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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176262
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】水切り装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/08 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
E01D19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088447
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】592000886
【氏名又は名称】八千代エンジニヤリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩章
(72)【発明者】
【氏名】小張 裕介
(72)【発明者】
【氏名】神田 通
(72)【発明者】
【氏名】横田 敏広
(72)【発明者】
【氏名】小原 淳一
(72)【発明者】
【氏名】釜野 博臣
(72)【発明者】
【氏名】岡氏 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 武
(72)【発明者】
【氏名】福井 武久
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059AA14
2D059BB39
2D059GG21
2D059GG43
(57)【要約】
【課題】コンクリート建造物の内部への水の浸入を効果的に防止できる水切り装置を提供する。
【解決手段】水切り装置1の構成として、水切り部材11の取付面11aの一側に、水の流れてくる側に向かって下方に傾斜する2段の斜面11b、11cを形成したものを採用することにより、既設のコンクリート建造物2に設置する際に水切り部材11の上面に塗布されたシーリング剤6が、水切り部材11の斜面11b、11cとコンクリート建造物2の下向き面との間に十分に保持され、コンクリート建造物2の下向き面をつたって流れてきた水のコンクリート建造物2の内部への浸入を効果的に防止できるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート建造物の下向き面の表面部に設けられ、前記コンクリート建造物の下向き面に沿う水の流れを遮断する水切り装置において、
前記コンクリート建造物の下向き面に取り付けられる水切り部材を備え、
前記水切り部材は幅方向の断面形状が均一の長尺部材であり、その断面形状は、前記コンクリート建造物の下向き面と対向する取付面の一側に、コンクリート建造物の下向き面をつたう水の流れてくる側に向かって下方に傾斜する斜面が形成されているものであることを特徴とする水切り装置。
【請求項2】
前記水切り部材は前記斜面が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の水切り装置。
【請求項3】
前記水切り部材が樹脂材料からなる引抜成形体であることを特徴とする請求項1または2に記載の水切り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート建造物の側面や下向き面をつたう水の流れを遮断する水切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等のコンクリート建造物では、雨天時に雨水が側面から下向き面をつたって流れると、コンクリート表面に汚れが付着して美観が損なわれることがある。また、寒冷地に設置されているコンクリート建造物の場合、コンクリート表面に付着した水が凍結と融解を繰り返すことにより、表面層が劣化して剥落するおそれがある。また、コンクリート製の床版部を鋼製の橋脚部で支持している橋梁は、床版部から橋脚部につたわる雨水によって橋脚部が腐食するおそれがある。
【0003】
このため、上記のようなコンクリート建造物の下向き面には、その面をつたう水の流れを遮断する水切り装置が設置されることがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1に開示されている水切り装置は、橋梁のコンクリート製床版部の下向き面に雌ネジ部材を埋め込み、その雌ネジ部材に水切り部材を貫通する取付ボルトをねじ込むことにより、水切り部材を床版部の下向き面に取り付けるようにしたものである。その水切り部材は幅方向の断面形状が均一の長尺部材であり、その断面形状は、床版部の下向き面と対向する平坦な上面(取付面)の一側端に、床版部の下向き面に直交する垂下部を連続させている。これにより、床版部の側面から下向き面をつたって流れる水が、その流れを水切り部材で遮断され、水切り部材の垂下部をつたって滴下するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-13327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような断面L字状の水切り部材を用いた水切り装置では、コンクリート建造物の下向き面をつたって流れる水の一部が、コンクリート建造物の下向き面と水切り部材の取付面との間からコンクリート建造物の内部へ浸入するおそれがある。
