(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176171
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】安全継手用収容装置
(51)【国際特許分類】
F16L 37/60 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
F16L37/60
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088316
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】鶫 雄太
(72)【発明者】
【氏名】大戸 淑生
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏彦
【テーマコード(参考)】
3J106
【Fターム(参考)】
3J106BA02
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE21
3J106CA16
3J106EF20
(57)【要約】
【課題】安全継手が分離した場合に、プラグ或いは充填ホースがケーシング先端の開口部に係止してしまうことを防止して、水素充填装置の転倒、破損を防止することが出来る安全継手の提供。
【解決手段】本発明の安全継手用収容装置(100)は、充填ホース(61)に接続されたプラグ(10)と水素充填装置側の部材であるソケット(20)から成る安全継手(101)を収容する機能を有し、当該安全継手(101)は所定以上の引張荷重が作用した時に分離する機能を有しており、ケーシングを有し、プラグ(10)とソケット(20)はケーシング内に収容されており、当該ケーシングの先端の開口には、正面ローラー(30)と正面ローラー(30)に隣接する2個の側方ローラー(40)が回転自在に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填ホースに接続されたプラグと水素充填装置側の部材であるソケットから成る安全継手を収容する機能を有し、当該安全継手は所定以上の引張荷重が作用した時に分離する機能を有しており、
ケーシングを有し、当該ケーシングの先端の開口には、正面ローラーと正面ローラーに隣接する2個の側方ローラーが回転自在に配置されていることを特徴とする安全継手用収容装置。
【請求項2】
正面ローラーの中心軸と側方ローラーの中心軸を結合し、正面ローラーの中空の回転体を中心軸と結合することなく中心軸回りを回転自在に配置し、側方ローラーの中空の回転体を中心軸と結合することなく中心軸回りを回転自在に配置する請求項1、2の何れかの安全継手用収容装置。
【請求項3】
正面ローラーと2個の側面ローラーは取付用枠体により軸支され、
取付用枠体は、側方ローラーと平行に延在している側方板体と、正面ローラーと平行に延在している正面板体と、当該正面板体と平行に延在している水素充填装置側板体を有し、
側方板体の正面ローラー側端部には、正面ローラーの方向に突出した突出部が形成されており、
正面ローラーの中心軸は側方板体の突出部により回転自在に軸支され、
正面枠体の長手方向両端部と水素充填装置側板体の長手方向両端部に2本の側方ローラーの中心軸が回転自在に軸支されている請求項1、2の何れかの安全継手用収容装置。
【請求項4】
正面ローラー及び/又は側方ローラーの隣接するローラー側の端部に非回転部及び中心軸受部を有しており、非回転部は回転しないが隣接するローラーの中心軸を回転可能に軸支しており、中心軸受部はそれが設けられたローラーの中心軸を回転自在に軸支している請求項1、2の何れかの安全継手用収容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料として用いられる水素ガス等の気体を充填するための充填装置(水素充填装置)で用いられる管継手であって、緊急時に水素充填装置と充填ホースとを分離する機能を有する管継手(安全継手)を収容する安全継手用収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水素を燃料として走行する車両A(例えば燃料電池自動車FCV)では、
図10で示す様に、水素充填設備で充填ホース201先端に設けた充填ノズル202と車両側充填口203を接続して、車両Aに搭載された水素タンク204に水素ガスを充填する。
