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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176236
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電子部品及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20231206BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20231206BHJP
   H01G 4/252 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 201F
H01G4/30 201D
H01G4/30 201G
H01G4/30 201K
H01G4/30 311E
H01G4/30 311Z
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/228 B
H01G4/252 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088408
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】岡藤 有輝
(72)【発明者】
【氏名】井上 順之
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC10
5E001AD03
5E001AD05
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF02
5E001AF03
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH03
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC40
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
5E082JJ02
5E082JJ03
5E082JJ07
5E082JJ15
5E082MM05
5E082MM24
5E082PP03
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】電気的特性の劣化を抑制する電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品は、端面3aを有する素体3と、端面3aに配置されている外部電極5と、素体3内に配置されている内部電極7と、を備えている。内部電極7は、外部電極5と接合されている。外部電極5と内部電極7との接合界面13は、端面3aより素体3の内側に位置している。内部電極7は、第一金属を含んでいる。外部電極5は、第一金属とは異なる第二金属を含んでいる。第一金属と第二金属とを含む相互拡散領域Rが、接合界面13を挟んで、外部電極5と内部電極7とにそれぞれ存在する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面を有する素体と、
前記端面に配置されている外部電極と、
前記素体内に配置されていると共に前記外部電極と接合されている内部電極と、を備え、
前記外部電極と前記内部電極との接合界面は、前記端面より前記素体の内側に位置し、
前記内部電極は、第一金属を含み、
前記外部電極は、前記第一金属とは異なる第二金属を含み、
前記第一金属と前記第二金属とを含む相互拡散領域が、前記接合界面を挟んで、前記外部電極と前記内部電極とにそれぞれ存在する、電子部品。
【請求項2】
前記素体には、前記相互拡散領域がその内側に位置すると共に、前記端面に開口し、かつ、前記接合界面がその底部を規定する窪みが形成されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記窪みの内側壁面は、互いに対向し、かつ、互いの間隔が前記窪みの開口に向かうにしたがって増加するように傾斜する一対の面を含む、請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記相互拡散領域は、前記接合界面で、それぞれ50原子%の前記第一金属と前記第二金属とを含む合金を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記窪みの幅は、1μm以上10μm以下である、請求項2~3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記窪みの深さは、0.5μm以上10μm以下である、請求項2~3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
