(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176269
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】設備を保守するための装置、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20231206BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088456
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲児
(72)【発明者】
【氏名】植村 英生
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ・アンナーセル
(72)【発明者】
【氏名】アブラー・サイード・アルアモウディ
(72)【発明者】
【氏名】アブドラティフ・アブドラー・アンナージム
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】設備を保守するための装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】装置は、設備に発生した異常についての異常情報及び当該異常に対処した作業実績を夫々含む複数の組を記憶するデータベースに接続されるデータベース接続部と、設備に発生した異常の報告を取得する報告取得部と、設備に発生した異常に対処する作業計画を取得する作業計画取得部と、報告中の異常情報及び複数の組の夫々に含まれる異常情報の類似度を算出する類似度算出部と、類似度算出部が算出した類似度に基づいて複数の組の中から少なくとも1つの組を選択する選択部と、作業計画及び少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出する差分検出部と差分を表示する表示処理を行なう表示処理部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備に発生した異常についての異常情報および当該異常に対処した作業実績をそれぞれ含む複数の組を記憶するデータベースに接続されるデータベース接続部と、
前記設備に発生した異常の報告を取得する報告取得部と、
前記設備に発生した異常に対処する作業計画を取得する作業計画取得部と、
前記報告中の異常情報および前記複数の組のそれぞれに含まれる異常情報の類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度算出部により算出された類似度に基づいて前記複数の組の中から少なくとも1つの組を選択する選択部と、
前記作業計画、および前記少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出する差分検出部と、
前記差分を表示する表示処理を行なう表示処理部と
を備える装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記複数の組のうち、前記類似度がより高い異常情報を含む組をより優先して選択する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記作業計画および前記少なくとも1つの組の作業実績の間での前記差分に関連する関連情報を取得する関連情報取得部を更に備え、
前記表示処理部は、前記関連情報を表示装置に表示させる処理を行なう関連情報表示処理部を有する
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記差分検出部は、前記作業計画、および前記少なくとも1つの組の作業実績の間で、作業員の数、作業時間、または作業に使用するツールのうちの少なくとも1つを含む項目毎の差に基づいて、前記作業計画、および前記少なくとも1つの組の作業実績の前記差分を検出する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記表示処理部は、前記作業計画、および前記少なくとも1つの組の作業実績の間における項目毎の差が予め定められた閾値を超える項目について、当該項目の差に起因して生じうるインシデントリスクを表示装置に表示させる処理を行なうリスク表示処理部を有する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記選択部により選択された前記少なくとも1つの組を用いて前記作業計画の許容範囲を決定する決定部と、
前記作業計画が前記許容範囲内であるか否かを判定する判定部と
を更に備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記作業計画に含まれる各項目、および前記少なくとも1つの組の作業実績に含まれる各項目に不一致があったことに応じてエラーを出力するエラー出力部を更に備える請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記表示処理部は、前記作業計画、および前記少なくとも1つの組の作業実績の間における項目毎の差が予め定められた閾値を超える項目を他の項目と比較して強調して表示装置に表示させる処理を行なう差分表示処理部を有する請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記設備に発生した異常についての異常情報および当該異常の対処に用いた作業計画の組を、異常情報および作業実績の組として前記データベースに追加する追加部を更に備える請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
コンピュータが、設備に発生した異常の報告を取得することと、
前記コンピュータが、前記設備に発生した異常に対処する作業計画を取得することと、
前記コンピュータが、前記設備に発生した異常についての異常情報および当該異常に対処した作業実績をそれぞれ含む複数の組を記憶するデータベースをアクセスすることと、
前記コンピュータが、前記報告中の異常情報および前記複数の組のそれぞれに含まれる異常情報の類似度を算出することと、
前記コンピュータが、算出された類似度に基づいて前記複数の組の中から少なくとも1つの組を選択することと、
前記コンピュータが、前記作業計画、および前記少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出することと、
前記差分を表示する表示処理を行なうことと
を含む方法。
【請求項11】
コンピュータにより実行され、前記コンピュータを、
