IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川重冷熱工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-吸収冷温水機 図1
  • 特開-吸収冷温水機 図2
  • 特開-吸収冷温水機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176252
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】吸収冷温水機
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
F25B15/00 303A
F25B15/00 303E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088433
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000199887
【氏名又は名称】川重冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】寺元 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】長岡 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】野副 哲司
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093AA04
3L093BB11
3L093JJ04
(57)【要約】
【課題】ポンプスタンド内の液面の低下を抑制することが可能な吸収冷温水機を提供する。
【解決手段】吸収冷温水機は、蒸発器と、吸収器と、再生器と、凝縮器と、再生器からの吸収液を溜めるポンプスタンドと、ポンプスタンド内の吸収液を送り出すポンプと、を備え、ポンプの下流の配管は、本管から分岐してポンプスタンドに連結された支管を有し、ポンプスタンドは、吸収液の水位が所定以下になると、支管の口を開放する弁機構を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器と、
吸収器と、
再生器と、
凝縮器と、
前記再生器からの吸収液を溜めるポンプスタンドと、
前記ポンプスタンド内の吸収液を送り出すポンプと、
を備え、
前記ポンプの下流の配管は、本管から分岐して前記ポンプスタンドに連結された支管を有し、
前記ポンプスタンドは、吸収液の水位が所定以下になると、前記支管の口を開放する弁機構を有する、
吸収冷温水機。
【請求項2】
前記再生器は、
低温再生器と、
吸収液の加熱と非加熱が切り替えられる高温再生器と、
を含み、
前記ポンプスタンドは、前記低温再生器からの吸収液及び前記高温再生器からの吸収液を溜め、
前記ポンプは、前記ポンプスタンド内の吸収液を前記吸収器に送り出す、
請求項1に記載の吸収冷温水機。
【請求項3】
前記再生器は、
廃温水を利用して吸収液を加熱する廃熱再生器と、
高温再生器と、
を含み、
前記ポンプスタンドは、前記廃熱再生器からの吸収液を溜め、
前記ポンプは、前記ポンプスタンド内の吸収液を前記高温再生器に送り出す、
請求項1に記載の吸収冷温水機。
【請求項4】
前記弁機構は、
前記支管の口を開閉する弁と、
前記弁に連結されたレバーと、
前記レバーに連結された浮き玉と、
を含むボールタップを有する、
請求項1ないし3の何れかに記載の吸収冷温水機。
【請求項5】
蒸発器と、
吸収器と、
廃温水を利用して吸収液を加熱する廃熱熱交換器と、
再生器と、
凝縮器と、
前記廃熱熱交換器からの吸収液を溜めるポンプスタンドと、
前記ポンプスタンド内の吸収液を前記再生器に送り出すポンプと、
を備え、
前記ポンプの下流の配管は、本管から分岐して前記ポンプスタンドに連結された支管を有し、
前記ポンプスタンドは、吸収液の水位が所定以下になると、前記支管の口を開放する弁機構を有する、
