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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176238
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】音響デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/24 20060101AFI20231206BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H04R1/24
H04R17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088410
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】武田 明丈
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004CD07
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で所望の出力特性を容易に得ることができる音響デバイスを提供する。
【解決手段】音響デバイス1は、第1の振動周波数を有する第1の振動体2と、第2の振動周波数を有する第2の振動体3と、第2の振動体3が配置される配置面Pを有する基材4と、を備えている。基材4の平面視において、第1の振動体2及び第2の振動体3は、配置面Pの面内方向に並んでいる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の振動周波数を有する第1の振動体と、
第2の振動周波数を有する第2の振動体と、
前記第2の振動体が配置される配置面を有する基材と、を備え、
前記基材の平面視において、前記第1の振動体及び前記第2の振動体は、前記配置面の面内方向に並んでいる音響デバイス。
【請求項2】
前記第1の振動体と前記第2の振動体とは、異なる振動方式の振動体である請求項1記載の音響デバイス。
【請求項3】
前記第1の振動体は、ボイスコイル式の振動体によって構成されている請求項2記載の音響デバイス。
【請求項4】
前記第2の振動体は、圧電素子を含んで構成されている請求項2記載の音響デバイス。
【請求項5】
前記第2の振動体は、圧電素子に電気的に接続される配線部材を有し、
前記配線部材は、前記第2の振動体から前記第1の振動体に向かって引き出されている請求項4記載の音響デバイス。
【請求項6】
前記第1の振動体は、第1の駆動部及び第1の振動板を有し、
前記第2の振動体は、第2の駆動部及び第2の振動板を有し、
前記第1の振動体において前記第1の駆動部と前記第1の振動板とがなす第1の配置方向と、前記第2の振動体において前記第2の駆動部と前記第2の振動板とがなす第2の配置方向とが互いに対向する向きとなっている請求項1~5のいずれか一項記載の音響デバイス。
【請求項7】
前記第2の振動板は、前記基材である請求項6記載の音響デバイス。
【請求項8】
前記第1の振動板は、前記基材に固定されている請求項7記載の音響デバイス。
【請求項9】
前記基材には、前記第1の振動体の出力及び前記第2の振動体の出力を取り出す音孔が設けられ、
前記基材の平面視において、前記第2の振動体は、前記第1の振動体と前記音孔との間に位置している請求項1~5のいずれか一項記載の音響デバイス。
【請求項10】
内部空間を有する筐体を備え、
前記基材は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体が前記内部空間を臨むように前記筐体の壁部を構成している請求項1~5のいずれか一項記載の音響デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、いわゆるボイスコイル式のスピーカ装置が記載されている。この従来のスピーカ装置は、ヨークとマグネットの間に配置された環状のコイルボビンと、コイルボビンに巻き付けられ、コイルボビンと共に変動するコイルと、コイルボビンの変動方向の一端部に結合され、コイルボビンの変動方向と同じ方向に変動する圧電素子と、圧電素子に結合された振動板とを備えている。