(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176193
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】消火栓およびホースケージ
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A62C35/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088353
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 克久
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB01
2E189EB05
2E189EB09
2E189EC05
(57)【要約】
【課題】巻き方を示す銘板を用いることなく、ホースケージ内における保形ホースの巻き方を示すことができ、保形ホースの消火栓の筐体からの引き出しに要する力を所定の値以下にすることができる消火栓を提供する。
【解決手段】筐体9と、筐体9内に設けられ保形ホース5の第1の端近傍の部位を巻始め部位21とし、この巻始め部位21よりも第1の端側の部位が筐体9内で僅かに外側に延出し保形ホース5の巻始め部位21よりも第2の端側の部位が螺旋状に巻かれている状態で、保形ホース5を収容するホースケージ本体11と、ホースケージ本体11に設けられ保形ホース5の巻始め部位21の位置を示す位置指示部13とを有する消火栓1である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、保形ホースの第1の端近傍の部位を巻始め部位とし、この巻始め部位よりも前記第1の端側の部位が前記筐体内で僅かに外側に延出し、前記保形ホースの前記巻始め部位よりも第2の端側の部位が螺旋状に巻かれている状態で、前記保形ホースを収容するホースケージ本体と、
前記ホースケージ本体に設けられ、前記保形ホースの巻始め部位の位置を示す位置指示部と、
を有する消火栓。
【請求項2】
前記位置指示部は、前記保形ホースが放水を開始するときに発生する前記保形ホースの振動を抑制するように構成されている請求項1に記載の消火栓。
【請求項3】
前記ホースケージ本体は線材で構成されており、この線材の長手方向の端部が前記筐体の壁部にあけられた貫通孔に挿入され前記筐体に固定されることで、前記ホースケージ本体が前記筐体に設けられている請求項1または請求項2に記載の消火栓。
【請求項4】
前記筐体の壁部が、底板部と下板部と上板部と一対の側板部とを備えていることで、前記筐体が矩形な枡状に形成されており、
前記ホースケージ本体は、前記底板部と、前記下板部、前記上板部、前記一対の側板部のうちの少なくともいずれかの板部に固定されている請求項3に記載の消火栓。
【請求項5】
前記筐体内には、配線ダクトが設けられており、前記ホースケージ本体の少なくとも一部が、前記配線ダクトを介して、前記筐体の壁部に固定されている請求項4に記載の消火栓。
【請求項6】
前記筐体の壁部が、底板部と下板部と上板部と一対の側板部とを備えていることで、前記筐体が矩形な枡状に形成されており、
前記ホースケージ本体は、直線状に形成されている直線状部位と、直線状の第1の延伸部位と直線状の第2の延伸部位とで「L」字状に形成されている「L」字状部位とを備えて構成されており、
前記直線状部位は一対で設けられており、一対の前記直線状部位は、左右方向で互いが所定の間隔をあけて上下方向に延びており、前記一対の直線状部位のそれぞれは、下端部が前記下板部に固定されており、上端部が前記上板部に固定されており、
前記「L」字状部位は複数設けられており、複数の前記「L」字状部位うちの一部の「L」字状部位が第1群の複数の「L」字状部位になっており、複数の前記「L」字状部位うちの残りの「L」字状部位が第2群の複数の「L」字状部位になっており、
前記第1群の複数の「L」字状部位のそれぞれは、上下方向で所定の間隔をあけ、前記一対の直線状部位のうちの左側の直線状部位から左側に延出しており、前記第1群の「L」字状部位の第1の延伸部位が左右方向に延びており、前記第1群の「L」字状部位の第2の延伸部位が前後方向に延びており、
前記第1群の「L」字状部位の第1の延伸部位の端部が前記左側の直線状部位に接合されており、前記第1群の「L」字状部位の第2の延伸部位の端部が前記底板部に接合されており、
前記第2群の複数の「L」字状部位のそれぞれは、上下方向で所定の間隔をあけ、前記一対の直線状部位のうちの右側の直線状部位から右側に延出しており、前記第2群の「L」字状部位の第1の延伸部位が左右方向に延びており、前記第2群の「L」字状部位の第2の延伸部位が前後方向に延びており、
前記第2群の「L」字状部位の第1の延伸部位の端部が前記右側の直線状部位に接合されており、前記第2群の「L」字状部位の第2の延伸部位の端部が前記底板部に接合されている請求項3に記載の消火栓。
【請求項7】
前記位置指示部が、前記ホースケージ本体を構成している線材と同じ線材で構成されており、
前記位置指示部の長手方向の一方の端が、前記ホースケージ本体の所定の部位に接合されており、前記位置指示部の長手方向の他方の端が、前記ホースケージ本体の所定の部位に接合されており、
前記保形ホースの、前記巻始め部位よりも前記第1の端側の部位の延出方向が、前記位置指示部の長手方向に対して、僅かに斜めになっている請求項6に記載の消火栓。
【請求項8】
前記第2群の「L」字状部位は一対で設けられており、
前記位置指示部は、上下方向に長く延びており、上端が、前記第2群の「L」字状部位のうちの上側の「L」字状部位の第2の延伸部位に接合されており、下端が、前記第2群の「L」字状部位のうちの下側の「L」字状部位の第2の延伸部位に接合されている請求項7に記載の消火栓。
【請求項9】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、保形ホースの第1の端近傍の部位を巻始め部位とし、この巻始め部位よりも前記第1の端側の部位が前記筐体内で僅かに外側に延出し、前記保形ホースの前記巻始め部位よりも第2の端側の部位が螺旋状に巻かれている状態で、前記保形ホースを収容するホースケージ本体と、
