(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176275
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ウィッグ
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A41G3/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088471
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】516365275
【氏名又は名称】池野 順子
(74)【代理人】
【識別番号】100190300
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 修
(72)【発明者】
【氏名】池野 順子
(57)【要約】
【課題】
本発明は、着用感が快適で、美観を損なわず、また、海水浴やプールなどで水泳や水浴をする際、水に浸かったり、水を浴びたりする際にもずれなどを生じないウィッグを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明においては、前記使用者頭部を、額、側頭部及び襟足を含む後頭部を一周して包むヘアーバンド形状に形成された素材に毛髪を備えるベースAと、
毛髪を備え、通気性を有し、ベースAが覆う頭部以外の部分を覆うベースBとを有し、ベースAとベースBとが一体となって頭部全体を覆うフルウィッグであって、前記ベースAが、皮膚との摩擦が大きい素材が頭皮に直接密着する形状を有して成り、頭頂部側の部分は頭部ベースのみが存在する構造であり、ベースAのアジャスターが、両側の側頭部のみに存在することを特徴としたウィッグを用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者頭部の測定データに基づく頭部の形状を用いて形成され、
前記使用者頭部を、額、側頭部及び襟足を含む後頭部を一周して包むヘアーバンド形状に形成された素材に毛髪を備えるベースAと、
毛髪を備え、通気性を有し、ベースAが覆う頭部以外の部分を覆うベースBとを有し、
ベースAとベースBとが一体となって頭部全体を覆うフルウィッグであり、
前記ベースAは、皮膚との摩擦が大きい素材が頭皮に直接密着する形状を有して成り、頭頂部側の部分は頭部ベースのみが存在する構造であり、ベースAのアジャスターが、両側の側頭部だけに存在するか、又は、襟足部分だけに存在することを特徴としたウィッグ。
【請求項2】
ベースA及びベースBの素材の塩素処理水堅牢度が3級以上である請求項1に記載のウィッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッグに関する。より詳しくは、特定の構造により頭部に固定され、水中での使用も可能なウィッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗がん治療や汎発性脱毛症などにより頭髪が抜けた際着用するものとして、人間の毛髪や人工毛髪を植毛したウィッグの需要が高まっているが、現状のウィッグは、簡易なサイズ調整しかできず、特に全頭型のウィッグの形状では強風や下を向くなどした時に飛んでしまう、ズレるなど改善が必要な状況である。
このような問題に対して、たとえば特許文献1では、ウィッグベースの裏側(頭皮と接触する側)にずれ防止用のピン(金属製の留め具等)を縫着したウィッグが開示されているが、このずれ防止のピンは髪がある人に対しては使えるが髪がない人には使えず、現状は両面テープでの固定しかなく、非常に不安定である。完全に、髪がない状態でも快適に日常生活が送れるウィッグが必要である。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特許第7037695号
【0005】
特許文献1には、使用者の頭部の測定データに基づく頭部の形状により成り、襟足に毛髪を植毛した、ヘアーバンド形状の樹脂ベースと、頭皮と接する部分にシリコーンベースを設けたニットキャップに毛髪を植毛し、頭頂部には人工皮膚の上に植毛されたつむじを縫製で装着した頭部ベースとを有し、樹脂ベースの着脱可能部分と頭部ベースのいずれか一方のみの交換が可能であることを特徴としたウィッグが記載されている。
しかし、同文献では、負荷のかかる部分を交換しやすい構造とした点では、ウィッグを負荷のかかる環境で使用することについての課題解決に関する文献と言えるものの、ウィッグの使用時に、取り換えやすい一定の自然な風合いと美観を有しつつも、水中等の大きい負荷がかかる状態で使用できるウィッグについての文献は見当たらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、着用感が快適で、美観を損なわず、また、海水浴やプールなどで水泳や水浴びをする際、水に浸かったり、水を浴びたりする際にもずれなどを生じないウィッグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の構成を含むことにより課題を解決する。
但し、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、これらに限定されない。
(1)使用者の頭部の測定データに基づく頭部の形状を用いて形成され、
前記使用者頭部を、額、側頭部及び襟足を含む後頭部を一周して包むヘアーバンド形状に形成された素材に毛髪を備えるベースAと、
