(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176314
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】シリコーン粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/26 20060101AFI20231206BHJP
B01J 13/16 20060101ALI20231206BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20231206BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08F20/26
B01J13/16
C08F2/18
C08F299/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088536
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 佳之
(72)【発明者】
【氏名】南 秀人
【テーマコード(参考)】
4G005
4J011
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005AB05
4G005BA02
4G005BB06
4G005BB08
4G005DD47Z
4G005EA06
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4G005EA09
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4J011DB12
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4J100AL67P
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4J127EA27
4J127FA00
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4J127FA21
4J127FA57
(57)【要約】
【課題】従来提案されていなかった形状のシリコーン粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、重合性不飽和基を有するシラン系単量体を、水を含む溶媒A中で加水分解および縮合して重合性不飽和基を有するポリシロキサン系化合物の分散液を得る工程と、前記溶媒Aと相溶せず、かつ前記ポリシロキサン系化合物とも相溶しない溶媒Xと、前記分散液とを混合する工程と、前記ポリシロキサン系化合物をラジカル重合する工程とを含むシリコーン粒子の製造方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性不飽和基を有するシラン系単量体を、水を含む溶媒A中で加水分解および縮合して重合性不飽和基を有するポリシロキサン系化合物の分散液を得る工程と、
前記溶媒Aと相溶せず、かつ前記ポリシロキサン系化合物とも相溶しない溶媒Xと、前記分散液とを混合する工程と、
前記ポリシロキサン系化合物をラジカル重合する工程とを含むシリコーン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリシロキサン系化合物は、鎖状ポリシロキサン系化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒Xは、炭化水素系溶媒である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
粒子の表面又は内部に欠損部を有するシリコーン粒子であって、
前記欠損部の形状は、球の少なくとも一部の形状であるシリコーン粒子。
【請求項5】
前記シリコーン粒子は、粒子表面に開口した欠損部を有しており、シリコーン粒子の直径に対する、開口部の直径が0超、1未満である請求項4に記載のシリコーン粒子。
【請求項6】
個数平均粒子径が1~9μmである請求項4または5に記載のシリコーン粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性不飽和基を有するシラン系単量体から形成される重合体粒子において、球形粒子表面に凹凸が形成された粒子、碁石状粒子、凸レンズ状粒子、扁平状粒子等の非球状の粒子が提案されている。これらの粒子は、特徴的な形状に由来した機械的特性や、光学的特性を有することから、各種の樹脂用添加剤や各種の基材として注目を集めている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エチレン性不飽和結合含有基を有するアルコキシシラン(A)100質量部と、テトラアルコキシシラン(B)40質量部以上とから形成され、長径が粒子径に対して0.5以上である凹部を少なくとも1つ有する重合体微粒子が開示されている。前記凹部は、エチレン性不飽和結合含有基を有するアルコキシシラン(A)と、テトラアルコキシシラン(B)の加水分解及び重縮合のされやすさが異なることにより形成されることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、表面に収縮痕を有し、前記収縮痕の短径と、重合体微粒子の直径Dの比率(収縮痕の短径/重合体微粒子直径D)が、0超、1未満であり、ケイ素原子の含有量が3質量%以上である重合体粒子が開示されている。このような重合体粒子は、重合性有機アルコキシシランを加水分解・重縮合してシロキサン粒子(シード粒子)を形成し、前記シロキサン粒子にビニル単量体を吸収させた後、水溶性重合開始剤を用いて重合し、乾燥することにより製造できることが記載されている。そして、アルコキシシランの重縮合で形成されたネットワークにビニル単量体を重合させていく時、その開始を水溶性重合開始剤で実施すると、ビニル単量体の重合密度の薄い箇所が部分的に生じて形状変化を起こす部分が発生する一方、元のシロキサンネットワークによって形状を維持する部分も残る為か、表面に粒状又は筋状の収縮痕が形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-66328号公報
