(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176174
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】アンモニア改質燃焼システム、及びアンモニア改質燃焼方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20231206BHJP
F23K 5/00 20060101ALI20231206BHJP
F23N 1/00 20060101ALI20231206BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C01B3/04 B
F23K5/00 303
F23N1/00 102B
F23N5/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088327
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤平 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】宍田 健一
【テーマコード(参考)】
3K003
3K068
【Fターム(参考)】
3K003EA10
3K003FA01
3K003FA04
3K003FB03
3K003FB04
3K003FB05
3K003GA03
3K068AA01
3K068AB21
3K068BB01
3K068BB12
3K068BB25
3K068FB01
3K068FC02
3K068GA01
3K068HA03
(57)【要約】
【課題】ヒーター等の加熱手段を別途設けなくても改質ガスを安定的に生成することができ、これによって安定した燃焼を行うことができるアンモニア改質燃焼システムを提供する。
【解決手段】アンモニアガス供給装置3によって供給されるアンモニアガスと改質用空気供給装置11によって供給される改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの熱を利用してアンモニアガスを改質し水素を含有した改質ガスを生成する改質器5と、改質器5によって生成される改質ガスと燃焼用空気供給装置13によって供給される燃焼用空気との混合ガスを燃焼する燃焼器7と、改質用空気の供給量(Q1)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又は高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、改質用空気の供給量(Q1)を制御する改質用空気供給量制御手段59,82とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアガスを供給するアンモニアガス供給装置と、改質用空気を供給する改質用空気供給装置と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給装置とを備えるアンモニア改質燃焼システムであって、
前記アンモニアガス供給装置によって供給されるアンモニアガスと前記改質用空気供給装置によって供給される改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの熱を利用して前記アンモニアガスを改質し水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器によって生成される改質ガスと前記燃焼用空気供給装置によって供給される燃焼用空気との混合ガスを燃焼する燃焼器と、
前記改質用空気の供給量(Q1)と前記アンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又は前記高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、前記改質用空気の供給量(Q1)を制御する改質用空気供給量制御手段と、
を備えるアンモニア改質燃焼システム。
【請求項2】
前記改質ガスの温度を保つように、前記改質器から前記燃焼器に前記改質ガスが導入される請求項1に記載のアンモニア改質燃焼システム。
【請求項3】
前記改質用空気供給量制御手段は、さらに前記改質ガス中の酸素濃度に基づいて、前記改質用空気の供給量(Q1)を制御する請求項1又は2に記載のアンモニア改質燃焼システム。
【請求項4】
前記改質ガス中の酸素濃度に基づいて、前記混合ガスの供給量(Q1+Q2)を制御する混合ガス供給量制御手段をさらに備える請求項1又は2に記載のアンモニア改質燃焼システム。
【請求項5】
前記燃焼用空気の供給量(Q3)と前記アンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q3/Q2)が所定範囲となるように、前記燃焼用空気の供給量(Q3)を制御する燃焼用空気供給量制御手段をさらに備える請求項1又は2に記載のアンモニア改質燃焼システム。