設備に発生した異常についての異常情報および当該異常に対処した作業実績をそれぞれ含む複数の組を記憶するデータベースに接続されるデータベース接続部と、
前記設備に発生した異常の報告を取得する報告取得部と、
前記設備に発生した異常に対処する作業計画を取得する作業計画取得部と、
前記報告中の異常情報および前記複数の組のそれぞれに含まれる異常情報の類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度算出部により算出された類似度に基づいて前記複数の組の中から少なくとも1つの組を選択する選択部と、
前記作業計画、および前記少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出する差分検出部と、
前記差分を表示する表示処理を行なう表示処理部と
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備を保守するための装置、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「本発明は、食品製造プラントのメンテナンス業務の支援を行うメンテナンス業務支援システムに係り、特にプラントの構成設備のメンテナンスを行う場合に、プラント使用者に対し適切なメンテナンス推奨時期を提示しうるメンテナンス業務支援システムに関する」(段落0001)こと、「上記食品製造プラントの構成設備の稼動可能期間と上記メンテナンス実績とが不一致であった場合に、上記実験結果データベースを参照して上記差異が許容しうる範囲であるか否かを判断する実験結果データ確認手段と、上記実験結果データ確認手段で判断を行った結果、上記差異が許容範囲を超える場合には、メンテナンス計画の是正措置を立案するメンテナンス計画是正措置立案手段と」(請求項3)を備えることが記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2010-128607号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、設備に発生した異常についての異常情報および当該異常に対処した作業実績をそれぞれ含む複数の組を記憶するデータベースに接続されるデータベース接続部と、設備に発生した異常の報告を取得する報告取得部と、設備に発生した異常に対処する作業計画を取得する作業計画取得部と、報告中の異常情報および複数の組のそれぞれに含まれる異常情報の類似度を算出する類似度算出部と、類似度算出部により算出された類似度に基づいて複数の組の中から少なくとも1つの組を選択する選択部と、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出する差分検出部と、差分を表示する表示処理を行なう表示処理部とを備える装置を提供する。
【0004】
上記の装置において、選択部は、複数の組のうち、類似度がより高い異常情報を含む組をより優先して選択してよい。
【0005】
上記のいずれかの装置は、作業計画および少なくとも1つの組の作業実績の間での差分に関連する関連情報を取得する関連情報取得部を備えてよい。表示処理部は、関連情報を表示装置に表示させる処理を行なう関連情報表示処理部を有してよい。
【0006】
上記のいずれかの装置において、差分検出部は、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の間で、作業員の数、作業時間、または作業に使用するツールのうちの少なくとも1つを含む項目毎の差に基づいて、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出してよい。
【0007】
上記のいずれかの装置において、表示処理部は、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の間における項目毎の差が予め定められた閾値を超える項目について、当該項目の差に起因して生じうるインシデントリスクを表示装置に表示させる処理を行なうリスク表示処理部を有してよい。
【0008】
上記のいずれかの装置は、選択部により選択された少なくとも1つの組を用いて作業計画の許容範囲を決定する決定部と、作業計画が許容範囲内であるか否かを判定する判定部とを備えてよい。
【0009】
上記のいずれかの装置は、作業計画に含まれる各項目、および少なくとも1つの組の作業実績に含まれる各項目に不一致があったことに応じてエラーを出力するエラー出力部を備えてよい。
【0010】
上記のいずれかの装置において、表示処理部は、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の間における項目毎の差が予め定められた閾値を超える項目を他の項目と比較して強調して表示装置に表示させる処理を行なう差分表示処理部を有してよい。
【0011】
上記のいずれかの装置は、設備に発生した異常についての異常情報および当該異常の対処に用いた作業計画の組を、異常情報および作業実績の組としてデータベースに追加する追加部を更に備えてよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、コンピュータが、設備に発生した異常の報告を取得することと、コンピュータが、設備に発生した異常に対処する作業計画を取得することと、コンピュータが、設備に発生した異常についての異常情報および当該異常に対処した作業実績をそれぞれ含む複数の組を記憶するデータベースをアクセスすることと、コンピュータが、報告中の異常情報および複数の組のそれぞれに含まれる異常情報の類似度を算出することと、コンピュータが、算出された類似度に基づいて複数の組の中から少なくとも1つの組を選択することと、コンピュータが、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出することと、差分を表示する表示処理を行なうこととを含む方法を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様においては、コンピュータにより実行され、コンピュータを、設備に発生した異常についての異常情報および当該異常に対処した作業実績をそれぞれ含む複数の組を記憶するデータベースに接続されるデータベース接続部と、設備に発生した異常の報告を取得する報告取得部と、設備に発生した異常に対処する作業計画を取得する作業計画取得部と、報告中の異常情報および複数の組のそれぞれに含まれる異常情報の類似度を算出する類似度算出部と、類似度算出部により算出された類似度に基づいて複数の組の中から少なくとも1つの組を選択する選択部と、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出する差分検出部と、差分を表示する表示処理を行なう表示処理部として機能させるプログラムを提供する。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る装置100の構成を、設備10等と共に示す。
