(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176263
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】液体噴出器及び液体噴出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20231206BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20231206BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088448
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】先曽 洋一
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB08
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084KB05
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
3E084LD26
(57)【要約】
【課題】ステムに設けた突起を装着キャップに形成した隙間に通すことにより、使用時において、噴出ヘッドの押し下げを可能にしつつ噴出ヘッドの向きを変えることができる、液体噴出器及び液体噴出容器を提供する。
【解決手段】キャップ15とキャップ15に設けられたガイド筒15bの内側を貫通するステム14とを有しているポンプ4と、ステム14に連なっていると噴出ヘッド5と、を備える。ステム14は、軸線Oの周りで周方向に間隔を置いて配置された、複数の突起141を備える。キャップ15は、突起141の下面f14と接触可能な複数の棚板151を軸線Oの周りで周方向に間隔を置いて備えており、前記複数の棚板151は、ステム14を周方向に回転させたときに突起141を通過させることができるように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着可能な装着キャップと前記装着キャップに設けられたガイド筒の内側を貫通するステムとを有しており当該ステムの押し下げによって前記容器本体の内容物を圧送可能なポンプと、前記ステムに連なっているとともに前記内容物を噴出させる噴出口が形成されている噴出ヘッドと、を備えた、液体噴出器であって、
前記ステムは、当該ステムの外周面に、軸線の周りで周方向に間隔を置いて配置された、複数の突起を備えており、
前記装着キャップは、前記ガイド筒の内周面に、前記ステムの前記突起の下面と接触可能な複数の棚板を軸線の周りで周方向に間隔を置いて備えており、前記複数の棚板は、前記ステムを周方向に回転させたときに当該ステムの前記突起を通過させることができるように配置されている、液体噴出器。
【請求項2】
前記棚板は、前記ステムを周方向に回転させたときに前記突起と接触することによって当該ステムの回転を制限するストッパ凸部を備えている、請求項1に記載された液体噴出器。
【請求項3】
前記棚板は、前記ステムを周方向に回転させたときに前記突起を解除可能に係止する係止凸部を備えている、請求項1に記載された液体噴出器。
【請求項4】
前記複数の棚板は、前記ステムを引き上げたときに前記突起の真下になるように配置されている、請求項1に記載された液体噴出器。
【請求項5】
前記ポンプは、前記内容物と外気との混合物を圧送可能な泡ポンプである、請求項1に記載された液体噴出器。
【請求項6】
口部を有しており内容物を収容可能な容器本体と、請求項1~5のいずれか1項に記載された液体噴出器とを備えている、液体噴出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴出器及び液体噴出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体噴出器には、例えば、噴出ヘッドに連なるステム(吐出ヘッドの内筒部)の外周面に設けた突起(凸部)を、装着キャップ(支持部)のガイド筒(第1案内部)の内周面に形成された凹部を通過させることによって噴出ヘッドの押し下げを可能する一方、ステムに設けた突起を前記溝に対して周方向にずらすことによって噴出ヘッドの押し下げを阻止するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の液体噴出器は、装着キャップに形成された凹部が軸線方向に延在する溝であるため、その使用時に、ステムに設けた突起が装着キャップに形成された凹部に拘束されているため、当該使用時に噴出ヘッドの周方向の向きを変えることができなかった。
【0005】