圧電素子に対する振動板の結合部分と、コイルボビンに対する圧電素子の結合部分とは、コイルボビンの変動方向において一直線上に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再公表特許WO2016/088459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなボイスコイル式の音響デバイスは、主に低音域~中音域での出力を得意としている。特許文献1のスピーカ装置では、出力の広帯域化のためにボイスコイル式のスピーカに圧電素子を内蔵しているが、構造の複雑化や圧電素子の特性の個体ばらつきに起因して、出力特性の調整の難易度が高くなることが考えられる。また、圧電素子のサイズがボイスコイル式のスピーカのサイズに依存するため、装置の小型化に際して圧電素子の小型化が必須となる。この場合、所望の出力特性が得られにくくなることも考えられる。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、簡単な構成で所望の出力特性を容易に得ることができる音響デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る音響デバイスは、第1の振動周波数を有する第1の振動体と、第2の振動周波数を有する第2の振動体と、第2の振動体が配置される配置面を有する基材と、を備え、基材の平面視において、第1の振動体及び第2の振動体は、配置面の面内方向に並んでいる。
【0007】
この音響デバイスでは、第1の振動体による第1の振動周波数と、第2の振動体による第2の振動周波数とを組み合わせることで、出力の広帯域化が図られる。また、この音響デバイスでは、第1の振動体及び第2の振動体が基材の配置面の面内方向に並んでいる。このような配置の簡単化により、第2の振動体の構成及び配置が第1の振動体の構造に影響されることも回避できる。したがって、圧電素子の出力特性の調整が容易なものとなり、所望の出力特性を容易に得ることができる。
【0008】
第1の振動体と第2の振動体とは、異なる振動方式の振動体であってもよい。この場合、異なる振動方式の振動体を組み合わせることで、出力の広帯域化を容易に実現できる。
【0009】
第1の振動体は、ボイスコイル式の振動体によって構成されていてもよい。この場合、ボイスコイル式の振動体によって低音域~中音域の良好な出力特性が容易に得られる。
【0010】
第2の振動体は、圧電素子を含んで構成されていてもよい。この場合、圧電素子によって高音域の良好な出力特性が容易に得られる。
【0011】
第2の振動体は、圧電素子に電気的に接続される配線部材を有し、配線部材は、第2の振動体から第1の振動体に向かって引き出されていてもよい。この場合、音響デバイスを外部装置に取り付ける際の配線部材の配置スペースの確保が容易となる。
【0012】
第1の振動体は、第1の駆動部及び第1の振動板を有し、第2の振動体は、第2の駆動部及び第2の振動板を有し、第1の振動体において第1の駆動部と第1の振動板とがなす第1の配置方向と、第2の振動体において第2の駆動部と第2の振動板とがなす第2の配置方向とが互いに対向する向きとなっていてもよい。この場合、第1の振動体の出力方向と第2の振動体の出力方向とが対向することで、第1の振動体と第2の振動体との組み合わせによって生じる音の流れを好適に形成できる。
【0013】
第2の振動板は、基材であってもよい。基材が第2の振動体の第2の振動板を兼ねることで、音響デバイスの構成の簡単化が図られる。
【0014】
第1の振動板は、基材に固定されていてもよい。これにより、第1の振動体と第2の振動体との組み合わせによって生じる音の流れを好適に形成できる。
【0015】
基材には、第1の振動体の出力及び第2の振動体の出力を取り出す音孔が設けられ、基材の平面視において、第2の振動体は、第1の振動体と音孔との間に位置していてもよい。この場合、第1の振動体から第2の振動体を経由して音孔に向かう音の流れを形成できる。したがって、音響デバイスの出力を音孔から外部に効率良く取り出すことができる。
【0016】
音響デバイスは、内部空間を有する筐体を備え、基材は、第1の振動体及び第2の振動体が内部空間を臨むように筐体の壁部を構成していてもよい。この場合、第1の振動体と第2の振動体との組み合わせによって生じる音の流れを筐体内に好適に形成できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、簡単な構成で所望の出力特性を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係る音響デバイスを示す斜視図である。