極めて稀なケースではあるが、例えば水素充填作業をしている作業員の意識していない状態で車両A(FCV)が何らかの理由で発進してしまう場合が存在する。同様に極めて稀なケースではあるが、水素充填作業をしている車両A(FCV)に他の車両が衝突して、水素充填作業中の車両Aが作業員の意識しない状態で移動してしまう場合が存在する。水素充填中の車両Aが作業員の意識しない状態で発進し或いは移動してしまうと充填ホース201が引っ張られてしまい、水素充填装置200が転倒し破損して、可燃性の水素ガスが噴出して危険な状態になる。その様な事態を回避するため、緊急離脱用の管継手300(安全継手)を水素充填装置200と充填ホース201の間の領域に設け、充填ホース201に一定以上の引張荷重が作用すると管継手300を分離して、水素充填装置200の転倒と破損を防止している。
なお、管継手300の分離は極めて稀な事象であり、日常的に生じる訳ではない。
【0003】
ところで、充填ホース201に一定以上の引張荷重が掛からない場合であっても、充填ホース201が揺動すると、当該揺動によるモーメントが管継手300の車両側部材(プラグ)の充填ホース取付け部に作用し、当該取付け部を破損して、破損個所から水素ガスが漏出してしまう恐れがある。
それに対して、出願人は、充填ホース201の揺動によるモーメントにより管継手300のプラグが破損してしまうことを防止する対策を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
図11において、上述した管継手300(
図11では破線の引き出し線のみで図示)は水素充填装置200のケーシング320内に内蔵されている。符号205は水素充填装置のケーシングの一部を示す。
ここで管継手300は、充填ホース201に接続されたプラグ(管継手のFCV側の部材:
図11では図示せず)と、水素充填装置側の部材であるソケット(
図11では図示せず)を含み、所定以上の引張荷重が作用した時にはプラグがソケットから分離する(管継手300が分離する)。上述した従来技術(特許文献1参照)では、管継手300が分離した場合に、充填ホース201及びそれに結合されたプラグが通過するガイド部材(ケーシング320に内蔵されるが
図11では図示せず)の中空部を経由して移動し、ケーシング320の下方の開口320Aから抜け出す様に構成されている。
しかし、FCVが予期せぬ発進や移動をする場合には、充填ホースを引っ張る力は垂直方向ではなく、水平方向(横方向)に作用する。そのため、管継手300が分離した場合に、車両側部材(プラグ)がケーシング320先端の開口320Aに引っ掛かる(係止する)恐れが存在する。そして、FCVが予期せぬ発進をして管継手300が分離した場合に、プラグがケーシング320先端の開口320Aに係止してしまうと、プラグとケーシング先端開口320Aとの係止箇所を介して、FCVが充填ホース201を引っ張る力が水素充填装置に伝達され、水素充填装置の転倒という事態を生じる恐れも存在する。
【0005】
また、充填ホース201のホース外周部には、スプリング、赤外線ファイバー、メッシュ等が配置されており、充填ホース201のカバーも存在するため、ケーシング先端開口320Aと係止し易い(引っ掛かり易い)。
すなわち、充填ホース201先端のプラグがケーシング320先端の開口320Aに係止することに加えて、充填ホース201がケーシング先端開口320Aに係止する事態が生じる可能性がある。
係る理由により、FCVの予期せぬ発進や移動に際して管継手300が分離しても、充填ホース201が水素充填装置に係止して、FCVが充填ホース201及び水素充填装置を引っ張り、水素充填装置を転倒、損傷させてしまう恐れがある。
そして上述した従来技術(特許文献1)では、その様な事態に対処することは意図されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、安全継手が分離した場合に、安全継手のプラグ或いは充填ホースがケーシング先端の開口部に係止してしまうことを防止して、水素充填装置の転倒、破損を防止することが出来る安全継手用収容装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の安全継手用収容装置(100)は、
充填ホース(61)に接続されたプラグ(10:安全継手101の車両側の部材)と水素充填装置側の部材であるソケット(20)から成る安全継手(101)を収容する機能を有し、当該安全継手(101)は所定以上の引張荷重が作用した時に分離する機能を有しており、
ケーシング(320)を有し、(プラグ10とソケット20はケーシング内に収容されており、)当該ケーシングの先端(充填ホース61のFCV側:
図1~
図3では下方)の開口には、正面ローラー(30)と正面ローラー(30)に隣接する2個の側方ローラー(40)が回転自在に配置されていることを特徴としている。
本発明において、安全継手を管継手と記載する場合がある。