本発明の目的は、ステムに設けた突起を装着キャップに形成した隙間に通すことにより、使用時において、噴出ヘッドの押し下げを可能にしつつ噴出ヘッドの向きを変えることができる、液体噴出器及び液体噴出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る、液体噴出器は、容器本体の口部に装着可能な装着キャップと前記装着キャップに設けられたガイド筒の内側を貫通するステムとを有しており当該ステムの押し下げによって前記容器本体の内容物を圧送可能なポンプと、前記ステムに連なっているとともに前記内容物を噴出させる噴出口が形成されている噴出ヘッドと、を備えた、液体噴出器であって、前記ステムは、当該ステムの外周面に、軸線の周りで周方向に間隔を置いて配置された、複数の突起を備えており、前記装着キャップは、前記ガイド筒の内周面に、前記ステムの前記突起の下面と接触可能な複数の棚板を軸線の周りで周方向に間隔を置いて備えており、前記複数の棚板は、前記ステムを周方向に回転させたときに当該ステムの前記突起を通過させることができるように配置されている。
【0007】
(2)上記(1)の、液体噴出器において、前記棚板は、前記ステムを周方向に回転させたときに前記突起と接触することによって当該ステムの回転を制限するストッパ凸部を備えていることが好ましい。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)の、液体噴出器において、前記棚板は、前記ステムを周方向に回転させたときに前記突起を解除可能に係止する係止凸部を備えていることが好ましい。
【0009】
(4)上記(1)~(3)の、液体噴出器において、前記複数の棚板は、前記ステムを引き上げたときに前記突起の真下になるように配置されていることが好ましい。
【0010】
(5)上記(1)~(4)の、液体噴出器において、前記ポンプは、前記内容物と外気との混合物を圧送可能な泡ポンプとすることができる。
【0011】
(6)本発明に係る、液体噴出容器は、口部を有しており内容物を収容可能な容器本体と、上記(1)~(5)のいずれかの、液体噴出器とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステムに設けた突起を装着キャップに形成した隙間に通すことにより、使用時において、噴出ヘッドの押し下げを可能にしつつ噴出ヘッドの向きを変えることができる、液体噴出器及び液体噴出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、液体噴出器を備えた、本発明の一実施形態に係る、液体噴出容器の要部を一部断面にて概略的に示す側面図であり、当該液体噴出器は、噴出ヘッドの押し下げが阻止されたロック状態で示されている。
【
図2】
図1の液体噴出容器において、液体噴出器の噴出ヘッドが押し下げ可能なロック解除状態で示された側面図である。
【
図3】
図2の液体噴出容器において、液体噴出器の噴出ヘッドが押し下げられた状態で示された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、液体噴出器を備えた、本発明の一実施形態に係る、液体噴出容器について説明をする。
【0015】
ここで、本開示において、軸線Oは、液体噴出容器の中心軸線である。また、本開示において、容器本体の中心軸線と液体噴出器の中心軸線とは、液体噴出容器の中心軸線Оと同軸である。
【0016】
また、本開示において、「上下方向」とは、軸線Оに沿って延びている方向をいう。特に、本開示において、「上側」とは、容器本体の口部又は液体噴出器の噴出ヘッドが配置される側をいい、また、「下側」とは、容器本体の底部又は液体噴出器のシリンダが配置される側をいう。
【0017】
さらに、本開示において、軸線Oに延在する方向を軸線方向ともいい、軸線Oの周りに延在する方向を周方向ともいう。また、以下の説明において、軸線Oに対して直交する方向を径方向ともいう。特に、径方向のうち、軸線Оに近い側を径方向内側といい、軸線Оから遠い側を径方向外側という。
【0018】
図1中、符号1は、本発明の一実施形態に係る、液体噴出容器である。液体噴出容器1は、口部21を有しており内容物Cを収容可能な容器本体2と、容器本体2の内容物Cを噴出可能な液体噴出器3とを備えている。
【0019】
本開示において、容器本体2は、いわゆるボトル容器である。容器本体2は、口部21に連なる肩部22と、当該肩部22に連なる胴部23とを有しており、胴部23の下端は、底部(図示省略)によって閉じられている。容器本体2の内側には、内容物Cを収容可能な収容空間Sが形成されている。収容空間Sには、液体又は半液体の内容物Cを充填させることができる。口部21の内側には、収容空間Sに通じる開口A2が形成されている。容器本体2は、例えば、合成樹脂を用いたブロー成形によって形成することができる。ただし、容器本体2の製造方法は、ブロー成形に限定されるものではなく、様々な方法によって製造することができる。
