(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176214
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ガス回収システム及び電極膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/32 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B01D53/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088378
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 翔太
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 重彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 篤人
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 裕規
(72)【発明者】
【氏名】松田 信彦
(57)【要約】
【課題】電気化学セルを構成する電極膜の反りを抑制することで、回収対象ガスの回収能力の低下を抑制可能なガス回収システム及びガス回収システムに用いられる電極膜の製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収システム1は、電気化学セル101と、ガス流路102とを含んでおり、電気化学反応によって混合ガスから回収対象ガスを回収する。電気化学セル101は、回収対象ガスを吸着させる吸着材を含む作用極104と、作用極104と電子の授受を行う対極106とを備える。ガス流路102は、積層して設けられた複数の電気化学セル101の間に形成され、混合ガスが流れる流路である。作用極104および対極106の少なくとも一方は、電極膜200によって構成されている。電極膜200は、電気化学セルの大きさよりも小さな複数の領域110を有しており、複数の領域110には、電極膜200の反りを抑制する為の抑制部120が隣接している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応によって混合ガスから回収対象ガスを回収するガス回収システムであって、
前記回収対象ガスを吸着させる吸着材を含む作用極(104)と、前記作用極と電子の授受を行う対極(106)とを備え、前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記吸着材は電子が供給されることに伴って前記回収対象ガスを吸着する電気化学セル(101)と、
積層して設けられた複数の前記電気化学セルの間に形成され、前記混合ガスが流れるガス流路(102)と、を含み、
前記作用極および前記対極の少なくとも一方は、電極膜(200)によって構成されており、
前記電極膜は、前記電気化学セルの大きさよりも小さな複数の領域(110)を有し、
複数の前記領域には、前記電極膜の反りを抑制する為の抑制部(120、120a、120b)が隣接しているガス回収システム。
【請求項2】
前記抑制部(120)は、前記電極膜を複数の前記領域に分割する分割線(120a)によって構成されている請求項1に記載のガス回収システム。
【請求項3】
前記抑制部(120)は、複数の前記領域の膜厚よりも膜厚の小さな区画線(120b)によって構成されている請求項1に記載のガス回収システム。
【請求項4】
前記抑制部は、前記ガス流路を流れる前記混合ガスの流れ方向に沿って伸びている請求項1ないし3の何れか1つに記載のガス回収システム。
【請求項5】
混合ガスに含まれる回収対象ガスを吸着させる吸着材を含む作用極(104)と、前記作用極と電子の授受を行う対極(106)とを備え、前記作用極と前記対極との間に電圧が印加されることで、前記対極から前記作用極に電子が供給され、前記吸着材は電子が供給されることに伴って前記回収対象ガスを吸着する電気化学セル(101)と、
積層して設けられた複数の前記電気化学セルの間に形成され、前記混合ガスが流れるガス流路(102)と、を含み、電気化学反応によって前記混合ガスから前記回収対象ガスを回収するガス回収システムに用いられ、前記作用極および前記対極の少なくとも一方を構成する電極膜(200)の製造方法であって、
複数の開口部(220a)を有するマスキング部材(220)を基材(210)に対して載置する載置工程と、
前記基材及び前記マスキング部材に対して、前記電極膜の構成材料(200a)を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程を終了した後、前記マスキング部材を取り除くことで、前記電気化学セルの大きさよりも小さな複数の領域(110)と、前記領域に隣接して前記電極膜の反りを抑制する為の抑制部(120)を形成する領域形成工程と、
前記基材上に塗布された前記電極膜の構成材料を乾燥させる乾燥工程と、を有するガス回収システムに用いられる電極膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回収対象ガスを含有する混合ガスから回収対象ガスを回収するガス回収システム及びガス回収システムに用いられる電極膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、二酸化炭素が含まれる混合ガスから回収対象ガスである二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置に関する技術が開示されている。特許文献1の二酸化炭素回収装置は、電気化学反応によって二酸化炭素を吸着する電気化学セルを備えている。
【0003】
電気化学セルは、それぞれ平板状に形成された作用極、対極、作用極集電材、対極集電材等を積層した積層体として形成されている。作用極は、混合ガスから二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸着材を含んでいる。対極は、作用極と電子の授受を行う電気活性補助材を含んでいる。作用極集電材は、作用極に当接する電極である。対極集電材は、対極に当接する電極である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のような二酸化炭素回収装置では、複数の電気化学セルが積層配置されており、電気化学セルの間に形成される流路に混合ガスを流すように構成されている。又、電気化学セルにおける電極膜である作用極、対極は、電池等と比較すると膜厚が大きく、金属系の含有率も低い為、反りやすい傾向にある。
【0006】
この為、二酸化炭素回収装置における二酸化炭素の回収量は、電気化学セルの間に形成される流路幅の影響を受けることが想定され、電気化学セルの反りや歪みを抑制することが重要であると考えられる。しかしながら、特許文献1には、電気化学セルにおける電極膜の反りを抑制することについては何等言及されていない。
【0007】
本開示は、上記点に鑑み、電気化学セルを構成する電極膜の反りを抑制することで、回収対象ガスの回収能力の低下を抑制可能なガス回収システムを提供することを目的の一つとする。又、本開示は、ガス回収システムに用いられる電気化学セルの電極膜について、反りを抑制可能な電極膜の製造方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様に係るガス回収システムは、電気化学反応によって混合ガスから回収対象ガスを回収するガス回収システムであって、電気化学セル(101)と、ガス流路(102)とを含んでいる。電気化学セルは、回収対象ガスを吸着させる吸着材を含む作用極(104)と、作用極と電子の授受を行う対極(106)とを備えている。電気化学セルは、作用極と対極との間に電圧が印加されることで、対極から作用極に電子が供給され、吸着材は電子が供給されることに伴って回収対象ガスを吸着する。ガス流路は、積層して設けられた複数の電気化学セルの間に形成され、混合ガスが流れる流路である。