吸収冷温水機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収冷温水機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、排熱再生器に供給される温水を熱源として吸収液を加熱する運転と、高温再生器が備える加熱手段を熱源として用いる運転とを切り替え可能に構成された吸収冷温水機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-125653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収冷温水機には、再生器からの吸収液を溜めるポンプスタンドと、ポンプスタンド内の吸収液を送り出すポンプとが設けられるが、ポンプスタンド内の液面が低下すると、ポンプにキャビテーションが発生して、ポンプが破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ポンプスタンド内の液面の低下を抑制することが可能な吸収冷温水機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の吸収冷温水機は、蒸発器と、吸収器と、再生器と、凝縮器と、前記再生器からの吸収液を溜めるポンプスタンドと、前記ポンプスタンド内の吸収液を送り出すポンプとを備え、前記ポンプの下流の配管は、本管から分岐して前記ポンプスタンドに連結された支管を有し、前記ポンプスタンドは、吸収液の水位が所定以下になると、前記支管の口を開放する弁機構を有する。これによると、ポンプスタンド内の液面の低下を抑制することが可能となる。
【0007】
上記態様において、前記再生器は、低温再生器と、吸収液の加熱と非加熱が切り替えられる高温再生器とを含み、前記ポンプスタンドは、前記低温再生器からの吸収液及び前記高温再生器からの吸収液を溜め、前記ポンプは、前記ポンプスタンド内の吸収液を前記吸収器に送り出してもよい。高温再生器で吸収液の加熱と非加熱が切り替えられると、ポンプスタンド内の液面が変動しやすいが、弁機構の動作によって、ポンプスタンド内の液面の低下を抑制することが可能となる。
【0008】
上記態様において、前記再生器は、廃温水を利用して吸収液を加熱する廃熱再生器と、高温再生器とを含み、前記ポンプスタンドは、前記廃熱再生器からの吸収液を溜め、前記ポンプは、前記ポンプスタンド内の吸収液を前記高温再生器に送り出してもよい。廃温水の温度のばらつきによってポンプスタンド内の液面が変動しやすいが、弁機構の動作によって、ポンプスタンド内の液面の低下を抑制することが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記弁機構は、前記支管の口を開閉する弁と、前記弁に連結されたレバーと、前記レバーに連結された浮き玉と、を含むボールタップを有してもよい。これによると、簡易な構成でポンプスタンド内の液面の低下を抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明の他の態様の吸収冷温水機は、蒸発器と、吸収器と、廃温水を利用して吸収液を加熱する廃熱熱交換器と、再生器と、凝縮器と、前記廃熱熱交換器からの吸収液を溜めるポンプスタンドと、前記ポンプスタンド内の吸収液を前記再生器に送り出すポンプとを備え、前記ポンプの下流の配管は、本管から分岐して前記ポンプスタンドに連結された支管を有し、前記ポンプスタンドは、吸収液の水位が所定以下になると、前記支管の口を開放する弁機構を有する。これによると、ポンプスタンド内の液面の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】吸収冷温水機の構成例を示す図である。
図2】ポンプスタンドの構成例を示す図である。
図3】ポンプスタンドの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、吸収冷温水機1の構成例を示す図である。吸収冷温水機1は、ナチュラルチラー又は吸収冷凍機とも呼ばれる。本実施形態において、吸収冷温水機1は、廃熱投入型吸収冷温水機、いわゆるジェネリンクであるが、これに限られない。
【0014】
吸収冷温水機1は、蒸発器2、吸収器3、低温再生器41、高温再生器42、及び凝縮器5を備えている。また、吸収冷温水機1は、廃熱熱交換器43を備えている。廃熱熱交換器43は、廃熱再生器でもある。
【0015】
蒸発器2は、凝縮器5から供給される冷媒液を蒸発させて、冷媒蒸気を生成する。蒸発器2で生成された冷媒蒸気は、吸収器3へ供給される。冷媒は、例えば水である。すなわち、凝縮器5から配管78を通じて供給された冷媒液は、冷媒ポンプ61によって配管79に送り出され、蒸発器2内で散布される。散布された冷媒液は蒸発して、冷媒蒸気となる。このとき、冷水入口Ciから冷水出口Coに循環する水が蒸発潜熱で冷却されて、冷水となる。
【0016】