【0020】
液体噴出器3は、容器本体2の口部21に装着可能な装着キャップ15と当該装着キャップ15に設けられたガイド筒15bの内側を貫通するステム14とを有しており当該ステム14の押し下げによって容器本体2の内容物Cを圧送可能なポンプ4と、内容物Cを噴出させる噴出口A5が形成されている噴出ヘッド5と、を備えている。
【0021】
本開示において、ポンプ4は、内容物Cと外気との混合物を圧送可能な泡ポンプである。ポンプ4は、液室4aと空気室4bとを有している。
【0022】
本開示において、ポンプ4は、シリンダ6、ポペットバルブ7、コイルスプリング8、液圧ピストン9、ピストンガイド10、空気圧ピストン11、ボール弁12、泡生成要素13およびステム14、装着キャップ15および吸入パイプ16を備えている。
【0023】
シリンダ6は、容器本体2の口部21に形成された開口A2を通して当該容器本体2の内部に挿入することができる。本開示において、シリンダ6は、液室4aを形成する液室シリンダ6aと、空気室4bを形成する空気室シリンダ6bと、を有している。シリンダ6は、容器本体2の口部21に形成された開口A2に挿入させることができる。本実施形態において、シリンダ6は、軸線Оに沿って延びている。シリンダ6の下端には、下側開口A1が形成されている。シリンダ6の下側開口A1には、吸入パイプ16が接続されている。したがって、本開示において、シリンダ6は、吸入パイプ16を通して容器本体2の収容空間Sに通じる。
【0024】
ポペットバルブ7は、シリンダ6に形成された下側開口A1を開放可能に閉じることができる。ポペットバルブ7は、内容物Cの流れが下側開口A1を通してシリンダ6の内部に導入される方向のときに下側開口A1を開く方向に動作し、シリンダ6の内部に導入された内容物Cが下側開口A1を通して排出される方向のときに下側開口A1を閉じる方向に動作する。
【0025】
コイルスプリング8は、液室シリンダ6aの内部に配置されている。コイルスプリング8は、シリンダ6に対して液圧ピストン9を弾性的に支持している。
【0026】
液圧ピストン9は、液室シリンダ6aの内部に配置されている。液圧ピストン9は、液室シリンダ6aの内周面に対して摺動させることができる。液圧ピストン9は、液室シリンダ6aの内部に、ポペットバルブ7とともに液室4aを形成する。液圧ピストン9は、筒状部材である。液圧ピストン9の内部には、内部通路R1が形成されている。ポペットバルブ7は、当該ポペットバルブ7の摺動によって、液室4aと下側開口A1との間、または、液室4aと内部通路R1との間を開閉させることができる。
【0027】
ピストンガイド10は、筒状部材である。ピストンガイド10の内部には、内部通路R2が形成されている。ピストンガイド10の内部には、液圧ピストン9の上端部が固定されている。
【0028】
空気圧ピストン11は、空気室シリンダ6bの内部に配置されている。空気圧ピストン11は、空気室シリンダ6bの内周面に対して摺動させることができる。空気圧ピストン11は、空気室シリンダ6bの内部に、ピストンガイド10とともに空気室4bを形成する。空気圧ピストン11は、筒状部材である。空気圧ピストン11の内部には、ピストンガイド10が配置されている。空気圧ピストン11は、ピストンガイド10の外周面に対して摺動させることができる。空気圧ピストン11とピストンガイド10との間には、内部通路R3が形成されている。内部通路R3は、空気圧ピストン11とピストンガイド10との間に摺動によって開閉させることができる。加えて、空気圧ピストン11は、外気導入口A11を有している。
【0029】
ボール弁12は、ピストンガイド10の上端内側に配置されている。ボール弁12は、内部通路R2を通して圧送された内容物Cによって開放される逆止弁である。
【0030】
ステム14は、装着キャップ15に設けられたガイド筒15bの内側を貫通してピストン(9,11)の押し込みを可能にする。本開示において、液体噴出器3は、前記ピストンに、液圧ピストン9と、空気圧ピストン11とを含んでいる。ステム14の下端部は、ピストンガイド10の上端部の内外周面に固定されている。ピストンガイド10の前記上端部とステム14の前記下端部との間には、内部通路R4が形成されている。内部通路R4は、ボール弁12を介して内部通路R2に通じている。
【0031】
ステム14は、筒状部材である。ステム14の内部には、内部通路R5が形成されている。内部通路R5は、内部通路R4に通じているとともに、ボール弁12を介して内部通路R2に通じている。
【0032】