【
図3A】本実施形態に係る装置100の動作フローを示す。
【
図3B】本実施形態に係る装置100の動作フローの続きを示す。
【
図4】本実施形態に係る装置100による第1の表示例を示す。
【
図5】本実施形態に係る装置100による第2の表示例を示す。
【
図6】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る装置100の構成を、設備10等と共に示す。設備10は、プラント等に設けられる。このようなプラントは、例えば、化学または金属等の工業プラント、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等であってよい。また、設備10は、ビル、様々な工場または交通機関等に設けられてもよい。このような設備10は、1または複数のプロセス装置、1または複数の発電装置、およびその他の1または複数の装置である1または複数の設備機器20-1~N(「設備機器20」とも示す。)を有してよい。
【0018】
1または複数の設備機器20のそれぞれは、フィールド機器を有してよい。フィールド機器は、例えば圧力計、流量計、温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、プラント等の状況や設備等の対象物を撮影するカメラ若しくはビデオ等の撮像機器、プラントや設備等の異音等を収集し、または警報音等を発するマイク若しくはスピーカ等の音響機器、設備10が有する装置の位置情報を出力する位置検出機器、またはその他の機器であってよい。1または複数の設備機器20のそれぞれには、これらの状態を監視するセンサ機器、撮像機器、または音響機器等として機能する1または複数のセンサが設けられてよい。
【0019】
1または複数の点検者30は、設備10内の各設備機器20を点検する。点検者30は、設備10に異常が発生した場合に、設備10に発生した異常の報告を装置100に提供する。
【0020】
管理者35は、設備10の保守を管理する。管理者35は、設備10に異常が発生した場合に、設備10に発生した異常の報告を受ける。管理者35は、設備10に発生した異常に対処する作業計画を立案し、装置100に提供する。
【0021】
装置100は、異常の報告および作業計画を取得したことに応じて、類似する異常に対して過去に行なった作業の作業実績を用いて作業計画を評価する。装置100は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータにより実現されてよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムにより実現されてもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。装置100は、設備10の監視用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。
【0022】
表示装置105は、有線または無線により装置100に接続される。表示装置105は、装置100が出力する作業計画の評価結果を管理者35に対して表示する。表示装置105は、PC(パーソナルコンピュータ)等の、管理者35が使用するコンピュータであってよい。これに代えて、表示装置110は、管理者35が携帯可能なタブレット型コンピュータまたはスマートフォン等のコンピュータであってもよい。装置100は、表示装置105が表示する評価結果に応じて管理者35により適宜修正された作業計画を取得する。
【0023】
表示装置110は、有線または無線により装置100に接続される。表示装置110は、装置100が出力する作業計画を表示する。表示装置110は、PC(パーソナルコンピュータ)等の、作業者40が使用するコンピュータであってよい。これに代えて、表示装置110は、作業者40が携帯可能なタブレット型コンピュータまたはスマートフォン等のコンピュータであってもよい。
【0024】
1または複数の作業者40は、表示装置110に表示された作業計画に従って、設備10の保守作業の準備を行ない(保守準備作業)、設備10を保守する(保守作業)。これにより、作業者40は、点検者30により報告された異常を解決する。
【0025】
本実施形態に係る装置100は、報告取得部120と、データベース130(DB130)と、DB接続部140と、作業実績出力部150と、作業計画取得部165と、作業計画評価部170と、表示処理部180と、作業計画表示処理部190と、追加部195とを備える。報告取得部120は、設備10に発生した異常の報告を取得する。本実施形態に係る報告取得部120は、点検者30が使用するPC、タブレット型コンピュータ、またはスマートフォン等のコンピュータに入力された報告を、有線または無線通信を介して受信する。報告取得部120は、設備10を監視する監視装置等から、1または複数の設備機器20に設けられたセンサにより検出された異常の通知を異常の報告として受信してもよい。
【0026】
DB130は、半導体メモリまたはハードディスク等の、装置100の外部記憶装置である。これに代えて、DB130は、装置100の外部に設けられ、有線または無線ネットワークを介して装置100に接続されるクラウドストレージまたはNAS(Network Attached Storage)等であってもよい。DB130は、設備10に発生した異常についての異常情報および当該異常に対処した作業実績をそれぞれ含む複数の組を記憶する。DB130は、過去に発生した異常に関して、異常情報および作業実績の組を格納してよい。また、DB130は、異常情報および作業実績の組に加え、またはこれらの組に代えて、設備10に発生しうるものとして予め定義された各種の異常について、異常情報およびその異常が発生した場合に予定している作業計画の組を記憶してもよい。
【0027】
DB接続部140は、DB130に接続される。DB接続部140は、装置100内の各構成要素からの要求に応じて、DB130をアクセスする。
【0028】
