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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176175
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】和風便器の切削方法及びカバー部材
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E03D11/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088328
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】坂口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高田 勝一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣松 義隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 英明
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 悦康
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA03
2D039CA00
(57)【要約】
【課題】簡便に粉塵の飛散を抑制することができる和風便器の切削方法及びカバー部材を提供することを目的とする。
【解決手段】和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、をカバー部材で覆うカバー工程と、前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込んでいる状態において、前記カバー部材の外側から前記カバー部材の一部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削する切削工程と、を備えたことを特徴とする和風便器の切削方法が提供される。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、をカバー部材で覆うカバー工程と、
前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込んでいる状態において、前記カバー部材の外側から前記カバー部材の一部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削する切削工程と、
を備えたことを特徴とする和風便器の切削方法。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記和風便器及び前記床を覆うカバー本体部と、前記カバー本体部に設けられた手挿入部と、を有し、
前記便器を切削する工程は、前記手挿入部に手を挿入して前記手挿入部を介して前記作業空間内の前記工具を操作することを含むことを特徴とする請求項1に記載の和風便器の切削方法。
【請求項3】
前記カバー部材は、二対の前記手挿入部を有し、
一対の前記手挿入部の向きは、別の一対の前記手挿入部の向きとは異なることを特徴とする請求項2に記載の和風便器の切削方法。
【請求項4】
浮き抑制手段を前記カバー部材に取り付ける取付工程をさらに備え、
前記カバー部材は、前記カバー部材が前記和風便器及び前記床を覆うときに前記床上に位置する外側部を有し、
浮き抑制手段は、前記カバー部材の外側部が前記床から離れることを抑制することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の和風便器の切削方法。
【請求項5】
前記浮き抑制手段は、前記外側部を前記床上で移動可能としつつ、前記外側部が前記床から離れることを抑制することを特徴とする請求項4に記載の和風便器の和風便器の切削方法。
【請求項6】
前記浮き抑制手段は、前記カバー部材の形状に追従して変形可能であることを特徴とする請求項5に記載の和風便器の切削方法。
【請求項7】
前記切削工程において、前記和風便器の周りに、前記カバー部材を支持する支持枠を配置することを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の和風便器の切削方法。
【請求項8】
和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、を覆うカバー本体部と、
前記カバー本体部に設けられた手挿入部と、
を備えたカバー部材であって、
前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込むことが可能であり、かつ、作業者が前記手挿入部に手を挿入して前記カバー部材の外側から前記手挿入部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削可能であることを特徴とするカバー部材。
【請求項9】
内側部と、前記内側部の外側に位置する外側部と、を備え、和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、を覆うカバー部材であって、
前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込むことが可能であり、かつ、作業者が前記カバー部材の外側から前記カバー部材の一部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削可能であり、
前記外側部は、前記カバー部材が前記和風便器及び前記床を覆うときに前記床上に位置し、前記外側部が前記床から離れることを抑制する浮き抑制手段、または、前記浮き抑制手段を取り付ける取付部を有することを特徴とするカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、和風便器の切削方法及びカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生設備の施工において、和風便器を切削することがある。例えば、既設の和風便器を、他の衛生設備(例えば洋風便器など)に交換する場合に、和風便器を切削することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3183295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
和風便器の切削においては、粉塵(例えば石綿を含む)が飛散する恐れがある。粉塵の飛散を抑制するための対策は、施工にあたって大きな負担となる場合がある。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、簡便に粉塵の飛散を抑制することができる和風便器の切削方法及びカバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、をカバー部材で覆うカバー工程と、前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込んでいる状態において、前記カバー部材の外側から前記カバー部材の一部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削する切削工程と、を備えたことを特徴とする和風便器の切削方法である。