【0009】
作用極および対極の少なくとも一方は、電極膜(200)によって構成されている。電極膜は、電気化学セルの大きさよりも小さな複数の領域(110)を有しており、複数の領域には、電極膜の反りを抑制する為の抑制部(120、120a、120b)が隣接している。
【0010】
ガス回収システムによれば、電極膜における複数の領域に対して、抑制部を隣接させることによって、電極膜における反りを抑制することができる。これにより、電気化学セルの反りを抑制して、電気化学セルの間に配置されるガス流路の幅を適切に管理することが可能となる。従って、ガス回収システムは、電気化学セルの反りによるガス流路の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0011】
又、本開示の第2態様に係るガス回収システムに用いられる電極膜の製造方法は、電気化学反応によって混合ガスから回収対象ガスを回収するガス回収システムに用いられ、作用極および対極の少なくとも一方を構成する電極膜(200)の製造方法である。ガス回収システムは、電気化学セル(101)と、ガス流路(102)と、を含んでいる。電気化学セルは、混合ガスに含まれる回収対象ガスを吸着させる吸着材を含む作用極(104)と、作用極と電子の授受を行う対極(106)とを備えている。電気化学セルは、作用極と対極との間に電圧が印加されることで、対極から作用極に電子が供給され、吸着材は電子が供給されることに伴って回収対象ガスを吸着する。ガス流路は、積層して設けられた複数の前記電気化学セルの間に形成され、混合ガスが流れる流路である。
【0012】
ガス回収システムに用いられる電極膜の製造方法は、載置工程と、塗布工程と、領域形成工程と、乾燥工程とを有している。載置工程では、複数の開口部(220a)を有するマスキング部材(220)を基材(210)に対して載置する。塗布工程では、基材及びマスキング部材に対して、電極膜の構成材料(200a)を塗布する。領域形成工程では、塗布工程を終了した後、マスキング部材を取り除くことで、電気化学セルの大きさよりも小さな複数の領域(110)と、領域に隣接して電極膜の反りを抑制する為の抑制部(120)を形成する。乾燥工程においては、基材上に塗布された電極膜の構成材料を乾燥させる。
【0013】
従って、ガス回収システムに用いられる電極膜の製造方法によれば、載置工程、塗布工程、領域形成工程、乾燥工程を行うことによって、複数の領域及び抑制部を有する電極膜を効率よく製造することができる。この製造方法で製造された電極膜を用いることで、電気化学セルの反りを抑制して、電気化学セルの間に配置されるガス流路の幅を適切に管理することが可能となる。従って、この製造方法で製造された電極膜を用いたガス回収システムによれば、電気化学セルの反りによるガス流路の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の二酸化炭素回収システムの全体構成を示す概念図である。
【
図2】二酸化炭素回収装置の構成を示す説明図である。
【
図3】二酸化炭素回収装置における電気化学セルの構成を示す説明図である。
【
図4】第1実施形態に係る二酸化炭素回収システムで用いられる電極膜の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図5】電極膜及び基材における反りに関する説明図である。
【
図6】第1実施形態に係る電池化学セルの構成例を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成例を示す模式図である。
【
図8】第2実施形態に係る電極膜の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図9】第3実施形態に係る電極膜の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図10】第4実施形態に係る電極膜の製造方法の一例を示す説明図である。
【
図11】第5実施形態に係る電極膜の製造方法に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0017】
(第1実施形態)
本開示における第1実施形態について、図面を参照して説明する。第1実施形態は、本開示におけるガス回収システムを、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離して回収する二酸化炭素回収システム1に適用している。従って、本実施形態の回収対象ガスは、二酸化炭素である。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム1は、二酸化炭素回収装置10、ポンプ11、流路切替弁12、二酸化炭素利用装置13、制御装置14を備えている。
【0019】
二酸化炭素回収装置10は、混合ガスから二酸化炭素を分離して回収する。混合ガスとしては、大気や内燃機関の排気ガスを用いることができる。混合ガスは、二酸化炭素以外のガスも含有している。二酸化炭素回収装置10には、混合ガスが供給される。二酸化炭素回収装置10は、二酸化炭素が除去された後の混合ガス、或いは、回収した二酸化炭素を排出する。二酸化炭素回収装置10の詳細な構成については後述する。
【0020】
二酸化炭素回収装置10の出口には、ポンプ11の吸入口側が接続されている。ポンプ11は、二酸化炭素回収装置10から、二酸化炭素が除去された後の混合ガス、或いは、回収した二酸化炭素を吸引する。更に、ポンプ11の吸引作用によって、混合ガスが二酸化炭素回収装置10に供給される。
【0021】
尚、本実施形態では、二酸化炭素回収装置10のガス流れ方向の下流側にポンプ11を配置した例を説明しているが、二酸化炭素回収装置10のガス流れ方向の上流側にポンプ11を配置してもよい。
【0022】
ポンプ11の吐出口には、流路切替弁12の流入口側が接続されている。流路切替弁12は、二酸化炭素回収装置10から流出したガスの流路を切り替える三方弁である。流路切替弁12の流出口の一方は、大気側に接続されており、流路切替弁12の流出口の他方は、二酸化炭素利用装置13側に接続されている。従って、流路切替弁12は、二酸化炭素回収装置10から流出したガスを大気側へ流出させる流路と、二酸化炭素回収装置10から流出したガスを二酸化炭素利用装置13側へ流出させる流路とを切り替える。
【0023】
二酸化炭素利用装置13は、二酸化炭素を利用する装置である。二酸化炭素利用装置13としては、例えば、二酸化炭素を貯蔵する貯蔵タンクや二酸化炭素を燃料に変換する変換装置を用いることができる。変換装置は、二酸化炭素をメタン等の炭化水素燃料に変換する装置である。炭化水素燃料は、常温常圧で気体の燃料であってもよく、常温常圧で液体の燃料であってもよい。
【0024】
制御装置14は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置14は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。より具体的には、本実施形態の制御装置14は、二酸化炭素回収装置10、ポンプ11、流路切替弁12の作動を制御する。
【0025】
次に、二酸化炭素回収システム1に用いられる二酸化炭素回収装置10の構成について、
図2、
図3を用いて説明する。
図2に示すように、二酸化炭素回収装置10は、筐体100及び複数の電気化学セル101を有している。本実施形態の筐体100は、金属材料によって形成されている。筐体100は、樹脂材料によって形成されていてもよい。
