(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176242
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20231206BHJP
B43M 11/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B43L19/00 H
B43M11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088416
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】野村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】福井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 啓二
(57)【要約】
【課題】キャップを閉位置と開位置に位置させるための好適な構成を備えたディスペンサを提供する。
【解決手段】転写ヘッドを設けた転写具本体Aと、転写ヘッドの一部を覆う閉位置と転写ヘッドを露出させる開位置との間で転写具本体に対して回転可能に設けられたキャップBとを備えた転写具であって、転写具本体A及びキャップBにそれぞれ接続された付勢部材Cを備えている。キャップBが、閉位置と開位置との間の中間位置にある場合に付勢部材Cが最も蓄勢される構成をなしている。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドを設けたディスペンサ本体と、少なくとも前記ヘッドの一部を覆う閉位置と前記ヘッドを露出させる開位置との間で前記ディスペンサ本体に対して回転可能に設けられたキャップとを備えたディスペンサであって、
前記ディスペンサ本体及び前記キャップにそれぞれ接続された付勢部材を備えたものであり、前記キャップが前記閉位置と前記開位置との間の中間位置にある場合に前記付勢部材が最も蓄勢される構成をなしているディスペンサ。
【請求項2】
前記付勢部材が、前記ディスペンサ本体に対する前記キャップの回転中心とは異なる位置を回転中心にして前記キャップに対して回転可能に接続したものである請求項1記載のディスペンサ。
【請求項3】
前記付勢部材が、側面視において前記ディスペンサ本体と前記キャップとを相対回転させる回転軸を跨ぐように配設されている請求項1記載のディスペンサ。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記キャップが前記中間位置にある場合に、最も伸張されるように設定されたものである請求項1記載のディスペンサ。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記ディスペンサ本体及び前記キャップのそれぞれに回転軸を介して取り付けられている請求項1記載のディスペンサ。
【請求項6】
前記付勢部材が、ポリオキシメチレン(POM)樹脂により形成されたものである請求項1記載のディスペンサ。
【請求項7】
前記ヘッドが、転写テープに添着された転写物を被転写面に対して転写するための転写ヘッドである請求項1記載のディスペンサ。
【請求項8】
前記付勢部材が、前記キャップを前記閉位置及び前記開位置の双方に付勢可能なものである請求項1記載のディスペンサ。
【請求項9】
前記付勢部材が、前記ディスペンサ本体に対して接続する本体接続部と、前記キャップに対して接続するキャップ接続部と、弾性変形可能な主要部を構成するものであり前記本体接続部と前記キャップ接続部との間を繋ぐ弾性変形部とを備えたものである請求項1記載のディスペンサ。
【請求項10】
前記弾性変形部が、側面視において略C字状をなしている請求項9記載のディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転写ヘッドを設けた転写具本体と、転写ヘッドを覆う閉位置と転写ヘッドを露出させる開位置との間で転写具本体に対して回転可能に支持されており、且つ、閉位置側と開位置側にそれぞれ弾性付勢可能に構成されたヘッドキャップを備えた転写具が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来の転写具では、ヘッドキャップの枢着軸部に突起が設けられており、転写具本体の軸保持部に突起が係わり合うカム面が設けられている。そして、ヘッドキャップの回転動作に伴って転写具本体の軸保持部が弾性変形することにより、当該軸保持部がヘッドキャップを閉位置側と開位置側に付勢し得るように構成されている。
【0004】
ヘッドキャップに設けられた突起は、軸保持部を弾性変形させるべく当該軸保持部のカム面に対して摺動するものとなっている。このため、繰り返しの使用等に伴って、突起やカム面を有した部分が摩耗した場合には、ヘッドキャップを閉位置側及び開位置側に付勢し得る付勢力が低減してしまうおそれがある。
【0005】
なお、以上の事情は、転写具に限られるものではなく、ヘッドを有するディスペンサ全般においても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、キャップを閉位置と開位置に位置させるための好適な構成を備えたディスペンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、ヘッドを設けたディスペンサ本体と、少なくとも前記ヘッドの一部を覆う閉位置と前記ヘッドを露出させる開位置との間で前記ディスペンサ本体に対して回転可能に設けられたキャップとを備えたディスペンサであって、前記ディスペンサ本体及び前記キャップにそれぞれ接続された付勢部材を備えたものであり、前記キャップが前記閉位置と前記開位置との間の中間位置にある場合に前記付勢部材が最も蓄勢される構成をなしているディスペンサである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記付勢部材が、前記ディスペンサ本体に対する前記キャップの回転中心とは異なる位置を回転中心にして前記キャップに対して回転可能に接続したものである請求項1記載のディスペンサである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記付勢部材が、側面視において前記ディスペンサ本体と前記キャップとを相対回転させる回転軸を跨ぐように配設されている請求項1記載のディスペンサである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記付勢部材は、前記キャップが前記中間位置にある場合に、最も伸張されるように設定されたものである請求項1記載のディスペンサである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記付勢部材は、前記ディスペンサ本体及び前記キャップのそれぞれに回転軸を介して取り付けられている請求項1記載のディスペンサである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記付勢部材が、ポリオキシメチレン(POM)樹脂により形成されたものである請求項1記載のディスペンサである。