IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナベショーの特許一覧

<>
  • 特開-リサイクル方法 図1
  • 特開-リサイクル方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176259
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】リサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20231206BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20231206BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20231206BHJP
   C21C 5/52 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C22B7/00 F
B09B3/40 ZAB
B09B3/30
C21C5/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088444
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】506424058
【氏名又は名称】株式会社ナベショー
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰史
【テーマコード(参考)】
4D004
4K001
4K014
【Fターム(参考)】
4D004AA21
4D004AA31
4D004BA05
4D004CA01
4D004CA29
4D004CA50
4K001AA10
4K001BA22
4K001DA05
4K001GA16
4K014CB01
(57)【要約】
【課題】有価物と廃棄物とを有するリサイクル対象物をより効率良くリサイクルする方法を提供することである。
【解決手段】リサイクル方法は、有価物と廃棄物とを有するスクラップ前のリサイクル対象物を回収してスクラップにする第1工程と、前記第1工程のスクラップ後のリサイクル対象物について、前記廃棄物と前記有価物を分離することなく電気炉に投入する第2工程と、前記第2工程において前記リサイクル対象物から前記廃棄物が取り除かれて残った前記有価物を取り出し、前記有価物を圧延してリサイクル製品を形成する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価物と廃棄物とを有するスクラップ前のリサイクル対象物を回収してスクラップにする第1工程と、
前記第1工程のスクラップ後の前記リサイクル対象物について、前記廃棄物と前記有価物を分離することなく電気炉に投入する第2工程と、
前記第2工程において前記リサイクル対象物から前記廃棄物が取り除かれて残った前記有価物を取り出し、前記有価物を圧延してリサイクル製品を形成する第3工程と、
前記第3工程において形成された前記リサイクル製品を再び同じ排出事業者が使用する第4工程と、
を備えることを特徴とするリサイクル方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリサイクル方法において、
前記リサイクル対象物は、建材として用いられる外壁ウレタンパネルであり、
前記廃棄物は、ウレタンであり、
前記有価物は、鉄であり、
前記リサイクル製品は、鋼材であり、
前記第1工程は、前記外壁ウレタンパネルをスクラップにし、
前記第2工程は、スクラップ後の前記外壁ウレタンパネルを電気炉に投入し、
前記第3工程は、前記電気炉内で前記ウレタンを高温分解した後に取り出された前記鉄を圧延して前記鋼材を形成することを特徴とするリサイクル方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を解体した際に得られる建材などのリサイクルがなされている。