【0009】
本発明において、安全継手(101)が分離した場合に充填ホース(61)及びそれに結合されたプラグ(10)が経由して移動する中空部を有するホースガイド(70)が、ケーシング(320)内に収容されているのが好ましい。
【0010】
また本発明において、正面ローラー(30)の中心軸(31)と側方ローラー(40)の中心軸(41)を結合し、正面ローラー(30)の中空の回転体(32)を中心軸(31)と結合することなく中心軸回りを回転自在に配置し、側方ローラー(40)の中空の回転体(42)を中心軸(41)と結合することなく中心軸回りを回転自在に配置するのが好ましい。
【0011】
或いは本発明において、正面ローラー(30-1)と2個の側面ローラー(40-1)は、取付用枠体(80)により軸支され、取付用枠体(80)は、側方ローラー(40-1)と平行に延在している側方板体(81:枠体の側方板体)と、正面ローラー(30-1)と平行に延在している正面板体(82:枠体の正面板体)と、当該正面板体(82)と平行に延在している水素充填装置側板体(83:枠体の水素充填装置側板体)を有し、
側方板体(81)の正面ローラー側端部には、正面ローラー(30-1)の方向に突出した突出部(81A:側方板体の突出部)が形成されており、
正面ローラー(30-1)の中心軸(31-1:回転軸)は側方板体(81)の突出部(81A)により回転自在に軸支され、
正面枠体(82)の長手方向両端部と水素充填装置側板体(83)の長手方向両端部に2本の側方ローラー(40-1)の中心軸(41-1:回転軸)が回転自在に軸支されているのが好ましい。
【0012】
さらに本発明において、正面ローラー(30-2)及び/又は側方ローラー(40-2)の隣接するローラー側の端部に非回転部(33-2:正面ローラー30-2に設けた非回転部)及び中心軸受部(34-2)を有しており、非回転部(33-2)は回転しないが隣接するローラー(40-2及び/又は30-2)の中心軸(41-2及び/又は31-2:回転軸)を回転可能に軸支しており、中心軸受部(34-2)はそれが設けられたローラー(30-2及び/又は40-2)の中心軸(31-2及び/又は41-2)を回転自在に軸支しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を具備する本発明によれば、プラグ(10)とソケット(20)は所定以上の引張荷重が作用した時に分離する機能を有しているので、例えば水素充填作業中に燃料電池車両(FCV)が発進しても、プラグ(10)とソケット(20)が分離して、水素充填装置本体には充填ホース(61)の引張力が作用しない。
そして、ケーシングの先端(FCV側)の開口には、正面ローラー(30)と2個の側方ローラー(40)が回転自在に配置されているので、充填ホース(61)或いはその先端のプラグ(10)がケーシングの開口におけるローラー(30、40)と接触しても、ローラー(30、40)の平滑な表面を滑動するのでローラー(30、40)に係止することは無い。或いは、ローラー(30、40)が回転するため、充填ホース(61)或いはプラグ(10)がローラー(30、40)と係止してしまうことが防止される。その結果、充填ホース(61)或いはその先端のプラグ(10)は充填ホース(61)に作用する引張力により、円滑にケーシングから抜け出る。
すなわち本発明によれば、正面ローラー(30)及び/又は側方ローラー(40)が回転することにより、充填ホース(61)或いはプラグ(10)がケーシング先端開口に係止せず(引っ掛からず)、充填ホース(61)に作用する引張力により水素充填装置が引っ張られることが防止される。
【0014】
本発明において、前記ローラー(30、40)はケーシングの開口に設けられているので、水素を充填するべきFCVを水素充填装置の裏側(充填ホース61が配置されていない側)に停車して水素充填作業を行うこと(日常では行われない様な異常な水素充填作業)がされない限りは、水素充填装置に対するFCVの相対位置に拘わらず、充填ホース(61)により水素充填装置が引っ張られることを防止できる。
そして本発明において、安全継手(101)が分離した場合に充填ホース(61)及びそれに結合されたプラグ(10)が経由して移動する中空部を有するホースガイド(70)がケーシング(320)内に収容されていれば、ホースガイド(70)が充填ホース(61)を把持、固定して、充填ホース(61)の揺れを遮断して、プラグ(10)側には伝達しない。そのため、充填ホース(61)の揺れ等によりプラグ(10)が破損する事態を防止することが出来る。
【0015】