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記ヘッドが、転写テープに添着された転写物を被転写面に対して転写するための転写ヘッドである請求項1記載のディスペンサである。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記付勢部材が、前記キャップを前記閉位置及び前記開位置の双方に付勢可能なものである請求項1記載のディスペンサである。
【0017】
請求項9に記載の発明は、前記付勢部材が、前記ディスペンサ本体に対して接続する本体接続部と、前記キャップに対して接続するキャップ接続部と、弾性変形可能な主要部を構成するものであり前記本体接続部と前記キャップ接続部との間を繋ぐ弾性変形部とを備えたものである請求項1記載のディスペンサである。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記弾性変形部が、側面視において略C字状をなしている請求項9記載のディスペンサである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、キャップを閉位置と開位置に位置させるための好適な構成を備えたディスペンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図13】同実施形態におけるカバー部を取り外した状態の右側面図。
【
図28】同実施形態におけるキャップの作動説明図。
【
図29】同実施形態におけるキャップの作動説明図。
【
図30】同実施形態におけるキャップの作動説明図。
【
図31】同実施形態におけるキャップの作動説明図。
【
図32】同実施形態におけるキャップの作動説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~32を参照して説明する。
【0022】
この実施形態は、本発明を、転写テープtに添着された転写物である糊(図示せず)を用紙等の被転写面(図示せず)に対して転写するためのディスペンサである転写具に適用したものである。
【0023】
転写具は、先端部に糊を転写するためのヘッドたる転写ヘッドSを設けたディスペンサ本体たる転写具本体Aと、少なくとも転写ヘッドSの一部を覆う閉位置(I)と転写ヘッドSを露出させる開位置(J)との間で転写具本体Aに対して回転可能に設けられたキャップBと、転写具本体A及びキャップBにそれぞれ接続された付勢部材Cを備えたものである。
【0024】
転写具は、繰出用リールQから繰り出された転写テープtを、転写ヘッドSを経由させて巻取用リールRに巻き取らせるようにしたものである。
【0025】
以下、転写具について詳述する。
【0026】
<<転写具本体A>>
転写具本体Aは、内部にリフィルEが収容される収容空間spが形成されたケースDと、繰出用リールQ及び巻取用リールRを保持するとともに先端部に転写ヘッドSが配設されたリフィルEと、ケースDとリフィルEとの間に設けられ繰出用リールQと巻取用リールRとを連動させる連動機構Fと、ケースDに対して部分的に取り付けられたポリオキシメチレン(POM)樹脂製のものでありケースD内において回動する繰出用リールQに対して摺接し得る摺接部たる突出部g12、フランジ部g22を有した摺接部材である第一、第二の繰出用リール摺接部材G1、G2と、ケースDに対して部分的に取り付けられたポリオキシメチレン(POM)樹脂製のものでありケースD内において回動する巻取用リールRに対して摺接し得る摺接部たる突出部h12、フランジ部h22を有した摺接部材である第一、第二の巻取用リール摺接部材H1、H2を備えている。
【0027】
<ケースD>
ケースDには、内部に転写テープtを保持したリフィルEを収容し得る収容空間spが形成されている。ケースDは、リフィルEの左右に位置する左右の側壁m1、n1と、左右の側壁m1、n1における周縁部間に配設されリフィルEにおける上側、下側、及び、後側を覆う周壁Wを備えている。周壁Wは、上壁・下壁・後壁によって構成されている。
【0028】
ケースDの先端部には、転写テープtを転写ヘッドSの転写ローラーs1に導出するとともに当該転写ローラーs1を経由した転写テープtをケースDの内部に導入するための開口部Lが設けられている。
【0029】
開口部Lの前には、転写ローラーs1を含んだ転写ヘッドSの前部分が配設されている。
【0030】
ケースDは、リフィルEの左側、及び、リフィルEの上側・下側・後側を部分的に覆う主ケース部Mと、リフィルEの右側、及び、リフィルEの上側・下側・後側を部分的に覆うカバー部Nとを備えている。
【0031】
[主ケース部M]
主ケース部Mは、例えば、ABS樹脂により形成されたものである。主ケース部Mは、収容空間spに収容されたリフィルEにおける左側の略全部、上側の略左半分、下側における前部分の略全部・後部分の略左半分、及び、後側の略左半分を覆う形態をなしている。
【0032】
すなわち、主ケース部Mは、起立姿勢をなす左の側壁m1と、左の側壁m1における周縁部から当該左の側壁m1に対して略直交する方向に延設され左上壁部m2・左下壁部m3・左後壁部m4によって構成された左の周壁構成部分を備えている。
【0033】
左の側壁m1における内面側には、リフィルベースe1に設けられたボス部e17に嵌合する位置決め用の凸部m11と、連動機構Fを構成する繰出ギア4を回転可能に支持し得るボス状をなす繰出ギア支持軸m12と、連動機構Fを構成する巻取ギア8を回転可能に支持し得るボス状をなす巻取ギア支持軸m13と、繰出ギア支持軸m12と巻取ギア支持軸m13との間に配設され連動機構Fを構成する中間ギア7を回転可能に支持し得るボス状をなす中間ギア支持軸m14を備えている。
