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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176287
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】吸収性物品の個包装体
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20231206BHJP
   A61F 13/551 20060101ALI20231206BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/551 200
A61F13/56 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088493
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 郁子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA16
3B200BB03
3B200BB20
3B200DA27
3B200DE01
3B200DE16
3B200DF08
3B200DF09
(57)【要約】
【課題】環境にやさしく、風合いに優れ、開封しやすく、開封時の音が抑制された吸収性物品の個包装体を提供する。
【解決手段】液透過性のトップシート11と、液不透過性のバックシート13と、トップシート及びバックシートの間に配置される吸収体12と、を有する吸収性物品10と、吸収性物品10を個装する包装シート14とを含む吸収性物品の個包装体1であって、バックシート13が衣類側表面に粘着剤層23を有し、包装シート14が粘着剤層に対向する対向面に剥離層24を有し、少なくとも包装シート14の長手方向及び/又は長手方向に直交する幅方向の両端縁部にシール部21が形成されており、包装シート14は、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材からなり、所定の坪量と、ティッシュソフトネス測定装置TSAによる、柔らかさTS7、滑らかさTS750及び剛性Dが所定の範囲を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体と、を有する吸収性物品と、前記吸収性物品を個装する包装シートとを含む吸収性物品の個包装体であって、
前記バックシートが衣類側表面に粘着剤層を有し、
前記包装シートが前記粘着剤層に対向する対向面に剥離層を有し、
少なくとも前記包装シートの長手方向及び/又は長手方向に直交する幅方向の両端縁部にシール部が形成されており、
前記包装シートは、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材からなり、
坪量が20g/m以上40g/m以下であり、
ティッシュソフトネス測定装置TSAによる、柔らかさTS7が20dBVrms以上45dBVrms以下、滑らかさTS750が15dBVrms以上40dBVrms以下、剛性Dが1.0mm/N以上2.5mm/N以下である、
吸収性物品の個包装体。
【請求項2】
前記吸収性物品と前記包装シートとが、前記吸収性物品の長手方向の中央部にて2つ折りで折り畳まれることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項3】
さらに、前記包装シートの長手方向の端部に、摘まみ部を備えることを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品の個包装体。
【請求項4】
前記摘まみ部が前記包装シートとは別途の紙基材からなることを特徴とする請求項3に記載の吸収性物品の個包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の個包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、生理用ナプキン、パンティーライナー、紙オムツ等の吸収性物品は、1個ずつ包装シートで包まれ、包装シートと一体となって三つ折りされ、包装シートの縁部同士をヒートシール等によって封着することにより個包装化した状態で提供されている。
【0003】
包装シートは、ポリオレフィン系の熱可塑性合成樹脂繊維から作られた不織布と、紙等の基材に剥離剤を塗布したものであって吸収性物品の粘着層を被覆する剥離紙と、で形成されることが多い。そのため、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献が求められている近年において、複数の素材を用いている包装シートは、リサイクルし難く、複数個になった場合に嵩が大きく、また、合成樹脂繊維(不織布)の焼却に燃焼エネルギーが必要であるため、改善が強く望まれていた。
【0004】
これらの問題に対して、例えば、特許文献1には、剥離層、熱可塑性樹脂層、不織布層が順に積層された剥離部材(包装シート)を有する体液吸収用当て材が開示されている。この剥離部材は、不織布と剥離紙の機能が一体化したものではあるが、合成樹脂繊維を用いることは変わらなかった。
【0005】