また本発明において、正面ローラー(30)の中心軸(31)と側方ローラー(40)の中心軸(41)を結合し、正面ローラー(30)の中空の回転体(32)を中心軸(31)と結合することなく中心軸回りを回転自在に配置し、側方ローラー(40)の中空の回転体(42)を中心軸(41)と結合することなく中心軸回りを回転自在に配置することにより、
正面ローラー(30)(の回転体32)と側方ローラー(40)(の回転体42)は、相互に垂直に延在しても回転自在に配置される。
【0016】
或いは本発明において、正面ローラー(30-1)と2個の側面ローラー(40-1)は取付用枠体(80)により軸支され、取付用枠体(80)は、側方ローラー(40-1)と平行に延在している側方板体(81:枠体の側方板体)と、正面ローラー(30-1)と平行に延在している正面板体(82:枠体の正面板体)と、当該正面板体(82)と平行に延在している水素充填装置側板体(83:枠体の水素充填装置側板体)を有し、
側方板体(81)の正面ローラー側端部には、正面ローラー(30-1)の方向に突出した突出部(81A:側方板体の突出部)が形成されており、
正面ローラー(30-1)の中心軸(31-1:回転軸)は側方板体(81)の突出部(81A)により回転自在に軸支され、
正面枠体(82)の長手方向両端部と水素充填装置側板体(83)の長手方向両端部に2本の側方ローラー(40-1)の中心軸(41-1:回転軸)が回転自在に軸支されていれば、
取付用枠体(80)をケーシング先端の内壁面に取り付けることにより、中心軸が直交し且つ隣接する正面ローラー(30-1)及び側方ローラー(40-1)を、回転自在な状態でケーシング先端開口に固定することが出来る。
【0017】
さらに本発明において、正面ローラー(30-2)及び/又は側方ローラー(40-2)の隣接するローラー側の端部に非回転部(33-2)及び中心軸受部(34-2)を有しており、非回転部(33-2)はそれ自体は回転しないが隣接するローラー(40-2或いは30-2)の中心軸(41-2或いは31-2)を回転可能に軸支し、中心軸受部(34-2、或いは44-2)はそれが設けられたローラー(30-2或いは40-2)の中心軸(31-2或いは41-2)を回転自在に軸支していれば、
隣接するローラー(40-2及び/又は30-2)の中心軸(41-2及び/又は31-2)は非回転部(33-2)により回転自在に軸支され、当該ローラー(30-2及び/又は40-2)の中心軸(31-2及び/又は41-2)は中心軸受部(34-2及び/又は44-2)により回転自在に軸支されるので、互いに直交する正面ローラー(30-2)と側方ローラー(40-2)をケーシング先端開口で回転自在に取り付けることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す説明図であって、プラグとソケットが分離していない状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態において、充填ホースが水素充填装置の正面側に引っ張られて安全継手が分離した初期の状態を示す図である。
【
図3】第1実施形態において、充填ホースが水素充填装置の側方に引っ張られて分離し、プラグがローラーに接触した状態を示す図である。
【
図4】第1実施形態におけるローラーの軸支構造を示す一部断面説明図である。
【
図5】
図4と同様にローラーの軸支構造を示す説明図であって、
図4とは別の部分を断面で示す一部断面説明図である。
【
図6】第1実施形態におけるローラーの軸支構造の分解説明図である。
【
図7】本発明の第2実施形態におけるローラーの軸支構造を示す説明斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態におけるローラーの軸支構造を示す説明斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態におけるプラグの形状を示す説明図である。
【
図11】安全継手が水素充填装置に取り付けられている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1~
図3は、本発明の第1実施形態を示している。第1実施形態に係る安全継手用収容装置は、全体を符号100で示されている。
図1において、安全継手用収容装置100のプラグ10(安全継手101の車両側の部材)と、ソケット20(安全継手101の水素充填装置側の部材)とより構成される安全継手101と、中空のホースガイド70が示されている。
図1~
図3ではケーシングは図示されておらず、
図11で示されている。
図1では、ソケット20に結合されたプラグ10の引き出し線が破線となっているが、プラグ10はソケット20のプラグ収容部により覆われており、
図1では露出されていないためである。一方、