【0034】
左上壁部m2及び左下壁部m3には、カバー部Nに設けられた複数の着脱用の係合爪d5が係合し得る爪係合部d1が設けられている。また、左下壁部m3には、カバー部Nに設けられた位置決め突起d6が係合し得る突起係合部d2が設けられている。左後壁部m4には、ヒンジ部を構成する一対の軸部d3が設けられている。一対の軸部d3は、カバー部Nに設けられた一対の軸受部d7に対して枢着されるようになっている。
【0035】
この実施形態では、左下壁部m3の前端部には、キャップBを閉位置(I)と開位置(J)との間で回転可能に支持するキャップ支持部p1、及び、キャップBを閉位置(I)方向及び開位置(J)方向に付勢し得る付勢部材Cを回転可能に支持する付勢部材支持部p2が設けられている。
【0036】
キャップ支持部p1及び付勢部材支持部p2は、下壁を構成する左下壁部m3の前端部から前方に向かって対をなすように延設された左右の支持アームPに設けられている。左右の支持アームPは、左右方向に間隔を空けて配設されている。左の支持アームPと右の支持アームPとの間には、付勢部材Cが配設される付勢部材配設空間p3が設けられている。
【0037】
キャップ支持部p1は、左右の支持アームPの前端部に設けられている。キャップ支持部p1は、左右の本体連結軸j1を回転可能に保持し得るように構成されている。キャップ支持部p1は側面視において略C字状をなしている。
【0038】
付勢部材支持部p2は、左右の支持アームPにおける前後方向中間部に設けられている。すなわち、付勢部材支持部p2は、左右の支持アームPにおけるキャップ支持部p1よりも後に設けられている。左右の支持アームPに設けられた付勢部材支持部p2は、付勢部材Cに突設された左右の軸部12を回転可能に保持し得るものである。
【0039】
キャップB及び付勢部材Cは、転写具本体Aに対して、本体連結軸j1の軸心c1と軸部12の軸心c3とが合致しないように支持されている。
【0040】
なお、一方すなわち左の支持アームPに形成された付勢部材支持部p2の上には、取付時において左の軸部12が通過し得る軸取付用通路p4が隣設されている。他方すなわち右の支持アームPに形成された付勢部材支持部p2は左右方向に貫通した貫通孔により構成されている。
【0041】
[カバー部N]
カバー部Nは、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂により形成されたものである。カバー部Nは、収容空間spを開閉し得るように主ケース部Mに対して回転可能に構成されている。カバー部Nは、ヒンジ部を介して主ケース部Mに対して回転可能に支持されている。
【0042】
カバー部Nは、主ケース部Mと協働して収容空間spを閉じる閉じ姿勢と、リフィルEの交換作業ができるように収容空間spを開放し得る開放姿勢との間で姿勢変更可能に構成されている。
【0043】
カバー部Nは、収容空間spに収容されたリフィルEにおける右側、上側の略右半分、下側における後部の略左半分、及び、後側の略右半分を覆う形態をなしている。
【0044】
すなわち、カバー部Nは、起立姿勢をなす右の側壁n1と、右の側壁n1における周縁部から当該右の側壁n1に対して略直交する方向に延設され右上壁部n2・右下壁部n3・右後壁部n4とによって構成された右の周壁構成部分を備えている。
【0045】
カバー部Nにおける右上壁部n2・右下壁部n3・右後壁部n4の端部は、閉じ姿勢において主ケース部Mにおける左の周壁構成部分の端部に突合するようになっている。
【0046】
右の側壁n1の内面側には、摺動部材である第一の繰出用リール摺接部材G1を取り付けるための前の取付部Nf、及び、摺動部材である第一の巻取用リール摺接部材H1を取り付けるための後の取付部Nrが設けられている。
【0047】
前の取付部Nfは、右の側壁n1に突設され第一の繰出用リール摺接部材G1に設けられた係合孔g13に内嵌し得る内嵌部分xと、内嵌部分xよりも前側に突設され第一の繰出用リール摺接部材G1に穿設された一対の孔g14に挿入される上下一対の脱落防止用の突起xtとを備えている。
【0048】
前の取付部Nfにおける内嵌部分xは、円筒状をなす内嵌部分本体x1と、内嵌部分本体x1の外周面から前方に突設された位置決め突起x2と、内嵌部分本体x1の外周面から後方に突設され第一の繰出用リール摺接部材G1を抜け止めし得る抜け止め爪x3とを備えている。
【0049】
なお、前の取付部Nfにおける内嵌部分xの中心部には、リフィルベースe1に設けられた前の位置決め孔efに内嵌し得る前のリフィル位置決め突起x4が突設されている。
【0050】
後の取付部Nrは、右の側壁n1に突設され第一の巻取用リール摺接部材H1に設けられた係合孔h13に内嵌し得る内嵌部分yと、第一の巻取用リール摺接部材H1における上部の外縁部及び下部の外縁部に係合し得るように突出した湾曲突起部分ytとを備えている。
【0051】
後の取付部Nrにおける内嵌部分yは、円筒状をなす内嵌部分本体y1と、内嵌部分本体y1の外周面から後方に突設された位置決め突起y2と、内嵌部分本体y1の外周面から前方に突設され第一の巻取用リール摺接部材H1を抜け止めし得る抜け止め爪y3とを備えている。
【0052】
なお、後の取付部Nrにおける内嵌部分yの中心部には、リフィルベースe1に設けられた後の位置決め孔egに内嵌し得る後のリフィル位置決め突起y4が突設されている。
【0053】
右上壁部n2及び右下壁部n3には、主ケース部Mの爪係合部d1に係合し得る位置に複数の着脱用の係合爪d5が突設されている。また、右下壁部n3には、主ケース部Mの突起係合部d2に係合し得る位置に位置決め突起d6が突設されている。右後壁部n4には、ヒンジ部を構成する軸受部d7が設けられている。
【0054】
<リフィルE>
リフィルEは、糊が添着された転写テープtを保持したものである。リフィルEは、リフィルベースe1と、リフィルベースe1に対して回転可能に支持された繰出用リールQと、繰出用リールQよりも後に配設されリフィルベースe1に対して回転可能に支持された巻取用リールRと、リフィルベースe1の前端部に設けられた転写ヘッドSを備えたものである。
【0055】
[リフィルベースe1]
リフィルベースe1は、繰出用リールQ、及び、巻取用リールRの一側部たる右側部に配されたフレーム状をなしている。リフィルベースe1は、例えば、ポリスチレン(PS)樹脂により形成されたものである。
【0056】