ところで、包装シートの素材として、合成樹脂繊維を用いず、他の基材を使用する場合には、別の問題が生じる。例えば、合成樹脂繊維の不織布が持つ、風合い、肌触りや柔軟性といった特性を満たしたいという問題や、易開封性を有しながらも、開封する際に包装シート同士が剥がれる音を抑制させたいという問題があり、実際に他の基材を使用する上で非常に難しいものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-81927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、環境にやさしく、風合いに優れ、開封しやすく、開封時の音が抑制された吸収性物品の個包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、木材パルプ繊維を有する紙基材で包装シートを形成し、特定の物性値を所定の数値範囲内とすることにより、環境にやさしく、風合いに優れ、開封しやすく、開封時の音が抑制された吸収性物品の個包装体を得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の吸収性物品の個包装体を提供するものである。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、上記トップシート及び上記バックシートの間に配置される吸収体と、を有する吸収性物品と、上記吸収性物品を個装する包装シートとを含む吸収性物品の個包装体であって、
上記バックシートが衣類側表面に粘着剤層を有し、
上記包装シートが上記粘着剤層に対向する対向面に剥離層を有し、
少なくとも上記包装シートの長手方向及び/又は長手方向に直交する幅方向の両端縁部にシール部が形成されており、
上記包装シートは、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材からなり、
坪量が20g/m以上40g/m以下であり、
ティッシュソフトネス測定装置TSAによる、柔らかさTS7が20dBVrms以上45dBVrms以下、滑らかさTS750が15dBVrms以上40dBVrms以下、剛性Dが1.0mm/N以上2.5mm/N以下である。
(2)本発明の第2の態様は、上記吸収性物品と上記包装シートとが、上記吸収性物品の長手方向の中央部にて2つ折りで折り畳まれる(1)に記載の吸収性物品の個包装体である。
(3)本発明の第3の態様は、さらに、上記包装シートの長手方向の端部に、摘まみ部を備える(1)に記載の吸収性物品の個包装体である。
(4)本発明の第4の態様は、上記摘まみ部が上記包装シートとは別途の紙基材からなる(3)に記載の吸収性物品の個包装体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境にやさしく、風合いに優れ、開封しやすく、開封時の音が抑制された吸収性物品の個包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による吸収性物品の個包装体の折り畳み前の構成を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態による吸収性物品の個包装体の平面図である。
図3図1の折り畳み線F1に係る分解断面図である。
図4】本発明の別の一実施形態による吸収性物品の個包装体の折り畳み前の構成を模式的に示す平面図である。
図5図4の吸収性物品の個包装体の平面図である。
図6図4の吸収性物品の個包装体の開封途中の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。また、吸収性物品10の長手方向とは、吸収性物品10が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Xで示す方向である。また、吸収性物品10の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Yで示す方向である。さらに、衣類側面とは、バックシート等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側(衣類側)に向けられる面であり、肌当接面とは、トップシート等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面である。
【0014】
<吸収性物品の個包装体>
本発明の吸収性物品の個包装体1の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の個包装体の折り畳み前の構成を模式的に示す平面図、図2は、本発明の一実施形態による吸収性物品の個包装体の平面図、図3は、図1の折り畳み線F1に係る分解断面図である。
【0015】
吸収性物品の個包装体1は、吸収性物品10を着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート11と、トップシート11に対向して配置され、吸収性物品10を着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート13と、トップシート11とバックシート13との間に配置された吸収体12と、を有する吸収性物品10と、吸収性物品10を個装する包装シート14とを含む。バックシート13には、衣類側表面に粘着剤層23を有しており、包装シート14には、粘着剤層23に対向面に剥離層24を有している。
【0016】
また、吸収性物品10と包装シート14とが、例えば、長手方向中央部にある折り畳み線F1に沿って、吸収性物品10の長手方向に2つ折り以上で折り畳まれる。そして、少なくとも包装シート14の長手方向X及び/又は長手方向Xに直交する幅方向の両端縁部にシール部21が形成されている。シール部21において、包装シート14同士は接着されている。包装シート14の長手方向の端部に、摘まみ部22を備えることが好ましい。
【0017】
<吸収性物品>
吸収性物品10としては、一般的に知られているものであれば特に制限はなく、例えば、吸水ナプキン、軽失禁パッド、尿取りパッド等の失禁製品、生理用ナプキン、タンポン等の生理用品、パンティーライナー、使い捨て紙おむつ等が挙げられる。吸収性物品10の長手方向の寸法及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、長手方向の範囲として100mm以上800mm以下及び幅方向の範囲50mm以上500mm以下のである。吸収性物品10の寸法を上記の範囲に調整することで、種々の用途のものが容易に得られる。