第一金属を含む内部電極が内部に配置されている素体を準備する工程と、
前記素体へのレーザ光の照射により、底部に前記内部電極の一端が露出する窪みを前記素体に形成する工程と、
前記第一金属とは異なる第二金属を含む外部電極を前記窪みが開口する面に配置する工程と、を含み、
前記配置する工程は、
前記第一金属と前記第二金属とを含む相互拡散領域が、前記外部電極と前記内部電極との接合界面を挟んで、前記外部電極と前記内部電極とにそれぞれ存在するように、前記外部電極と前記内部電極とを接合する工程を含む、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
知られている電子部品は、端面を有する素体と、端面に配置されている外部電極と、素体内に配置されている内部電極と、を備えている(たとえば、特許文献1)。内部電極は、外部電極と接合されている。内部電極は、端面から露出している。外部電極と内部電極との接合界面は、素体の端面上に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-277381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内部電極の一端が素体の外側に突き出ていることがある。外部電極は、たとえば、焼結金属層とめっき層とを有している。めっき層は、焼結金属層上にめっき処理を行うことで、形成される。内部電極の一端が素体の外側に突き出ている構成では、外部電極と内部電極との接合界面が、端面より素体の外側に位置する。この場合、上述しためっき処理を行う際に、内部電極の一端と素体との間から、めっき液が素体内部に侵入することがある。めっき液が素体内部に侵入した場合、電子部品の電気的特性が劣化するおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、電気的特性の劣化を抑制する電子部品を提供することを目的とする。本発明の別の一つの態様は、電気的特性の劣化を抑制する電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様に係る電子部品は、端面を有する素体と、端面に配置されている外部電極と、素体内に配置されている内部電極と、を備えている。内部電極は、外部電極と接合されている。外部電極と内部電極との接合界面は、端面より素体の内側に位置している。内部電極は、第一金属を含んでいる。外部電極は、第一金属とは異なる第二金属を含んでいる。第一金属と第二金属とを含む相互拡散領域が、接合界面を挟んで、外部電極と内部電極とにそれぞれ存在する。
【0007】
上記一つの態様では、外部電極と内部電極との接合界面が、端面より素体の内側に位置している。相互拡散領域は、接合界面を挟んで、外部電極と内部電極とにそれぞれ存在している。相互拡散領域は、内部電極が含む第一金属と外部電極が含む第二金属とを含んでいるので、相互拡散領域以外の領域と比して、密度が高い。したがって、めっき処理を行う際であっても、めっき液が素体内部に侵入しがたい。この結果、上記一つの態様は、電気的特性の劣化を抑制する。
【0008】
別の一つの態様に係る電子部品の製造方法は、第一金属を含む内部電極が内部に配置されている素体を準備する工程と、素体へのレーザ光の照射により、底部に内部電極の一端が露出する窪みを素体に形成する工程と、第一金属とは異なる第二金属を含む外部電極を窪みが開口する面に配置する工程と、を含んでいる。配置する工程は、第一金属と第二金属とを含む相互拡散領域が、外部電極と内部電極との接合界面を挟んで、外部電極と内部電極とにそれぞれ存在するように、外部電極と内部電極とを接合する工程を含んでいる。
【0009】
上記別の一つの態様では、素体へのレーザ光の照射により、底部に内部電極の一端が露出する窪みが形成される。外部電極と内部電極とは、相互拡散領域が接合界面を挟んで外部電極と内部電極とにそれぞれ存在するように、接合される。この結果、上記別の一つの態様は、電気的特性の劣化を抑制する電子部品を確実に得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一つの態様は、電気的特性の劣化を抑制する電子部品を提供する。本発明の別の一つの態様は、電気的特性の劣化を抑制する電子部品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を示す図である。
