(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176300
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】原子発振器
(51)【国際特許分類】
H03L 7/26 20060101AFI20231206BHJP
H01S 1/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H03L7/26
H01S1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088511
(22)【出願日】2022-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】藤咲 貴大
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太
(72)【発明者】
【氏名】各務 惣太
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA01
5J106CC07
5J106EE01
5J106GG02
5J106JJ01
5J106KK05
5J106LL10
(57)【要約】
【課題】原子発振器においてライトシフトの発生を抑制することが困難であること。
【解決手段】本発明の原子発振器100は、2つの励起光を生成する光発生器101と、2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセル102と、アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部103と、検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいてアルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する制御部104と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する制御部と、
を備えた原子発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、2つの励起光の強度比を変化させて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射したときの共鳴周波数を測定し、測定結果に基づいて2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
【請求項3】
請求項2に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、2つの励起光の強度比を変化させると共に、励起光の強度の和を変化させて、前記アルカリ金属原子ガスセルに照射したときの共鳴周波数を測定し、測定結果に基づいて2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
【請求項4】
請求項3に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、2つの励起光の強度比の値を変化させる毎に、励起光の強度の和を変化させて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射したときの共鳴周波数を測定し、励起光の強度の和の変化に対する共鳴周波数の変化に基づいて、2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
【請求項5】
請求項4に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、励起光の強度の和の変化に対する共鳴周波数の変化が0に近づくよう、2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
【請求項6】
請求項4に記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、1つの励起光に対して所定の周波数変調パワーによって周波数変調を行うことで2つの周波数成分からなる励起光を生成し、
前記制御部は、前記周波数変調パワーを変化させることで2つの励起光の強度比を変化させる、
原子発振器。
【請求項7】
請求項4に記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、駆動電流に対して所定の周波数変調パワーによって周波数変調を行うことで2つの周波数からなる励起光を生成し、
前記制御部は、前記周波数変調パワーを変化させることで2つの励起光の強度比を変化させる、
原子発振器。
【請求項8】
請求項4に記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、それぞれ異なる周波数成分の励起光を生成する2つの光源を有し、
前記制御部は、2つの前記光源からそれぞれ生成される励起光の強度比を変化させる、
原子発振器。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、2つの励起光のうち1つの励起光の周波数を、共鳴周波数近辺に設定する、
原子発振器。
【請求項10】
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