詳述すれば、リフィルベースe1は、繰出用リールQの右側に位置する板状をなし中心部に繰出用リールQを回転可能に支持し得る繰出用リール支持部eaを有した第一の側板部分e11と、繰出用リールQの右側に位置する板状をなし中心部に巻取用リールRを回転可能に支持し得る巻取用リール支持部ecを有した第二の側板部分e12と、フレーム状をなし第一、第二の側板部分e11、e12の上部間を繋ぐ上連結部分e13と、フレーム状をなし第一、第二の側板部分e11、e12の下部間を繋ぐ下連結部分e14と、フレーム状をなし第一の側板部分e11の上部と主ケース部Mのm11凸部に係合するボス部e17との間を繋ぐ前上連結部分e15と、第一の側板部分e11の下部と主ケース部Mの凸部に係合するボス部e17との間を繋ぐ前下連結部分e16とを備えている。
【0057】
第一の側板部分e11には、摺接部材である第一の繰出用リール摺接部材G1の摺接部たる突出部g12が通過し得る複数すなわち三つの貫通孔ebが設けられている。三つの貫通孔ebは、繰出用リール支持部eaを囲うように一定の間隔を空けて設けられている。
【0058】
第二の側板部分e12には、摺接部材である第一の巻取用リール摺接部材H1の摺接部たる突出部h12が通過し得る複数すなわち二つの貫通孔edが設けられている。二つの貫通孔edは、巻取用リール支持部ecの上下に設けられている。
【0059】
[繰出用リールQ]
繰出用リールQには、転写テープtが巻回保持されている。そして、繰出用リールQから導出された転写テープtは、転写ヘッドSを経由して巻取用リールRに繋がったものとなっている。
【0060】
繰出用リールQは、転写テープtが繰り出されるものである。繰出用リールQは、一面側に糊が添着された転写テープtを巻装したものである。繰出用リールQは、転写テープtが巻装される円筒状の胴部q1と、胴部q1の両端部から外方に延出し巻装された転写テープtの横ずれを防止するための左右のフランジ部q2と、胴部q1の一端部たる右端部から軸心に向かって延設され中心部に繰出用リール支持部eaが係わり合う軸孔qaが形成された右の内側板部q3と、右の内側板部q3から当該右の内側板部q3に対して直交する内方向に突設された円筒部q4とを備えている。
【0061】
繰出用リールQにおける胴部q1の内側には、周方向に所定の間隔を空けて複数の内リブq11が突設されている。内リブq11は、クラッチ部材5の外側に突設された外リブ51と係わり合うようになっている。
【0062】
右の内側板部q3における外面には、カバー部Nに取り付けられた第一の繰出用リール摺接部材G1における摺接部である突出部g12が摺接し得るようになっている。
【0063】
円筒部q4の内周面には、主ケース部Mに取り付けられた第二の繰出用リール摺接部材G2における摺接部であるフランジ部g22が摺接し得るものとなっている。
【0064】
[巻取用リールR]
巻取用リールRは、繰出用リールQから繰り出された後に転写ヘッドSを経由した転写テープtを巻き取るものである。
【0065】
巻取用リールRは、連動機構Fにより、転写具の使用すなわち転写テープtに添着した糊を用紙等の被転写面に転写する操作(転写ヘッドSが被転写面の上を走行する操作)に連動して転写テープtを巻き取るものである。
【0066】
巻取用リールRは、糊を被転写面に転写した後の転写テープtを巻装する円筒状の胴部r1と、巻き取った転写テープtの横ずれを防止するための左右のフランジ部r2と、胴部r1の内周面から軸心に向かって延設された内方延出部r3と、内方延出部r3の延出端から当該内方延出部r3に対して直交する外方向に突設された円筒部r4と、円筒部r4の外方端から軸心に向かって延設され中心部に巻取用リール支持部ecが係わり合う軸孔raが形成された軸孔形成板部r5とを備えている。
【0067】
巻取用リールRにおける胴部r1の内側には、周方向に所定の間隔を空けて複数の内リブr11が突設されている。内リブr11は、巻取ギア8の筒状部81における外側に突設された外リブ82と係わり合うようになっている。
【0068】
右のフランジ部r2における外面には、カバー部Nに取り付けられた第一の巻取用リール摺接部材H1における摺接部である突出部h12が摺接し得るようになっている。
【0069】
円筒部r4の内周面には、主ケース部Mに取り付けられた第二の巻取用リール摺接部材H2における摺接部であるフランジ部h22が摺接し得るものとなっている。
【0070】
[転写ヘッドS]
転写ヘッドSは、糊を用紙等の被転写面に対して転写させるものである。転写ヘッドSは、左右方向に延びてなる転写ローラーs1と、転写ローラーs1を回転可能に支持し得る支持体s2とを備えている。
【0071】
支持体s2は、前端部において転写ローラーs1の両端部を回転可能に保持する左右の支持壁s21を備えている。支持体s2の後端部は、リフィルベースe1と一体化されている。
【0072】
<連動機構F>
連動機構Fは、リフィルEとケースDとの間に設けられている。連動機構Fは、使用者による転写操作により生じた繰出用リールQのトルクを巻取用リールRに対して適切に伝達するためのものである。
【0073】
連動機構Fは、ケースDに設けられた繰出ギア支持軸m12に対して回転可能に支持された繰出ギア4と、繰出ギア4に対して相対回転可能に保持され繰出用リールQに係わり合うクラッチ部材5と、クラッチ部材5に対して繰出ギア4が摺動回転し得るようにクラッチ部材5を繰出ギア4に対して押圧するクラッチバネ6と、繰出ギア4に噛合する中間ギア7と、中間ギア7に噛合する巻取ギア8とを備えたものである。
【0074】
繰出ギア4と繰出用リールQとの間には、クラッチ部材5及びクラッチバネ6を含んでなるクラッチUが設けられている。クラッチUは、転写テープtに過度の引っ張り力が作用しないようにするための既知の構成のものである。
【0075】
<第一、第二の繰出用リール摺接部材G1、G2>
第一、第二の繰出用リール摺接部材G1、G2は、ケースDの製造に好適な樹脂であるポリプロピレン(PP)樹脂よりも摺動性の優れた樹脂であるポリオキシメチレン(POM)樹脂により形成されたものである。
【0076】
第一、第二の繰出用リール摺接部材G1、G2は、ケースDに対して部分的に取り付けられている。すなわち、第一、第二の繰出用リール摺接部材G1、G2は、何れも、ケースDの一部分に対して取り付けられるように構成されたものである。第一、第二の繰出用リール摺接部材G1、G2は、何れも、ケースDよりも小さな樹脂成型部品である。
【0077】