【0007】
この切削方法によれば、カバー部材で和風便器を覆い、作業空間内の空気を吸引しながら、作業空間の外側からの操作によって作業空間内の和風便器を切削することで、簡便に粉塵の飛散を抑制できる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記カバー部材は、前記和風便器及び前記床を覆うカバー本体部と、前記カバー本体部に設けられた手挿入部と、を有し、前記便器を切削する工程は、前記手挿入部に手を挿入して前記手挿入部を介して前記作業空間内の前記工具を操作することを含むことを特徴とする和風便器の切削方法である。
【0009】
この切削方法によれば、カバー部材に手挿入部が設けられているため、作業者は工具を操作しやすく、作業性を向上させることができる。
【0010】
第3の発明は、第2の発明において、前記カバー部材は、二対の前記手挿入部を有し、一対の前記手挿入部の向きは、別の一対の前記手挿入部の向きとは異なることを特徴とする和風便器の切削方法である。
【0011】
この切削方法によれば、カバー部材が、互いに向きが異なる二対の手挿入部を有しているため、作業者は、作業に応じて手を挿入する一対の手挿入部を変更することで、手の位置や向きを変更しやすくなり、作業性が向上する。
【0012】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、浮き抑制手段を前記カバー部材に取り付ける取付工程をさらに備え、前記カバー部材は、前記カバー部材が前記和風便器及び前記床を覆うときに前記床上に位置する外側部を有し、浮き抑制手段は、前記カバー部材の外側部が前記床から離れることを抑制することを特徴とする和風便器の切削方法である。
【0013】
この切削方法によれば、浮き抑制手段を設けることにより、カバー部材の外側部と床との間の隙間を抑制し、その隙間から粉塵がカバー部材の外側に飛散することをより抑制することができる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、前記浮き抑制手段は、前記外側部を前記床上で移動可能としつつ、前記外側部が前記床から離れることを抑制することを特徴とする和風便器の切削方法である。
【0015】
この切削方法によれば、外側部が床から離れることを抑制して粉塵の飛散を抑えながらも、カバー部材を移動させてカバー部材の位置や方向を変更することにより、作業性を向上させることができる。
【0016】
第6の発明は、第5の発明において、前記浮き抑制手段は、前記カバー部材の形状に追従して変形可能であることを特徴とする和風便器の切削方法である。
【0017】
この切削方法によれば、浮き抑制手段が変形可能であるため、外側部が床から離れることを抑制しながら、浮き抑制手段を床上で移動させやすい。また、浮き抑制手段が変形可能であるため、トイレブース、便器または床の形状に対応させることができる。これにより、例えば、トイレブースなどの限られたスペースにおいても作業スペースを確保し、作業性を向上させることができる。
【0018】
第7の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、前記切削工程において、前記和風便器の周りに、前記カバー部材を支持する支持枠を配置することを特徴とする和風便器の切削方法である。
【0019】
この施策方法によれば、支持枠によって、作業空間を確保することができ、作業性を向上させることができる。これにより、作業空間内の工具がカバー部材に接触することを抑制することができる。
【0020】
第8の発明は、和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、を覆うカバー本体部と、前記カバー本体部に設けられた手挿入部と、を備えたカバー部材であって、前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込むことが可能であり、かつ、作業者が前記手挿入部に手を挿入して前記カバー部材の外側から前記手挿入部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削可能であることを特徴とするカバー部材である。
【0021】
このカバー部材によれば、カバー部材で和風便器を覆い、作業空間の外側からの操作によって作業空間内の和風便器を切削することで、簡便に粉塵の飛散を抑制できる。カバー部材に手挿入部が設けられているため、作業者は工具を操作しやすく、作業性を向上させることができる。
【0022】
第9の発明は、内側部と、前記内側部の外側に位置する外側部と、を備え、和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、を覆うカバー部材であって、前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込むことが可能であり、かつ、作業者が前記カバー部材の外側から前記カバー部材の一部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削可能であり、前記外側部は、前記カバー部材が前記和風便器及び前記床を覆うときに前記床上に位置し、前記外側部が前記床から離れることを抑制する浮き抑制手段、または、前記浮き抑制手段を取り付ける取付部を有することを特徴とするカバー部材である。
【0023】
このカバー部材によれば、カバー部材で和風便器を覆い、作業空間の外側からの操作によって作業空間内の和風便器を切削することで、簡便に粉塵の飛散を抑制できる。また、浮き抑制手段により、カバー部材の外側部と床との間の隙間を抑制し、その隙間から粉塵がカバー部材の外側に飛散することをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の態様によれば、簡便に粉塵の飛散を抑制することができる和風便器の切削方法及びカバー部材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る和風便器の切削方法に用いるカバー部材を例示する斜視図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いるカバー部材を例示する平面図及び断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いるカバー部材を例示する平面図及び断面図である。
図4】実施形態に係る和風便器の切削方法を例示するフローチャートである。
図5図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法を例示する写真図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法を例示する写真図である。
図7】和風便器の設置状態を例示する断面図である。
図8】実施形態に係る和風便器の切削工程を例示するフローチャートである。
図9図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法の第1切削工程を例示する模式図である。
図10図10(a)~図10(c)は、実施形態に係る和風便器の切削方法の第1切削工程を例示する写真図である。
