(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176221
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】洗浄液
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20231206BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20231206BHJP
C11D 7/24 20060101ALI20231206BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20231206BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C11D7/50
C11D7/26
C11D7/24
C11D7/32
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088386
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】加納 椋平
【テーマコード(参考)】
2C056
4H003
【Fターム(参考)】
2C056JB15
4H003DA05
4H003DA12
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB02
4H003EB04
4H003EB13
4H003ED04
4H003ED28
4H003FA04
4H003FA21
(57)【要約】
【課題】粒子の付着物を洗浄するに際して優れた洗浄性及び適度な乾燥性を有する洗浄液を提供する。
【解決手段】本開示の洗浄液は、有機溶剤と、粒子を分散するための分散剤とを含み、水の含有割合が5質量%以下である、前記粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液である。前記有機溶剤は、炭化水素及び/又はアルコールを含む洗浄液であることが好ましい。前記粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液である。前記有機溶剤は、炭化水素及びアルコールを含む洗浄液であることが好ましい。本開示の洗浄液は、また、下記乾燥性パラメータが0.001~1.0であり、下記粒子分散パラメータが1超である、粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤と、粒子を分散するための分散剤とを含み、水の含有割合が5質量%以下である、前記粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液。
【請求項2】
前記有機溶剤は、炭化水素及び/又はアルコールを含む、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記有機溶剤は、炭化水素及びアルコールを含む、請求項2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記有機溶剤中の、25℃における蒸気圧が0.02mmHg未満である有機溶剤の含有量が80質量%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項5】
前記有機溶剤中の、25℃における蒸気圧90mmHg以上である有機溶剤の含有量が90質量%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項6】
前記分散剤は、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項7】
前記分散剤はアミンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項8】
前記分散剤はオレイルアミンである、請求項7に記載の洗浄液。
【請求項9】
前記粒子は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、コバルト、ルテニウム、プラチナ、パラジウム、クロム、ゲルマニウム、スズ、ビスマス、鉛又はインジウムを含む金属から形成される金属粒子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液を用いて前記粒子の付着物を洗浄する洗浄方法。
【請求項11】
前記粒子の付着物に超音波を照射しながら洗浄する、請求項10に記載の洗浄方法。
【請求項12】
下記乾燥性パラメータが0.001~1.0であり、
下記粒子分散パラメータが1超である、粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液。
乾燥性パラメータ:(W0-W)/W0
[W0は、ガラス板の表面に滴下した直後の前記洗浄液の質量であり、Wは、滴下してから25℃、40%RHにおいて1分経過した後の前記洗浄液の質量である]
粒子分散パラメータ:R/R0
[Rは、銀ナノインクを塗膜質量0.05gとなるように塗布した長さ76mm、幅26mm、厚み1mmのガラス板を、前記洗浄液100mLを備えた容器に、塗布部分全体が浸漬するように載置し、40kHzで80分間超音波を照射した後、前記洗浄液の撮影画像についてRGB測定を行って得られるR値であり、R0は、ブタノール20質量部及びヘプタン80質量部からなる標準洗浄液について得られる前記R値である]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は洗浄液に関する。本開示は、より具体的には、粒子の付着物を洗浄するために用いる洗浄液に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子基板等に微細な金属配線パターンを印刷するために用いられる金属微粒子を含む導電性インク等の金属粒子含有材料について、製造、使用等の取扱いをするために用いた器具や装置は、金属微粒子や樹脂材料等の不揮発分の固着による損傷を防ぐために、洗浄液を用いて十分に洗浄される必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1~5には、金属粒子を含有するインクの洗浄に用いる洗浄液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-193236号公報
【特許文献2】特開2017-66228号公報
【特許文献3】特開2017-165830号公報
【特許文献4】特開2016-056319号公報