【0026】
筐体100には、ガス流入部、およびガス流出部が形成されている。ガス流入部は、混合ガスを筐体100内へ流入させるための開口部である。ガス流出部は、二酸化炭素が除去された後の混合ガス、或いは、回収した二酸化炭素を筐体100内から流出させるための開口部である。
【0027】
電気化学セル101は、電気化学反応によって二酸化炭素を吸着して、混合ガスから二酸化炭素を分離して回収する。又、電気化学セル101は、電気化学反応によって二酸化炭素を脱離させて、吸着した二酸化炭素を放出する。複数の電気化学セル101は、筐体100に収容されている。
【0028】
電気化学セル101は、矩形の平板状に形成されている。複数の電気化学セル101は、筐体100の内部で、板面同士が互いに平行となるように、一定の間隔を開けて積層配置されている。
【0029】
隣り合う電気化学セル101同士の間には、ガス流入部から流入した混合ガスを流通させる複数のガス流路102が形成される。従って、混合ガスの流れ方向は、電気化学セル101の板面に対して平行となり、複数の電気化学セル101の積層方向に対して垂直となる。
【0030】
図3に示すように、電気化学セル101は、作用極集電材103、作用極104、対極集電材105、対極106、セパレータ107、電解質層108を有している。作用極集電材103、作用極104、対極集電材105、対極106、セパレータ107は、いずれも矩形の平板状に形成されている。
【0031】
電気化学セル101は、作用極集電材103、作用極104、対極集電材105、対極106、セパレータ107を積層した積層体として形成されている。個々の電気化学セル101において作用極集電材103等が積層される積層方向と、筐体100の内部で複数の電気化学セル101が積層される積層方向は一致している。
【0032】
作用極集電材103は、作用極104に当接して、作用極104と対極106とを電気的に接続する導電性部材である。作用極集電材103は、一方の平坦面が混合ガスに露出している。作用極集電材103は、他方の平坦面が作用極104に接触している。作用極集電材103には、一方の平坦面側の混合ガスを他方の平坦面側の作用極104に曝露させる為に、図示しない作用極開口部が複数形成されている。
【0033】
具体的には、本実施形態の作用極集電材103は、金属多孔質体で形成されている。従って、本実施形態の作用極開口部は、作用極集電材103の内部に形成された複数の空隙同士が互いに連通することによって形成されている。作用極集電材103としては、空隙率が50%以上の金属多孔質体を採用することができる。空隙率は、見かけの体積に対する空隙の体積の比率で定義される。尚、作用極集電材103として、カーボン不織布等を採用することも可能である。
【0034】
作用極104は、混合ガスから二酸化炭素を吸着して回収し、回収した二酸化炭素を脱離させて放出することができる。作用極104は、二酸化炭素吸着材、導電助剤、およびバインダを有しており、電極膜200の一例に相当する。二酸化炭素吸着材、導電助剤、およびバインダは、混合物の状態で用いられる。より詳細には、二酸化炭素吸着材の細粒、および導電助剤の細粒が、バインダによって保持された状態で用いられる。
【0035】
二酸化炭素吸着材は、電子を受け取ることで二酸化炭素を吸着し、電子を放出することで吸着していた二酸化炭素を脱離する電気活性種である。二酸化炭素吸着材としては、例えば、カーボン材、金属酸化物、ポリアントラキノン等を用いることができる。
【0036】
導電助剤は、二酸化炭素吸着材への導電路を形成する。導電助剤としては、例えばカーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン等の炭素材料を用いることができる。
【0037】
バインダは、二酸化炭素吸着材および導電助剤を保持する結合剤である。バインダとしては、例えば高分子ポリマーの導電性樹脂を用いることができる。導電性樹脂としては、導電性フィラーとしてAg等を含有するエポキシ樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂等の有機物を用いることができる。
【0038】
対極集電材105は、対極106に当接して、作用極104と対極106とを電気的に接続する導電性部材である。対極集電材105は、一方の平坦面が混合ガスに露出している。対極集電材105は、他方の平坦面が対極106に接触している。対極集電材105には、一方の平坦面側の混合ガスを他方の平坦面側の対極106に曝露させる為に、図示しない対極開口部が複数形成されている。
【0039】
具体的には、本実施形態の対極集電材105は、作用極集電材103と同様に、金属多孔質体で形成されている。従って、対極開口部は、対極集電材105の内部に形成された複数の空隙同士が互いに連通することによって形成されている。対極集電材105としては、空隙率が70%以下の金属多孔質体を採用することが好適である。
【0040】
対極106は、二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を吸着あるいは脱離する際に、作用極104と電子の授受を行う。対極106は、電気活性補助材、導電助剤、およびバインダを有している。電気活性補助材、導電助剤、およびバインダは、混合物の状態で用いられる。より詳細には、本実施形態では、電気活性補助材の細粒、および導電助剤の細粒が、バインダによって保持された状態で用いられる。
【0041】
対極106の導電助剤、およびバインダの基本的構成は、作用極104の導電助剤、およびバインダと同様である。電気活性補助材は、作用極104の二酸化炭素吸着材との間で電子の授受を行う補助的な電気活性種であり、酸化還元性を持つ活物質である。活物質としては、π結合を有する有機化合物、複数の酸化数をとる遷移金属化合物、金属イオンの価数が変化することで電子の授受を可能とする金属錯体を用いることができる。
【0042】
このような金属錯体としては、フェロセン、ニッケロセン、コバルトセン等のシクロペンタジエニル金属錯体、あるいはポルフィリン金属錯体等を挙げることができる。これらの金属錯体は、ポリマーでもモノマーでもよい。
【0043】
セパレータ107は、作用極104と対極106の間に配置されており、作用極104と対極106を分離している。セパレータ107は、作用極104と対極106の物理的な接触を防いで電気的短絡を抑制すると共に、イオンを透過させる絶縁性イオン透過膜である。セパレータ107としては、セルロース膜やポリマー、ポリマーとセラミックの複合材料等を用いることができる。
【0044】
電解質層108は、作用極104、セパレータ107、対極106を浸漬させる浸漬層である。電解質層108としては、例えば、イオン液体を採用することができる。イオン液体は、常温常圧下で不揮発性を有する液体の塩である。
【0045】
更に、電気化学セル101の作用極集電材103及び対極集電材105には、電源109が接続されている。電源109は、作用極104と対極106に所定の電圧を印加し、作用極104と対極106の電位差を変化させることができる。作用極104は負極であり、対極106は正極である。
【0046】
電気化学セル101は、作用極104と対極106の電位差を変化させることで、作用極104で二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収モード、及び作用極104から二酸化炭素を放出させる二酸化炭素放出モードで作動する。二酸化炭素回収モードは、電気化学セル101を充電する充電モードであり、二酸化炭素放出モードは、電気化学セル101を放電させる放電モードである。
【0047】
