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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176294
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】離形紙剥離方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 37/04 20060101AFI20231206BHJP
   B65H 35/07 20060101ALI20231206BHJP
   B65H 41/00 20060101ALI20231206BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B65H37/04 B
B65H35/07 K
B65H41/00 B
B62D65/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088505
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】栗林 圭一
(72)【発明者】
【氏名】尾鷲 岳志
(72)【発明者】
【氏名】松永 彰
(72)【発明者】
【氏名】澤 淳次
【テーマコード(参考)】
3D114
3F062
3F108
【Fターム(参考)】
3D114AA04
3D114BA01
3D114DA12
3F062AA06
3F062AA12
3F062BE02
3F062BE08
3F062BF03
3F062BF32
3F062DA02
3F062FA24
3F108GA09
3F108GB01
3F108HA06
3F108HA12
3F108JA02
(57)【要約】
【課題】ワークに固定されたシート部材から離形紙を自動で剥離する際に、離形紙とシート部材とが一緒にワークから剥がれる事態を防止する。
【解決手段】第1ローラ21と第2ローラ22とで離形紙3のはみ出し部3aを挟持した状態で、ワーク1を第1ローラ21及び第2ローラ22に対して相対移動させることにより、シート部材2から離形紙3を剥離する離形紙剥離方法において、ワーク1を移動させながら、シート部材2を第1ローラ21に押し付ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに固定されたシート部材から離形紙を剥離するための方法であって、
前記離形紙のうち、前記シート部材からはみ出したはみ出し部を、第1挟持部材と第2挟持部材とで挟持する工程と、
前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とで前記離形紙のはみ出し部を挟持した状態で、前記ワークを前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材に対して相対移動させることにより、前記シート部材から前記離形紙を剥離する工程とを備え、
前記ワークを移動させながら、前記シート部材を前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材に押し付けることを特徴とする離形紙剥離方法。
【請求項2】
前記シート部材から前記離形紙を剥離する前に、前記ワークを移動させながら前記シート部材を前記離形紙を介して前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材に押し付ける工程と、
前記シート部材から前記離形紙を剥離しながら、あるいは、前記シート部材から前記離形紙を剥離した後に、前記ワークを移動させながら前記シート部材を前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材に押し付ける工程とを有する請求項1に記載の離形紙剥離方法。
【請求項3】
前記離形紙のはみ出し部を、吸引手段で吸引することにより、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とで挟持可能な位置に配する工程を有する請求項1又は2に記載の離形紙剥離方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の離形紙剥離方法を行うための装置であって、
前記吸引手段で吸引された前記離形紙を回収する回収部と、前記吸引手段と前記回収部とを接続する接続管とを有し、
前記回収部は、空気の通過を許容し、前記離形紙の通過を許容しない通気口を有する離形紙剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに貼着されたシート部材から離形紙を剥離するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体のサイドパネルには、補強部材(リンフォースメント)が取り付けられることが多い。この場合、サイドパネルとリンフォースメントとの間に、制振や補強を目的として、固形シーラ等のシート部材が設けられることがある。