【特許文献5】特開2009-102475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~5に開示の洗浄液には、粒子含有材料の取り扱いに用いた器具や装置の複雑な構造に対して、粒子を除去するための洗浄性が不十分であるか、洗浄性に優れる場合であっても、水を必須の成分とすることから、洗浄後に乾燥しにくく器具や装置の金属部分に腐食を生じさせやすいという問題があった。
【0006】
従って、本開示の目的は、粒子の付着物を洗浄するに際して、優れた洗浄性、及び、使用時に揮発しにくく、洗浄後に残液しにくく乾燥しやすいという、適度な乾燥性を有する洗浄液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、有機溶剤と、特定の分散剤とを含む洗浄液を用いると、粒子の付着物を洗浄する際に、優れた洗浄性及び適度な乾燥性が示されることを見出した。本開示は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本開示は、有機溶剤と、粒子を分散するための分散剤とを含み、水の含有割合が5質量%以下である、上記粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液を提供する。
【0009】
上記有機溶剤は、炭化水素及び/又はアルコールであることが好ましい。
【0010】
上記有機溶剤は、炭化水素及びアルコールを含むことが好ましい。
【0011】
上記有機溶剤中の、25℃における蒸気圧が0.02mmHg未満である有機溶剤の含有量は、80質量%未満であることが好ましい。
【0012】
上記有機溶剤中の、25℃における蒸気圧90mmHg以上である有機溶剤の含有量は、90質量%未満であることが好ましい。
【0013】
上記分散剤は、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物であることが好ましい。
【0014】
上記分散剤は、アミンであることが好ましい。
【0015】
上記分散剤は、オレイルアミンであることが好ましい。
【0016】
上記粒子は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、コバルト、ルテニウム、プラチナ、パラジウム、クロム、ゲルマニウム、スズ、ビスマス、鉛又はインジウムを含む金属から形成される金属粒子を含むことが好ましい。
【0017】
本開示は、また、上記洗浄液を用いて上記粒子の付着物を洗浄する洗浄方法を提供する。
【0018】
上記洗浄液は、上記粒子の付着物に超音波を照射しながら洗浄する洗浄方法であることが好ましい。
【0019】
本開示は、また、下記乾燥性パラメータが0.001~1.0であり、下記粒子分散パラメータが1超である、粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液を提供する。
乾燥性パラメータ:(W0-W)/W0
[W0は、ガラス板の表面に滴下した直後の上記洗浄液の質量であり、Wは、滴下してから25℃、40%RHにおいて1分経過した後の上記洗浄液の質量である。]
粒子分散パラメータ:R/R0
[Rは、銀ナノインクを塗膜質量0.05gとなるように塗布した長さ76mm、幅26mm、厚み1mmのガラス板を、上記洗浄液100mLを備えた容器に、塗布部分全体が浸漬するように載置し、40kHzで80分間超音波を照射した後、上記洗浄液の撮影画像についてRGB測定を行って得られるR値であり、R0は、ブタノール20質量部及びヘプタン80質量部からなる標準洗浄液について得られる上記R値である。]
【発明の効果】
【0020】
本開示の洗浄液は、粒子の付着物を洗浄するに際して優れた洗浄性及び適度な乾燥性を有するので、十分且つ速やかな洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[洗浄液]
本開示の第1の態様は、粒子の付着物を洗浄するために用いる洗浄液に関する。上記洗浄剤は、有機溶剤と、粒子を分散するための分散剤とを含み、水の含有割合が5質量%以下である。
【0022】
本開示の第2の態様は、下記乾燥性パラメータが0.001~1.0であり、下記粒子分散パラメータが1超である、粒子の付着物を洗浄するために用いる洗浄液に関する。上記洗浄剤は、有機溶剤と、粒子を分散するための分散剤とを含む洗浄剤であることが好ましい。
【0023】
乾燥性パラメータは、ガラス板の表面に滴下した直後の上記洗浄液の質量W0から、滴下してから25℃、40%RHにおいて1分経過した後の上記洗浄液の質量Wを減じた値を、上記W0によって除した値[(W0-W)/W0]によって表される。
【0024】
上記乾燥性パラメータは、0.001~1.0であり、好ましくは0.01~0.9、特に好ましくは0.1~0.9である。上記乾燥性パラメータが0.001以上であると、洗浄液は使用時に揮発しにくく、1.0以下であると、洗浄液は洗浄後に残液しにくいので乾燥しやすくなる。
【0025】
粒子分散パラメータは、銀ナノインク(例えば、(商品名Picosil DNS409、(株)ダイセル製))を塗膜質量0.05g程度となるように塗布した長さ76mm、幅26mm、厚み1mmのガラス板を、洗浄液100mLを備えた容器に、塗布部分全体が浸漬するように載置し、40kHzで80分間超音波を照射した後、上記洗浄液の撮影画像についてRGB測定を行って得られるR値であるRと、ブタノール20質量部及びヘプタン80質量部からなる標準洗浄液について得られる上記R値であるR0について、RをR0で除した値(R/R0)によって表される。
【0026】
上記粒子分散パラメータは、粒子含有材料を速やかに分散、溶解することができる点から、1超であることが好ましく、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上である。
【0027】
以下、第1の態様に係る洗浄液及び第2の態様に係る洗浄液の両方について好ましい態様を記載する。
【0028】
本開示の洗浄液は、実施例に記載の方法により測定される塗膜消失パラメータが、5000以下であることが好ましく、より好ましくは4000以下、特に好ましくは1300以下である。
【0029】
(有機溶剤)
上記有機溶剤は、洗浄時の温度環境において液体であればよく、室温で液体である必要はない。上記有機溶剤は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。上記有機溶剤が2種以上の混合物である場合は、混合物として室温で液体であることが好ましく、2種以上のそれぞれの有機溶剤が室温で液体であることがより好ましい。また、上記混合物は、均一相であることが好ましい。上記有機溶剤の融点は、20℃未満が好ましく、より好ましくは10℃未満である。