【0018】
吸収性物品10の形状は、図1に示すような略砂時計型に限定されず、略矩形型や、略扇型等、着用者の着用部位にフィットする形状であれば形状は問わない。また、吸収性物品10は、用途やタイプに応じて、立体ギャザー、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0019】
(トップシート)
トップシート11としては液透過性の基材を使用できる。例えば、サーマルボンド不織布、サーマルボンド不織布とスパンボンド不織布との積層体等の不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上を積層した複層シート等が挙げられる。トップシート11には、エンボス加工、穿孔加工等の方法、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の、改質剤の添加等を実施することができる。
【0020】
(吸収体)
吸収体12としては、一般に生理用ナプキン、紙オムツ、尿パッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、吸収性繊維、高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer;以下「SAP」ともいう。)、親水性シートといった材料から形成される。
【0021】
吸収性繊維は、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティッシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体12に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、特に限定されないが、50g/m以上500g/m以下であることが好ましく、100g/m以上300g/m以下であることがより好ましい。これにより、吸収体12により多くの体液(尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体)を吸収させることができる。
【0022】
吸収体12が含むSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はない。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。また、SAPの坪量は、特に限定されないが、50g/m以上500g/m以下であることが好ましく、100g/m以上300g/m以下であることがより好ましい。
【0023】
吸収体12において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体12の形状の安定化の目的から、吸収体12を包むような、キャリアシート(図示せず)を設けてもよい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、例えば、ティッシュ、吸収紙、エアレイド不織布、スパンボンド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。これらの中でも、スパンボンド不織布が好ましい。また、キャリアシートを複数備える場合は、複数のキャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0024】
(バックシート)
バックシート13は、吸収性物品10の外部に体液が漏れないように液不透過性を有し、遮水性を有する基材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有してもよい。バックシート13としては、液不透過性の基材を使用できる。例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の不織布、ポリエステルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合フィルム等の樹脂フィルム等が挙げられる。バックシート13には、液不透過性を向上させるための公知の方法を施すことができる。また、バックシート13に透湿性を備えるために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート13にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム等を挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0025】
バックシート13の坪量は、強度及び加工性の点から、15g/m以上60g/m以下であることが好ましく、25g/m以上45g/m以下であることがより好ましい。
【0026】
図1に示すように、バックシート13の衣類側表面には、粘着剤層23を有している。吸収性物品10が未使用の状態においては、この粘着剤層23を介して、バックシート13に包装シート14が固定され、包装シート14が有する剥離層24により、保護されている。また、吸収性物品10の使用時には、粘着剤層23を介して、吸収性物品10が下着等に固定される。
【0027】
粘着剤層23の形状については、特に限定はないが、バックシート13の長手方向又は幅方向に延在することが好ましく、長手方向又は幅方向に延在するように、複数列形成することがより好ましく、バックシート13の長手方向に等間隔に3列形成することが更に好ましい。
【0028】