加えて、ステム14の内部には、泡生成要素13が配置されている。泡生成要素13は、ポンプ4の動作によって圧送された混合物を泡状の混合物に生成する。本開示において、泡生成要素13は、編み目状のメッシュ部材13aと、メッシュ部材13aを保持する環状の保持部材13bと、によって形成されている。また、本開示では、2つの泡生成要素13が軸線方向に間隔を置いて配置されている。
【0033】
また、本開示において、ステム14は、空気圧ピストン11の上端部に対して摺動可能なシール筒14aを有している。シール筒14aは、空気圧ピストン11とステム14との間に、外気導入口A11に通じる中継空間Saを形成する。シール筒14aは、ステム14が押し下げられるときに空気圧ピストン11に対して下側に摺動することによって中継空間Saを密封する。これにより、空気室4bには外気は導入されない。逆に、シール筒14aは、ステム14が上側に移動するときに空気圧ピストン11に対して上側に摺動することによって、中継空間Saを開放する。これにより、ステム14と装着キャップ15のガイド筒15bとの間に形成された隙間からの外気を、中継空間Saを介して空気室4bに導入させることができる。ただし、本発明によれば、上記構成に代えて、空気圧ピストン11に外気導入口を形成し、当該外気導入口に空気室4bに生じた負圧によって開放可能な逆止弁(図示省略)を設けることができる。
【0034】
装着キャップ15は、シリンダ6の上端部に固定されているとともに容器本体2の口部21に装着されている。装着キャップ15は、シリンダ6の上端部に固定されることによって、当該シリンダ6の上側開口を覆っている。即ち、本開示において、装着キャップ15は、ポンプ4のポンプカバーとして機能する。また、装着キャップ15は、容器本体2の口部21に装着される装着部15aを有している。本開示において、装着キャップ15は、装着部15aを容器本体2の口部21にねじ付けることによって装着されている。ガイド筒15bは、軸線方向に延びているとともに装着部15aに連なっている。ガイド筒15bの内部には、軸線方向に延びている貫通穴A15が形成されている。ステム14は、貫通穴A15を貫通している。これによって、ステム14の上端部は、貫通穴A15を通して装着キャップ15よりも上側に突出している。本開示において、液体噴出器3は、さらにシール部材17を備えている。シール部材17は、例えば、Оリング等の環状のシール部材である。シール部材17は、液体噴出器3と容器本体2との間を液密にシールする。
【0035】
噴出ヘッド5は、噴出口A5を有してステム14に連なっている。本開示において、噴出ヘッド5は、下向きに押圧可能な天壁51と、天壁51から垂下しておりステム14に接続可能な接続筒52と、天壁51から垂下しており接続筒52を取り囲むとともにガイド筒15bよりも内径が大きいカバー筒53とを備えている。
【0036】
本開示において、天壁51は、板状の天壁である。本実施形態において、天壁51は、軸線方向から視た軸線方向視で、円形をしている。ただし、天壁51の軸線方向視における形状は、使用者が噴出ヘッド5を押し下げることができる形状であれば、特に円形に限定されるものではない。
【0037】
接続筒52の内部には、内部通路R6が形成されている。接続筒52の内部には、ステム14の上端部が固定されている。これによって、内部通路R6は、泡生成要素13を介して内部通路R5に通じる。また、噴出ヘッド5には、内部通路R6に通じる内部通路R7が形成されている。内部通路R7は、噴出口A5を通して外界に通じている。
【0038】
本開示において、噴出ヘッド5は、ノズル56をさらに備えている。ノズル56は、カバー筒53よりも軸直方向外側に突出している。本開示において、内部通路R7は、ノズル56の内部に形成されている。
【0039】
また、本開示において、カバー筒53には、天壁51に近い位置に、当該カバー筒53を貫通する空気穴A53が形成されている。さらに、カバー筒53には、空気穴A53から下方に向かって延びている薄肉部53aが形成されている。
【0040】
ポンプ4は、噴出ヘッド5の押し下げおよび当該噴出ヘッド5の押し下げの解除を繰り返すことによって動作させる。ここで、本開示において、ポンプ4は、
図2に示す状態を初期状態とする。
図2に示すポンプ4の初期状態は、後述するように、ステム14の突起141が装着キャップ15の棚板151よりも下側の位置にある状態である。ポンプ4は、
図2の初期状態からまず、
図3に示すように、噴出ヘッド5を押し下げることによって、液室4aと空気室4bとを負圧状態にする。次いで、噴出ヘッド5の押し下げを解除すると、
図2の初期状態に復帰し、液室4aには、吸入パイプ16を通して容器本体2の内部に収容された内容物Cが導入されると同時に、空気室4bには、外気(空気)が導入される。その後、