を備えた原子発振器の制御方法であって、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子発振器、制御方法、制御装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子発振器は、原子の固有周波数を基準にして正確な時間を測定する装置である。小型の原子時計では、アルカリ金属原子ガスに2つの周波数の励起光を照射した際に生じる量子干渉効果であるCPT(Coherent Population Trapping)を原子発振器の発振原理として利用して、原子の固有周波数を測定することが行われている。CPTでは、2つの励起光の周波数の差がアルカリ金属の基底準位間の遷移周波数に一致したときに、励起光の吸収が起こらずに透過光量が増加する。CPTを動作原理とする原子発振器では、励起光の周波数の差を掃引し、透過光量が最大となる周波数の差を原子の固有周波数としている。この原子の固有周波数を長期間にわたって安定して取得できるかどうか(長期安定度)が、原子発振器の性能指標の一つとなる。
【0003】
CPTを利用した原子の固有周波数測定において、上述した長期安定度を低下させる主要因はライトシフトの経時変化である。ライトシフトとは、励起光と原子の相互作用によって原子の固有周波数がシフトする現象である。例えば、ライトシフトは、励起光の強度の経時変化によって発生することが知られている。
【0004】
上述したライトシフトの問題に対して、特許文献1では、全励起光の強度変化を補正することでライトシフトを抑制することが記載されている。具体的に、特許文献1では、2種類の光源を用いることで全励起光強度を一定の値に補正し、これによりライトシフトの発生を抑制することをしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、全励起光の強度を完全に一定に保つことは困難であり、依然としてライトシフトの発生を抑制することが困難である。
【0007】
このため、本開示の目的は、上述した課題である、ライトシフトの発生を抑制することが困難である、ことを解決することができる原子発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態である原子発振器は、
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する制御部と、
を備えた、
という構成をとる。
【0009】
また、本開示の一形態である制御方法は、
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
を備えた原子発振器の制御方法であって、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する、
という構成をとる。
【0010】
また、本開示の一形態である制御装置は、
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
を備えた原子発振器を制御する制御装置であって、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガス共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する、
という構成をとる。
【0011】
また、本開示の一形態であるプログラムは、
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
を備えた原子発振器を制御する制御装置に、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する、
処理を実行させる、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0012】
本開示は、以上のように構成されることにより、ライトシフトの発生を抑制することができる原子発振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第1の実施形態における原子発振器の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に開示した原子発振器による処理の様子を示す図である。
【
図3】
図1に開示した原子発振器による処理の様子を示す図である。
【
図4】
図1に開示した原子発振器による処理の様子を示す図である。
【
図5】
図1に開示した原子発振器による処理の様子を示す図である。
【
図6】
図1に開示した原子発振器による処理の様子を示す図である。
【
図7】
図1に開示した原子発振器の処理動作を示すフローチャートである。による処理の様子を示す図である。
【
図8】本開示の第2の実施形態における原子発振器の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図8に開示した原子発振器の処理動作を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第3の実施形態における原子発振器の構成を示すブロック図である。
【
図11】
図10に開示した原子発振器の処理動作を示すフローチャートである。
【
図12】本開示の実施形態4における原子発振器の構成を示すブロック図である。
【
図13】本開示の実施形態4における原子発振器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本開示の第1の実施形態を、
図1乃至