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、電気炉で発生したダストを再利用するに際し、電気炉原料として溶銑を使用し、電気炉操業時、溶銑浴面下に電気炉ダストを装入して該電気炉ダスト中の鉄分を還元回収することを特徴とする電気炉におけるダストのリサイクル方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、亜鉛を含有する鉄製品のスクラップを溶融する電気炉と、前記電気炉の排ガスに含まれる煤塵と炭材との混合物を燃焼させて還元鉄を生成するロータリーキルンと、前記煤塵から亜鉛を生成する亜鉛精錬設備と、を有し、前記還元鉄と、前記亜鉛精錬設備で生成された亜鉛と、により前記鉄製品を再生産可能なリサイクルシステムであって、前記排ガスから遠心分離により第1の煤塵を捕集するサイクロン装置と、前記サイクロン装置を通過した前記排ガスから第2の煤塵を捕集するフィルタと、が配置され、前記ロータリーキルンは、前記第1の煤塵から前記還元鉄を生成し、前記亜鉛精錬設備は、前記第2の煤塵から亜鉛を生成することを特徴とするリサイクルシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-158718号公報
【特許文献2】特開2013-76149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、このような建材などのリサイクルでは、建物を解体して得られた建材、例えば、外壁ウレタンパネルをスクラップ業者に渡してスクラップし、スクラップ後の外壁ウレタンパネルをシュレッダー業者に渡して鉄(有価物)とウレタンなどのゴミ(廃棄物)に分離する。
【0006】
シュレッダー業者により分離されたゴミは産廃業者に渡されて廃棄される。一方、分離された鉄は電気炉メーカーに渡され、電気炉で得られた鉄は圧延されて鋼材として形成されてリサイクルがなされている。このようなリサイクル方法では、例えば、外壁ウレタンパネルの選別・破砕処理や運送にコストがかかる。
【0007】
本発明の目的は、有価物と廃棄物とを有するリサイクル対象物をより効率良くリサイクルする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るリサイクル方法は、有価物と廃棄物とを有するスクラップ前のリサイクル対象物を回収してスクラップにする第1工程と、前記第1工程のスクラップ後の前記リサイクル対象物について、前記廃棄物と前記有価物を分離することなく電気炉に投入する第2工程と、前記第2工程において前記リサイクル対象物から前記廃棄物が取り除かれて残った前記有価物を取り出し、前記有価物を圧延してリサイクル製品を形成する第3工程と、前記第3工程において形成された前記リサイクル製品を再び同じ排出事業者が使用する第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るリサイクル方法において、前記リサイクル対象物は、建材として用いられる外壁ウレタンパネルであり、前記廃棄物は、ウレタンであり、前記有価物は、鉄であり、前記リサイクル製品は、鋼材であり、前記第1工程は、前記外壁ウレタンパネルをスクラップにし、前記第2工程は、スクラップ後の前記外壁ウレタンパネルを電気炉に投入し、前記第3工程は、前記電気炉内で前記ウレタンを高温分解した後に取り出された前記鉄を圧延して前記鋼材を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有価物と廃棄物とを有するリサイクル対象物をより効率良くリサイクルすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るリサイクル方法の手順を示すフローチャートである。
図2】本発明に係るリサイクル方法を用いて、建材の使用から再資源化のループを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、本発明に係るリサイクル方法の手順を示すフローチャートである。図2は、本発明に係るリサイクル方法を用いて、建材の使用から再資源化を行うループを示す図である。
【0014】
本発明に係るリサイクル方法では、仮設建物メーカーで発生する建材のスクラップが、そのまま、スクラップ業者に搬入される。
【0015】
ここで、スクラップ業者においてスクラップするリサイクル対象物は、外壁ウレタンパネルであるものとして説明するが、もちろん、その他の対象物であってもよい。
【0016】
外壁ウレタンパネルは、例えば、金属サンドイッチパネルで構成することが出来る。金属サンドイッチパネルは、表面の焼付塗装鉄板と裏面の焼付塗装鉄板によって、 硬質ウレタンフォームを挟み込んだ外壁・内壁一体の断熱建材である。表面と裏面の焼付塗装鉄板の間にウレタンを注入し発泡させる為、鉄板と断熱材は密着し空気層はなく、 結露の発生も抑える。壁材以外にも屋根材としても施工可能であり、防音効果も抜群である。
【0017】
