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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176198
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/821 20180101AFI20231206BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B60N2/821
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088359
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】土橋 佑司
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DA01
3B084DB01
3B084DC01
3B087DC05
3B087DC06
(57)【要約】
【課題】ヘッドレストの高さ調節機構の薄型化を図ること。
【解決手段】シートバック2の骨格を成すシートバックフレーム2Fと、シートバックフレーム2Fに対して上下方向に摺動可能なように組み付けられるヘッドレスト3と、を備えるシート1であって、シートバックフレーム2Fの前部に固定される面状のベースプレート3Bと、ヘッドレスト3の後部に設けられてベースプレート3Bとシートバックフレーム2Fとの間に前後方向に挟まれることでこれらの間で上下方向に摺動可能となるような摩擦による保持力が掛けられる一対のファスナ片M1(摺動部材)と、ベースプレート3Bに設けられて各ファスナ片M1との上下方向の当接により各ファスナ片M1の摺動域Aを規制する規制部B2と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの骨格を成すシートバックフレームと、前記シートバックフレームに対して上下方向に摺動可能なように組み付けられるヘッドレストと、を備える乗物用シートであって、
前記シートバックフレームの前部に固定される面状のベース部材と、
前記ヘッドレストの後部に設けられて前記ベース部材と前記シートバックフレームとの間に前後方向に挟まれることでこれらの間で上下方向に摺動可能となるような摩擦による保持力が掛けられる摺動部材と、
前記ベース部材に設けられて前記摺動部材との上下方向の当接により前記摺動部材の摺動域を規制する規制部と、を有する乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記摺動部材が、前記ヘッドレストの後部のシート幅方向の2箇所に設けられ、それぞれが前記ベース部材に対して互いに相反するシート幅方向のテンションを作用させるように巻き掛けられる乗物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗物用シートであって、
各前記摺動部材が、前記ベース部材にシート幅方向の外側から内側に巻き掛けられて、前記ベース部材に形成された開口から前記ヘッドレストの後部に結合される乗物用シート。
【請求項4】
請求項3に記載の乗物用シートであって、
各前記摺動部材が、前記ベース部材に形成された前記開口において、面ファスナにより前記ヘッドレストの後部に結合される乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。詳しくは、シートバックの骨格を成すシートバックフレームと、シートバックフレームに対して上下方向に摺動可能なように組み付けられるヘッドレストと、を備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、航空機シートのヘッドレストに、シートバックに対する高さ調節を可能にする高さ調節機構が設けられた構成が開示されている。高さ調節機構は、シートバックに設けられるレールと、ヘッドレストに設けられるスライダと、で構成される。高さ調節機構は、スライダをレールに沿ってスライドさせることで、ヘッドレストのシートバックに対する高さを調節する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-20520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ヘッドレストとシートバックとの間にレールとスライダとが介在するため、ヘッドレストとシートバックとの間の厚みが増大しやすい。そこで、本発明は、ヘッドレストの高さ調節機構の薄型化を図ることが可能な乗物用シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本発明の乗物用シートは、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、シートバックの骨格を成すシートバックフレームと、前記シートバックフレームに対して上下方向に摺動可能なように組み付けられるヘッドレストと、を備える乗物用シートであって、前記シートバックフレームの前部に固定される面状のベース部材と、前記ヘッドレストの後部に設けられて前記ベース部材と前記シートバックフレームとの間に前後方向に挟まれることでこれらの間で上下方向に摺動可能となるような摩擦による保持力が掛けられる摺動部材と、前記ベース部材に設けられて前記摺動部材との上下方向の当接により前記摺動部材の摺動域を規制する規制部と、を有する乗物用シートである。