図3に示すように、噴出ヘッド5を再び押し下げると、液室4aに導入された内容物Cと、空気室4bに導入された空気とはそれぞれ、ステム14に向けて圧送される。ステム14の内部では、内容物Cと空気とが混合された状態で泡生成要素13を通過する。これにより、内容物Cと空気との混合物は、泡状の混合物として、噴出ヘッド5の噴出口A5から噴出される。
【0041】
ここで、本開示に係る、液体噴出器3には、例えば、輸送、販売等の流通時において、噴出ヘッド5が押し下げられないように、噴出ヘッド5をロックするロック機構Lが設けられている。
【0042】
ロック機構Lは、ステム14に設けられた突起141と、装着キャップ15に設けられた棚板151とによって構成されている。ロック機構Lは、ステム14の突起141が装着キャップ15の棚板151よりも上側に配置されることによって、ステム14の押し下げたとき、当該ステム14の突起141を、装着キャップ15の棚板151に接触させる。これによって、ロック機構Lは、ステム14の押し下げを阻止する。
【0043】
また、ロック機構Lは、後述するように、ステム14を周方向に回転させることによって、ステム14の押し下げたとき、ステム14の突起141を、装着キャップ15の棚板151に接触させないようにすることができる。これによって、ロック機構Lは、ステム14の押し下げを可能にする。
【0044】
図5を参照すれば、ステム14は、当該ステム14の外周面に、軸線の周りで周方向に間隔を置いて配置された、複数の突起141を備えている。なお、
図5のA-A断面の位置は、
図4のA-A断面と同一の軸線方向位置である。
【0045】
本開示において、突起141は、
図5に示すように、ステム14のシール筒14aの外周面に形成されている。また、本開示において、突起141は、径方向外側に突出しているとともに周方向に延在している、板状の突起である。具体的には、突起141は、
図5に示すように軸線方向視において、周方向に間隔を置いて配置された2つの径方向延在側縁141aと、当該2つの径方向延在側縁141aの径方向外側端に連なる、1つの周方向延在側縁141bとによって、形作られている。2つの径方向延在側縁141aはそれぞれ、径方向に延在し、周方向延在側縁141bは、周方向に延在している。この場合、後述のように、装着キャップ15の棚板151に接触するときの、接触面積を大きく確保することができる。ただし、突起141の形状は、板状の形状に限定されるものではない。
【0046】
本開示において、ステム14は、3つの突起141を備えている。3つの突起141は、軸線Оの周りを周方向に等しい間隔(120度)で配置されている。ただし、突起141は、2つ以上とすることができる。
【0047】
これに対し、装着キャップ15は、ガイド筒15bの内周面に、ステム14の突起141の下面f14と接触可能な複数の棚板151を周方向に間隔を置いて備えており、複数の棚板151は、ステム14を周方向に回転させたときに当該ステム14の突起141を通過させることができるように配置されている。
【0048】
本開示において、棚板151は、
図1に示すように、ステム14の押し下げが阻止されたロック状態において、ステム14の突起141よりも下側の位置に配置されている。また、本開示において、棚板151は、
図5に示すように、径方向内側に突出しているとともに周方向に延在している、板状の突起である。具体的には、棚板151は、
図5に示すように軸線方向視において、周方向に間隔を置いて配置された2つの径方向延在側縁151aと、当該2つの径方向延在側縁151aの径方向外側端に連なる、1つの周方向延在側縁151bとによって、形作られている。2つの径方向延在側縁151aはそれぞれ、径方向に延在し、周方向延在側縁151bは、周方向に延在している。この場合もまた、ステム14の突起141と同様に、ステム14の突起141と接触するときの、接触面積を大きく確保することができる。ただし、棚板151の形状もまた、板状の形状に限定されるものではない。
【0049】
本開示において、装着キャップ15もまた、3つの棚板151を備えている。3つの棚板151は、軸線Оの周りを周方向に等しい間隔(120度)で配置されている。ただし、棚板151もまた、2つ以上とすることができる。
【0050】
図5に示すように、1つの突起141の周方向幅をW1とし、互いに周方向で隣り合う2つの棚板151の間の周方向間隔をS2とした場合、本開示において、1つの突起141の周方向幅W1は、2つの棚板151の間の周方向間隔S2よりも狭い。これによって、複数の棚板151の間には、それぞれ、
図5に示すように、ステム14の突起141を通過させることができる隙間が形成される。
【0051】