作業実績出力部150は、報告取得部120およびDB接続部140に接続される。作業実績出力部150は、報告取得部120により取得された報告中に異常情報として示された異常に対処した作業実績を出力する。本実施形態において、作業実績出力部150は、DB130に格納された異常毎の作業実績の中から、報告中に示された異常と同一または類似の異常に対する作業実績を検索して出力する。
【0029】
作業実績出力部150は、類似度算出部155と、選択部160とを有する。類似度算出部155は、DB接続部140を介してDB130をアクセスして、報告取得部120により取得された報告中の異常情報と、DB130に格納された複数の組のそれぞれに含まれる異常情報との類似度を算出する。選択部160は、類似度算出部155により算出された類似度に基づいて、DB130に格納された複数の組の中から1または2以上の組を選択する。
【0030】
ここで、選択部160は、DB130に格納された複数の組のそれぞれに含まれる異常情報のうち類似度算出部155により算出された類似度がより高い異常情報を含む組を、報告に示された異常に対処した作業実績を含む組としてより優先して選択してよい。これにより、選択部160は、今回の異常に類似する異常に対処した少なくとも1つの作業実績を選択することができる。
【0031】
作業実績出力部150は、決定部163を有してもよい。決定部163は、選択部160により選択された少なくとも1つの組を用いて、例えば今回の異常に対処するための作業員の数等の、作業計画の許容範囲を決定する。なお、作業計画が許容範囲内であることの確認が不要である場合には、作業実績出力部150は、決定部163を有しなくてもよい。
【0032】
作業計画取得部165は、設備10に発生し、報告取得部120により報告が取得された今回の異常に対処する作業計画を取得する。本実施形態に係る作業計画取得部165は、異常の報告を受けた管理者35によってPC、タブレット型コンピュータ、またはスマートフォン等のコンピュータに入力された報告を、有線または無線通信を介して受信する。
【0033】
作業計画評価部170は、作業実績出力部150および作業計画取得部165に接続される。作業計画評価部170は、作業実績出力部150により選択された少なくとも1つの作業実績を用いて、作業計画取得部165により取得された今回の作業計画を評価する。作業計画評価部170は、エラー出力部172と、差分検出部174と、判定部176と、関連情報取得部178とを有する。
【0034】
エラー出力部172は、作業計画に含まれる各項目と、選択部160により選択された少なくとも1つの組の作業実績に含まれる各項目とに不一致があったことに応じてエラーを出力する。これにより、エラー出力部172は、作業計画および作業実績の間で項目の内容のみならず項目自体に食い違いがある場合には、その旨を管理者35に知らせてDB130内のデータ形式の更新等を促すことができる。
【0035】
差分検出部174は、作業計画と、選択部160により選択された少なくとも1つの組の作業実績との差分を検出する。差分検出部174は、作業計画および作業実績に含まれる1または複数の項目毎の差分を検出してよい。
【0036】
判定部176は、決定部163により決定された許容範囲を用いて、作業計画が許容範囲内であるか否かを判定する。なお、作業計画が許容範囲内であることの確認が不要である場合には、作業計画評価部170は、判定部176を有しなくてもよい。
【0037】
関連情報取得部178は、作業計画と、選択された少なくとも1つの組の作業実績との間での差分に関連する関連情報を取得する。関連情報は、差分がある項目についての説明、アドバイス、または注意事項等であってよい。なお、関連情報の提示が不要である場合には、作業計画評価部170は、関連情報取得部178を有しなくてもよい。
【0038】
表示処理部180は、作業計画評価部170に接続される。表示処理部180は、作業計画および選択された作業実績との間の差分等の、作業計画の評価結果を表示装置105に表示させる表示処理を行なう。ここで、画面を表示する処理を行うとは、装置100自体の表示装置上に実際に画面を表示することに限られず、表示装置105等のようなリモートの表示装置に画面を表示するための表示データを生成することも含む。表示処理部180は、差分表示処理部182と、関連情報表示処理部184と、リスク表示処理部186とを有する。
【0039】
差分表示処理部182は、差分検出部174により検出された差分を表示装置105に表示させる表示処理を行なう。関連情報表示処理部184は、関連情報取得部178により取得された関連情報を表示装置105に表示させる処理を行なう。なお、関連情報の提示が不要である場合には、表示処理部180は、関連情報表示処理部184を有しなくてもよい。
【0040】
リスク表示処理部186は、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の間における項目毎の差が予め定められた閾値を超える項目について、当該項目の差に起因して生じうるインシデントリスクを表示装置105に表示させる処理を行なう。これにより、リスク表示処理部186は、作業計画および作業実績の間で大きく乖離した項目について、これに起因する問題発生の可能性を管理者35に警告することができる。なお、インシデントリスクの提示が不要である場合には、表示処理部180は、リスク表示処理部186を有しなくてもよい。
【0041】
表示処理部180は、作業計画および作業実績の差分、差分に関連する関連情報、および差分に伴うインシデントリスクを管理者35に提供することにより、管理者35によって必要に応じて作業計画を修正させることができる。
【0042】
作業計画表示処理部190は、作業計画取得部165に接続される。作業計画表示処理部190は、管理者35により作成され、適宜修正されて確定された作業計画を作業計画取得部165から受け取る。作業計画表示処理部190は、受け取った作業計画を表示装置110へと表示させる表示処理を行なう。これを受けて、作業者40は、設備10に発生した今回の異常に対処する保守作業等を行なうことができる。
【0043】
追加部195は、作業計画取得部165に接続される。追加部195は、設備10に発生した今回の異常についての異常情報および当該異常の対処に用いた作業計画の組を、異常情報および作業実績の組として、DB接続部140を介してDB130に追加する。これにより、追加部195は、今回の作業実績をDB130に登録して、次回以降の異常で利用可能とする。
【0044】
図2は、DB130のデータ構造の一例を示す。本実施形態に係るDB130は、複数の組(レコード)のそれぞれについて、異常状態ID、登録日時、異常情報、および作業実績に関する情報を含む。