【0007】
第1の発明によれば、ヘッドレストの後部に設けられる摺動部材をシートバックフレームとその前部に固定される面状のベース部材との間に挟むだけの簡素かつ前後方向の厚みの増大を伴いにくい薄型な構成により、ヘッドレストの高さ調節機構を具現化することができる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記摺動部材が、前記ヘッドレストの後部のシート幅方向の2箇所に設けられ、それぞれが前記ベース部材に対して互いに相反するシート幅方向のテンションを作用させるように巻き掛けられる乗物用シートである。
【0009】
第2の発明によれば、各摺動部材により、ヘッドレストをシートバックに対してシート幅方向及び前後方向にガタ詰めした状態に組み付けることができる。また、各摺動部材からベース部材に掛けられるシート幅方向のテンションによっても、ヘッドレストをシートバックに対して摩擦により保持する力を作用させることができる。
【0010】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、各前記摺動部材が、前記ベース部材にシート幅方向の外側から内側に巻き掛けられて、前記ベース部材に形成された開口から前記ヘッドレストの後部に結合される乗物用シートである。
【0011】
第3の発明によれば、各摺動部材をベース部材の開口からヘッドレストの後部に結合することで、各摺動部材のベース部材からの後方への張り出しを抑えてこれらをヘッドレストの後部に適切に結合することが可能となる。その結果、ヘッドレストの高さ調節機構の更なる薄型化を図ることができる。
【0012】
本発明の第4の発明は、上記第3の発明において、各前記摺動部材が、前記ベース部材に形成された前記開口において、面ファスナにより前記ヘッドレストの後部に結合される乗物用シートである。
【0013】
第4の発明によれば、各摺動部材を面ファスナによりヘッドレストの後部に広く簡便に着脱できるように結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る乗物用シートの構成を表す斜視図である。
図2】ヘッドレストの分解斜視図である。
図3図2を後方から見た分解斜視図である。
図4図3の一部を組み付けた分解斜視図である。
図5図4の各摺動部材をヘッドレストの後部に結合した分解斜視図である。
図6図1の正面図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
《乗物用シートの概略構成》
始めに、本発明の第1の実施形態に係る乗物用シート(シート1)の構成について、図1図7を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、後述するシート1の左右方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、又は参照図に該当する符号がない場合には、図1図7のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るシート1は、航空機に搭載される航空機シートとして構成される。シート1は、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となる不図示のシートクッションと、頭凭れ部となるヘッドレスト3と、を備える。シートバック2は、その上部前面にヘッドレスト3が組み込まれる、いわゆるハイバックタイプの構成とされる。
【0018】
具体的には、シートバック2は、その骨格を成す金属製のシートバックフレーム2Fと、クッション部を成す発泡ウレタン製のシートバックパッド2Pと、を有する。また、シートバック2は、その表面全体を覆うファブリック製面状のシートバックカバー2Cを有する。
【0019】
図2に示すように、シートバックフレーム2Fは、シートバック2の外周縁部に沿って延びる正面視縦長な枠形状に組まれた本体フレームF1と、本体フレームF1の枠内部に張られた面状のパネルフレームF2と、を有する。図1に示すように、シートバックパッド2Pは、シートバックフレーム2Fの前部に組み付けられて、シートバックフレーム2Fによりシート後方から広く面状に支持された状態に設けられる。