図7を参照して説明する。
図1乃至
図6は、本実施形態における原子発振器の構成を説明するための図であり、
図7は、原子発振器の動作を説明するための図である。
【0015】
[構成]
図1に示すように、本実施形態における原子発振器は、主に、光発生器1と、セシウム金属原子ガスセル2と、光検出器3と、制御器4と、分光器5と、を備える。そして、光発生器1は、レーザー11と、光周波数変調器12と、光減衰器13と、を備える。また、制御器4は、レーザー制御部41と、シグナルジェネレータ制御部42と、光減衰器制御部43と、計算部44と、を備える。なお、制御器4は、演算装置及び記憶装置を備えた情報処理装置(制御装置)で構成されており、制御器4が備える各部41~44は、演算装置にプログラムが実行されることで実現される。
【0016】
光発生器1は、単一波長の励起光を生成する共に、当該単一波長の励起光から周波数変調を行うことで2つの励起光を生成して、セシウム金属原子ガスセル2に照射するものである。具体的に、まず、光発生器1のレーザー11が、制御器4のレーザー制御部41にて指定された設定値を元に、例えば894.5812nmの単一波長の励起光(第一励起光)を生成する。この単一波長の励起光は光周波数変調器12に送られる。
【0017】
光周波数変調器12は、単一波長の励起光を周波数変調することで、セシウム金属原子ガスセルに照射される2つの励起光(第二励起光)を生成する。具体的に、制御器4のシグナルジェネレータ制御部42が、装備されたシグナルジェネレータ42aの設定値である周波数変調パワーと変調周波数との設定を行う。そして、シグナルジェネレータ42aが、設定された周波数変調パワーと変調周波数fmodとで光周波数変調器12を制御することで、
図2に示すような主バンド(f
0)及びサイドバンド(f
0±fmod,f
0±2fmod,f
0±3fmod,・・・)からなる複数の周波数成分を含む励起光を生成し、特に、本実施形態では、0次光と-1次光という2つの周波数成分を主な共鳴生成の光源とする励起光を生成する。但し、光周波数変調器12で生成して、主な共鳴生成の光源として使用する2つの励起光は、0次光と-1次光であることに限定されず、0次光と+1次光であってもよく、また、他のバンドの励起光を使用してもよい。
【0018】
本実施形態では、シグナルジェネレータ制御部42は、周波数変調パワーと変調周波数とを複数の値に変化させて設定することで、変化させた設定値毎における励起光を生成する。つまり、原子発振器は、周波数変調パワーと変調周波数との設定値を変化させる毎に、生成した2つの励起光を、セシウム金属原子ガスセル2に照射することとなる。例えば、変調周波数については、セシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.19GHz付近で1000個の値に変化させて掃引するよう設定する。また、周波数変調パワーについては、
図3に示すように、当該周波数変調パワーの値を変調指数mに変換した場合に、当該変調指数mを0.88~2.5の範囲で10個の値をとるように変化させて設定する。
【0019】
ここで、
図4に、周波数変調パワーの値を変換した変調指数mと、励起光の強度と、の関係を示す。この図に示すように、変調指数mを変化させると、2つの励起光の強度が変化する。特に、変調指数mの値を増加、つまり、周波数変調パワーの値を増加させると、メインバンドである0次光の強度は低下し、サイドバンドである-1次光などの強度は増加することとなる。このため、変調指数つまり周波数変調パワーの値を変化させることで、0次光と-1次光とによる2つの励起光の強度比を変化させることができる。このように、シグナルジェネレータ制御部42は、変調指数を0.88~2.5の範囲で10個の値をとるように変化させることで、2つの励起光の強度比が10個の値をとるよう設定する。そして、上述したように周波数変調により生成された2つの励起光は、光減衰器13に送られる。
【0020】
光減衰器13は、制御器4の光減衰器制御部43で設定された強度に、照射する励起光の強度を減衰するよう制御する。本実施形態では、光減衰器制御部43は、主な共鳴生成の光源とする2つの周波数成分を含む全周波数成分の励起光の強度の和を、複数の値に変化せて設定することで、変化させた設定値毎における励起光を生成する。例えば、光減衰器制御部43は、励起光の強度の和を、2.0~11.0μW/mm2の範囲で8個に変化せて設定する。そして、強度が設定された励起光は、λ/2板といった偏光板15によって直線偏光に変換された後に、セシウム金属原子ガスセル2に照射される。併せて、励起光は、分光器5にも入射され、かかる分光器5にて全励起光の強度の和が検出され、制御器4に通知される。なお、偏光板15は、円偏光に変換する偏光板であってもよい。
【0021】
このように、光発生器1は、制御器4からの指令に応じて、変調指数つまり2つの励起光の強度比と、励起光の強度の和と、を変化させつつ、変調周波数を共鳴周波数付近である9.19GHz付近で変化させて掃引しながら、2つの励起光を生成してセシウム金属原子ガスセル2に照射することとなる。
【0022】
