(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176182
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】肉類代替食品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20231206BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20231206BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20231206BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20231206BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23J3/00 503
A23J3/14
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088338
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】坂口 龍太
(72)【発明者】
【氏名】岸野 智
【テーマコード(参考)】
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B036LF11
4B036LH01
4B036LH12
4B036LH16
4B036LH22
4B036LH25
4B036LH44
4B036LP01
4B042AC09
4B042AD36
4B042AK01
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK12
4B042AK13
4B042AK17
(57)【要約】
【課題】粒状植物性たん白を用いる肉類代替食品であって、保形性に優れた肉類代替食品、それを含む加工食品、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】粒状植物性たん白を含む肉類代替食品であって、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに以下の(A)~(D)からなる群から選択されるすくなくとも1種の結着助剤:(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、を含む肉類代替食品、本発明の肉類代替食品を含む加工食品、並びに本発明の肉類代替食品の製造方法であって、粒状植物性たん白を吸水させる工程、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに以下の(A)~(D)からなる群から選択される少なくとも1種の結着助剤:(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、を混合する工程、を含む肉類代替食品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状植物性たん白を含む肉類代替食品であって、
前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに
以下の(A)~(D)からなる群から選択されるすくなくとも1種の結着助剤:
(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、
を含む肉類代替食品。
【請求項2】
前記結着助剤が、(A)食酢を含み、(A)食酢の含有量が、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、1~55質量部である請求項1に記載の肉類代替食品。
【請求項3】
前記結着助剤が、(B)にがり及び豆乳を含み、(B)にがり及び豆乳の含有量が、合計として前記粒状植物性たん白100質量部に対し、15~75質量部である請求項1に記載の肉類代替食品。
【請求項4】
前記結着助剤が、(C)小麦粉及び/又は(D)澱粉を含み、(C)小麦粉及び/又は(D)澱粉の含有量が、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、2~70質量部である請求項1に記載の肉類代替食品。
【請求項5】
茹で調理用の肉類代替食品である請求項1に記載の肉類代替食品。
【請求項6】
請求項1又は4に記載の肉類代替食品を含む加工食品。
【請求項7】
請求項1に記載の肉類代替食品を製造する方法であって、