図3図3は、内部電極及び窪みを示す図である。
図4図4は、外部電極、内部電極及び窪みの構成を示す図である。
図5図5は、本実施形態における電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
図1図4を参照して、本実施形態に係る電子部品の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る電子部品の断面構成を示す図である。図3は、内部電極及び窪みを示す図である。図4は、外部電極、内部電極及び窪みの構成を示す図である。
【0014】
図1及び図2に示されるように、電子部品1は、素体3と、外部電極5と、複数の内部電極7と、複数の内部電極9と、を備えている。本実施形態では、電子部品1は、一対の外部電極5を備えている。本実施形態では、電子部品1は、積層セラミックコンデンサである。
【0015】
素体3は、直方体形状を呈している。直方体形状は、たとえば、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。素体3は、一対の端面3aと、一対の側面3cと、一対の側面3eと、を有している。本実施形態では、一対の端面3aは、第一方向D1で互いに対向し、一対の側面3cは、第二方向D2で互いに対向し、一対の側面3eは、第三方向D3で互いに対向している。一対の端面3a、一対の側面3c、及び一対の側面3eは、素体3の外表面を構成している。一対の側面3c及び一対の側面3eは、それぞれ一対の端面3aと隣り合うと共に、一対の端面3aを接続するように、第一方向D1に延在している。
【0016】
第一方向D1は、素体3の長さ方向であり、第二方向D2は、素体3の幅方向であり、第三方向D3は、素体3の高さ方向である。素体3の長さは、0.4mm以上7.5mm以下である。素体3の幅は、0.2mm以上6.3mm以下である。素体3の高さは、0.2mm以上2.8mm以下である。本実施形態では、素体3の長さは、5.7mmであり、素体3の幅は、5.0mmであり、素体3の高さは、2.6mmである。
【0017】
素体3は、複数の誘電体層が積層されて構成されている。各誘電体層は、第三方向D3に積層されている。素体3は、積層された複数の誘電体層を含んでいる。各誘電体層は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。誘電体材料は、たとえば、BaTiO系、Ba(Ti,Zr)O系、(Ba,Ca)TiO系、CaZrO系、又は(Ca,Sr)ZrO系の誘電体セラミックである。各誘電体層は、各誘電体層の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0018】
図2に示されるように、内部電極7と内部電極9とは、第三方向D3において異なる位置に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、素体3内において、第三方向D3に間隔を有して対向するように交互に配置されている。複数の内部電極7,9は、第三方向D3で互いに対向している。内部電極7と内部電極9とは、互いに極性が異なる。内部電極7は、一対の端面3aのうち一方の端面3aから露出している一端7aを有している。内部電極9は、一対の端面3aのうち他方の端面3aから露出している一端9aを有している。内部電極7の一端7aは、一対の端面3aのうち一方の端面3aから露出している。内部電極9の一端9aは、一対の端面3aのうち他方の端面3aから露出している。内部電極7,9は、導電性材料を含む。導電性材料は、金属M1を含む。内部電極7,9は、金属M1を含む。金属M1は、たとえば、Cu、Ni又はPtを含む。本実施形態では、内部電極7,9が含む金属M1は、Niである。内部電極7,9は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0019】