具体的に、光発生器1は、まず、変調指数つまり強度比を第1の値に設定し、かつ、励起光強度を第1の値に設定して、変調周波数を共鳴周波数付近で掃引することで、後述するように、設定した変調指数及び励起光強度に対する共鳴周波数を得る。その後、光発生器1は、変調指数は第1の値のままとし、全周波数成分の励起光の強度の和である全励起光強度の値を例えば合計で8個の値に変更設定する毎に、変調周波数を共鳴周波数付近で掃引することを繰り返して、変調指数の第1の値における、全励起光強度の8個の設定値に対する共鳴周波数を得る。さらに、光発生器1は、変調指数を第2の値に変更設定して、上述同様に全励起光強度を8個の値に変更設定する毎に、変調周波数を共鳴周波数付近で掃引することを繰り返し、変調指数の第2の値における、励起光強度の8個の設定値に対する共鳴周波数を得る。そして、光発生器1は、変調指数を例えば合計で10個の値に変更設定する毎に、上述同様の照射を繰り返すことで、変調指数の10個の値それぞれにおける、励起光強度の8個の設定値に対する共鳴周波数を得ることとなる。なお、上述したように得られた共鳴周波数に対する処理については後述する。
【0023】
セシウム金属原子ガスセル2は、セシウム原子、ルビジウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などのアルカリ金属原子が封入されている。実施形態1ではガスセル内にセシウム原子が封入されている。セシウム金属原子ガスセル2は、磁場印加空間中に設置されており、上述したように光発生器1からの励起光が入射され、その一部は透過される。
【0024】
光検出器3(検出部)は、セシウム金属原子ガスセル2を透過した透過光を検出し、当該透過光の光量である透過光量を測定する。このとき、上述したように、変調指数つまり強度比、全励起光強度、変調周波数、の設定値が変更されながら励起光が照射されるため、変更されたそれぞれの設定値と対応づけて、計測された透過光量は制御器4に渡される。
【0025】
制御器4が備える計算部44は、上述したように計測された透過光量から、ライトシフトの発生を抑制することができるような変調指数つまり強度比を算出する機能を有する。具体的に、計算部44は、まず、変調指数の値毎に、全励起光強度の8個の設定値に対する共鳴周波数の値をプロットし、かかるプロットを直線フィッティングする。これにより、変調指数の値毎に、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きを得ることができる。つまり、変調指数と、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きと、の対を、10対得ることができる。なお、得られた傾きは、各変調指数における、全励起光強度に対する周波数シフトであると言える。そして、計算部44は、
図5に示すように、変調指数に対する傾きである周波数シフトをプロットし、多項式でフィッティングしたグラフを生成する。さらに、計算部44は、グラフ上において周波数シフトが0となる変調指数を算出して、後に設定する変調指数として決定する。
図5の例では、変調指数を1.56±0.03と算出している。なお、計算部44は、必ずしも上述した方法で変調指数を算出することに限定されない。例えば、計算部44は、変調指数に対する傾きである周波数シフトをプロットした図に基づいて、周波数シフトの値が0に近づくよう変調指数の値を算出して決定してもよい。
【0026】
ここで、
図6に、変調指数つまり2つの励起光の強度比の値を変化させる毎に、全励起光強度を変化させて周波数シフトを計測したときのグラフを示す。この図における各直線のグラフは、それぞれ変調指数毎つまり強度比毎における全励起光強度に対する周波数シフトの関係を表している。すると、このグラフから、全励起光強度が変化した場合であっても、周波数シフトが生じない変調指数つまり強度比が存在することがわかる。例えば、
図6の例では、強度比1.3の場合に、全励起光強度が変化しても周波数シフトが生じないことがわかる。このため、計算部44は、上述したように、
図5のグラフにおいて周波数シフトが0となる変調指数を算出している。
【0027】
計算部44は、上述したように算出して決定した変調指数をシグナルジェネレータ制御部42に通知する。シグナルジェネレータ制御部42は、決定された変調指数に対応する周波数変調パワーの値を、シグナルジェネレータ42aの設定値とする。これにより、シグナルジェネレータ42aが、設定された周波数変調パワーで光周波数変調器12を制御することで、周波数シフトの発生を抑制した励起光を生成することができる。
【0028】
[動作]
次に、上述した原子発振器の動作、特に、周波数シフトの発生を抑制できるような変調指数を算出するときの動作を、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
まず、制御器4が、以下のように各制御部41,42,43にて光発生器1の設定値を設定して、励起光を生成する(ステップS1)。具体的に、レーザー11は、例えば894.5812nmの単一波長の励起光を生成する。そして、光周波数変調器12は、単一波長の励起光を周波数変調することで、セシウム金属原子ガスセルに照射される2つの励起光を生成する。このとき、光周波数変調器12は、周波数変調パワーに対応する変調指数を、例えば0.88~2.5の範囲で10個の値をとるように変化させる。また、光周波数変調器12は、変調周波数を、例えばセシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.19GHz付近で1000個の値に変化させる。さらに、光減衰器制御部43は、全励起光強度を、例えば2.0~11.0μW/mm2の範囲で8個の値に変化させる。このようにして、制御器4は、変調指数及び励起光強度の値毎に、変調周波数を遷移周波数付近で掃引するよう変化させる。
【0030】
