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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176211
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】送信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H03M 7/30 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H03M7/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088375
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 哲平
【テーマコード(参考)】
5J064
【Fターム(参考)】
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC09
5J064BC24
5J064BD02
(57)【要約】
【課題】 データ圧縮に伴う遅延時間を低減し、高速通信システムで許容されるシステム遅延時間の範囲内とすることができる送信装置及び通信システムを提供する。
【解決手段】 光伝送路7を用いてデジタルデータを圧縮して伝送する送信装置であって、タイミング生成部10が、チップ信号を特定の数値で逓倍してタイミング信号を生成し、遅延調整部12が、入力データとイネーブル信号をタイミング信号の周期分遅延調整させ、圧縮係数算出部11が、タイミング信号に従って圧縮係数の算出を行い、振幅圧縮部13が、算出された圧縮係数によって遅延調整されたデータを圧縮し、圧縮されたデータと、遅延調整されたイネーブル信号と、圧縮係数とを出力する送信装置及び当該送信装置を備えた通信システムとしている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路を用いてデジタルデータを圧縮して伝送する送信装置であって、
光通信の基本周期信号であるチップ信号を特定の数値で逓倍し、タイミング信号を生成するタイミング生成部と、
入力されたデータとイネーブル信号を前記タイミング信号の周期分、遅延調整させる遅延調整部と、
前記タイミング信号の周期を算出周期として、前記圧縮における圧縮係数の算出を行う圧縮係数算出部と、
前記算出された圧縮係数により前記遅延調整されたデータを圧縮し、圧縮されたデータ、前記遅延調整されたイネーブル信号及び前記圧縮係数を出力する振幅圧縮部と、を備えることを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記タイミング生成部は、前記光伝送路の伝送容量に応じて、圧縮係数の算出周期が、許容されるシステム遅延の範囲内となるようチップ信号の逓倍の特定の数値を設定することを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の送信装置と、
圧縮されたデータ、遅延調整されたイネーブル信号及び圧縮係数を入力し、前記圧縮されたデータを、前記圧縮係数を用いて展開し、展開したデータと前記イネーブル信号を出力する振幅展開部を備える受信装置と、を有することを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局-子局間で通信を行う通信システムにおける送信装置に係り、特に、伝送時のデータ圧縮に伴う遅延時間を低減することができる送信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:図5
従来、無線通信システムにおいて、基地局側に設けられた親局と移動局側に設けられた子局との間で光伝送を用いて送受信を行って、基地局と移動局との通信を中継する通信システム(光張出し無線通信システム)があった。
このような通信システムとしては、送信側の装置(親局装置又は子局装置)にデータ圧縮回路を設けてデータを圧縮して伝送し、受信側の装置(子局装置又は親局装置)にデータ展開回路を設けて受信した圧縮データを展開するものがある。
【0003】
従来のデータ圧縮回路回路及びデータ展開回路について図5を用いて説明する。図5は、従来のデータ圧縮回路及びデータ展開回路の概略構成を示す説明図である。
親局装置及び子局装置は、いずれも、データ圧縮回路とデータ展開回路の両方を備えており、送信側(送信装置)、受信側(受信装置)のいずれとしても機能する。
【0004】
図5に示すように、従来のデータ圧縮回路は、圧縮係数算出部31と、遅延調整部32と、振幅圧縮部33とを備え、光通信の基本周期信号であるチップ信号を基に動作している。
【0005】
圧縮係数算出部31は、チップ信号の周期に合わせて、入力データから圧縮係数を算出する。