図2図1に示した音響デバイスをカバーを取り除いて示す平面図である。
図3図2におけるIII-III線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る音響デバイスの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態に係る音響デバイスを示す斜視図である。図2は、図1に示した音響デバイスをカバーを取り除いて示す平面図であり、図3は、図2におけるIII-III線断面図である。音響デバイス1は、例えばスピーカ、ブザーなどの音響デバイスとして用いられるデバイスである。音響デバイス1は、例えばヘッドセット、ヘッドアップディスプレイなどの外部装置に取り付けられ、当該装置におけるオーディオ出力部として機能する。ここでは、音響デバイス1は、ヘッドアップディスプレイの本体を構成する筐体Kに取り付けられている。
【0021】
図1図3に示すように、音響デバイス1は、第1の振動周波数を有する第1の振動体2と、第2の振動周波数を有する第2の振動体3と、第1の振動体2及び第2の振動体3が配置される基材4とを備えている。本実施形態では、第1の振動体2と第2の振動体3とは、異なる振動方式の振動体となっている。第1の振動体2は、例えばボイスコイル式の振動体によって構成されている。第2の振動体3は、例えば圧電素子を含んで構成されている。
【0022】
第1の振動体2は、音響デバイス1における主スピーカであり、主に低音域~中音域での出力を担当する。第2の振動体3は、音響デバイス1における従スピーカであり、主に高音域での出力を担当する。第1の振動周波数と第2の振動周波数とは、一部の帯域が重なり合っていてもよい。本実施形態では、第1の振動体2の第1の振動周波数は、例えば20Hz~5kHz程度となっている。また、第2の振動体3の第2の振動周波数は、例えば5kHz~20kHz程度となっている。
【0023】
第1の振動体2は、第1の駆動部5及び第1の振動板6を有している。第1の駆動部5は、外部装置の筐体Kに設けられた配置孔Ka内において、当該配置孔Kaから突出しないように配置されている(図3参照)。第1の駆動部5は、例えば接着剤等の固定部材Fによって配置孔Kaの周縁部に対して固定されている。
【0024】
第1の駆動部5は、例えばマグネット、ヨーク、コイルボビンを含んで構成されている。マグネットは、例えば円環状をなしており、マグネットの中心孔にヨークの一部が挿通されている。マグネットとヨークの挿通部分との間には、磁気ギャップとしての空間が形成されている。磁気ギャップには、コイルボビンが配置されている。コイルボビンの外周には、コイルが巻き付けられている。コイルが磁気ギャップに配置されることで、コイル、マグネット、ヨークによる磁気回路が形成されている。
【0025】
第1の振動板6は、第1の駆動部5から一定の間隔をもって配置されている。第1の振動板6は、平面視において円形状をなしている(図2参照)。第1の振動板6は、基材4に固定されている。より具体的には、第1の振動板6は、基材4における配置孔7を塞ぐように配置され、第1の振動板6の周縁部は、接着等によって基材4における配置孔7の周縁部に固定されている。第1の振動板6は、第1の駆動部5において上記磁気回路の駆動によってコイルボビンが変動することによって振動し、第1の振動周波数に基づく音を出力する。
【0026】
第2の振動体3は、第2の駆動部8及び第2の振動板9を有している。第2の駆動部8は、圧電素子10と、配線部材11とを含んで構成されている。本実施形態では、圧電素子10は、厚さ方向に扁平な直方体形状をなしている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている形状、角部及び稜線部が丸められている形状も含まれ得る。
【0027】
圧電素子10は、圧電素体及び一対の外部電極を有している。圧電素体は、複数の圧電体層の積層体によって構成されている。各圧電体層は、圧電セラミックなどの圧電材料によって形成されている。圧電セラミック材料としては、例えばPZT[Pb(Zr、Ti)O]、PT(PbTiO)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O]、又はチタン酸バリウム(BaTiO)などが挙げられる。