粒状植物性たん白を吸水させる工程、
前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに
以下の(A)~(D)からなる群から選択される少なくとも1種の結着助剤:
(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、
を混合する工程、
を含む肉類代替食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状植物性たん白を用いる肉類代替食品、及びその製造方法に関し、特に保形性に優れた肉類代替食品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の多様性が増しており、中でもベジタリアンやヴィーガンといわれる菜食主義者の人口が増加傾向にある。そのため、動物性食品を含有しない加工食品のニーズが高まっており、植物性たん白素材を主体とした肉類代替食品の開発が進められている。肉類代替食品に多く用いられる植物性たん白素材として、粒状植物性たん白がある。粒状植物性たん白は、脱脂大豆等を原料とし、押出成形機等で高温高圧処理して組織化・膨化等することによって製造される。粒状植物性たん白を肉類代替食品に用いる場合、動物性素材と比べて結着性が低く、保形性が問題となる場合が多い。したがって、肉類代替食品の結着性に着目した技術が種々開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、より畜肉に近い不均質な食感と適度な弾力を有し、噛みこなれし易く喉どおりの良い肉様加工食品を提供することを課題とし、(a)組織状たん白素材と、熱凝固性たん白素材を含む生地を成形し加熱凝固させる工程と、(b)加熱凝固させた後に押圧する工程とを含むことを特徴とする肉様加工食品の製造法が開示されている。また、特許文献2では、肉類を主体とする畜肉加工食品においてその食感を改良したり、又は食感を損なうことなく肉類の使用を減らすことが可能となる技術、あるいは肉類の使用量が少ないか又は実質的に使用しない畜肉様加工食品において肉類と同等の繊維感を再現したりすることのできる技術を提供することを課題とし、長径が10~70mm、厚みが1~8mmの偏平形状を有しかつ配向性を有する組織状大豆蛋白を、水戻しした後に、結着原料と共に混合し、得られた生地を成形、加熱することを特徴とする畜肉又は畜肉様加工食品の製造法が開示されている。さらに、特許文献3では、混練成形時の結着性がよく、操作性が良好で、加熱後の外観も良好な肉様食品を提供することを目的とし、組織状大豆たん白と、加工澱粉と、小麦由来たん白を含む素材と、を少なくとも含有する組成物であり、前記加工澱粉の含有量が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して3~20質量部であり、前記小麦由来たん白を含む素材の含有量が、前記組織状大豆たん白100質量部に対して前記組成物中の小麦由来たん白質含有量が0.2~4.5質量部となる量である、肉様食品用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-161105号公報
【特許文献2】国際公開第2011/043384号
【特許文献3】国際公開第2020/255366号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの技術を用いても、特に肉類代替食品をワンタンの具や肉団子等の茹で調理に用いる場合、水流によって調理中に生地が崩れ易く、形状を維持できなくなる場合があり、更なる改良が望まれている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、粒状植物性たん白を用いる肉類代替食品であって、保形性に優れた肉類代替食品、それを含む加工食品、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、 粒状植物性たん白を含む肉類代替食品であって、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに以下の(A)~(D)からなる群から選択されるすくなくとも1種の結着助剤:(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、を含む肉類代替食品、本発明の肉類代替食品を含む加工食品、並びに本発明の肉類代替食品の製造方法であって、粒状植物性たん白を吸水させる工程、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに以下の(A)~(D)からなる群から選択される少なくとも1種の結着助剤:(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、を混合する工程、を含む肉類代替食品の製造方法によって達成される。