図5に示すように、ステム14の突起141の位置を棚板151の間に形成された隙間(S2)の位置に合わせれば、ステム14の突起141は、棚板151の間に形成された隙間(S2)を通すことができる。このため、ステム14の突起141の位置を棚板151の間に形成された隙間(S2)の位置に合わせれば、ステム14の軸線方向(上下方向)の動きは、常に確保される。
【0052】
また、ステム14の突起141を通す隙間(S2)は、複数の棚板151の間に形成されていることから、ステム14の突起141を棚板151の間に形成された隙間(S2)を通したのちは、ステム14の突起141の周囲には、当該ステム14の突起141を周方向に規制する部分は無くなる。このため、ステム14の突起141を棚板151の間に形成された隙間(S2)を通したのちは、ステム14を周方向に自由に回転させることができる。なお、本開示において、棚板151は、
図2に示すように、ステム14の押し下げが可能なロック解除状態において、ステム14の突起141よりも上側の位置に配置されている。即ち、本開示において、ロック解除状態は、ポンプ4の初期状態である。
【0053】
次いで、
図4は、
図5のステム14を上側に引き出して、周方向に回転させた状態を示している。ステム14の突起141を棚板151の間に形成された隙間(S2)を通したのち、ステム14を周方向に回転させれば、
図4に示すように、ステム14の突起141は、装着キャップ15の棚板151(の上面f15)の真上に配置させることができる。これによって、ステム14を押し込んだとき、ステム14の突起141は、装着キャップ15の棚板151と接触させることができる。
【0054】
本開示において、棚板151は、ステム14を周方向に回転させたときに突起141と接触することによって当該ステム14の回転を制限するストッパ凸部152を備えている。この場合、ステム14を回転させるだけの簡単な操作によって、ステム14の押し下げが阻止されたロック状態とすることができる。
【0055】
具体的には、ストッパ凸部152は、棚板151の上面f15から上側に突出する凸部である。この場合、ストッパ凸部152は、ステム14を回転させたとき、当該ステム14の突起141と周方向で接触する。これによって、使用者は、ステム14の回転量を微調整することなく、ステム14の突起141を装着キャップ15の棚板151の位置に位置決めすることができる。したがって、この場合、ステム14を回転させるだけの簡単な操作によって、ステム14の押し下げを容易に阻止することができる。
【0056】
特に、本開示において、ストッパ凸部152はそれぞれ、棚板151の周方向一方側(
図4では、軸線Оを中心とした時計回りの側)の端縁と一致するように配置されている。
図4を参照すれば、例えば、ステム14を周方向一方側に回転させたとき、
図4に示すように、ステム14の突起141は、棚板151の上側に位置した状態でストッパ凸部152と接触する。これによって、ステム14の押し下げは、ステム14の突起141と棚板151との接触によって阻止される。反対に、ステム14を周方向他方側(
図4では、軸線Оを中心とした反時計回りの側)に回転させたとき、ステム14の突起141は、棚板151の間に形成された隙間(S2)の上側に位置した状態で、他方の棚板151のストッパ凸部152と接触する。これによって、ステム14の押し下げは、ステム14の突起141が棚板151の間に形成された隙間(S2)を通過することによって可能となる。したがって、この場合、ステム14の回転方向を変えるだけの簡単な操作によって、ステム14の押し下げが阻止されたロック状態と、当該ロック状態が解除されたロック解除状態とを容易に選択することができる。
【0057】
さらに、本開示において、棚板151は、ステム14を周方向に回転させたときに突起141を解除可能に係止する係止凸部153を備えている。この場合、ステム14の押し下げを阻止するロック状態を安定的に維持することができる。
【0058】
具体的には、係止凸部153は、ガイド筒15b(ステム14)の内周面から突出する凸部である。本開示において、係止凸部153は、
図4等に示すように、軸線方向視において、曲線で形成された曲面である。この場合、
図5の状態からステム14を回転させたとき、当該ステム14の突起141は、係止凸部153と接触するが、より大きな力で回転させることにより、当該係止凸部153を乗り越えて周方向に移動させることができる。つまり、ステム14は、その突起141が係止凸部153を乗り越えた後も、周方向に回転させることができる。その後、