図2~
図3では、ソケット20から分離したプラグ10が露出しているため、実線の引き出し線で示されている。
図1において、ホースガイド70は中空の円筒形状部材で構成され、円筒形状の中空部を有しており、ソケット20から分離したプラグ10及び充填ホース61は、ホースガイド70内の中空部を経由して移動する。
【0020】
図1~
図3において、基盤90は、プラグ10とソケット20から成る安全継手101(
図1)をケーシング320(
図11)と共に水素充填装置200(
図10、
図11)に取り付けるために設けられている。
図1~
図3において、ホースガイド70は取付部材71を介して基板90に固定されている。
図1~
図3では明示されないが、安全継手用収容装置100はケーシング320(
図11)を有し、プラグ10とソケット20とホースガイド70はケーシング320内に収容されている。
図示の煩雑を防止するため、
図1~
図8では安全継手用収容装置におけるケーシング本体(矩形のケーシング本体であって、水素充填装置200側を除く部分)の図示を省略している。
ケーシング320(
図11)の先端(
図1~
図8では下方)の開口部には、回転自在に軸支された3個のローラー(正面ローラー30と2個の側方ローラー40)が配置されており、3個のローラー30、40と基板90で包囲された空間が、ケーシング320(
図1~
図3では図示せず)の先端開口部を構成する。
【0021】
図1において、第1実施形態に係る安全継手用収容装置100は、充填ホース61に接続されたプラグ10(安全継手101の車両側の部材)と、水素充填装置側の部材であるソケット20を含む。安全継手101は、充填ホース61に所定以上の引張荷重が作用した時にプラグ10がソケット20から分離する(安全継手101が分離する)機能を有している。安全継手101が分離すると、充填ホース61及びプラグ10はガイド部材70の中空部を経由して移動し、ケーシングの下方の開口から抜け出す様に構成されている。
ガイド部材70は、充填ホース61を把持、固定して、充填ホース61の揺れを把持している個所で完全に遮断して、プラグ10側には伝達しない機能を有する。
水素ガスは水素充填装置(
図1~
図3では図示せず)から水素ガス配管21を介してソケット20に供給され、その後、プラグ10、充填ホース61を通過して図示しない充填ノズル(
図10の符号202)を介してFCVの水素タンク内に充填される。
ケーシング320の先端(充填ホース61のFCV側:
図1~
図3では下方)の開口には、上述した様に正面ローラー30と2個の側方ローラー40がそれぞれ回転自在に配置されている。
正面ローラー30と、正面ローラー30に隣接する2個の側方ローラー40は、それぞれが回転自在である。隣接するローラー30、40の軸支構造は、
図4~
図6を参照して後述する。
【0022】
図1で示す状態ではプラグ10とソケット20は結合しており、分離していない。プラグ10がソケット20から分離した状態が、
図2、
図3に示される。
プラグ10がソケット20から分離すると、プラグ10或いは充填ホース61は正面ローラー30或いは側方ローラー40と接触し、その結果、正面ローラー30或いは側方ローラー40は回転する。
図2は、水素充填装置の正面側(
図2の矢印F側)に充填ホース61が引っ張られた場合であり、プラグ10がソケット20から脱落した初期の段階を示している。
図2で示す状態では充填ホース61が正面ローラー30に接触しており、プラグ10はホースガイド70から抜け出した直後であり、ローラー30、40には接触していない。
図3は、充填ホース61の引張力が水素充填装置の側方(矢印S方向)に作用した場合であって、ホースガイド70から抜け出したプラグ10が側方ローラー40と接触している状態を示している。
【0023】
図2で示す様に、プラグ10或いは充填ホース61が正面ローラー30と接触した場合には、正面ローラー30が矢印R2方向に回転するので、プラグ10或いは充填ホース61はケーシング開口の縁部或いはローラー30、40と係止せず(引っ掛かることなく)、充填ホース61に作用する引張力により、水素充填装置から離隔して、水素充填装置の正面方向である矢印F方向に移動する。仮に、プラグ10が正面ローラー30と係止したとしても、正面ローラー30が回転することにより、プラグ10は正面ローラー30から外れて、充填ホース61が引っ張られる方向(矢印F方向)に移動する。
或いは、プラグ10或いは充填ホース61がローラー30、40と接触しても、ローラー30、40の平滑な表面を滑動し、ローラー30、40に係止することは無い。
一方、