【特許文献2】特開2017-128706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来提案されていなかった形状のシリコーン粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]重合性不飽和基を有するシラン系単量体を、水を含む溶媒A中で加水分解および縮合して重合性不飽和基を有するポリシロキサン系化合物の分散液を得る工程と、
前記溶媒Aと相溶せず、かつ前記ポリシロキサン系化合物とも相溶しない溶媒Xと、前記分散液とを混合する工程と、
前記ポリシロキサン系化合物をラジカル重合する工程とを含むシリコーン粒子の製造方法。
[2]前記ポリシロキサン系化合物は、鎖状ポリシロキサン系化合物である[1]に記載の製造方法。
[3]前記溶媒Xは、炭化水素系溶媒である[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]粒子の表面又は内部に欠損部を有するシリコーン粒子であって、
前記欠損部の形状は、球の少なくとも一部の形状であるシリコーン粒子。
[5]前記シリコーン粒子は、粒子表面に開口した欠損部を有しており、シリコーン粒子の直径に対する、開口部の直径が0超、1未満である[4]に記載のシリコーン粒子。
[6]個数平均粒子径が1~9μmである[4]または[5]に記載のシリコーン粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来提案されていたシリコーン粒子とは異なる形状のシリコーン粒子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1で得られたシリコーン粒子E1をSEM観察した様子を表す図面代用写真である。
【
図2】
図2は、実施例2で得られたシリコーン粒子E2をSEM観察した様子を表す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.シリコーン粒子の製造方法
本発明のシリコーン粒子の製造方法は、(1)重合性不飽和基を有するシラン系単量体を、水を含む溶媒A中で加水分解および縮合して重合性不飽和基を有するポリシロキサン系化合物の分散液を得る工程と、(2)前記溶媒Aと相溶せず、かつ前記ポリシロキサン系化合物とも相溶しない溶媒Xと、前記分散液とを混合する工程と、(3)前記ポリシロキサン系化合物をラジカル重合する工程とを含む。
【0011】
1-1.ポリシロキサン系化合物の分散液を得る工程(1)
本工程では、重合性不飽和基を有するシラン系単量体を、水を含む溶媒A中で加水分解および縮合してポリシロキサン系化合物を得る。重合性不飽和基を有するシラン系単量体は、ケイ素原子に結合する重合性不飽和基を1分子中に少なくとも1つ有していることが好ましく、重合性不飽和基の個数はシラン系単量体1分子中1つであることがより好ましい。前記重合性不飽和基としては、例えば、末端にビニル基、又は(メタ)アクリロイル基を有する基が挙げられ、下記式(1)で表される基が好ましい。
【0012】
【化1】
式(1)中、R
1は水素、炭素数が1~10のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を表し、R
2は炭素数1~10のアルキレン基を表し、mは0又は1であり、nは0又は1であり、式(1)で表される基は*でケイ素原子と結合する。
【0013】
R1における炭素数が1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状アルキル基;等が挙げられる。
【0014】
R1における炭素数が6~10のアリール基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、o-イソプロピルフェニル基、m-イソプロピルフェニル基、p-イソプロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0015】
このうちR1は、水素又は炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、水素又は炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましく、水素又は炭素数が1~2のアルキル基(メチル基又はエチル基)であることが更に好ましく、水素又は炭素数が1のアルキル基(メチル基)であることが更により好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0016】
R2は、炭素数が1~10のアルキレン基であり、当該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、ジメチルエチレン基、メチルプロピレン基、ジメチルプロピレン基等の分岐鎖状アルキレン基;等が挙げられる。このうち直鎖状アルキレン基が好ましい。当該アルキレン基の炭素数は、1~7が好ましく、1~6がより好ましく、2~4が更に好ましく、3が更により好ましい。
【0017】
mは1であることが好ましく、nは1であることが好ましく、m及びnが共に1であることがより好ましい。
【0018】
重合性不飽和基を有するシラン系単量体は、ケイ素原子に前記重合性不飽和基と共に、加水分解性基が1以上結合していることが好ましく、加水分解性基としては、-ORa1(Ra1は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基又は炭素数が2~10のアシル基を表す)で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられ、-ORa1で表される基がより好ましい。
【0019】