【0020】
シートバックカバー2Cは、シートバック2の表面形状に合わせてカットされた複数枚のカバーピースが1枚の袋形状に縫製された構成とされる。シートバックカバー2Cは、シートバックパッド2Pをシートバックフレーム2Fに組み付けた後、これらにシート上方から被せられてその所々の箇所が不図示の面ファスナによりシートバックパッド2Pやシートバックフレーム2Fに貼着されている。それにより、シートバックカバー2Cは、シートバック2の表面全体を覆うと共に、シートバックパッド2Pをシートバックフレーム2Fに位置固定した状態に保持する。
【0021】
シートバック2は、上述したシートバックパッド2Pがクッション厚の薄い平坦な矩形板形状とされていることで、全体がシート前後方向に薄型な構成とされている。それにより、シート1の前後間隔であるシートピッチを小さく抑えても、後席乗員の足元スペースを広く確保できるようになっている。
【0022】
ヘッドレスト3は、シートバック2の上部前面に、シートバック2と一体感のある面一状の外面を成すように組み込まれている。具体的には、ヘッドレスト3は、シートバック2の上部前面のシートバックパッド2Pが設けられない空き領域に組み込まれることで、シートバック2と面一状の一体感のある外面を成す形に設けられている。
【0023】
図2に示すように、ヘッドレスト3は、シートバックフレーム2Fにシート前方から組み付けられて支持されている。具体的には、ヘッドレスト3は、シートバックフレーム2FのパネルフレームF2の上端中央部に、上下方向に摺動可能なように組み付けられている。それにより、ヘッドレスト3は、使用者により手で押し動かされる操作によって、シートバック2に対する設置位置を上下方向に調節することができるようになっている。
【0024】
詳しくは、ヘッドレスト3は、そのシートバック2に対する取付構造が、高さ調節が可能な機能を備えつつも、シートバック2との間のシート前後方向の厚みが薄く抑えられる構成とされている。それにより、ヘッドレスト3は、そのシートバック2からのシート前方への張り出しが小さく抑えられて、シートバック2と互いに一体感のある薄型なシート構造を成している。
【0025】
《ヘッドレスト3》
以下、ヘッドレスト3の各部の具体的な構成について、詳細に説明する。図2図3に示すように、ヘッドレスト3は、樹脂製のベースプレート3Bと、金属製の支持プレート3Sと、クッション部を成すクッション体3Cと、を有する。
【0026】
また、ヘッドレスト3は、支持プレート3Sに通された帯状の雌面ファスナ3Mと、支持プレート3Sの後面に結合された矩形面状の雄面ファスナ3Nと、を有する。ヘッドレスト3は、その構成部材がそれぞれ左右対称な形に形成されている。ここで、ベースプレート3Bが、本発明の「ベース部材」に相当する。また、雌面ファスナ3Mと雄面ファスナ3Nとの組み合わせが、本発明の「面ファスナ」に相当する。
【0027】
ベースプレート3Bは、正面視矩形状の1枚の平板状部材から成る。ベースプレート3Bの中央部には、正面視矩形状に貫通する開口B1が形成されている。また、ベースプレート3Bの四隅には、シート幅方向の外側に突出する矩形状の規制部B2が形成されている。ベースプレート3Bは、シートバックフレーム2FのパネルフレームF2に対して、シート前方から重ね合わされるようにセットされて、4つのクリップCLにより一体的に締結されている。
【0028】
4つのクリップCLは、ベースプレート3Bの開口B1の周囲4箇所の位置にあけられたクリップ通し孔B3にシート前方から通される。そして、4つのクリップCLは、パネルフレームF2の対応する4箇所の位置にあけられた締結孔F4にそれぞれシート前方から差し込まれることで、パネルフレームF2に一体的に締結される。
【0029】
パネルフレームF2に形成される4つの締結孔F4は、パネルフレームF2の上端中央部にあけられた正面視矩形状の貫通孔F3の周囲4箇所の位置にあけられている。上記締結により、ベースプレート3Bは、その中央部にあけられた開口B1が、パネルフレームF2の上端中央部にあけられた貫通孔F3とシート前後方向に向かい合う状態に組み付けられる。ベースプレート3Bの開口B1は、パネルフレームF2の貫通孔F3よりも僅かに大きい略同一の孔形状とされ、正面視で貫通孔F3が完全に重なるように向かい合って配置されるようになっている。
【0030】
支持プレート3Sは、ヘッドレスト3の正面視の形状と合致する正面視半月状の1枚の平板状部材から成る。支持プレート3Sの左右2箇所には、縦長なスリット形状に貫通するファスナ通し孔S1が形成されている。支持プレート3Sには、その左右のファスナ通し孔S1に、帯状の雌面ファスナ3Mの左右の帯片である各ファスナ片M1がシート前方からそれぞれ通される。それにより、支持プレート3Sには、雌面ファスナ3Mの各ファスナ片M1が左右のファスナ通し孔S1からシート後方にそれぞれ引き出された状態として、雌面ファスナ3Mが係合される。