ここで、外壁ウレタンパネルにおいて、ウレタンは廃棄物であり、鉄は有価物である。このため、従来は、スクラップ業者によりスクラップされた後にシュレッダー業者に搬入されて、ウレタン(廃棄物)と鉄(有価物)を分離していたが、本発明に係るリサイクル方法の特徴は、この分離を行うことなく、スクラップ後のリサイクル対象物をそのまま電気メーカーに搬入して、電気炉に投入することが特徴である。
【0018】
スクラップ業者に搬入されたリサイクル対象物は、スクラップされた後、電気炉メーカーに搬入される。
【0019】
電気炉メーカーは、電気炉を用いて電気炉製鋼法により製鋼する。電気炉製鋼法は、一般的に知られる鉄鉱石から高炉を用いて鉄を製錬する製鉄法とは違い、この製鉄法では鉄が原料である。
【0020】
アーク放電と呼ばれる雷に似た放電を科学工学的に発生させ、その放電熱によって鉄を融解し酸素や窒素などの不純物を取り除いた上で製鋼を行う。この放電熱は超高温に達するため、この温度に十分耐えうるように陰極部に人造黒鉛電極を用いるのがこの製鉄法の大きな特徴である。
【0021】
また、合金化に関しても許容度が大きいので複雑な成分系の鉄鋼材料が製造されており、耐久性の必要な精密ツールの材料として金型、工具、駆動系部品などの高性能機械部品用途に展開されている。
【0022】
電気炉メーカーに搬入されたスクラップ後のリサイクル対象物のうち、ウレタンは高温分解されて、鉄は一連の精錬(電気炉製鋼)を行い粗鋼となる。次に連続鋳造機にかけられ圧延素材としての鋳片(半製品)となる。鋳片は、各製品圧延機により圧延され、鉄筋棒鋼、形鋼、平鋼、厚板などの鋼材製品として生産される。
【0023】
続いて、本発明に係るリサイクル方法について説明する。
【0024】
従来、スクラップ後の外壁ウレタンパネルをシュレッダー業者に搬入し、鉄とゴミ(ウレタン)に分離し、鉄は電気炉メーカーに搬入し、ウレタン(ゴミ)は廃棄物として産廃業者に渡されていた。
【0025】
このように、スクラップ後の外壁ウレタンパネルを、シュレッダー業者を経由して有価物と廃棄物に分離するとコストがかかる。また、鉄スクラップの相場によって出荷先が変わるため、廃棄された廃棄物の行方は管理が煩雑となる。このような課題に対して、本発明に係るリサイクル方法は顕著な効果を発揮する。
【0026】
図1に示されるように、最初に、仮設建物メーカーから排出された外壁ウレタンパネルをスクラップ業者に搬入し、鉄(有価物)とウレタン(廃棄物)とを有するスクラップ前の外壁ウレタンパネル(リサイクル対象物)を回収してスクラップにする(S2)。
【0027】
次に、S2の工程におけるスクラップ後の外壁ウレタンパネルについて、ウレタンと鉄を分離することなく電気炉に投入する(S4)。従来、シュレッダー業者に搬入して分離していた作業を行うことなく、そのまま電気炉メーカーに搬入する。
【0028】
次いで、S4の工程において、電気炉内でウレタンを高温分解し、外壁ウレタンパネルからウレタンが取り除かれて残った鉄を取り出し、鉄を圧延して鋼材(リサイクル製品)を形成する(S6)。
【0029】
このようにリサイクルされた鋼材を再度、排出事業者に戻し、建材として再利用することで環境負荷の低い廃棄物処理が実現し、循環型社会の実現をすることが出来る。具体的には、図2に示されるように、「使用」している外壁ウレタンパネルを「廃棄」する際に、仮設建物メーカーから排出された外壁ウレタンパネルをスクラップして得られた「原料」を「電気炉」に投入し、そこで得られた「製鋼」を「圧延」して鋼材の「製品」を形成し、これを「原料加工」し、新しい外壁ウレタンパネルを「生産」し、「販売」した後、再び、同じ排出事業者が「使用」する。これにより、鉄資源ループを構築する。
【0030】
以上のように、本発明に係るリサイクル方法を用いることで、従来、スクラップ後の外壁ウレタンパネルをシュレッダー業者に渡して、鉄とウレタンとに分離する作業を行っていたが、この作業を行うことなく、そのまま電気炉に投入されているため、外壁ウレタンパネルの選別・破砕処理が不要であり、運送コストを抑えることができるため、より効率良くリサイクルすることが出来るという顕著な効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係るリサイクル方法によれば、従来、処理困難物として処理されていたものを鋼材の鉄源として活用し、リサイクルした鋼材を鉄鋼材の原料として再び利用することで鉄資源の循環を構築することができる。これにより、近年、注目を集めるSDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」に貢献することが出来るという利点がある。
【符号の説明】
【0032】
S2 スクラップ、S4 電気炉に投入、S6 圧延。
図1
図2