図11図11(a)~図11(c)は、実施形態に係る和風便器の切削方法の第2切削工程を例示する斜視図である。
図12図12(a)~図12(c)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いられる支持枠を例示する斜視図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いられるカバー部材及び支持枠を例示する平面図及び断面図である。
図14図14(a)~図14(c)は、実施形態に係るカバー部材の手挿入部を例示する模式図である。
図15】実施形態に係るカバー部材の変形例を例示する平面図である。
図16図16(a)及び図16(b)は、実施形態に係るカバー部材の変形例を例示する斜視図である。
図17図17(a)~図17(d)は、実施形態に係るカバー部材の別の実施例及び変形例を例示する平面図及び斜視図である。
図18図18(a)及び図18(b)は、実施形態に係るカバー部材の別の実施例及び変形例を例示する平面図及び斜視図である。
図19図19(a)~図19(c)は、実施形態に係るカバー部材の別の実施例及び変形例を例示する平面図及び斜視図である。
図20図20(a)及び図20(b)は、実施形態に係るカバー部材の別の実施例及び変形例を例示する平面図及び斜視図である。
図21図21(a)及び図21(b)は、実施形態に係るカバー部材の変形例を例示する平面図及び断面図である。
図22図22(a)~図22(e)は、実施形態に係る衛生設備の施工方法を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いるカバー部材を例示する斜視図である。
図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いるカバー部材を例示する平面図及び断面図である。
図2(a)は、和風便器200及びカバー部材101を上方から見た平面図である。図2(b)は、図2(a)に示すC1-C1線における断面図である。
カバー部材101は、和風便器の切削作業用のカバー部材である。図2(a)及び図2(b)に表したように、カバー部材101は、和風便器200の全体と、当該和風便器200の周辺の床FL(すなわち和風便器が設置された床FL)と、を覆うものである。
【0027】
図2(b)に表したように、カバー部材101で覆われた作業空間SPが形成される。すなわち、作業空間SPは、カバー部材101が和風便器200及び床FLを覆った状態において、カバー部材101の下方の空間である。言い換えれば、作業空間SPは、和風便器200とカバー部材101との間の空間、及び、床FLとカバー部材101との間の空間である。この作業空間SP内において、和風便器200の切削作業が行われる。
【0028】
具体的には、図1に表したように、カバー部材101は、カバー本体部10と、手挿入部20と、を有する。なお、手挿入部20は、必要に応じて設けられ、適宜省略可能である。カバー本体部10は、和風便器200と、当該和風便器200の周辺の床FLと、を覆う。この例において、カバー本体部10は、平面部13を有する。カバー本体部10の少なくとも一部は、例えば、可撓性の材料(軟質材料)で形成されている。この例では、平面部13は、可撓性の材料で形成されており、平面状に広がることが可能なシート状である。カバー本体部10(平面部13)には、例えば、塩化ビニルなどの樹脂を含むシート材料を用いることができる。作業者は、カバー本体部10(平面部13)の形状、すなわち作業空間SPの形状を必要に応じて変形させることができる。
【0029】
カバー本体部10の中央部に、一対の手挿入部20が設けられる。作業者は、上方(すなわち作業空間SPの外側)から、手挿入部20に手を挿入することができる。なお、手とは、腕を含んでもよいし、指の少なくとも一部でもよい。
【0030】
例えば、手挿入部20は、カバー本体部10から下方に延びる。例えば、手挿入部20は、カバー本体部10から作業空間SP内に向けて延びる筒状である。この例では、手挿入部20は、筒部23と先端部21とを有する。筒部23の一端の開口24は、カバー本体部10に設けられた開口10pに接続されている。開口24と開口10pとは、一体でもよい。筒部23の他端の開口に、先端部21が接続されている。
【0031】
先端部21は、作業者の指が挿入される部分である。例えば、先端部21は、指の形状に対応した手袋状である。すなわち、先端部21は、作業者の5本の指のそれぞれが挿入される筒状部を有する。筒部23は、作業者が先端部21に指を挿入した状態において、作業者の腕が挿入される部分である。
【0032】
手挿入部20は、可撓性の材料(軟質材料)で形成されており、挿入された作業者の手の動きに伴って変形することができる材料が用いられる。先端部21及び筒部23は、一体的に形成されていてもよい。例えば、手挿入部20には、塩化ビニルなどの樹脂材料を用いることができる。カバー本体部10と手挿入部20とは、一体的に形成されていてもよいし、別体でもよい。
【0033】
また、カバー部材101の少なくとも一部は、透明である。これにより、作業者は、作業空間SPの外側から、作業空間SP内部の状況を確認できる。なお、透明とは、完全に透明でなくてもよく、作業空間SP内の状況を確認できる程度の光透過性を有していればよく、半透明を含む。
【0034】
図2(a)に表したように、例えば、手挿入部20の開口24の少なくとも一部は、上方から見たときに、和風便器200と重なるように配置される。例えば、各開口24の全体は、和風便器200と上下方向において重なる。また、手挿入部20の長さは、例えば和風便器200のボウル部内面の全体(または和風便器200のリムの全体)に手が届く長さである。このような構成により、和風便器200に対する作業性を向上させることができる。
【0035】
図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いるカバー部材を例示する平面図及び断面図である。
図3(a)は、和風便器200及びカバー部材101を上方から見た平面図である。図3(b)は、図3(a)に示すC2-C2線における断面図である。
図3(a)及び図3(b)に表したように、カバー部材101には、浮き抑制手段30を取り付けることができる。
【0036】
カバー本体部10は、内側部11と、外側部12と、を有する。浮き抑制手段30は、外側部12に取り付けられる。この例では、内側部11及び外側部12は、平面部13に設けられている。内側部11は、和風便器200及び床FLを上方から覆う。外側部12は、カバー部材101が和風便器200及び床FLを覆うときに、床FL上に位置する。外側部12は、内側部11の全外周を囲む環状である。外側部12は、床FLと接触可能である。外側部12は、例えば全周(略全周)にわたって、床FLと接触できる。外側部12は、上方から見たときに、和風便器200の周囲を囲む。外側部12は、カバー本体部10の周縁を含んでもよいし、周縁よりも内側でもよい。
【0037】
浮き抑制手段30は、カバー部材101の外側部12が床FLから離れることを抑制する手段である。例えば、浮き抑制手段30は、和風便器の切削作業時に、カバー部材101の外側部12が床FLから捲れ上がる(浮き上がる)ことを抑制する。すなわち、浮き抑制手段30は、外側部12と床FLとの間に隙間が生じることを抑制し、作業空間SPが、作業空間SPの外側と連通することを抑制する。浮き抑制手段30は、例えば、外側部12の全周(略全周)にわたって、外側部12が床FLから離れることを抑制する。