【請求項6】
燃焼炉での運転立ち上げ時において、前記燃焼器で発生させた燃焼熱を利用する請求項1又は2に記載のアンモニア改質燃焼システム。
【請求項7】
アンモニアガスを供給するアンモニアガス供給工程と、改質用空気を供給する改質用空気供給工程と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給工程とを包含するアンモニア改質燃焼方法であって、
前記アンモニアガス供給工程にて供給されるアンモニアガスと前記改質用空気供給工程にて供給される改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの熱を利用して前記アンモニアガスを改質し水素を含有した改質ガスを生成する改質ガス生成工程と、
前記改質ガス生成工程にて生成される前記改質ガスと前記燃焼用空気供給工程にて供給される燃焼用空気との混合ガスを燃焼する燃焼工程と、
前記改質用空気供給工程において、前記改質用空気の供給量(Q1)と前記アンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又は前記改質ガス生成工程において、前記高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、前記改質用空気の供給量(Q1)を制御する改質用空気供給量制御工程と、
を包含するアンモニア改質燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアガスを供給するアンモニアガス供給装置と、改質用空気を供給する改質用空気供給装置と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給装置とを備えるアンモニア改質燃焼システム、及び当該アンモニア改質燃焼システムを用いて行われるアンモニア改質燃焼方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃棄物焼却炉においては、炉の運転の立ち上げ用燃料として、都市ガスや灯油等の化石燃料が使用されている。近年、脱炭素化に向けて、化石燃料からカーボンフリー燃料への転換が求められている。カーボンフリー燃料として、水素やアンモニアが注目されており、その普及に向けた動きが加速している。
【0003】
水素は貯蔵が難しいとされるが、アンモニアは比較的容易に貯蔵が可能であることから、その導入が期待されている。ただ、アンモニアは燃焼性が悪く、アンモニアを単独で燃焼させると、窒素酸化物や未燃アンモニアが発生するため、石炭や天然ガス等の化石燃料と混合して燃焼させる混焼技術の開発が行われている。また、アンモニアを改質して燃焼させるようにした燃焼装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1に記載の燃焼装置においては、アンモニアガスが導入される改質器の内部に、アンモニアガスを水素ガスと窒素ガスとに分解させる触媒を収容した触媒収容部が設けられるとともに、触媒によるアンモニアガスの分解作用を活性化させるための加熱手段としてのヒーターが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記混焼技術では、化石燃料を使用しているため、完全な脱炭素化にはならない。また、特許文献1に記載の燃焼装置では、触媒によるアンモニアガスの分解作用を活性化させる加熱手段としてヒーターを別途設ける必要があるため、装置が大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヒーター等の加熱手段を別途設けなくても改質ガスを安定的に生成することができ、これによって安定した燃焼を行うことができるアンモニア改質燃焼システム、及びアンモニア改質燃焼方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係るアンモニア改質燃焼システムの特徴構成は、
アンモニアガスを供給するアンモニアガス供給装置と、改質用空気を供給する改質用空気供給装置と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給装置とを備えるアンモニア改質燃焼システムであって、
前記アンモニアガス供給装置によって供給されるアンモニアガスと前記改質用空気供給装置によって供給される改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの熱を利用して前記アンモニアガスを改質し水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器によって生成される改質ガスと前記燃焼用空気供給装置によって供給される燃焼用空気との混合ガスを燃焼する燃焼器と、