前記ホースケージ本体に設けられ、前記保形ホースの巻始め部位の位置を示す位置指示部と、
を有し、
前記ホースケージ本体は線材で構成されており、この線材の長手方向の端部が前記筐体の壁部に固定されることで、前記ホースケージ本体が前記筐体に設けられ、
前記筐体の壁部が、底板部と下板部と上板部と一対の側板部とを備えていることで、前記筐体が矩形な枡状に形成されており、
前記ホースケージ本体は、直線状に形成されている直線状部位を備えて構成されており、
前記直線状部位は一対で設けられており、一対の前記直線状部位は、左右方向で互いが所定の間隔をあけて上下方向に延びており、前記一対の直線状部位のそれぞれは、下端部が前記下板部に固定されており、上端部が前記上板部に固定されており、
前記位置指示部は、前記直線状部位と平行となるように上下方向に長く延びており、
前記位置指示部と底板部との間に保形ホースを支持する開口部が形成される消火栓。
【請求項10】
筐体内に設けられ、保形ホースの第1の端近傍の部位を巻始め部位とし、この巻始め部位よりも前記第1の端側の部位が前記筐体内で僅かに外側に延出し、前記保形ホースの、前記巻始め部位よりも第2の端側の部位が、螺旋状に巻かれている状態で前記保形ホースを内側に収容するホースケージ本体と、
前記ホースケージ本体に設けられ、前記保形ホースの巻始め部位の位置を示す位置指示部と、
を有するホースケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火栓およびホースケージに係り、特に保形ホースを収容するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図10~
図12で示すような消火栓301が知られている。消火栓301は、道路のトンネル内に所定の間隔をあけて設置される。消火栓301は、筐体303と、筐体303内で筐体303に設置されているホースケージ305とを備えている。
【0003】
ホースケージ305内には保形ホース307が収容される。なお、保形ホース307の一方の端部(基端部)は、保形ホース307の巻始め部位308を始点としてホースケージ305から僅かに突出しており、保形ホース307の基端は、流路切換弁309に接続されている。保形ホース307の巻始め部位308を始点として、保形ホース307の他方の端側(先端側)の部位は、螺旋状に巻かれてホースケージ305内に収容される。
【0004】
筐体303の壁部には、消火栓接続口311が設けられる。消火栓接続口311には、図示しない配管が接続される。消火栓接続口311と流路切換弁309との間には、消火栓弁313と自動調圧弁315とが設けられる。
図10に参照符号317で示すものは、消火栓301を点検するための点検装置である。
【0005】
そして、消火栓接続口311に接続されている図示しない配管から供給された水が、消火栓弁313を開き流路切換弁309を適宜切り替えることで、消火栓弁313と自動調圧弁315と流路切換弁309を通って、保形ホース307内に供給される。
【0006】
保形ホース307内に供給された水は、保形ホース307内を流れ、保形ホース307の他方の端(先端)に設けられているノズル(
図10~
図12では図示せず)から放出される。保形ホース307内を流れてきた水を上記ノズルから放出する際には、保形ホース307は、火点に水がかかるようにするために、ホースケージ305および筐体303から所定の長さ引き出される。
【0007】
なお、
図10で示す状態では、保形ホース307の他方の端部および図示しないノズルは、保形ホース307の螺旋の中央部に位置している。
【0008】
また、消火栓弁313を開き流路切換弁309をさらに切り替えることで、消火栓接続口311に接続されている図示しない配管から供給された水が、消火栓弁313と自動調圧弁315と流路切換弁309を通って、点検装置317に供給される。
【0009】
ここで、従来の技術に関する文献として特許文献1を掲げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、消火栓301では、火災発生時、保形ホース307を消火栓の筐体303から引き出して保形ホース307先端のノズルを火点の近くに持っていき、火点に向けてノズルから水を放出する必要がある。保形ホース307の筐体303からの引き出しに要する力であるが、これは、たとえば220N(ニュートン)以下の所定の値にする必要がある。
【0012】
保形ホース307の筐体303からの引き出しに要する力は、ホースケージ305内における保形ホース307の巻き方によって変化する。そこで、ホースケージ305内における保形ホース307の巻き方に関しては、保形ホース307の筐体303からの引き出しに要する力を上記所定の値以下にするため、筐体303内に銘板325を設置し、保形ホース307の巻き方を銘板325で示しておく必要がある。
【0013】
本発明は、巻き方を示す銘板を用いることなく、ホースケージ内における保形ホースの巻き方を示すことができ、保形ホースの消火栓の筐体からの引き出しに要する力を所定の値以下にすることができる消火栓およびホースケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の態様に係る消火栓は、筐体と、前記筐体内に設けられ、保形ホースの第1の端近傍の部位を巻始め部位とし、この巻始め部位よりも前記第1の端側の部位が前記筐体内で僅かに外側に延出し、前記保形ホースの前記巻始め部位よりも第2の端側の部位が螺旋状に巻かれている状態で、前記保形ホースを収容するホースケージ本体と、前記ホースケージ本体に設けられ、前記保形ホースの巻始め部位の位置を示す位置指示部とを有する消火栓である。
【0015】
また、本発明の態様に係る消火栓では、前記位置指示部が、前記保形ホースが放水を開始するときに発生する前記保形ホースの振動を抑制するように構成されている。
【0016】