具体的には、二酸化炭素回収モードでは、作用極104と対極106の間に第1電圧V1が印加され、対極106から作用極104に電子が供給される。第1電圧V1では、作用極電位<対極電位となっている。第1電圧V1は、例えば0.5~2.0Vの範囲内とすることができる。
【0048】
二酸化炭素放出モードでは、作用極104と対極106の間に第2電圧V2が印加され、作用極104から対極106に電子が供給される。第2電圧V2は、第1電圧V1と異なる電圧である。第2電圧V2は、第1電圧V1より低い電圧であればよく、作用極電位と対極電位の大小関係は限定されない。つまり、二酸化炭素放出モードでは、作用極電位<対極電位でもよく、作用極電位=対極電位でもよく、作用極電位>対極電位でもよい。
【0049】
続いて、二酸化炭素回収システム1の作動について説明する。上述の如く、二酸化炭素回収システム1は、二酸化炭素回収モードと二酸化炭素放出モードを交互に切り替えて作動する。二酸化炭素回収システム1の作動は、制御装置14によって制御される。
【0050】
先ず、二酸化炭素回収モード時の二酸化炭素回収システム1の作動について説明する。二酸化炭素回収モードでは、ポンプ11を作動させる。これにより、二酸化炭素回収装置10に混合ガスが供給される。二酸化炭素回収装置10では、電気化学セル101の作用極104と対極106の間に印加される電圧を第1電圧V1とする。これにより、対極106の電気活性補助材の電子供与と、作用極104の二酸化炭素吸着材の電子求引を同時に実現できる。
【0051】
対極106から電子を受け取った作用極104の二酸化炭素吸着材は二酸化炭素の結合力が高くなり、混合ガスに含まれる二酸化炭素を結合して吸着する。これにより、二酸化炭素回収装置10は、混合ガスから二酸化炭素を回収することができる。二酸化炭素が除去された後の混合ガスは、二酸化炭素回収装置10から排出される。
【0052】
そして、二酸化炭素回収モードでは、流路切替弁12が、二酸化炭素回収装置10から排出された混合ガスを大気側へ流出させる流路に切り替える。これにより、二酸化炭素回収装置10から排出された混合ガスは大気に排出される。
【0053】
次に、二酸化炭素放出モード時における二酸化炭素回収システム1の作動について説明する。二酸化炭素放出モードでは、ポンプ11を停止させる。これにより、二酸化炭素回収装置10への混合ガスの供給が停止される。二酸化炭素回収装置10では、電気化学セル101の作用極104と対極106の間に印加される電圧を第2電圧V2とする。これにより、作用極104の二酸化炭素吸着材の電子供与と、対極106の電気活性補助材の電子求引を同時に実現できる。
【0054】
作用極104の二酸化炭素吸着材は電子を放出し、酸化状態となる。二酸化炭素吸着材は二酸化炭素の結合力が低下し、二酸化炭素を脱離して放出する。二酸化炭素吸着材から放出された二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置10から排出される。
【0055】
二酸化炭素放出モードでは、流路切替弁12が、二酸化炭素回収装置10から排出された二酸化炭素を二酸化炭素利用装置13の入口側へ流出させる流路に切り替える。これにより、二酸化炭素回収装置10から排出された二酸化炭素は二酸化炭素利用装置13に供給される。
【0056】
以上の如く、本実施形態の二酸化炭素回収システム1によれば、混合ガスから二酸化炭素を回収して、回収された二酸化炭素を有効に利用することができる。
【0057】
ここで、上述のように構成された二酸化炭素回収装置10においては、積層配置された複数の電気化学セル101の間のガス流路102を、混合ガスが流通していく際に、作用極104の二酸化炭素吸着材によって、混合ガスから二酸化炭素が吸着される。従って、二酸化炭素回収装置10における二酸化炭素の回収能力は、各ガス流路102における混合ガスの流れ(即ち、ガス流路102の流路形状)の影響を強く受ける。
【0058】
上述したように、ガス流路102は、積層配置された複数の電気化学セル101の間に形成される為、ガス流路102の流路形状が変化する要因として、電気化学セル101の反りや歪みが考えられる。
【0059】
第1実施形態では、電気化学セル101の反りや歪みを抑制する構成として、電極膜200である作用極104、対極106を複数の領域110に区画して、各領域110に対して抑制部120を隣接させた構成を採用した。
【0060】
ここで、複数の領域110及び抑制部120を含む電極膜200(作用極104、対極106)を含む電気化学セル101の製造方法について、
図4を参照して説明する。電気化学セル101の製造方法は、作用極104を構成する電極膜200の製造工程と、対極106を構成する電極膜200の製造工程を有している。作用極104を構成する電極膜200の製造工程と、対極106を構成する電極膜200の製造工程は、基本的に同等であり、別々に実施することができる。
【0061】
図4では、作用極104を構成する電極膜200の製造方法について説明する。又、
図4の説明では、作用極104に係る電極膜200を製造する際の基材210として、作用極集電材103を採用する。尚、この場合における基材210としては、平坦面を有する平板状の部材であれば良い。例えば、後述するように、セパレータ107を基材210として採用することも可能である。
【0062】
図4に示すように、作用極104に係る電極膜200の製造工程では、載置工程と、塗布工程と、領域形成工程と、乾燥工程が実行される。載置工程では、基材210である作用極集電材103の一面に対して、複数の領域用開口部220aを有するマスキング部材220が載置される。マスキング部材220には、複数の領域用開口部220aが、それぞれの開口面積が電気化学セル101のサイズよりも小さくなるように形成されている。
【0063】
マスキング部材220を載置することで、作用極集電材103の一面において、作用極集電材103表面が露出した部分(例えば、領域用開口部220aに対応する部分)と、マスキング部材220によって覆われた部分が生じる。
【0064】
載置工程を終了すると、塗布工程が行われる。塗布工程では、基材210である作用極集電材103と、基材210上に載置されたマスキング部材220の上から、電極膜200の構成部材であるペースト200aが塗布される。この場合のペースト200aは、二酸化炭素吸着材、導電助剤、及びバインダ等の作用極104の構成材料を混合してペースト状にしたものである。これにより、マスキング部材220に形成された複数の領域用開口部220aの内部に、ペースト200aが充填され、作用極集電材103の一面側に塗布される。
【0065】
塗布工程を終了すると、領域形成工程が行われる。領域形成工程では、塗布工程終了の作用極集電材103から、マスキング部材220を上方に持ち上げて取り除く。これにより、作用極集電材103の一面には、複数の領域用開口部230aに充填されたペースト200aが残存する為、複数の領域110を有する電極膜200が形成される。
【0066】
領域形成工程において、マスキング部材220を取り除くことで、複数の領域110の周りには、作用極集電材103表面にペースト200aが塗布されていない分割線120aが、抑制部120として形成される。分割線120aは、マスキング部材220における複数の領域用開口部220aの開口縁に沿って形成される。第1実施形態においては、分割線120aは、予め定められた方向に沿って伸びる直線状に複数形成される。
【0067】
乾燥工程では、作用極集電材103の一面に塗布されたペースト200aを乾燥させて硬化させる。これにより、作用極集電材103の一面には、複数の領域110及び分割線120aを有する電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0068】