遅延調整部32は、圧縮係数算出部31における処理遅延時間分、入力データ及びイネーブル信号を遅延させる。
振幅圧縮部33は、遅延させた入力データについて、圧縮係数とイネーブル信号を用いてデータ圧縮を行う。
そして、送信側の装置からイネーブル信号、圧縮された出力データ、圧縮係数が光伝送によって送信される。
【0006】
データ展開回路は、振幅展開部41を備えている。
受信側の装置において、振幅展開部41は、光伝送によって受信したイネーブル信号、圧縮された入力データ及び圧縮係数を用いてデータ展開を行う。
【0007】
[従来の通信システムにおけるデータ圧縮/展開のタイミング:図6]
従来のデータ圧縮/展開のタイミングについて図6を用いて説明する。図6は、従来の通信システムにおけるデータ圧縮/展開のタイミングを示すタイミングチャートであり、上側はデータ圧縮回路におけるタイミング、下側はデータ展開回路におけるタイミングを示す。
【0008】
図6の上側に示すように、従来の送信側の装置(送信装置)では、データ圧縮回路が、イネーブル信号のタイミングで入力される入力データの振幅に応じて圧縮係数を算出し、チップ信号のタイミングで圧縮係数を出力する。
そして、振幅圧縮部33が、遅延された入力データを、対応する圧縮係数で圧縮して出力データとイネーブル信号及び圧縮係数を出力する。
【0009】
図6の例では、チップ信号の1周期(1サイクル)はイネーブル信号のN周期(ここでは6周期、6サイクル)分に相当し、6個の入力データ(入力(0)~入力(5))が入力される。
そして、圧縮係数算出部31が、1チップ信号周期の間に入力された6個の入力信号の最大振幅を検出して、当該最大値に基づいて圧縮係数(0)(係数(0))を算出し、振幅圧縮部33が、次のチップ信号のタイミングで入力データを順次圧縮して出力(0)~出力(5)として出力する。その際、イネーブル信号及び係数(0)も同時に出力される。
つまり、従来の送信装置において、データの入力から圧縮データの出力までの遅延量(遅延時間)は、チップ信号の周期と一致し、図5の例では、イネーブル信号の6周期分となっている。
【0010】
また、図6の下側に示すように、受信側のデータ展開回路の振幅展開部41は、圧縮された入力データと、対応する圧縮係数とが入力されると、イネーブル信号のタイミングに合わせて、圧縮係数に基づいて入力データを展開して出力する。
図6の例では、入力(0)~入力(5)の入力データについては係数(0)で展開し、入力(6)~入力(11)の入力データについては係数(1)で展開している。
【0011】
[通信の高速化]
近年、通信システムは、5G(5 Generation)が導入されて高速化が進んでいる。
それに伴い、システムで許容される処理遅延時間(システム遅延時間)が短くなっている。そのため、送信装置におけるデータ圧縮に伴う遅延量は、既存の4Gシステムでは問題にならない量であったとしても、5Gシステムでは処理を停滞させる原因となる恐れがある。
【0012】
[関連技術]
尚、光伝送を用いた伝送装置に関する従来技術としては、特開2014-187450号公報「光伝送装置」(特許文献1)、国際公開第2016/067813号「通信装置および通信システム」がある。
特許文献1には、多周波数共用で光伝送する場合に、信号の規格を満たしつつ、光伝送容量を低減できる光伝送装置が記載されている。
また、特許文献2には、分割されたデジタル信号の絶対値の最大値を用いて圧縮係数を検出し、当該圧縮係数でデジタル信号の振幅を圧縮して、圧縮された信号と圧縮係数とを送信する通信装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2014-187450号公報
【特許文献2】国際公開第2016/067813号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、従来の送信装置及び通信システムでは、データ圧縮に伴う遅延量が高速通信システムの処理に影響を与える恐れがあるという問題点があった。
【0015】
尚、特許文献1及び特許文献2には、チップ信号を逓倍したタイミング信号の周期で圧縮係数を算出することは記載されていない。