【0031】
雌面ファスナ3Mは、上記係合された後、その支持プレート3Sの各ファスナ通し孔S1の間の前面に掛かる中央の帯片が、不図示のビスにより支持プレート3Sの前面に締結されて固定される。図3に示すように、雌面ファスナ3Mは、その各ファスナ通し孔S1からシート後方に引き出される各ファスナ片M1の互いに対向する内側面に、ループ状の起毛が無数に密集して形成された構成とされる。雌面ファスナ3Mは、各ファスナ片M1の外側面には、ループ状の起毛が形成されていない構成とされる。
【0032】
支持プレート3Sの後面中央部には、矩形面状の雄面ファスナ3Nが一体的に結合されている。雄面ファスナ3Nは、雌面ファスナ3Mの各ファスナ片M1が通される左右のファスナ通し孔S1の間の位置に設けられている。雄面ファスナ3Nは、その後面に、フック状の起毛が無数に密集して形成された構成とされる。それにより、雄面ファスナ3Nは、そのフック状の起毛が形成された後面に、雌面ファスナ3Mの各ファスナ片M1のループ状の起毛が形成された内側面をそれぞれ押し付けることにより、各ファスナ片M1を着脱可能に結合することができるようになっている。
【0033】
図2図3に示すように、クッション体3Cは、支持プレート3Sと正面視の形状が合致する正面視半月状の平板状部材から成る。クッション体3Cは、発泡ウレタン製のパッド材にファブリック製のカバーが被せられた複合体から成る。
【0034】
クッション体3Cは、図4に示すように、支持プレート3Sの前面にセットされて支持プレート3Sの後側から不図示のビスで周縁が締結されることにより、支持プレート3Sに一体的に固定される。それにより、クッション体3Cは、支持プレート3Sによりシート後方から広く面状に支持された状態として、支持プレート3Sに一体的に組み付けられる。
【0035】
上述したクッション体3Cと一体に組み付けられる支持プレート3Sは、次のようにベースプレート3Bに組み付けられる。すなわち、先ず、図4に示すように、クッション体3Cが組み付けられた支持プレート3Sの後面にベースプレート3Bをセットする。具体的には、ベースプレート3Bを各ファスナ片M1の間に通して、各ファスナ片M1をベースプレート3Bの左右各側の上下の規制部B2の間の側縁B4にそれぞれあてがえた状態にセットする。
【0036】
次に、図5に示すように、各ファスナ片M1をそれぞれシート幅方向の内側に引き込んで、それらのループ状の起毛が形成された内側面を、ベースプレート3Bの開口B1から露出する雄面ファスナ3Nのフック状の起毛が形成された後面に押し付ける。その際、各ファスナ片M1を、それぞれベースプレート3Bの各側の側縁B4に目一杯引き付けるようにシート幅方向の内側に引き込んで、雄面ファスナ3Nに押し付けるようにする。
【0037】
それにより、各ファスナ片M1が、雄面ファスナ3Nとの結合により、ベースプレート3Bを支持プレート3Sとの間に抱きかかえた状態に固定される。詳しくは、各ファスナ片M1が、ベースプレート3Bの各側縁B4に対し、ベースプレート3Bをシート幅方向に挟み込むようにテンションを掛けた状態として、ベースプレート3Bを支持プレート3Sとの間に抱きかかえた状態に固定される。
【0038】
それにより、各ファスナ片M1が、ベースプレート3Bの各側縁B4と後面とに締め付けられた状態となり、これらに締め付けのテンションによる摩擦力を作用させた状態として係合される。その結果、ヘッドレスト3は、そのクッション体3C及び支持プレート3Sが、ベースプレート3Bに対して、上記の摩擦力により自由状態では定位置にて保持されるようになっている。また、ヘッドレスト3は、使用者がクッション体3C及び支持プレート3Sをベースプレート3Bに対して上記の摩擦力に抗して上下に動かすことにより、各ファスナ片M1をベースプレート3Bの各側縁B4に沿って摺動させる態様で位置調節できるようになっている。
【0039】
上記のように各ファスナ片M1がベースプレート3Bに対してシート幅方向に挟み込むテンションを掛けられるようになっている理由は、次の通りである。すなわち、図3に示すように、各ファスナ片M1が通される支持プレート3Sの各ファスナ通し孔S1の間の幅は、ベースプレート3Bの各側縁B4の間の幅よりも僅かに小さく設定されている。それにより、各ファスナ片M1をベースプレート3Bの各側縁B4へと通してシート幅方向の内側へと引き込むことで、ベースプレート3Bの各側縁B4に対してシート幅方向に挟み込むテンションを掛けることができる。
【0040】