【0003】
シート部材の粘着面には、乾燥や埃付着防止等の目的で離形紙(「離型紙」、「剥離紙」とも称される。)が貼り付けられている。このため、シート部材を車体に取り付ける際には、シート部材から離形紙を剥離する必要がある。このような離形紙の剥離作業は、作業者が手作業で行うことが多いが、この場合、以下のような問題が生じる。
・作業者が離形紙を剥がし忘れることがある。
・静電気で離形紙が手から離れにいため、作業性が悪い。
・シート部材の数の分だけ、作業者によりシート部材から離形紙を剥がす作業、及び、剥がした離形紙を捨てる作業が必要となるため、剥離作業に時間がかかる。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、シート部材から離形紙を自動で剥離する剥離装置が示されている。この離形装置では、保持装置(吸着パッド)によって作業台上のシート部材が後方から前方に向けて送られることで、シート部材に貼着された離形紙の先端(シート部材から前方にはみ出した部分)がローラ装置に差し込まれ、ローラ装置が回転することで離形紙がシート部材から剥離される。このような剥離装置を用いれば、上述したような手作業による剥離作業の問題が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-227358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リンフォースメントは、予めシート部材が固定された状態でボデーラインに搬入されることがある。この場合、シート部材の一方の面がリンフォースメントに固定され、シート部材の他方の面に離形紙が貼着されている。このようなリンフォースメントをサイドパネルに組み付ける際には、リンフォースメントに固定されたシート部材の離形紙を剥離する必要があるが、このとき、離形紙とシート部材が一緒にリンフォースメントから剥がれてしまう恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、ワークに固定されたシート部材から離形紙を自動で剥離する際に、離形紙とシート部材が一緒にワークから剥がれる事態を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、ワークに固定されたシート部材から離形紙を剥離するための方法であって、
前記離形紙のうち、前記シート部材からはみ出したはみ出し部を、第1挟持部材と第2挟持部材とで挟持する工程と、
前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とで前記離形紙のはみ出し部を挟持した状態で、前記ワークを前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材に対して相対移動させることにより、前記シート部材から前記離形紙を剥離する工程とを備え、
前記ワークを移動させながら、前記シート部材を前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材に押し付けることを特徴とする離形紙剥離方法を提供する。
【0009】
このように、本発明では、ワークを、第1挟持部材及び第2挟持部材に対して相対移動させる動作を利用して、この動作中にシート部材を第1挟持部材又は第2挟持部材に押し付ける。このとき、シート部材を挟持部材に押し付ける力の反力で、シート部材がワークに押し付けられるため、シート部材とワークとの貼着性が高まり、シート部材がワークから剥がれにくくなる。
【0010】
上記の離形紙剥離方法は、前記シート部材から前記離形紙を剥離する前に、前記ワークを移動させながら前記シート部材を前記離形紙を介して前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材に押し付ける工程と、前記シート部材から前記離形紙を剥離しながら、あるいは、前記シート部材から前記離形紙を剥離した後に、前記ワークを移動させながら前記シート部材を前記第1挟持部材又は前記第2挟持部材に押し付ける工程とを有することが好ましい。このように、シート部材から離形紙を剥離する前、及び、シート部材から離形紙を剥離する最中あるいは剥離した後に、シート部材を挟持部材に押し付けることにより、ワークとシート部材との貼着性がより一層高められる。
【0011】
上記のように、離形紙のはみ出し部を両挟持部材で挟持するためには、はみ出し部を両挟持部材で挟持可能な位置(例えば、両挟持部材の間)に配する必要がある。しかし、離形紙のはみ出し部を両挟持部材で自動で挟持することは容易ではない。