また、本発明の態様に係る消火栓では、前記ホースケージ本体が線材で構成されており、この線材の長手方向の端部が前記筐体の壁部にあけられた貫通孔に挿入され前記筐体に固定されることで、前記ホースケージ本体が前記筐体に設けられている。
【0017】
また、本発明の態様に係る消火栓では、前記筐体の壁部が、底板部と下板部と上板部と一対の側板部とを備えていることで、前記筐体が矩形な枡状に形成されており、前記ホースケージ本体は、前記底板部と、前記下板部、前記上板部、前記一対の側板部のうちの少なくともいずれかの板部に固定されている。
【0018】
また、本発明の態様に係る消火栓では、前記筐体内に、配線ダクトが設けられており、前記ホースケージ本体の少なくとも一部が、前記配線ダクトを介して、前記筐体の壁部に固定されている。
【0019】
また、本発明の態様に係る消火栓では、前記筐体の壁部が、底板部と下板部と上板部と一対の側板部とを備えていることで、前記筐体が矩形な枡状に形成されており、前記ホースケージ本体が、直線状に形成されている直線状部位と、直線状の第1の延伸部位と直線状の第2の延伸部位とで「L」字状に形成されている「L」字状部位とを備えて構成されており、前記直線状部位は一対で設けられており、一対の前記直線状部位は、左右方向で互いが所定の間隔をあけて上下方向に延びており、前記一対の直線状部位のそれぞれは、下端部が前記下板部に固定されており、上端部が前記上板部に固定されており、前記「L」字状部位が複数設けられており、複数の前記「L」字状部位うちの一部の「L」字状部位が第1群の複数の「L」字状部位になっており、複数の前記「L」字状部位うちの残りの「L」字状部位が第2群の複数の「L」字状部位になっており、前記第1群の複数の「L」字状部位のそれぞれが、上下方向で所定の間隔をあけ、前記一対の直線状部位のうちの左側の直線状部位から左側に延出しており、前記第1群の「L」字状部位の第1の延伸部位が左右方向に延びており、前記第1群の「L」字状部位の第2の延伸部位が前後方向に延びており、前記第1群の「L」字状部位の第1の延伸部位の端部が前記左側の直線状部位に接合されており、前記第1群の「L」字状部位の第2の延伸部位の端部が前記底板部に接合されており、前記第2群の複数の「L」字状部位のそれぞれが、上下方向で所定の間隔をあけ、前記一対の直線状部位のうちの右側の直線状部位から右側に延出しており、前記第2群の「L」字状部位の第1の延伸部位が左右方向に延びており、前記第2群の「L」字状部位の第2の延伸部位が前後方向に延びており、前記第2群の「L」字状部位の第1の延伸部位の端部が前記右側の直線状部位に接合されており、前記第2群の「L」字状部位の第2の延伸部位の端部が前記底板部に接合されている。
【0020】
また、本発明の態様に係る消火栓では、前記位置指示部が、前記ホースケージ本体を構成している線材と同じ線材で構成されており、前記位置指示部の長手方向の一方の端が、前記ホースケージ本体の所定の部位に接合されており、前記位置指示部の長手方向の他方の端が、前記ホースケージ本体の所定の部位に接合されており、前記保形ホースの、前記巻始め部位よりも前記第1の端側の部位の延出方向が、前記位置指示部の長手方向に対して、僅かに斜めになっている。
【0021】
また、本発明の態様に係る消火栓では、前記第2群の「L」字状部位が一対で設けられており、前記位置指示部が、上下方向に長く延びており、上端が、前記第2群の「L」字状部位のうちの上側の「L」字状部位の第2の延伸部位に接合されており、下端が、前記第2群の「L」字状部位のうちの下側の「L」字状部位の第2の延伸部位に接合されている。
【0022】
本発明の態様に係る消火栓は、筐体と、前記筐体内に設けられ、保形ホースの第1の端近傍の部位を巻始め部位とし、この巻始め部位よりも前記第1の端側の部位が前記筐体内で僅かに外側に延出し、前記保形ホースの前記巻始め部位よりも第2の端側の部位が螺旋状に巻かれている状態で、前記保形ホースを収容するホースケージ本体と、前記ホースケージ本体に設けられ、前記保形ホースの巻始め部位の位置を示す位置指示部とを有し、前記ホースケージ本体は線材で構成されており、この線材の長手方向の端部が前記筐体の壁部に固定されることで、前記ホースケージ本体が前記筐体に設けられ、前記筐体の壁部が、底板部と下板部と上板部と一対の側板部とを備えていることで、前記筐体が矩形な枡状に形成されており、前記ホースケージ本体は、直線状に形成されている直線状部位を備えて構成されており、前記直線状部位は一対で設けられており、一対の前記直線状部位は、左右方向で互いが所定の間隔をあけて上下方向に延びており、前記一対の直線状部位のそれぞれは、下端部が前記下板部に固定されており、上端部が前記上板部に固定されており、前記位置指示部は、前記直線状部位と平行となるように上下方向に長く延びており、前記位置指示部と底板部との間に保形ホースを支持する開口部が形成される消火栓である。
【0023】
本発明の態様に係るホースケージは、筐体内に設けられ保形ホースの第1の端近傍の部位を巻始め部位としこの巻始め部位よりも前記第1の端側の部位が前記筐体内で僅かに外側に延出し前記保形ホースの前記巻始め部位よりも第2の端側の部位が螺旋状に巻かれている状態で前記保形ホースを内側に収容するホースケージ本体と、前記ホースケージ本体に設けられ前記保形ホースの巻始め部位の位置を示す位置指示部とを有するホースケージである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、巻き方を示す銘板を用いることなく、ホースケージ内における保形ホースの巻き方を示すことができ、保形ホースの消火栓の筐体からの引き出しに要する力を所定の値以下にすることができる消火栓およびホースケージを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る消火栓の正面図である。
【
図2】
図1におけるII-II断面を示す図である。
【
図3】
図1におけるIII-III断面を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る消火栓(保形ホース等の表示が省略されている消火栓)の斜視図の概略構成を示す斜視図である。
【
図5】