第一の繰出用リール摺接部材G1は、ケースD内において回動する繰出用リールQにおける右の内側板部q3の外面に対して摺接し得る摺接部たる突出部g12を有している。
【0078】
第二の繰出用リール摺接部材G2は、ケースD内において回動する繰出用リールQにおける円筒部q4の内周面に対して摺接し得る摺接部たるフランジ部g22を有している。
【0079】
[第一の繰出用リール摺接部材G1]
第一の繰出用リール摺接部材G1は、中央部分にカバー部Nの内嵌部分xに係合する係合孔g13を有するとともに周縁部にカバー部Nに突設された位置決め突起xtが挿入される上下一対の位置決め孔g14を有してなり外周縁が略円環状をなす基部g11と、基部g11の外周縁の三箇所から繰出用リールQ方向に突設されたものであり突出端が繰出用リールQに対して摺接し得る摺接部たる突出部g12とを備えている。
【0080】
係合孔g13には、カバー部Nに設けられた内嵌部分xの位置決め突起x2が位置決めされるキー溝部g15が設けられている。係合孔g13の縁部には、カバー部Nに設けられた内嵌部分xの抜け止め爪x3が係合し得るようになっている。
【0081】
第一の繰出用リール摺接部材G1の突出部g12は、リフィルベースe1における第一の側板部分e11に設けられた貫通孔ebを通過して、繰出用リールQを構成する右の内側板部q3の外面に対して当接するようになっている。
【0082】
[第二の繰出用リール摺接部材G2]
第二の繰出用リール摺接部材G2は、ケースDに設けられたギア支持軸である繰出ギア支持軸m12に装着されたものである。
【0083】
第二の繰出用リール摺接部材G2は、ボス状をなす繰出ギア支持軸m12の内部に挿入される概略有底筒状をなす被挿入部g21と、被挿入部b21の一端縁に設けられ外周縁が繰出用リールQに対して摺接し得る摺接部たるフランジ部g22とを備えている。
【0084】
第二の繰出用リール摺接部材G2の被挿入部g21は、繰出ギア支持軸m12に対して固定されるようになっている。
【0085】
第二の繰出用リール摺接部材G2のフランジ部g22の外周縁は、繰出用リールQを構成する円筒部q4の内周面に対して当接し得るものとなっている。
【0086】
<第一、第二の巻取用リール摺接部材H1、H2>
第一、第二の巻取用リール摺接部材H1、H2は、ケースDの製造に好適な樹脂であるポリプロピレン樹脂よりも摺動性の優れた樹脂であるポリオキシメチレン(POM)樹脂により形成されたものである。
【0087】
第一、第二の巻取用リール摺接部材H1、H2は、ケースDに対して部分的に取り付けられている。すなわち、第一、第二の巻取用リール摺接部材H1、H2は、何れも、ケースDの一部分に対して取り付けられるように構成されたものである。第一、第二の巻取用リール摺接部材H1、H2は、ケースDよりも小さな樹脂成型部品である。
【0088】
第一の巻取用リール摺接部材H1は、ケースD内において回動する巻取用リールRにおける右のフランジ部r2の外面に対して摺接し得る摺接部たる突出部h12を有している。
【0089】
第二の巻取用リール摺接部材H2は、ケースD内において回動する巻取用リールRにおける円筒部r4の内周面に対して摺接し得る摺接部たるフランジ部h22を有している。
【0090】
[第一の巻取用リール摺接部材H1]
第一の巻取用リール摺接部材H1は、中央部分にカバー部Nの内嵌部分yに係合する係合孔h13を有してなり外周縁が略円環状をなす基部h11と、基部h11における外周縁の上下二箇所から突設されたものであり突出端が巻取用リールRに対して摺接し得る摺接部たる突出部h12とを備えている。
【0091】
係合孔h13には、カバー部Nに設けられた内嵌部分yの位置決め突起y2が位置決めされるキー溝部h15が設けられている。係合孔h13の縁部には、カバー部Nに設けられた内嵌部分yの抜け止め爪y3が係合し得るようになっている。
【0092】
第一の巻取用リール摺接部材H1の突出部h12は、リフィルベースe1における第二の側板部分e12に設けられた貫通孔edを通過して、巻取用リールRを構成する右のフランジ部r2の外面に対して当接するようになっている。
【0093】
[第二の巻取用リール摺接部材H2]
第二の巻取用リール摺接部材H2は、ケースDに設けられたギア支持軸である巻取ギア支持軸m13に装着されたものである。
【0094】
第二の巻取用リール摺接部材H2は、ボス状をなす巻取ギア支持軸m13の内部に挿入される概略有底筒状をなす被挿入部h21と、被挿入部h21の一端縁に設けられ外周縁が巻取用リールRに対して摺接し得る摺接部たるフランジ部h22とを備えている。
【0095】
第二の巻取用リール摺接部材H2の被挿入部h21は、巻取ギア支持軸m13に対して固定されるようになっている。
【0096】
第二の巻取用リール摺接部材H2のフランジ部h22の外周縁は、巻取用リールRを構成する円筒部r4の内周面に対して当接し得るものとなっている。
【0097】
<<キャップB>>
キャップBは、不使用時において、転写ヘッドSが外部に露出しないように覆い得るものである。キャップBは、転写ヘッドSの前側、下側、及び、左右両側を覆うことができる立体的形状のものである。
【0098】
キャップBは、転写ヘッドSを覆う閉位置(I)と転写ヘッドSを露出させる開位置(J)との間で転写具本体Aに対して回転可能に設けられている。
【0099】
キャップBは、閉位置(I)において転写ヘッドSの下側を覆う下壁部b1と、下壁部b1の前端縁から上方に向かって延設され閉位置(I)において転写ヘッドSの前側を覆う前壁部b2と、下壁部b1の左右両端縁から上方に向かって延設された左右の側壁部b3と、下壁部b1の後部に設けられた左右方向に延びてなる回転軸である左右の本体連結軸j1と、下壁部b1の後部に設けられた左右方向に延びてなる回転軸である付勢部材連結軸j2とを備えている。
【0100】
<下壁部b1>
下壁部b1は、閉位置(I)において転写ヘッドSの下側を覆い得るものである。下壁部b1の前部は、略平板状をなしている。
【0101】
下壁部b1の後部には、後方に向かって複数の軸保持アームである左右の中間軸支持アームb5、及び、左右の側軸支持アームb6が延設されている。
【0102】
左右の中間軸支持アームb5間には、付勢部材連結軸j2が架設されている。
【0103】
左の中間軸支持アームb5と左の側軸支持アームb6との間には、左の本体連結軸j1が架設されている。右の中間軸支持アームb5と右の側軸支持アームb6との間には、右の本体連結軸j1が架設されている。左右の本体連結軸j1は、軸心c1を合致させて設けられている。