【0045】
異常状態IDは、レコード中の異常情報が示す異常を識別する異常識別情報である。報告取得部120は、設備10に発生した異常の報告を受ける度に、報告された異常に対して異常状態IDを割り当てる。追加部195は、異常情報および作業実績に、異常情報が示す異常に対して割り当てられた異常状態IDを対応付けてDB130に追加する。登録日時は、レコードがDB130に登録された日時を示す。
【0046】
異常情報は、報告中に示された異常の詳細を示す。異常情報は、異常が発生した設備機器20を特定する機器情報と、異常内容とを含む。機器情報は、製品名、製品識別情報、種類(例えばポンプ、反応器、電源)、仕様、設置場所、または設置状態のうちの少なくとも1つ等の、異常が発生した設備機器20に関する1または複数の項目のそれぞれにについての情報を含む。
【0047】
異常内容は、機器情報に示された設備機器20に生じた異常の内容を示す。異常内容は、例えば液漏れ、異常振動、異音、または発火のうちの少なくとも1つ等の各異常項目について、発生の有無を示す情報(例えば点検者30によるチェック)を含んでよい。また、異常内容は、例えば異常の種類または異常に対応すべき専門部署または専門チームを指定する情報を含んもよい。また、異常内容は、異常に対する処置の優先度を示す情報を含んでよい。また、異常内容は、点検者30により入力された、テキストによる異常の詳細説明を含んでよい。
【0048】
作業実績は、異常情報で示された異常に対処した作業実績に関する情報(「作業記録」とも示す。)である。DB130は、複数の組のそれぞれについて、保守作業および保守作業前に行なった保守準備作業を含む作業実績を記憶してよい。
【0049】
保守準備作業に関する情報は、例えば各種ツールの要否、安全装備の装着の要否、足場の組立ての要否、または届出の要否のうちの少なくとも1つ等の、各準備項目についての要否を示す情報を含んでよい。また,保守準備作業情報は、保守準備作業に要した作業員数、作業時間、またはコストのうちの少なくとも1つ等の、保守準備作業に関する数値の情報を含んでよい。
【0050】
保守作業に関する情報は、例えば各種の保守作業工程(ラインの停止、補修、交換、洗浄、調整等)の要否等の各作業項目についての要否を示す情報を含んでよい。また、保守作業情報は、保守作業に要した作業員数、作業員の要求スキル、作業時間、またはコストのうちの少なくとも1つ等の、保守作業に関する数値の情報を含んでよい。
【0051】
図3Aおよび
図3Bは、本実施形態に係る装置100の動作フローを示す。装置100は、異常の報告を受け取る度に、
図3Aおよび
図3Bに示した動作フローを実行する。S300(ステップ300)において、報告取得部120は、設備10に発生した異常の報告を取得する。S305において、作業計画取得部165は、管理者35によって作成された、今回の異常に対処する作業計画を取得する。
【0052】
S310において、類似度算出部155は、報告取得部120により取得された報告中の異常情報と、DB130に格納された複数の組のそれぞれに含まれる異常情報との類似度を算出する。本実施形態において、類似度算出部155は、報告中の異常情報(機器情報および異常内容)の各項目の値が比較対象の異常情報における対応する項目の値と一致する場合(または含まれる場合)に、一致しない場合と比較して高い類似度スコアを割り当てる。そして、類似度算出部155は、各項目についての類似度スコアの合計を算出する等により総合して、類似度とする。
【0053】
類似度算出部155は、異常情報がテキストで記述された異常内容を含む場合には、報告中の異常情報および複数の組のそれぞれに含まれる異常情報の間で、機器情報の類似度および異常内容として記録されたテキストの類似度に基づく異常情報の類似度を算出してよい。例えば、類似度算出部155は、異常の詳細説明等のテキストで入力された項目については、複数の単語(例えば予め定められた登録語)のそれぞれがテキスト中に出現したか否か、または複数の単語のそれぞれの出現頻度等を用いてテキストを特徴ベクトルに変換し、特徴ベクトル間の類似度(例えば単位ベクトル間の内積)を算出してよい。ここで、類似度算出部155は、複数の単語のそれぞれについてのTF-IDFを含む特徴ベクトルを用いて、報告中の異常情報に含まれるテキストと、比較対象の異常情報に含まれるテキストとの類似度を算出してもよい。類似度算出部155は、異常情報におけるテキスト以外の部分の類似度と、テキスト部分の類似度とを加算または2乗和をとる等により総合して、報告中の異常情報およびDB130に格納された異常情報の類似度を算出してよい。
【0054】
S315において、選択部160は、類似度算出部155により算出された類似度に基づいて、報告に示された異常に対処した少なくとも1つの作業実績を選択する。本実施形態に係る選択部160は、報告中の異常情報に対する類似度がより高い異常情報に対応付けられた作業実績をより優先して選択する。選択部160は、DB130に格納された各組の中から、類似度算出部155により算出された類似度が高い順に選択した予め定められたk個(kは1または2以上の整数)の異常情報に対応付けられたk個の作業実績を選択してよい(k近傍法)。
【0055】
ここで、「より優先して選択する」とは、他の条件が同じ場合には、優先度が高い順に必要な数の作業実績が選択されるが、他の条件が異なる場合には、優先度がより高い作業実績が選択されず優先度がより低い作業実績が選択されることもあり得ることを意味する。例えば、作業実績の選択に確率を採り入れた場合、選択部160は、類似度算出部155により算出された類似度が高いほどより高い確率で作業実績を選択してよい。
【0056】
S320において、決定部163は、選択部160により選択された少なくとも1つの組を用いて、作業計画の許容範囲を決定する。例えば保守準備作業または保守作業における特定の準備または工程の要否を示す項目について、決定部163は、選択部160により選択された作業実績のうち予め定められた基準割合(例えば90%)を超える作業実績でその項目が要(または不要)と記録されていた場合には、その項目について要(または不要)のみを許容範囲とすることを決定してよい。
【0057】
また、作業員数等の数値を示す項目について、決定部163は、選択部160により選択された少なくとも1つの作業実績におけるその項目の値の分布に基づいてその項目の許容範囲を決定してよい。例えば、決定部163は、少なくとも1つの作業実績におけるその項目の値の最小値から最大値までの範囲を許容範囲として決定してよい。また、決定部163は、少なくとも1つの作業実績におけるその項目の値の平均値および分散を用いて、例えば3シグマの範囲内を許容範囲(許容する誤差マージン)として決定してもよい。決定部163は、その他の予め定められた任意の方法により、数値で表される項目についての許容範囲を決定してよい。