【0038】
具体的には、浮き抑制手段30には、大きな重量を有する錘部材を用いることができる。錘部材は、例えばカバー本体部10の内側部11よりも大きな重量を有する。例えば、浮き抑制手段30の材料の比重は、内側部11の比重よりも大きい。錘部材は、例えば金属を含む。この例では、浮き抑制手段30は、チェーンである。
【0039】
この例では、図3(a)に表したように、浮き抑制手段30(チェーン)が、便器200の全周(略全周)を囲むように、外側部12上に載置される。そして、図3(b)に表したように、外側部12の一部12aを折り返して、外側部12で浮き抑制手段30を巻き込む。外側部12の一部12aは、適宜、養生テープTなどで固定される。これにより、浮き抑制手段30が外側部12に固定される。
【0040】
なお、錘部材の形状は、チェーンに限らず、例えば枠状でもよく、特に限定されない。また、浮き抑制手段30は、チェーンなどの錘部材に限らず、外側部12が床FLから離れることを抑制可能な任意の手段でよい。例えば、粘着や接着によって、外側部12が床FLから離れないようにしてもよい。つまり、例えば、浮き抑制手段30として養生テープなどを用い、養生テープで外側部12を床FLに対して密着するように固定してもよい。
【0041】
次に、上述のカバー部材を用いた和風便器の切削方法について説明する。
図4は、実施形態に係る和風便器の切削方法を例示するフローチャートである。
【0042】
図5(a)、図5(b)、図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法を例示する写真図である。
【0043】
図4に表したように、和風便器の切削方法は、取付工程S1、カバー工程S2、吸引工程S3、及び切削工程S4を含む。すなわち、まず、カバー部材101に浮き抑制手段30を取り付ける(取付工程S1)。その後、カバー部材101で、和風便器200と、和風便器の周辺の床FLと、を覆う(カバー工程S2)。なお、カバー部材101で和風便器200及び床FLを覆った後に、浮き抑制手段30を取り付けてもよい。
【0044】
例えば、図5(a)に表したように、便器200に、後述する便器カッター40を設置する。そして、取付工程S1及びカバー工程S2によって、図5(b)に表したように、便器200、便器カッター40及び床FLを、カバー部材101で覆う。
【0045】
その後、カバー部材101内部の作業空間SP内の空気の吸引を開始する(吸引工程S3)。例えば、図6(a)に表したように、カバー本体部10と床FLとの間から、吸引手段35の吸引ホース(吸引ノズル)を挿入する。カバー本体部10に、吸引ホースを接続する開口部を設けてもよい。吸引手段35は、例えば高性能掃除機(HEPAフィルタ付きの掃除機)である。吸引手段35を動作させて、吸引手段35に作業空間SP内の空気を吸引させる。これにより、例えば、作業空間SPの内部を負圧状態とする。作業空間SP内の空気を吸引することにより、和風便器200の切削作業において発生する粉塵が作業空間SPの外に飛散することを抑制することができる。なお、例えば、作業空間SP内で作業を行う際には、常に吸引手段35を作動させて、作業空間SP内を負圧状態とする。
【0046】
作業空間SP内の空気を吸引手段35吸引している間には、外部から作業空間SPの内部に空気を吸い込むことが望ましい。これにより、カバー本体部10が収縮して、作業空間SPが狭くなり作業性が低下することを抑制できる。例えば、外部から作業空間SPの内部に空気を吸い込む吸気口として、カバー本体部10と床FLとの間に隙間を設ける。より具体的には、図6(b)に表したように、カバー本体部10と床FLとの間にパイプ36を差し込み、パイプ36を介して、外部から作業空間SPの内部に空気を吸い込む。これに限らず、例えば、カバー本体部10に吸気口として開口部を設けてもよい。外部から作業空間SP内に空気を吸い込む吸気口の位置は、例えば、便器200から見て、吸引手段35の吸引ノズルとは反対側である。
【0047】
その後、カバー部材101で覆われた作業空間SP内の空気を吸引手段35によって吸い込んでいる状態において、カバー部材101の外側からカバー部材101の一部を介して作業空間SP内の工具を操作して、和風便器200を切削する(切削工程S4)。つまり、作業者は、作業空間SPの外側からカバー部材101の一部越しに作業空間SP内の工具を操作し、作業空間SP内の和風便器200を切削する。
【0048】
具体的には、この例では、作業者は、切削工程において、作業空間SPの外側から手挿入部20に手を挿入して、手挿入部20を介して工具(例えば便器カッター40)を操作する。
【0049】
和風便器の切削においては、粉塵(例えば石綿を含む)が飛散する恐れがある。従来、粉塵の飛散を抑制するための対策は、施工にあたって大きな負担となる場合があった。例えば、工事対象区画である大便器ブース全体を隔離養生し、高性能フィルタ付き吸気装置によって区画内を負圧状態とする。これにより、粉塵(例えば後述する、床面の防水層に含まれる石綿等)が飛散することを抑制できる。しかし、このような大掛かりな隔離養生を行う場合、養生作業に時間が掛かる。また、工事作業従事者自身も、粉塵を防ぐために、防護服や防護マスクを着用する。例えば、作業者の熱中症対策として、一定時間ごとに休憩を取りながら作業することになり、全体の工事時間が長くなってしまう。
【0050】
これに対して、実施形態においては、上述したように、カバー部材101で覆われた作業空間SP内の空気を吸引手段35によって吸い込んでいる状態において、カバー部材101の外側からカバー部材101の一部を介して作業空間SP内の工具を操作して、和風便器200を切削する。作業空間SP内に発生した粉塵は、カバー部材101によって、外部に拡散することが遮られる。また、カバー部材101の内部の空気を吸引することで、粉塵が外部に拡散することをより抑制できる。このように、作業空間SP内の空気を吸引しながら、作業空間SPの外側からの操作によって作業空間SP内の和風便器200を切削できるため、簡便に粉塵の飛散を抑制できる。すなわち、粉塵の発生源となる和風便器200周辺のみをカバー部材で覆う。これにより、例えば、和風便器200が設けられたトイレ室またはトイレブースなどの工事区画の全体を隔離しなくても、粉塵が飛散することを抑制でき作業負荷を軽減できる。また、例えば、作業員が防護服や防護マスクなどを装備する負荷を軽減できる。これにより、短時間の施工が可能となる。
【0051】
また、カバー部材101に手挿入部20が設けられているため、作業者は、作業空間SP内の工具を操作しやすく、作業性を向上させることができる。つまり、手挿入部20に手を挿入することで、作業空間SP内の工具に手が届きやすく、手挿入部20を介して工具を掴みやすい。
【0052】
なお、和風便器200の一部を切削することは、カッター等を用いて剪断破壊等によって削り取ることのみならず、工具を用いて加工(例えば切断、切除、破断、研磨または破壊)することを含んでもよい。和風便器200の切削は、和風便器200自体の切削のみならず、和風便器200の周辺の床FLや、後述する防水層を切削することを含んでもよい。また、工具は、カッターに限らず、グラインダ、ドリル、エンドミル、ハンマー、タガネなど、任意の工具でよい。