図4に示すように、ステム14の突起141の2つの隅部側縁141dのうち、係止凸部153に隣接する位置の隅部側縁141dが係止凸部153に引っ掛かって当該係止凸部153に係止される。これによって、ステム14の突起141は、ストッパ凸部152と係止凸部153との間に位置決めされる。したがって、この場合、ステム14の押し下げを阻止するロック状態を安定的に維持することができる。その一方で、ステム14を反対に回転させたときには、ステム14の突起141が再び係止凸部153を乗り越えることによって、ステム14の突起141の係止は解除される。この場合、再び、ステム14の押し下げが可能となる。
【0059】
なお、
図5を参照すれば、本開示において、突起141の基部側縁141cは、突起141の径方向延在側縁141aとステム14(シール筒14a)とに連なる部分である。突起141の基部側縁141cは、
図5に示すように、軸線方向視において、曲線で形成された曲面である。この場合、装着キャップ15に設けられた棚板151との局所的な接触(片当たり)を軽減させることができる。また、本開示において、突起141の隅部側縁141dもまた、
図5に示すように、軸線方向視において、曲線で形成された曲面である。この場合もまた、装着キャップ15に設けられた棚板151との局所的な接触(片当たり)を軽減させることができる。
【0060】
また、
図5を参照すれば、本開示において、棚板151の基部側縁151cは、棚板151の径方向延在側縁151aとガイド筒15b(装着キャップ15)とに連なる部分である。棚板151の基部側縁151cもまた、
図5に示すように、軸線方向視において、曲線で形成された曲面である。この場合、ステム14の突起141との局所的な接触(片当たり)を軽減させることができる。また、本開示において、棚板151の隅部側縁151dもまた、
図5に示すように、軸線方向視において、曲線で形成された曲面である。この場合もまた、ステム14の突起141との局所的な接触(片当たり)を軽減させることができる。
【0061】
さらに、
図5を参照すれば、本開示において、ストッパ凸部152の基部側縁152cは、ストッパ凸部152の周方向延在側縁(ステム14の突起141との接触部分)152aと装着キャップ15(ガイド筒15b)とに連なる部分である。ストッパ凸部152の基部側縁152cもまた、
図5に示すように、軸線方向視において、曲線で形成された曲面である。この場合もまた、ステム14の突起141との局所的な接触(片当たり)を軽減させることができる。また、本開示において、ストッパ凸部152の隅部側縁152dもまた、
図5に示すように、軸線方向視において、曲線で形成された曲面である。この場合もまた、ステム14の突起141との局所的な接触(片当たり)を軽減させることができる。
【0062】
特に、
図1を参照すれば、本開示において、複数の棚板151は、ステム14を引き上げたときに突起141の真下になるように配置されている。この場合、ロック機構Lのロックを解除したのち、再び、ステム14を引き上げるまでは、ステム14を軸線Оの周りを周方向に回転させても、ロック機構Lがロック状態となることはない。したがって、この場合、使用者は、ロック機構Lの誤作動を気にすることなく、内容物Cの取り出しを快適に行うことができる。
【0063】
一般的に、容器用の液体噴出器は、複数の構成要素を組み付けて形成されるものである。このため、液体噴出器は通常、ステム14の初期位置に対して、ステム14を僅かに上側に引き上げられるような、構造的な遊び(組付けしろ)を有している。ここで、ステム14の初期位置とは、
図2に示された、ポンプ4の初期状態における、ステム14の位置をいう。ステム14の初期位置は、例えば、コイルスプリング8の弾性力と、シリンダ6と摺動部材(液圧ピストン9及び空気圧ピストン11)との間に生じる摺動抵抗と、の関係で設定することができる。なお、本開示において、空気圧ピストン11の摺動面積が液圧ピストン9の摺動面積に比べて大きい。このため、本開示において、ステム14の初期位置の設定は、液圧ピストン9から受ける影響に比べて、空気圧ピストン11から受ける影響の方が大きい。
【0064】
本開示の液体噴出器3では、この遊びを利用している。具体的には、この遊びの分だけ、ステム14を引き上げたときの、ステム14の突起141の位置よりも下側の位置に棚板151が配置されるように、当該棚板151の高さ位置(軸線方向の位置)を設定している。これによって、ステム14を上側に引き上げて棚板151の間に形成された隙間(S2)に通したのち、ステム14を回転させれば、ステム14を押し込んだとき、ステム14の141を装着キャップ15の棚板151に接触させることができる。これによって、ステム14の押し下げが阻止されたロック状態とすることができる。
【0065】
その一方で、ステム14の押し下げが阻止されたロック状態から、ステム14を逆回転させれば、ステム14の突起141を、棚板151の間に形成された隙間(S2)に再び通すことができる。ステム14の突起141を、棚板151の間に形成された隙間(S2)に通したのちは、ステム14の位置は、