【0016】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、データ圧縮に伴う遅延時間を低減し、高速通信システムで許容されるシステム遅延時間の範囲内とすることができる送信装置及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、光伝送路を用いてデジタルデータを圧縮して伝送する送信装置であって、光通信の基本周期信号であるチップ信号を特定の数値で逓倍し、タイミング信号を生成するタイミング生成部と、入力されたデータとイネーブル信号をタイミング信号の周期分、遅延調整させる遅延調整部と、タイミング信号の周期を算出周期として、圧縮における圧縮係数の算出を行う圧縮係数算出部と、算出された圧縮係数により遅延調整されたデータを圧縮し、圧縮されたデータ、遅延調整されたイネーブル信号及び圧縮係数を出力する振幅圧縮部と、を備えることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記送信装置において、タイミング生成部は、光伝送路の伝送容量に応じて、圧縮係数の算出周期が、許容されるシステム遅延の範囲内となるようチップ信号の逓倍の特定の数値を設定することを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、通信システムにおいて、上記送信装置と、圧縮されたデータ、遅延調整されたイネーブル信号及び圧縮係数を入力し、圧縮されたデータを、圧縮係数を用いて展開し、展開したデータとイネーブル信号を出力する振幅展開部を備える受信装置と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光伝送路を用いてデジタルデータを圧縮して伝送する送信装置であって、光通信の基本周期信号であるチップ信号を特定の数値で逓倍し、タイミング信号を生成するタイミング生成部と、入力されたデータとイネーブル信号をタイミング信号の周期分、遅延調整させる遅延調整部と、タイミング信号の周期を算出周期として、圧縮における圧縮係数の算出を行う圧縮係数算出部と、算出された圧縮係数により遅延調整されたデータを圧縮し、圧縮されたデータ、遅延調整されたイネーブル信号及び圧縮係数を出力する振幅圧縮部と、を備える送信装置としているので、圧縮係数をチップ信号の周期に合わせて算出する場合に比べて、短い周期で算出して、圧縮処理に伴う遅延時間を短縮することができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、タイミング生成部は、光伝送路の伝送容量に応じて、圧縮係数の算出周期が、許容されるシステム遅延の範囲内となるようチップ信号の逓倍の特定の数値を設定する上記送信装置としているので、高速通信システムに実装される場合でも、圧縮に伴う遅延時間が処理を停滞させるのを防ぐことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本通信システムの構成例を示す説明図である。
図2】送信処理回路及び受信処理回路の構成を示す説明図である。
図3】実施の形態に係るデータ圧縮回路及びデータ展開回路の概略構成を示す説明図である。
図4】本通信システムにおけるデータ圧縮/展開のタイミングを示すタイミングチャートである。
図5】従来のデータ圧縮回路及びデータ展開回路の概略構成を示す説明図である。
図6】従来の通信システムにおけるデータ圧縮のタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る送信装置(本送信装置)は、光伝送路を用いてデジタルデータを圧縮して伝送する送信装置であって、タイミング生成部が、圧縮における圧縮係数の算出周期を設定するために、光通信の基本周期信号であるチップ信号を特定の数値で逓倍してタイミング信号を生成し、遅延調整部が、入力されたデータとイネーブル信号をタイミング信号の周期分遅延調整させ、圧縮係数算出部が、タイミング信号に従って圧縮係数の算出を行い、振幅圧縮部が、算出された圧縮係数によって遅延調整されたデータを圧縮し、圧縮されたデータと、遅延調整されたイネーブル信号と、圧縮係数とを出力するものであり、圧縮係数の算出周期をチップ信号の周期より短いタイミング信号の周期として、データ圧縮に伴う遅延時間を短縮することができ、遅延時間を、高速通信システムで許容される遅延時間の範囲内とすることができるものである。
【0024】
また、本発明の実施の形態に係る通信システムは、本送信装置と、本送信装置から、圧縮されたデータと、遅延調整されたイネーブル信号と、圧縮係数とを受信して、振幅展開部で、圧縮係数で圧縮されたデータを展開し、展開したデータとイネーブル信号を出力する受信装置とを有するものである。
【0025】
[本通信システムの構成例:図1
本通信システムの構成例について図1を用いて説明する。図1は、本通信システムの構成例を示す説明図である。
図1に示すように、本通信システムは、基地局と移動局との間を光伝送によって中継接続する光張り出し無線通信システムにおいて用いられ、親局50と、子局#1(60-1)~子局#N(60-n)(子局60と称することもある)と、親局50と各子局60とを接続する光伝送路7とを備えている。
【0026】
[親局50]
親局50は、基地局側の装置であり、下り信号処理部51a,51b(下り信号処理部51と称することもある)と、上り信号処理部52a,52b(上り信号処理部52と称することもある)と、パラレル/シリアル(P/S)変換部55と、シリアル/パラレル変換部(S/P)56と、トランシーバ回路57とを備えている。