【0053】
また、カバー部材101には、カバー部材101の外側部12が床から離れることを抑制する浮き抑制手段30が取り付けられる。浮き抑制手段30を設けることにより、カバー部材101の外側部12と床FLとの間の隙間を抑制し、その隙間から粉塵がカバー部材101の外側に飛散することをより抑制することができる。例えば、カバー部材101の内部の負圧状態が保たれずに外部に粉塵が漏れ出すことを抑制できる。
【0054】
また、浮き抑制手段30をカバー部材101に取り付ける構成により、浮き抑制手段30を異なるカバー部材101に使い回すことが可能となり、コストを抑制できる。また、必要に応じてカバー部材101に浮き抑制手段30を取り付けることができるため、浮き抑制手段30を取り外した状態においては、カバー部材101や浮き抑制手段30の取り回しがよい。
【0055】
なお、この例では、浮き抑制手段30は、カバー部材101とは別体であり、カバー部材101に対して着脱可能であるが、浮き抑制手段30は、カバー部材101の外側部12に固定されたものであってもよい。浮き抑制手段30は、外側部12と一体であってもよい。浮き抑制手段30は、外側部12の一部であってもよい。
【0056】
例えば、浮き抑制手段30は、カバー本体部10の外側部12を床FL上で移動可能としつつ、外側部12が床FLから離れることを抑制する。浮き抑制手段30が錘部材である場合には、外側部12を床FLに固定せず、外側部12が床FLに接触したまま外側部12を床FL上でスライドさせることができる。これにより、外側部12が床FLから離れることを抑制しながら、カバー部材101を任意の向きに回転させることができる。例えば、吸引手段35を動作させたまま、カバー部材101の下部(外側部12)が床FLから持ち上がらないように、床FL上を引きずるようにして、カバー部材101を移動させる。
【0057】
このように、外側部12が床FLから離れることを抑制して粉塵の飛散を抑えながらも、カバー部材101を移動させてカバー部材101の位置や方向を変更することにより、作業性を向上させることができる。例えば、カバー部材101を回転させて、手挿入部20の向きを変更することができる。トイレブースという限られたスペース内でも、作業しやすい位置及び向きに手挿入部20を移動させることができる。作業者は、適宜、カバー部材101を動かしながら作業してもよい。
【0058】
また、浮き抑制手段30は、例えば、カバー部材101の形状に追従して変形可能である。例えば、浮き抑制手段30は、複数の部材を含み、当該複数の部材同士の相対的な配置は、カバー部材101の形状変化に追従して可変である。複数の部材同士は、互いに接続されてもよい。具体的には、上述した例において、浮き抑制手段30は、複数の輪が繋げられたチェーンである。
【0059】
このように、浮き抑制手段30が変形可能であるため、外側部12が床から離れることを抑制しながら、浮き抑制手段30を床上で移動させやすい。また、浮き抑制手段30が変形可能であるため、トイレブース、便器または床の形状などに対応させることができる。これにより、例えば、トイレブースなどの限られたスペースにおいても作業スペースを確保し、作業性を向上させることができる。また、例えば、浮き抑制手段30が変形可能であるため、吸引手段35の吸引ノズルを、カバー本体部10と床FLとの間に差し込みやすい。
【0060】
なお、浮き抑制手段30は、接続されない複数の部材を含んでもよい。浮き抑制手段30は、チェーンに限らず、複数の部材が組み合わせられ、錘として機能するものでもよい。また、例えば、浮き抑制手段30は、可撓性を有する材料で形成されることにより、カバー部材101の形状変化に追従して変形するものでもよい。
【0061】
次に、図7図11を参照して、切削工程S4のより具体的な例について説明する。
図7は、和風便器の設置状態を例示する断面図である。
図7に表したように、和風便器200は、ボウル部201と、リム部202と、前立て部203と、を有する。ボウル部201は、使用者の排泄物等を受ける。リム部202は、ボウル部201の上端に設けられた環状である。ボウル部201(及びリム部202)の外周面上には、アスファルトが塗布されている。前立て部203は、リム部202の前方から上方に延びる。なお、前述の例では、前立て部203は、前述の工程S1~S4よりも前において、和風便器200から切除させる。ボウル部201は、下方に設けられた排管204に接続される。ボウル部201内の排泄物等は、排管204を介して外部に排出される。
【0062】
ボウル部201は、床FLに設けられた開口に埋め込まれるようにして配置されている。例えば、床FLは、床部51(例えば床スラブ)と、充填材52(例えばモルタル)と、防水層53と、床材54(例えばコンクリート)と、充填材55(例えばモルタル)と、表面部材56(例えばタイル)と、が積層された構造を有する。ボウル部201は、施工枠を介して床部51に支持されている。
【0063】
防水層53は、石綿(アスベスト)を含んでいる場合がある。防水層53の端部53aは、例えば、リム部202の下面の高さまで巻き上げられている。防水層53の端部53aは、アスファルトが塗布されたボウル部201の側面を、全周に亘って囲むようにして覆う。
【0064】
図8は、実施形態に係る和風便器の切削工程を例示するフローチャートである。
図8に表したように、切削工程S4は、第1切削工程S41と、工具入れ替え工程S42と、第2切削工程S43と、清掃工程S44と、を有する。
【0065】
図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法の第1切削工程を例示する模式図である。
図9(a)は、和風便器200及び便器カッター40を上方から見た平面図であり、図9(b)は、図9(a)の一部の断面図である。第1切削工程S41は、便器カッター40を用いて、和風便器200のボウル部201の上端部(又はリム部202の下端部)を切削する。なお、図9(a)及び図9(b)においては、見易さのため、カバー部材101の図示は省略している。
【0066】
便器カッター40は、台部42と、支持部43と、把持部41と、モータ44と、刃45と、を有する。台部42は、例えば矩形の平板状であり、例えば透明部材である。支持部43は、台部42の端部からから下方に延びる。支持部43は、便器カッター40を支持する支持脚である。モータ44は、台部42の中央上方に設置されている。刃45は、台部42の下方に設けられている。把持部41は、台部42の上方に設けられた取手である。この例では、前後左右に4つの把持部41が設けられている。
【0067】
図9(b)に表したように、支持部43を和風便器200の周辺の床上に載置する。このとき、刃45は、支持部43よりも下方に位置する。そのため、刃45は、和風便器200のボウル部201の内側に位置し、ボウル部201の上端部と水平方向において並ぶ。刃45は、モータ44からの駆動力によって、水平方向に回転する。これにより、刃45と水平方向において並ぶボウル部201等を切削することができる。また、実施形態において、便器の切削には、必ずしも便器カッター40を用いなくてもよい。
【0068】