粘着剤層23を形成する粘着剤としては、特に限定はない。例えば、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレン-アクリル系共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン-スチレン共重合体等のホットメルト系粘着剤が挙げられる。これらを、1種のみを使用しても、複数をブレンドして使用してもよい。上記の粘着剤を、例えば、バックシート13の衣類側表面に塗布することで、粘着剤層23を形成することができる。
【0029】
<包装シート>
包装シート14は、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材からなる。木材パルプ繊維を主成分とする紙基材を利用することで、石油由来の素材ではなく、再生可能原料を利用することができ、環境にやさしい包装シート14となる。また、木材パルプ繊維を主成分とする紙基材は、合成樹脂繊維製の包装シート14と比較して、風合いに優れている。木材パルプ繊維としては、例えば、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の化学パルプ、サーモメカニカルパルプ、ストーングラインドパルプ、リファイナーグラインドパルプ等の機械パルプ、及び、新聞紙、コート紙、上質紙等から得られる再生パルプ等の繊維が挙げられる。これらの木材パルプ繊維を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、ケナフ、麻、竹等の非木材パルプ、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等のセルロース繊維以外の繊維材料を1種または2種以上配合することができる。
【0030】
紙基材の具体例としては、例えば、剥離紙用原紙、上質紙、クラフト紙、クルパック紙、フォ-ム紙、半晒紙、グラシン紙及びクレ-プ紙等が挙げられる。これらの中でも、紙基材の風合いを維持しやすい点から、パルプ繊維を漂白精製処理した晒パルプ繊維である針葉樹晒クラフトパルプ繊維(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ繊維(LBKP)、及びこれらの混合物を原料としたクレープ紙が好ましく、針葉樹晒クラフトパルプ繊維及び広葉樹晒クラフトパルプ繊維(LBKP)を併用するクレープ紙がより好ましく、広葉樹クラフトパルプ及び針葉樹クラフトパルプの固形分重量比が90/10以上50/50以下であるクレープ紙がさらに好ましい。
【0031】
包装シート14の紙基材には、包装シート14として形成された際、外面側に印刷が施されていてもよい。また、紙基材は、防水性の確保のために、オーバーコートが施されたオーバーコート紙であってもよい。
【0032】
紙基紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して基紙を製造することができる。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0033】
包装シート14の坪量は、包装シート14に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、強度及び加工性の点から、20g/m以上40g/m以下であり、21g/m以上30g/m以下であることが好ましい。また、包装シート14の厚さは、風合い、手肉感の点から、65μm以上90μm以下が好ましく、70μm以上80μm以下がより好ましい。
【0034】
包装シート14のティッシュソフトネス測定装置TSA(emtec社製;Tissue Softness Analyzer)上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)は、20dBVrms以上45dBVrms以下であり、25dBVrms以上40dBVrms以下であることが好ましく、32dBVrms以上38dBVrms以下であることがより好ましい。このTS7は、包装シート14の柔らかさの指標であり、TS7が上記の範囲内のものとなることにより、包装シート14の風合い、手触りの点で優れる。
【0035】
さらに、包装シート14について、TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、低周波数側からの最初のスペクトルの極大ピークの強度(TS750)は、15dBVrms以上40dBVrms以下であり、20dBVrms以上35dBVrms以下であることが好ましく、17dBVrms以上30dBVrms以下であることがより好ましい。このTS750は、包装シート14の滑らかさの指標であり、TS750が上記の範囲内のものとなることにより、包装シート14の風合い、滑らかさの点で優れる。
【0036】
加えて、包装シート14について、ティッシュソフトネス測定装置TSAにより、試料台に設置した包装シート14のサンプルに対し、ブレード付きロータを回転させずに100mNと600mNの押し込み圧力でそれぞれ上から押し込んだとき、押し込み圧力100mNと600mNの間での上記サンプルの上下方向の変形変位量で表される、剛性Dの測定値が1.0mm/N以上2.5mm/N以下であり、1.5mm/N以上2.3mm/N以下であることが好ましく、1.7mm/N以上2.0mm/N以下であることがより好ましい。Dが上記の範囲内のものとなることにより、包装シート14の風合い、剛性の点で優れる。
【0037】
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS7、TS750及びDの測定方法や、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されている。ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用した各種測定方法については、上記の特許文献を参照されたい。なお、TS750、TS7、及び剛性Dの測定面は、包装シートの外側(吸収性物品接している側の反対面)とする。