上記組み付けの後、図5に示すように、次に、ベースプレート3Bの各クリップ通し孔B3に予め通しておいた各クリップCLを、シートバックフレーム2FのパネルフレームF2の対応する各締結孔F4に差し込んで締結する。それにより、ベースプレート3Bにユニット化されたヘッドレスト3を、シートバック2の上部前面に組み込んだ状態にセットすることができる(図6参照)。
【0041】
上記組み付けにより、図7に示すように、ヘッドレスト3は、上述した各ファスナ片M1がベースプレート3Bの後面とパネルフレームF2の前面との間に押し挟まれた状態にセットされる。それにより、各ファスナ片M1が、ベースプレート3BとパネルフレームF2とに対して、上記締結に伴う摩擦力をこれらの間で作用させた状態に係合される。その結果、ヘッドレスト3は、クッション体3C及び支持プレート3Sが、ベースプレート3B及びパネルフレームF2に対して、上記摩擦力によっても定位置で保持されるようになっている。ここで、各ファスナ片M1が、それぞれ本発明の「摺動部材」に相当する。
【0042】
上記ヘッドレスト3は、使用者がクッション体3C及び支持プレート3Sをベースプレート3Bに対して上記の摩擦力に抗して上下に動かすことにより、各ファスナ片M1をベースプレート3Bの各側縁B4に沿って摺動させながら位置調節できるようになっている。図5に示すように、各ファスナ片M1は、具体的には、これらがベースプレート3Bの左右各側の上下の規制部B2と当接する摺動域Aの間で、ベースプレート3Bに対して上下に摺動できるようになっている。したがって、この摺動域Aの間で、ヘッドレスト3の高さ調整を行うことが可能とされる。
【0043】
図4に示すように、各ファスナ片M1を結合させる雄面ファスナ3Nは、ベースプレート3Bの開口B1よりもひとまわり小さな形とされている。雄面ファスナ3Nは、ベースプレート3Bが支持プレート3Sに組み付けられることで、ベースプレート3Bの開口B1内に収まる位置にセットされて、開口B1からシート後方に露出する。したがって、雄面ファスナ3Nがベースプレート3Bの後面に設けられる構成と比べて、各ファスナ片M1が雄面ファスナ3Nに結合された際のシート後方への張り出しを小さく抑えることができる。
【0044】
また、図5及び図7に示すように、各ファスナ片M1の雄面ファスナ3Nに結合される部分は、仮に、雄面ファスナ3Nの厚みによってベースプレート3Bからシート後方に張り出すことがあっても、ベースプレート3Bの開口B1と向かい合うパネルフレームF2の貫通孔F3内に入り込むようになっている。したがって、各ファスナ片M1がパネルフレームF2と強干渉することが抑えられ、各ファスナ片M1をベースプレート3BとパネルフレームF2との間でスムーズに上下に摺動させることができる。
【0045】
図5を参照して、各ファスナ片M1は、それらの雄面ファスナ3Nと結合される内側面の裏側となる外側面には、ループ状の起毛がない構成とされる。したがって、各ファスナ片M1がパネルフレームF2に沿って摺動する際に、それらのループ状の起毛が金属製のパネルフレームF2に擦られるような擦れ音が生じない。各ファスナ片M1は、それらの内側面に形成されたループ状の起毛がベースプレート3Bには当てられる。しかし、ベースプレート3Bが樹脂製であることから、各ファスナ片M1のループ状の起毛とベースプレート3Bとの当たりが樹脂同士の当たりとなり、金属との擦れ音は生じない。
【0046】
以上をまとめると、本実施形態に係るシート1は次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0047】
すなわち、乗物用シート(1)は、シートバック(2)の骨格を成すシートバックフレーム(2F)と、シートバックフレーム(2F)に対して上下方向に摺動可能なように組み付けられるヘッドレスト(3)と、を備える。乗物用シート(1)は、シートバックフレーム(2F)の前部に固定される面状のベース部材(3B)と、ヘッドレスト(3)の後部に設けられてベース部材(3B)とシートバックフレーム(2F)との間に前後方向に挟まれることでこれらの間で上下方向に摺動可能となるような摩擦による保持力が掛けられる摺動部材(M1)と、ベース部材(3B)に設けられて摺動部材(M1)との上下方向の当接により摺動部材(M1)の摺動域(A)を規制する規制部(B2)と、を更に有する。
【0048】
上記構成によれば、ヘッドレスト(3)の後部に設けられる摺動部材(M1)をシートバックフレーム(2F)とその前部に固定される面状のベース部材(3B)との間に挟むだけの簡素かつ前後方向の厚みの増大を伴いにくい薄型な構成により、ヘッドレスト(3)の高さ調節機構を具現化することができる。
【0049】