なお、本発明において、「肉類代替食品」とは、一般に、挽き肉(すなわち、哺乳類、鳥類、魚介類等の可食性部分を細かく裁断したもの)等の動物性食品素材を用いて調製されるハンバーグ、肉団子、つみれ等の成形食品;餃子、焼売、肉まん、ワンタン、ラビオリ等の包餡食品用中具;メンチカツ等のフライ食品用パテ;等の食品について、動物性食品素材の代わりに植物性たん白素材を用いて調製されたものであって、加熱調理前の状態(生地)、加熱調理後の状態の何れの状態も含むものを意味する。また、「肉類代替食品を含む加工食品」とは、上記肉類代替食品を麺皮やベーカリー生地等で包餡した、餃子、焼売、肉まん、ワンタン、ラビオリ等の包餡食品;肉類代替食品にバッターやパン粉等の衣を付着させたメンチカツ等のフライ食品であって、加熱調理前の状態、加熱調理後の状態のいずれの状態も含むものを意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、粒状植物性たん白を用いて、保形性に優れた肉類代替食品、特に茹で調理といった過酷な調理条件であっても形状を維持できる肉類代替食品、及びそれを含む加工食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[肉類代替食品]
本発明の肉類代替食品は、粒状植物性たん白を含む肉類代替食品であって、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに以下の(A)~(D)からなる群から選択されるすくなくとも1種の結着助剤:(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、を含むことを特徴とする。これにより、粒状植物性たん白の結着性が向上し、茹で調理といった過酷な調理条件下であっても形状が維持される、極めて保形性に優れた肉類代替食品とすることができる。後述する実施例で示す通り、上記範囲で結着性たん白素材を含有するだけでは、十分な保形性を有する肉類代替食品が得られない。また、結着性たん白素材の含有量が上記範囲より多い場合、肉類代替食品の保形性は向上するものの、成形時に生地が硬くなって作業性が悪くなったり、結着性たん白素材の種類によっては風味が悪くなったりする。上記の結着助剤との組み合わせにより、上述の通り、良好な保形性を有するとともに、成形時の作業性が良好で、且つ風味が良好な肉類代替食品とすることができる。
【0010】
粒状植物性たん白(粒状の組織状植物性たん白とも称される)は、一般に、脱脂大豆や分離大豆たん白、小麦グルテン等の植物性たん白と、必要に応じて副原料等の材料に加水し、二軸エクストルーダー等の押出成形機等を用いて、高温高圧処理し、組織化、膨化させ、次いで細断、乾燥・冷却、整粒工程を経て製造されるものであり、例えば粒状大豆たん白等がある。本発明において、粒状植物性たん白は、市販品を適宜選択して使用することができる。
【0011】
本発明において、結着性たん白素材は、粒状植物性たん白に結着性を付与できれば特に制限はない。結着性たん白素材としては、分離大豆たん白、グルテン、エンドウ豆たん白、卵白粉、乳たん白、昆虫たん白等が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、動物性素材を含まない肉類代替食品を製造する目的においては、分離大豆たん白、グルテン、エンドウ豆たん白等の植物性たん白素材を選択することができ、この中でも保形性を向上する効果が高い点で分離大豆たん白が好ましい。本発明において、結着性たん白素材の含有量は、粒状植物性たん白100質量部に対し、5~140質量部であり、好ましくは、15~120質量部、より好ましくは、20~100質量部である。なお、粒状植物性たん白の原料として用いられた分離大豆タンパク、小麦グルテン等は、前記結着性たん白素材には含まれない。
【0012】