親局50においては、下り信号処理部51が送信処理回路、上り信号処理部52が受信処理回路に相当している。
【0027】
下り信号処理部51a,51bは、対応する基地局から受信した下り信号の信号処理を行う送信処理回路である。下り信号処理部51a,51bの具体的な構成は後述する。
パラレル/シリアル変換部55は、下り信号処理部51a,51bから並列に入力される信号を直列に変換して、トランシーバ回路57に出力する。
【0028】
トランシーバ回路57は、パラレル/シリアル変換部55からの信号を電気信号から光信号に変換して、宛先となる子局60に対応する光伝送路7に出力する。
また、トランシーバ回路57は、光伝送路7からの光信号を電気信号に変換して、シリアル/パラレル変換部56に出力する。
【0029】
シリアル/パラレル変換部56は、トランシーバ回路57からの直列の信号を並列に変換して、基地局に応じた上り信号処理部52a,52bに出力する。
上り信号処理部52a,52bは、シリアル/パラレル変換部56から入力された上り信号の信号処理を行う受信処理回路であり、処理された上り信号を、対応する基地局に出力する。
光伝送路7は、光信号を伝送する。
【0030】
[子局60]
子局60は、移動局側の装置であり、基本的な構成は親局50と同等となっており、下り信号処理部61a,61b(下り信号処理部61と称することもある)と、上り信号回路62a,62b(上り信号回路62と称することもある)と、シリアル/パラレル(S/P)変換部65と、パラレル/シリアル(P/S)変換部66と、トランシーバ回路67とを備えている。
尚、子局60は、移動局と無線通信を行う無線通信部(図示せず)に接続している。
子局60においては、下り信号処理部61が受信処理回路、上り信号処理部62が送信処理回路となる。
【0031】
子局60の下り信号処理部61は、親局50の上り信号処理部52と同等の構成及び動作となっている。
そこで、親局50の上り信号処理部52と、子局60の下り信号処理部61を一括して、受信処理回路と称するものとする。
【0032】
また、子局60の上り信号処理部62は、親局50の下り信号処理部62と同等の構成及び動作となっている。
そこで、親局50の下り信号処理部62と、子局60の上り信号処理部62を一括して、送信処理回路と称するものとする。
【0033】
つまり、親局50及び子局60は、送信処理回路と受信処理回路の両方を備えており、基地局から移動局への下り通信の際には親局50が送信装置、子局60が受信装置として動作し、移動局から基地局への上り通信の際には、子局60が送信装置、親局50が受信装置として動作するものである。
【0034】
[本通信システムの送信処理回路・受信処理回路の構成]
本通信システムにおける送信処理回路及び受信処理回路の構成について図2を用いて説明する。図2は、送信処理回路及び受信処理回路の構成を示す説明図であり、(a)は送信処理回路、(b)は受信処理回路を示す。
ここで、送信処理回路は、図1に示した親局50の下り信号処理部51a,51b、及び子局60の上り信号処理部62a,62bであり、受信処理回路は、親局50の上り信号処理部52a,52b、及び子局60の下り信号処理部61a,61bである。
【0035】
[送信処理回路:図2(a)]
図2(a)では、親局50の下り信号処理部51aを例として示しているが、下り信号処理部51b、及び子局60の上り信号処理部62a,62bも同様の構成である。
図2(a)に示すように、送信処理回路は、アナログ回路511と、アナログ/デジタル(A/D)変換部512と、デジタル信号処理部513と、圧縮回路514とを備えている。
【0036】
アナログ回路511は、基地局からのアナログ信号を受信する。
A/D変換部512は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。
デジタル信号処理部513は、デジタル信号にデジタル変調等の信号処理を施す。
圧縮回路514は、本システムの特徴部分であり、入力された信号を圧縮する処理を行う。圧縮回路514の具体的な構成及び動作は後述する。
【0037】
[受信処理回路:図2(b)]
図2(b)では、子局60の下り信号処理部61aを例として示しているが、下り信号処理部61b、及び親局50の上り信号処理部52a,52bも同様の構成である。
図2(b)に示すように、受信処理回路は、展開回路614と、デジタル信号処理部613と、デジタル/アナログ(D/A)変換部612と、アナログ回路611とを備えている。尚、
【0038】
展開回路614は、受信した信号を圧縮係数に基づいて展開(伸張)する。
デジタル信号処理部613は、デジタル復調等の信号処理を施す。