前記改質用空気の供給量(Q1)と前記アンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又は前記高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、前記改質用空気の供給量(Q1)を制御する改質用空気供給量制御手段と、
を備えることにある。
【0009】
本構成のアンモニア改質燃焼システムによれば、改質用空気の供給量(Q1)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又はアンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、改質用空気の供給量(Q1)が制御される。これにより、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼反応を適切に制御することができる。その結果、アンモニアガスの燃焼反応と改質反応とが適度なバランスで行われることになり、改質器において水素を含有した改質ガスが安定的に生成され、生成された改質ガスが燃焼器において燃焼される。従って、ヒーター等の加熱手段を別途設けなくても、改質ガスを安定的に生成することができ、これによって安定した燃焼を行うことができる。
【0010】
本発明に係るアンモニア改質燃焼システムにおいて、
前記改質ガスの温度を保つように、前記改質器から前記燃焼器に前記改質ガスが導入されることが好ましい。
【0011】
本構成のアンモニア改質燃焼システムによれば、改質ガスの熱エネルギーが損失することなく燃焼器において利用されるので、燃焼器での発熱量を向上させることができる。
【0012】
本発明に係るアンモニア改質燃焼システムにおいて、
前記改質用空気供給量制御手段は、さらに前記改質ガス中の酸素濃度に基づいて、前記改質用空気の供給量(Q1)を制御することが好ましい。
【0013】
本構成のアンモニア改質燃焼システムによれば、改質ガス中の酸素濃度に基づいて、改質用空気の供給量(Q1)が制御されるので、改質器でのアンモニアガスの燃焼反応が過剰とならないようにすることができる。
【0014】
本発明に係るアンモニア改質燃焼システムにおいて、
前記改質ガス中の酸素濃度に基づいて、前記混合ガスの供給量(Q1+Q2)を制御する混合ガス供給量制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0015】
本構成のアンモニア改質燃焼システムによれば、改質ガス中の酸素濃度に基づいて、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの供給量(Q1+Q2)が制御されるので、改質器でのアンモニアガスの燃焼反応が過剰とならないようにすることができる。また、最終的には、混合ガスの供給量(Q1+Q2)を0として、改質器への混合ガスの供給を停止することにより、改質器が損傷するのを未然に防ぐことができる。
【0016】
本発明に係るアンモニア改質燃焼システムにおいて、
前記燃焼用空気の供給量(Q3)と前記アンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q3/Q2)が所定範囲となるように、前記燃焼用空気の供給量(Q3)を制御する燃焼用空気供給量制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本構成のアンモニア改質燃焼システムによれば、燃焼用空気の供給量(Q3)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q3/Q2)が所定範囲となるように、燃焼用空気の供給量(Q3)が制御されるので、燃焼器において安定した燃焼を行うことができる。
【0018】
本発明に係るアンモニア改質燃焼システムにおいて、
燃焼炉での運転立ち上げ時において、前記燃焼器で発生させた燃焼熱を利用することが好ましい。
【0019】
本構成のアンモニア改質燃焼システムによれば、燃焼炉の運転立ち上げ用燃料として従来使用されていた都市ガスや灯油等の化石燃料に代えて、燃焼器で発生させた燃焼熱を利用することで、近年の喫緊の課題である脱炭素化を図ることができる。
【0020】
次に、上記課題を解決するための本発明に係るアンモニア改質燃焼方法の特徴構成は、
アンモニアガスを供給するアンモニアガス供給工程と、改質用空気を供給する改質用空気供給工程と、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給工程とを包含するアンモニア改質燃焼方法であって、