図3で示す状態では、側方ローラー40は、プラグ10或いは充填ホース61と接触しても矢印R3方向に回転するので、プラグ10はケーシング開口或いはローラー40と係止することなく、充填ホース61が引っ張られる方向(矢印S方向)に移動する。
【0024】
この様に、充填ホース61或いはプラグ10が正面ローラー30或いは側方ローラー40に接触しても、正面ローラー30或いは側方ローラー40が回転して充填ホース61或いはプラグ10と係止する(引っ掛かる)ことはないので、プラグ10と充填ホース10は円滑にケーシングを抜け出し、引張力が作用する方向へ容易に移動し、水素充填装置200が転倒して破損することは無い。
【0025】
ケーシング320(
図11)の開口部に正面ローラー30及び側方ローラー40を設けることなく、開口部の断面積を大きくして、充填ホース61或いはプラグ10が先端開口部に係止しない(引っ掛からない)様にすることも考えられる。
しかし、ケーシング320(
図11)は基本的に小さくしたいという要請が存在する。ケーシングが大き過ぎると、車両Aにより引っ張られる充填ホース61の角度はケーシング中心軸(鉛直軸)に対して大きくなる。これにより管継手300(
図10)に作用する水平方向の力が大きくなり、所定の引張荷重ではプラグがソケットから分離しない可能性がある。そのため、ケーシングは可能な限り小さいことが望ましく、ケーシングの先端開口を大きくすることは出来ない。
【0026】
ここで、ケーシング320(
図11)の開口部に滑らかなアールをつけても、充填ホース61(
図1~3)がケーシングの開口部と引っ掛かることは十分に防止出来ない。前記の通り、充填ホース201(
図11)のホース外周部には、スプリング、赤外線ファイバー、メッシュ等が配置されているため、充填ホース61の表面には凹凸が存在する。その上、ケーシングを構成する板材の厚さ寸法が小さいため、曲率を小さくすることができない。したがって、ケーシングの開口が充填ホース61に作用する引張力により相対移動しない限りは、充填ホース61がケーシングの開口において係止してしまう。そのため、開口部にアールを設けても、プラグ或いは充填ホース6がケーシング開口に係止することは有効に防止することが出来ない。
【0027】
図1~
図3において、隣接する正面ローラー30と側方ローラー40は中心軸が直交している。そのため、正面ローラー30の中心軸と側方ローラー40の中心軸を直結されていると、ローラー30、40の各々の中心軸は回転できず、正面ローラー30及び側方ローラー40を回転させることが出来ない。
しかし、
図4~
図6で示すローラー軸支構造であれば、隣接するローラー30、40は、双方とも回転することが出来る。
図4~
図6において、正面ローラー30は中心軸31と中空の回転体32を有し、中空の回転体32の中空部を中心軸31が貫通しているが、中空の回転体32は中心軸31に固定されていない(結合されていない)。そのため、中心軸31が固定されていても中空の回転体32は中心軸31の回りを自在に回転することが出来る。
同様に、側方ローラー40も中心軸41と中空の回転体42を有し、中空の回転体42の中空部を中心軸41が貫通しているが、中空の回転体42は中心軸41と接続(結合)しておらず、中心軸41が固定されていても中空の回転体42は中心軸回りを自在に回転することが出来る。
図4、
図5において、正面ローラー30の中心軸31、側方ローラー40の中心軸41は実線で表現し、正面ローラー30は中空の回転体32、側方ローラー40の中空の回転体42は破線で表現している。
また、
図4において、正面ローラー30の中心軸31は半割状態で模式的に示されており、
図5において、一方の側方ローラー40(
図5で下方のローラー40)の中心軸41も半割状態で模式的に示されている。
図6において、中空の回転体32及び42において、それぞれの長手方向端部近傍には、中空の回転体32、42が示されており、中空の回転体32、42は、中心軸31、41に対して相対移動するのを規制するためのつば部32A、42Aが長手方向両端に設けられている。
図4、
図5では、図面の煩雑化を回避するためつば部32A、42Aの図示を省略している。
【0028】
図4~
図6において、正面ローラー30の中心軸31と側方ローラー40の中心軸41は相互に垂直方向に延在する様に配置されている。2本の側方ローラー40の中心軸41は、正面ローラー30側の端部(
図4、
図5、
図6で右側の端部)において、締結部材35により正面ローラー30の端部(両端部)と結合されている。
図5において、2本の側方ローラー40の中心軸41において、水素充填装置側の端部(左側の端部)は、締結部材45を介して、基板90上に配置された側方ローラー取付基板91の端部と結合されている。