本発明において、結着助剤は、上述の通り、(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、からなる群から選択されるすくなくとも1種である。それぞれ、単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。本発明において、(A)食酢は、醸造酢(穀物酢、果実酢)であっても、合成酢であってもよい。(B)にがり及び豆乳は、予め混合した混合物が添加されていてもよく、別々に添加されていてもよい。にがりは、海水から塩を製造する際に生成される塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム等のミネラルを含む液体である。豆乳は、大豆から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の液体である(大豆固形分8%以上)。(C)小麦粉は、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の何れでもよく、これらを加熱処理した加熱小麦粉や造粒した造粒小麦粉であってもよい。(D)澱粉は、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉、及びそれらの澱粉を原料として、物理的又は化学的に加工を施した加工澱粉でもよい。馬鈴薯澱粉がより好ましい。これらの結着助剤は、市販品を適宜選択して使用することができる。本発明において、結着助剤の含有量は、本発明の効果が得られれば、特に制限はない。前記結着助剤が、(A)食酢を含む場合、(A)食酢の含有量は、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、1~55質量部であることが好ましく、3~45質量部であることがさらに好ましく、5~35質量部であることが特に好ましい。また、前記結着助剤が、(B)にがり及び豆乳を含む場合、(B)にがり及び豆乳の含有量は、合計として、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、15~75質量部であることが好ましく、20~70質量部であることがより好ましく、25~60質量部であることが特に好ましい。にがりと豆乳の割合については、本発明の効果が得られれば、特に制限はないが、にがり:豆乳が1:5~19であることが好ましく、1:6~16であることがより好ましく、1:7~13であることがさらに好ましい。また、前記結着助剤が、(C)小麦粉及び/又は(D)澱粉を含む場合、(C)小麦粉及び/又は(D)澱粉の含有量は、前記粒状たん白100質量部に対し、2~70質量部であることが好ましい。この場合、(C)小麦粉の含有量は、15~70質量部であることがより好ましく、20~50質量部であることがさらに好ましく、25~40質量部であることがさらに好ましい。(D)澱粉の含有量は、2~20質量部であることが好ましく、5~17質量部であることがより好ましく、7~15質量部であることがさらに好ましい。本発明において、前記結着助剤は、(A)食酢を含み、且つ(C)小麦粉及び/又は(D)澱粉を含むことが特に好ましく、(A)食酢を含み、且つ(C)小麦粉を含むことが最も好ましい。
【0013】
本発明の肉類代替食品は、上述の粒状植物性たん白、結着性たん白素材、及び結着助剤に加えて、一般に、肉類代替食品に含まれ得るその他の材料を含んでいてもよい。その他の材料としては、野菜類;藻類;豆類;パン粉;油脂;調味料;エキス類;香辛料等が挙げられる。本発明の肉類代替食品は、畜肉類;魚介類を含んでいてもよいが、肉類代替食品の意味を考慮すると、畜肉類、魚介類は実質的に含まないことが好ましい。
【0014】
本発明の肉類代替食品は、上述の通り、一般に、挽き肉(すなわち、哺乳類、鳥類、魚介類等の可食性部分を細かく裁断したもの)等の動物性食品素材を用いて調製されるハンバーグ、肉団子、つみれ等の成形食品;餃子、焼売、肉まん、ワンタン、ラビオリ等の包餡食品用中具;メンチカツ等のフライ食品用パテ;等の食品について、動物性食品素材の代わりに植物性たん白素材を用いて調製されたものであって、加熱調理前の状態(生地)、加熱調理後の状態の何れの状態も含むものである。加熱調理前の状態(生地)、又は加熱調理後の状態で冷凍されたものでもよい。本発明の肉類代替食品の加熱調理方法は特に制限はなく、茹で調理、焼成調理、蒸し調理、油ちょう調理、電子レンジ調理等が挙げられる。本発明の肉類代替食品は、本発明の効果が特に発揮される点で、加熱中に激しい水流にさらされるため、肉類代替食品が崩れやすい過酷な調理条件である茹で調理用の肉類代替食品であることが好ましい。本発明における茹で調理用の肉類代替食品とは、喫食されるまでの間に、1回以上茹で調理を行うための肉類代替食品である。例えば、生地を肉団子状に成形して、茹で調理を行って喫食する場合はもちろんのこと、生地を肉団子状に成形して蒸し調理や焼き調理を行った後に冷凍し、喫食前に茹で調理を行う場合や、生地を肉団子状に成形して茹で調理を行った後に冷凍保存し、喫食前に電子レンジ調理や焼き調理等を行う場合等も含まれる。茹で調理用の肉類代替食品としては、水餃子、ワンタン、ラビオリ等の包餡食品用中具や、肉団子等が挙げられる。また、本発明の肉類代替食品の形状や大きさには特に制限はないが、厚さが薄い程、調理中に形状が維持できない場合が生じ易く、本発明の効果が発揮される点で、厚さ1cm以下に成形された肉類代替食品であることが好ましい。