図1及び図2に示されるように、一対の外部電極5は、素体3に配置されている。一対の外部電極5は、第一方向D1において互いに離間している。一対の外部電極5は、素体3の表面に配置されている。外部電極5は、端面3aに配置されている。本実施形態では、外部電極5は、一対の側面3c及び一対の側面3eの各一部にも配置されている。外部電極5の端面3aに配置されている部分は、対応する内部電極7,9の端面3aから露出している一端7a,9aを覆うように配置されている。外部電極5の端面3aに配置されている部分は、対応する内部電極7,9の一端7a,9aと接合されている。これにより、外部電極5は、対応する内部電極7,9と接合されている。外部電極5は、対応する内部電極7,9に電気的に接続されている。
【0020】
外部電極5は、図2に示されるように、電極層E1と電極層E2とを有している。電極層E1は、素体3上に形成されている。電極層E2は、電極層E1上に形成されている。本実施形態では、外部電極5の、一つの端面3a、一対の側面3c、及び一対の側面3eに配置されている各部分が、電極層E1と電極層E2とを有している。電極層E2は、外部電極5の最外層を構成している。
【0021】
電極層E1は、素体3の表面に付与された導電性ペーストを乾燥させ、焼き付けることにより形成されている。電極層E1は、素体3に形成された焼結金属層である。導電性ペーストは、たとえば、内部電極7,9が含む金属M1とは異なる金属M2、ガラス、樹脂、及び有機溶剤を含んでいる。外部電極5は、内部電極7,9が含む金属M1とは異なる金属M2を含む。金属M2は、Cu、Ni又はAg-Pdを含む。本実施形態では、外部電極5が含む金属M2はCuであり、電極層E1はCuからなる焼結金属層である。たとえば、金属M1が第一金属である場合、金属M2が第二金属である。
【0022】
電極層E2は、電極層E1上に形成されためっき層である、電極層E2は、たとえば、めっき法により、電極層E1上に形成される。本実施形態では、電極層E2は、電極層E1全体を覆うように形成されている。電極層E1は、電極層E2を形成するための下地層である。電極層E1は、下地金属層である。電極層E2は、電極層E1上にNiめっきにより形成されたNiめっき層であってもよい。電極層E2は、たとえば、電極層E1上に形成されたNiめっき層と、Niめっき層上に形成されたSnめっき層と、を含んでいてもよい。
【0023】
素体3には、窪み11が形成されている。本実施形態では、素体3には、複数の窪み11が形成されている。本実施形態では、端面3aから露出している内部電極7,9の数に対応する数の窪み11が形成されている。窪み11は、端面3aに開口している。窪み11は、第一方向D1のうち、端面3aから素体3の内側に向かう方向に窪んでいる。本実施形態では、窪み11は、第二方向D2に延在するように形成されている。
【0024】
図3に示されるように、窪み11は、第一方向D1から見て、内部電極7と重なる位置に形成されている。窪み11は、第三方向D3において、内部電極7と同じ位置に形成されている。本実施形態では、窪み11は、第一方向D1から見て、内部電極7の全周を囲むように形成されている。内部電極7の一端7aは、第一方向D1から見て、窪み11に全周を囲まれている。
図示は省略するが、窪み11は、第一方向D1から見て、内部電極9と重なる位置に形成されている。窪み11は、第三方向D3において、内部電極9と同じ位置に形成されている。本実施形態では、窪み11は、第一方向D1から見て、内部電極9の全周を囲むように形成されている。内部電極9の一端9aは、第一方向D1から見て、窪み11に全周を囲まれている。
【0025】
窪み11は、外部電極5と内部電極7,9との接合界面13と内側壁面11aとにより画成されている。接合界面13は、窪み11の底部を規定している。内側壁面11aは、一対の面11a及び一対の面11aの四つの面からなる。一対の面11aは、第三方向D3で、互いに対向している。一対の面11aは、第二方向D2で、互いに対向している。図4に示されるように、一対の面11aは、互いの間隔が窪み11の開口に向かうにしたがって、増加するように傾斜している。一対の面11aの互いの間隔は、窪み11の底において最小となり、窪み11の開口において最大となる。本実施形態では、一対の面11aも、互いの間隔が窪み11の開口に向かうにしたがって、増加するように傾斜している。内側壁面11aにより規定される領域は、錐台形状を呈している。
【0026】
窪み11は、深さdを有している。深さdは、外部電極5と内部電極7,9との接合界面13から端面3aを含む基準面Pまでの第一方向D1での長さにより規定される。深さdは、たとえば、0.5μm以上10μm以下である。本実施形態では、深さdは、3μmである。
窪み11は、幅wを有している。幅wは、窪み11の第三方向D3での長さで規定される。幅wは、窪み11の第三方向D3における最大幅である。幅wは、たとえば、1μm以上10μm以下である。本実施形態では、幅wは、5μmである。