【0058】
S325において、エラー出力部172は、作業計画に含まれる各項目と、選択部160により選択された少なくとも1つの組の作業実績に含まれる各項目とに不一致があるか否かを判定する。例えば、エラー出力部172は、DB130内の作業実績には「作業員数」の項目が存在するが、作業計画取得部165が取得した作業計画には「作業員数」の項目が含まれていない場合(作業員数が入力されていない等)、項目間に不一致があると判定してよい。また例えば、エラー出力部172は、作業計画取得部165が取得した作業計画にはあるツールの準備が必要であることを示す項目が含まれているが、DB130内の作業実績には当該ツールの要否を示す項目が存在しない場合に、項目間に不一致があると判定してもよい。
【0059】
項目間の不一致があると判定した場合(S325の「Y」)、S330において、エラー出力部172は、作業計画および作業実績の項目に不一致がある旨のエラーを出力する。そして、装置100は、作業実績と項目が一致する作業計画を取得するべく、処理をS305へと進める。ここで装置100は、管理者35等の指示に応じて、DB130内の各作業実績に新たな項目を追加する処理を行なってもよい。項目間の不一致がない場合(S325の「N」)、装置100は、処理を
図3BのS335へと進める。
【0060】
S335において、差分検出部174は、作業計画と、選択部160により選択された少なくとも1つの組の作業実績との差分を検出する。差分検出部174は、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の間で、作業員の数、作業時間、または作業に使用するツールのうちの少なくとも1つを含む項目毎の差に基づいて、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の差分を検出してよい。
【0061】
差分検出部174は、作業員の数または作業時間等の数値で表される項目については、作業実績におけるその項目の値から、作業計画におけるその項目の値を減算して差分を算出することにより差分を検出してよい。2以上の作業実績が選択されている場合、差分検出部174は、2以上の作業実績におけるその項目の最小値および最大値のそれぞれから、作業計画におけるその項目の値を減算して差分の最小値および最大値を算出してよい。また、差分検出部174は、2以上の作業実績におけるその項目の平均値から作業計画におけるその項目の値を減算して差分を算出してもよい。
【0062】
差分検出部174は、工程の要否等の、1(要)または0(不要)のような値をとるフラグで表される項目については、作業計画におけるその項目の値が「要」であり、作業実績におけるその項目の値が「不要」である場合に、作業実績にはその工程がないことを示す「-工程」等を差分として検出してよい。また、差分検出部174は、作業計画におけるその項目の値が「不要」であり、作業実績におけるその項目の値が「要」である場合に、作業実績にはその工程があることを示す「+工程」等を差分として検出してよい。
【0063】
2以上の作業実績が選択されている場合、差分検出部174は、作業計画においてその項目の値が「要」であり、2以上の作業実績のいずれにおいてもその項目の値が「不要」である場合に、作業実績にはその工程がないことを示す「-工程」等を差分として検出してよい。また、差分検出部174は、作業計画におけるその項目の値が「不要」であり、いずれかの作業実績におけるその項目の値が「要」である場合に、作業実績にはその工程があることを示す「+工程」等を差分として検出してよい。
【0064】
これに代えて、差分検出部174は、その項目の値が「要」である作業実績が「不要」である作業実績よりも多い場合に作業実績におけるその項目の代表値を「要」とし、その項目の値が「不要」である作業実績が「要」である作業実績よりも多い場合に作業実績におけるその項目の代表値を「不要」とし、作業計画におけるその項目の値と作業実績におけるその項目の代表値との間で差分を検出してよい。
【0065】
以上に代えて、差分検出部174は、作業計画における項目の値から作業実績における項目の値を減算して差分を検出してもよい。また、差分検出部174は、作業計画および作業実績の間の項目の差までは算出せず、作業計画および作業実績の間で項目の値に差がある項目を特定することにより差分を検出してもよい。
【0066】
S340において、判定部176は、S320で決定した許容範囲を用いて、作業計画が許容範囲内であるか否かを判定する。S345において、関連情報取得部178は、作業計画と、選択された少なくとも1つの組の作業実績との間での差分に関連する関連情報を取得する。関連情報取得部178は、作業計画および作業実績の各項目に対応付けてその項目に関連する説明、アドバイス、または注意事項等の関連情報を記憶する関連情報データベースをアクセスして、作業計画および作業実績における差がある項目に対応付けられた関連情報をデータベースから取得してよい。また、関連情報取得部178は、選択された作業実績に対応付けられた作業時の写真等の作業実績に関するより詳細な情報を関連情報としてDB130または他のデータベースから取得してもよい。
【0067】
S350において、表示処理部180内の差分表示処理部182は、差分検出部174により検出された差分を表示装置105に表示させる表示処理を行なう。ここで、差分表示処理部182は、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の間における項目毎の差が予め定められた閾値を超える項目を、他の項目と比較して強調して表示装置105に表示させる処理を行なってよい。このような強調表示は、強調する項目を、太字またはイタリック体とすること、色を変更すること(赤字等)、文字を大きくすること、または下線または枠を付加することのうちの少なくとも1つによる表示を含んでよい。また、差分表示処理部182は、S340での判定結果を用いて、項目毎の差分が許容範囲内であるか否かを、例えば許容範囲外である項目を強調表示することにより識別可能に表示してもよい。表示処理部180内の関連情報表示処理部184は、関連情報取得部178により取得された関連情報を表示装置105に表示させる処理を行なう。
【0068】