【0028】
各圧電体層は、例えば上述した圧電セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼結体によって構成されている。実際の圧電素体では、各圧電体層は、各圧電体層の間の境界が認識できない程度に一体化されている。圧電素体内には、複数の内部電極(不図示)が配置されている。各内部電極は、導電性材料によって形成されている。導電性材料としては、例えばAg、Pd、Ag-Pd合金などが挙げられる。
【0029】
第2の駆動部8は、例えば両面テープなどの接合部材によって基材4に対して直に接合されている。したがって、本実施形態では、第2の振動板9は、基材4自体によって構成されている。第2の振動板9としての基材4は、第2の駆動部8において圧電素子10が厚さ方向に変動することによって振動し、第2の振動周波数に基づく音を出力する。
【0030】
配線部材11は、圧電素子10と外部装置とを電気的に接続する部材である。配線部材11は、例えばフレキシブルプリント基板(FPC)である。配線部材11の一端側は、圧電素子10の一対の外部電極のそれぞれに電気的に接続されている。配線部材11の一端側と圧電素子10の外部電極との接続には、例えば異方導電性接着材を用いることができる。
【0031】
配線部材11の他端側は、図2に示すように、第2の振動体3から第1の振動体2に向かって引き出されている。配線部材11の他端側は、図示しないが、基材4の配置孔7或いは当該配置孔7とは別に設けた挿通孔から筐体K側に引き出され、筐体Kの内部で外部装置側の制御装置等に電気的に接続されている。なお、配線部材11は、必ずしも第2の振動体3から第1の振動体2に向かって引き出されていなくてもよく、第2の振動体3から第1の振動体2と反対側に引き出されていてもよい。配線部材11は、第2の振動体3から基材4の短軸方向に引き出されていてもよい。
【0032】
基材4は、例えばプラスチック或いは金属によって板状に形成されている。基材4を金属で形成する場合、音速が大きく、高音が出やすくなる傾向にある。また、剛性が相対的に高くなるため、特定の周波数で音圧が高くなる傾向がある。基材4をプラスチックで形成する場合、出力する音域が金属に比べて低くなる傾向がある。また、剛性が相対的に低くなるため、内部損失が発生し、周波数による音圧の変化が平滑になる傾向がある。
【0033】
基材4の一面側は、第2の振動体3が配置される配置面Pとなっている。基材4の他面側は、外部装置の筐体K側を向く面となっている。本実施形態では、基材4の平面形状は、図2に示すように、一方向を長軸X1とし、これに直交する方向を短軸X2とする長円形状となっている。基材4における長軸方向の一端側には、上述した第1の振動体2を配置する断面円形状の配置孔7(図3参照)が設けられている。
【0034】
基材4における長軸方向の他端側には、第1の振動体2の出力及び第2の振動体3の出力を取り出す音孔12が設けられている。図2の例では、音孔12の断面形状は、例えば配置孔7よりも小径の円形状となっている。音孔12の断面形状は、これに限られず、楕円形状、長円形状、三角形状、矩形状、多角形状などの他の形状であってもよい。音孔12は、単体に限られず、一定の領域内に複数設けられていてもよい。複数の音孔12を設ける場合、面積の異なる音孔12を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
基材4の平面視において、図2に示すように、第1の振動体2及び第2の振動体3は、配置面Pの面内方向に並んでいる。より具体的には、本実施形態では、基材4の平面視において、基材4の長軸方向の一端側から他端側にかけて、第1の振動体2、第2の振動体3、及び音孔12がこの順に長軸X1上に並んでいる。第2の振動体3(圧電素子10)は、第1の振動体2及び音孔12のそれぞれから離間した状態で、第1の振動体2と音孔12との間に位置している。圧電素子10は、配線部材11が第1の振動体2側に引き出されている関係上、基材4の長軸X1上において音孔12寄りに位置している。
【0036】