【0030】
上記有機溶剤は、洗浄性により優れる観点から、粒子含有材料に含まれる粒子に対して相互作用を有する官能基を有しないものであることが好ましい。具体的には、上記有機溶剤は、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基を有しないことが好ましい。
【0031】
上記有機溶剤としては、例えば、炭化水素;アルコール;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ラクタム等の鎖状又は環状アミド;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、グリコールエーテル等の鎖状又は環状エーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、ラクトン等の鎖状又は環状エステル;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等の鎖状ケトン;アセトニトリル等のニトリルなどが挙げられる。
【0032】
中でも、炭化水素及び/又はアルコールを含むことが好ましく、洗浄性及び乾燥性のバランスに優れる点から、炭化水素及びアルコールの両方を含むことがより好ましい。
【0033】
上記炭化水素としては、直鎖又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素、脂環を有する炭化水素、芳香環を有する炭化水素が挙げられる。また、上記炭化水素は、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。
【0034】
上記直鎖又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。上記直鎖又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン等が挙げられる。上記直鎖又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素における炭素原子数は、優れた洗浄性と適度な乾燥性が得られやすい点から、5~20が好ましく、より好ましくは6~15、更に好ましくは7~13である。
【0035】
上記脂環を有する炭化水素における脂環としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキセン等の単環式炭化水素環;ピネン、ノルボルネン、デカヒドロナフタレン等の二環式炭化水素環;ジシクロペンタン、ジシクロペンテン、ジシクロペンタジエン等の三環以上の炭化水素環等が挙げられる。上記脂環を有する炭化水素における炭素原子数は、優れた洗浄性と適度な乾燥性が得られやすい点から、6以上が好ましく、より好ましくは10以上である。
【0036】
上記芳香環を有する炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0037】
上記アルコールとしては、例えば、直鎖又は分岐鎖状のアルコール、脂環を有するアルコール、芳香環を有するアルコールが挙げられる。また、上記アルコールは、飽和又は不飽和の何れであってもよい。上記アルコールとしては、中でも、優れた洗浄性と適度な乾燥性が得られやすい点から、直鎖又は分岐鎖状のアルコールが好ましい。
【0038】
上記アルコールの価数は、特に限定されないが、1~2が好ましく、より好ましくは1である。
【0039】
上記直鎖又は分岐鎖状の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-オクタノール、グリコールエーテル等が挙げられる。上記直鎖又は分岐鎖状の二価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコール等が挙げられる。
【0040】
上記直鎖又は分岐鎖状のアルコールにおける炭素原子数は、優れた洗浄性と適度な乾燥性が得られやすい点から、1~20が好ましく、より好ましくは2~10、更に好ましくは3~5である。
【0041】
上記脂環を有するアルコールにおける脂環としては、上述の脂環を有する炭化水素における脂環として例示及び説明されたものが挙げられる。上記脂環を有するアルコールとしては、具体的には、例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、3-シクロヘキセン-1-メタノール(テトラヒドロベンジルアルコール)等の単環式アルコ-ル等が挙げられる。上記脂環を有するアルコールにおける炭素原子数は、適度な乾燥性が得られやすい点から、6~20が好ましい。
【0042】
上記芳香環を有するアルコールとしては、例えば、フェノール、ベンジルアルコール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等が挙げられる。上記芳香環を有する炭化水素における炭素原子数は、適度な乾燥性が得られやすい点から、6以上が好ましい。
【0043】
上記有機溶剤の含有割合は、上記洗浄液の総量(100質量%)に対して、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%、更に好ましくは95質量%以上であり、97質量%以上、99質量%以上であってもよい。上記含有割合が50質量%以上であると洗浄性により優れる。
【0044】
上記有機溶剤が、炭化水素及びアルコールの両方を含む場合、炭化水素及びアルコールの合計の含有割合は、上記洗浄液の総量(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。また、炭化水素に対するアルコールの質量比(アルコール/炭化水素)は、洗浄性と乾燥性のバランスに優れる点から、5/95~50/50が好ましく、より好ましくは10/90~40/60、更に好ましくは15/85~30/70である。アルコールは、後述する分散剤が付着した粒子と相互作用し、粒子表面の疎水効果を高める。炭化水素は疎水化された粒子を分散し、分散性を高める。炭化水素とアルコールを両方含む場合、様々な種類の粒子を分散させ得ることができ、更に、粒子含有材料が含む樹脂などの種々の添加剤を溶解させ得る点で有利である。
【0045】
本開示で用い得る有機溶剤は、特に限定されないが、25℃における蒸気圧が0.01~70mmHgであってよく、0.1~60mmHg、又は0.15~50mmHgであってもよい。
【0046】
上記有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ブタノール(4.5mmHg)、プロパノール(14.5mmHg)、トルエン(21.8mmHg)、ヘプタン(34.5mmHg)、ドデカン(0.15mmHg)、テトラデカン(0.012mmHg)等が挙げられる。