【0012】
そこで、上記の離形紙剥離方法は、前記離形紙のはみ出し部を、吸引手段で吸引することにより、前記第1挟持部材と前記第2挟持部材とで挟持可能な位置に配する工程を有することが好ましい。このように、離形紙のはみ出し部を、吸引手段で吸引することにより、両挟持部材で挟持可能な位置に容易に配することができるため、離形紙のはみ出し部を両挟持部材で確実に挟持することが可能となる。
【0013】
上記の離形紙剥離方法を行うための装置は、吸引手段で吸引された離形紙を回収する回収部と、吸引手段と回収部とを接続する接続管とを設ける場合、回収部は、空気の通過を許容し、離形紙の通過を許容しない通気口を有することが好ましい。これにより、吸引手段から排出された空気が、接続管を介して回収部の通気口から排出されるため、空気の流れが阻害されず、吸引手段による吸引力の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ワークとシート部材との貼着性が高められるため、離形紙とシート部材とが一緒にワークから剥がれる事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】離形紙剥離装置を模式的に示す側面図である。
図2】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、ワークを第1ローラ付近に配した状態を示す。
図3】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、ワークを上昇させながらシート部材を第1ローラに押し付ける様子を示す。
図4】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、離形紙のはみ出し部を吸引手段で吸引して湾曲させている様子を示す。
図5】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、離形紙のはみ出し部を第1ローラの上に載置した状態を示す。
図6】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、離形紙のはみ出し部を第1ローラ及び第2ローラで挟持した状態を示す。
図7】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、シート部材から離形紙を剥離している途中の様子を示す。
図8】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、離形紙の剥離が完了した状態を示す。
図9】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する手順を示す拡大側面図であり、剥離した離形紙を吸引手段で吸引すると共に、シート部材を第2センサで検知する様子を示す。
図10】上記離形紙剥離装置により離形紙を剥離する他の方法を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る離形紙剥離方法を行うための離形紙剥離装置である。本実施形態では、ワーク1(例えば、車体のサイドパネルに取り付けられるリンフォースメント)にシート部材2(例えば、固形シーラ)の一方の面が予め接着等により固定されており、このシート部材2の他方の面に設けられた粘着面から離形紙3を自動で剥離する場合を示す。
【0018】
離形紙剥離装置は、ワーク1を移動させるワーク移動手段としてのロボット10と、離形紙3を挟持する挟持手段20と、離形紙3を吸引する吸引手段31と、これらを制御する制御部とを主に備える。以下の説明では、水平方向でロボット10側(図中左側)を「手前側」と言い、その反対側(図中右側)を「奥側」と言う。
【0019】
ロボット10は、複数の関節を有するアーム11と、アーム11の先端に設けられ、ワーク1を保持する保持部12とを有する。制御部からの指令により、ロボット10のアーム11を動かすことで、ワーク1を平行移動させたり回転させたりすることができる。
【0020】
挟持手段20は、第1挟持部材としての第1ローラ21と、第2挟持部材としての第2ローラ22と、第2ローラ22を移動させる挟持駆動手段としてのシリンダ23とを有する。
【0021】
第1ローラ21は、所定位置に固定され、自身の軸心周りに自由回転可能とされる。第1ローラ21は、少なくとも外周面を、クッション性を有する材料(例えばウレタン)で形成することが好ましい。
【0022】