【0027】
図3及び図4に示されるように、内部電極7は、窪み11の底部に露出している。内部電極7の一端7aは、窪み11の底部に露出している。一端7aが窪み11の底部に露出することで、内部電極7は、一対の端面3aのうち一方の端面3aから露出している。本実施形態では、一端7aの全体が、窪み11の底部にて、一対の端面3aのうち一方の端面3aから露出している。各内部電極7は、一端7aにて、対応する外部電極5と接合されている。外部電極5と内部電極7との接合界面13は、一方の端面3aより素体3の内側に位置している。
図示は省略するが、内部電極9は、窪み11の底部に露出している。内部電極9の一端9aは、窪み11の底部に露出している。一端9aが窪み11の底部に露出することで、内部電極9は、一対の端面3aのうち他方の端面3aから露出している。本実施形態では、一端9aの全体が、窪み11の底部にて、一対の端面3aのうち他方の端面3aから露出している。各内部電極9は、一端9aにて、対応する外部電極5と接合されている。外部電極5と内部電極9との接合界面13は、他方の端面3aより素体3の内側に位置している。
【0028】
電極層E1の厚さは、窪み11が形成されている位置と、窪み11が形成されていない位置と、で互いに異なっている。電極層E1の、窪み11が形成されている位置での厚さは、電極層E1の、窪み11が形成されていない位置での厚さより大きい。外部電極5の、窪み11が形成されている位置での厚さは、外部電極5の、窪み11が形成されていない位置での厚さより大きい。電極層E1の厚さ及び外部電極5の厚さは、電極層E1の第一方向D1での長さ及び外部電極5の第一方向D1での長さにより、それぞれ規定される。
【0029】
図4に示されるように、相互拡散領域Rは、外部電極5と内部電極7とにそれぞれ存在している。相互拡散領域Rは、外部電極5と内部電極7との接合界面13を挟んで、外部電極5と内部電極7とにそれぞれ存在している。相互拡散領域Rは、内部電極7と接合されている外部電極5のうち電極層E1に存在している。内部電極7及び内部電極7と接合されている外部電極5は、相互拡散領域Rを有している。相互拡散領域Rは、窪み11内に位置している。相互拡散領域Rのうち、内部電極7と接合されている外部電極5に存在する部分は、窪み11内に位置している。
図示は省略するが、相互拡散領域Rは、外部電極5と内部電極9とにそれぞれ存在している。相互拡散領域Rは、外部電極5と内部電極9との接合界面13を挟んで、外部電極5と内部電極9とにそれぞれ存在している。相互拡散領域Rは、内部電極9と接合されている外部電極5のうち電極層E1に存在している。内部電極9及び内部電極9と接合されている外部電極5は、相互拡散領域Rを有している。相互拡散領域Rは、窪み11内に位置している。相互拡散領域Rのうち、内部電極9と接合されている外部電極5に存在する部分は、窪み11内に位置している。
【0030】
相互拡散領域Rは、内部電極7,9が含む金属M1と外部電極5が含む金属M2とを含んでいる。相互拡散領域Rは、金属M1と金属M2とが相互に拡散している領域である。相互拡散領域Rは、それぞれ50原子%の金属M1と金属M2とを含む合金を含んでいる。本実施形態では、相互拡散領域Rは、接合界面13で、それぞれ50原子%の金属M1と金属M2とを含む。接合界面13では、それぞれ50原子%での金属M1と金属M2との合金が形成されている。本実施形態では、上述したように、金属M1はNiであり、金属M2はCuである。したがって、本実施形態では、相互拡散領域Rは、接合界面13で、それぞれ50原子%のNiとCuとを含む。
【0031】
以上説明したように、電子部品1では、外部電極5と内部電極7,9との接合界面13が、端面3aより素体3の内側に位置している。相互拡散領域Rは、接合界面13を挟んで、外部電極5と内部電極7,9とにそれぞれ存在している。相互拡散領域Rは、内部電極7,9が含む金属M1と外部電極5が含む金属M2とを含んでいるので、相互拡散領域R以外の領域と比して、密度が高い。したがって、めっき処理を行う際であっても、めっき液が素体3内部に侵入しがたい。この結果、電子部品1は、電気的特性の劣化を抑制する。
【0032】
めっき液が素体内部に侵入した電子部品が、たとえば、はんだ実装される際に、めっき液がガス化することがある。この場合、めっき液から生じるガスが、素体外に噴出するおそれがある。ガスの噴出は、はんだ爆ぜを生じさせ得る。はんだ爆ぜは、電子部品の実装不良を招き得る。