正面ローラー30の中心軸31と側方ローラー40の中心軸41は接続され、双方とも回転しない。しかし、正面ローラー30の中空の回転体32は正面ローラー30の中心軸31の回りを回転可能であり、側方ローラー40の中空の回転体42は側方ローラー40の中心軸41の回りを回転可能である。そのため、正面ローラー30の中空の回転体32と側方ローラー40の中空の回転体42は、それぞれ回転自在である。
【0029】
図4~
図6で説明したローラーの軸支構造を採用することにより、中心軸が直交する正面ローラー30と側方ローラー40は、それぞれの中空の回転体32、42が中心軸31、41に対して自在に回転する。そのため、安全継手101(
図1)のソケット20とプラグ10が分離し、充填ホース61或いはその先端のプラグ10がケーシング(
図11の符号320に相当)の開口に配置された正面ローラー30或いは側方ローラー40と接触すると、ローラー30、40の中空部32、42が回転することにより、充填ホース61或いはプラグ10はローラー30、40の中空部32、42と係止することはない(引っ掛からない)。そして、充填ホース61の引張力が作用すると、ケーシング320(
図11)から抜け出す。そのため、充填ホース61に作用する引張力により水素充填装置が引っ張られて転倒することは防止される。
【0030】
次に、
図7を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
図7の第2実施形態は
図1~
図6の第1実施形態と概略同様であるが、正面ローラーの中心軸(回転軸)と側方ローラーの中心軸を支持する軸支構造が異なっている。
図7で示す様に、第2実施形態の軸支構造では、正面ローラー30-1と2個の側面ローラー40-1は、取付用枠体80により軸支されている。
図7では軸支構造の1部が図示されており、側面ローラー40-1は1個のみ示されている。
取付用枠体80は、側方ローラー40-1の外方(
図7では右側)において側方ローラー40-1と平行に延在している側方板体81(枠体の側方板体)と、正面ローラー30-1と平行に延在している正面板体82(枠体の正面板体)と、正面板体82と平行に延在している水素充填装置側板体83(枠体の水素充填装置側板体)を有している。
明確には図示されていないが、側方板体81における正面ローラー30-1と反対側の一端は基板90(
図1~
図3)上に配置された取付基板91上に固定される。また、水素充填装置側板体83も取付基板91上に配置される。 また、図示されていない枠体の側方板体が、図示されていない側方ローラーと平行に延在しており、取付基板91に固定されている。正面ローラー30-1と側方ローラー40-1の上下方向位置(
図7で上下方向)は相違している。
正面ローラー30-1と側方ローラー40-1は、その中心軸は接続していないので、それぞれ単独に回転自在である。
側方板体81、正面板体82の位置や寸法は、ソケット20とプラグ10が分離した時、充填ホース61或いはプラグ10がローラー30-1、40-1の回転により円滑にケーシング320(
図11)から抜け出るのを妨げない様に設定されている。
【0031】
図7において、側方板体81の正面ローラー側端部には、正面ローラー30-1側に突出した突出部81A(側方板体の突出部)が形成されている。突出部81Aには正面ローラー30-1の軸支部81Bが設けられ、軸支部81Bによって正面ローラー30-1の中心軸31-1(回転軸)が回転自在に軸支されている。
正面枠体82の長手方向両端部には側方ローラー40-1の軸支部82Aが設けられている。そして図示されていないが、水素充填装置側板体83の長手方向両端部にも軸支部(図示せず:側方ローラー40-1の軸支部)が設けられている。両軸支部82A及び図示しない軸支部(水素充填装置側板体83の長手方向両端部における軸支部)により、側方ローラー40-1の中心軸41-1が回転自在に軸支されている。
図7の第2実施形態の正面ローラー30-1、側方ローラー40-1は第1実施形態の正面ローラー30、側方ローラー40と異なり、正面ローラー30-1のローラー部分と中心軸31-1とは一体的に回転可能に構成されており、側方ローラー40-1のローラー部分と中心軸41-1とは一体的に回転可能に構成されている。
【0032】
図示はされていないが、中心軸31-1及び中心軸41-1を回転せずに枠体に固定し、中心軸31-1及び中心軸41-1の半径方向外方に中空円筒形回転体を配置して、当該中空円筒形回転体を中心軸31-1、41-1に対して回転可能に配置することも可能である。
図7の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1~
図6の第1実施形態と同様である。
【0033】
次に
