが薄くなるので目付を確実に低くできる。このように、後方低目付部4Lbの低目付は、上述の前方低目付部4Lfとは異なり、底面レベル(底面の高さ)を変更することで獲得されている。横方向D2長さが短く(幅が狭く)、面積も小さい後方低目付部4Lbの場合には、開孔の面積率を小さくすることではなく、上述のように非孔凸部材52を用いることが好ましい。この理由として、以下が挙げられる。開口面積率の異なる2つの領域が隣接している場合、積繊の際、パルプ等の繊維状の材料は境界に跨るようにして集積するため、上記2つの領域の境界はそれほど明確にはならない。よって、仮に、非孔凸部材52に代えて、後方低目付部4Lbに対応する領域において底面の開孔面積率を小さくすることで低目付を形成しようとした場合、後方低目付部4Lbとそれを取り囲む後方中目付部4Mbとの境界が曖昧になり、幅狭の後方低目付部4Lbの領域を確保できない可能性がある。これに対し、非孔凸部材52を用いる本形態によれば、集積される吸収体材料の厚みを低減して集積量を確実に低減できるので、低目付の領域をより確実に確保できる。
【0085】
このように、本態様では、前方低目付部と後方低目付部とが、各低目付部の形状に応じた異なる手段で形成されている。そのため、吸収体が千切れる等の不具合なしに、低目付部の領域を確実に確保できる。
【0086】
<吸収体型の変形例>
図14~
図16に、変形例による吸収体型50'を示す。
図14は、吸収体型50'の平面図であり、
図11に対応する図である。また、
図15に、
図14の部分P3の拡大図を示す。さらに、
図16(a)に、
図14のY1'-Y1'断面を、
図16(b)に、
図14のY2'-Y2'断面を示す。
図14~16に示す吸収体型50'は、上述の吸収体4'の変形例(
図1~
図5)を製造するために使用される型である。
【0087】
吸収体型50'の基本的な構造は、
図11~
図13に示す吸収体型50と同様である。吸収体型50'は、吸収体材料を集積できるよう全体として凹形状となっており、吸収体型50'の底面も多孔プレートから形成されている。吸収体型50'の底面は、吸収体型50(
図11~
図13)と同様に、開孔面積率の低い低集積ゾーンZ
Lと、当該孔の低集積ゾーンZ
Lにおける開孔面積率より高い面積率を有する前方中集積ゾーンZ
Mf及び後方中集積ゾーンZ
Mb(中集積ゾーンZ
M)とを有している。しかしながら、吸収体型50'では、低集積ゾーンZ
Lと後方中集積ゾーンZ
Mbとの間に、変化集積ゾーンZ
Vが設けられている。変化集積ゾーンZ
Vは、上述の目付変化部4Vに対応する領域である。変化集積ゾーンZ
Vは、低集積ゾーンZ
Lより高い開孔面積率を有し、後方中集積ゾーンZ
Mbより低い開孔面積率を有し、且つ後方に向かうほど、すなわち低集積ゾーンZ
Lから後方中集積ゾーンZ
Mbに向かうほど、漸次又は段階的に開孔面積率が大きくなるゾーンである。
【0088】
図15は、
図14の部分P3、すなわち低集積ゾーンZ
L、変化集積ゾーンZ
V、及び後方中集積ゾーンZ
Mbに跨る部分の拡大図である。吸収体型50'においても、各ゾーンに含まれる開孔55、55、…の形状及び面積は等しくなっており、開孔面積率の違いは、開孔55、55、…の密度若しくは密集度合の違いによって得られている。
図15に示すように、変化集積ゾーンZ
Vは、低集積ゾーンZ
Lに隣接する第1ゾーンZ
V1と、後方中集積ゾーンZ
Mbに隣接する第2ゾーンZ
V2とを含む。第1ゾーンZ
V1における開孔面積率は、第2ゾーンZ
V2おける開孔面積率よりも小さくなっている。第1ゾーンZ
V1は、上述の吸収体4'の第1部4V
1(
図9等)に対応しており、第2ゾーンZ
V2は、第2部4V
2(
図9等)に対応している。図示の例では、変化集積ゾーンZ
Vは、開孔面積率が吸収体型50'の長手方向に沿って、第1ゾーンZ
V1及び第2ゾーンZ
V2の2段階で変化するように形成されているが、変化集積ゾーンZ
Vにおける開孔面積率は、長手方向D1に沿って漸次変化するようになっていてもよい。
【0089】
このように、前方低目付部4Lfを形成するために、低集積ゾーンZLと後方中集積ゾーンZMbとの間に開孔面積率が長手方向に変化する変化集積ゾーンZVを設けることで、低集積ゾーンZLから後方中集積ゾーンZMbにかけての吸収体材料の集積量を徐々に変化させることができるので、吸収体の途中で目付が急激に変化することを防止でき、前方低目付部4Lfと後方中目付部4Mbとの連続性が高まる。そのため、前方低目付部4Lfと後方中目付部4Mbとの目付の差が大きい場合等に、吸収体が不連続になる部分が生じること等を防止できる。