尚、乾燥工程では、乾燥速度を速める為に、基材210及び基材210上のペースト200aを加熱しても良い。又、乾燥工程を複数段階に分けて行っても良く、例えば、領域形成工程の前に一次乾燥工程を加えて、ペースト200aの乾燥段階を進めておくことで、領域形成工程にてマスキング部材220を取り除く際の精度を向上させても良い。
【0069】
以上の工程により、作用極104に係る電極膜200の製造工程では、作用極集電材103の一面側に、電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0070】
この点、対極106に係る電極膜200の製造工程においても、載置工程と、塗布工程と、領域形成工程と、乾燥工程が実行される。これにより、対極集電材105の一面側に、電極膜200からなる対極106が形成される。但し、この場合の塗布工程で用いられるペースト200aは、対極106の構成材料を混合してペースト状にしたものであり、電気活性補助材、導電助剤、およびバインダを含んでいる。
【0071】
その後、貼合工程が実行される。貼合工程では、作用極104に係る電極膜200の製造工程で製造された作用極集電材103及び作用極104と、対極集電材105に係る電極膜200の製造工程で製造された対極集電材105及び対極106とを、セパレータ107を介在させて貼り合わる。貼合工程を行う際には、作用極集電材103及び作用極104、対極集電材105及び対極106のそれぞれに対して事前に電解液を滴下することで、電解液を浸透させる。そして、貼合工程では、
図3、
図6から明らかなように、対極106側の面と作用極104側の面がセパレータ107に当接するように貼り合わせる。
【0072】
その後、作用極集電材103及び対極集電材105に、電源109を接続する。これにより、電気化学セル101が製造される。
【0073】
このように製造された電極膜200は、分割線120aとして構成された抑制部120が複数の領域110に隣接している為、電極膜200の反りを抑制することができる。
電極膜における複数の領域110及び分割線120aの数や配置は、電極膜200の反りが1mm以下になるように定められる。
【0074】
ここで、電極膜200の反りは、
図5に示すStoneyの式によって定義される。Stoneyの式により、電極膜200の反りを応力や電極膜200の塗工サイズの関数として表すと、電極膜200の反りは、電極膜200の塗工サイズlの2乗、電極膜200の内部応力σ、電極膜200の厚みdの1乗に比例する。電極膜200の反りは、基材210のヤング率Esのマイナス1乗、基材210の厚みbのマイナス2乗に比例する。
【0075】
電気化学セル101に用いられる電極膜200はカーボンが主体となっている為、電極膜200の内部応力σが大きくなる傾向にある。又、電極膜200の厚みdは、電池に用いられる電極と比較すると大きな値を示す。更に、基材210として用いられる作用極集電材103等には、混合ガスを透過させる為の作用極開口部が複数形成されている為、基材210としての剛性が低く、実効ヤング率(即ち、基材210のヤング率Es)が低くなる傾向を示す。
【0076】
従って、電気化学セル101に用いられる電極膜200に関連する種々の条件を鑑みると、電極膜200の反りを抑制する為には、電極膜200の塗工サイズlを制限することが非常に有効であることがわかる。
【0077】
第1実施形態においては、電極膜200をガス流路102としての分割線120aで複数の領域110に分割している為、塗工サイズlを充分に制限することができている。これにより、第1実施形態に係る電気化学セル101は、反りを抑制して、ガス流路102の幅を適切に管理可能な構成となる。
【0078】
第1実施形態に係る電極膜200の製造方法で製造された電極膜200を有する電気化学セル101の構成例について、
図6を参照して説明する。
【0079】
図4に示すように、第1実施形態に係る電極膜200の製造方法においては、基材210(作用極集電材103、対極集電材105)の一面に、3つの領域110を有する電極膜200(作用極104、対極106)が形成される。そして、複数の領域110の間には、抑制部120としての分割線120aが形成される。分割線120aは、予め定められた方向に沿って直線状に伸びている。
【0080】
図6に示す構成例においては、上述の貼合工程にて、対極106側の面と作用極104側の面をセパレータ107に当接するように貼り合わせる際に、作用極104側の分割線120aと、対極106側の分割線120aが同じ方向に伸びるように貼り合せられる。
【0081】
そして、貼合工程を終了した電気化学セル101に対しては、ガス流路102を形成する為のスペーサ300が配置される。
図6に示すように、スペーサ300は、電気化学セル101の端縁において、分割線120aと同じ方向に連続するように配置されている。
【0082】
図6のように構成された複数の電気化学セル101は、筐体100の内部にて積層配置され、
図7に示す二酸化炭素回収装置10を構成する。この時、電気化学セル101の積層体は、電気化学セル101における各分割線120aは、二酸化炭素回収装置10におけるガス流れ方向に一致するように配置される。
【0083】
このような構成を採用することで、ガス流れ方向に交差する方向に関する電気化学セル101の反りについては、各分割線120aを設けることで抑制することができる。一方、ガス流れ方向に関する電気化学セル101の反りについては、電気化学セル101の端縁においてガス流れ方向と一致する方向に連続するスペーサ300によって抑制することができる。従って、
図7に示す二酸化炭素回収装置10によれば、電気化学セルの反りによるガス流路の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0084】
尚、予め定められた方向に向かって伸びる分割線120aによって、複数の領域110に分割された電極膜200を製造する場合には、上述したマスキング部材220を用いる態様だけでなく種々の製造方法を採用することができる。例えば、ロール成型等の連続成形プロセスを採用して、予め定められた方向に向かって伸びる分割線120aによって、複数の領域110に分割された電極膜200を製造してもよい。
【0085】
以上説明したように、第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム1によれば、電気化学セル101において、作用極104、対極106を構成する電極膜200に、複数の領域110を形成して夫々に抑制部120を隣接させることができる。電気化学セル101のサイズより小さな複数の領域110とすると共に抑制部120を形成することで、電気化学セル101における電極膜200の反りを抑制することができる。
【0086】
これにより、電気化学セル101の反りを抑制して、電気化学セル101の間に配置されるガス流路102の幅を適切に管理することが可能となる。従って、二酸化炭素回収システム1は、電気化学セル101の反りによるガス流路102の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0087】
図4、
図6、
図7に示すように、第1実施形態に係る二酸化炭素回収システム1において、抑制部120は、電極膜200を複数の領域110に分割する分割線120aによって構成されている。分割線120aによって複数の領域110を分割することで、電極膜200の塗工サイズlを確実に小さくすることができ、電極膜200の反りを効果的に抑制することができる。
【0088】
図6、
図7に示すように、二酸化炭素回収装置10において、電気化学セル101は、抑制部120としての分割線120aがガス流れ方向に沿って伸びるように配置されている。これにより、ガス流れ方向に交差する方向に関する電気化学セル101の反りを抑制することができる為、ガス流路102の幅を保つことができ、回収対象ガスである二酸化炭素の回収能力の低下を抑制することができる。