前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体1分子あたり、ケイ素原子に結合する重合性不飽和基と加水分解性基の合計数は2以上であることが好ましく、3以上であることが好ましく、4であってもよい。重合性不飽和基を有するシラン系単量体1分子あたりの、ケイ素原子に結合する重合性不飽和基と加水分解性基の合計数が2又は3である場合には、ケイ素原子の残りの結合手には、他の基Ra2が結合していることが好ましく、基Ra2としては、例えば水素原子、炭素数が1~10のアルキル基又は炭素数が6~10のアリール基が挙げられる。
【0020】
Ra1及びRa2における炭素数が1~10のアルキル基としては、R1で挙げたアルキル基と同様のアルキル基が挙げられる。Ra1及びRa2に2以上の炭素数が1~10のアルキル基が含まれる場合、それらはそれぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよいが、同一であることが好ましい。このうちRa1及びRa2は直鎖状アルキル基が好ましい。当該アルキル基の炭素数が少ない方が、加水分解速度が速くなるため、1~7が好ましく、1~4がより好ましく、1~2が更に好ましく、1が更により好ましい。
【0021】
Ra1及びRa2における炭素数が6~10のアリール基としては、R1で挙げたアリール基と同様のアリール基が挙げられる。Ra1及びRa2に2以上の炭素数が6~10のアリール基が含まれる場合、それらはそれぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよいが、同一であることが好ましい。当該アリール基の炭素数は、6~9が好ましく、6~8がより好ましく、6~7が更に好ましく、6が更により好ましい。
【0022】
Ra1における炭素数が2~10のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。当該アシル基の炭素数は、2~7が好ましく、2~4がより好ましく、2~3が更に好ましく、2が更により好ましい。
【0023】
式(1)中の合計炭素数は、2~10が好ましく、3~9がより好ましく、5~8が更に好ましい。
【0024】
式(1)で表される基としては、具体的にはビニル基;(メタ)アクリロイルオキシ基;(メタ)アクリル酸メチル基、(メタ)アクリル酸エチル基、(メタ)アクリル酸プロピル基、(メタ)アクリル酸n-ブチル基、(メタ)アクリル酸イソブチル基、(メタ)アクリル酸t-ブチル基等の(メタ)アクリル酸アルキル基;等が好ましく挙げられる。
【0025】
重合性不飽和基を有するシラン系単量体は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0026】
【化2】
式(2)中、R
Zは上記式(1)で表される基であり、R
a21は上述のR
a2と同義であり、Xは加水分解性基であり、aは1又は2であり、bは1~3であり、a+bは2~4である。
【0027】
式(2)におけるRZの好ましい範囲は、上記式(1)の好ましい範囲と同様であり、Xの好ましい範囲は、上記した加水分解性基の好ましい範囲と同様である。Ra21の好ましい範囲は、上述のRa2の好ましい範囲と同じである。RZの好ましい範囲、Ra21の好ましい範囲、Xの好ましい範囲は適宜組み合わせることが可能である。
【0028】
上記式(2)で表される化合物は、RZが、式(1)におけるR1が水素、又は炭素数が1~3のアルキル基であり、R2が炭素数1~5のアルキレン基であり、mおよびnがいずれも1である基であり、Ra21が炭素数1~4の直鎖状アルキル基であり、Xが-ORa1(Ra1は、炭素数1~4の直鎖状アルキル基)表される基であり、aが1又は2であり(特に1)、bが1~3(特に2又は3)であり、a+bが3又は4である化合物であることが好ましい。
【0029】
重合性不飽和基を有するシラン系単量体として具体的には、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシエトキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシエトキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキル基を有するジアルコキシシラン;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキル基を有するトリアルコキシシラン;ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のビニル基を有するジアルコキシシランが挙げられる。これらのうち(メタ)アクリロキシアルキル基を有するジアルコキシシラン又は(メタ)アクリロキシアルキル基を有するトリアルコキシシランが好ましく、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン又はγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが更に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上、併用して用いてもよいが単独で用いることが好ましい。
【0030】
ポリシロキサン系化合物を得る工程では、重合性不飽和基含有シラン系単量体以外の他のシラン系単量体を添加してもよい。他のシラン系単量体としては、重合性不飽和基を有していないシラン系単量体が挙げられ、具体的には上記式(2)のうちRZが、水素、炭素数が1~10のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基であるものが挙げられる。当該炭素数が1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基としては、R1で挙げたアルキル基、アリール基と同様の基が挙げられる。他のシラン系単量体として具体的には、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上、併用して用いてもよい。
【0031】