上述したように、電子部品1では、めっき液が素体3内部に侵入しがたい。この結果、電子部品1は、実装不良の発生を抑制する。
【0033】
電子部品1では、素体3には、相互拡散領域Rがその内側に位置すると共に、端面3aに開口し、かつ、接合界面13がその底部を規定する窪み11が形成されている。
電子部品1では、接合界面13が端面3aより素体3内部に位置する構成が確実に実現され得る。この結果、電子部品1は、電気的特性の劣化を確実に抑制する。
【0034】
電子部品1では、窪み11の内側壁面11aは、互いに対向し、かつ、互いの間隔が窪み11の開口に向かうにしたがって増加するように傾斜している一対の面11aを含んでいる。
電子部品1では、内側壁面11aが第一方向D1に沿って延在している一対の面を含んでいる電子部品と比して、電極層E1の形成に用いられる導電性ペーストの量が削減される。この結果、電子部品1では、外部電極5が簡易に形成される。
【0035】
電子部品1では、相互拡散領域Rは、接合界面13で、それぞれ50原子%の金属M1と金属M2とを含む合金を含んでいる。
電子部品1では、めっき処理を行う際であっても、めっき液が素体3内部により一層確実に侵入しがたい。この結果、電子部品1は、電気的特性の劣化をより一層確実に抑制する。
【0036】
次に、図5を参照して、本実施形態における電子部品1の製造方法について説明する。図5は、本実施形態における電子部品の製造方法を示すフローチャートである。
【0037】
工程S1では、内部に複数の内部電極7,9が配置された素体3を準備する。複数の内部電極7,9が有する光吸収係数は、工程S1にて準備される素体3が有する光吸収係数より大きい。素体3は、工程S1において新たに作成してもよいし、既に作成された素体3を準備してもよい。工程S1にて準備される素体3では、素体3に窪み11が形成されていない。工程S1にて準備される素体3では、複数の内部電極7,9の一端7a,9aは、第一方向D1で、端面3aより素体3の内側に位置している。
【0038】
工程S2では、端面3aへのレーザ光の照射により、素体3に窪み11を形成する。本製造方法では、端面3a全体へのレーザ光の照射により、底部に内部電極7,9の一端7a,9aが露出する窪み11を素体3に形成する。工程S2では、素体3に複数の窪み11を形成することで、複数の内部電極7,9のそれぞれを、各窪み11の底部で、端面3aから露出させる。すなわち、端面3a全体へのレーザ光の照射により、複数の内部電極7,9のそれぞれを、窪み11の底部にて、端面3aから露出させる。
【0039】
端面3aにレーザ光を照射するレーザは、たとえば、希土類ファイバレーザである。たとえば、当該レーザはモード同期パルスレーザであり、上記レーザ光はパルスレーザ光である。端面3aに照射されるレーザ光の波長は、たとえば、250nm以上1600nm以下である。本実施形態では、端面3aに照射されるレーザ光の波長は、1060nmである。端面3aに照射されるレーザ光のパルス時間は、たとえば、10ps以下である。端面3aに照射されるレーザ光のパルスエネルギは、たとえば、5μJ以上200μJ以下である。
【0040】
本製造方法では、端面3aへのレーザ光の照射により、素体3に窪み11が形成される。上述したように、本製造方法では、複数の内部電極7,9が有する光吸収係数は、素体3が有する光吸収係数より大きい。したがって、第一方向D1から見て、端面3aと内部電極7,9とが重なる位置に、窪み11が形成される。この結果、本製造方法で得られる電子部品では、底部にて、内部電極7,9の一端7a,9aが露出する窪み11が素体3に形成される。
【0041】
工程S3では、端面3aに外部電極5を配置する。本製造方法では、外部電極5を窪み11が開口する面に配置する。以下に示す過程を経て、外部電極5は、窪み11が開口する面に配置される。
まず、素体3に、電極層E1を形成する。本過程では、上述した導電性ペーストを、窪み11が開口する端面3aの全面と、一対の側面3c及び一対の側面3eの端面3a寄りの端部と、に付与する。次に、付与した導電性ペーストを加熱処理により素体3に焼き付ける。これにより、電極層E1が、窪み11が開口する端面3aの全面と、一対の側面3c及び一対の側面3eの端面3a寄りの端部と、に形成される。上述した焼き付けにより、電極層E1と内部電極7,9とが接合される。すなわち、本過程により、外部電極5と内部電極7,9とが接合される。本製造方法では、相互拡散領域Rが、接合界面13を挟んで、外部電極5と内部電極7,9とにそれぞれ存在するように、外部電極5と内部電極7,9とを接合する。導電性ペーストは、たとえば、ディップ法、印刷法、又は転写法により付与される。電極層E1は、たとえば、物理蒸着法(PVD法)又は化学蒸着法(CVD法)により形成されていてもよい。