【0007】
これに対しては、水切り部材をコンクリート建造物に取り付ける際に、コンクリート建造物の下向き面と水切り部材の取付面との間にシーリング剤を介在させることが考えられるが、その場合も、取付ボルトで水切り部材を締め付けることによってシーリング剤が水切り部材とコンクリート建造物の間から押し出されてしまい、十分に水の浸入を防ぐことができなくなる懸念がある。
【0008】
そこで、本発明は、コンクリート建造物の内部への水の浸入を効果的に防止できる水切り装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、コンクリート建造物の下向き面の表面部に設けられ、前記コンクリート建造物の下向き面に沿う水の流れを遮断する水切り装置において、前記コンクリート建造物の下向き面に取り付けられる水切り部材を備え、前記水切り部材は幅方向の断面形状が均一の長尺部材であり、その断面形状は、前記コンクリート建造物の下向き面と対向する取付面の一側に、コンクリート建造物の下向き面をつたう水の流れてくる側に向かって下方に傾斜する斜面が形成されているものである構成を採用した。
【0010】
上記構成とすれば、水切り装置を既設のコンクリート建造物に設置する際に、水切り部材をその取付面とコンクリート建造物の下向き面との間にシーリング剤が介在する状態で取り付けることにより、その両面の間から押し出されたシーリング剤の一部がコンクリート建造物の下向き面と水切り部材の斜面との間に保持されるようになり、コンクリート建造物の下向き面をつたって流れてきた水がコンクリート建造物の下向き面と水切り部材の取付面の間へ浸入しにくくなる。
【0011】
また、水切り装置をコンクリート建造物の新設と同時に設置する場合は、水切り部材の取付面および斜面がコンクリート建造物の下向き面と接するようにコンクリート建造物のコンクリート打設を行うことにより、コンクリート建造物の下向き面と水切り部材の斜面との界面は水の浸入方向が斜め上向きとなるので、その界面に沿う水の浸入は生じにくくなる。
【0012】
ここで、前記水切り部材を前記斜面が複数形成されている構成とすれば、上述した水の浸入防止効果をさらに高めることができる。
【0013】
また、前記水切り部材は樹脂材料からなる引抜成形体とすることが望ましい。このようにすれば、引抜成形の際に用いる金型を、新設のコンクリート建造物に埋設される埋設部を有する水切り部材の成形が可能な形状のものとし、その金型で既設のコンクリート建造物の下向き面に取り付けられる、埋設部のない水切り部材も成形可能とすることができるので、水切り装置を設置条件に応じて作り分ける場合の製造コストを抑えられる。なお、樹脂材料は樹脂単体のものだけでなくFRPも含むものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水切り装置は、上述したように、水切り部材のコンクリート建造物への取付面の一側に、水の流れてくる側に向かって下方に傾斜する斜面を形成したものであるから、設置対象のコンクリート建造物が既設か新設かによらず、コンクリート建造物の内部への水の浸入を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の水切り装置の設置状態を示す正面断面図
図2図1の水切り部材の要部の斜視図
図3】第2実施形態の水切り装置の設置状態を示す正面断面図
図4】第3実施形態の水切り装置の設置状態を示す正面断面図
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1および図2は第1実施形態の水切り装置1を示す。この水切り装置1は、既設のコンクリート建造物2の下向き面の表面部に設置されて、その下向き面に沿う水の流れを遮断するためのものであり、その下向き面に取り付けられるFRP製の水切り部材11と、コンクリート建造物2に埋設されるステンレス鋼製の雌ねじアンカー12と、水切り部材11を貫通して雌ねじアンカー12にねじ込まれるFRP製の取付ボルト13とを備えている。なお、水切り装置1が設置されるコンクリート建造物2は、主体となるコンクリート3内に、平面視で縦横に配される補強用の鉄筋4、および鉄筋4をコンクリート建造物2の表面に露出しないように配置するためのスペーサ5が埋設されている。
【0017】
水切り部材11は、コンクリート建造物2の側面と下向き面のコーナに沿って延びるように(コンクリート建造物2が橋梁の場合はその延伸方向にほぼ平行に)配置される長尺部材であって、引抜成形によって幅方向の断面形状が均一に形成されている。
【0018】
この水切り部材11の幅方向の断面形状は、コンクリート建造物2の下向き面と対向する取付面11aの一側に、コンクリート建造物2の下向き面をつたう水の流れてくる側(コンクリート建造物2のコーナに近い側)に向かって下方に傾斜する2つの斜面11b、11cがフラット面11dを挟む状態で形成され、その外側の斜面11cの下端に、コンクリート建造物2の下向き面に直交する垂下部11eが連続している。
【0019】
また、水切り部材11の取付面11aを上面とする部位には、水切り部材11の延伸方向に延び、取付ボルト13の軸部を通す長孔11fが等間隔で複数あけられている。ここで、取付ボルト13の軸部を長孔11fに通すようにしているのは、雌ねじアンカー12を水切り部材11の延伸方向と交差する方向に配設された鉄筋4と干渉しないように所定位置から多少ずらして埋設しても、水切り部材11の取り付けができるようにするためである。