【0090】
さらに、本発明の一形態は、上述の製造方法によって製造された吸収体を用いて、吸収性物品を製造する方法であってもよい。
【0091】
<吸収性物品と個装の折りとの関係>
以下、本形態による吸収性物品を包装シートで個装する際の折り位置についても説明する。吸収性物品の個装体(個装吸収性物品)を得る場合、吸収性物品を包装シートの内面に載置し、吸収性物品と包装シートとを共に長手方向に内側(トップシート側)に、少なくとも3つ折りに折り畳む。
図17に、
図1に示す吸収性物品1を包装シート20に載置した状態を示す。また、
図18には、
図17のIII-III線に沿った断面を模式的に示す。さらに、
図19には、
図18の状態から、吸収性物品1及び包装シート20を折り畳んで個装吸収性物品100とした状態の図を示す。
【0092】
図17に示すように、吸収性物品1及び包装シート20を、横方向D2に沿って延びる3つの折り線(FL1、FL2、及びFL3)にて折り畳む。すなわち、四つ折りにする。折り畳みの際には、前方臀部対向領域(臀裂対向領域)B1と後方臀部対向領域B2との境界付近の第3折り線FL3にて、吸収性物品1の端部を折り返した後、会陰対向領域Mを通る第2折り線FL2にて、後方の部分を折り返す。さらに、前方の部分を、前方領域Fと体液排出口対向領域Cとの境界付近の第1折り線FL1にて折り返す。なお、止着テープ22は、吸収性物品1を包装シート20と共に折り畳んで包装した後に配置するものであるが、
図17及び
図18にも、止着テープ22の位置を示すために表示している。
【0093】
図18及び
図19の模式図には、前方中目付部4Mf、高目付部4H、前方低目付部4Lf、後方低目付部4Lb、及び後方中目付部4Mbの位置も示す。吸収体製造後の工程によって、目付の高さが必ずしも厚みに反映されるとは限らないが、
図18及び
図19の模式図では、目付を厚みに反映させている。
図18に示すように、本形態では、折り線を、高目付部4Hを避けた位置に設けており、折り工程が容易になる。さらに、第2折り線FL2が前方低目付部4Lfを通るように、第3折り線FL3が後方低目付部4Lbを通るようにすることで、さらに折りやすさを向上させている。
【0094】
また、
図19に示すように、個装吸収性物品100の状態で、止着テープ22が、後方低目付部4Lb及び後方中目付部4Mbが含まれる領域ではなく、前方低目付部4Lfに重なるようにしている。低目付部4Lbは、横方向D2の中央における窪みになり得るので、同じく横方向D2中央に配置する止着テープ22が貼り付きにくくなる場合がある。これに対し、本本形態によれば、横方向D2にわたって均一な目付を有する前方低目付部4Lfに重なるようにすることで、止着テープ22をより確実に貼り付けることができる。
【0095】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。また、上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0096】
1 吸収性物品(生理用ナプキン)
2 バックシート
3 トップシート
4、4' 吸収体
4H 吸収体の高目付部
4L 吸収体の低目付部
4Lb 後方低目付部(細長低目付部)
4Lf 前方低目付部
4M 吸収体の中目付部
4Mb 後方中目付部
4Mf 前方中目付部
4V 目付変化部
4V1 第1部
4V2 第2部
7 サイドシート
8 本体(吸収性物品本体)
10 中央圧搾溝
10bt 中央圧搾溝の後端
11 第1後方圧搾溝
11h 蹄鉄形状圧搾溝
11s 側方圧搾溝
12 第2後方圧搾溝
13 前方圧搾溝
20 包装シート
22 止着テープ
50、50' 吸収体型
51 凹部
52 非孔凸部材
55 開孔
60 吸収体の製造装置
61 パルプ供給部
62 ダクト
63 ポリマー粒子導入部
64 スカッフィングロール
65 積繊ドラム
66 搬送手段
67 圧縮手段
B 臀部対向領域
B1 前方臀部対向領域(臀裂対向領域)
B2 後方臀部対向領域
C 体液排出口対向領域
CL 長手方向中心線
D1 長手方向
D2 横方向
F 前方領域
FL1、FL2、FL3 折り線
HF ヒップホールドフラップ
M 中間領域(会陰対向領域)
WF ウィングフラップ
ZMf 前方中集積ゾーン
ZMb 後方中集積ゾーン
ZL 低集積ゾーン
ZV 変化集積ゾーン