【0047】
本開示で用い得る有機溶剤は、25℃における蒸気圧が0.1mmHg未満(0.05mmHg以下、又は0.02mmHg未満)である低蒸気圧の有機溶剤を含んでいてもよいが、その含有割合は、洗浄後に乾燥しやすくする点から、有機溶剤の総量(100質量%)に対して、80質量%未満が好ましく、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。下限は特に限定されないが、例えば、0質量%、1質量%又は2質量%である。
【0048】
上記の低蒸気圧の有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ノナノール(0.023mmHg)、デカノール(0.0085mmHg)、テトラデカン(0.012mmHg)等が挙げられる。
【0049】
本開示で用い得る有機溶剤は、25℃における蒸気圧が70mmHg超(80mmHg以上、又は90mmHg以上)である高蒸気圧の有機溶剤を含んでいてもよいが、その含有割合は、使用時に揮発しにくくする点から、有機溶剤の総量(100質量%)に対して、90質量%未満が好ましく、より好ましくは50質量%未満、更に好ましくは15質量%未満である。下限は特に限定されないが、例えば、0質量%、1質量%又は2質量%である。
【0050】
上記の高蒸気圧の有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール(95.2mmHg)、ペンタン(513mmHg)、ヘキサン(120mmHg)等が挙げられる。
【0051】
本開示の洗浄液は、本開示の効果を損ねない範囲において水を含んでいてもよい。上記洗浄液中の水の含有割合は、上記洗浄液の総量(100質量%)に対して、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0052】
(分散剤)
上記洗浄液は、粒子を分散するための分散剤を含むことにより、粒子の付着物を洗浄する際、残留する粒子が上記洗浄液中に分散しやすくなるので、洗浄性により一層優れる。上記分散剤は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0053】
上記分散剤は上記有機溶剤への溶解性に優れる観点から、有機化合物であることが好ましい。また、上記分散剤は官能基を有することが好ましい。すなわち、上記分散剤は官能基を有する化合物であることが好ましい。上記官能基としては、例えば、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基(メルカプト基)が好ましい。官能基を有する分散剤は、粒子(特にナノサイズの金属粒子)の分散性に優れ、洗浄性により一層優れる。
【0054】
上記カルボキシ基を有する分散剤としては、カルボン酸、アミノ酸等が挙げられる。
【0055】
上記カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の脂肪族飽和モノカルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘサエン酸、エイコサペンタエン酸等の脂肪族不飽和モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シクロペンタンカルボン酸などが挙げられる。ヒドロキシ基を有するカルボン酸としては、乳酸、りんご酸、クエン酸、サリチル酸等が挙げられる。カルボン酸化合物としては炭素原子数2~20の脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
【0056】
上記アミノ酸としては、例えば、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。
【0057】
上記アミノ基を有する分散剤としてはアミン、上記アミノ酸、アミノアルコール等が挙げられる。
【0058】
上記アミンとしては、アミノ基の窒素原子上に脂肪族炭化水素基を有するアミン(脂肪族炭化水素アミン)、脂環式炭化水素基を有するアミン(脂環式炭化水素アミン)、芳香族炭化水素基を有するアミン(芳香族炭化水素アミン)、複素環を有するアミン(複素環式アミン)等が挙げられる。なお、アミンにおける炭化水素基及び複素環は、置換基を有していてもよい。
【0059】
上記脂肪族炭化水素アミンとしては、アミノ基と当該アミノ基の窒素原子上に直鎖状脂肪族炭化水素基を有するアミン(直鎖状脂肪族炭化水素アミン)、アミノ基と当該アミノ基の窒素原子上に分岐鎖状脂肪族炭化水素基を有するアミン(分岐鎖状脂肪族炭化水素アミン)が挙げられる。
【0060】
上記直鎖状脂肪族炭化水素アミンとしては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン等の飽和直鎖状脂肪族炭化水素アミン、オレイルアミン等の不飽和直鎖状脂肪族炭化水素アミン等の第一級モノアミン;N,N-ジエチルアミン、N,N-ジ(n-プロピル)アミン、N,N-ジ(n-ブチル)アミン、N,N-ジ(n-ペンチル)アミン、N,N-ジ(n-ヘキシル)アミン、N,N-ジ(n-ペプチル)アミン、N,N-ジ(n-オクチル)アミン、N,N-ジ(n-ノニル)アミン、N,N-ジ(n-デシル)アミン、N,N-ジ(n-ウンデシル)アミン、N,N-ジ(n-ドデシル)アミン、N-メチル-N-(n-プロピル)アミン、N-エチル-N-(n-プロピル)アミン、N-(n-プロピル)-N-(n-ブチル)アミン等の第二級モノアミン;トリエチルアミン、トリ(n-ブチル)アミン、トリ(n-ヘキシル)アミン等の第三級モノアミン等のような、1つのアミノ基と当該アミノ基の窒素原子上に1以上の直鎖状脂肪族炭化水素基を有するモノアミン(直鎖状脂肪族炭化水素モノアミン)が挙げられる。
【0061】
上記分岐鎖状脂肪族炭化水素アミンとしては、例えば、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソペンチルアミン、tert-ペンチルアミン、イソヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-オクチルアミン等の第一級アミン;N,N-ジイソブチルアミン、N,N-ジイソペンチルアミン、N,N-ジイソヘキシルアミン、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)アミン等の第二級アミン;N,N,N-トリイソブチルアミン、N,N,N-トリイソペンチルアミン、N,N,N-トリイソヘキシルアミン、N,N,N-トリ(2-エチルヘキシル)アミン等の第三級アミン等のような、1つのアミノ基と当該アミノ基の窒素原子上に1以上の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を有するモノアミン(分岐鎖状脂肪族炭化水素モノアミン)が挙げられる。