毛髪を備え、通気性を有し、ベースAが覆う頭部以外の部分を覆うベースBとを有し、
ベースAとベースBとが一体となって頭部全体を覆うフルウィッグであり、
前記ベースAは、皮膚との摩擦が大きい素材が頭皮に直接密着する形状を有して成り、頭頂部側の部分は頭部ベースのみが存在する構造であり、ベースAのアジャスターが、両側の側頭部だけに存在するか、又は、襟足部分だけに存在することを特徴としたウィッグ。
(2) ベースA及びベースBの素材の塩素処理水堅牢度が3級以上である上記(1)に記載のウィッグ。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、頭部の皮膚に密着する構造を有し、水中や、水がかかるような負荷がウィッグにかかったとしても、ずれを生じず、また、快適に着用を持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のウィッグの概念図である。ウィッグが装着された状態が分かり易いようにウィッグのベース部分を表面に出して図示している。
【
図2】本発明のウィッグのベースA及びベースBの装着時の位置がわかる概念図である。頭頂部のベースBの肌ベースは、ウィッグにつむじを形成するときに設けるが、変形例では、肌ベースがなく、ベースBがレースだけで作成されていてもよい。
【
図3】本発明のウィッグを装着した際の外観の例である。自然な風合いで毛髪が存在している。
【
図4】装着する人の頭部を、精密に測定してウィッグを作成する際の測定イメージ図である。装着する人の頭部を3Dで採寸し、本発明のウィッグのベースAと、頭部の皮膚とが密着し、水中でも水が入り込まない密着度でベースAを形成することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のウィッグは、使用者頭部を、額、側頭部及び襟足を含む後頭部を一周して包むヘアーバンド形状に形成された素材に毛髪を備えるベースAと、毛髪を備え、通気性を有し、ベースAが覆う頭部以外の部分を覆うベースBとを有する。
【0011】
本発明のウィッグは、ベースAとベースBとが一体となって頭部全体を覆うフルウィッグである。
前記ベースAは、皮膚との摩擦が大きい素材が頭皮に直接密着する形状を有して成り、頭頂部側の部分は頭部ベースのみが存在する構造である。
ベースAのアジャスターは、ベースAの特定の位置に備え付けられることにより、頭部及びベースAに対して一定の位置関係が定まり、例えば、両側の側頭部だけにアジャスターが位置するウィッグとすることや、襟足部分だけにアジャスターを位置するウィッグとすることができる。ウィッグのベースA及びベースBに人毛又は人口髪が植毛等の方法により取り付けられている。
例えば、両側の側頭部のみに存在することを特徴としたウィッグとすることで、後頭部で髪を束ねた、ポニーテイルの髪形をした際にもアジャスターが目立つことなく使用でき、これまでのウィッグに比べて自然な風合いと美観を有しつつ、これまでできなかった髪形にウィッグの毛髪を整えることができる。
【0012】
本発明のウィッグは、使用者の頭部の測定データに基づく頭部の形状を用いて形成される。
本発明のウィッグは、3D測定データに基づいてウィッグを形成することで、ウィッグを頭部に密着させるように形成し、強く固定する。
【0013】
ベースA
本発明のウィッグに係るベースAは、ウィッグを頭部に密着させて固定し、水中でも頭部と広範囲に接触しているので、ずれが生じない。毛髪は、ベースAに植毛等のウィッグの技術分野において公知又は慣用される方法により固定される。
ベースAを、皮膚との摩擦が大きい素材で作成することにより、皮膚とのずれが生じにくくすることができる。
また、ベースAの形状は、頭部に密着する形状とすることで、ウィッグを着用して水に潜った時でも、ウィッグがずれることのないものとすることができる。
装着する人の頭部を3Dで採寸し、そのデータを用いて、本発明のウィッグのベースAと頭部の皮膚とが密着し、水中でも水が入り込まない程度の密着度でベースAを形成することが望ましい。これには、正確な採寸と密着度の高い形状の精密な成形が必要である。
但し、ゴム状の伸縮する素材でベースAを作成して、素材が縮むことにより頭に固定される形態とすると、装着感が快適でない。伸縮する量は小さいが、形状安定性の高い樹脂、シリコン(シリコーン樹脂)等の素材で、頭部の皮膚に密着させる形状を形成する。例えば、シリコーン樹脂(当業界でのいわゆる「シリコン」)、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、TPU樹脂(ポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂)は、高すぎない伸縮性、柔軟性、強度、表面の摩擦などの点で、好ましい。
使用者頭部を、額、側頭部及び後頭部を一周して包むヘアーバンド形状のベースAを、精密な採寸により頭部の皮膚に密着させる形状を形成することにより、本発明のウィッグは、水中で使用してもずれ、外れが生じないものとすることができる。
図1では、ベースA部分を表面に記載しているが、実際には
図3のように毛髪で覆われている。
本発明のウィッグに係る毛髪10と、襟足部分毛髪11は、材質、太さ、断面形状等について同じでも異なっていてもよい。
【0014】
ベースB
図1及び
図2にベースBの形状と、着用時の状態においてベースBが表面に見える概念図として記載されている。
図1及び
図2の通り、ベースBは、ベースB(網状部分)3とベースB(肌ベース部分)4とで構成されていてもよい。
図1では、ベースB部分を表面に記載しているが、実際には
図3のように毛髪で覆われている。
本発明のウィッグに係るベースBは、通気性を有する構造又は素材で形成される。
本発明のウィッグに係るベースBの素材は、通気性を有し、ウィッグを形成する毛髪を固定し得る素材であることが望ましい。例えば、レース、織物、布帛、及びニットが挙げられる。
【0015】
耐塩素性素材
ベースA及びベースBを耐塩素性の素材により作成することにより、消毒用の塩素が溶解したプールの水に対して、劣化の程度が小さいウィッグとすることができる。
塩素処理水堅ろう度
本発明で、ベースA及びベースBを耐塩素性の素材とする際の尺度として、塩素処理水堅ろう度試験(JIS L 0884)を用いることができる。例えば、塩素処理水堅ろう度試験において、3級以上、好ましくは3-4級以上の塩素処理水堅ろう度である素材を採用することでプールの水等の負荷が高い環境に対して劣化が小さくなる効果を得ることができる。
より詳細かつ具体的には、塩素処理水堅ろう度試験において良好な結果を得ることができる素材を強いることにより、消毒用塩素が溶けているプールの水に対しても、劣化の程度を小さくし一定の耐久性のある状態で着用することができる。
一定の過酷な条件ないし負荷が高い条件でウィッグが使用される機会としては、海水浴、プールでの水泳等、ふろや温泉での入浴、シャワーにより湯やシャンプー・リンス等がかかること、運動による振動と共に汗が付着することや汗が流れることが想定される。これらのうち、本発明のウィッグは、少なくとも海水浴、プールでの水泳等について、頭部へ密着し固定される構造により、ずれることや外れることなく使用することができ、それ以外の前述の条件でウィッグが使用される機会にも、ずれることや外れることを防ぐために有効である。
【0016】
アジャスター
本発明のウィッグに係るアジャスターは、ドット釦、スナップ釦、プラスチックアジャスター、コードロック、バックル、テープアジャスター、ブタバナ、ベルト、巻き込み式アジャスター等を用いることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 ベースA
2 アジャスター
3 ベースB(網状部分)
4 ベースB(肌ベース部分)
10 毛髪
11 襟足部分毛髪
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明のウィッグは、美容用のかつらを含むファッション・アパレル分野、及び、医療用かつらを含む医療用分野等の技術分野で利用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者頭部の測定データに基づく頭部の形状を用いて形成され、
前記使用者頭部を、額、側頭部及び襟足を含む後頭部を一周して包むヘアーバンド形状に形成された素材に毛髪を備えるベースAと、
毛髪を備え、通気性を有し、ベースAが覆う頭部以外の部分を覆うベースBとを有し、
ベースAとベースBとが一体となって頭部全体を覆うフルウィッグであり、
前記ベースAは、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、若しくは、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂、又はそれら樹脂が有する伸縮性と同等の伸縮性を有するシリコーン樹脂により成る皮膚との摩擦が大きい素材が頭皮に直接密着する形状を有して成り、頭頂部側の部分は頭部ベースのみが存在する構造であり、ベースAのアジャスターが、両側の側頭部だけに存在するか、又は、襟足部分だけに存在することを特徴としたウィッグ。
【請求項2】
ベースA及びベースBの素材の塩素処理水堅牢度が3級以上である請求項1に記載のウィッグ。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者頭部の測定データに基づく頭部の形状を用いて形成され、
前記使用者頭部を、額、側頭部及び襟足を含む後頭部を一周して包むヘアーバンド形状に形成された素材に毛髪を備えるベースAと、
毛髪を備え、通気性を有し、ベースAが覆う頭部以外の部分を覆うベースBとを有し、
ベースAとベースBとが一体となって頭部全体を覆うフルウィッグであり、
前記ベースAは、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂、又は形状安定性の高いシリコーン樹脂により成る素材が頭皮に直接密着する形状を有して成り、頭頂部側の部分は頭部ベースのみが存在する構造であり、ベースAのアジャスターが、両側の側頭部だけに存在するか、又は、襟足部分だけに存在することを特徴としたウィッグ。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者頭部の測定データに基づく頭部の形状を用いて形成され、
前記使用者頭部を、額、側頭部及び襟足を含む後頭部を一周して包むヘアーバンド形状に形成された素材に毛髪を備えるベースAと、
毛髪を備え、通気性を有し、ベースAが覆う頭部以外の部分を覆うベースBとを有し、
ベースAとベースBとが一体となって頭部全体を覆うフルウィッグであり、
前記ベースAは、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー樹脂、又は形状安定性の高いシリコーン樹脂により成る素材が頭皮に直接密着する形状を有して成り、頭頂部側の部分はベースBのみが存在する構造であり、ベースAのアジャスターが、両側の側頭部だけに存在するか、又は、襟足部分だけに存在し、
かつ、ベースBの素材の塩素処理水堅牢度が3級以上であるように構成したウィッグ。