前記アンモニアガス供給工程にて供給されるアンモニアガスと前記改質用空気供給工程にて供給される改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの熱を利用して前記アンモニアガスを改質し水素を含有した改質ガスを生成する改質ガス生成工程と、
前記改質ガス生成工程にて生成される前記改質ガスと前記燃焼用空気供給工程にて供給される燃焼用空気との混合ガスを燃焼する燃焼工程と、
前記改質用空気供給工程において、前記改質用空気の供給量(Q1)と前記アンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又は前記改質ガス生成工程において、前記高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、前記改質用空気の供給量(Q1)を制御する改質用空気供給量制御工程と、
を包含することにある。
【0021】
本構成のアンモニア改質燃焼方法によれば、改質用空気の供給量(Q1)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又はアンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、改質用空気の供給量(Q1)が制御される。これにより、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼反応を適切に制御することができる。その結果、アンモニアガスの燃焼反応と改質反応とが適度なバランスで行われることになり、改質ガス生成工程において水素を含有した改質ガスが安定的に生成され、生成された改質ガスが燃焼工程において燃焼される。従って、ヒーター等を用いて加熱工程を別途行わなくても、改質ガスを安定的に生成することができ、これによって安定した燃焼を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニア改質燃焼システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るアンモニア改質燃焼方法における各工程の処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、ガス情報取得工程、改質用空気供給量制御工程の処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、ガス情報取得工程、燃焼用空気供給量制御工程の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
【0024】
〔アンモニア改質燃焼システム〕
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニア改質燃焼システム1の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、アンモニア改質燃焼システム1は、アンモニアガス供給装置3、改質器5、燃焼器7、改質用空気供給装置11、燃焼用空気供給装置13及び制御装置15を備えている。
【0025】
<アンモニアガス供給装置>
アンモニアガス供給装置3としては、例えば、アンモニアタンク及び気化器を備えて構成されるものを用いることができる。アンモニアタンクは、燃料であるアンモニアを液体状態で貯蔵する。気化器は、アンモニアタンクに貯蔵された液体状態のアンモニアを気化させて、燃料ガスであるアンモニアガスを生成する。
【0026】
アンモニアガス供給装置3と改質器5とは、アンモニアガス供給管20によって接続されている。アンモニアガス供給管20には、上流側流量制御弁21及び下流側流量制御弁23がアンモニアガス流れの上流側から下流側に向けてこの順に介設されている。
【0027】
<改質器>
改質器5は、ケーシング内に複合触媒30が組み込まれて構成されている。複合触媒30は、アンモニアを燃焼(4NH3+3O2→2N2+6H2O)させる燃焼触媒31と、燃焼触媒31よりも混合ガス流れ下流側に配されてアンモニアを水素と窒素とに分解(2NH3→N2+3H2)する改質触媒33とを組み合わせたものである。複合触媒30としては、例えば、特開2010-215457号公報や、特開2018-1095号公報、特開2018-1096号公報、特開2021-130100号公報等に開示された公知の複合触媒を用いることができる。改質器5においては、アンモニアガス供給装置3から供給されるアンモニアガスと改質用空気供給装置11から供給される改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの熱を利用してアンモニアガスを改質し、水素を含有した改質ガスを生成する。
【0028】