【0062】
また、上記アミンとしては、ジアミン等のアミノ基を2以上有するアミンが挙げられる。上記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン等、2価の脂肪族炭化水素基と当該脂肪族炭化水素基を介した2つのアミノ基とを有する化合物(脂肪族炭化水素ジアミン)が挙げられる。
【0063】
上記芳香族炭化水素アミンとしては、例えば、ベンジルアミン等が挙げられる。上記複素環式アミンとしては、例えば、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0064】
上記アミノアルコールとしては、例えば、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、n-メチルエタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール等が挙げられる。
【0065】
上記スルホ基を有する分散剤としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、1-ブタンスルホン酸、1-ヘキサンスルホン酸、1-ヘプタンスルホン酸、1-オクタンスルホン酸、1-ノナンスルホン酸、1-デカンスルホン酸、1-ドデカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸等が挙げられる。
【0066】
上記メルカプト基を有する分散剤としては、例えば、メタンチオール、メタンジチオール、エタンチオール、1,1-エタンジチオール、1,2-エタンジチオール、2-ヒドロキシエタンチオール、プロパンチオール、2-プロパンチオール、2-プロペンチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、ブタンチオール、2-ブタンチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、2-メチルプロパンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、3-ヒドロキシ-2-ブタンチオール、ペンタンチオール、2-ペンタンチオール、3-ペンタンチオール、シクロペンタンチオール、2-メチルブタンチオール、3-メチルブタンチオール、3-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-2-ブテンチオール、3-ヒドロキシ-2-メチルブタンチオール、ヘキサンチオール、1,6-ヘキサンジチオール、シクロヘキサンチオール、3,3-ジメチルブタンチオール、ヘプタンチオール、2-ヘプタンチオール、4-エトキシ-2-メチル-2-ブタンチオール、オクタンチオール、1,8-オクタンジチオール、(S)-1-メトキシ-3-ヘプタンチオール、1,9-ノナンジチオール、1,1-ジメチルヘプタンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール等が挙げられる。
【0067】
上記分散剤の炭素原子数は、特に限定されないが、4~24が好ましく、より好ましくは6~22、更に好ましくは10~20である。上記炭素原子数が上記範囲内であると、粒子(特に金属粒子)の分散性がより良好であり、洗浄性により優れる。
【0068】
上記官能基は、粒子の種類に応じて適宜選択できる。上記粒子(特に金属粒子)が後述のように有機保護剤により表面保護されている場合、当該金属粒子の分散性に優れ、洗浄性により優れる点から、上記官能基は、上記有機保護剤が備える官能基と同じであることが好ましい。また、洗浄性により一層優れる観点から、上記分散剤の炭素原子数は、上記粒子の表面を保護する有機保護剤の炭素原子数よりも多いことが好ましい。
【0069】
上記分散剤としては、中でも、アミンが好ましく、より好ましくは炭素原子数8以上の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素モノアミン、更に好ましくは炭素原子数8以上の直鎖状脂肪族炭化水素モノアミンである。炭素原子数8以上であると、分散剤のアミノ基が金属粒子表面に吸着しやすく、その際に金属粒子同士の間隔を確保しやすいため、金属粒子同士の凝集を防ぐ作用が向上し、分散性及び洗浄性により優れる。上記飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素モノアミンに係る炭素原子数の上限は特に限定されないが、入手のしやすさを考慮して、通常、炭素原子数18以下であることが好ましい。
【0070】
上記分散剤としては、特に、炭素原子数18以下(好ましくは炭素数8~18)の不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素モノアミンが好ましい。不飽和の直鎖状構造を有すると、分散剤のアミノ基が金属粒子表面に吸着しやすく、その際に金属粒子同士の間隔を確保しやすいため、金属粒子同士の凝集を防ぐ作用が向上し、分散性及び洗浄性により優れる。上記直鎖状脂肪族炭化水素モノアミンとしては、例えば、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。中でも、分散性及び洗浄性に特に優れる点から、オレイルアミンが好ましい。
【0071】
上記分散剤の含有割合は、上記洗浄液の総量(100質量%)に対して、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。上記含有割合が0.1質量%以上であると、金属粒子の分散性により優れる。上記分散剤の含有割合の上限は特に限定されないが、例えば、10質量%、8質量%又は6質量%である。
【0072】
本開示の洗浄液は、上記有機溶剤及び上記分散剤以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、酸等が挙げられる。上記その他の成分は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。上記その他の成分の合計の含有割合は、上記洗浄液の総量(100質量%)に対して、3質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。
【0073】