図2に示すように、初期位置(ステム14の突起141が棚板151よりも下側となる位置)に復帰する。これによって、ステム14は、装着キャップ15の棚板151に対して干渉されることなく、軸線方向及び周方向のいずれの方向にも自由に動かすことができる。したがって、この場合、使用者は、ロック機構Lの誤作動を気にすることなく、内容物Cの取り出しを快適に行うことができる。
【0066】
本開示において、ポンプ4は、内容物Cと外気との混合物を圧送可能な泡ポンプである。泡ポンプの場合、ピストンには、液圧ピストン9と空気圧ピストン11との、2つのピストンが含まれる。このため、泡ポンプにおいて、ステム14には、空気圧ピストン11を保持するためのシール筒14aが設けられている。したがって、液体噴出器3のポンプ4として泡ポンプを用いれば、ステム14及び装着キャップ15のガイド筒15bに対して、ロック機構Lを比較的容易に設けることができる。ただし、ポンプ4は、本開示のように、空気を混合させることによって、泡状の液体を噴出させることできる泡ポンプに限定されるものではない。ポンプ4には、空気を混合させることなく、液体のまま噴出させることできるポンプも含むことができる。この場合もまた、泡ポンプの場合と同様に、上述のロック機構Lを採用することができる。加えて、この場合もまた、ステム14の初期位置は、例えば、コイルスプリング8の弾性力と、シリンダ6と摺動部材(液圧ピストン)との間に生じる摺動抵抗と、の関係で設定することができる。
【0067】
上述のとおり、本開示の液体噴出器3は、ステム14に設けた突起141を装着キャップ15に形成した隙間(S2)に通すことにより、ステム14の押し下げを阻止するロック状態を解除するものであるが、装着キャップ15に形成した隙間(S2)は、装着キャップ15に形成された複数の棚板151の間に形成された隙間(S2)である。このため、ステム14の突起141が複数の棚板151の間に形成された隙間(S2)を通過したのちは、噴出ヘッド5はステム14とともに軸線Оの周りを周方向に自由に回転させることができる。したがって、本発明によれば、上述のとおり、ステム14に設けた突起141を装着キャップ15に形成した隙間(S2)に通すことにより、使用時において、噴出ヘッド5の押し下げを可能にしつつ噴出ヘッド5の向きを変えることができる、液体噴出器3及び液体噴出容器1を提供することができる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態に係る、液体噴出器及び液体噴出容器について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で、様々に変更することができる。例えば、上述した実施形態において、液体噴出器及び液体噴出容器は、台所、洗面台、浴室などの、水回りで使用するものであることが好ましい。内容物Cとしては、液体石けん、洗剤、化粧料などが挙げられる。
【符号の説明】
【0069】
1:泡噴出容器, 2:容器本体, 21:口部, 3:噴出器, 4:ポンプ, 4a:液室, 4b:空気室, 5:噴出ヘッド, 51:天壁, 52:接続筒, 53:カバー筒, 53a:薄肉部, A53:空気穴, 54:中間筒, 55:外筒, 56:ノズル, 6:シリンダ, 6a:液室シリンダ, 6b:空気室シリンダ, 7:ポペットバルブ, 8:コイルスプリング, 9:液圧ピストン, 10:ピストンガイド, 11:空気圧ピストン, 12:ボール弁, 13:泡生成要素, 14:ステム, 14a:シール筒, 15:装着キャップ, 15a:装着部, 15b:ガイド筒,16:吸入パイプ, 17:シール部材, A1:シリンダ6の下端に形成された下端開口, A2:容器本体の口部に形成された開口, A5:噴出口, A11:外気導入口, A15:貫通穴, R1:液圧ピストンの内部通路, R2:ピストンガイドの内部通路, R3:空気圧ピストンとピストンガイドとの間の内部通路, R4:ピストンガイドとステムとの間の内部通路, R5:ステムの内部通路, R6:接続筒の内部通路, R7:ノズルの内部通路, Sa:中継空間, 141:突起(ロック機構), 141a:突起の径方向延在側縁, 141b:突起の周方向延在側縁, 141c:突起の基部側縁, 141d:突起の隅部側縁, 151:棚板(ロック機構), 151a:棚板の径方向延在側縁, 151b:棚板の周方向延在側縁, 151c:棚板の基部側縁, 151d:棚板の隅部側縁, 152:ストッパ凸部, 152a:ストッパ凸部の周方向延在側縁(ステムの突起との接触部分), 153:係止凸部, C:内容物, f14:突起の下面, f15:棚板の上面, L:ロック機構, S2:2つの棚板の間の周方向間隔(2つの棚板の間に形成された隙間), W1:突起の周方向幅