改質器5と燃焼器7とは、改質ガス供給管40によって接続されている。改質ガス供給管40は、改質器5からの改質ガスを冷やすことなく燃焼器7に直接導入するために比較的長さが短い直管からなり、その外表面側には、断熱材41が装着されている。こうして、改質器5で生成された比較的高温(500~600℃程度)の改質ガスの温度を保つように、改質器5からの改質ガスが燃焼器7に導入される。このような構成により、改質ガスの熱エネルギーが損失することなく燃焼器7において利用されるので、燃焼器7での発熱量を向上させることができる。
【0029】
<燃焼器>
燃焼器7は、改質器5によって生成された改質ガスと、燃焼用空気供給装置13から供給される燃焼用空気との混合ガスを燃焼し、例えば、定期点検等で停止された廃棄物焼却炉(燃焼炉)を立ち上げ時に所定の燃焼状態に移行させるための高温(1500℃程度)の燃焼排ガスを発生させるものである。
【0030】
<改質用空気供給装置>
改質用空気供給装置11は、取り込んだ外気(大気)を改質用空気として強制的に送り出す改質用空気ブロワ51と、改質用空気ブロワ51から送り出される改質用空気を改質器5へと供給するための改質用空気供給管53とを備えている。改質用空気ブロワ51は、主として、ブロワ本体55と、ブロワ本体55に連結されるモータ57と、モータ57の回転速度を制御するインバータ59とにより構成されている。改質用空気供給管53において、改質用空気流れ上流側端部は、改質用空気ブロワ51の送風口部に接続され、改質用空気流れ下流側端部は、アンモニアガス供給管20における上流側流量制御弁21と下流側流量制御弁23との間の部分に連通状態で接続されている。改質用空気供給装置11においては、制御装置15、より具体的には後述するブロワ制御部82からインバータ59へと送られる制御信号により、改質用空気ブロワ51の送風量、すなわち改質用空気の供給量(Q1)が制御される。モータ57には、回転速度を測定する回転速度計60が付設されており、回転速度計60の測定信号は、制御装置15へと送られる。後述するブロワ制御部82は、回転速度計60により計測される計測値を目標値と比較し、測定値と目標値との差分に応じた制御信号をインバータ59に送って、測定値を目標値に一致させるように制御する。
【0031】
<燃焼用空気供給装置>
燃焼用空気供給装置13は、取り込んだ外気(大気)を強制的に送り出す燃焼用空気ファン71と、燃焼用空気ファン71から送り出される燃焼用空気を燃焼器7へと供給するための燃焼用空気供給管73と、燃焼用空気供給管73に介設される流量調節ダンパ80とを備えている。燃焼用空気ファン71は、主として、ファン本体75と、ファン本体75に連結されるモータ77とを備え、制御装置15、より具体的には後述するファン制御部83からモータ77へと送られる制御信号により、モータ77の回転速度を一定として所定風量を送り出すように構成されている。燃焼用空気供給管73において、燃焼用空気流れ上流側端部は、燃焼用空気ファン71の送風口部に接続され、燃焼用空気流れ下流側端部は、燃焼器7に接続されている。燃焼用空気供給装置13においては、制御装置15、より具体的には後述するダンパ制御部84から流量調節ダンパ80へと送られる制御信号により、燃焼用空気ファン71の送風量、すなわち燃焼用空気の供給量(Q3)が制御される。
【0032】
制御装置15は、コンピュータを主体に構成されており、計測部81、ブロワ制御部82、ファン制御部83、ダンパ制御部84及び弁制御部85の各機能部を備え、CPUにおいて所定プログラムが実行されることにより、各機能部の機能が発揮されるように構成されている。
【0033】
アンモニア改質燃焼システム1は、ガス流量計91、ガス圧力計92、ガス温度計93及び酸素濃度計94をさらに備えている。
【0034】
<ガス流量計>
ガス流量計91は、アンモニアガス供給管20における上流側流量制御弁21が介設される位置と改質用空気供給管53の下流側端部が接続される位置との間の管部分の内部を流れるアンモニアガスの流量を測定するように配設されている。ガス流量計91の測定信号は、流量調節器95を介して制御装置15へと送られる。ここで、流量調節器95は、ガス流量計91により計測される計測値を目標値(指示値)と比較し、測定値と目標値との差分に応じた制御信号を上流側流量制御弁21に送って、測定値を目標値に一致させるように制御を行う機器である。
【0035】
<ガス圧力計>
ガス圧力計92は、アンモニアガス供給管20におけるガス流量計91が配設される位置と改質用空気供給管53の下流側端部が接続される位置との間の管部分の内部を流れるアンモニアガスの圧力を測定するように配設されている。ガス圧力計92の測定信号は、制御装置15へと送られる。
【0036】
<ガス温度計>
ガス温度計93は、改質ガス供給管40における改質器5の出口に近い上流側管部分の内部を流れる改質ガスの温度を測定するように配設されている。ガス温度計93の測定信号は、制御装置15へと送られる。
【0037】
<酸素濃度計>