例えば、第1切削工程S41においては、便器の内周部、外周部、及び、便器の外周に塗布されたアスファルトまでを切削する。第1切削工程S41においては、便器の周辺に巻き上げられた防水層53の端部53aまで切削してもよい。防水層53に石綿が含まれている場合には、防水層53の端部53aを切削することにより、作業空間SPの内部において、石綿を含む粉塵が発生する恐れがある。
【0069】
図10(a)~図10(c)は、実施形態に係る和風便器の切削方法の第1切削工程を例示する写真図である。
図9(a)及び図9(b)に関して説明したように、和風便器200に対して便器カッター40をセットした状態において、和風便器200及び便器カッター40をカバー部材101で覆う。図10(a)及び図10(b)に表したように、作業者は、カバー部材101の上方、すなわち作業空間SPの外側から、手挿入部20に手を挿入する。
【0070】
そして、図10(c)に表したように、作業者は、手挿入部20を介して、作業空間SP内の便器カッター40の把持部41を掴む。これにより、作業者は、便器カッター40を動かすことができる。
【0071】
便器カッター40を水平方向にスライドさせることで、刃45の上下方向の位置を一定としながら、刃45を水平方向に移動させることができる。このようにして、ボウル部201の全周を切削する。
【0072】
その後、工具入れ替え工程S42において、作業空間SP内の工具を入れ替える。工具を入れ替える前には、切削した部分(防水層53をカットした部分)に水を噴霧する。これにより、粉塵の飛散を抑制することができる。具体的には、例えば、蓄圧式噴霧器などの噴霧器のノズルを、カバー部材101と床FLとの間から作業空間SP内に挿入し、水を噴霧する。続いて、作業空間SP内において、吸引手段35を用いて、便器カッター40の清掃を行う。
【0073】
その後、便器カッター40を、カバー部材101と床FLとの間を通して、作業空間SPの外に取り出す。また、ディスクグラインダなどの別の工具(及び後述する支持枠70)を、カバー部材101と床FLとの間を通して作業空間SP内に入れる。なお、工具入れ替え工程S42は、必要に応じて実施される。例えば、作業空間SPが十分に広い場合には、工具を作業空間SP内に入れたままにしてもよい。また、水を噴霧した後、工具を入れ替える際には、吸引手段35の動作を停止させてもよい。
【0074】
図11(a)~図11(c)は、実施形態に係る和風便器の切削方法の第2切削工程S43を例示する斜視図である。
第2切削工程S43においては、リム部202の上端部を分割して切除する。既に第1切削工程S41において、図11(a)に表したラインGにおいてボウル部201の上端部(リム部202の下端部)が切削されている。第2切削工程S43においては、図11(a)~図11(c)に表したラインA~Fをディスクグラインダ60などの工具で、さらに切削する。すなわち、周方向の複数箇所においてリム部202を切削する。これにより、リム部202を分割し、分割したリム部202の切削片を、和風便器200から取り除く。
【0075】
その後、清掃工程S44において、噴霧器のノズルを、カバー部材101と床FLとの間から作業空間SP内に挿入し、切削片や切削した床面に水を噴霧する。続いて、作業空間SP内部において、吸引手段35を用いて、使用した工具、支持枠70、切削した和風便器200の全体、及び切削片の清掃を行う。その後、吸引手段35の動作を停止して、カバー部材101を外す。
【0076】
図12(a)~図12(c)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いられる支持枠を例示する斜視図である。
図13(a)及び図13(b)は、実施形態に係る和風便器の切削方法に用いられるカバー部材及び支持枠を例示する平面図及び断面図である。
図13(a)は、和風便器200、支持枠70及びカバー部材101を例示する平面図であり、図13(b)は、図13(a)に示すC4-C4線における断面図である。
【0077】
支持枠70は、作業空間SP内において、カバー部材101を支持して、作業空間SPを確保する。支持枠70は、例えば衝立となる作業ガードである。
【0078】
図13(a)及び図13(b)に表したように、支持枠70は、和風便器200とカバー部材101との間に配置される。支持枠70は、和風便器200の周りの一部を囲む。支持枠70は、床FLに載置され、床から上方に延びる。支持枠70は、第1部分71と第2部分72とを有する。第1部分71は、床FLよりも上方の位置において第1方向(例えば左右)に延びる。第2部分72は、床よりも上方の位置において、第1方向とは異なる第2方向(例えば前後)に延びる。カバー部材101は、第1部分71、第2部分72を覆い、第1部分71及び第2部分72に支持される。なお、作業者は、作業に応じて、支持枠70の位置を適宜動かすことができる。
【0079】
例えば、上述した第2切削工程S43において、切削する部分の前方床面に支持枠70を立てる。これにより、ディスクグラインダがカバー部材101を巻き込まないように、切削する部分の周辺に空間を確保しながら作業する。
【0080】
このように、切削工程S4において、和風便器200の周りに、カバー部材101を支持する支持枠70を配置する。これにより、支持枠70によって、作業空間SPを確保することができ、作業性を向上させることができる。すなわち、カバー部材101の下方において支持枠70に囲まれた空間を、作業空間SPとして確保することができる。これにより、作業空間SP内の工具(例えばディスクグラインダの刃)がカバー部材101に接触することを抑制することができる。
【0081】
支持枠70には、図12(a)~図12(c)に表した支持枠70a~70cを用いることができる。図12(a)に表した支持枠70aは、3枚の板状部材により形成されている。また、図12(b)に表した支持枠70bは、5枚の板状部材により形成されている。ただし、支持枠70に含まれる板状部材の枚数は、特に限定されない。また、支持枠70は、板状部材を含むものに限らず、図12(c)に表した支持枠70cのようにフレーム構造(骨組み)であってもよい。支持枠70は、カバー部材101を支持することで作業空間SPを確保することが可能な任意の構造でよい。
【0082】
図14(a)~図14(c)は、実施形態に係るカバー部材の手挿入部を例示する模式図である。
手挿入部20の先端部21には、図14(a)~図14(c)に表した先端部21a~21cを用いることができる。図14(a)に表した先端部21aは、5本の指のそれぞれが挿入される手袋状である。一対の手挿入部20において、親指が挿入される親指部分21s同士は、互いに対向するように配置される。言い換えれば、一対の手挿入部20において、親指部分21s同士が内側(他方の手挿入部20に近い側)に配置される。例えば、1組以上の手挿入部20は、親指を内側に対称に配置され、表裏対称である。これにより、作業者が手挿入部20に手を差し入れる方向が限定されない。図14(b)に表した先端部21bのように、先端部21は、ミトン状でもよい。すなわち、先端部21bは、親指が挿入される部分と、残りの4本の指が挿入される部分と、を有する。図14(c)に表した先端部21cのように、先端部21は、底(先端)を有する1つの筒状でもよい。
【0083】