吸収器3は、蒸発器2から供給される冷媒蒸気を、低温再生器41及び高温再生器42から供給される吸収液に吸収させる。吸収液は、冷媒蒸気を吸収することで希釈される。吸収液は、例えば臭化リチウム水溶液である。すなわち、低温再生器41及び高温再生器42からの吸収液は散布ポンプ63によって送り出され、吸収器3内で散布される。散布された吸収液は、冷却水入口Tiから冷却水出口Toに循環する冷却水で冷却されるとともに、蒸発器2からの冷媒蒸気を吸収して希釈される。
【0017】
吸収器3で希釈された吸収液は、循環ポンプ62によって送り出され、配管81、熱交換器71,72、及び配管82を経て廃熱熱交換器43に供給される。また、循環ポンプ62によって送り出される吸収液の一部は、蒸発器2及び吸収器3を真空状態に保つための抽気エゼクタ68及び気液分離器69に回される。
【0018】
廃熱熱交換器43は、吸収器3から供給される吸収液を、廃温水入口Hiから廃温水出口Hoに循環する廃温水で加熱する。廃熱熱交換器43で加熱された吸収液は、低温再生器41及び高温再生器42へ供給される。また、廃熱熱交換器(廃熱再生器)43は、吸収液を廃温水で加熱することで、吸収液から冷媒蒸気を放出させる。廃熱熱交換器43で生成された冷媒蒸気は、低温再生器41及び高温再生器42からの冷媒蒸気とともに、凝縮器5へ供給される。
【0019】
低温再生器41は、廃熱熱交換器43から供給される吸収液を、高温再生器42から供給される冷媒蒸気で加熱して、吸収液から冷媒蒸気を放出させる。吸収液は、冷媒蒸気を放出することで濃縮される。低温再生器41で生成された冷媒蒸気は、高温再生器42及び廃熱熱交換器43からの冷媒蒸気とともに、凝縮器5へ供給される。また、低温再生器41で濃縮された吸収液は、吸収器3へ供給される。
【0020】
高温再生器42は、廃熱熱交換器43から供給される吸収液を、都市ガス等の燃料をバーナーで燃焼させることで加熱して、吸収液から冷媒蒸気を放出させる。吸収液は、冷媒蒸気を放出することで濃縮される。高温再生器42では、冷水温度に応じて吸収液の加熱と非加熱が切り替えられる。高温再生器42で生成された冷媒蒸気は、配管91を通じて低温再生器41へ供給され、ひいては凝縮器5へ供給される。また、高温再生器42で濃縮された吸収液は、吸収器3へ供給される。
【0021】
本実施形態では、吸収冷温水機1は、高温再生器42で生成された冷媒蒸気を利用して低温再生器41で吸収液を加熱・濃縮する二重効用の吸収冷温水機であるが、これに限らず、中温再生器をさらに設けた三重効用の吸収冷温水機であってもよいし、低温再生器と高温再生器を並列に設けた単効用の吸収冷温水機であってもよい。
【0022】
凝縮器5は、低温再生器41、高温再生器42、及び廃熱熱交換器43から供給される冷媒蒸気を、冷却水入口Tiから冷却水出口Toに循環する冷却水で冷却することで凝縮させて、冷媒液を生成する。凝縮器5で生成された冷媒液は、配管78を通じて蒸発器2へ供給される。
【0023】
散布ポンプ63の上流には、低温再生器41からの吸収液及び高温再生器42からの吸収液を溜めるポンプスタンド73が設けられており、散布ポンプ63は、ポンプスタンド73内の吸収液を吸収器3に送り出す。具体的には、低温再生器41からの吸収液は、配管83を通じてポンプスタンド73に供給される。高温再生器42からの吸収液は、配管93、熱交換器76、及び配管94を経てポンプスタンド73に供給される。散布ポンプ63によって送り出される吸収液は、配管95、熱交換器72、及び配管96を経て吸収器3に供給される。
【0024】
廃熱熱交換器43で加熱された吸収液は、中継ポンプ64によって高温再生器42に送り出される。中継ポンプ64の上流には、廃熱熱交換器43からの吸収液を溜めるポンプスタンド74が設けられており、中継ポンプ64は、ポンプスタンド74内の吸収液を高温再生器42に送り出す。具体的には、廃熱熱交換器43からの吸収液は、配管84を通じてポンプスタンド74に供給される。中継ポンプ64により送り出される吸収液は、配管85、熱交換器75、配管86、熱交換器76、及び配管87を経て高温再生器42に供給される。
【0025】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0026】
高温再生器では吸収液の加熱が止まると、気泡の発生が止まって吸収液の水位が減るため、高温再生器からポンプスタンドへの配管(以下「濃液ライン」ともいう)の流れが滞り、ポンプスタンド内の液面が低下することがある。
【0027】