本開示の洗浄液は、23℃における粘度が0.2~200mPa・sであることが好ましく、より好ましくは0.2~100mPa・s、更に好ましくは0.3~50mPa・sである。上記粘度が0.1mPa・s以上であると、粒子の付着物から遊離させやすく、200mPa・s以下であると、洗浄後に残液しにくく乾燥しやすくなる。
【0074】
(粒子の付着物)
本開示の洗浄液は、粒子の付着物の洗浄に用いるためのものである。上記付着物としては、粒子含有材料の取扱に用いた設備、布製品、器具又は装置等が挙げられる。洗浄対象である上記設備としては、例えば、実験設備や生産設備等の椅子、机、床、壁等、コンテナ等の輸送設備、保護具・防具等が挙げられる。洗浄対象である上記布製品としては、作業着等の衣服等が挙げられる。洗浄対象である上記器具としては、例えば、スパチュラ、スプーン、ヘラ、乳鉢と乳棒、各種容器、スクリーン版、メタルマスク、ノズル等が挙げられる。洗浄対象である上記装置としては、例えば、ディップ、ディスペンサ、スプレー、スクリーン等の塗布装置;インクジェット等の印刷装置;押出機、ミキサー(スクリューブレンダー、リボンブレンダー、パドルミキサー、バンバリミキサー、プラネタリミキサ等)などの製造装置等が挙げられる。
【0075】
上記粒子としては、特に限定されないが、金属(金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、コバルト、ルテニウム、プラチナ、パラジウム、クロム、ゲルマニウム、スズ、ビスマス、鉛、インジウム等)から形成される金属粒子、金属酸化物(シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等)などから形成される無機粒子や、樹脂(ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)などから形成される有機粒子等が挙げられる。
【0076】
上記金属粒子を含む粒子含有材料としては、特に限定されないが、例えば、導電性インク等が挙げられる。上記無機粒子を含む粒子含有材料としては特に限定されないが、例えば、太陽電池電極用ペースト等が挙げられる。上記有機粒子を含む粒子含有材料としては特に限定されないが、例えば、トナー等が挙げられる。
【0077】
上記金属粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子(マイクロ粒子、ナノ粒子等)が好ましい。また、金属粒子の表面が有機保護剤で被覆された構成を有する表面修飾金属粒子が好ましい。すなわち、上記金属粒子は表面修飾金属微粒子であることが好ましい。上記金属粒子は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0078】
上記粒子の一次粒子の大きさ(平均一次粒子径)は、1000μm未満であることが好ましく、より好ましくは1000nm未満、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは80nm以下、特に好ましくは70nm以下、最も好ましくは60nm以下である。上記平均一次粒子径は、例えば0.5nm以上、又は1nm以上であってもよい。
【0079】
上記有機保護剤としては、特に限定されず、金属粒子の保護剤(安定剤)として用いられる公知乃至慣用の有機保護剤が挙げられる。上記有機保護剤としては、官能基を有する有機化合物が挙げられる。上記官能基としては、上述の分散剤が有し得る官能基として例示及び説明されたものが挙げられる。上記官能基としては、中でも、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、チオール基(メルカプト基)が好ましく、より好ましくはアミノ基である。上記有機保護剤は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0080】
上記官能基を有する上記有機保護剤の具体例としては、上述の分散剤として例示及び説明されたものが挙げられる。
【0081】
上記有機保護剤の炭素原子数は、特に限定されないが、2~24が好ましく、より好ましくは3~22、更に好ましくは4~20である。
【0082】
上記粒子含有材料は溶剤を含んでいてもよい、上記溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の炭化水素;シクロヘキサン、シクロドデセン等の脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;テルピオネールC等のテルペン等が挙げられる。中でも、上記溶剤は、上記炭化水素及び/又は上記アルコールを含むことが好ましい。
【0083】
上記粒子含有材料は、上記粒子及び上記溶剤以外にも、例えば、バインダー樹脂、表面エネルギー調整剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、密着性付与剤等の添加剤を含んでいてもよい。中でも、焼結体について、基板に対する密着性や、可撓性が向上する効果を得られる点から、バインダー樹脂を含むことが好ましい。
【0084】
バインダー樹脂としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、中でも、セルロース系樹脂が好ましい。これらは、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。セルロース系樹脂としては、例えば、商品名「エトセルstd.200」、「エトセルstd.300」(以上、ダウケミカル社製)等の市販品を使用することができる。上記バインダー樹脂の含有量は、粒子含有材料全量の5.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5~5.0質量%、更に好ましくは1.0~3.0質量%である。
【0085】
本開示の洗浄液を用いると、粒子を分散させバインダー樹脂等の高粘度成分を溶解させつつ、粒子の凝集を抑制できるので、粒子の付着物を効果的に洗浄することができる。本開示の洗浄液を用いる洗浄方法としては、例えば、洗浄容器に備えられた上記洗浄液中に洗浄対象を浸漬する方法や、上記洗浄液を吹付けながらブラシ等によりスクラブする方法等が挙げられる。上記洗浄方法は、粒子の分散、凝集抑制が一層容易となりやすい点から、超音波を照射しながら行ってもよい。
【0086】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0087】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0088】
実施例1~7及び比較例1、2
表1に示す配合量で各成分を混合して洗浄液を調製した。