このように、手挿入部20の形状は、作業者の手が作業空間SP内に曝されずに、作業空間SP内の工具等を操作することができる形状であればよい。手挿入部20は、作業空間SPの内側に向けて窪むように変形可能な撓み(凹部)でもよい。手挿入部20は、少なくとも指を挿入できる凹部(撓み)でもよい。筒部23を省略して先端部21のみを設けてもよい。
【0084】
図15は、実施形態に係るカバー部材の変形例を例示する平面図である。
図15に表したカバー部材101aは、二対の手挿入部20(一対の手挿入部20a及び別の一対の手挿入部20b)を有する。これ以外については、カバー部材101aは、カバー部材101と同様である。なお、図15において、見易さのため、手挿入部20のうち開口24のみを表示している。
【0085】
一対の手挿入部20aの向きは、一対の手挿入部20bの向きとは異なる。なお、手挿入部20の向きとは、図15のように上方から見た平面視において、一対の手挿入部20の開口24同士を最短で結ぶ方向である。一対の手挿入部20aの向きは、図15に表した線分Laに沿った方向である。線分Laは、一対の手挿入部20aの開口24同士を最短で結ぶ線分である。一対の手挿入部20bの向きは、図15に表した線分Lbに沿った方向である。線分Lbは、一対の手挿入部20bの開口24同士を最短で結ぶ線分である。なお、直交は、厳密に90°で交わることに限らず、略直交(例えば80°以上100°以下で交わる)でもよい。
【0086】
このようにカバー部材101aが、互いに向きが異なる二対の手挿入部20を有しているため、作業者は、作業に応じて手を挿入する一対の手挿入部20を変更することで、手の位置や向きを変更しやすくなり、作業性が向上する。例えば、作業に応じて、カバー部材101aを動かして手挿入部の向きを変更させなくてもよいため、作業性を向上させたり、作業空間SPと外部とをより確実に分離したりすることができる。
【0087】
図15に表したように、線分Laと線分Lbとは、交わる。例えば、線分Laと線分Lbとは、互いに直交する。例えば、和風便器200のリム部202は環状であるため、線分Laと線分Lbとが平面視において交わるように手挿入部20を配置することにより、複数の方向から和風便器200を切削しやすくなる。例えば、作業者が90°移動しても、カバー部材を移動(回転)させなくてもよく、作業性が向上する。
【0088】
図16(a)及び図16(b)は、実施形態に係るカバー部材の変形例を例示する斜視図である。
図16(a)に表したカバー部材101bは、カバー本体部10の形状において、カバー部材101と異なる。すなわち、カバー部材101bのカバー本体部10は、立体部14を有する。これ以外については、カバー部材101bは、カバー部材101と同様である。カバー部材101bのカバー本体部10は、平面部13を含まなくてもよい。例えば、立体部14に、内側部11及び外側部12が設けられる。
【0089】
立体部14は、例えば、可撓性の材料(軟質材料)で形成される。立体部14には、塩化ビニルなどの樹脂を含むシート材料を用いることができる。立体部14は、床FLよりも上方において立体形状に膨らむことが可能な部分である。作業者は、立体部14の形状、すなわち作業空間SPの形状を必要に応じて変形させることができる。
【0090】
立体部14は、上面14tと、側面14sと、を有する。側面14sは、上面14tの全外周端から下方に延びる。立体部14の下面は、開口となっている。この例では、立体部14は、直方体状または立方体状となることができる。すなわち、立体部14は、上面14tとなる矩形のシート材料と、上面14tに接続され四方の側面14sとなるシート材料と、を有する。手挿入部20は、例えば立体部14の上部(上面14t)に接続される。
【0091】
図16(b)に表したように、立体部14の立体形状に沿った骨組み75に、立体部14を被せた状態で、カバー部材101bで和風便器200及び床FLを覆ってもよい。これにより、作業空間SPの大きさを確保することができ、作業性を向上させることができる。
【0092】
図17(a)~図17(d)は、実施形態に係るカバー部材の別の実施例及び変形例を例示する平面図及び斜視図である。
図17(a)は、カバー部材102の平面図である。このように、カバー部材の外周は、直線状に限らず、湾曲していてもよい。すなわち、カバー部材の平面形状は、矩形に限らず、例えば円状でもよい。なお、円状とは、楕円状または扁平円状でもよいし、直線と曲線とが組み合わされた形状でもよい。カバー部材102としては、図17(b)~図17(d)に表したカバー部材102a~102cを用いることができる。
【0093】
図17(b)に表したカバー部材102aにおいては、平面部13の平面形状が円状である。図17(c)に表したカバー部材102bにおいては、立体部14が円柱状である。図17(d)に表したカバー部材102cにおいては、立体部14がドーム状である。上記以外については、カバー部材102aは、カバー部材101と同様であり、カバー部材102b、102cは、カバー部材101bと同様である。
【0094】
図18(a)~図18(b)、図19(a)~図19(c)、図20(a)~図20(b)は、実施形態に係るカバー部材の別の実施例及び変形例を例示する平面図及び斜視図である。
カバー部材103、104(104a、104b)、105は、カバー本体部10の形状において、カバー部材101と異なる。すなわち、カバー部材103、104、105は、平面部13及び立体部14を有する。これ以外については、カバー部材103、104、105は、上述のカバー部材101(101b)または102(102a~102c)と同様である。
【0095】
カバー部材103、104、105においては、立体部14は、平面部13の内周から上方に立ち上がるように設けられている。立体部14は、便器200及び床FLを覆う。例えば、立体部14に内側部11が設けられ、平面部13に外側部12が設けられる。
【0096】
図18(a)の平面図及び図18(b)の斜視図に表したように、カバー部材103においては、平面部13の外周は矩形状であり、立体部14は、直方体状又は立方体状である。
【0097】
図19(a)の平面図に表したように、カバー部材104においては、平面部13の外周は矩形状であり、立体部14の外周は円状である。図19(b)の斜視図に表したように、カバー部材104aにおいては、立体部14は、円柱状である。図19(c)の斜視図に表したように、カバー部材104bにおいては、立体部14は、ドーム状である。
【0098】
図20(a)の平面図に表したように、カバー部材105においては、平面部13の外周は円状であり、立体部14の外周は円状である。図20(b)の斜視図に表したように、カバー部材105においては、立体部14は、円柱状である。
【0099】
このように、カバー部材のカバー本体部10は、平面部13及び立体部14の少なくともいずれかを含む。作業空間SP内に道工具がある状態でも、カバー部材の外周が床面に設置している状態であれば、覆い方は和風便器200全体と周辺床を覆えれば形状は問わない。立体部14の立体形状は、直方体状、ドーム状、円柱状、角柱状、錐台状など、任意である。立体部14の内側を作業空間SPとすることで、作業空間SPの大きさを確保することができる。なお、平面部13及び立体部14の少なくとも一部は、硬質の材料で形成されてもよい。硬質の材料は、例えば、プラスチックなどの樹脂を含む。例えば、立体部14は、硬質の材料で立体形状に成形されていてもよい。カバー部材は、例えばグローブバッグでよい。
【0100】