酸素濃度計94は、改質ガス供給管40の内部を流れる改質ガスに含まれる酸素の濃度を測定するようにガス温度計93が配設される位置よりも改質ガス流れ下流側に配設されている。酸素濃度計94の測定信号は、制御装置15へと送られる。
【0038】
<ガス情報、ガス情報取得手段>
制御装置15において、計測部81は、ガス流量計91の測定信号に基づいて、アンモニアガスの流量を計測する。計測部81は、ガス圧力計92の測定信号に基づいて、アンモニアガスの圧力を計測する。計測部81は、ガス温度計93の測定信号に基づいて、改質ガスの温度を計測する。計測部81は、酸素濃度計94の測定信号に基づいて、改質ガスに含まれる酸素の濃度を計測する。上記のアンモニアガスの流量及び圧力、並びに改質ガスの温度及び酸素濃度は、アンモニアガス供給装置3から改質器5を経て燃焼器7に至るガス流路を流れるガスに関する情報である。本実施形態において、ガス情報を取得するガス情報取得手段は、主として、測定手段(ガス流量計91、ガス圧力計92、ガス温度計93及び酸素濃度計94)と、計測部81とによって構成される。
【0039】
<改質用空気供給量制御手段>
ブロワ制御部82は、測定手段(ガス流量計91及びガス温度計93)、並びに計測部81によって取得されたガス情報に基づいて、改質用空気の供給量(Q1)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又はアンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの温度(改質器5の出口に近いガス温度計93によって計測される)が所定の温度範囲となるように、所定の制御信号を改質用空気ブロワ51のインバータ59に送信して改質用空気ブロワ51の送風量、すなわち改質用空気の供給量(Q1)を制御する。本実施形態において、改質用空気供給装置11によって供給される改質用空気の供給量(Q1)をガス情報に基づいて制御する改質用空気供給量制御手段は、主として、インバータ59とブロワ制御部82とによって構成される。
【0040】
<燃焼用空気供給量制御手段>
ファン制御部83は、燃焼用空気ファン71のモータ77に制御信号を送信し、モータ77の回転速度を一定として所定風量を送り出すように制御する。ダンパ制御部84は、測定手段(ガス流量計91)及び計測部81によって取得されたガス情報に基づいて、燃焼用空気の供給量(Q3)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q3/Q2)が所定範囲となるように、所定の制御信号を流量調節ダンパ80に送信して流量調節ダンパ80の開度を制御し、燃焼用空気の供給量(Q3)を制御する。本実施形態において、燃焼用空気供給装置13によって供給される燃焼用空気の供給量(Q3)をガス情報に基づいて制御する燃焼用空気供給量制御手段は、主として、流量調節ダンパ80と、ファン制御部83と、ダンパ制御部84とによって構成される。
【0041】
〔アンモニア改質燃焼方法〕
図2は、本発明の一実施形態に係るアンモニア改質燃焼方法における各工程の処理の手順を示すフローチャートである。
図2中記号「S」はステップを表す(
図3及び4においても同様)。
【0042】
<アンモニアガス供給工程、改質用空気供給工程:S1>
アンモニア改質燃焼システム1においては、アンモニアガス供給装置3によってアンモニアガスを、アンモニアガス供給管20を介して改質器5に供給し(アンモニアガス供給工程)、これと同時に、改質用空気供給装置11によって改質用空気を、改質用空気供給管53及びアンモニアガス供給管20を介して改質器5に供給する(改質用空気供給工程)。
【0043】
<改質ガス生成工程:S2>
改質器5は、複合触媒30の作用により、アンモニアガス供給装置3から供給されるアンモニアガスと改質用空気供給装置11から供給される改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの熱を利用してアンモニアガスを改質し、水素を含有した改質ガスを生成する。
【0044】
<改質ガス供給工程、燃焼用空気供給工程:S3>
改質器5によって生成された改質ガスは、改質ガス供給管40を介して燃焼器7に供給され(改質ガス供給工程)、燃焼用空気供給装置13による燃焼用空気は、燃焼用空気供給管73を介して燃焼器7に供給される(燃焼用空気供給工程)。
【0045】
<燃焼工程(燃焼排ガス生成工程):S4>
燃焼器7は、改質器5によって生成される改質ガスと燃焼用空気供給装置13によって供給される燃焼用空気との混合ガスを燃焼して高温(1500℃程度)の燃焼排ガスを生成する。
【0046】