図2の一部を拡大した図であって、本発明の実施形態に係る消火栓での保形ホースの巻き方を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る消火栓のホースケージに収容されている保形ホースの引き出し(繰り出し)に要する力の大きさを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る消火栓の、ホースケージ本体と筐体との接合形態を示す図である。
【
図8】(a)は本発明の実施形態に係る消火栓のホースケージの側面図であり、(b)は変形例に係る消火栓のホースケージの側面図である。
【
図9】(a)はホースケージ本体と筐体との接合形態の変形例を示す図であり、(b)は(a)におけるIXB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態に係る消火栓1は、従来の消火栓301と同様に、たとえば、道路のトンネル内にこの長手方向で所定の間隔をあけて設置される。トンネル内での火災の発生時、
図1、
図2で示すように消火栓1の扉3を開いて、保形ホース5を引き出し、保形ホース5先端のノズル7から火点に向けて水を放出し消火をする。
【0027】
ここで説明の便宜のために、水平な所定の一方向を前後方向とし、水平な所定の他の一方向であって前後方向に対して直交する方向を左右方向とし、を前後方向と左右方向とに対して直交する方向を上下方向とする。
【0028】
消火栓1は、
図1から
図4で示すように、筐体9とホースケージ本体11と位置指示部13とを備えて構成される。筐体9の内側には、内部空間15が形成される。
【0029】
ホースケージ本体11は、筐体9内(内部空間15)で筐体9に一体的に設けられる。保形ホース5の長手方向の一方の端を第1の端(基端)17とし、保形ホース5の長手方向の他方の端を第2の端(先端)19とする。保形ホース5の基端17近傍の部位を巻始め部位21とする。
【0030】
ホースケージ本体11は、筐体9と協働し、保形ホース5の巻始め部位21よりも先端19側の長い部位が巻かれた状態で、保形ホース5を内側に収容する。保形ホース5の、ホースケージ本体11の内側に収容されている長い部位は、螺旋状(たとえば、多重螺旋状)に巻かれる。また、ホースケージ本体11が保形ホース5を内側に収容している状態では、巻始め部位21よりも基端17端側の部位が筐体9内で、ホースケージ本体11の外側に僅かに延出する。
【0031】
位置指示部13は、筐体9の内部でホースケージ本体11に一体的に設けられており、ホースケージ本体11に対する保形ホース5の巻始め部位21の位置を示す。位置指示部13は保形ホース5に接するか、もしくは、保形ホース5に近傍で保形ホース5をガイドすることで、保形ホース5の巻始め部位21の位置を示す。
【0032】
なお、上記説明では、位置指示部13をホースケージ本体11に設けているが、これに代えてもしくは加えて、位置指示部13を筐体9に設けてもよい。また、ホースケージ本体11と位置指示部13とを備えているものがホースケージになる。
【0033】
ホースケージ本体11の内側に収容されて螺旋状になっている保形ホース5は、お互いに隣り合う線材同士が接している引張コイルバネ(引張コイルバネのフック部を除く螺旋状の部位)と同様の形態になっている。
【0034】
多重螺旋状の保形ホース5では、螺旋の径方向で螺旋が多重になっている。2重の多重螺旋状の形態を例に掲げて説明する。2重の多重螺旋状では、外側で螺旋状になっている保形ホース(第1の螺旋状保形ホース)5Aがあり、この第1の螺旋状保形ホース5Aの内側に螺旋状になっている保形ホース(第2の螺旋状保形ホース)5Bが入り込んでいる。
【0035】
2重の多重螺旋状の形態では、第1の螺旋状保形ホース5Aの内周に、第2の螺旋状保形ホース5Bの外周が接し、第1の螺旋状保形ホース5Aの中心軸と第2の螺旋状保形ホース5Bの中心軸とが互いに一致している。さらに、2重の多重螺旋状の形態では、螺旋状の保形ホース5の中心軸の延伸方向(前後方向)における、第1の螺旋状保形ホース5Aの位置と、第2の螺旋状保形ホース5Bの位置とが互いに一致している。3重以上の多重螺旋状の形態でも、同様にして、第2の螺旋状保形ホース5Bに別の螺旋状になっている保形ホース5が入り込んでいる。
【0036】
図1、
図2、
図5で示す態様では、保形ホース5が5重の螺旋状になってホースケージ本体11内に収容されている。
【0037】
すなわち、
図1、
図2、
図5で示す態様では、第1の螺旋状保形ホース5Aの内側に第2の螺旋状保形ホース5Bが入り込んでおり、第2の螺旋状保形ホース5Bの内側に第3の螺旋状保形ホース5Cが入り込んでいる。また、第3の螺旋状保形ホース5Cの内側に第4の螺旋状保形ホース5Dが入り込んでおり、第4の螺旋状保形ホース5Dの内側に第5の螺旋状保形ホース5Eが入り込んでいる。なお、すでに理解されるように、多重螺旋状になっている保形ホース5は、1本の保形ホース5で形成されている。
【0038】
ホースケージ本体11内で多重螺旋状になっている保形ホース5では、多重螺旋のうちの最も外側の螺旋(第1の螺旋状保形ホース5A)が始まるところに、保形ホース5の基端17近傍の巻始め部位21が位置している。保形ホース5の先端19は、多重螺旋のうちの最も内側の螺旋(第5の螺旋状保形ホース5E)のところに位置している。すなわち、保形ホース5が外側から内側に巻かれている。
【0039】
図1、
図2、
図5で示す状態では、筐体9の扉3が開いており、保形ホース5の先端部が筐体9から僅かに引き出されている。筐体9の扉3が閉じている通常の状態(火災が発生していない状態)では、保形ホース5のほぼ総てが巻かれてホースケージ本体11内に収容されており、ノズル7も筐体9内に収容されている。
【0040】
ホースケージ本体11内で多重螺旋状になっている保形ホース5を、ホースケージ本体11から引き出す場合には、保形ホース5の先端19から先に、保形ホース5がホースケージ本体11内から引き出される(繰り出される)。また、ホースケージ本体11内で多重螺旋状になっている保形ホース5を、ホースケージ本体11から引き出す場合には、多重螺旋のうちの最も内側の螺旋(第5の螺旋状保形ホース5E)のところから保形ホース5が引き出される。