【0015】
[肉類代替食品を含む加工食品]
本発明の加工食品は、本発明の肉類代替食品を含む。本発明の加工食品は、上述の通り、本発明の肉類代替食品を麺皮やベーカリー生地等で包餡した、餃子、焼売、肉まん、ワンタン、ラビオリ等の包餡食品;本発明の肉類代替食品にバッターやパン粉等の衣を付着させたメンチカツ等のフライ食品であって、加熱調理前の状態、加熱調理後の状態のいずれの状態も含むものである。加熱調理前の状態、又は加熱調理後の状態で冷凍されたものでもよい。本発明の加工食品の加熱調理方法は特に制限はなく、茹で調理、焼成調理、蒸し調理、油ちょう調理、電子レンジ調理等が挙げられる。本発明の加工食品は、本発明の肉類代替食品の効果が特に発揮される点で、過酷な調理条件である茹で調理用の加工食品であることが好ましい。本発明における茹で調理用の加工食品とは、喫食されるまでの間に、1回以上茹で調理を行うための加工食品である。例えば、肉類代替食品(生地)をワンタンの皮で包餡して茹で調理する場合、肉類代替食品(生地)をワンタンの皮で包餡して蒸し調理を行った後に冷凍し、喫食前に茹で調理を行う場合、肉類代替食品(生地)を肉団子状に成形して茹で調理を行った後にワンタンの皮で包餡して冷凍し、喫食前に電子レンジ調理を行う場合等が挙げられる。茹で調理用の肉類代替食品としては、水餃子、ワンタン、ラビオリ等の包餡食品等が挙げられる。本発明の加工食品の好ましい態様は、上述の肉類代替食品の場合と同様である。
【0016】
[肉類代替食品の製造方法]
本発明の肉類代替食品の製造方法は、本発明の肉類代替食品を製造する方法であって、粒状植物性たん白を吸水させる工程、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに 以下の(A)~(D)からなる群から選択される少なくとも1種の結着助剤:(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、を混合する工程、を含むことを特徴とする。なお、(B)にがり及び豆乳を用いる場合、予め混合した混合物を添加して混合してもよく、別々に添加して混合してもよい。これにより、上述の通り、粒状植物性たん白の結着性が向上し、茹で調理といった過酷な調理条件下であっても、形状が維持される保形性に優れた肉類代替食品を製造することができる。
【0017】
本発明において、粒状植物性たん白を吸水させる工程は、粒状植物性たん白を所望の水分量に吸水することができればどのように行ってもよい。一般に、粒状植物性たん白を、水、食塩水、調味液等の水を主成分とする液体に、所定の時間接触させることで吸水させることができる。前記液体を接触させる方法としては、浸漬法、シャワー法、スプレー法等が挙げられる。容易な点で浸漬法が好ましい。吸水量の調整は、粒状植物性たん白と浸漬液の比率の調整や、浸漬時間の調整により行なうことができる。吸水量は、粒状植物性たん白100質量部に対して、好ましくは50~500質量部、より好ましくは100~450質量部、さらに好ましくは150~400質量部とすることができる。
【0018】
本発明において、粒状植物性たん白に結着性たん白素材、及び所定の結着助剤を混合する工程は、これらの材料を均一に混合できれば、どのように行ってもよい。例えば、ミキサー等の機械を用いて混錬してもよく、手で捏ねてもよい。通常、これらの材料を混合した後、所望の形状に成形して、所望の肉類代替食品を製造することができる。成形後、加熱調理してもよく、冷蔵や冷凍して保存してもよく、麺皮やベーカリー生地等で包餡したり、バッターやパン粉等の衣を付着させたりして本発明の加工食品の製造に用いてもよい。本発明の肉類代替食品の製造方法の好ましい態様は、上述の肉類代替食品の場合と同様である。
【0019】
なお、本発明は、上述の説明から理解できるように、本発明の肉類代替食品の製造方法を含む肉類代替食品の保形性を向上させる方法にもある。本発明の方法の好ましい態様は、上述の肉類代替食品の製造方法の場合と同様である。
【0020】
なお、本発明は、以下のように構成することも可能である。
[1]
粒状植物性たん白を含む肉類代替食品であって、
前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに
以下の(A)~(D)からなる群から選択されるすくなくとも1種の結着助剤:
(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、
を含む肉類代替食品。
[2]
前記結着助剤が、(A)食酢を含み、(A)食酢の含有量が、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、1~55質量部である[1]に記載の肉類代替食品。
[3]
前記結着助剤が、(B)にがり及び豆乳を含み、(B)にがり及び豆乳の含有量が、合計として前記粒状植物性たん白100質量部に対し、15~75質量部である[1]又は[2]に記載の肉類代替食品。
[4]
前記結着助剤が、(C)小麦粉及び/又は(D)澱粉を含み、(C)小麦粉及び/又は(D)澱粉の含有量が、前記粒状植物性たん白100質量部に対し、2~70質量部である[1]~[3]に記載の肉類代替食品。
[5]
茹で調理用の肉類代替食品である[1]~[4]のいずれかに記載の肉類代替食品。
[6]
厚さ1cm以下に成形された肉類代替食品である[1]~[5]のいずれかに記載の肉類代替食品。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の肉類代替食品を含む加工食品。
[8]
茹で調理用の加工食品である[7]に記載の加工食品。
[9]
[1]~[6]のいずれかに記載の肉類代替食品を製造する方法であって、
粒状植物性たん白を吸水させる工程、
前記粒状植物性たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を15~140質量部、並びに
以下の(A)~(D)からなる群から選択される少なくとも1種の結着助剤:
(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、(D)澱粉、
を混合する工程、
を含む肉類代替食品の製造方法。
【実施例0021】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.原材料
粒状大豆たん白:ソイバリュー HA-10、昭和産業株式会社
粉末状大豆たん白:フレッシュM-600(分離大豆たん白)、昭和産業株式会社
卵白粉:乾燥卵白KタイプNo.3、キユーピータマゴ株式会社
粉末グルテン:A-グルP、グリコ栄養食品株式会社
食酢:穀物酢、株式会社ミツカン
小麦粉:月桂冠、昭和産業株式会社
澱粉:馬鈴薯澱粉(美幌)、美幌地方農産加工業協同組合連合会
2.肉類代替食品の調製
肉類代替食品としてワンタンの具(肉類代替食品の評価のため、具のみを調製した)を選定し、表1に示したベース生地配合の内、粒状大豆たん白に水を加えて吸水させた。次いで、表1に示した残りの材料、及び表2~4に示した材料を加えて均一になるまで混合した。なお、にがりと豆乳はあらかじめ混合した。得られた生地を押出成形機に入れ、圧力をかけて直径10mmの成形ノズルから具材を吐出させることで、5gずつに成形した(厚さ5mm)。得られた成形物を蒸し器で3分20秒間蒸した後、-35℃にて急速凍結し、-25℃で保存した。一晩保存後、冷凍のまま沸騰水に投入し、2分間茹で調理した。
3.肉類代替食品の評価
各肉類代替食品について、調製時の作業性、調理後の形状(保形性)、喫食時の風味を以下の評価基準で評価した。各評価結果は、訓練を受けた専門パネル10名の評点の平均値を示した。結果を表2~4に示す。
(1)調製時の作業性
5:生地に適切な力をかけて非常に良好に成形できる
4:生地に適切な力をかけて良好に成形できる
3:生地がやや硬い、又はやや軟らかい状態のため、適切な力をかけても成形がやや困難
2:生地が硬い、又は軟らかい状態のため、適切な力をかけても成形が困難
1:生地が硬過ぎる、又は軟らか過ぎる状態のため、適切な力をかけても成形ができない
(2)調理後の形状(保形性)
5:成形物が全くバラけず、掴んでも非常に良好な形状を保つ
4:成形物がほぼバラけず、掴んでも良好な形状を保つ
3:成形物はほぼバラけていないが、掴むと一部がバラける
2:成形物が一部バラけており、掴むと完全にバラける
1:成形物が完全にバラけており、掴むことができない
(3)喫食時の風味
5:大豆臭やえぐみを全く感じない
4:大豆臭やえぐみをほとんど感じない
3:大豆臭やえぐみをやや感じる
2:大豆臭やえぐみを感じる
1:大豆臭やえぐみを強く感じる
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