【0038】
図3に示すように、包装シート14は、バックシート13に有する粘着剤層23に対向する対向面に剥離層24を有する。包装シート14に剥離紙を形成せず、包装シート14に剥離性能を持たせることにより、個包装にした際にゴミの減量ができる。剥離層24は、バックシート13に有する粘着剤層23と接触しても、容易に剥がれる機能を有する。剥離層24の形状については、特に限定はないが、粘着剤層23と同形状とすることが好ましい。剥離層24を形成するための剥離処理は特に制限されず、例えば、熱硬化性あるいはUV(紫外線)硬化性のシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、イソシアネート系樹脂等の剥離剤を、粘着剤層23に対向する対向面に塗布することで、剥離層24を形成することができる。また、剥離剤の塗工量も同様に適宜設定することができる。
【0039】
さらに、包装シート14の長手方向の端部に、摘まみ部22を備えることが好ましい。摘まみ部22を設けることにより、個包装体1を開封する際に、吸収性物品10を包装シート14から剥がしやすくなる。開封動作がより容易になることから、摘まみ部22は、包装シート14の両端部にそれぞれ形成してもよい。摘まみ部22の形状に特に限定はなく、半円状、長方形、台形等、適宜設定することができる。摘まみ部22は、包装シート14の原反を包装シート14の形状に切断する際に、摘まみ部22も含めた形状で切断することで、形成することができる。
【0040】
一方、摘まみ部22は、包装シート14とは別途の紙基材からなることで、特別な切断型がなくても、摘まみ部22を形成することができる。図4は、本発明の別の一実施形態による吸収性物品の個包装体1の折り畳み前の構成を模式的に示す平面図である。図4に示すように、摘まみ部22は、包装シート14の長手方向端部に接着している。摘まみ部22の基材は、上記包装シート14と同様の紙素材を用いることが好ましい。本実施形態の摘まみ部22は、紙基材の基端側が包装シート14に接着され、反対の突出する部分に剥離可能な接着剤層(図示せず)が設けられ、最も先端の部分は、非接着性であることが好ましい。このような形態とすることで、吸収性物品10を取り出した包装シート14を、そのままの状態で、長手方向Xに丸めた使用済み吸収性物品10の外側を包みこむように長手方向Xに巻回して、その端部を摘まみ部22で止着し、手をなるべく汚さずに廃棄することができる。
【0041】
(吸収性物品の個包装体の包装構造)
図2に示すように、吸収性物品の個包装体1を2つ折りにすることが好ましい。2つ折りとする場合、幅方向Yに沿って延びる1つの折り畳み線F1にて、吸収性物品10と包装シート14をともに折り畳み、その後、幅方向Yの両縁部にシール部21を形成することができる。その場合、包装シート14の長手方向の端部(折り畳み線F1と反対側の端部)にもシール部21を形成することが好ましい。2つ折りとすることにより、吸収性物品10を装着する工程が、包装シート14の摘まみ部22等を持って開封する工程と吸収性物品10を取り出す工程の2工程となり、装着するまでの手間が軽減でき、開封時に音が出る回数が最低限になる。
【0042】
シール部21により、吸収性物品の個包装体1の両縁部が閉じられるので、吸収性物品10を衛生的に保管することができる。ヒートシール加工による融着や、接着剤による接着で形成することもできるが、開封し易さの点から、エッジエンボスを付与することにより形成することが好ましい。エッジエンボスとは、連続シートより幅狭の金属製ロールとゴムロールとで構成される一対のエッジエンボスロールにより、包装シート14の側縁部に線状のエッジエンボスを付与して、積層された包装シート14同士を一体化させる技術である。エッジエンボスのエンボスパターンは、図2に示す以外にも適宜使用できる。
【0043】
図4は、本発明の別の一実施形態による吸収性物品の個包装体1の折り畳み前の構成を模式的に示す平面図である。また、図5は、図4の吸収性物品の個包装体の平面図であり、図6は、図4の吸収性物品の個包装体の開封途中の平面図である。図4図6の実施形態では、吸収性物品の個包装体1は、包装シート14の長手方向Xと吸収性物品10の長手方向Xとが揃うように、包装シート14の内面に吸収性物品10を載置し、包装シート14及び吸収性物品10をともに折り畳み線F2及びF2で3つ折りしている。これにより、長さが比較的長い、例えば、夜用や長時間用の吸収性物品10をコンパクトに包装することができる
【0044】
図4に示すように、包装シート14は、折り畳み線F2及びF3でそれぞれ区切られた第1領域31及び第2領域32に吸収性物品10を載置し、第3領域33には吸収性物品10を載置しない構成にすることにより、吸収性物品10を摘まんで開封することができ、摘まみ部22を吸収性物品10の長手方向一端34にのみの形成でも容易に開封することができる。
【0045】
吸収性物品の個包装体1は、例えば、吸収性物品10と、吸収性物品10よりも長手方向及び幅方向の両方に大きい包装シート14とを、吸収性物品10のバックシート13の衣類側面と包装シート14の表面とが接触するように積層する第1工程と、第1工程で得られた積層体において、トップシート11の肌側面が内側になるように内2つ折りする第2工程と、シール部21の形成により接合する第3工程と、を含む製造方法により作製することができる。
【0046】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0047】
1 吸収性物品の個包装体
10 吸収性物品
11 トップシート
12 吸収体
13 バックシート
14 包装シート
21 シール部
22 摘まみ部
23 粘着剤層
24 剥離層
31 第一領域
32 第二領域
33 第三領域
34 吸収性物品の長手方向一端
F1、F2、F3 折り畳み線
図1
図2
図3
図4
図5
図6