第2ローラ22は、第1ローラ21の軸心と平行な軸心を有し、自身の軸心周りに自由回転可能とされる。図示例では、第2ローラ21の外径が、第1ローラ22の外径よりも小さい。第2ローラ21の材料は特に限定されず、例えば金属や樹脂で形成される。第2ローラ22は、軸心と直交する方向に平行移動可能である。本実施形態では、第2ローラ22は、シリンダ23のピンの先端に取り付けられる。制御部からの指令によりシリンダ23のピンを伸縮することで、第2ローラ22を、第1ローラ21とで離形紙3を挟持する挟持位置(図1参照)と、第1ローラ21から離反した退避位置(図2参照)との間で移動可能とされる。本実施形態では、挟持位置に配した第2ローラ22の軸心が、第1ローラ21の軸心の真上に配される(図1参照)。また、第2ローラ22の退避位置は、挟持位置に対して奥側(図中右側)に向けて斜め上方向に設けられる(図2参照)。
【0023】
図1に示すように、吸引手段31は、吸い込み口31a及び排出口31bを有し、吸い込み口31aから吸い込んだ空気を排出口31bから排出する。制御部により、吸引手段31の吸引のON/OFFが制御される。吸引手段31は、第1ローラ21と第2ローラ22による挟持部P付近に配され、具体的には、挟持部Pの奥側(図中右側)に配される。吸引手段31の吸い込み口31aは挟持部P側(手前側)に向けて開口し、吸引手段31の排出口31bは奥側に向けて開口している。
【0024】
吸引手段31の排出口31bは、接続管32を介して、回収部としての回収箱33に接続される。回収箱33には、通気口33aが設けられる。通気口33aは、空気の通過は許容するが、離形紙3の通過は許容しない構成になっている。例えば、通気口33aには、離形紙3が通過不能な大きさの網目を有する網状部材が配される。回収箱33のうち、接続管32との接続部及び通気口33a以外は密閉されている。
【0025】
上記の離形紙剥離装置には、剥離した離形紙3の通過を検知する第1センサ41が設けられる。第1センサ41は制御部に接続される。本実施形態では、第1センサ41が接続管32に設けられ、接続管32内を通過する離形紙3を検知可能な位置に配される。本実施形態では、第1センサ41としてファイバーセンサを使用する。ファイバーセンサは、通常、このような物体の通過の検知に用いられることは無いが、本発明者らの検証の結果、ファイバーセンサを用いることで、離形紙3が通過したか否かの検知が可能となることが明らかになった。
【0026】
離形紙剥離装置には、第2センサ42が設けられる。第2センサ42は制御部に接続される。第2センサ42は、例えば挟持手段20付近に配され、図示例では、第1ローラ21の上方に配される。第2センサ42は、シート部材2の状態を確認することで、シート部材2から離形紙3が正常に剥離されたか否かを確認するためのものである。
【0027】
本実施形態では、ワーク1が金属(例えば鋼)で形成され、その表面は光沢がある。シート部材2は、樹脂、例えば熱硬化性樹脂、特に、ブチル系やエポキシ系の熱硬化性樹脂で形成され、その表面(少なくとも粘着面)は光をほとんど反射しない色(例えば黒色)を呈している。離形紙3は、任意の色(例えば、無色透明、白色など)の樹脂フィルムからなり、その表面は光を反射しやすい。この場合、第2センサ42として光電センサを使用すれば、シート部材2から離形紙3が正常に剥離されたか否かを検知できる。その原理を以下に説明する。
【0028】
光電センサは、対象物に光を照射し、所定以上の反射光を受光したときにONとなり、受光量が所定未満であればOFFとなる。例えば、ワーク1からシート部材2が剥がれてしまった場合、シート部材2が貼着されるべき場所に金属製のワーク1が露出しているため、この部分に第2センサ42から光を照射すると、第2センサ42がワーク1の表面で反射した反射光を検知してONとなる。また、シート部材2に離形紙3が貼着されている場合、この部分に第2センサ42から光を照射すると、第2センサ42が離形紙3の表面で反射した反射光を検知してONとなる。
【0029】
一方、ワーク1にシート部材2が正常に貼着され、且つ、離形紙3が剥がされていれば、第2センサ42で検知される領域に黒色のシート部材2が配される。この部分に第2センサ42から光を照射すると、シート部材2の表面は光をほとんど反射しないため、第2センサ42が反射光を受光せず、第2センサ42はOFFのままの状態となる。従って、ワーク1のうち、シート部材2が貼着されるべき場所を第2センサ42で検知したときに、第2センサ42がOFFであれば、離形紙3の剥離が正常に完了した(すなわち、シート部材2が正常に貼着され、且つ、離形紙3が剥がされた)と判定できる。一方、第2センサ42がONであれば、離形紙3が正常に剥離されていない(すなわち、シート部材2がワーク1から剥がれているか、あるいは、シート部材2に離形紙3が付いたままである)と判定できる。
【0030】
以下、本発明に係る離形紙剥離方法の一実施形態として、上記の離形紙剥離装置を用いて離形紙3を剥離する手順を説明する。
【0031】