ポンプスタンド内の液面が過度に低下すると、濃液ラインに冷媒蒸気と吸収液の二相流が流れ込み、エロージョンにより配管内面が破損するおそれがある。
【0028】
また、ポンプスタンド内の液面が過度に低下すると、散布ポンプにキャビテーションが発生して、散布ポンプが破損するおそれがある。このため、従来の吸収冷温水機では、インバータを設置し、ポンプスタンド内の液面が閾値より低下した場合に散布ポンプを低周波数で駆動することで、液面の低下を抑制して散布ポンプの破損を防いでいる。しかしながら、インバータを設置すると、制御盤内のスペースを圧迫する上、補助盤の設計等が必要となってコスト増となってしまう。また、プロセッサのリソースも圧迫してしまう。
【0029】
そこで、本実施形態では、以下に説明するように、簡易な機械的構成によってポンプスタンド73内の液面の過度な低下を抑制している。
【0030】
図2及び図3は、ポンプスタンド73の構成例を示す図である。散布ポンプ63の下流の配管95は、熱交換器72に連結された本管951と、本管951から分岐してポンプスタンド73に連結され、散布ポンプ63により送り出される吸収液の一部をポンプスタンド73に戻すための支管952とを有している。
【0031】
ポンプスタンド73には、吸収液ALの水位が所定水位TH以下になると、支管952の口を開放するボールタップ10が設置されている。ボールタップ10は、弁機構の例である。
【0032】
ボールタップ10は、ポンプスタンド73の内壁に取り付けられ、支管952の口に連結された本体11と、本体11の内部に進退可能に収容され、支管952の口を開閉する弁12とを有している。
【0033】
また、ボールタップ10は、弁12に連結され、本体11に設けられた支点14を中心に上下方向に揺動可能に支持されたレバー13と、レバー13の先端に連結された浮き玉15とを有している。
【0034】
図2に示すように、ポンプスタンド73内の吸収液ALの水位が所定水位THを超過すると、浮き球15に作用する浮力によって弁12が押し上げられ、支管952の口が閉塞される。これにより、散布ポンプ63により送り出される吸収液はポンプスタンド73には戻らず、全部が本管951から熱交換器72に供給される。
【0035】
図3に示すように、ポンプスタンド73内の吸収液ALの水位が所定水位TH以下になると、浮き球15に作用する重力によって弁12が押し下げられ、支管952の口が開放される。これにより、散布ポンプ63により送り出される吸収液の一部が、支管952からポンプスタンド73に戻され、液面の過度な低下が抑制される。
【0036】
所定水位THは、弁12によって支管952の口が開閉される境界となる吸収液ALの水位である。所定水位THは、ボールタップ10が取り付けられる高さ、浮き玉15の大きさ、及びレバー13の長さ等によって定まるものであり、所定水位THが所望の高さとなるようにこれらの要素が適宜調整される。
【0037】
本実施形態によると、ポンプスタンド73内の液面の過度な低下が抑制されるので、高温再生器42から配管93,94に冷媒蒸気と吸収液の二相流が流れ込むことを抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態によると、ポンプスタンド73内の液面の過度な低下が抑制されるので、散布ポンプ63を制御するインバータを設置する必要もなくなる。
【0039】
中継ポンプ64のポンプスタンド74にも同様の構成を適用してもよい。すなわち、中継ポンプ64の下流の配管85に、本管から分岐してポンプスタンド74に連結される支管を設け、ポンプスタンド74に、吸収液の水位が所定以下になると、支管の口を開放するボールタップ10を設けてもよい。
【0040】
なお、液面の低下を抑制するための弁機構は、上述したボールタップ10のような簡易な機械的構成であることが好ましいが、これに限らず、例えば吸収液の水位をセンサにより検出し、弁の開度をモータにより調整する電気的構成であってもよい。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
1 吸収冷温水機、2 蒸発器、3 吸収器、41 低温再生器、42 高温再生器、43 廃熱熱交換器(廃熱再生器)、5 凝縮器、61 冷媒ポンプ、62 循環ポンプ、63 散布ポンプ、64 中継ポンプ、71,72 熱交換器、73,74 ポンプスタンド、75,76 熱交換器、10 ボールタップ(弁機構の例)、11 本体、12 弁、13 レバー、14 支点、15 浮き玉、951 本管、952 支管

図1
図2
図3