【0041】
なお、保形ホース5とは、補助散水栓用の消防用ホースであり、ジャケット保形ホースとも呼ばれる。保形ホース5は、収納状態でも断面(長手方向に対して直交する平面による二重円状の断面)がつぶれないように外周部が樹脂、ワイヤーのコイル等で補強されている。
【0042】
位置指示部13は、保形ホース5の巻始め部位21の位置を示すとともに、保形ホース5が放水を開始するときに発生する保形ホース5の振動(初動振動)を抑制するように構成されている。位置指示部13が、保形ホース5の巻始め部位21の位置を示すだけでなく、放水を開始するときに発生する保形ホース5の初動振動を抑制する機能を備えている(初動振動を抑制するために設けられている)。これにより、位置指示部13をスタビライザーと呼んでもよい。
【0043】
ホースケージ本体11は線材で構成されており、この線材の長手方向の端部が、
図7(a)で示すように、筐体9の平板状の壁部23にあけられた貫通孔25に挿入され溶接によって筐体9の壁部23に直接固定されている。これにより、ホースケージ本体11が筐体9に一体的に設けられる。
【0044】
なお、
図7(b)で示すように、壁部23にあけられた貫通孔25の内径が、ホースケージ本体11の線材の外径(線材の壁部23から突出している部位の外径)より小さくなっていてもよい。そして、ホースケージ本体11の小径部が貫通孔25に入り込んでおり、ホースケージ本体11の小径部と大径部との境界の段差が筐体9の壁部23に当接してもよい。
【0045】
筐体9および線材(ホースケージ本体11)は、鋼等の金属材料で構成される。筐体9および線材は、剛体と見なせる程度の剛性を備えている。すなわち、筐体9や線材に人が素手で力を加えても、肉眼ではその時の変形を認識できない程度の剛性を、筐体9や線材が備えている。線材は、所定の外径で細長い棒状に形成される。
【0046】
筐体9の壁部23が、矩形な平板状の底板部(後板部)27と矩形な平板状の下板部31と矩形な平板状の上板部29と矩形な平板状の一対の側板部33とを備えていることで、筐体9が矩形な枡状に形成される。
【0047】
ホースケージ本体11は、直線状に形成されている直線状部位35と、直線状の第1の延伸部位37と直線状の第2の延伸部位39とで「L」字状に形成される「L」字状部位41とを備えて構成されている。
【0048】
直線状部位35は一対で設けられており、一対の前記直線状部位35は、左右方向で互いが所定の間隔をあけて上下方向に延びている。一対の直線状部位35のそれぞれは、下端部が下板部31に固定され、上端部が上板部29に固定される。
【0049】
「L」字状部位41も複数設けられる。複数の「L」字状部位41うちの一部(左側)の「L」字状部位41が第1群の複数の「L」字状部位41Aになっている。複数の前記「L」字状部位41うちの残り(右側)の「L」字状部位が第2群の複数の「L」字状部位41Bになっている。
【0050】
第1群の複数の「L」字状部位41Aのそれぞれは、上下方向で所定の間隔をあけ、一対の直線状部位35のうちの左側の直線状部位35Aから左側に延出している。第1群の「L」字状部位41Aの第1の延伸部位37が左右方向に延びており、第1群の「L」字状部位41Aの第2の延伸部位39が前後方向に延びている。
【0051】
第1群の「L」字状部位41Aの第1の延伸部位37の端部が左側の直線状部位35Aに接合され、第1群の「L」字状部位41Aの第2の延伸部位39の端部が底板部27に接合される。
【0052】
第2群の複数の「L」字状部位41Bのそれぞれは、上下方向で所定の間隔をあけ、一対の直線状部位35のうちの右側の直線状部位35Bから右側に延出している。第2群の「L」字状部位41Bの第1の延伸部位37が左右方向に延びており、第2群の「L」字状部位41Bの第2の延伸部位39が前後方向に延びている。
【0053】
第2群の「L」字状部位41Bの第1の延伸部位37の端部が右側の直線状部位35Bに接合され、第2群の「L」字状部位41Bの第2の延伸部位39の端部が底板部27に接合される。
【0054】
ホースケージ本体11は、左右方向および上下方向で対称に形成されている。すなわち、ホースケージ本体11は、ホースケージ本体11の中心を含み左右方向に対して直交している平面に対して対称に形成される。また、ホースケージ本体11は、ホースケージ本体11の中心を含み上下方向に対して直交している平面に対して対称に形成される。
【0055】
なお、消火栓1において、ホースケージ本体11が、底板部27と、下板部31、上板部29、一対の側板部33のうちの少なくともいずれかの板部に固定されていてもよい。たとえば、ホースケージ本体11が、底板部27と一対の側板部33とに固定されていてもよいし、ホースケージ本体11が、底板部27と下板部31と一対の側板部33とに固定されていてもよい。また、ホースケージ本体11が、底板部27と一対の側板部33とに固定されていてもよい。さらに、ホースケージ本体11が、底板部27と下板部31と上板部29と一対の側板部33とに固定されていてもよい。
【0056】
さらに、消火栓1において、ホースケージ本体11が、底板部27、下板部31、上板部29、一対の側板部33のうちの2つ以上、もしくは、3つ以上の板部に固定されていてもよい。たとえば、ホースケージ本体11が、下板部31と上板部29と一対の側板部33とに固定されていてもよい。
【0057】
位置指示部13は、ホースケージ本体11を構成している線材と同じ形態の線材(同じ材質および同じ外径の線材)で構成される。そして、位置指示部13の長手方向の一方の端(第1の端)が、ホースケージ本体11の所定の部位(第1の部位)65に接合されており、位置指示部13の長手方向の他方の端(第2の端)が、ホースケージ本体11の所定の部位(第2の部位)67に接合される。
【0058】
保形ホース5の、巻始め部位21よりも基端17側の部位の延出方向が、位置指示部13の長手方向(上下方向)に対して、僅かに斜めになっている。
【0059】