【0104】
<前壁部b2>
前壁部b2は、閉位置(I)において転写ヘッドSの前側を覆い得るものである。なお、使用者により行われるキャップBに対する回転操作に資するべく、前壁部b2には指掛用突片b4が前方に向かって突設されている。
【0105】
<側壁部b3>
側壁部b3は、閉位置(I)において転写ヘッドSの左右両側を覆い得るものである。左の側壁部b3の内面には、節度係合凹部v1が設けられている。
【0106】
転写具のキャップBは、閉位置(I)において安定し得るように、節度係合凹部v1が、主ケース部Mの先端部に突設された図示しない節度係合凸部と節度係合し得るものとなっている。
【0107】
<左右の本体連結軸j1>
左右の本体連結軸j1は、キャップBの後端部に設けられている。左右の本体連結軸j1は、左右方向に延びてなる円柱状をなしている。
【0108】
<付勢部材連結軸j2>
付勢部材連結軸j2は、その軸心c2が左右の本体連結軸j1の軸心c1と合致しない位置に設けられている。付勢部材連結軸j2は、左右方向に延びてなる円柱状をなしている。
【0109】
付勢部材連結軸j2は、キャップBの後端部に設けられた本体連結軸j1よりも前側、すなわち、左右の本体連結軸j1よりもキャップBの先端側にずれた位置に設けられている。
【0110】
<<付勢部材C>>
付勢部材Cは、縮小姿勢と外力を受けて縮小姿勢よりも伸張された伸張姿勢との間で、弾性変形可能に構成されたものである。
【0111】
付勢部材Cは、ポリオキシメチレン(POM)樹脂により一体に形成されている。付勢部材Cは、側面視において転写具本体AとキャップBとを相対回転させる回転軸である左右の本体連結軸j1を跨ぐように配設されている。
【0112】
付勢部材Cは、キャップBを閉位置(I)及び開位置(J)の双方に付勢可能なものである。すなわち、付勢部材Cは、キャップBが閉位置(I)と開位置(J)との間の位置である中間位置(K)に設定された思案点よりも閉位置(I)側に位置する場合には閉位置(I)に向けて、中間位置(K)に設定された思案点よりも開位置(J)側に位置する場合には開位置(J)に向けて、キャップBを付勢可能なものとなっている。
【0113】
付勢部材Cは、主として弾性変形部3の伸張姿勢から縮小姿勢に復帰しようとする弾性変形を利用してキャップBを付勢し得るものとなっている。換言すれば、付勢部材Cは、キャップBが閉位置(I)と開位置(J)との間の位置である中間位置(K)にある場合に、最も蓄勢される構成をなしている。
【0114】
付勢部材Cは、転写具本体Aに対して接続する本体接続部1と、キャップBに対して接続するキャップ接続部2と、弾性変形可能な主要部を構成するものであり本体接続部1とキャップ接続部2との間を繋ぐ弾性変形部3とを備えたものである。
【0115】
<本体接続部1>
本体接続部1は、基部11と、基部11から軸心c3を合致させて左右両側方に突設された回転軸である左右の軸部12とを備えている。
【0116】
すなわち、付勢部材Cは、転写具本体Aに設けられた付勢部材支持部p2に対して回転軸である左右の軸部12を介して取り付けられている。
【0117】
<キャップ接続部2>
キャップ接続部2は、キャップBに設けられた回転軸である付勢部材連結軸j2に対して回転可能に連結し得るものである。
【0118】
すなわち、付勢部材Cは、キャップBに回転軸である付勢部材連結軸j2を介して取り付けられている。
【0119】
この実施形態では、キャップ接続部2は、キャップBに設けられた円柱状をなす付勢部材連結軸j2に対して回転可能に外嵌し得る側面視略C字状のものである。
【0120】
なお、キャップBに設けられた付勢部材連結軸j2の軸心c2は、左右の本体連結軸j1の軸心c1と合致しないように設けられている。このため、付勢部材Cは、転写具本体Aに対するキャップBの回転中心(左右の本体連結軸j1の軸心c1)とは異なる位置(付勢部材連結軸j2の軸心c2)を回転中心にして、キャップBに対して回転可能に接続したものとなっている。
【0121】
<弾性変形部3>
弾性変形部3は、側面視において略C字状をなすように湾曲しているものである。弾性変形部3は無負荷状態において最も湾曲度合いが大きくなるように(曲率が最も大きくなるように)構成されている
弾性変形部3は、キャップBが中間位置(K)にある場合に、最も伸張されるように設定されている。すなわち、弾性変形部3は、キャップBが中間位置(K)にある場合において、湾曲度合いが最も小さくなるように(曲率が最も小さくなるように)設定されている。
【0122】
一方で、弾性変形部3は、キャップBが閉位置(I)と開位置(J)にある場合には、キャップBが中間位置(K)にある場合と比較して、湾曲度合いが大きくなるように(曲率が大きくなるように)設定されている。
【0123】
<<キャップBの作動説明>>
本実施形態における付勢部材Cにより付勢されたキャップBの作動について、特に、
図28~32を参照して説明する。
【0124】
キャップBが閉位置(I)にある場合(
図28を参照)には、付勢部材Cのキャップ接続部2によって保持された付勢部材連結軸j2、及び、付勢部材Cにおける本体接続部1の軸部12は、側面視においてそれぞれ、キャップBにおける左右の本体連結軸j1よりも一方側すなわち上側に偏って位置している。このとき、付勢部材Cの弾性変形部3は、湾曲度合いの大きい縮小姿勢を採るものとなっている。
【0125】
付勢部材Cのキャップ接続部2は、縮小姿勢を採ろうとする弾性変形部3の弾性復帰力により、キャップBの付勢部材連結軸j2を本体接続部1方向に引っ張っている。キャップBは、本体連結軸j1を中心にして閉位置(I)方向に回動され、閉位置(I)において安定するものとなっている。
【0126】
この状態から、キャップBが、使用者の操作力を受けて、閉位置(I)から中間位置(K)の方向に回動するに連れて、弾性変形部3は湾曲度合いが漸次小さくなるように変形していく。
【0127】
キャップBが、使用者の操作力により思案点である中間位置(K)に到達すると、
図29に示すように、付勢部材Cのキャップ接続部2によって保持された付勢部材連結軸j2、及び、付勢部材Cにおける本体接続部1の軸部12は、キャップBにおける左右の本体連結軸j1とともに側面視において略同一仮想直線Z上に位置するようになる。
【0128】