前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体の仕込み量は、水を含む溶媒A100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上であり、また30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下である。
【0032】
重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解及び縮合は、分散剤の存在下で行ってもよい。分散剤を用いることで、加水分解および縮合において粒子の分散性を高めたり、得られる粒子の欠損部の形状を制御しやすくなる。分散剤は、公知の分散剤を使用でき、例えば、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子系分散剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム)等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤;を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分散剤としては、水溶性高分子系分散剤を使用することが好ましい。分散剤の使用量は、例えば、重合性不飽和基を有するシラン系単量体100質量部に対して、0.01~50質量部が好ましく、更に好ましくは0.1~30質量部、最も好ましくは1~20質量部である。なお、前記分散剤は、加水分解および縮合と、その後の工程においても添加してもよいが、加水分解および縮合の際に添加してその後の工程においても分散剤が存在している場合には新たに添加する必要はない。
【0033】
前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解及び縮合時の溶媒Aは、水以外に、有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上、併用して用いてもよい。前記有機溶媒のうち、アルコール類がより好ましい。有機溶媒と水の合計量100質量部に対して、有機溶媒の量は5質量部以上が好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、更に好ましくは15質量部以上であり、また45質量部以下が好ましく、より好ましくは40質量部以下であり、更に好ましくは35質量部以下である。
【0034】
前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解及び縮合は、触媒の存在下に行われることが好ましい。触媒としては、酸触媒又は塩基性触媒を用いることができ、重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解及び縮合は、塩基性触媒の存在下に一括して行われてもよいし、酸触媒の存在下に重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解を行い、得られた加水分解物を含む液と塩基性触媒とを混合して、塩基性触媒の存在下に縮合反応が行われてもよい。中でも、前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解及び縮合が、塩基性触媒の存在下に一括して行われることが好ましい。
【0035】
塩基性触媒としては、アンモニア類、アミン類、第4級アンモニウム化合物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が挙げられる。前記アンモニア類としては、アンモニア;尿素等のアンモニア発生剤;等が挙げられる。また、前記アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン等の芳香族アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;等が挙げられる。また、前記第4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化マグネシウムが挙げられる。塩基性触媒はアンモニア類であることが好ましい。これら塩基性触媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
酸触媒としては、有機酸、無機酸のいずれも使用可能であり、好ましくはそれらの水溶液が用いられる。具体的には、有機酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸などが例示され、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、りん酸などが例示される。これら酸触媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0036】
触媒の量(複数種用いる場合には、その合計量)は、前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体100質量部に対して、0.005~0.2質量部であることが好ましく、0.01~0.1質量部であることがより好ましい。
【0037】
前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解と縮合は、例えば水を含む溶媒Aと、重合性不飽和基を有するシラン系単量体を混合し、必要に応じて触媒及び/又は分散剤を更に混合し、好ましくは10分~100時間、より好ましくは30分~50時間、更に好ましくは1~10時間、更により好ましくは1~2時間の間、攪拌することによって行うことができる。当該攪拌時の温度は、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~70℃、更に好ましくは20~50℃である。水、必要に応じて用いられる水以外の溶媒、重合性不飽和基を有するシラン系単量体、必要に応じて用いられる触媒及び/又は分散剤の添加順序は特に限定されないが、水と、水以外の溶媒、触媒及び/又は分散剤とを先に混合し、そこに重合性不飽和基を有するシラン系単量体を滴下して混合するか、又は水、触媒及び/又は分散剤とを先に混合し、そこに重合性不飽和基を有するシラン系単量体と水以外の溶媒との混合液を滴下して混合することが好ましい。