表示処理部180内のリスク表示処理部186は、作業計画、および少なくとも1つの組の作業実績の間における項目毎の差が予め定められた閾値を超える項目について、当該項目の差に起因して生じうるインシデントリスクを表示装置105に表示させる処理を行なう。ここで、インシデントリスクを表示させるか否かの判定に用いる閾値(「第1閾値」とも示す。)と項目の差を強調表示するか否かの判定に用いる閾値(「第2閾値」とも示す。)とは、項目毎に異なってよく、同じであってもよい。第1閾値は、同じ項目についての第2閾値よりも大きい。すなわち、表示処理部180は、項目の差がある程度大きくなり第2閾値を超えると、その項目を強調して表示することにより管理者35に注意を促す。表示処理部180は、項目の差が更に大きくなり第1閾値も超えると、その項目の差に起因して生じうるインシデントリスクを表示することにより、具体的なリスクを管理者35に説明する。
【0069】
リスク表示処理部186は、作業計画および作業実績の各項目に対応付けてその項目の差が第1閾値を超えた場合のインシデントリスクの説明を記憶するリスクデータベースをアクセスすることにより、項目の差が第1閾値を超える項目に対応するインシデントリスクの説明を取得してよい。
【0070】
管理者35は、表示装置105に表示された作業計画および作業実績の差分、差分に関連する関連情報、および差分に伴うインシデントリスクを考慮して、必要に応じて作業計画の修正を作業計画取得部165へと指示する。S360において、作業計画取得部165は、作業計画の修正指示の入力があったか否かを判定し、作業計画の修正指示が入力されたことに応じて処理をS305へと進めて修正された作業計画を取得する。
【0071】
作業計画の修正指示が入力されず作業計画が確定した場合(S360の「N」)、作業計画表示処理部190は、作業者40に対して作業計画に沿った作業の開始を指示するべく、S370において作業計画を表示装置110へと表示させる表示処理を行なう。これを受けて、作業者40は、作業計画によって指定された保守準備作業および保守作業を行なうことができる。
【0072】
S375において、追加部195は、設備10に発生した今回の異常についての異常情報および当該異常の対処に用いた作業計画の組を、異常情報および作業実績の組として、DB接続部140を介してDB130に追加する。追加部195は、確定した作業計画をDB130に追加してよい。作業者40による作業中に作業計画の修正があった場合には、追加部195は、修正された作業計画を作業計画取得部165から受け取ってDB130に追加してもよい。
【0073】
以上に示した装置100によれば、設備10の異常が報告されたことに応じて立案された作業計画と、過去に同一または類似の異常に対処した作業実績との差を検出して管理者35に提示することができる。したがって、装置100は、作業計画に誤りがあった場合または作業計画を改善することができる場合に管理者35に対して作業計画の改善・見直しを促すことができる。これにより、装置100は、設備10をより早く効率的に異常状態から回復させることができ、設備10の生産性を向上させることができる。
【0074】
また、装置100によれば、作業計画および作業実績の間で項目の差分が予め定められた条件を満たす場合に、関連情報またはインシデントリスクの少なくとも1つを管理者35に提示する。装置100は、作業計画および作業実績の差が大きい項目については関連情報を表示して管理者35による検討を促し、作業計画および作業実績の差が特に大きくインシデントリスクが発生しうる項目についてはインシデントリスクの説明を表示して管理者35による見直しを要請することができる。これにより、装置100は、設備10に問題が発生しないように適切な作業計画を作成するように管理者35を導くことができる。
【0075】
装置100は、CMMS(Computerized Maintenance Management System)と統合された保守管理/保守活動提案システムとして使用されてもよい。CMMSは、報告取得部120、作業計画取得部165、および作業計画表示処理部190等の機能を有してよい。この場合、CMMSは、設備10に発生した異常の報告を取得して管理者35へと提供し、異常に対処する作業計画を管理者35から取得する。装置100は、異常の報告および作業計画をCMMSから受け取り、作業実績の選択および作業計画の評価を行なう。
【0076】
作業計画および作業実績に差分がある場合には、関連情報取得部178は、CMMSに格納された関連情報を取得してもよい。また、装置100は、作業計画の評価結果を出力したことに応じて管理者35によってCMMSに入力される修正された作業計画を取得して再評価してもよい。CMMSは、確定された作業計画を作業者40へと提供して作業計画に沿った作業を行なわせる。このようにして、装置100は、CMMSと協調動作して保守管理を行ない、新たに発生する異常に対処する作業計画の改善を図ることができる。
【0077】
図4は、本実施形態に係る装置100による第1の表示例を示す。装置100内の表示処理部180は、報告された異常に対応して、表示装置105のスクリーン全体またはウィンドウ等に表示画面400を表示する表示処理を行なってよい。表示画面400は、異常表示欄410と、作業計画入力欄420とを有する。
【0078】
表示処理部180は、
図3AのS305において、管理者35に対して作業計画の入力を促すために、報告取得部120により取得された報告に含まれる異常を異常表示欄410に表示する表示処理を行なう。異常表示欄410は、異常の発生日と、異常状態IDと、異常情報(機器情報および異常内容)との表示を含む。
【0079】
また、表示処理部180は、作業計画を入力するための作業計画入力欄420を表示する表示処理を行なう。作業計画入力欄420は、管理者35から保守準備作業および保守作業の計画を含む作業計画の入力を受け付ける。本図の例においては、作業計画入力欄420には、保守準備作業について、作業1aおよび1c等が必要であること、作業員数はN1であること、作業時間はT1であることを含む作業計画が入力されている。また、作業計画入力欄420には、保守作業について、作業2a、2b、および2d等が必要であること、作業員数はN2であること、作業時間はT2であることを含む作業計画が入力されている。これらを受けて、作業計画取得部165は、作業計画入力欄420に入力された作業計画を取得する。
【0080】
作業計画入力画面400の「評価」ボタンが押されたことを作業計画取得部165が検知すると、装置100は、
図3AのS310に処理を進め、作業計画の評価(
図3AのS310~S345)および評価結果の表示(