【0089】
図4に示すように、第1実施形態に係る電極膜200の製造方法によれば、マスキング部材220を用いて、載置工程、塗布工程、領域形成工程、乾燥工程を行うことで、複数の領域110及び抑制部120を有する電極膜200を効率よく製造することができる。
【0090】
そして、この製造方法で製造された電極膜200を用いることで、電気化学セル101の反りを抑制して、電気化学セル101の間のガス流路102の幅を適切に管理することが可能となる。従って、この製造方法で製造された電極膜200を用いた二酸化炭素回収システム1によれば、電気化学セル101の反りによるガス流路102の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0091】
(第2実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第2実施形態について、
図8を参照して説明する。第2実施形態では、作用極104、対極106を構成する電極膜200の製造方法及び抑制部120の構成が第1実施形態と相違している。その他の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0092】
又、
図8の説明においては、第1実施形態と同様に、作用極104を構成する電極膜200の製造方法について説明し、基材210として、作用極集電材103を採用する。
【0093】
図8に示すように、第2実施形態に係る電極膜200の製造方法は、塗布工程、領域形成工程、除去工程、乾燥工程を実行する。第2実施形態に係る電極膜200の製造方法では、電極膜200には、抑制部120として形成される溝状の区画線120bが形成され、区画線120bによって、複数の領域110に区画される。
【0094】
具体的には、第2実施形態における塗布工程では、基材210である作用極集電材103の一面における予め定められた電極膜200の形成範囲に対して、電極膜200の構成部材であるペースト200aが塗布される。この場合のペースト200aは、二酸化炭素吸着材、導電助剤、及びバインダ等の作用極104の構成材料を混合してペースト状にしたものである。
【0095】
第2実施形態に係る電極膜200の製造方法では、塗布工程を終了すると、領域形成工程が実行される。第2実施形態に係る領域形成工程では、複数の領域用開口部230aを有する抑制部形成部材230を用いて、塗布されたペースト200aに複数の領域110及び抑制部120としての区画線120bが形成される。抑制部形成部材230には、複数の領域用開口部230aが、それぞれの開口面積が電気化学セル101のサイズよりも小さくなるように形成されている。
【0096】
具体的に説明すると、領域形成工程では、作用極集電材103の一面に塗布されたペースト200aに対して、抑制部形成部材230を押し当て、作用極集電材103の一面に近づくように圧力をかける。
【0097】
これにより、ペースト200aには、抑制部形成部材230と接触している部分と、抑制部形成部材230と接触していない部分(例えば、領域用開口部230a)の間で段差ができる。
図8に示すように、抑制部形成部材230と接触している部分は、圧力によってペースト200aの厚みが薄くなる為、直線的な溝状の区画線120bが形成される。
【0098】
一方、抑制部形成部材230を押し当てたとしても、領域用開口部230aの内部のペースト200aには圧力が作用しない。この為、各領域用開口部230aの内部には、電極膜200における複数の領域110が、電気化学セル101のサイズよりも小さく形成される。
【0099】
抑制部形成部材230を用いて領域形成工程を行うことで、電気化学セル101のサイズよりも小さな複数の領域110と共に、各領域110に隣接する溝状の区画線120bを、抑制部120として形成することができる。
【0100】
領域形成工程を終了すると、除去工程が行われる。除去工程では、領域形成工程にて抑制部形成部材230をペースト200aに押し当てた際にはみだした余剰のペースト200aが除去される。除去工程は、第2実施形態における領域形成工程を終了後において、電極膜200における各領域110及び区画線120bの形状を整える整形工程と換言することもできる。
【0101】
乾燥工程では、作用極集電材103の一面に塗布されたペースト200aを乾燥させて硬化させる。これにより、作用極集電材103の一面には、複数の領域110及び区画線120bを有する電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0102】
尚、乾燥工程を複数段階に分けて行っても良く、例えば、塗布工程の後、領域形成工程の前に一次乾燥工程を加えて、ペースト200aの乾燥段階を進めておいても良い。これにより、領域形成工程にて抑制部形成部材230をペースト200aに押圧した際のペースト200aの変形量を調整することができるので、領域110及び区画線120bの成形精度を向上させることができる。
【0103】
以上の工程により、第2実施形態に係る製造方法によって、作用極集電材103の一面側に、複数の110及び区画線120bを有する電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0104】
尚、第2実施形態においても、対極106に係る電極膜200の製造工程として、塗布工程、領域形成工程、除去工程、乾燥工程が実行される。これにより、対極集電材105の一面側に、複数の領域110及び区画線120bを有する対極106が形成される。但し、この場合の塗布工程で用いられるペースト200aは、対極106の構成材料を混合してペースト状にしたものであり、電気活性補助材、導電助剤、およびバインダを含んでいる。
【0105】
第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム1においては、二酸化炭素回収システム1に用いられる電極膜200の抑制部120として、直線状に伸びる溝としての区画線120bが形成される。
【0106】
区画線120bは、電極膜200の厚みとしては隣接する領域110よりも小さい溝状に形成されている。即ち、区画線120bと隣接する各領域110は一体化されている為、第1実施形態における分割線120aよりも、電極膜200の反りを抑制する効果としては限定的になる。しかしながら、複数の領域110に関する区分けのしやすさや、目付量の確保の点から考慮すると、抑制部120として区画線120bを採用することも考えられる。
【0107】
以上説明したように、第2実施形態に係る二酸化炭素回収システム1によれば、電極膜200を溝状の区画線120bによって複数の領域110に区画した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0108】
又、第2実施形態に係る電極膜200の製造方法によれば、抑制部形成部材230を用いて、塗布工程、領域形成工程、除去工程、乾燥工程を行うことで、複数の領域110及び抑制部120を有する電極膜200を効率よく製造することができる。
【0109】
そして、この製造方法で製造された電極膜200を用いることで、電気化学セル101の反りを抑制して、電気化学セル101の間のガス流路102の幅を適切に管理することが可能となる。従って、この製造方法で製造された電極膜200を用いた二酸化炭素回収システム1によれば、電気化学セル101の反りによるガス流路102の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0110】
(第3実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第3実施形態について、
図9を参照して説明する。第3実施形態では、作用極104、対極106を構成する電極膜200の製造方法が上述した実施形態と相違している。その他の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0111】
又、
図9の説明においても、上述した実施形態と同様に、作用極104を構成する電極膜200の製造方法について説明し、基材210として作用極集電材103を採用する。
【0112】
図9に示すように、第3実施形態に係る電極膜200の製造方法は、塗布工程、一次乾燥工程、区画工程、乾燥工程を実行する。第3実施形態に係る電極膜200の製造方法では、電極膜200には、除去装置240によって、抑制部120として分割線120aが形成され、分割線120aによって、電極膜200は複数の領域110に分割される。
【0113】
具体的には、第3実施形態における塗布工程は、第2実施形態と同様に、基材210である作用極集電材103の一面における予め定められた電極膜200の形成範囲に対して、電極膜200の構成部材であるペースト200aが塗布される。
【0114】
第3実施形態に係る塗布工程を終了すると、一次乾燥工程が行われる。一次乾燥工程では、後述する区画工程において、除去装置240によって、ペースト200aの一部を除去可能な程度に、基材210に塗布されたペースト200aの乾燥度合を進める工程である。
【0115】
一次乾燥工程を終了すると、区画工程が実行される。第3実施形態における区画工程では、所定の乾燥度合まで乾燥したペースト200aの一部を、除去装置240を用いて基材210上から除去することで、複数の領域110に区画する工程である。
【0116】
ここで、除去装置240としては、基材210上に塗布されたペースト200aの一部を除去することができれば種々の装置を採用することができる。例えば、除去装置240の一例として、グラインダーやサンダー等を採用して、機械加工による区画工程とすることができる。
【0117】
又、
図9に示す区画工程では、除去装置240によってペースト200aの一部を除去することで、抑制部120として分割線120aを形成している。第3実施形態における分割線120aは、複数の方向に伸びるように構成されている。このように構成することで、例えば、ガス流れ方向に直交する方向に関する電極膜200の反りと共に、ガス流れ歩行に関する電極膜200の反りを抑制することができる。
【0118】
尚、第3実施形態における区画工程においては、除去装置240によってペースト200aの一部を除去することで、抑制部120を形成している。除去装置240にてペースト200aを除去する量については、適宜設定することができる。
図9に示すように、塗布されたペースト200aの厚みを全て除去する態様であれば、分割線120aが形成され、塗布されたペースト200aの厚みの一部を除去する態様であれば、溝状の区画線120bが形成される。
【0119】
第3実施形態に係る区画工程を終了すると、乾燥工程が実行される。乾燥工程では、作用極集電材103の一面に塗布されたペースト200aを乾燥させて硬化させる。これにより、作用極集電材103の一面には、複数の領域110及び分割線120aを有する電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0120】
以上の工程により、第3実施形態に係る製造方法によって、作用極集電材103の一面側に、複数の110及び分割線120aを有する電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0121】
尚、第3実施形態においても、対極106に係る電極膜200の製造工程として、塗布工程、一次乾燥工程、区画工程、乾燥工程が実行される。これにより、対極集電材105の一面側に、複数の領域110及び分割線120aを有する対極106が形成される。但し、この場合の塗布工程で用いられるペースト200aは、対極106の構成材料を混合してペースト状にしたものであり、電気活性補助材、導電助剤、およびバインダを含んでいる。
【0122】
以上説明したように、第3実施形態に係る二酸化炭素回収システム1によれば、電極膜200の製造方法として、除去装置240を用いた場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0123】
又、第3実施形態に係る電極膜200の製造方法によれば、除去装置240を用いて、塗布工程、一次乾燥工程、区画工程、乾燥工程を行うことで、複数の領域110及び抑制部120を有する電極膜200を効率よく製造することができる。
【0124】
そして、この製造方法で製造された電極膜200を用いることで、電気化学セル101の反りを抑制して、電気化学セル101の間のガス流路102の幅を適切に管理することが可能となる。従って、この製造方法で製造された電極膜200を用いた二酸化炭素回収システム1によれば、電気化学セル101の反りによるガス流路102の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0125】
(第4実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第4実施形態について、
図10を参照して説明する。
第4実施形態では、作用極104、対極106を構成する電極膜200の製造方法が上述した実施形態と相違している。その他の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0126】
又、
図10の説明においても、上述した実施形態と同様に、作用極104を構成する電極膜200の製造方法について説明し、基材210として作用極集電材103を採用している。
【0127】
図10に示すように、第4実施形態に係る電極膜200の製造方法は、塗布工程、乾燥工程を実行する。第4実施形態に係る電極膜200の製造方法では、ディスペンサ250によるペースト200aの塗布工程において、ディスペンサ250の動きを制御することで、複数の領域110及び抑制部120を形成している。
【0128】
具体的には、第3実施形態における塗布工程は、基材210である作用極集電材103の一面における予め定められた電極膜200の形成範囲に対して、ディスペンサ250を用いて、電極膜200の構成部材であるペースト200aが塗布される。
【0129】
ここで、ディスペンサ250は、液体材料を精密に定量吐出する装置であり、液体材料としてのペースト200aを予め定められた量と吐出することで、基材210の表面に塗布する。
【0130】
第4実施形態に係る塗布工程では、ディスペンサ250の動作が制御されており、基材210としての作用極集電材103の一面に対して、予め定められた量のペースト200aが塗布される。基材210表面に対して予め定められた量で塗布されたペースト200aは、電極膜200における複数の領域110の一つを構成する。
【0131】
尚、ディスペンサ250によって塗布する際のペースト200aの形状については、
図10のように円板状としても良いが、種々の形状を採用することができる。
【0132】
そして、予め定められた量のペースト200aを塗布した後、ディスペンサ250は、基材210上に塗布されているペースト200aから十分な間隔を設けるように移動して、予め定められた量のペースト200aを新たに塗布する。
【0133】
基材210における電極膜200の形成範囲内において、ディスペンサ250による塗布と、ディスペンサ250の移動が繰り返されると、