本実施形態では、図1図3に示すように、音響デバイス1は、内部空間Sを有する筐体21を備えている。筐体21は、上記基材4と、周壁部22と、カバー23(図1参照)とを含んで構成されている。基材4は、第1の振動体2及び第2の振動体3が内部空間Sを臨む(内部空間S側に露出する)ように筐体21の壁部を構成している。周壁部22は、基材4の周縁部に沿って立設されている。カバー23の平面形状は、基材4の平面形状と同様に長円形状をなしている。カバー23は、基材4と所定の間隔をもって対向するように周壁部22に嵌め込まれ、基材4との間に内部空間Sを形成している。
【0037】
内部空間Sは、音孔12を除いて密閉された状態となっており、音響デバイス1における振動空間を形成している。内部空間Sには、第1の振動体2及び第2の振動体3から音孔12に向かう音の流れが形成される。音の流れの形成にあたって、音響デバイス1では、図3に示すように、第1の振動体2において第1の駆動部5と第1の振動板6とがなす第1の配置方向D1と、第2の振動体3において第2の駆動部8と第2の振動板9とがなす第2の配置方向D2とが互いに対向する向きとなっている。
【0038】
本実施形態では、第1の配置方向D1と第2の配置方向D2とは、正対する向きとなっている。第1の振動体2において、第1の駆動部5は、外部装置の筐体Kの配置孔Kaに配置され、第1の振動板6は、基材4の配置孔7に配置されている。したがって、第1の振動体2において第1の駆動部5と第1の振動板6とがなす第1の配置方向D1は、基材4からカバー23に向かう向き(基材4の他面側から一面側(配置面P側)に向かう向き)となっている。第2の振動体3において、第2の駆動部8は、基材4の配置面Pにおいて内部空間Sを臨むように配置され、第2の振動板9は、基材4となっている。したがって、第2の振動体3において第2の駆動部8と第2の振動板9とがなす第2の配置方向D2は、カバー23から基材4に向かう向き(基材4の一面側(配置面P側)から他面側に向かう向き)となっている。
【0039】
第1の振動体2によって出力された音は、主として第1の振動板6から内部空間Sを通って音孔12から外部に出力される。また、本実施形態では、第1の振動板6が基材4に固定されているため、第1の振動体2によって出力された音の一部は、基材4を介して音孔12から外部に出力される。本実施形態では、第2の振動板9が基材4であるため、第2の振動体3によって出力された音は、主として基材4を介して音孔12から外部に出力される。第2の振動体3によって出力された音の一部は、第2の振動板9から内部空間Sを通って音孔12から外部に出力される。
【0040】
本実施形態では、筐体21は、外部装置の筐体Kと接合に用いられる突出部24を有している。突出部24は、基材4における配置孔7の周縁部に対応して円環状に形成され、配置面Pと反対側に突出している。突出部24の先端部分は、外部装置の筐体Kの配置孔Kaに嵌め込まれ、上述した固定部材Fによって第1の振動体2の第1の駆動部5と共に筐体21に固定されている。このような構成により、外部装置の筐体Kは、基材4からの突出部24の突出量に応じた間隔で基材4から離間した状態となっている。同様に、第1の駆動部5は、基材4からの突出部24の突出量に応じた間隔で基材4から離間した状態となっている。
【0041】
以上説明したように、音響デバイス1では、第1の振動体2による第1の振動周波数と、第2の振動体3による第2の振動周波数とを組み合わせることで、出力の広帯域化が図られる。また、音響デバイス1では、第1の振動体2及び第2の振動体3が基材4の配置面Pの面内方向に並んでいる。このような配置の簡単化により、第2の振動体3の構成及び配置が第1の振動体2の構造に影響されることも回避できる。したがって、圧電素子10の出力特性の調整が容易なものとなり、所望の出力特性を容易に得ることができる。
【0042】
本実施形態では、第1の振動体2と第2の振動体3とは、異なる振動方式の振動体となっている。このように、異なる振動方式の振動体を組み合わせることで、出力の広帯域化を容易に実現できる。第1の振動体2は、ボイスコイル式の振動体によって構成されている。これにより、ボイスコイル式の振動体によって低音域~中音域の良好な出力特性が容易に得られる。第2の振動体3は、圧電素子10を含んで構成されている。これにより、圧電素子10によって高音域の良好な出力特性が容易に得られる。
【0043】