位置指示部13についてさらに説明する。第2群の「L」字状部位41Bは一対で設けられる。位置指示部13は、上下方向に長く延びており、位置指示部13の上端が、第2群の「L」字状部位41Bのうちの上側の「L」字状部位41Baの第2の延伸部位39に接合される。位置指示部13の下端が、第2群の「L」字状部位41Bのうちの下側の「L」字状部位41Bbの第2の延伸部位39に接合される。
【0060】
前後方向における筐体9の底板部27と位置指示部13との間の寸法の値は、保形ホース5の外径寸法の値よりも僅かに大きくなっている。
【0061】
また、左右方向で見ると、
図3で示すように、第2群の上側の「L」字状部位41Baの第2の延伸部位39と、筐体9の底板部27と、第2群の下側の「L」字状部位41Bbの第2の延伸部位39と、位置指示部13とで開口部43が形成される。開口部43は、上下方向に長く前後方向に短い矩形状に形成される(
図8(a)参照)。
【0062】
保形ホース5の基端17側の僅かな長さの部位は、
図1で示すように、上下方向に対して僅かに傾いて延伸し、開口部43形成しているいずれかの部材に接触して、開口部43を通り抜けている。保形ホース5の、開口部43を通り抜けている部位が、保形ホース5の巻始め部位21になっている。なお、保形ホース5の巻始め部位21から基端17までは、下側であって位置指示部13(ホースケージ本体11)から右側に僅かに離れる側に延伸している。
【0063】
なお、前後方向における筐体9の底板部27と位置指示部13との間の寸法の値が、保形ホース5の外径寸法の値よりも僅かに小さくなっていてもよい。そして、保形ホース5の巻始め部位21が、筐体9の底板部27と位置指示部(スラビライザー)13とで付勢力を持って挟まれていてもよい。これにより、放水を開始するときに発生する保形ホース5の初動振動を一層的確に抑制することができる。
【0064】
また、開口部43の一部が筐体9の底板部27で形成されていることで、多重螺旋状の保形ホース5のうちの最も外側の螺旋(第1の螺旋状保形ホース5A)では、後側から前側に向かって保形ホース5が巻かれる態様になる。このような巻きの態様を後前側巻き態様とする。
【0065】
また、すでに理解されるように、多重螺旋状の保形ホース5のうちの最も外側の螺旋に接している内側の螺旋(第2の螺旋状保形ホース5B)では、前側から後側に向かって保形ホース5が巻かれている。このような巻きの態様を前後側巻き態様とする。
【0066】
なお、後前側巻き態様では、開口部43の一部が筐体9の底板部27で形成されていることで、多重螺旋状の保形ホース5のうちの最も外側の螺旋(第1の螺旋状保形ホース5A)で、後側から前側に向かって保形ホース5が巻かれている。逆に、多重螺旋状の保形ホース5のうちの最も外側の螺旋(第1の螺旋状保形ホース5A)で、前側から後側に向かって保形ホースが巻かれている態様(前後側巻き態様)を採用することもある。
【0067】
第1の螺旋状保形ホース5Aで前後側巻き態様を採用する場合、
図8(b)で示すように、位置指示部13を2本の上下方向に延びている直線状の線材13A、13Bで構成する。前後方向における2本の直線状の線材13A、13Bの間の寸法の値は、保形ホース5の外径寸法の値よりも僅かに大きくなっている。
【0068】
また、左右方向で見ると、
図8(b)で示すように、第2群の上側の「L」字状部位41Baの第2の延伸部位39と、2本の直線状の線材13A、13Bと、第2群の下側の「L」字状部位41Bbの第2の延伸部位39とで、開口部43が形成される。開口部43は、
図8(a)で示すものと同様に、上下方向に長く前後方向に短い矩形状に形成される。
【0069】
なお、位置指示部13を2本の上下方向に延びている直線状の線材13A、13Bで構成した場合において、前後方向における2本の直線状の線材13A、13Bの間の寸法の値が、保形ホース5の外径寸法の値よりも僅かに小さくなっていてもよい。また、上記説明では、位置指示部13が右側に位置しているが、消火栓1の仕様等に応じて、位置指示部13を左側に配置してもよい。
【0070】
ここで、消火栓1についてさらに詳しく説明する。
【0071】
筐体9は、上述したように、底板部27と下板部31と上板部29と側板部33とを備えて矩形な枡状に形成されている。また、筐体9では、前側の開口部が前側の壁部45で塞がれている。扉3は、矩形な平板状に形成されており、前側の壁部45の一部で構成されている。扉3が開いている状態では、
図1で示すように、ホースケージ本体11のほぼ全体と、巻かれてホースケージ本体11内に収容されている保形ホース5のほぼ総てとが見える。
【0072】
なお、扉3は、図示しない蝶番等を用いることで、扉3の下端の辺部(左右方向に延びている辺部)47を回動中心にして、前側の壁部45(扉3を除く部位)に対して回動する。すなわち、
図1、
図3で示すように開口部49を形成している位置から、
図3に矢印で示す方向に約90°回動し、開口部49を閉じる。
【0073】
開いた状態における扉3の上面には、上下が逆になっている「U」字状のガイド材51が設けられている。ホースケージ本体11内から延出している保形ホース5は、ガイド材51の内側を通ってさらに延びる。扉3が閉じられた状態(火災が発生していない通常の状態)では、保形ホース5および保形ホース5の先端19に設けられているノズル7およびガイド材51が、筐体9内に収容される。
【0074】
筐体9には、扉3とは別の扉53が設けられており、筐体9内の扉53のところには、図示しない消火器が収容される。
【0075】
また、消火栓1には、従来の消火栓301と同様にして、消火栓接続口55と消火栓弁57と自動調圧弁59とが流路切換弁61と設けられている。流路切換弁61には、保形ホース5の基端17と点検装置63とが接続される。流路切換弁61に接続されている保形ホース5の、巻始め部位21と流路切換弁61との間の部位は、上述したように、上下方向に対してやや斜めな方向に延伸している。
【0076】
また、流路切換弁61に接続されている保形ホース5の、巻始め部位21と流路切換弁61との間の部位は、前後方向では、ホースケージ本体11内の螺旋状の保形ホース5の、最も後側に位置している部位、および、開口部43とほぼ同じところに位置している。