付勢部材Cの本体接続部1とキャップ接続部2との離間距離は、キャップBが中間位置(K)にあるときに、最も大きくなっている。キャップBが中間位置(K)にある場合に、付勢部材Cは最も蓄勢されたものとなっている。すなわち、付勢部材Cの弾性変形部3は、キャップ接続部2及び本体接続部1によって湾曲度合いが小さくなる方向に引き延ばされ、最も伸張された形態をなしている。
【0129】
なお、
図29に示すように、キャップBが思案点である中間位置(K)にある場合には、当該キャップBは、中間位置(K)において安定することになる。つまり、キャップBが中間位置(K)にある場合には、使用者による閉位置(I)方向又は開位置(J)方向への回転操作力を受けない限り、閉位置(I)方向又は開位置(J)方向に向かって回動しないものとなっている。
【0130】
その後、キャップBが、使用者の操作力によって、中間位置(K)から開位置(J)方向に回転すると、付勢部材連結軸j2、本体接続部1の軸部12、及び、左右の本体連結軸j1が略同一直線上に位置していた関係が解かれ、付勢部材連結軸j2、及び、付勢部材Cにおける本体接続部1の軸部12は、それぞれ、キャップBにおける左右の本体連結軸j1よりも一方側すなわち後側に偏って位置するようになる。
【0131】
このとき、中間位置(K)において最も蓄勢されていた弾性変形部3は、元の湾曲形状(無負荷状態における最も湾曲度合いの大きい形状)に戻ろうとする部材の弾性復帰力により、キャップ接続部2及び本体接続部1を互いに相寄る方向に強く付勢することになる(
図32を参照)。
【0132】
その結果、付勢部材Cのキャップ接続部2は、付勢部材連結軸j2を本体接続部1方向に引っ張るように動作する。キャップBは、付勢部材Cの付勢力によって、本体連結軸j1を中心にして開位置(J)方向に回動され、
図30に示すように、開位置(J)において安定するものとなっている。
【0133】
なお、キャップBが、使用者の操作力によって、中間位置(K)から閉位置(I)方向に回転される場合も、中間位置(K)において最も蓄勢されていた弾性変形部3の弾性復帰力に基づいて、キャップBを閉位置(I)方向に回転させるものとなっている(
図31を参照)。
【0134】
上述した転写具であれば、キャップBと転写具本体Aとの間に付勢部材Cを備えたものであるため、キャップBを閉位置(I)と開位置(J)に安定して位置させるための好適な構成を備えたものとなる。
【0135】
また、上述した転写具であれば、摺接部材である第一、第二の繰出用リール摺接部材G1、G2、及び、第一、第二の巻取用リール摺接部材H1、H2を備えているため、繰出用リールQ及び巻取用リールRを円滑に回動させるための好適な構成を備えたものとなる。
【0136】
以上説明したように、本実施形態に係るディスペンサである転写具は、ヘッドたる転写ヘッドSを設けたディスペンサ本体たる転写具本体Aと、少なくとも転写ヘッドSの一部を覆う閉位置(I)と転写ヘッドSを露出させる開位置(J)との間で転写具本体Aに対して回転可能に設けられたキャップBとを備えたものである。
【0137】
そして、転写具本体A及びキャップBにそれぞれ接続された付勢部材Cを備えたものであり、キャップBが閉位置(I)と開位置(J)との間の中間位置(K)にある場合に付勢部材Cが最も蓄勢される構成をなしている。
【0138】
このため、キャップBを閉位置(I)と開位置(J)に位置させるための好適な構成を備えた転写具を提供し得るものとなる。
【0139】
つまり、付勢部材Cは、転写具本体A及びキャップBとは別体のものであり、転写具本体A及びキャップBにそれぞれ接続されたものとなっている。このため、付勢部材Cは、キャップBを付勢し得るための設計の自由度に優れたものとなっている。
【0140】
付勢部材Cが、転写具本体Aに対するキャップBの回転中心とは異なる位置を回転中心にしてキャップBに対して回転可能に接続したものとなっている。
【0141】
このため、転写具本体Aに対するキャップBの回転動作に連動して、付勢部材CがキャップBに対する付勢力を発揮し得る好適な構成を採り得るものとなっている。
【0142】
付勢部材Cが、側面視において転写具本体AとキャップBとを相対回転させる回転軸である左右の本体連結軸j1を跨ぐように配設されている。
【0143】
このため、転写具本体Aに対するキャップBの回転動作に連動して、付勢部材CがキャップBに対する付勢力を発揮し得る好適な構成を採り得るものとなっている。
【0144】
付勢部材Cは、キャップBが中間位置(K)にある場合に、最も伸張されるように設定されたものである。
【0145】
このため、付勢部材Cは、キャップBが中間位置(K)から開位置(J)に位置変更する場合、及び、キャップBが中間位置(K)から閉位置(I)に位置変更する場合に、当該キャップBを好適に付勢し得るものとなっている。
【0146】
付勢部材Cは、転写具本体A及びキャップBのそれぞれに回転軸(左右の軸部12・付勢部材連結軸j2)を介して取り付けられている。
【0147】
このため、従来のカムを利用した付勢機構と比べて、部材の摩耗等に伴う付勢力の減衰が生じ難いものとなり、キャップBを閉位置(I)方向及び開位置(J)方向に付勢し得る強度に優れた構成を実現し得るものとなっている。
【0148】
付勢部材Cが、ポリオキシメチレン(POM)樹脂により形成されたものである。
【0149】
このため、付勢部材Cは、強度や弾性変形力だけでなくキャップBや転写具本体Aとの相対回転の柔軟性(滑動性)に優れたものとなっている。
【0150】
キャップBは、転写テープtに添着された転写物を被転写面に対して転写するための転写ヘッドSを被覆するものである。
【0151】
このため、キャップBは、転写ヘッドSを好適に保護し得るものとなっている。
【0152】
付勢部材Cが、キャップBを閉位置(I)及び開位置(J)の双方に付勢可能なものである。
【0153】
このため、キャップBは、付勢部材Cの付勢力に基づいて、閉位置(I)及び開位置(J)の双方において安定するものとなるため、使用者の使い勝手に優れた構成のものとなる。
【0154】
付勢部材Cが、転写具本体Aに対して接続する本体接続部1と、キャップBに対して接続するキャップ接続部2と、弾性変形可能な主要部を構成するものであり本体接続部1とキャップ接続部2との間を繋ぐ弾性変形部3とを備えたものである。
【0155】
このため、付勢部材Cは、転写具本体A及びキャップBに対して接続し得る構成を有しつつ、キャップBを付勢し得る好適な構成を備えたものとなっている。
【0156】
弾性変形部3が、側面視において略C字状をなしている。