そして、光発生器1は、変調指数つまり2つの励起光の強度比と、全励起光強度と、を変化させつつ、変調周波数を共鳴周波数付近である9.19GHz付近で変化させて掃引しながら、2つの励起光を生成してセシウム金属原子ガスセル2に照射し、光検出器3にて、セシウム金属原子ガスセル2を透過した透過光を検出する(ステップS2)。これにより、変調指数、全励起光強度、変調周波数、の変更されたそれぞれの設定値と対応づけて、計測された透過光量が制御器4に渡される。
【0031】
続いて、制御器4は、計測された透過光量から、設定した変調指数及び全励起光強度に対する共鳴周波数を算出し、かかる共鳴周波数と、設定された変調周波数及び全励起光強度の値を関連付けて記憶しておく(ステップS3)。このとき、全ての変調指数及び全励起光強度の設定値で透過光量の計測が完了するまで、上記処理を繰り返す(ステップS4でNo、ステップS7)。
【0032】
制御器4は、全ての変調指数及び全励起光強度の設定値で透過光量の計測が完了すると(ステップS4でYes)、以下のようにして、ライトシフトの発生を抑制することができるような変調指数つまり強度比を算出して、後の設定値として決定する。まず、制御器4は、変調指数の値毎に、全励起光強度の8個の設定値に対する共鳴周波数の値をプロットし、かかるプロットを直線フィッティングする。そして、制御器4は、フィッティングした直線から、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きを得る(ステップS5)。これにより、制御器4は、変調指数と、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きと、の対を、10対得る。続いて、制御器4は、
図5に示すように、変調指数に対する傾きである周波数シフトをプロットし、多項式でフィッティングしたグラフを生成し、かかるグラフ上において周波数シフトが0となる変調指数を算出する(ステップS6)。
図5の例では、変調指数を1.56±0.03と算出して、後の設定値として決定することができる。
【0033】
その後、制御器4は、上述したように算出して決定した変調指数に対応する周波数変調パワーを、シグナルジェネレータ42aの設定値とすることで、周波数シフトの発生を抑制した励起光を生成することができる。
【0034】
<実施形態2>
次に、本開示の第2の実施形態を、
図8乃至
図9を参照して説明する。
図8は、実施形態2における原子発振器の構成を示すブロック図であり、
図9は、原子発振器の動作を示すフローチャートである。
【0035】
[構成]
本実施形態における原子発振器は、上述した実施形態1における原子発振器とほぼ同様の構成を有しているが、2つの励起光を生成する構成が異なる。以下、本実施形態で異なる構成については主に説明する。
【0036】
図8に示すように、原子発振器は、光発生器1のレーザー11に駆動電流を入力する電流変調器45aを備えている。電流変調器45aは、駆動電流の周波数変調パワーと変調周波数の設定が可能である。そして、原子発振器の制御器4は、電流変調器45aの設定値を設定する電流変調器制御部45を備えている。このとき、電流変調器制御部45は、レーザー11の駆動電流の周波数変調パワーの設定値を変化させることで、上述同様に、レーザー11からは
図2に示すような主バンド(f
0)及びサイドバンド(f
0±fmod,f
0±2fmod,f
0±3fmod,・・・)からなる複数の周波数成分を含む励起光を生成し、特に、本実施形態では、0次光と-1次光という2つの周波数成分を主な共鳴生成の光源とする励起光を生成する。ここで、上述同様に、周波数変調パワーは変調指数に変換可能であり、変調指数を変化させると励起光の強度が変化するため、電流変調器制御部45は、レーザー11の駆動電流の周波数変調パワーの設定値を変化させることで、生成する2つの励起光の強度比を変化させることができる。このように、電流変調器制御部45は、変調指数を0.88~2.5の範囲で10個の値をとるように変化させることで、2つの励起光の強度比が10個の値をとるよう設定される。そして、上述したように周波数変調により生成された2つの励起光は、光減衰器13に送られる。
【0037】
[動作]
次に、上述した原子発振器の動作、特に、周波数シフトの発生を抑制できるような変調指数を算出するときの動作を、
図9のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
まず、制御器4が、以下のように各制御部41,45,43にて光発生器1の設定値を設定して、励起光を生成する(ステップS1’)。具体的に、まず、レーザー制御部41にて、駆動電流に変調を加えない場合に例えば894.5812nmの単一波長の励起光をレーザー11が生成するよう設定する。そして、電流変調器制御部45にて、レーザー11の駆動電流の周波数変調パワーを設定して励起光を周波数変調することで、セシウム金属原子ガスセルに照射される2つの励起光を生成する。このとき、電流変調器制御部45は、周波数変調パワーの値に対応する変調指数の値を、例えば0.88~2.5の範囲で10個の値をとるように変化させる。また、電流変調器制御部45は、変調周波数を、例えばセシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.19GHz付近で1000個の値に変化させる。さらに、光減衰器制御部43は、全周波数成分の励起光の強度の和である全励起光強度を、例えば2.0~11.0μW/mm2の範囲で8個に変化させる。このように、制御器4は、変調指数及び全励起光強度の値毎に、変調周波数を遷移周波数付近で掃引するよう変化させる。