【0038】
前記重合性不飽和基を有するシラン系単量体は、水により加水分解し、更に縮合して、鎖状のポリシロキサン系化合物を形成することが好ましい。鎖状のポリシロキサン系化合物の形成に際しては、前記シラン系単量体の加水分解及び縮合により、環状のポリシロキサン系化合物を形成した後、開環重合することで鎖状のポリシロキサン系化合物を形成してもよい。
【0039】
環状のポリシロキサン系化合物は、有機オニウム化合物、アルカリ金属水酸化物、及び有機スルホン酸から選ばれる少なくとも1種である反応触媒の存在下で開環重合を行うことが好ましい。これらの反応触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上、併用して用いてもよい。反応触媒は、有機オニウム化合物、及びアルカリ金属水酸化物よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、有機オニウム化合物が更に好ましい。これにより、環状ポリシロキサン系化合物が開環重合し易くなる。
【0040】
有機オニウム化合物は、少なくとも1つの炭化水素基を有するオニウム化合物である。有機オニウム化合物として、有機アンモニウム化合物、有機ホスホニウム化合物が好ましく挙げられる。これらのうち有機アンモニウム化合物がより好ましい。有機アンモニウム化合物として、炭化水素基を有するハロゲン化4級アンモニウム塩が挙げられる。有機ホスホニウム化合物として、炭化水素基を有するハロゲン化4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上、併用して用いてもよい。反応触媒の仕込み量は、重合性不飽和基含有シラン系単量体の仕込み量100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましい。
【0041】
1-2.溶媒Xと、前記ポリシロキサン系化合物の分散液とを混合する工程(2)
次に、前記工程(1)で得られたポリシロキサン系化合物の分散液と、溶媒Xとを混合する。溶媒Xは、前記溶媒Aと相溶せず、かつ前記ポリシロキサン系化合物とも相溶しない溶媒である。本発明ではこのような溶媒Xを用いているため、粒子の原料であるシラン系モノマーの組成を変更せずとも、同一組成のシラン系モノマーによって得られるシリコーン粒子の形状(後述する欠損部の開口径等)を制御することができる。溶媒Xは炭化水素系溶媒であることが好ましく、脂肪族炭化水素系溶媒であることがより好ましく、脂肪族飽和炭化水素系溶媒であることが更に好ましく、炭素数が5~15である脂肪族飽和炭化水素系溶媒が一層好ましく、炭素数が7~13である脂肪族飽和炭化水素系溶媒が特に好ましい。溶媒Xとしては1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0042】
ポリシロキサン系化合物の分散液と、溶媒Xの混合手順は特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物の分散液に、溶媒Xを添加することが好ましい。なお、シラン系単量体の加水分解及び縮合により、一旦、前記した環状のポリシロキサン系化合物が得られる場合、前記した有機オニウム化合物、アルカリ金属水酸化物、及び有機スルホン酸から選ばれる少なくとも1種である反応触媒は、溶媒Xと共に、環状ポリシロキサン系化合物の分散液に添加することが好ましい。
【0043】
溶媒Xの量は、重合性不飽和基を有するシラン系単量体の仕込み量100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、より好ましくは30質量部以上であり、更に好ましくは35質量部以上であり、また70質量部以下が好ましく、より好ましくは65質量部以下であり、更に好ましくは60質量部以下である。
【0044】
ポリシロキサン系化合物の分散液と溶媒Xとの混合後は、5分~3時間程度撹拌することが好ましい。当該撹拌後には、通常、ポリシロキサン系化合物と溶媒Xとが相分離した状態で分散する。
【0045】
1-3.ポリシロキサン系化合物をラジカル重合する工程(3)
工程(2)の後は、ポリシロキサン系化合物をラジカル重合する。より具体的には、前記工程(2)で得られたポリシロキサン系化合物の分散液と溶媒Xとの混合液と、ラジカル重合開始剤とを混合すればよい。
【0046】
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤が好ましく、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ化合物系重合開始剤が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、オルトクロロベンゾイルペルオキシド、オルトメトキシベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド等が挙げられる。また、アゾ化合物系重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3,3-トリメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-イソプロピルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アゾ化合物系重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤の量は、特に限定されないが、多量に使用すると発熱量が多くなって反応の制御が困難となる一方、少量使用の場合にはラジカル重合が進行しない場合がある。そのため、ラジカル重合開始剤の仕込み量は、重合性不飽和基を有するシラン系単量体の仕込み量100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.2~3質量部がより好ましい。