図3AのS350)を行なう。また、作業計画入力画面400の「確定」ボタンが押されたことを作業計画取得部165が検知すると、装置100は、
図3BのS360からS370へと処理を進め、確定された作業計画を作業者40に対して表示する表示処理を行なう。
【0081】
図5は、本実施形態に係る装置100による第2の表示例を示す。装置100内の表示処理部180は、
図4の作業計画入力画面400において「評価」ボタンが押されて作業計画を評価したことに応じて、本図の差分表示画面500のように表示を更新する。本図の差分表示画面500は、異常表示欄410と、作業実績欄510と、作業計画表示欄520とを有する。
【0082】
異常表示欄410は、
図4と同様であるから説明を省略する。作業実績欄510は、選択部160により選択された少なくとも1つの作業実績を表示する。
【0083】
作業計画表示欄520は、
図4の作業計画入力欄420に対し、作業計画および作業実績の差分を示す差分表示525-1~2、および差分がある項目に関する関連情報を示す関連情報表示530-1~2を追加して表示する。表示処理部180内の差分表示処理部182は、作業計画表示欄520-1~2を表示する表示処理を行なう。本図の例においては、作業計画入力欄420の保守準備作業欄に入力された作業計画には、作業実績欄510に表示された少なくとも1つの作業実績に含まれている作業1dが含まれていない(不要とされている)ことから、差分表示処理部182は、作業1dを差分として表示する表示処理を行なう。
【0084】
また、作業計画入力欄420の保守作業に入力された作業計画には、作業実績欄510に表示されたいずれの作業実績にも含まれていない作業2dが含まれていることから、差分表示処理部182は、作業実績には作業2dがないことを差分として表示する表示処理を行なう。また、差分表示処理部182は、作業員数等の数値で表される項目についても、差分を表示する。
【0085】
表示処理部180内の関連情報表示処理部184は、作業計画および作業実績の間で差分がある項目について、関連情報を示す関連情報表示530-1~2の表示処理を行なう。本図の例においては、関連情報表示処理部184は、作業計画入力画面400内に関連情報表示530-1をポップアップさせ、保守準備作業に関して差分がある作業1dおよび作業員数についての関連情報を表示する。また、関連情報表示処理部184は、作業計画入力画面400内に関連情報表示530-2をポップアップさせ、保守作業に関して差分がある作業2dおよび作業時間についての関連情報を表示する。リスク表示処理部186は、インシデントリスクが存在すると判定したことに応じて、インシデントリスクに関する説明を関連情報表示530-1~2と同様にして表示する表示処理を行なってよい。
【0086】
なお、
図4および
図5の例においては、表示処理部180は、異常表示欄410、作業計画入力欄420、作業実績欄510、作業計画表示欄520-1~2、および関連情報表示530-1~2を同一のウィンドウ内に表示する表示画面を生成する。これに代えて、表示処理部180は、これらの欄を別のウィンドウに表示してもよい。
【0087】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0088】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0089】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0090】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のコンピュータ等のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0091】
図6は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0092】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インターフェイス2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0093】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0094】
通信インターフェイス2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0095】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0096】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0097】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0098】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0099】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0100】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0101】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0102】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0103】
10 設備、20 設備機器、30 点検者、35 管理者、40 作業者、100 装置、105 表示装置、110 表示装置、120 報告取得部、130 DB、140 DB接続部、150 作業実績出力部、155 類似度算出部、160 選択部、163 決定部、165 作業計画取得部、170 作業計画評価部、172 エラー出力部、174 差分検出部、176 判定部、178 関連情報取得部、180 表示処理部、182 差分表示処理部、184 関連情報表示処理部、186 リスク表示処理部、190 作業計画表示処理部、195 追加部、400 作業計画入力画面、410 異常表示欄、420 作業計画入力欄、500 差分表示画面、510 作業実績欄、520 作業計画表示欄、525-1~2 差分表示、530-1~2 関連情報表示、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インターフェイス、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード