IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-蓄電システム 図1
  • 特開-蓄電システム 図2
  • 特開-蓄電システム 図3
  • 特開-蓄電システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176284
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231206BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20231206BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H02J7/00 302A
H02J7/02 H
H02J13/00 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088487
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 和樹
(72)【発明者】
【氏名】上畑 涼太郎
(72)【発明者】
【氏名】長井 友樹
(72)【発明者】
【氏名】大田 準二
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AC06
5G064AC10
5G064BA02
5G064BA08
5G064CB07
5G064CB11
5G064DA03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503EA05
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5G503HA00
(57)【要約】
【課題】蓄電装置を開放したときに蓄電システムの制御部(制御装置)が作動できなくなることを抑制する。
【解決手段】蓄電システムが、電気負荷に電力を供給する定置用の蓄電装置と、蓄電装置とそれ以外の電源との各々から電力の供給を受ける制御装置と、蓄電装置と制御装置との間、かつ、蓄電装置と電気負荷との間に位置し、制御装置と電源との間には位置しないように配置されたリレーと、ユーザからの入力を受け付ける入力装置とを備える。リレーが遮断状態であるときに入力装置に対して接続要求が入力されると、制御装置は、リレーを接続状態にする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気負荷に電力を供給する定置用の蓄電装置と、
前記蓄電装置とそれ以外の電源との各々から電力の供給を受ける制御装置と、
前記蓄電装置と前記制御装置との間、かつ、前記蓄電装置と前記電気負荷との間に位置し、前記制御装置と前記電源との間には位置しないように配置されたリレーと、
ユーザからの入力を受け付ける入力装置と、
を備え、
前記リレーが遮断状態であるときに前記入力装置に対して接続要求が入力されると、前記制御装置は、前記リレーを接続状態にする、蓄電システム。
【請求項2】
前記蓄電装置は、互いに電気的に接続された複数のセルを備える組電池を含み、
前記制御装置は、前記リレーが遮断状態であるときに前記組電池におけるセル電圧の均等化を実行するように構成され、
前記セル電圧の均等化の実行中に前記入力装置に対して前記接続要求が入力されると、前記制御装置は、前記セル電圧の均等化を中止した後、前記リレーを接続状態にする、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記入力装置は、所定の条件が成立する場合には前記接続要求の入力を受け付け、前記所定の条件が成立しない場合には前記接続要求の入力を受け付けないように構成され、
前記所定の条件は、前記電源から前記制御装置に所定の電力が供給されないと予測される場合に成立する、請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記入力装置は、前記ユーザによって携帯可能な携帯端末に搭載され、
前記携帯端末は、前記所定の条件が成立する場合に、前記接続要求の入力を受け付けるボタンを表示する、請求項3に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、定置用の蓄電装置を備える蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2015/029568号(特許文献1)には、組電池においてセル電圧を均等化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/029568号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定置用の蓄電装置には継続的な使用が期待される。このため、定置用の蓄電装置は、基本的には閉回路状態になっている。しかし、蓄電装置のメンテナンスが実行されるときには、蓄電装置は開放される。すなわち、メンテナンスは、蓄電装置が開放された状態(開回路状態)で行われる。例えば、蓄電装置と制御装置(蓄電システムの制御部)との間に配置されたリレーを遮断状態にすることにより、蓄電装置が非通電状態になり、蓄電装置のメンテナンスに係る処理を行うことが可能になる。メンテナンスに係る処理の例としては、前述した組電池におけるセル電圧の均等化のほか、蓄電装置の情報を取得するための各種センサの補正などが挙げられる。
【0005】
しかし、蓄電装置と制御装置との間に位置するリレーを遮断状態にすると、制御装置が蓄電装置から電力の供給を受けられなくなる。これにより、制御装置は、電源を失って停止し、作動できなくなってしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置を開放したときに蓄電システムの制御部(制御装置)が作動できなくなることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る蓄電システムは、電気負荷に電力を供給する定置用の蓄電装置と、蓄電装置とそれ以外の電源との各々から電力の供給を受ける制御装置と、蓄電装置と制御装置との間、かつ、蓄電装置と電気負荷との間に位置し、制御装置と電源との間には位置しないように配置されたリレーと、ユーザからの入力を受け付ける入力装置とを備える。リレーが遮断状態であるときに入力装置に対して接続要求が入力されると、制御装置は、リレーを接続状態にする。
【0008】
上記構成では、制御装置が、蓄電装置とそれ以外の電源との各々から電力の供給を受けられる。蓄電装置以外の電源は、例えば電力系統と発電装置との少なくとも一方を含んでもよい。上記リレーは蓄電装置と電気負荷との間に位置するため、制御装置は、上記リレーを遮断状態にすることによって蓄電装置を電気負荷の回路から電気的に切り離すことができる。これにより、蓄電装置が開回路状態になり、蓄電装置のメンテナンスに係る処理を行うことが可能になる。また、上記リレーは蓄電装置と制御装置との間に位置するため、リレーが遮断状態になると、蓄電装置から制御装置に電力が供給されなくなる。その一方で、上記リレーは制御装置と蓄電装置以外の電源との間には位置しないため、上記リレーが遮断状態になったときには、制御装置は、蓄電装置以外の電源から電力の供給を受けつつ上記リレーを制御することができる。
【0009】
しかしながら、制御装置は、上記電源から常に電力の供給を受けられるとは限らない。上記電源に異常が生じて、上記電源から制御装置への電力供給が停止(停電)することも考えられる。また、上記電源が発電装置を含む形態では、発電装置が十分に発電できない可能性もある。そこで、上記構成では、ユーザから入力装置に接続要求が入力されると、制御装置がリレーを接続状態にする。ユーザは、上記電源の状況を確認して、必要に応じて上記リレーを接続状態にすることができる。このため、制御装置が電源を失って作動できなくなることが抑制される。
【0010】
上記の蓄電システムにおいて、蓄電装置は、互いに電気的に接続された複数のセルを備える組電池を含んでもよい。制御装置は、リレーが遮断状態であるときに組電池におけるセル電圧の均等化を実行するように構成されてもよい。セル電圧の均等化の実行中に入力装置に対して接続要求が入力されると、制御装置は、セル電圧の均等化を中止した後、リレーを接続状態にしてもよい。
【0011】
上記構成によれば、制御装置によって組電池におけるセル電圧の均等化を自動的に実行することができる。このため、組電池におけるセル電圧のばらつきが過剰に大きくなることを抑制できる。
【0012】
上述したいずれかの蓄電システムにおいて、入力装置は、所定の条件が成立する場合には接続要求の入力を受け付け、所定の条件が成立しない場合には接続要求の入力を受け付けないように構成されてもよい。所定の条件は、電源から制御装置に所定の電力が供給されないと予測される場合に成立するようにしてもよい。
【0013】
上記構成では、蓄電装置以外の電源から制御装置に所定の電力(例えば、制御装置を作動状態に維持するための電力)が供給されないと予測される場合に、入力装置が接続要求の入力を受け付ける。このため、ユーザは、上記リレーを接続状態にする必要があるか否かを適切に判断しやすくなる。
【0014】
上述したいずれかの蓄電システムにおいて、入力装置は、ユーザによって携帯可能な携帯端末に搭載されてもよい。携帯端末は、上記所定の条件が成立する場合に、接続要求の入力を受け付けるボタンを表示するように構成されてもよい。こうした構成によれば、所定の条件が成立する場合に、接続要求の入力を受け付けるボタンが携帯端末に表示される。これにより、ユーザは簡単かつ早期に上記リレーを接続状態にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、蓄電装置を開放したときに蓄電システムの制御部(制御装置)が作動できなくなることを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施の形態に係る蓄電システムの概要について説明するための図である。
図2】本開示の実施の形態に係る蓄電装置の開閉状態(開回路状態/閉回路状態)の切替え方法の一例を示すフローチャートである。
図3図1に示した蓄電システムが備える入力装置(携帯端末)によって実行される第1表示制御を示すフローチャートである。
図4図1に示した蓄電システムが備える入力装置(携帯端末)によって実行される第2表示制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
図1は、本開示の実施の形態に係る蓄電システムの概要について説明するための図である。図1を参照して、この実施の形態に係る蓄電システムは、建物100に適用される。この実施の形態では、建物100が住宅(例えば、ユーザの自宅)である。ただしこれに限られず、建物100は、他の建物(工場、商業施設など)であってもよい。
【0019】
建物100の蓄電システムは、制御装置112と、制御部122と、制御装置250と、各種センサとを含む。制御装置112、制御部122、および制御装置250の各々は、蓄電システムの制御部に相当し、各種センサから検出結果を受け取り、建物100の電源設備を制御する。また、蓄電システムの制御部は携帯端末500と無線通信を行う。
【0020】
制御装置112、制御部122、および制御装置250の各々としては、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、記憶装置、タイマ、および通信I/F(インターフェース)を備えるコンピュータを採用できる。また、携帯端末500も、同様の構成を有するコンピュータを内蔵する。プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。記憶装置は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置は書き換え可能な不揮発性メモリを含んでもよい。各コンピュータにおいて、記憶装置に記憶されているプログラムをプロセッサが実行することで、各種の処理(例えば、図2図4参照)が実行される。ただし、これらの各種処理は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。
【0021】
携帯端末500は、ユーザによって携帯される。この実施の形態では、携帯端末500として、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。タッチパネルディスプレイは、ユーザからの入力を受け付ける入力装置として機能する。また、タッチパネルディスプレイは、ユーザに情報を表示する表示装置としても機能する。携帯端末500には、当該蓄電システムを利用するためのアプリケーションソフトウェアがインストールされている。ただしこれに限られず、携帯端末500としては、任意の携帯端末500を採用可能であり、ラップトップ、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス)、または電子キーなども採用可能である。
【0022】
制御装置112と制御部122と制御装置250とは、例えばバス(図示せず)を介して接続され、相互に有線通信する。この実施の形態では、携帯端末500と制御部122とは直接的に通信するが、携帯端末500と制御装置250とは直接的に通信しない。携帯端末500と制御装置250との間での情報のやり取りは制御部122を介して行われる。これにより、制御装置250の情報セキュリティ上の機密性が向上する。ただしこれに限られず、携帯端末500は、制御装置112、制御部122、および制御装置250の各々と直接的に通信可能に構成されてもよい。
【0023】
この実施の形態では、制御装置112、制御部122、制御装置250が、それぞれ以下に説明する電力変換ユニット110、PCS120、蓄電パック200に収容されている。
【0024】
建物100の蓄電システムは、電力変換ユニット110と、PCS(Power Conditioning System)120と、分電盤130とを含む。建物100には、定置の蓄電パック200と発電装置300とが設けられている。蓄電パック200は電力変換ユニット110と電気的に接続されている。発電装置300はPCS120と電気的に接続されている。
【0025】
電力変換ユニット110は、DC/DCコンバータ111と、DC/DCコンバータ111を制御する制御装置112とを含む。DC/DCコンバータ111は、PCS120と蓄電パック200との間で双方向に電力変換(例えば、変圧)を行う双方向DC/DCコンバータである。DC/DCコンバータ111は、昇降圧チョッパ方式の双方向DC/DCコンバータであってもよい。
【0026】
なお、電力変換ユニット110は、必須の構成ではなく、省略されてもよい。例えば、DC/DCコンバータ111の機能を、PCS120の回路部121に持たせてもよい。
【0027】
PCS120は、電力系統PGと電気的に接続されている。電力系統PGは、電力網と発電設備と変電設備とを含む。電力網は送配電設備によって構築される。電力系統PGは、所定エリアに電力を供給する。建物100は、所定エリア内に位置する。電力系統PGはPCS120に交流電力(例えば、単相または三相交流電力)を供給する。
【0028】
PCS120は、回路部121と、回路部121を制御する制御部122とを含む。回路部121は、パワーコンディショニングに係る処理(例えば、電力変換および入出力調整)のための各種回路を含む。この実施の形態では、回路部121がDC/DCコンバータとAC/DC変換回路(インバータ)とを含む。ただし、回路部121の回路構成は適宜変更可能である。回路部121には、電力系統PG、発電装置300、およびDC/DCコンバータ111(蓄電パック200側)の各々から電力が入力される。また、回路部121は、DC/DCコンバータ111および分電盤130の各々へ電力を出力する。回路部121は、電力系統PGから受けた交流電力を直流電力に変換し、直流電力をDC/DCコンバータ111(蓄電パック200側)へ出力する。
【0029】
発電装置300は、自然エネルギーまたは燃料を利用して発電を行い、発電した電力をPCS120の回路部121へ出力する。この実施の形態に係る発電装置300は、建物100の屋根に設置された太陽光パネルを含む。太陽光パネルは、太陽光を利用して発電を行う。太陽光パネルは、気象条件によって発電出力が変動する自然変動電源である。ただし、発電装置300は、太陽光パネルに限られず、他の発電装置(例えば、風力発電装置または水力発電装置)を含んでもよい。
【0030】
分電盤130は、PCS120の回路部121から電力(例えば、単相または三相交流電力)の供給を受ける。回路部121は、電力系統PG、発電装置300、およびDC/DCコンバータ111の各々から受けた電力を、分電盤130に適した電力に変換し、変換後の電力を分電盤130へ出力する。分電盤130は、電気負荷150と電気的に接続されている。電気負荷150は、分電盤130から電力の供給を受ける。電気負荷150は、分電盤130と直接的に接続されてもよい。あるいは、電気負荷150は、建物100に設けられたコンセント(図示せず)を介して分電盤130と電気的に接続されてもよい。電気負荷150は照明装置を含んでもよい。電気負荷150は、建物100の屋内で使用される電気負荷(空調設備、情報機器、冷蔵庫など)を含んでもよい。電気負荷150は、建物100の屋外に設置された車両用給電設備を含んでもよい。
【0031】
蓄電パック200は、蓄電装置210と、BMS(Battery Management System)210aと、SMR(System Main Relay)220と、電力変換回路230と、制御装置250とを含む。蓄電装置210は、電気負荷150に電力を供給する定置用の蓄電装置である。この実施の形態では、蓄電装置210として、互いに電気的に接続された複数のセル(二次電池)を備える組電池を採用する。ただしこれに限られず、蓄電装置210としては任意の蓄電装置を採用可能である。
【0032】
蓄電装置210には、蓄電装置210の状態を監視するBMS(Battery Management System)210aが設けられている。BMS210aは、蓄電装置210の状態(例えば、電圧、電流、および温度)を検出する各種センサと、各種センサによる検出信号が入力される監視IC(集積回路)とを含む。この実施の形態では、蓄電装置210(組電池)を構成する1つのセル毎に1つの電圧センサが設けられている。
【0033】
上記監視ICは、上記各種センサによる検出信号を用いて蓄電装置210の状態を示す信号(以下、「BMS信号」とも称する)を生成し、生成されたBMS信号を制御装置250へ出力する。制御装置250は、上記BMS信号に基づいて蓄電装置210の状態(例えば、温度、電流、電圧、SOC(State Of Charge)、およびSOH(State of Health))を取得することができる。この実施の形態では、上記監視ICがセル電圧の均等化機能をさらに有する。具体的には、蓄電装置210において隣り合うセル間に、それらセル間をつなぐ電路の接続/遮断を切り替えるスイッチ(図示せず)が設けられている。これらのスイッチは、監視ICによって制御される。監視ICは、各スイッチの閉状態/開状態を切り替えることによって、セル電圧の均等化を実行する。
【0034】
SMR220は、蓄電装置210とDC/DCコンバータ111とをつなぐ電路の接続/遮断を切り替える。SMR220は、例えば一対のリレー(例えば、電磁式のメカニカルリレー)を含む。これらのリレーは、蓄電装置210と制御装置250との間、かつ、蓄電装置210と分電盤130(電気負荷150)との間に位置し、かつ、制御装置250とPCS120(電力系統PG、発電装置300)との間に位置しないように配置されている。SMR220は、制御装置250によって制御される。SMR220は、基本的には閉状態(接続状態)に維持されるが、所定の条件が成立すると遮断される(後述する図2参照)。なお、SMR220に含まれるリレーの数は適宜変更可能である。
【0035】
この実施の形態では、PCS120の制御部122が連系運転と自立運転とを切り替える。電力系統PGからPCS120に電力が供給されている間は、制御部122は建物100を連系運転の状態にする。連系運転中は、電力系統PGと分電盤130とが電気的に接続されている。他方、電力系統PGに何らかの不具合が生じて、電力系統PGから分電盤130への電力供給が停止(停電)すると、制御部122は、建物100を自立運転の状態にする。自立運転中は、電力系統PGと分電盤130とが電気的に切り離されるように制御部122が回路部121を制御する。自立運転では、電力系統PG以外の電源(蓄電装置210、発電装置300)が分電盤130に電力を供給する。
【0036】
電力変換回路230は、SMR220とDC/DCコンバータ111との間から分岐した電路に接続されている。電力変換回路230は、DC/DCコンバータを含む。電力変換回路230は、例えば、入力された直流電力を降圧して、降圧された直流電力を制御装置250へ出力する。連系運転中は、電力系統PGからの電力がPCS120およびDC/DCコンバータ111を経て電力変換回路230に供給される。自立運転中は、蓄電装置210または発電装置300からの電力が電力変換回路230に供給される。電力変換回路230は、供給された電力を制御装置250の作動に適した電力(例えば、約12Vの直流電力)に変換し、変換後の電力を制御装置250へ出力する。
【0037】
建物100は、EMS(Energy Management System)400を含む。この実施の形態では、EMS400がPCS120の制御部122と通信可能に構成される。EMS400は、建物100に設けられた電力量計(図示せず)から、建物100の発電電力および需要電力を取得して経時的に記録する。また、EMS400は、電力系統PGの状況(需給バランス、周波数など)を示す系統情報を電力系統PGのTSO(系統運用者)から取得し、系統情報に基づいて電力系統PGからPCS120(ひいては、制御装置250)への電力供給が停止(停電)するか否かを予測する。系統情報は、電力系統PGの運転に影響し得る災害の発生を予測する災害予測情報(例えば、緊急地震速報または台風接近情報)を含んでもよい。そして、EMS400は、電力系統PGが停電すると予測される時間帯を、制御部122に通知する。
【0038】
また、EMS400は、気象予測情報(天気、気温、日射強度、風力などの予測情報)に基づいて、発電装置300(太陽光パネル)による発電電力を予測する。EMS400は、発電装置300による発電電力が需要電力を上回って余剰電力が生じた場合に、蓄電装置210に余剰電力を蓄えることを要求する信号を、制御部122へ送信する。また、EMS400は、予め区切られた時間帯ごとに、発電装置300からPCS120(ひいては、制御装置250)に所定の基準電力以上の電力が供給されるか否かを予測する。そして、EMS400は、発電装置300からPCS120へ供給される電力が上記基準電力を下回ると予測される時間帯を、制御部122に通知する。EMS400は、公知の気象サービス(例えば、気象庁が提供するサービス)を利用して気象予測情報を取得してもよい。EMS400は、地域および時刻ごとに区別して気象予測情報を管理する。
【0039】
上記のように、この実施の形態では、蓄電装置210以外の電源(電力系統PG、発電装置300)から制御装置250に所定の電力が供給されないと予測される将来の時間帯が、EMS400から制御部122に送信される。ただしこれに限られず、蓄電システムの制御部(制御装置112、制御部122、制御装置250)が、EMS400の代わりに上記予測を行ってもよい。
【0040】
図2は、蓄電装置210の開閉状態(開回路状態/閉回路状態)の切替え方法の一例を示すフローチャートである。フローチャート中の「S」は、ステップを意味する。S11~S15の一連の処理は制御部122(PCS120)によって実行され、S21~S23の一連の処理は制御装置250(蓄電パック200)によって実行される。制御部122は、S11~S15の一連の処理を繰り返すことにより遮断条件の成否を監視する。
【0041】
図1とともに図2を参照して、S11では、所定の遮断条件が成立するか否かを、制御部122が判断する。この実施の形態では、蓄電システムの制御部がユーザから遮断要求を受けた場合に上記遮断条件が成立し、蓄電システムの制御部がユーザから遮断要求を受けていない場合には上記遮断条件が成立しない。この実施の形態では、制御部122が携帯端末500からメンテナンス実行要求信号を受信したことが、蓄電システムの制御部がユーザから遮断要求を受けたことを意味する。メンテナンス実行要求信号については後述する(図3参照)。
【0042】
遮断条件が成立しない間は(S11にてNO)、S11の判断が繰り返される。他方、遮断条件が成立する場合には(S11にてYES)、制御部122は、S12において、SMR220の遮断を要求する遮断要求信号を制御装置250へ送信した後、続くS13において、SMR遮断が解除されたか否かを判断する。制御部122は、後述する「SMR遮断中」のステータス信号(S22)を制御装置250から受信している間は、S13においてNOと判断し、上記ステータス信号を受信しなくなったときには、S13においてYESと判断する。
【0043】
SMR遮断が解除されていない場合には(S13にてNO)、制御部122は、S14において、遮断解除要求が発生したか否かを判断する。この実施の形態では、蓄電システムの制御部がユーザから接続要求を受けた場合に、上記遮断解除要求が発生したと判断される。蓄電システムの制御部がユーザから接続要求を受けていない場合には、S14でNOと判断される。S13にてNOかつS14にてNOと判断されている間は、S12~S14が繰り返される。この実施の形態では、制御部122が携帯端末500からメンテナンス中止要求信号を受信したことが、蓄電システムの制御部がユーザから接続要求を受けたことを意味する。メンテナンス中止要求信号については後述する(図4参照)。
【0044】
上記遮断解除要求が発生した場合には(S14にてYES)、制御部122は、S15において、SMR220の接続を要求する接続要求信号を制御装置250へ送信する。S13においてYESと判断された場合と、S15の処理が実行された場合との各々においては、S11~S15の一連の処理が終了し、処理は最初のステップ(S11)に戻る。
【0045】
制御装置250は、制御部122から前述の遮断要求信号(S12)を受信すると、S21~S26の一連の処理を開始する。制御装置250は、S21においてSMR220(一対のリレー)を開状態(遮断状態)にした後、S22において、SMR220が遮断状態であることを示す「SMR遮断中」のステータス信号を制御部122へ送信する。制御部122は、受信した「SMR遮断中」のステータス信号を携帯端末500に送信してもよい。S21の処理により、蓄電装置210とDC/DCコンバータ111とをつなぐ電路が遮断され、蓄電装置210が開回路状態(開放状態)になる。
【0046】
続けて、制御装置250は、S23において、開放された蓄電装置210のメンテナンスに係る処理を実行する。具体的には、制御装置250が、メンテナンスに係る処理として、以下に説明する第1および第2項目を監視IC(BMS210a)に実行させる。
【0047】
第1項目は、BMS210aに含まれる監視ICの自己診断(ダイアグノーシス)である。具体的には、監視ICは、蓄電装置210が非通電状態(電流0A)であるときにBMS210aに含まれる電圧センサから蓄電装置210のOCV(Open Circuit Voltage)を取得し、取得されたOCVを制御装置250へ出力する。監視ICは、OCVの取得が正常に行われたか否かに基づいて、正常に動作できるかを自己診断する。制御装置250は、監視ICから受け取ったOCVを取得時刻と紐付けて記憶装置に保存する。
【0048】
第2項目は、蓄電装置210におけるセル電圧の均等化である。具体的には、監視ICは、蓄電装置210におけるセル電圧が均等化されるように、蓄電装置210の隣り合うセル間に設けられたスイッチの開閉制御を実行する。
【0049】
続くS24では、制御装置250が、蓄電装置210のメンテナンスが完了したか否かを判断する。制御装置250は、項目ごとに完了したか否かを判断する。いずれかの項目が完了すると、制御装置250は、その項目が完了した時刻とともにメンテナンス中に得た情報(例えば、異常に関する情報)を記憶装置に保存したり携帯端末500へ送信したりする。全ての項目が完了すると、S24でYESと判断され、処理がS26に進む。いずれかの項目が完了していないときは、S24でNOと判断され、処理がS25に進む。
【0050】
S25では、制御部122から前述の接続要求信号(S15)を受信したか否かを、制御装置250が判断する。蓄電装置210のメンテナンスが完了しておらず、かつ、制御装置250が接続要求信号を受信していない間は(S24,S25の両方でNO)、S22~S25が繰り返される。これにより、蓄電装置210のメンテナンス(S23)が継続される。他方、メンテナンスが完了するか(S24にてYES)、あるいは制御装置250が接続要求信号を受信すると(S25にてYES)、処理がS26に進む。
【0051】
S26では、制御装置250が、SMR220(一対のリレー)を閉状態(接続状態)に戻す。制御装置250は、例えば蓄電装置210のメンテナンスの途中で接続要求信号を受信すると、メンテナンスを中止した後、SMR220を接続状態にする。これにより、蓄電装置210が閉回路状態になり、制御装置250から制御部122へ「SMR遮断中」のステータス信号(S22)が送信されなくなる。そして、S21~S26の一連の処理が終了する。
【0052】
なお、メンテナンス項目は、前述した第1項目および第2項目に限られない。例えば、メンテナンス項目は第2項目のみであってもよい。また、メンテナンス項目は、蓄電装置210の情報を取得するための各種センサの補正と、蓄電装置210のOCV取得によるSOC学習と、蓄電装置210の満充電容量の推定との少なくとも1つを含んでもよい。
【0053】
以下、図3および図4を用いて、携帯端末500によって実行される表示制御について説明する。携帯端末500は、前述した「SMR遮断中」のステータス信号を受信していない期間(メンテナンス非実行時)は、図3に示す一連の処理を繰り返し実行し、上記「SMR遮断中」のステータス信号を受信している期間(メンテナンス実行時)は、図4に示す一連の処理を繰り返し実行する。
【0054】
図3は、携帯端末500によって実行される第1表示制御を示すフローチャートである。図1とともに図3を参照して、S61では、所定の第1表示条件が成立するか否かを、携帯端末500が判断する。この実施の形態に係る第1表示条件は、建物100が連系運転中であること(第1連系条件)と、発電装置300による発電電力が所定の基準電力以上であること(第1発電条件)とのいずれか一方が満たされる場合に成立し、いずれも満たされない場合には成立しない。携帯端末500は、EMS400からの情報(例えば、系統情報および気象情報)に基づいて第1表示条件が成立するか否かを判断してもよい。
【0055】
第1表示条件が成立すると(S61にてYES)、携帯端末500が、S62において、第1画面Sc1をポップアップ表示する。第1画面Sc1は、メンテナンス実行を促すメッセージを含む情報D1と、メンテナンス実行ボタンB1とを含む。情報D1は、電力系統PGの状況(運転状態など)と発電装置300の状況(発電電力など)とをさらに含む。第1画面Sc1は遮断要求の入力を受け付ける。ユーザは、メンテナンス実行ボタンB1を操作(例えば、押下)することにより、携帯端末500に遮断要求を入力できる。
【0056】
続くS63では、ユーザから遮断要求が入力されたか否かを、携帯端末500が判断する。この実施の形態では、ユーザによってメンテナンス実行ボタンB1が操作された場合には、S63においてYESと判断され、処理がS64に進む。S64では、携帯端末500が前述のメンテナンス実行要求信号(図2のS11参照)を制御部122へ送信する。その後、処理は最初のステップ(S61)に戻る。他方、ユーザによってメンテナンス実行ボタンB1が操作されない場合には、S63においてNOと判断され、メンテナンス実行要求信号が送信されることなく、処理が最初のステップ(S61)に戻る。
【0057】
図4は、携帯端末500によって実行される第2表示制御を示すフローチャートである。図1とともに図4を参照して、S71では、所定の第2表示条件が成立するか否かを、携帯端末500が判断する。この実施の形態に係る第2表示条件は、電力系統PGが停電すると予測される時間帯が現在時刻から所定時間以内に到来すること(第2連系要件)と、発電装置300からPCS120へ供給される電力が所定の基準電力を下回ると予測される時間帯が現在時刻から上記所定時間以内に到来すること(第2発電要件)との両方が満たされる場合に成立し、いずれか一方が満たされない場合には成立しない。所定の基準電力は、制御装置250を作動状態に維持可能な電力であってもよい。携帯端末500は、EMS400からの情報(例えば、系統情報および気象予測情報)に基づいて、第2連系要件および第2発電要件の各々が成立するか否かを判断してもよい。第2表示条件が成立することは、蓄電装置210以外の電源(電力系統PG、発電装置300)から制御装置250に所定の電力が供給されないと予測されることを意味する。
【0058】
第2表示条件が成立しない場合には(S71にてNO)、携帯端末500が、S72において、第2画面Sc2を表示する。第2画面Sc2は、メンテナンス実行中であることを示す情報D2を含む。情報D2は、メンテナンスの進行度と、メンテナンス完了予定時刻とをさらに含む。第2画面Sc2は、接続要求の入力を受け付けない。第2表示条件が成立しない間は(S71にてNO)、S71およびS72の処理が繰り返される。
【0059】
第2表示条件が成立する場合には(S71にてYES)、携帯端末500が、S73において、第3画面Sc3を表示する。第3画面Sc3は、情報D2に加えて、メンテナンス中止を促す情報D3と、メンテナンス中止ボタンB2とをさらに含む。第3画面Sc3は接続要求の入力を受け付ける。ユーザは、メンテナンス中止ボタンB2を操作(例えば、押下)することにより、携帯端末500に接続要求を入力できる。
【0060】
S73の処理後、携帯端末500は、S74においてユーザから接続要求が入力されたか否かを判断する。この実施の形態では、ユーザによってメンテナンス中止ボタンB2が操作された場合には、S74においてYESと判断され、処理がS75に進む。S75では、携帯端末500が前述のメンテナンス中止要求信号(図2のS14参照)を制御部122へ送信する。その後、処理は最初のステップ(S71)に戻る。他方、ユーザによってメンテナンス中止ボタンB2が操作されない場合には、S74でNOと判断され、メンテナンス中止要求信号が送信されることなく、処理が最初のステップ(S71)に戻る。
【0061】
以上説明したように、この実施の形態に係る蓄電システムでは、SMR220が遮断状態になっても、制御装置250は、電力系統PGと発電装置300との少なくとも一方から電力の供給を受けることができる。ただし、制御装置250は、これらの電源から常に電力の供給を受けられるとは限らない。そこで、上記蓄電システムでは、SMR220が遮断状態であるときに携帯端末500(入力装置)に対して接続要求が入力されると(図4のS74にてYES)、制御装置250がSMR220を接続状態にする(図2のS26)。セル電圧の均等化(第2項目)の実行中に携帯端末500に対して接続要求が入力されると、制御装置250は、セル電圧の均等化を中止した後、SMR220を接続状態にする。ユーザは、電力系統PGおよび発電装置300の各々の状況を確認して、必要に応じてSMR220を接続状態にすることができる。このため、制御装置250が電源を失って作動できなくなることが抑制される。なお、HMI(Human Machine Interface)は、携帯端末500に限られず、携帯端末以外の端末がHMI(入力装置など)として使用されてもよい。HMIは、ユーザからの音声入力を受け付けてもよい。
【0062】
図2に示した処理における遮断条件(S11)と遮断解除要求の発生条件(S14)との各々は適宜変更可能である。例えば、制御部122が、気象情報および需要電力に基づいてユーザによる電気負荷150の使い方を学習し、電気負荷150が使用されない時間帯に遮断条件(S11)が成立するようにしてもよい。EMS400が、系統情報および気象情報に基づいてメンテナンスを実行可能か否かを判断し、メンテナンスを実行可能なタイミングになると、EMS400から制御部122に所定の第1信号が送信されてもよい。そして、制御部122が第1信号を受信すると、遮断条件(S11)が成立してもよい。また、EMS400が、災害予測情報および気象予測情報に基づいて、回路部121(PCS120)への供給電力が不足するか否かを予測してもよい。そして、回路部121への供給電力が不足すると予測される場合に、EMS400から制御部122に所定の第2信号が送信されてもよい。そして、制御部122が第2信号を受信すると、遮断解除要求(S14)が発生するようにしてもよい。また、発電装置300による発電電力(太陽光発電電力)が所定値以下であるときに遮断解除要求(S14)が発生してもよい。
【0063】
第1および第2表示条件(図3および図4)の各々も適宜変更可能である。例えば、発電装置300による発電電力(太陽光発電電力)が所定値以上であるときにのみ、第1表示条件(図3のS61)が成立してもよい。
【0064】
第1~第3画面Sc1~Sc3(図3および図4)の各々の表示内容も適宜変更可能である。EMS400は、メンテナンス推奨タイミングを求め、メンテナンス推奨タイミングを携帯端末500へ送信してもよい。そして、携帯端末500は、第1画面Sc1(図3)にメンテナンス推奨タイミング(ユーザへのアドバイス)を表示してもよい。
【0065】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
100 建物、111 DC/DCコンバータ、112 制御装置、120 PCS、121 回路部、122 制御部、130 分電盤、150 電気負荷、210 蓄電装置、220 SMR、250 制御装置、300 発電装置、400 EMS、500 携帯端末、PG 電力系統。
図1
図2
図3
図4