【0089】
<評価>
実施例及び比較例で作製した洗浄液について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(1a)洗浄性(粒子分散)
スライドガラス(商品名「S1112」、松浪硝子工業(株)製、長さ76mm、幅26mm、厚み1mm)に、青テープを用いて銀ナノインク(Picosil DNS409、(株)ダイセル製)を塗膜質量が0.05g程度となるようにスキージ塗布した。スキージ塗布したスライドガラスを、実施例及び比較例で作製した洗浄液100mLを備えた125mL容器(UG軟膏壺(馬野化学容器(株)製))に塗布部分全体が浸漬するように載置し、超音波洗浄器(二周波)(ASONE社製)を用いて、40kHzで80分間超音波を照射した後、洗浄液の撮影画像について、画像編集ソフト(マイクロソフト ペイント、バージョン21H2)を用いてRGB測定を行い、R値を得た。各洗浄液に係るR値であるRを、標準となる洗浄液に係るR値であるR0で除した値(R/R0)を粒子分散パラメータとして、以下の評価基準により洗浄性(粒子分散)を評価した。R0は、比較例1に係る1.00である。
【0091】
(洗浄性(粒子分散)の評価基準)
◎(優良):粒子分散パラメータの値が1.6以上
○(良好):粒子分散パラメータの値が1.2以上1.6未満
△(可) :粒子分散パラメータの値が1.0超1.2未満
×(不可):粒子分散パラメータの値が1.0以下
【0092】
(1b)洗浄性(塗膜消失)
スライドガラス(商品名「S1112」、松浪硝子工業(株)製)に青テープを用いて銀ナノインク(Picosil DNS409、(株)ダイセル製)をスキージ塗布した。塗布後の質量から塗布前の質量を減じることによって、塗布された銀ナノインクの塗布質量(g)を測定した。スキージ塗布したスライドガラスを、実施例及び比較例で作製した洗浄液100mLを備えた125mL容器(UG軟膏壺(馬野化学容器(株)製)に塗布部分全体が浸漬するように載置し、超音波洗浄器(二周波)(ASONE社製)を用いて、40kHzで超音波を照射し、銀ナノインク全量が除去されるまでの除去時間(秒)を測定した。そして、上記塗布時間を上記塗布質量で除した値(秒/g)を塗膜消失パラメータとして、以下の評価基準により洗浄性(塗膜消失)を評価した。
【0093】
(洗浄性(塗膜消失)の評価基準)
○(良好):塗膜消失パラメータが4000以下
△(可) :塗膜消失パラメータが4000超5000以下
×(不可):塗膜消失パラメータが5000超
【0094】
洗浄性の評価は、上記洗浄性(粒子分散)及び上記洗浄性(塗膜消失)の評価のうち、低い方とした。
【0095】
(2)乾燥性
分析天秤(商品名「AP224W」、(株)島津製作所製)を用いて、実施例及び比較例で作製した洗浄液について、スライドガラス(商品名「スライドグラス S1112」、松浪硝子工業(株)製)に滴下した一滴の滴下直後の質量W0(g)と、滴下してから25℃、40%RHにおいて1分経過した後の上記洗浄液の質量W(g)を測定した。そして、WからW0を減じた値をW0で除した値を、乾燥性パラメータ((W0-W)/W0)として、以下の評価基準により残液と揮発について評価した。
【0096】
(乾燥性(残液)の評価基準)
○(良好):乾燥性パラメータが0.01以上
△(可) :乾燥性パラメータが0.005以上0.01未満
×(不可):乾燥性パラメータが0.005未満
【0097】
(乾燥性(揮発)の評価基準)
○(良好):乾燥性パラメータが0.9以下
△(可) :乾燥性パラメータが0.9超1.0未満
×(不可):乾燥性パラメータが1.0以上
【0098】
乾燥性の評価は、上記乾燥性(残液)及び上記乾燥性(揮発)の評価のうち、低い方とした。
【0099】
【表1】
比較例2では、洗浄液が分液したため評価を行わなかった。
【0100】
表1に示されるように、実施例1~7の洗浄液は、洗浄性及び乾燥性に優れると評価された(洗浄性評価:〇~△、乾燥性評価:〇~△)。また、有機溶剤について、蒸気圧が0.02mmHg以下である有機溶剤、又は、蒸気圧90mmHg以上である有機溶剤を含まない実施例1~4の洗浄液について、乾燥性評価が特に優れると評価された(乾燥性評価:〇)。一方、分散剤を含まない比較例1では、洗浄性に劣ることが確認された(洗浄性評価:×)。
【0101】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]有機溶剤と、粒子を分散するための分散剤とを含み、水の含有割合が5質量%以下である、前記粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液。
[付記2]下記乾燥性パラメータが0.001~1.0であり、
下記粒子分散パラメータが1超である、粒子の付着物の洗浄に用いる洗浄液。
乾燥性パラメータ:(W0-W)/W0
[W0は、ガラス板の表面に滴下した直後の前記洗浄液の質量であり、Wは、滴下してから25℃、40%RHにおいて1分経過した後の前記洗浄液の質量である]
粒子分散パラメータ:R/R0
[Rは、銀ナノインクを塗膜質量0.05gとなるように塗布した長さ76mm、幅26mm、厚み1mmのガラス板を、前記洗浄液100mLを備えた容器に、塗布部分全体が浸漬するように載置し、40kHzで80分間超音波を照射した後、前記洗浄液の撮影画像についてRGB測定を行って得られるR値であり、R0は、ブタノール20質量部及びヘプタン80質量部からなる標準洗浄液について得られる前記R値である]
[付記3]有機溶剤と、粒子を分散するための分散剤とを含む、付記2に記載の洗浄液。
[付記4]前記乾燥性パラメータが0.01~1.0(好ましくは0.1~0.9)である、付記2又は3に記載の洗浄液。
[付記5]前記粒子分散パラメータが1.1以上(好ましくは1.2以上)である、付記2~4のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記6]塗膜消失パラメータが5000以下(好ましくは4000以下、より好ましくは1300以下)である、付記1~5のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記7]前記有機溶剤が、炭化水素及び/又はアルコールを含む、付記1~6のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記8]前記有機溶剤が、炭化水素及びアルコールを含む、付記1~6のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記9]前記炭化水素が、炭素原子数5~20(好ましくは6~15、より好ましくは7~13)の直鎖又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素である、付記7又は8に記載の洗浄液。