D/A変換部612は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。
アナログ回路611は、アナログ信号を子局に接続する無線通信部に出力する。
【0039】
[本通信システムの動作概略]
本通信システムの動作概略について図1,2を用いて説明する。
基地局から移動局への下り通信では、各基地局からの信号は、親局50の対応する下り信号処理部(送信処理回路)51に入力される。
下り信号処理部51では、信号処理及び圧縮処理が施されて、圧縮された信号及び圧縮係数がパラレル/シリアル変換部55に入力される。パラレル/シリアル変換部55において、複数の下り信号処理部51からのパラレル信号がシリアル信号に変換され、トランシーバ回路57で光信号に変換されて、光伝送路7に出力される。
【0040】
子局60では、光伝送路7から受信した光信号がトランシーバ回路67で電気信号に変換され、更にシリアル/パラレル変換部65で複数のパラレル信号に変換され、それぞれ対応する下り信号処理部(受信処理回路)61に入力される。
下り信号処理部61では、圧縮された信号が対応する圧縮係数で展開され、信号処理が施されて、無線通信部に出力され、移動局に無線で送信される。
このようにして、下り通信が行われる。
また、移動局から基地局への上り通信は、通信の向きが逆になることを除き、上り通信と同様であるため、説明は省略する。
【0041】
[実施の形態に係るデータ圧縮回路及びデータ展開回路:図3
次に、本通信システムにおけるデータ圧縮回路及びデータ展開回路について図3を用いて説明する。図3は、実施の形態に係るデータ圧縮回路及びデータ展開回路の概略構成を示す説明図である。尚、データ圧縮回路は、図2(a)の送信処理回路に示した圧縮回路514に相当し、データ展開回路は、図2(b)の受信処理回路に示した展開回路614に相当している。
【0042】
データ圧縮回路は、図3に示すように、タイミング生成部10と、圧縮係数算出部11と、遅延調整部12と、振幅圧縮部13とを備えている。
タイミング生成部10は、本送信装置の特徴部分であり、光通信の基本となるチップ信号を入力して、予め設定された特定の数値で逓倍し、タイミング信号として出力する。
タイミング信号は、チップ信号の周期より短い周期であり、圧縮係数を算出するタイミングを設定するものである。
尚、タイミング生成部10での逓倍の数値は、任意に設定でき、更に設定後に変更可能としている。
【0043】
ここで、タイミング生成部10における逓倍数は、圧縮処理に伴う遅延時間が、本送信装置が実装される高速通信システムで許容される遅延時間の範囲内となるように設定される。
つまり、光伝送路7の伝送容量が大きく、許容される遅延時間が長い場合には逓倍数を小さくし、伝送容量が小さい場合には逓倍数を大きくして、遅延時間を短縮するように設定するものである。逓倍数は、設置される本通信システムの通信環境に応じてシミュレーション又は現場での実測によって決定される。
【0044】
これにより、本送信装置は、実装される通信システムに応じて要求される遅延時間を実現でき、高速通信システムに実装される場合でも、圧縮に伴う遅延時間が処理を停滞させることはない。
【0045】
圧縮係数算出部11は、タイミング信号の周期に合わせて、入力データから圧縮係数を算出する。これにより、本通信システムでは、チップ信号の周期で算出を行っていた従来に比べて、短い周期で圧縮係数を算出できるものである。
算出方法は従来と同様であり、タイミング信号の周期内に入力された入力データの最大振幅の値に基づいて圧縮係数を算出する。
【0046】
遅延調整部12は、タイミング生成部10からのタイミング信号に基づいて、入力データ及びイネーブル信号をタイミング信号の周期に相当する時間だけ遅延させる。つまり、遅延調整部12は、圧縮係数算出部11における圧縮係数算出の処理時間分、入力データ及びイネーブル信号を遅延させる。
【0047】
振幅圧縮部13は、遅延調整部12から入力された入力データの振幅を、圧縮係数算出部11から入力された圧縮係数で圧縮して、イネーブル信号、圧縮されたデータ(出力データ)、圧縮係数を図2に示したパラレル/シリアル変換部55に出力する。
イネーブル信号、圧縮されたデータ(出力データ)、圧縮係数は、光伝送路7により受信装置に送信される。
【0048】
受信装置におけるデータ展開回路は、従来と同様の構成及び動作であり、振幅展開部21を備えている。
振幅展開部21は、光伝送路7から受信した圧縮された入力データについて、イネーブル信号及び圧縮係数を用いてデータ展開を行う。
【0049】
[本通信システムにおけるデータ圧縮/展開のタイミング:図4]
次に、本通信システムにおけるデータ圧縮/展開のタイミングについて図4を用いて説明する。図4は、本通信システムにおけるデータ圧縮/展開のタイミングを示すタイミングチャートであり、上側はデータ圧縮回路におけるタイミング、下側はデータ展開回路におけるタイミングを示す。