図2のフローチャートにおけるステップS1の改質用空気供給工程において、改質器5に供給される改質用空気の供給量(Q1)が多い場合、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼触媒31での燃焼が促進されて燃焼により発生した高温ガスの温度が上昇するため、アンモニアガスを改質する反応を促進する一方で、改質されるアンモニアガスが燃焼によって消費されるため、改質されるアンモニアガスの減少に伴い改質ガス中の水素の含有量が減少する。一方、改質器5において供給される改質用空気の供給量(Q1)が少ない場合、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼触媒31での燃焼が抑制されて燃焼により発生した高温ガスの温度が低下するため、アンモニアガスを改質する反応が十分に進まず、改質ガス中の水素の含有量が減少する。このように、改質用空気の供給量(Q1)が多くても少なくても、改質ガス中の水素の含有量が減少する。そこで、以下に述べる改質用空気供給量制御工程が行われる。
【0047】
<ガス情報取得工程、改質用空気供給量制御工程:S11~S14>
図3は、ガス情報取得工程、改質用空気供給量制御工程の処理の手順を示すフローチャートである。
【0048】
計測部81は、各測定手段(ガス流量計91、ガス温度計93、回転速度計60)からの測定信号を取り込む(S11)。計測部81は、取り込んだ測定信号に基づいて、ガス流量計91によりアンモニアガスの流量(アンモニアガスの供給量(Q2))、及び/又はガス温度計93により改質ガスの温度を計測する(S12)。
【0049】
ブロワ制御部82は、改質用空気ブロワ51によって供給される改質用空気の供給量(Q1)とガス流量計91によって計測されるアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又はガス温度計93によって計測される改質ガスの温度が所定の温度範囲となるように、インバータ59に対し制御信号を出力し、改質用空気ブロワ51のモータ57の回転速度を制御して改質用空気の供給量(Q1)を制御する(S13~S14)。例えば、この際、供給量(Q2)で供給されるアンモニアガスを完全燃焼させる際の改質空気の供給量を「1.0」とした場合、改質用空気の供給量(Q1)が0.2~0.4、好ましくは0.25~0.35となるように、改質用空気ブロワ51のモータ57の回転速度が制御される。
【0050】
なお、改質用空気の供給量(Q1)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、改質用空気の供給量(Q1)を制御すれば、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの温度が所定の温度範囲となることは過去の運転データ等から判明している。従って、比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、改質用空気の供給量(Q1)を制御することと、ガス温度計93によって計測される改質ガスの温度が所定の温度範囲となるように、改質用空気の供給量(Q1)を制御することとは、実質的に同じ制御であるが、両制御は相互に補完することができる関係にあり、両方の制御を行うことが好ましい。
【0051】
こうして、改質用空気の供給量(Q1)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q1/Q2)が所定範囲となるように、及び/又はアンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼により発生した高温ガスの温度が所定の温度範囲となるように、改質用空気の供給量(Q1)が制御される。これにより、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの燃焼反応を適切に制御することができる。その結果、アンモニアガスの燃焼反応と改質反応とが適度なバランスで行われることになり、改質器5において水素を含有した改質ガスが安定的に生成され、生成された改質ガスが燃焼器7において燃焼される。従って、アンモニア改質燃焼システム1においては、ヒーター等の加熱手段を別途設けなくても(アンモニア改質燃焼方法においては、ヒーター等を用いて加熱工程を別途行わなくても)、改質ガスを安定的に生成することができ、これによって安定した燃焼を行うことができる。
【0052】
<ガス情報取得工程、燃焼用空気供給量制御工程:S21~S25>
図4は、ガス情報取得工程、燃焼用空気供給量制御工程の処理の手順を示すフローチャートである。
【0053】
計測部81は、ガス流量計91からの測定信号を取り込む(S21)。計測部81は、取り込んだ測定信号に基づいて、ガス流量計91によりアンモニアガスの流量(アンモニアガスの供給量(Q2))を計測する(S22)。
【0054】