【0039】
そして、光発生器1は、上述したように変調指数つまり2つの励起光の強度比と、全励起光強度と、を変化させつつ、変調周波数を共鳴周波数付近である9.19GHz付近で変化させて掃引しながら、2つの励起光を生成してセシウム金属原子ガスセル2に照射し、光検出器3にてセシウム金属原子ガスセル2を透過した透過光を検出する(ステップS2)。これにより、変調指数、全励起光強度、変調周波数、の変更されたそれぞれの設定値と対応づけて、計測された透過光量が制御器4に渡される。
【0040】
続いて、制御器4は、計測された透過光量から、設定した変調指数及び全励起光強度に対する共鳴周波数を算出し、かかる共鳴周波数と、設定された変調周波数及び全励起光強度の値を関連付けて記憶しておく(ステップS3)。このとき、全ての変調指数及び全励起光強度の設定値で透過光量の計測が完了するまで、上記処理を繰り返す(ステップS4でNo、ステップS7)。
【0041】
制御器4は、全ての変調指数及び全励起光強度の設定値で透過光量の計測が完了すると(ステップS4でYes)、以下のようにして、ライトシフトの発生を抑制することができるような変調指数つまり強度比を算出する。まず、制御器4は、変調指数の値毎に、全励起光強度の8個の設定値に対する共鳴周波数の値をプロットし、かかるプロットを直線フィッティングする。そして、制御器4は、フィッティングした直線から、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きを得る(ステップS5)。これにより、制御器4は、変調指数と、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きと、の対を、10対得る。続いて、制御器4は、
図5に示すように、変調指数に対する傾きである周波数シフトをプロットし、多項式でフィッティングしたグラフを生成し、かかるグラフ上において周波数シフトが0となる変調指数を算出する(ステップS6)。
【0042】
制御器4の電流変調器制御部45は、上述したように算出した変調指数に対応する周波数変調パワーを、電流変調器45aの設定値とすることで、周波数シフトの発生を抑制した励起光を生成することができる。
【0043】
<実施形態3>
次に、本開示の第3の実施形態を、
図10乃至
図11を参照して説明する。
図10は、実施形態3における原子発振器の構成を示すブロック図であり、
図11は、原子発振器の動作を示すフローチャートである。
【0044】
[構成]
本実施形態における原子発振器は、上述した実施形態1における原子発振器とほぼ同様の構成を有しているが、2つの励起光を生成する構成が異なる。以下、本実施形態で異なる構成については主に説明する。
【0045】
図10に示すように、原子発振器は、それぞれ異なる周波数成分の励起光を生成する2つの光源となる第1レーザー11a及び第2レーザー11bを備えている。そして、第1レーザー11a及び第2レーザー11bにそれぞれ対応して、第1光減衰器13a及び第2光減衰器13b、第1分光器5a及び第2分光器5b、を備えている。また、第1レーザー11a及び第2レーザー11bそれぞれから発生される励起光を混合するミキサ14を備えている。さらに、制御器4は、第1レーザー11a及び第2レーザー11bにそれぞれ対応して、第1レーザー制御部41a及び第2レーザー制御部41bを備えており、第1光減衰器13a及び第2光減衰器13bにそれぞれ対応して、第1光減衰器制御部43a及び第2光減衰器制御部43bを備えている。
【0046】
そして、第1レーザー11a及び第2レーザー11bは、それぞれ第1レーザー制御部41a及び第2レーザー制御部41bにより、例えば894.5812nmの単一波長の励起光を生成する。このとき、第1レーザー制御部41a及び第2レーザー制御部41bは、第1レーザー11a及び第2レーザー11bそれぞれからの励起光の周波数差を、セシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.19GHz付近で1000個の値に変化させて設定する。例えば、第1レーザー制御部41a及び第2レーザー制御部41bは、第1レーザー11a及び第2レーザー11bのいずれか一方からの励起光の周波数を、セシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.19GHz近辺に設定し、他方の励起光の周波数を、一方との周波数差がセシウム原子の基底準位間の遷移周波数に相当する9.19GHz付近の値となるよう変化させて設定する。
【0047】
また、第1光減衰器制御部43a及び第2光減衰器制御部43bは、第1分光器5a及び第2分光器5bの計測値を参照しながら、第1光減衰器13a及び第2光減衰器13bにて第1レーザー11a及び第2レーザー11bそれぞれからの励起光の強度比を変化させて設定する。例えば、強度比が0.5~3.0の範囲で10個の値をとるように設定される。さらに、第1光減衰器制御部43a及び第2光減衰器制御部43bは、第1光減衰器13a及び第2光減衰器13bにて第1レーザー11a及び第2レーザー11bそれぞれからの励起光の強度の和を、複数の値に変化せて設定することで、変化させた設定値毎における励起光を生成する。例えば、2つの励起光の強度の和である全励起光強度を2.0~11.0μW/mm2の範囲で8個に変化せて設定する。
【0048】
[動作]
次に、上述した原子発振器の動作、特に、周波数シフトの発生を抑制できるような変調指数を算出するときの動作を、