図21(a)及び図21(b)は、実施形態に係るカバー部材の変形例を例示する平面図及び断面図である。
図21(a)及び図21(b)に表したカバー部材106においては、外側部12は、浮き抑制手段30を取り付ける取付部12bを有する。これ以外については、カバー部材106は、カバー部材101と同様である。
【0101】
図21(b)は、図21(a)に示すC3-C3線における断面を示す。取付部12bは、外側部12に設けられた筒状である。作業者は、取付部12bに浮き抑制手段30(チェーン)を挿通することで、浮き抑制手段30を取り付ける。例えば、図21(a)に表したように、外側部12(例えばカバー本体部10の外周)に沿って、複数の取付部12bを設けてもよい。
【0102】
なお、浮き抑制手段30を取り付ける方法は、上記に限らない。例えば、浮き抑制手段30を収納可能なポケットを設けてもよいし、スナップフィットや面ファスナなど、嵌合、係合、粘着等の任意の方式によって、接続するものでもよい。
【0103】
図22(a)~図22(e)は、実施形態に係る衛生設備の施工方法を例示する断面図である。
図22(a)~図22(e)は、和風便器200が設けられたトイレブースを、洋風便器212が設けられたトイレブースに改修する方法を例示している。
図22(a)に表したように、トイレブースの床FLに和風便器200が設けられている。まず、和風便器200の前立て部203を切除する。
その後、図22(b)に表したように、カバー部材101を用いて、上述の切削方法により、リム部202を切除する。
【0104】
その後、図22(c)に表したように、カバー部材101を外す。そして、ボウル部201の周辺の床FLの表面を適宜、はつる。また、必要に応じて、ボウル部201の内面をカットする。
【0105】
その後、図22(d)に表したように、排管204に、排水管210の下端を接続する。そして、ボウル部201内部、及びボウル部201の周辺の床FL上に、充填材211(モルタル)を打設する。
【0106】
その後、床面の仕上げを行った後に、図22(e)に表したように、洋風便器212を載置する。洋風便器212の排管213は、排水管210の上端に接続される。
【0107】
このような施工方法によれば、短期間で簡便に、和風便器200が設けられたトイレブースを、洋風便器212が設けられたトイレブースに改修することが可能となる。
【0108】
実施形態は、以下の構成を含んでもよい。
(構成1)
和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、をカバー部材で覆うカバー工程と、
前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込んでいる状態において、前記カバー部材の外側から前記カバー部材の一部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削する切削工程と、
を備えたことを特徴とする和風便器の切削方法。
(構成2)
前記カバー部材は、前記和風便器及び前記床を覆うカバー本体部と、前記カバー本体部に設けられた手挿入部と、を有し、
前記便器を切削する工程は、前記手挿入部に手を挿入して前記手挿入部を介して前記作業空間内の前記工具を操作することを含むことを特徴とする構成1に記載の和風便器の切削方法。
(構成3)
前記カバー部材は、二対の前記手挿入部を有し、
一対の前記手挿入部の向きは、別の一対の前記手挿入部の向きとは異なることを特徴とする構成2に記載の和風便器の切削方法。
(構成4)
浮き抑制手段を前記カバー部材に取り付ける取付工程をさらに備え、
前記カバー部材は、前記カバー部材が前記和風便器及び前記床を覆うときに前記床上に位置する外側部を有し、
浮き抑制手段は、前記カバー部材の外側部が前記床から離れることを抑制することを特徴とする構成1~3のいずれか1つに記載の和風便器の切削方法。
(構成5)
前記浮き抑制手段は、前記外側部を前記床上で移動可能としつつ、前記外側部が前記床から離れることを抑制することを特徴とする構成4に記載の和風便器の和風便器の切削方法。
(構成6)
前記浮き抑制手段は、前記カバー部材の形状に追従して変形可能であることを特徴とする構成5に記載の和風便器の切削方法。
(構成7)
前記切削工程において、前記和風便器の周りに、前記カバー部材を支持する支持枠を配置することを特徴とする構成1~6のいずれか1つに記載の和風便器の切削方法。
(構成8)
和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、を覆うカバー本体部と、
前記カバー本体部に設けられた手挿入部と、
を備えたカバー部材であって、
前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込むことが可能であり、かつ、作業者が前記手挿入部に手を挿入して前記カバー部材の外側から前記手挿入部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削可能であることを特徴とするカバー部材。
(構成9)
内側部と、前記内側部の外側に位置する外側部と、を備え、和風便器と、前記和風便器の周辺の床と、を覆うカバー部材であって、
前記カバー部材で覆われた作業空間内の空気を吸引手段によって吸い込むことが可能であり、かつ、作業者が前記カバー部材の外側から前記カバー部材の一部を介して前記作業空間内の工具を操作して、前記和風便器を切削可能であり、
前記外側部は、前記カバー部材が前記和風便器及び前記床を覆うときに前記床上に位置し、前記外側部が前記床から離れることを抑制する浮き抑制手段、または、前記浮き抑制手段を取り付ける取付部を有することを特徴とするカバー部材。
【0109】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、カバー部材が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0110】
10 カバー本体部、 10p 開口、 11 内側部、 12 外側部、 12b 取付部、 13 平面部、 14 立体部、 14s 側面、 14t 上面、 20、20a、20b 手挿入部、 21、21a~21c 先端部、 21s 親指部分、 23 筒部、 24 開口、 30 浮き抑制手段、 35 吸引手段、 36 パイプ、 40 便器カッター、 41 把持部、 42 台部、 43 支持部、 44 モータ、 45 刃、 51 床部、 52 充填材、 53 防水層、 53a 端部、 54 床材、 55 充填材、 60 ディスクグラインダ、 70、70a~70c 支持枠、 75 骨組み、 101、101a、101b、102、102a~102c、103、104、104a、104b、105、106 カバー部材、 200 和風便器、 201 ボウル部、 202 リム部、 203 前立て部、 204 排管、 210 排水管、 211 充填材、 212 洋風便器、 213 排管、 FL 床、 La、Lb 線分、 S1 取付工程、 S2 カバー工程、 S3 吸引工程、 S4 切削工程、 S41 第1切削工程、 S42 工具入れ替え工程、 S43 第2切削工程、 S44 清掃工程、 SP 作業空間、 T 養生テープ
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