【0020】
雌ねじアンカー12および取付ボルト13は市販のものであり、雌ねじアンカー12をコンクリート建造物2の下向き面にあけられた取付穴2aに打ち込んでコンクリート3に定着させた状態で、水切り部材11の長孔11fに通した取付ボルト13の軸部を接着剤とともに雌ねじアンカー12にねじ込むことにより、水切り部材11がコンクリート建造物2の下向き面に取り付けられる。
【0021】
ここで、上記のように水切り部材11を取り付ける際には、予め水切り部材11の取付面11a、1段目の斜面11bおよびフラット面11dにシーリング剤6を十分に塗布しておく。これにより、取付ボルト13で水切り部材11を締め付けたときに、シーリング剤6がその塗布位置から一部が押し出されても、押し出されたシーリング剤6を水切り部材11の2段目の斜面11cとコンクリート建造物2の下向き面との間で保持することができるので、シーリング剤6が水の浸入を防ぐ役割を果たすことができる。
【0022】
すなわち、コンクリート建造物2の側面から下向き面をつたって流れる水は、その流れを水切り部材11とシーリング剤6によって遮断され、水切り部材11の垂下部11eをつたって滴下し、コンクリート建造物2の下向き面と水切り部材11の取付面11aの間へは浸入しにくくなっている。
【0023】
この水切り装置1は、上記の構成であり、水切り部材11の取付面11aの一側に、水の流れてくる側に向かって下方に傾斜する2段の斜面11b、11cを形成したので、水切り部材11とコンクリート建造物2との間にシーリング剤6を十分に保持して、コンクリート建造物2の内部への水の浸入を効果的に防止することができる。
【0024】
図3は第2実施形態の水切り装置7をコンクリート建造物2のわずかに傾斜した下向き面の表面部に設置した状態を示す。この第2実施形態では、水切り部材21の形状のみが第1実施形態と異なり、水切り部材21をコンクリート建造物2の下向き面に取り付ける雌ねじアンカー22と取付ボルト23の構成は第1実施形態と同じである。
【0025】
第2実施形態の水切り部材21の幅方向の断面形状は、取付面21aの一側に、コンクリート建造物2の下向き面をつたう水の流れてくる側に向かって下方に傾斜する斜面21bが1つだけ形成され、その斜面21bの下端に、コンクリート建造物2の下向き面に直交する垂下部21cが連続している。また、取付面21aの他側端にも垂下部21dが連続しており、取付面21aを上面とする部位に、水切り部材21の延伸方向に延び、取付ボルト23の軸部を通す長孔21eが等間隔で複数あけられている。
【0026】
したがって、この第2実施形態の水切り装置7でも、第1実施形態と同様に、水切り部材21の取付けの際にその取付面21aに十分なシーリング剤6を塗布しておくことにより、そこから押し出されたシーリング剤6を水切り部材21の斜面21bとコンクリート建造物2の下向き面との間で保持して、コンクリート建造物2の内部への水の浸入を防止できる。
【0027】
上述した第1、第2実施形態では、水切り装置1、7を既設のコンクリート建造物2に設置しているが、本発明は、図4に示す第3実施形態のように、新設のコンクリート建造物に設置される水切り装置にも適用することができる。
【0028】
第3実施形態の水切り装置8は、第1、第2実施形態の雌ねじアンカーと取付ボルトがなく、代わりに水切り部材31にその取付面31aから上方に延びる埋設部32が設けられ、その埋設部32に係合するフック33と、その両者の係合を確実にするために両者間に圧入されるピン34を備えている。そして、その水切り部材31の埋設部32、フック33およびピン34をコンクリート建造物2に埋設し、水切り部材31の取付面31a、2つの斜面31b、31cおよび両斜面31b、31c間のフラット面31dに沿ってコンクリート建造物2の下向き面が形成されるようにコンクリート3を打設することによって設置されるようになっている。ここで、水切り部材31は、コンクリート打設に耐えうるだけの剛性および耐腐食性を有するFRP製のものを用いる。また、ピン34の材質はPP(ポリプロピレン)等を用いる。
【0029】
この水切り装置8では、水切り部材31の斜面31b、31cがその傾斜によって取付面31aとコンクリート建造物2の下向き面との間への水の浸入を生じにくくする役割を果たす。
【0030】
また、水切り部材31を引抜成形体とすることにより、その引抜成形用の金型を用いて、既設のコンクリート建造物の下向き面に取り付けられる、埋設部のない水切り部材を成形することも可能となるので、水切り装置を設置条件に応じて(設置対象のコンクリート建造物が新設か既設かによって)作り分ける場合の製造コストを抑えられる。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0032】
例えば、水切り装置を既設のコンクリート建造物に設置する場合、水切り部材をコンクリート建造物の下向き面に固定する手段は、実施形態の雌ねじアンカーと取付ボルトを用いたものに限らず、接着剤により接着する方法を採用することもできる。
【符号の説明】
【0033】
1、7、8 水切り装置
2 コンクリート建造物
3 コンクリート
4 鉄筋
6 シーリング剤
11、21、31 水切り部材
11a、21a、31a 取付面
11b、11c、21b、31b、31c 斜面
12、22 雌ねじアンカー
13、23 取付ボルト
32 埋設部
33 フック
34 ピン
図1
図2
図3
図4