【0077】
消火栓接続口55には、図示しない配管が接続される。そして、消火栓接続口55に接続されている図示しない配管から供給された水が、消火栓弁57と自動調圧弁59と流路切換弁61とを通って、保形ホース5内に供給される。このとき、消火栓弁57は開状態になっており、流路切換弁61が適宜切り替えられている。
【0078】
ホースケージ本体11、位置指示部13を構成している線材は細長い円柱状に形成されている。「L」字状部位41における第1の延伸部位37と第2の延伸部位39との境界の部位は、急激直角に折れ曲がっているのではなく、1/4円弧状になっている。保形ホース5は円筒状に形成されており、ある程度の弾性を備えている。
【0079】
ホースケージ本体11内で螺旋状になっている保形ホース5を前後方向で見ると、円環状ではなく、4つの角部のそれぞれが、1/4円弧状になっている矩形な環状になっている。また、
図3で示すように、筐体9内には、保形ホース5が載置される載置台34が設けられている。なお、載置台34を無くして、螺旋状の保形ホース5が筐体9の下板部31に接するようにしてもよい。
【0080】
次に、保形ホース5のホースケージ本体11内での巻かれ方について、
図5を参照しつつさらに詳しく説明する。
図5で示す保形ホース5を示す円内に書かれている数字は、保形ホース5の巻き順を示している。
【0081】
巻始め部位21からホースケージ本体11内に入った保形ホース5は、後側から前側に向かって巻かれつつ最も外側の第1の螺旋状保形ホース5Aを形成する(保形ホース5を示す円内に書かれている数字1~8を参照)。
【0082】
続いて、前側から後側に向かって巻かれつつ第2の螺旋状保形ホース5Bを形成する(保形ホース5を示す円内に書かれている数字9~16を参照)。同様にして、第3の螺旋状保形ホース5C~第5の螺旋状保形ホース5Eを形成する。
【0083】
ここで、消火栓1の動作について説明する。
【0084】
初期状態(火災が発生していない通常の状態)では、消火栓接続口55に配管が接続されており、消火栓弁57が閉じられている。流路切換弁61が、保形ホース5内に水を流すようになっている。扉3は閉じられており、保形ホース5の総てとノズル7とが、筐体9内に入っている。
【0085】
火災が発生したときに、扉3を開きノズル7をもって保形ホース5を引張り、保形ホース5を筐体9から引き出しつつ、ノズル7を火点の近傍にもっていき、ノズル7の放出口を火点に向ける。
【0086】
続いて、図示しない操作用レバーを操作して、消火栓弁57を開き、ノズル7の放出口から放出した水で火点の炎を消す。
【0087】
次に、保形ホース5を筐体9から引き出すのに要する力について、
図6を参照しつつ説明する。引き出しは、
図1、
図2に矢印で示す方向に、ノズル7を引っ張ることでされる。
【0088】
図6の横軸は、筐体9からの保形ホース5の延出長さを示している。
図6の縦軸は、筐体9からの保形ホース5の引き出しに要する力を示している。
図6の線
図L6で示すように、筐体9からの保形ホース5の延出長さが長くなるにしたがって、筐体9からの保形ホース5の引き出しの要する力が大きくなっている。ただし、筐体9からの保形ホース5の引き出しの要する力の最大値は220N程度になっている。
【0089】
消火栓1は、保形ホース5の巻始め部位21の位置を示す位置指示部13がホースケージ本体11に設けられている。これにより、巻き方を示す銘板を用いることなく、ホースケージ本体11内における保形ホース5の巻き方を示すことができる。そして、示した巻き方のとおりの巻かれることで、保形ホース5の消火栓1の筐体9からの引き出しに要する力を所定の値以下にすることができる。
【0090】
また、消火栓1では、位置指示部13が、保形ホース5の巻始め部位21の位置を示すとともに、保形ホース5が放水を開始するときに発生する保形ホース5の初動振動を抑制するようになっている。これにより、保形ホース5の初動振動を抑制するものを別途設ける必要が無くなり、消火栓1の構成が簡素化される。また、保形ホース5の初動振動が抑制されるので、消火栓1に使用されているボルト等のネジが緩むことを抑えることができるとともに、消火栓1に使用されている電装品の故障等の不具合が発生することが防止される。
【0091】
また、消火栓1では、ホースケージ本体11が線材で構成されている。そして、線材の長手方向の端部が筐体9の壁部23にあけられた貫通孔25に挿入され筐体9に固定されることで、ホースケージ本体11が筐体9に設けられている。これにより、ホースケージ本体11の筐体9への接合強度を高めることができるとともに、筐体9の剛性を高めることができる。
【0092】
ところで、
図9で示すようにホースケージ本体11の少なくとも一部が、配線ダクト71を介して、筐体9の壁部23に固定されていてもよい。配線ダクト71は、筐体9内(筐体9の内部空間15)に設けられている。これにより、ホースケージ本体11の筐体9への接合強度を高めることができるとともに、筐体9の剛性を高めることができる。
【0093】
配線ダクト71は、配線ダクト構成材73と筐体9の壁部23の一部とで構成されている。配線ダクト71は、左右方向では、筐体9の中間部に設けられており、配線ダクト71の左右方向の両端には、開口部が形成されている。また、配線ダクト71は、上下方向では、筐体9の上端部に設けられており、前後方向では、筐体9の先端部よりも後側に設けられている。
【0094】
さらに説明すると、配線ダクト構成材73は、たとえば、矩形な平板状の素材を適宜折り曲げた状態になっており、矩形状の第1の平板状部75と矩形状の第2の平板状部77と矩形状の第3の平板状部79と矩形状の第4の平板状部81とを備えて構成されている。第1の平板状部75の厚さ方向は、上下方向になっており、第2の平板状部77の厚さ方向は、前後方向になっている。第3の平板状部79の厚さ方向は、上下方向になっており、第4の平板状部81の厚さ方向は、前後方向になっている。
【0095】