図11のフローチャートを参照して説明する。
【0049】
まず、制御器4が、以下のように各制御部41a,41b,43a,43bにて光発生器1の設定値を設定して、励起光を生成する(ステップS1”)。具体的に、まず、第1分光器5aの計測値を参照しながら、第1レーザー制御部41aにて、第1レーザー11aが例えば894.5812nmの単一波長の励起光を生成するよう設定する。そして、第2レーザー制御部41bにて、第1レーザー11aと第2レーザー11bとの励起光の周波数差が9.19GHz付近で1000個の値に変化される励起光を第2レーザー11bが生成するよう設定する。また、第1光減衰器制御部43a及び第2光減衰器制御部43bにて、第1分光器5a及び第2分光器5bの計測値を参照しながら、第1光減衰器13a及び第2光減衰器13bにて第1レーザー11a及び第2レーザー11bそれぞれからの励起光の強度比が、例えば0.5~3.0の範囲で10個の値をとるように設定する。さらに、第1光減衰器制御部43a及び第2光減衰器制御部43bは、第1光減衰器13a及び第2光減衰器13bにて第1レーザー11a及び第2レーザー11bそれぞれからの励起光の強度の和である全励起光強度を、2.0~11.0μW/mm2の範囲で8個に変化させて設定する。
【0050】
そして、光発生器1は、上述したように2つの励起光の強度比と、全励起光強度と、を変化させつつ、周波数差を共鳴周波数付近である9.19GHz付近で変化させて掃引しながら、2つの励起光を生成してセシウム金属原子ガスセル2に照射し、光検出器3にて、セシウム金属原子ガスセル2を透過した透過光を検出する(ステップS2)。これにより、強度比、全励起光強度、変調周波数、の変更されたそれぞれの設定値と対応づけて、計測された透過光量が制御器4に渡される。
【0051】
続いて、制御器4は、計測された透過光量から、設定した強度比及び全励起光強度に対する共鳴周波数を算出し、かかる共鳴周波数と、設定された強度比及び全励起光強度の値を関連付けて記憶しておく(ステップS3’)。このとき、全ての強度比及び全励起光強度の設定値で透過光量の計測が完了するまで、上記処理を繰り返す(ステップS4でNo、ステップS7)。
【0052】
制御器4は、全ての強度比及び全励起光強度の設定値で透過光量の計測が完了すると(ステップS4でYes)、以下のようにして、ライトシフトの発生を抑制することができるような強度比を算出する。まず、制御器4は、強度比の値毎に、全励起光強度の8個の設定値に対する共鳴周波数の値をプロットし、かかるプロットを直線フィッティングする。そして、制御器4は、フィッティングした直線から、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きを得る(ステップS5’)。これにより、制御器4は、強度比と、全励起光強度の変化に対する共鳴周波数の傾きと、の対を、10対得る。続いて、制御器4は、強度比に対する傾きである周波数シフトをプロットし、多項式でフィッティングしたグラフを生成し、かかるグラフ上において周波数シフトが0となる強度比を算出する(ステップS6’)。
【0053】
制御器4は、上述したように算出した強度比を、第1光減衰器制御部43a及び第2光減衰器制御部43bにて第1光減衰器13a及び第2光減衰器13bの設定値とすることで、周波数シフトの発生を抑制した励起光を生成することができる。
【0054】
<実施形態4>
次に、本開示の第4の実施形態を、
図12乃至
図13を参照して説明する。
図12は、実施形態4における原子発振器の構成を示すブロック図であり、
図13は、原子発振器の動作を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、上述した実施形態で説明した原子発振器及び制御方法の構成の概略を示している。
【0055】
図12に示すように、本実施形態における原子発振器100は、2つの励起光を生成する光発生器101と、2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセル102と、アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部103と、検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいてアルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する制御部104と、を備えて構成されている。
【0056】
そして、上記構成の制御部104(制御装置)は、
図13に示すように、検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し(ステップS101)、測定した共鳴周波数に基づいてアルカリ金属ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する(ステップS102)、処理を実行する。なお、上記制御部104による処理は、制御部104を構成する演算装置がプログラムを実行することで実現される。
【0057】
以上のように、本開示では、計測した2つの励起光の共鳴周波数に基づいて、アルカリ金属ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御することで、ライトシフトの発生を抑制することができる。
【0058】