【0157】
このため、弾性変形部3は、キャップBを付勢し得る付勢力が生じやすい好適な構成をなしている。
【0158】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0159】
付勢部材Cの形状は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々設定することができるものである。
【0160】
他の実施形態である付勢部材Cの例について、
図33~36を参照しつつ説明する。
図33~36に示された付勢部材Cは、弾性変形度合いの強弱を調整するために、弾性変形部3の形態を異ならせたものである。
【0161】
図33に示す付勢部材Cは、弾性変形部3の外面側に凹溝32を形成したものである。凹溝32の形状は、適宜の形状を採り得ることは言うまでもない。なお、
図33の例では、凹溝32が左右二箇所に設けられているが、このようなものに限られないのはもちろんのことである。すなわち、弾性変形部3に形成される凹溝32の数は、単数であってもよいし三以上の複数であってもよい。
【0162】
図34に示す付勢部材Cは、弾性変形部3の外面側に前後方向に延びてなるレール状の凸部33を形成したものである。凸部33の形状は、適宜の形状を採り得ることは言うまでもない。なお、
図34の例では、凸部33が左右方向中央部の一箇所に設けられているが、このようなものに限られないのはもちろんのことである。すなわち、弾性変形部3に形成される凸部33の数は、二以上の複数であってもよい。
【0163】
図35に示す付勢部材Cは、弾性変形部3に貫通孔31を形成したものである。貫通孔31の形状は、適宜の形状を採り得ることは言うまでもない。なお、
図35の例では、貫通孔31が左右方向中央部の一箇所に設けられているが、このようなものに限られないのはもちろんのことである。すなわち、弾性変形部3に形成される貫通孔31の数は、二以上の複数であってもよい。
【0164】
図36に示す付勢部材Cは、弾性変形部3の左右両側部に切欠部34を形成したものである。切欠部34の形状は、適宜の形状を採り得ることは言うまでもない。なお、
図36の例では、切欠部34が左右両側部に略対称形状をなして設けられているが、このようなものに限られないのはもちろんのことである。すなわち、弾性変形部3に形成される切欠部34の数やその配設箇所については、適宜設定し得るものである。
【0165】
その他の構成についても、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【0166】
ディスペンサは、ヘッドを通じて内容物を出すことができるものであればよく、転写具に限られるものではない。
【0167】
ディスペンサによって出すことができる内容物としては、インクや修正剤等の液体や、接着剤等のゲル状のものや、粉体やテープ等の固形状のものであってもよい。
【0168】
ヘッドは、転写ヘッドに限られるものではない。ヘッドは、インクや修正剤等の液体を塗布し得る刷毛状のものや液体を含浸し得る棒状ないし柱状のものであってもよい。
【0169】
なお、転写ヘッドは、転写テープを被転写面に押し付ける機能を発揮するものであればよく、本実施形態に示されるものに限られるものではない。転写ヘッドとしては、例えば、板面を利用して被転写面に対して転写テープを押し付けるようにした板状部材等を挙げることができる。
【0170】
転写具は、転写物を転写対象物に転写し得るものであればどのようなものであってもよい。換言すれば、転写物は、本実施形態に示された糊に限られるものではなく、例えば、修正用の修正剤(修正テープ)や装飾用の装飾剤(装飾テープ)であってもよい。
【0171】
更に、転写ヘッドは、必ずしも転写テープを被転写面に対して押し付けるものに限られるものではなく、例えば、転写ローラーを直接的に被転写面に添着させることにより、インクや糊を塗布するものであってもよい。
【0172】
転写具本体を構成する転写ヘッドは、本実施形態で示された構成に限定されるものではない。すなわち、上述した実施形態では、転写物を保持した交換部品であるリフィルに転写ヘッドが設けられており、そのリフィルとケースによって転写具本体が構成されていたが、このようなものには限られない。例えば、転写ヘッドは、リフィル側ではなくケース側にあらかじめ固定されたものであってもよい。
【0173】
転写具は、上述した実施形態で示したような、リフィル交換可能タイプのものに限られるものではなく、転写テープが無くなった場合は以後使用できなくなるいわゆるディスポーザブルタイプのものであってもよい。
【0174】
摺接部材は、ケースに対して取り付けられているものに限られるものではない。摺接部材は、ディスペンサを構成する静止構造物に取り付けられたものであればよい。ケース以外の静止構造物としては、例えば、リフィルベース(リフィルフレーム)や、転写ヘッドを構成する部材や、ケースとは別個に設けられた補強フレーム等を挙げることができる。
【0175】
摺接部材は、ケース又はケース内に配された静止構造物よりも摺動性を有したものであればよく、上述した実施形態に説明したような樹脂製のものに限られるものではない。摺接部材は、例えば、金属製や陶製やガラス製や木製や紙製や布製のものであってもよい。
【0176】
摺接部材が形成される「樹脂」とは、ポリオキシメチレン(POM)樹脂に限られるものではない。摺接部材が形成される「樹脂」は、ケース又はケース内に配された静止構造物に適用された樹脂よりも摺動性を有したものであればよい。
【0177】
なお、ポリオキシメチレン(POM)樹脂以外の「樹脂」としては、例えば、ディスペンサを構成する部品の内、比較的大型の部品であるケースの製造に好適な樹脂であるABS樹脂やポリスチレン(PS)樹脂よりも摺動性の優れた樹脂を挙げることができる。
【0178】
付勢部材が形成される「樹脂」とは、ポリオキシメチレン(POM)樹脂に限られるものではないことはもちろんのことである。
【0179】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0180】
A…転写具本体(ディスペンサ本体)
B…キャップ
C…付勢部材
D…ケース
E…リフィル
F…連動機構
G1…第一の繰出用リール摺接部材(摺接部材)
G2…第二の繰出用リール摺接部材(摺接部材)
H1…第一の巻取用リール摺接部材(摺接部材)
H2…第二の巻取用リール摺接部材(摺接部材)
Q…繰出用リール
R…巻取用リール