[付記10]前記炭化水素が、炭素原子数6以上(好ましくは10以上)の脂環を有する炭化水素である、付記7又は8に記載の洗浄液。
[付記11]前記炭化水素が、ベンゼン、トルエン及びキシレンから選択される少なくとも1種の芳香環を有する炭化水素である、付記7又は8に記載の洗浄液。
[付記12]前記アルコールが、炭素原子数1~20(好ましくは2~10、より好ましくは3~5)の直鎖又は分岐鎖状のアルコール、炭素原子数6~20の脂環を有するアルコール、又は、炭素原子数6以上の芳香環を有するアルコール(好ましくは、炭素原子数1~20の直鎖又は分岐鎖状のアルコール)である、付記7~11のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記13]炭化水素及びアルコールの合計の含有割合が、前記洗浄液の総量(100質量%)に対して、50質量%以上(好ましくは80質量%より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上)である、付記7~12のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記14]炭化水素に対するアルコールの質量比(アルコール/炭化水素)が、5/95~50/50(好ましくは10/90~40/60、より好ましくは15/85~30/70)である、付記7~13のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記15]前記有機溶剤の含有割合が、前記洗浄液の総量(100質量%)に対して、80質量%以上(好ましくは90質量%、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは97質量%以上、特に好ましくは99質量%以上)である、付記1~14のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記16]前記有機溶剤が、25℃における蒸気圧が0.01~70mmHg(0.1~60mmHg、又は0.15~50mmHg)である、付記1~15のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記17]前記有機溶剤中の、25℃における蒸気圧が0.1mmHg以下(0.05mmHg以下又は0.02mmHg未満)である有機溶剤の含有量が、80質量%未満(好ましくは75質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、特に好ましくは15質量%以下)である、付記1~16のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記18]前記有機溶剤中の、25℃における蒸気圧70mmHg超(80mmHg以上、又は90mmHg以上)である有機溶剤の含有量が、90質量%未満(好ましくは50質量%未満、より好ましくは15質量%未満)である、付記1~17のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記19]水の含有量が、前記洗浄液の総量(100質量%)に対して、5質量%以下(好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下)である、付記1~18のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記20]前記分散剤が、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物である、付記1、3~19のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記21]前記分散剤の炭素原子数が、4~24(好ましくは6~22、より好ましくは10~20)である、付記1、3~20のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記22]前記分散剤はアミンである、付記1、3~21のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記23]前記アミンが、炭素原子数8以上の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素モノアミン(好ましくは炭素原子数8以上の直鎖状脂肪族炭化水素モノアミン)である、付記22に記載の洗浄液。
[付記24]前記分散剤がオレイルアミンである、付記23に記載の洗浄液。
[付記25]前記分散剤の含有割合が、前記洗浄液の総量(100質量%)に対して、0.1質量%以上(好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上)である、付記1、3~24のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記26]前記分散剤の含有割合の上限が、前記洗浄液の総量(100質量%)に対して、10質量%(8質量%又は6質量%)である、付記1、3~25のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記27]前記粒子が、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、コバルト、ルテニウム、プラチナ、パラジウム、クロム、ゲルマニウム、スズ、ビスマス、鉛、又はインジウムを含む金属から形成される金属粒子を含む、付記1、3~26のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記28]前記粒子の一次粒子の大きさ(平均一次粒子径)が、1000μm未満(好ましくは1000nm未満、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは80nm以下、特に好ましくは70nm以下、最も好ましくは60nm以下)である、付記1、3~27のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記29]前記分散剤の含有割合が、前記洗浄液の総量(100質量%)に対して、0.5nm以上(又は1nm以上)である、付記1、3~28のいずれか1つに記載の洗浄液。
[付記30]付記1~29のいずれか1つに記載の洗浄液を用いて前記粒子の付着物を洗浄する洗浄方法。
[付記31]前記粒子の付着物に超音波を照射しながら洗浄する、付記30に記載の洗浄方法。