以上、上記実施形態等を参照して本開示を説明したが、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0059】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本開示における原子発振器、制御方法、制御装置、プログラムの構成の概略を説明する。但し、本開示は、以下の構成に限定されない。
(付記1)
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する制御部と、
を備えた原子発振器。
(付記2)
付記1に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、2つの励起光の強度比を変化させて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射したときの共鳴周波数を測定し、測定結果に基づいて2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
(付記3)
付記2に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、2つの励起光の強度比を変化させると共に、励起光の強度の和を変化させて、前記アルカリ金属原子ガスセルに照射したときの共鳴周波数を測定し、測定結果に基づいて2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
(付記4)
付記3に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、2つの励起光の強度比の値を変化させる毎に、励起光の強度の和を変化させて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射したときの共鳴周波数を測定し、励起光の強度の和の変化に対する共鳴周波数の変化に基づいて、2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
(付記5)
付記4に記載の原子発振器であって、
前記制御部は、励起光の強度の和の変化に対する共鳴周波数の変化が0に近づくよう、2つの励起光の強度比を決定する、
原子発振器。
(付記6)
付記4に記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、1つの励起光に対して所定の周波数変調パワーによって周波数変調を行うことで2つの周波数成分からなる励起光を生成し、
前記制御部は、前記周波数変調パワーを変化させることで2つの励起光の強度比を変化させる、
原子発振器。
(付記7)
付記4に記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、駆動電流に対して所定の周波数変調パワーによって周波数変調を行うことで2つの周波数からなる励起光を生成し、
前記制御部は、前記周波数変調パワーを変化させることで2つの励起光の強度比を変化させる、
原子発振器。
(付記8)
付記4に記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、それぞれ異なる周波数成分の励起光を生成する2つの光源を有し、
前記制御部は、2つの前記光源からそれぞれ生成される励起光の強度比を変化させる、
原子発振器。
(付記9)
付記6乃至8のいずれかに記載の原子発振器であって、
前記光発生器は、2つの励起光のうち1つの励起光の周波数を、共鳴周波数近辺に設定する、
原子発振器。
(付記10)
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
を備えた原子発振器の制御方法であって、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する、
制御方法。
(付記11)
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
を備えた原子発振器を制御する制御装置であって、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する、
制御装置。
(付記12)
2つの励起光を生成する光発生器と、
2つの励起光の周波数差が変化されて照射されるアルカリ金属原子ガスセルと、
前記アルカリ金属原子ガスセルを透過した透過光の光量を検出する検出部と、
を備えた原子発振器を制御する制御装置に、
検出した透過光の光量に基づいてアルカリ金属原子ガスの共鳴周波数を測定し、測定した共鳴周波数に基づいて前記アルカリ金属原子ガスセルに照射される2つの励起光の強度比を制御する、
処理を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0060】
1 光発生器
2 セシウム金属原子ガスセル
3 光検出器
4 制御器
5 分光器
5a 第1分光器
5b 第2分光器
11 レーザー
11a 第1レーザー
11b 第2レーザー
12 光周波数変調器
13 光減衰器
13a 第1光減衰器
13b 第2光減衰器
14 ミキサ
15 偏光板
41 レーザー制御部
41a 第1レーザー制御部
41b 第2レーザー制御部
42 シグナルジェネレータ制御部
42a シグナルジェネレータ
43 光減衰器制御部
43a 第1光減衰器制御部
43b 第2光減衰器制御部
44 計算部
45 電流変調器制御部
45a 電流変調器
100 原子発振器
101 光発生器
102 アルカリ金属原子ガスセル
103 検出部
104 制御部