本実施形態では、第2の振動体3は、圧電素子10に電気的に接続される配線部材11を有しており、配線部材11は、第2の振動体3から第1の振動体2に向かって引き出されている。これにより、音響デバイス1を外部装置に取り付ける際の配線部材11の配置スペースの確保が容易となる。
【0044】
本実施形態では、第1の振動体2は、第1の駆動部5及び第1の振動板6を有し、第2の振動体3は、第2の駆動部8及び第2の振動板9を有している。そして、第1の振動体2において第1の駆動部5と第1の振動板6とがなす第1の配置方向D1と、第2の振動体3において第2の駆動部8と第2の振動板9とがなす第2の配置方向D2とが互いに対向する向きとなっている。このような構成によれば、第1の振動体2の出力方向と第2の振動体3の出力方向とが対向することで、第1の振動体2と第2の振動体3との組み合わせによって生じる音の流れを好適に形成できる。
【0045】
本実施形態では、第2の振動板9は、基材4である。基材4が第2の振動体3の第2の振動板9を兼ねることで、音響デバイス1の構成の簡単化が図られる。また、本実施形態では、第1の振動板6は、基材4に固定されている。これにより、第1の振動体2と第2の振動体3との組み合わせによって生じる音の流れを好適に形成できる。
【0046】
本実施形態では、基材4には、第1の振動体2の出力及び第2の振動体3の出力を取り出す音孔12が設けられている。基材4の平面視において、第2の振動体3は、第1の振動体2と音孔12との間に位置している。これにより、第1の振動体2から第2の振動体3を経由して音孔に向かう音の流れを形成できる。したがって、音響デバイス1の出力を音孔12から外部に効率良く取り出すことができる。
【0047】
本実施形態では、音響デバイス1は、内部空間Sを有する筐体21を備えている。基材4は、第1の振動体2及び第2の振動体3が内部空間Sを臨むように筐体21の壁部を構成している。このような構成により、第1の振動体2と第2の振動体3との組み合わせによって生じる音の流れを筐体21内に好適に形成できる。
【0048】
本開示の要旨は、以下の[1]~[10]のとおりである。
[1]第1の振動周波数を有する第1の振動体と、第2の振動周波数を有する第2の振動体と、前記第2の振動体が配置される配置面を有する基材と、を備え、前記基材の平面視において、前記第1の振動体及び前記第2の振動体は、前記配置面の面内方向に並んでいる音響デバイス。
[2]前記第1の振動体と前記第2の振動体とは、異なる振動方式の振動体である[1]記載の音響デバイス。
[3]前記第1の振動体は、ボイスコイル式の振動体によって構成されている[1]又は[2]記載の音響デバイス。
[4]前記第2の振動体は、圧電素子を含んで構成されている[1]~[3]のいずれか記載の音響デバイス。
[5]前記第2の振動体は、圧電素子に電気的に接続される配線部材を有し、前記配線部材は、前記第2の振動体から前記第1の振動体に向かって引き出されている[1]~[4]のいずれか記載の音響デバイス。
[6]前記第1の振動体は、第1の駆動部及び第1の振動板を有し、前記第2の振動体は、第2の駆動部及び第2の振動板を有し、前記第1の振動体において前記第1の駆動部と前記第1の振動板とがなす第1の配置方向と、前記第2の振動体において前記第2の駆動部と前記第2の振動板とがなす第2の配置方向とが互いに対向する向きとなっている[1]~[5]のいずれか記載の音響デバイス。
[7]前記第2の振動板は、前記基材である[6]記載の音響デバイス。
[8]前記第1の振動板は、前記基材に固定されている[6]又は[7]記載の音響デバイス。
[9]前記基材には、前記第1の振動体の出力及び前記第2の振動体の出力を取り出す音孔が設けられ、前記基材の平面視において、前記第2の振動体は、前記第1の振動体と前記音孔との間に位置している[1]~[8]のいずれか記載の音響デバイス。
[10]内部空間を有する筐体を備え、前記基材は、前記第1の振動体及び前記第2の振動体が前記内部空間を臨むように前記筐体の壁部を構成している[1]~[9]のいずれか記載の音響デバイス。
【符号の説明】
【0049】
1…音響デバイス、2…第1の振動体、3…第2の振動体、4…基材、5…第1の駆動部、6…第1の振動板、8…第2の駆動部、9…第2の振動板、10…圧電素子、11…配線部材、12…音孔、21…筐体、D1…第1の配置方向、D2…第2の配置方向、P…配置面、S…内部空間。
図1
図2
図3