【0050】
図4の上側に示すように、本送信装置では、従来と同様のイネーブル信号、入力データ、チップ信号が入力される。
そして、タイミング生成部10が、チップ信号を予め設定された数値で逓倍してタイミング信号を生成し、圧縮係数算出部11が、当該タイミング信号に基づいて圧縮係数を算出する。ここでは、逓倍数を2としている。
これにより、図4に示すように、タイミング信号の周期はチップ信号の1/2となり、イネーブル信号の3周期(3サイクル)分となっている。
【0051】
図4の例では、タイミング信号と共にイネーブル信号及び入力データ(入力(0)~入力(2))が入力されると、圧縮係数算出部11では、当該入力データの最大振幅に基づいて圧縮係数(0)(係数(0))を算出し、次のタイミング信号が入力されると、入力データ(入力(3)~入力(5))の圧縮係数(係数(1))を算出する。つまり、圧縮係数の算出周期はタイミング信号の周期となっている。
【0052】
遅延調整部12では、入力データ(入力(0)~入力(2))を、タイミング信号の周期に相当する時間だけ遅延させて、遅延されたイネーブル信号及び入力データを振幅圧縮部13に出力する。つまり、本送信装置では、入力データの遅延時間はタイミング信号の周期分であり、チップ信号の周期の1/2である。
図6に示した従来のタイミングチャートでは、遅延時間はイネーブル信号のN周期分(6周期分)であったが、図4の遅延時間は、イネーブル信号のN/2周期分(3周期分)となっている。尚、図4に示した「N」は、チップ信号の周期がイネーブル信号の周期の何倍であるかを示す数値であり、ここではN=6である。
【0053】
振幅圧縮部13では、遅延された入力データ(入力(0)~入力(2))を、対応する圧縮係数(0)(係数(0))で圧縮し、圧縮されたデータと、遅延されたイネーブル信号及び係数(0)を出力する。
以下同様に、入力データ(入力(3)~入力(5))は係数(1)で圧縮し、入力データ(入力(6)~入力(8))は係数(2)で圧縮している。
【0054】
このように、本送信装置では、圧縮係数の算出周期を、チップ信号を逓倍したタイミング信号の周期とすることで、算出周期及び入力データの遅延時間を短縮することができ、遅延時間を、高速通信システムで許容されるシステム遅延時間内とすることができるものである。
【0055】
また、図4の下側に示すように、受信装置におけるデータ展開回路の振幅展開部21では、従来と同様に、遅延されたイネーブル信号と、圧縮された入力データ及びそれに対応する圧縮係数が入力されると、入力データを対応する圧縮係数で展開して出力する。
図4の例では、入力データ(入力(0)~入力(2))は係数(0)で展開し、入力データ(入力(3)~入力(5))は係数(1)で展開している。
【0056】
[実施の形態の効果]
本送信装置によれば、光伝送路7を用いてデジタルデータを圧縮して伝送する送信装置であって、タイミング生成部10が、チップ信号を特定の数値で逓倍してタイミング信号を生成し、遅延調整部12が、入力データとイネーブル信号をタイミング信号の周期分遅延調整させ、圧縮係数算出部11が、タイミング信号に従って圧縮係数の算出を行い、振幅圧縮部13が、算出された圧縮係数によって遅延調整されたデータを圧縮し、圧縮されたデータと、遅延調整されたイネーブル信号と、圧縮係数とを出力するようにしており、圧縮係数の算出周期をチップ信号の周期より短いタイミング信号の周期として、データ圧縮に伴う遅延時間を短縮することができ、遅延時間を高速通信システムで許容される遅延時間の範囲内として、処理を停滞させない効果がある。
【0057】
また、本通信システムによれば、本送信装置を備えているので、送信側におけるデータ圧縮に伴う遅延時間を短縮でき、遅延時間を高速通信システムで許容される遅延時間の範囲内として、処理を停滞させない効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、データ圧縮に伴う遅延時間を低減し、高速通信システムで許容されるシステム遅延時間の範囲内とすることができる送信装置及び通信システムに適している。
【符号の説明】
【0059】
7…光伝送路、 10…タイミング生成部、 11,31…圧縮係数算出部、 12,32…遅延調整部、 13,33…振幅圧縮部、 21,41…振幅展開部、 50…親局、 51,61…下り信号処理部、 52,62…上り信号処理部、 55,66…パラレル/シリアル変換部、 56,65…シリアル/パラレル変換部、 57,67…トランシーバ回路、 60…子局、 511,611…アナログ回路、 512…A/D変換部、 513,613…デジタル信号処理部、 513…圧縮回路、 612…D/A変換部、 614…展開回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6