まず、ロボット10(図1参照)によりワーク1を挟持手段20付近に移動させる(図2参照)。具体的には、ワーク1に貼着されたシート部材2を、第1ローラ21の斜め下(手前側下方)に配置する。このとき、シリンダ23のピンは退入され、第2ローラ22は第1ローラ21から離反した退避位置に配されている。こうしてワーク1が挟持手段20付近に配されたら、吸引手段31による吸引を開始する(点線矢印参照)。
【0032】
その後、図3に示すように、ワーク1を上昇させる。このとき、ワーク1に貼着されたシート部材2を、離形紙3を介して第1ローラ21に押し付けながら、ワーク1を上昇させる。これにより、シート部材2が、第1ローラ21からの反力でワーク1に押し付けられるため、シート部材2とワーク1との貼着性が高められる。このとき、第1ローラ21が回転自在であるため、シート部材2を押し付けて第1ローラ21を回転させながら、ワーク1をスムーズに上昇させることができる。
【0033】
その後、さらにワーク1を上昇させると、図4に示すように、シート部材2及び離形紙3が第1ローラ21よりも上方に配される。このとき、吸引手段31により吸い込み口31a周辺の空気が吸引されているため、離形紙3のうち、シート部材2から下方にはみ出したはみ出し部3aが湾曲し、はみ出し部3aの下端(自由端)が奥側に移動する。本実施形態では、ワーク1を上昇させると共に、少し奥側に移動させて、離形紙3を第1ローラ21の上方の領域に侵入させている。このように、離形紙3のはみ出し部3aを吸引手段31に近づけることで、はみ出し部3aが吸引手段31で吸い込まれやすくなる。図示例では、吸引手段31で吸引することで、離形紙3のはみ出し部3aの下端が、第1ローラ21の上端(第2ローラ22とで挟持部Pを形成する部分)よりも奥側に配される。
【0034】
上記のように、はみ出し部3aを吸引手段31で吸引して湾曲させながら、図5に示すようにワーク1を下降させて、離形紙3のはみ出し部3aを第1ローラ21の上に載置し、ワーク1を停止させる。本実施形態では、第1ローラ21との干渉を回避するために、ワーク1を若干後退させながら下降させている。図示例では、離形紙3のはみ出し部3aが、第1ローラ21の上端を覆うように配される。この状態で、シリンダ23のピンを伸長することで、第1ローラ21と第2ローラ22とで離形紙3のはみ出し部3aが挟持され、挟持部Pが形成される(図6参照)。
【0035】
本実施形態では、第1ローラ21の外周面がクッション性を有する材料(例えばウレタン)で形成されているため、第2ローラ21で押圧したときに、第1ローラ21の外周面が若干変形する。これにより、両ローラ21,22と離形紙3との接触面積が増えるため、両ローラ21,22により離形紙3のはみ出し部3aを強固に保持することができる。
【0036】
上記のように離形紙3を両ローラ21,22で挟持するためには、ワーク1及びシート部材2を、挟持位置の第2ローラ22(図6参照)と干渉しない位置に配する必要がある。本実施形態では、第2ローラ22が第1ローラ21よりも小径であるため、シート部材2を、第2ローラ22が大径である場合よりも、両ローラ21,22の挟持部Pに近接させることができる。これにより、離形紙3のはみ出し部3aが短い場合でも、両ローラ21,22で挟持しやすくなる。
【0037】
上記のように離形紙3のはみ出し部3aを両ローラ21,22で挟持した状態で、ワーク1を、挟持部Pから離反するように移動させる(図7参照)。本実施形態では、シート部材2を、挟持部Pよりも下方まで下降させる。これにより、シート部材2から離形紙3が剥離され始める。このとき、図7に示すように、シート部材2から離形紙3を剥離しながら、ワーク1に貼着されたシート部材2を、離形紙3を介して第1ローラ21に押し付ける。これにより、シート部材2が、第1ローラ21からの反力でワーク1に押し付けられるため、シート部材2とワーク1との貼着性がさらに高められる。その後、ワーク1をさらに下降させることにより、シート部材2から離形紙3が完全に剥離される(図8参照)。
【0038】
その後、図9に示すように、シリンダ23のピンを退入させて第2ローラ22を第1ローラ21から離反させることにより、両ローラ21,22による離形紙3の挟持が解除される。こうしてフリーな状態となった離形紙3が吸引手段31で吸引され、接続管32を介して回収箱33に収容される(図1参照)。このとき、接続管32に設けられた第1センサ41で離形紙3の通過を検知することで、離形紙3がシート部材2から剥離されたことを確認できる。もし、第2ローラ22を退避位置に配した後、所定時間経過しても第1センサ41により離形紙3の通過が検知されなければ、制御部からの指令により警報(音や画面表示等)が発せられる。また、吸引手段31からの排気が回収箱33の通気口33aを介して外部に排出されるため、吸引手段31の吸引力の低下を回避できる。
【0039】