次に、電極層E1が形成された素体3に、電極層E2を形成する。本製造方法では、電極層E2は、上述したように、めっき法により形成される。電極層E2は、電極層E1上に形成される。電極層E2を形成するためのめっき法は、たとえば、電気めっき法である。
【0042】
以上の過程を経て、電子部品1が得られる。電子部品1は、上述したように、電気的特性の劣化を抑制する。上述した製造方法は、電気的特性の劣化を抑制する電子部品1を確実に得る。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0044】
電子部品1では、素体3には、窪み11が形成されていなくてもよい。
素体3に窪み11が形成されている電子部品1は、上述したように、電気的特性の劣化を確実に抑制する。
【0045】
電子部品1では、一対の面11aは、互いの間隔が窪み11の開口に向かうにしたがって、増加するように傾斜していなくてもよい。
一対の面11aが、互いの間隔が窪み11の開口に向かうにしたがって、増加するように傾斜している電子部品1では、上述したように、外部電極5が簡易に形成される。
【0046】
相互拡散領域Rは、接合界面13で、それぞれ50原子%の金属M1と金属M2と含む合金を含んでいなくともよい。
相互拡散領域Rが、接合界面13で、それぞれ50原子%の金属M1と金属M2とを含む合金を含む電子部品1は、上述したように、電気的特性の劣化をより一層確実に抑制する。
【0047】
本実施形態では、電子部品1は、積層セラミックコンデンサであるとして説明したが、本発明を適用可能な電子部品は、積層セラミックコンデンサに限られない。適用可能な電子部品は、たとえば、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、及び積層固体電池を含む。
【0048】
上述した実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
端面を有する素体と、
前記端面に配置されている外部電極と、
前記素体内に配置されていると共に前記外部電極と接合されている内部電極と、を備え、
前記外部電極と前記内部電極との接合界面は、前記端面より前記素体の内側に位置し、
前記内部電極は、第一金属を含み、
前記外部電極は、前記第一金属とは異なる第二金属を含み、
前記第一金属と前記第二金属とを含む相互拡散領域が、前記接合界面を挟んで、前記外部電極と前記内部電極とにそれぞれ存在する、電子部品。
(付記2)
前記素体には、前記相互拡散領域がその内側に位置すると共に、前記端面に開口し、かつ、前記接合界面がその底部を規定する窪みが形成されている、付記1に記載の電子部品。
(付記3)
前記窪みの内側壁面は、互いに対向し、かつ、互いの間隔が前記窪みの開口に向かうにしたがって増加するように傾斜する一対の面を含む、付記2に記載の電子部品。
(付記4)
前記窪みの幅は、1μm以上10μm以下である、付記2~3のいずれか一つの付記に記載の電子部品。
(付記5)
前記窪みの深さは、0.5μm以上10μm以下である、付記2~4のいずれか一つの付記に記載の電子部品。
(付記6)
前記相互拡散領域は、前記接合界面で、それぞれ50原子%の前記第一金属と前記第二金属とを含む合金を含む、付記1~5のいずれか一つの付記に記載の電子部品。
(付記7)
第一金属を含む内部電極が内部に配置されている素体を準備する工程と、
前記素体へのレーザ光の照射により、底部に前記内部電極の端が露出する窪みを前記素体に形成する工程と、
前記第一金属とは異なる第二金属を含む外部電極を前記窪みが開口する面に配置する工程と、を含み、
前記配置する工程は、
前記第一金属と前記第二金属とを含む相互拡散領域が、前記外部電極と前記内部電極との接合界面を挟んで、前記外部電極と前記内部電極とにそれぞれ存在するように、前記外部電極と前記内部電極とを接合する工程を含む、電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0049】
1…電子部品、3…素体、3a…端面、5…外部電極、7,9…内部電極、7a,9a…一端、11…窪み、11a…内側壁面、11a…一対の面、13…接合界面、d…窪みの深さ、M1,M2…金属、R…相互拡散領域、w…窪みの幅。
図1
図2
図3
図4
図5