表2~4に示した通り、粒状大豆たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を17~133質量部含み、さらに、結着助剤として、(A)食酢、(B)にがり及び豆乳、(C)小麦粉、及び(D)澱粉からなる群から選択される少なくとも1種を含む実施例の肉類代替食品は、調製時の作業性、調理後の形状、及び喫食時の風味の評価が良好であった。一方、結着性たん白素材も結着助剤も含まない比較例1は、作業性も形状の評価が低く、結着性たん白素材を含むが、結着助剤を含まない比較例2は、比較例1より作業性は向上したが、調理後の保形性が十分でなく、形状の評価が低かった。また、実施例1~8を比較すると、肉類代替食品の結着性たん白素材の含有量については、多い程、調理後の形状の評価が高くなった。ただし、粒状大豆たん白100質量部に対し、結着性たん白素材を150質量部含む比較例3は、生地が硬くなり、作業性の評価が低く、大豆臭があって、風味の評価も低かった。したがって、肉類代替食品の結着性たん白素材の含有量は、粒状植物性たん白100質量部に対し、15~140質量部であることが必要であることが示唆された。
【0027】
結着助剤として食酢を配合する場合は、実施例1~8の通り、粒状大豆たん白100質量部に対し、2~50質量部の範囲で良好な評価が認められた。粒状大豆たん白100質量部に対し、食酢を50質量部含む実施例7は、食酢を33質量部含む実施例6と比較して、生地がやや緩くなり、作業性の評価がやや低くなることから、結着助剤として食酢を配合する場合の含有量は、粒状植物性たん白100質量部に対し、1~55質量部が好ましいことが示唆された。また、結着助剤として小麦粉及び/又は澱粉を配合する場合は、実施例11~19の通り、粒状大豆たん白100質量部に対し、3~70質量部の範囲で調理後の形状の維持の向上が認められた。粒状大豆たん白100質量部に対し、小麦粉を70質量部含む実施例16は、小麦粉を50質量部含む実施例15と比較して、生地がやや硬くなり、作業性の評価がやや低くなることから、結着助剤として小麦粉及び/又は澱粉を配合する場合の含有量は、粒状植物性たん白100質量部に対し、2~70質量部が好ましいことが示唆された。
【0028】
結着助剤として、食酢を配合した実施例5、小麦粉を配合した実施例14、及び食酢と小麦粉の両方を配合した実施例20を比較すると、実施例20の評価が最も高かった。したがって、結着助剤としては、2種以上配合することが好ましく、食酢と、小麦粉及び/又は澱粉、特に食酢と小麦粉を配合することが好ましいことが示唆された。また、実施例20~22の通り、結着性たん白素材としては、粉末状大豆たん白、卵白粉、粉末グルテンのいずれを配合しても良好な結果が得られた。
【0029】
4.肉類代替食品を含む加工食品の調製と評価
肉類代替食品を含む加工食品として、ワンタンを選定し、表1に示したベース生地配合の内、粒状大豆たん白に水を加えて吸水させた。次いで、表1に示した残りの材料、及び表2の比較例2、又は表4の実施例20~22に示した材料を加えて均一になるまで混合した。得られた生地を押出成形機に入れ、圧力をかけて直径10mmの成形ノズルから具材を吐出させることで、5gずつに成形した(厚さ5mm)。得られた成形物をワンタンの皮(厚さ0.4mm、一辺7cmの正方形)に乗せ、ワンタンの皮を半分に折って三角形にして両端を折りこみ、ワンタンを調製した。得られたワンタンを-35℃にて急速凍結し、-25℃で保存した。一晩保存後、冷凍のまま沸騰水に投入し、2分間茹で調理した。
調理後の形状(保形性)を評価したところ、上述した肉類代替食品の評価と同様に、実施例20~22の肉類代替食品を中具として含むワンタンは、茹で調理中も茹で調理後においても、中具である肉類代替食品が崩れることなく、良好な形状を保っていた。一方で、比較例2の肉類代替食品を中具として含むワンタンは、茹で調理中の水流がワンタンの皮の内側に入り込むことによって、中具が崩れて茹で湯中に流れ出していたり、調理後に形状を保っていなかったり、保形性が悪かった。
【0030】
以上により、上述の肉類代替食品、及び肉類代替食品を含む加工食品が、茹で調理といった過酷な調理条件下であっても形状が維持される、極めて保形性に優れ、成形時の作業性が良好で、且つ風味が良好な肉類代替食品、及び肉類代替食品を含む加工食品であることが示された。
【0031】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
本発明により、粒状大豆たん白を用いて、保形性に優れた肉類代替食品、特に茹で調理といった過酷な調理条件であっても形状を維持できる肉類代替食品、及びそれを含む加工食品を提供することができる。