第1の平板状部75が筐体9の上板部29にたとえば溶接によって接合されており、第4の平板状部81が筐体9の底板部27にたとえば溶接によって接合されている。これにより、配線ダクト71の内部空間83は、左右方向に細長い直方体状になっている。
【0096】
図9で示す構成では、ホースケージ本体11の直線状部位35(35A、35B)の上端が、たとえば溶接によって、第3の平板状部79の下面に接合されている。これにより、
図7で示すような貫通孔25を用いる場合のように、丸棒状の直線状部位35の外径寸法精度を上げる必要がなくなる。また、
図7で示すような貫通孔25を用いなくても、強度的には通常の溶接方法で問題はない。また、直線状部位35を筐体9の壁部23に溶接するときにおける、箱(筐体)9を置く面を変える回数が少なくなり、溶接工数が削減される。
【0097】
なお、
図9で示すホースケージ本体11の直線状部位35(35A、35B)の上端部が、
図7で示すように、貫通孔25を用いて、筐体9の壁部23に接合されていてもよい。また、
図1等で示す構成において、
図7で示す貫通孔25を用いることなく、ホースケージ本体11の直線状部位35(35A、35B)の上端や「L」字状部位41の端が、筐体9の壁部23に接合されていてもよい。これにより、水漏れのおそれを回避するための全周溶接のチェックが不要になる。
【0098】
さらに、ホースケージ本体11の直線状部位35の上端部の設置態様として、直線状部位35が配線ダクト構成材73の第3の平板状部79を貫通し、直線状部位35の上端面が筐体9の上板部29の下面にたとえば溶接で接合されていてもよい。これにより、ホースケージ本体11を筐体9に取り付ける際の取付け位置を間違うことがなくなる。上記態様において、直線状部位35も第3の平板状部79にたとえば溶接で接合されていることが望ましい。また、
図9(a)に二点鎖線で示すように、直線状部位35が配線ダクト構成材73の第3の平板状部79を貫通し、直線状部位35の上端が、上板部29と配線ダクト71の配線ダクト構成材73との間に位置していてもよい。この場合、直線状部位35の上端が、球冠状に形成されていてもよい。これにより、配線ダクト71を通過する配線の被覆が傷付くこと等による絶縁不良等の不具合の発生を防ぐことが出来る。
【0099】
ところで、上記説明では、ホースケージ本体11の直線状部位35の上端部が配線ダクト71に接合されている。これに代えてもしくは加えて、配線ダクト71を筐体9の下側に設け、直線状部位35の下端部が配線ダクト71に接合されている態様であってもよい。
【0100】
また、ホースケージ本体11の直線状部位35を配線ダクト71に接合することに代えてもしくは加えて、ホースケージ本体11の「L」字状部位41が配線ダクト71に接合されている構成であってもよい。この場合、配線ダクト71の設置位置も適宜変更される。
【0101】
なお、従来の消火栓301では、
図10~
図12で示すように、ホースケージ305が線材で構成されたホースケージ本体319と、薄板で構成されており厚さ方向(前後方向)で見て矩形な環状になっている接合体321とを備えて構成されている。ホースケージ本体319の後端に接合体321がたとえば溶接によって接合されている。
【0102】
また、従来の消火栓301では、接合体321が面溶接もしくはボルトによって、筐体303の底板部323に設置されている。これにより、ホースケージ本体319が接合体321を介して筐体303に設置されている。
【0103】
さらに、従来の消火栓301では、保形ホース307の巻き方(巻始め部位308)を示す銘板325が筐体303の底板部323に設置されている。
【0104】
したがって、従来の消火栓301では、銘板325が必要であるとともに、保形ホース307の初動振動によって、接合体321のボルトが緩むおそれがあり、また、接合体321の面溶接がはがれるおそれがある。
【0105】
また、従来の消火栓301では、筐体303の底板部323に開口部を設ける場合、開口部のところをアングル材等によって補強する必要があるが、消火栓1では、筐体9の剛性が高くなっているので、その必要性がほとんど無くなる。
【0106】
また、消火栓1では、ホースケージ本体11が筐体9の底板部27と下板部31と上板部29とに固定されている。これにより、ホースケージ本体11の筐体9への接合強度を一層高めることができるとともに、筐体9の剛性を一層高めることができる。
【0107】
また、消火栓1では、位置指示部13が線材で構成されており、
図4等で示すように、位置指示部13の長手方向の一方の端(第1の端)が、ホースケージ本体11の所定の部位(第1の部位)65に接合されている。また、位置指示部13の長手方向の他方の端が、ホースケージ本体の所定の部位(第2の部位)67に接合されている。これにより、ホースケージ本体11の剛性が高まっているとともに、位置指示部13の構成が簡素化されている。
【0108】
また、消火栓1では、位置指示部13が上下方向に長く延びており、位置指示部13の上端が第2群の「L」字状部位のうちの上側の「L」字状部位41Baの第2の延伸部位39に接合されている。また、消火栓1では、位置指示部13の下端が第2群の「L」字状部位のうちの下側の「L」字状部位41Bbの第2の延伸部位39に接合されている。
【0109】
これにより、ホースケージ本体11の補強をしつつ保形ホース5の巻始め部位21を、下側の第2の延伸部位39と上側の第2の延伸部位39との間で、ホースケージ本体11の上下方向の中央部に位置させることができる。そして、ホースケージ本体11内での保形ホース5を螺旋状に巻いての収容をしやすくなる。
【0110】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 消火栓
5 保形ホース
9 筐体
11 ホースケージ本体
13 位置指示部
21 巻始め部位
23 筐体の壁部
25 貫通孔
27 底板部
29 上板部
31 下板部
33 側板部
35 直線状部位
37 第1の延伸部位
39 第2の延伸部位
41 「L」字状部位
41A 第1群の「L」字状部位
41B 第2群の「L」字状部位
41Ba 上側の「L」字状部位
41Bb 下側の「L」字状部位
43 開口部