図8を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図8の第3実施形態も
図7の第2実施形態と同様に、軸支構造を除いて
図1~
図6の第1実施形態と概略同様に構成されている。
図1において矢印A8で示す部分を拡大して示す
図8において、第3実施形態の軸支構造では、正面ローラー30-2において、隣接する側方ローラー40-2側の両端部に非回転部33-2及び中心軸受部34-2を設けている。図示はされていないが、非回転部33-2及び中心軸受部34-2は、正面ローラー30-2の軸方向の両端部に配置されている。
図8において、側方ローラー40-2及びその中心軸41-2は、紙面に垂直な方向であって紙面の裏側(看者から離隔する側)に向かって延在している。
図8において、側方ローラー40-2はその引き出し線のみが破線で示されている。
非回転部33-2は、それ自体は回転しないが、隣接する側方ローラー40-2の中心軸41-2を、軸支部33A-2により回転可能に軸支している。また、中心軸受部34-2は、中心軸受部34-2を設けた正面ローラー30-2における中心軸31-2を回転自在(矢印R8)に軸支している。
図8の第3実施形態の正面ローラー30-2は中心軸31-2とは一体に回転する様に構成されている。側方ローラー40-2のローラー部分と中心軸41-2も一体的に回転する様に構成されている。
図8では、非回転部33-2及び中心軸受部34-2を正面ローラー30-2側に配置されている。ただし、図示はされていないが、非回転部及び中心軸受部を、側方ローラー40-2側に配置して、正面ローラー30-2側には設けないことが可能である。或いは、非回転部33-2及び中心軸受部34-2と同様な構造を、正面ローラー30-2のみならず、側方ローラー40-2側にも設けることが可能である。
【0034】
上述した様に非回転部33-2及び中心軸受部34-2を正面ローラー30-2の側方ローラー40-2と隣接する側の両端部に設ければ、側方ローラー40-2の中心軸41-2は非回転部33-2の軸支部33A-2により回転自在に軸支され、正面ローラー30-2の中心軸31-2は中心軸受部34-2により回転自在に軸支される。そのため、互いに直交する正面ローラー30-2と側方ローラー40-2をそれぞれ回転自在にケーシング先端開口に取り付けることが出来る。
ソケット20とプラグ10が分離し、充填ホース61或いはその先端のプラグ10がケーシングの開口に配置された正面ローラー30-2或いは側方ローラー40-2と接触しても、ローラー30-2、40-2が回転することにより、充填ホース61或いはプラグ10がローラー30-2、40-2と係止してしまうことはなく、円滑にケーシングから抜け出ることが出来る。
図8の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1~
図7の実施形態と同様である。
【0035】
図9は、図示の実施形態のプラグ10の変形例が示されており、
図9におけるプラグ10は、本体部10A、中間部10B、テーパー部10Cを有している。テーパー部10Cは、中間部10Bから下端部(
図9で下側端部)に向けて径寸法が徐々に減少しており、テーパー部10Cの下端部に充填ホース61が接続されている。
プラグ10における充填ホース側をテーパー部10Cで構成することにより、プラグ10側と充填ホース61側に段部が無い。そのため、ソケット20とプラグ10が分離し、プラグ10がケーシングの開口に配置された正面ローラー30及び/又は側方ローラー40と接触しても、テーパー部10Cにより円滑にローラー30、40と接触するので、ケーシングから更に抜け出し易くなる。
【0036】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0037】
10・・・プラグ(安全継手の車両側の部材)
20・・・ソケット(安全継手の水素充填装置側の部材)
30、30-1、30-2・・・正面ローラー
31、31-1、31-2・・・正面ローラーの中心軸
32・・・正面ローラーの中空の回転体
33-2・・・非回転部
34-2・・・中心軸受部
40、40-1、40-2・・・側方ローラー
41、41-1、41-2・・・側面ローラーの中心軸
42・・・側方ローラーの中空の回転体
61・・・充填ホース
70・・・ホースガイド
80・・・取付用枠体
81・・・側方板体(枠体の側方板体)
81A・・・突出部(側方板体の突出部)
82・・・正面板体(枠体の正面板体)
83・・・水素充填装置側板体(枠体の水素充填装置側板体)
100・・・安全継手用収容装置
101・・・安全継手
200・・・水素充填装置
320・・・ケーシング
320A・・・ケーシング下方の開口