そして、ロボット10でワークを移動させて、離形紙3が剥離されたシート部材2を第2センサ42による検知位置に配置する(図9参照)。そして、第2センサ42の検知結果により、離形紙3の剥離が正常に完了したか否かを確認することができる。すなわち、第2センサ42から制御部にON信号が伝達されなければ(すなわち、第2センサ42がOFFの状態のままであれば)、離形紙3の剥離が正常に完了した(すなわち、シート部材2が正常に貼着され、且つ、離形紙3が剥がされた)と判定され、当該ワーク1が次工程(サイドパネルへの組付工程)へ搬送される。一方、第2センサ42から制御部にON信号が伝達されたら、離形紙3の剥離に異常があった(すなわち、シート部材2がワーク1から剥がれているか、あるいは、シート部材2に離形紙3が付いたままである)と判定され、警報(音や画面表示等)が発せられる。
【0040】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については、重複説明を省略する。
【0041】
上記の実施形態では、図7に示すように、シート部材2から離形紙3を剥離しながら、シート部材2を第1ローラ21に押し付けた場合を示したが、これに限られない。例えば、図10に矢印で示すように、ワーク1を手前側に向けて斜め下方向に下降させることで、シート部材2を第1ローラ21に押し付けることなくシート部材2から離形紙3を剥離してもよい。シート部材2から離形紙3を剥離した後、ワーク1を移動させてシート部材2を第1ローラ21に押し付けてもよいし、シート部材2を第1ローラ21に押し付ける工程を経ることなく、第2センサ42による検査工程に移行してもよい。
【0042】
また、離形紙3を剥離する前にシート部材2を第1ローラ21に押し付ける工程(図3参照)を省略してもよい。この場合、離形紙3を剥離しながらシート部材2を第1ローラ21に押し付ける工程(図7参照)、あるいは、離形紙3を剥離した後にシート部材2を第1ローラ21に押し付ける工程のうちの少なくとも一方を行うことで、ワーク1とシート部材2との貼着性が高められる。
【0043】
また、ワーク1の複数箇所にシート部材2が設けられている場合、各シート部材2に対応した位置毎に挟持手段20及び吸引手段31を配置してもよい。これにより、複数箇所のシート部材2の離形紙3を同時に剥離することができるため、作業効率が向上する。この場合、複数の吸引手段31に接続された接続管32を一本に合流させて、一個の回収箱33に接続することが好ましい。これにより、離形紙剥離装置の構造を簡素化できると共に、全てのシート部材2から剥離した離形紙3を一個の回収箱33に集めることができるため、離形紙3を廃棄する作業の効率が上がる。
【0044】
また、吸引手段31以外の方法により、離形紙3のはみ出し部3aを両ローラ21,22で挟持可能な位置に配してもよい。例えば、ロボット10でワーク1を移動させるだけで、離形紙3のはみ出し部3aを第1ローラ21の上に載置できる場合、吸引手段31を省略することができるため、低コスト化が図られる。
【0045】
上記の実施形態では、第1ローラ21及び第2ローラ22が自身の軸心周りに回転自在である場合を示したが、特に必要がなければ、これらの一方又は双方を回転不能としてもよい。また、第1挟持部材及び第2挟持部材は、ローラに限らず、例えば互いに平面状の挟持面を有するクランプ部材であってもよい。
【0046】
上記の実施形態では、両ローラ21,22で離形紙3のはみ出し部3aを挟持した状態で、両ローラ21,22を固定して、ワーク1及びシート部材2を移動させることで、シート部材2から離形紙3を剥離する場合を示したが、これに限られない。例えば、両ローラ21,22で離形紙3のはみ出し部3aを挟持した状態で、ワーク1及びシート部材2を固定して、両ローラ21,22を移動させることで、シート部材2から離形紙3を剥離してもよい。あるいは、両ローラ21,22で離形紙3のはみ出し部3aを挟持した状態で、ワーク1及びシート部材2、及び、両ローラ21,22の双方を移動させることで、シート部材2から離形紙3を剥離してもよい。
【0047】
また、上記の実施形態では、ワーク1を移動させながら、シート部材2を第1挟持部材(第1ローラ21)に押し付けた場合を示したが、これに限らず、シート部材2を第2挟持部材(第2ローラ21)に押し付けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ワーク
2 シート部材
3 離形紙
3a はみ出し部
10 ロボット(ワーク移動手段)
11 アーム
12 保持部
20 挟持手段
21 第1ローラ(第1挟持部材)
22 第2ローラ(第2挟持部材)
23 シリンダ(挟持駆動手段)
31 吸引手段
31a 吸い込み口
31b 排出口
32 接続管
33 回収箱(回収部)
33a 通気口
41 第1センサ
42 第2センサ
図1
図2
図3
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図10