図10に示すように、電極膜200の形成範囲には、ドット状に配置された複数の領域110が形成される。又、各領域110の間には、ディスペンサ250の移動に伴って、ペースト200aが塗布されていない部分が形成される。各領域110の間にてペースト200aが塗布されていない部分は、分割線120aと同様に、抑制部120として機能する。
【0134】
第4実施形態に係る塗布工程を終了すると、乾燥工程が行われる。乾燥工程では、作用極集電材103に塗布されたドット状のペースト200aを乾燥させて硬化させる。これにより、作用極集電材103の一面には、複数の領域110及び抑制部120を有する電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0135】
以上の工程により、第4実施形態に係る製造方法によって、作用極集電材103の一面側に、複数の110及び抑制部120を有する電極膜200からなる作用極104が形成される。
【0136】
尚、第4実施形態においても、対極106に係る電極膜200の製造工程として、ディスペンサ250を用いた塗布工程、乾燥工程が実行される。これにより、対極集電材105の一面側に、複数の領域110及び抑制部120を有する対極106が形成される。但し、この場合の塗布工程で用いられるペースト200aは、対極106の構成材料を混合してペースト状にしたものであり、電気活性補助材、導電助剤、およびバインダを含んでいる。
【0137】
以上説明したように、第4実施形態に係る二酸化炭素回収システム1によれば、ディスペンサ250を用いた塗布工程で、複数の領域110及び抑制部120を形成した場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0138】
又、第4実施形態に係る電極膜200の製造方法によれば、ディスペンサ250を用いた塗布工程、乾燥工程を行うことで、複数の領域110及び抑制部120を有する電極膜200を効率よく製造することができる。
【0139】
そして、この製造方法で製造された電極膜200を用いることで、電気化学セル101の反りを抑制して、電気化学セル101の間のガス流路102の幅を適切に管理することが可能となる。従って、この製造方法で製造された電極膜200を用いた二酸化炭素回収システム1によれば、電気化学セル101の反りによるガス流路102の変化に起因する回収対象ガスの回収能力の低下を抑制することができる。
【0140】
(第5実施形態)
次に、上述した実施形態と異なる第5実施形態について、
図11を参照して説明する。上述した実施形態では、基材210である作用極集電材103、対極集電材105の一面側に、電極膜200を形成する態様を説明していたが、基材210として、セパレータ107を採用することも可能である。従って、第5実施形態においては、基材210としてセパレータ107を採用した場合の実施形態について説明する。その他の基本的構成等については、上述した実施形態と同様である為、再度の説明を省略する。
【0141】
上述した実施形態における貼合工程の説明や、
図3、
図6、
図7に示すように、電気化学セル101は、セパレータ107における一方の面に作用極104が当接し、セパレータ107の他方の面に対極106が当接した態様で構成される。
【0142】
従って、作用極104に係る電極膜200の製造工程に係る基材210として、セパレータ107における一方の面を採用して、対極106に係る電極膜200の製造工程に係る基材210として、セパレータ107における他方の面を採用することができる。
【0143】
尚、作用極104に係る電極膜200の製造工程、対極106に係る電極膜200の製造工程としては、上述した実施形態で説明した電極膜200の製造方法の何れを採用しても良い。
【0144】
セパレータ107の両面(即ち、一方の面及び他方の面)に電極膜200を製造する場合、電極膜200の厚みdや電極膜200の内部応力σの違いによって、セパレータ107における一方の面側又は他方の面側に反ってしまうことが想定される。
【0145】
この場合には、セパレータ107における一方の面側と他方の面側の電極膜200に関して、電極膜200の厚みdや、電極膜200の内部応力σの大小関係に基づいて、何れか一方の面の電極膜200に、複数の領域110及び抑制部120を形成するとよい。
【0146】
電極膜200の厚みdに関しては、セパレータ107における一方の面側と他方の面側の電極膜200に関して、電極膜200の厚みdが大きい方の電極膜200に、複数の領域110及び抑制部120を形成するとよい。
【0147】
又、電極膜200の内部応力σに関しては、セパレータ107における一方の面側と他方の面側の電極膜200に関して、電極膜200の内部応力σが大きい方の電極膜200に、複数の領域110及び抑制部120を形成するとよい。
【0148】
以上説明したように、第5実施形態に係る二酸化炭素回収システム1によれば、セパレータ107を基材210として、基材210の両面に電極膜200を製造する場合でも、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を得ることができる。
【0149】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0150】
(a)上述した実施形態では、本開示に係るガス回収システムを、混合ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収システム1に適用した例について説明したが、本開示に係るガス回収システムの適用はこれに限定されない。本開示に係るガス回収システムを、混合ガスから二酸化炭素以外の特定種類のガスを回収するシステムに適用してもよい。例えば、ガス回収システムにおける回収対象ガスとして、窒素酸化物ガス(NOx)、硫黄酸化物ガス(SOx)を採用することも可能である。
【0151】
(b)又、上述した複数の領域110及び抑制部120を有する電極膜200を用いて、電気化学セル101の作用極104、対極106の少なくとも一方が構成されていればよい。
【0152】
(c)そして、本開示に係る電極膜200における複数の領域110の形状については、上述した実施形態に示す形状に限定されるものではない。電気化学セル101のサイズよりも小さい形状であればよく、その形状及び大きさが複数種類であってもよい。
【0153】
(d)又、上述した実施形態では、抑制部120として、分割線120a、区画線120bを挙げているが、その形状については種々の態様を採用することができる。例えば、例えば、電気化学セル101における位置に応じて、分割線120aの幅を変更しても良い。又、電気化学セル101における位置に応じて、区画線120bにおける厚みを変更しても良い。
【0154】
(e)そして、電極膜200を製造する工程として、以下の工程を採用することも可能である。例えば、先ず、フィルムや離型紙に対して、載置工程、塗布工程、領域形成工程を実施する。即ち、フィルムや離型紙の表面に、複数の領域110及び抑制部120を含むペースト200aが塗布された状態を作り出す。次に、フィルムや離型紙上のペースト200aに対して、集電材やセパレータといった基材を当接させた状態で乾燥させる。ペースト200aが乾燥した後、フィルムや離型紙を剥がす。これにより、基材210の表面に、複数の領域110及び抑制部120を有する電極膜200を製膜できる。
【0155】
(f)又、上述した第5実施形態においては、セパレータ107の両面(表面、裏面)に、ペースト200aを塗布して電極膜200を製膜していたが、この態様に限定されるものではない。即ち、セパレータ107における一面(表面、裏面の何れか一方)に、ペースト200aを塗布して電極膜200を製膜してもよい。
【符号の説明】
【0156】
1 二酸化炭素回収システム
101 電気化学セル
102 ガス流路
104 作用極
106 対極
110 領域
120 抑制部
200 電極膜
210 基材