また、摺動部材(M1)が、ヘッドレスト(3)の後部のシート幅方向の2箇所に設けられ、それぞれがベース部材(3B)に対して互いに相反するシート幅方向のテンションを作用させるように巻き掛けられる。上記構成によれば、各摺動部材(M1)により、ヘッドレスト(3)をシートバック(2)に対してシート幅方向及び前後方向にガタ詰めした状態に組み付けることができる。また、各摺動部材(M1)からベース部材(3B)に掛けられるシート幅方向のテンションによっても、ヘッドレスト(3)をシートバック(2)に対して摩擦により保持する力を作用させることができる。
【0050】
また、各摺動部材(M1)が、ベース部材(3B)にシート幅方向の外側から内側に巻き掛けられて、ベース部材(3B)に形成された開口(B1)からヘッドレスト(3)の後部に結合される。上記のように、各摺動部材(M1)をベース部材(3B)の開口(B1)からヘッドレスト(3)の後部に結合することで、各摺動部材(M1)のベース部材(3B)からの後方への張り出しを抑えてこれらをヘッドレスト(3)の後部に適切に結合することが可能となる。その結果、ヘッドレスト(3)の高さ調節機構の更なる薄型化を図ることができる。
【0051】
また、各摺動部材(M1)が、ベース部材(3B)に形成された開口(B1)において、面ファスナ(3M,3N)によりヘッドレスト(3)の後部に結合される。上記構成によれば、各摺動部材(M1)を面ファスナ(3M,3N)によりヘッドレスト(3)の後部に広く簡便に着脱できるように結合することができる。
【0052】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
【0053】
1.本発明の乗物用シートは、航空機シートの他、自動車や鉄道等の車両に搭載されるシートや船舶等の航空機以外の乗物に搭載されるシートにも適用可能である。
【0054】
2.摺動部材は、雌面ファスナのファスナ片から成るものの他、ヘッドレストの後部に設けられてベース部材とシートバックフレームとの間に前後方向に挟まれることでこれらの間で上下方向に摺動可能となるような摩擦による保持力が掛けられる部材から成るものであれば、どのような部材から成るものであってもよい。例えば、摺動部材は、帯材や板材等の面状の部材から成るものの他、ワイヤや紐等の線状の部材から成るものであっても良い。摺動部材が雄面ファスナから成るものであっても良い。
【0055】
また、摺動部材は、ヘッドレストの後部のシート幅方向の2箇所に設けられてベース部材にシート幅方向のテンションを作用させるものの他、単に、シート幅方向の1箇所に設けられて、ベース部材とシートバックフレームとの間に前後方向に挟まれるだけの構成であっても良い。また、摺動部材は、ヘッドレストの後部から延びてベース部材を包むように巻き掛けられてヘッドレストの後部に結合される構成であっても良い。
【0056】
また、摺動部材は、ヘッドレストの後部のシート幅方向の2箇所に設けられて、それぞれがベース部材の中央にあけられた開口を通ってシート幅方向の内側から外側へと巻き掛けられることで、ベース部材に対し互いに相反するシート幅方向のテンションを作用させる構成とされていても良い。また、摺動部材は、ヘッドレストの後部に結合されるものの他、ベース部材の後部に結合されるものであっても良い。
【0057】
3.ベース部材は、シートバックフレームの一部を折り曲げた、シートバックフレームの構成部材から成るものであっても良い。また、ベース部材は、シートバックフレームに溶接やカシメで接合されるものであっても良い。
【0058】
4.規制部は、ベース部材からシート幅方向に張り出すものの他、ベース部材に設けられて摺動部材との上下方向の当接により摺動部材の摺動域を規制するものであれば、どのような構成から成るものであっても良い。例えば、規制部は、ベース部材から前後方向に張り出すものや、クリップのようにベース部材に取り付けられてベース部材から前後方向又はシート幅方向に張り出すものであっても良い。
【0059】
5.摺動部材をヘッドレストの後部やベース部材の後部に結合する構造は、面ファスナを用いた着脱可能な結合構造の他、フックを用いた着脱可能な引掛け構造や、孔にくぐらせて止めるボタンやホック(スナップボタン)を用いた着脱可能な結合構造から成るものであっても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 シート(乗物用シート)
2 シートバック
2F シートバックフレーム
F1 本体フレーム
F2 パネルフレーム
F3 貫通孔
F4 締結孔
2P シートバックパッド
2C シートバックカバー
3 ヘッドレスト
3B ベースプレート(ベース部材)
B1 開口
B2 規制部
B3 クリップ通し孔
B4 側縁
3S 支持プレート
S1 ファスナ通し孔
3C クッション体
3M 雌面ファスナ(面ファスナ)
M1 ファスナ片(摺動部材)
3N 雄面ファスナ(面ファスナ)
CL クリップ
A 摺動域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7