ファン制御部83は、燃焼用空気ファン71のモータ77に制御信号を送信し(S23)、モータ77を所定の回転速度で一定に保つようにして所定風量を送り出すように制御する。ダンパ制御部84は、燃焼用空気ファン71によって供給される燃焼用空気の供給量(Q3)と計測されるアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q3/Q2)が所定範囲となるように、流量調節ダンパ80に対し制御信号を出力し、流量調節ダンパ80の開度を制御して燃焼用空気の供給量(Q3)を制御する(S24~S25)。例えば、この際、供給量(Q2)で供給されるアンモニアガスを完全燃焼させる際の改質空気の供給量を「1.0」とした場合、燃焼用空気の供給量(Q3)が1.0~2.0、好ましくは1.2~1.6となるように、流量調節ダンパ80の開度が制御される。
【0055】
こうして、燃焼用空気の供給量(Q3)とアンモニアガスの供給量(Q2)との比(Q3/Q2)が所定範囲となるように、燃焼用空気の供給量(Q3)が制御されるので、燃焼器において安定した燃焼を行うことができる。
【0056】
<酸素濃度に基づく改質用空気供給量制御工程>
アンモニア改質燃焼システム1の起動時及び停止時には、改質器5の燃焼触媒31での燃焼反応が過剰になる場合がある。そこで、計測部81は、酸素濃度計94からの測定信号を取り込み、酸素濃度計94により改質ガスの酸素濃度を計測する。そして、ブロワ制御部82は、酸素濃度計94により計測される改質ガスの酸素濃度が所定範囲となるように、インバータ59に対し制御信号を送信し、改質用空気ブロワ51のモータ57の回転速度を制御して改質用空気の供給量(Q1)を制御する。これにより、アンモニア改質燃焼システム1の起動時及び停止時に、改質器5の燃焼触媒31での燃焼反応が過剰になるのを防ぐことができる。
【0057】
<酸素濃度に基づく混合ガス供給量制御工程>
アンモニア改質燃焼システム1の起動時及び停止時において、改質器5の燃焼触媒での燃焼反応が過剰になるのを防ぐ別の方法として、供給量(Q1+Q2)を制御するという方法がある。すなわち、弁制御部85は、酸素濃度計94により計測される改質ガスの酸素濃度が所定範囲となるように、下流側流量制御弁23に対し制御信号を送信し、下流側流量制御弁23の弁開度を制御してアンモニアガスと改質用空気との混合ガスの供給量(Q1+Q2)を制御する。なお、最終的には、混合ガスの供給量(Q1+Q2)を0として、改質器5への混合ガスの供給を停止することにより、改質器5の燃焼触媒31での燃焼反応が過剰になるのを確実に防ぐことができる。本実施形態において、改質ガス中の酸素濃度に基づいてアンモニアガスと改質用空気との混合ガスの供給量(Q1+Q2)を制御する混合ガス供給量制御手段は、下流側流量制御弁23及び弁制御部85によって構成される。
【0058】
<圧力異常の緊急停止>
アンモニア改質燃焼システム1において、計測部81がガス圧力計92からの測定信号を取り込むことでガス圧力計92により計測される、アンモニアガスと改質用空気との混合ガスの圧力が異常な値を示した場合、弁制御部85は、混合ガスの供給量(Q1+Q2)を0とするように下流側流量制御弁23の弁開度を制御して改質器5への混合ガスの供給を停止する。
【0059】
図2のフローチャートのステップS4の燃焼排ガス生成工程において、燃焼器7での燃焼に伴い発生した燃焼排ガスは、例えば、一般廃棄物や産業廃棄物を被燃焼物として焼却処理するストーカ式焼却炉(燃焼炉)において、後燃焼ストーカの下部側に設けられた風箱に導入される。こうして、炉の運転立ち上げ時において燃焼器7で発生させた燃焼熱を利用することにより、炉の運転立ち上げ用燃料として従来使用されていた都市ガスや灯油等の化石燃料に代えて、燃焼器7で発生させた燃焼熱が利用されるので、近年の喫緊の課題である脱炭素化を図ることができる。なお、バイオマス燃料や下水汚泥を燃焼する燃焼炉の運転立ち上げ時においても、燃焼器7で発生させた燃焼熱を利用することができる。
【0060】
以上、本発明のアンモニア改質燃焼システム、及びアンモニア改質燃焼方法について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のアンモニア改質燃焼システム、及びアンモニア改質燃焼方法は、例えば、燃焼炉やボイラの運転立ち上げ時において被燃焼物を燃焼する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 アンモニア改質燃焼システム
3 アンモニアガス供給装置
5 改質器
7 燃焼器
11 改質用空気供給装置
13 燃焼用空気供給装置
23 下流側流量制御弁(混合ガス供給量制御手段)
59 インバータ(改質用空気供給量制御手段)
80 流量調節ダンパ(燃焼用空気供給量制御手段)
82 ブロワ制御部(改質用空気供給量制御手段)
83 ファン制御部(燃焼用空気供給量制御手段)
84 ダンパ制御部(燃焼用空気供給量制御手段)
85 弁制御部(混合ガス供給量制御手段)