【0047】
ラジカル重合させる際の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって適宜選択可能であるが、反応の制御のし易さから30~100℃が好ましく、50~80℃がより好ましい。ラジカル重合の反応時間は、1~4時間が好ましく、1~3時間がより好ましい。
【0048】
ラジカル重合により生成したシリコーン粒子は、濾過、遠心分離、減圧濃縮等の従来公知の方法を用いてスラリーより単離すればよい。次いで、必要に応じてシリコーン粒子を分級し、通常、洗浄及び乾燥し、場合によっては焼成に付される。乾燥温度は特に限定されないが、50℃~250℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。乾燥時間は好ましくは1~12時間である。洗浄は、イオン交換水、メタノール等を用いればよい。
【0049】
2.シリコーン粒子
2-1.シリコーン粒子の形状
本発明の製造方法によれば、粒子の表面又は内部に欠損部を有するシリコーン粒子が得られ、前記欠損部の形状は、球の少なくとも一部の形状である。シリコーン粒子に、球の少なくとも一部の形状を有する欠損部が形成される機構は必ずしも下記に限定されないが、以下の機構が考えられる。重合性不飽和基を有するシラン系単量体の加水分解および縮合により形成したポリシロキサン系化合物の分散液中で、溶媒Aともポリシロキサン系化合物とも相溶しない溶媒Xはエネルギー的に安定な球状で存在する。そして、球状の溶媒Xの少なくとも一部がポリシロキサン系化合物に入り込む態様で存在し、その状態でポリシロキサン系化合物の重合が進むことで、溶媒Xとの接触箇所に起因する欠損部を有するシリコーン粒子が形成する。従って、欠損部の形状は、球状で存在していた溶媒Xの形状の少なくとも一部に起因しており、すなわち球の少なくとも一部の形状となる。
【0050】
前記ポリシロキサン系化合物も、通常、球状であり、得られるシリコーン粒子も球状粒子の表面又は内部に前記欠損部を有するシリコーン粒子であることが好ましい。
【0051】
シリコーン粒子が有する欠損部は、シリコーン粒子の内部に存在していてもよいし、粒子表面に存在していてもよい。粒子表面の存在する欠損部は、粒子表面に開口した欠損部であってもよい。シリコーン粒子が、粒子表面に開口した欠損部を有している場合、シリコーン粒子の直径に対する開口部の直径は0超、1未満であり、0.1以上が好ましく、より好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.3以上であり、また0.9以下であることが好ましく、より好ましくは0.8以下であり、更に好ましくは0.6以下である。
【0052】
シリコーン粒子の粒子径は、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.2μm以上であり、更に好ましくは1.5μm以上であり、また9μm以下が好ましく、より好ましくは7μm以下であり、更に好ましくは5m以下である。シリコーン粒子の粒子径は、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマンコールター社製の「コールターマルチサイザーIII型」)により測定でき、個数平均粒子径が前記範囲であることが好ましい。粒子径測定のための試料としては、粒子濃度が0.1~3質量%であり、0.5~2質量%程度の乳化剤が含まれた水溶液を用いればよい。
【0053】
2-2.シリコーン粒子の組成
本発明の製造方法により製造されるシリコーン粒子は、重合性不飽和基を有するシラン系単量体に由来する構造を有し、好ましくは下記式(3)で示される鎖状ポリシロキサン構造を有する。
【0054】
【0055】
式(3)は、―Si(Rx)(Ry)O―の単位が連続してp個結合していることを意味する。
pは、3以上の整数を表し、
p個のRxは、それぞれ独立して炭素数が1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基、又は下記式(4)で示される基を表し、少なくとも1つのRxは、下記式(4)で示される基である。
p個のRyは、それぞれ独立してO-*(*は他のシラン系単量体におけるケイ素との結合手)、水素、炭素数が1~10のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を表す。
【0056】
【0057】
式(4)中、
Rb1は、水素、炭素数が1~10のアルキル基、又は炭素数が6~10のアリール基を表し、
Rb2は、炭素数が1~10のアルキレン基を表し、
qは、0又は1であり、
rは、0又は1であり、
*は結合手であることを示し、
**はSiとの結合手であることを示す。
【0058】
Ryとしては、上記Ra2と同様の基又はケイ素原子に結合した加水分解性基の加水分解により得られたSi-OH基が更に縮合して形成するシロキサン結合Si-O-Si中のO-*(*は他のシラン系単量体におけるケイ素との結合手)が挙げられる。複数のRyは、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよいが、複数のRyは同じ基であることが好ましい。
【0059】
Rxの炭素数が1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基としては、上記式(1)のR1の炭素数が1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基と同様の基が挙げられる。複数のRxは、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよいが、複数のRxは同じ基であることが好ましい。複数のRxは式(4)で示される基であることがより好ましい。
【0060】
Rb1としては、上記式(1)のR1と同様の基が挙げられる。Rb2としては、上記式(1)のR2と同様の基が挙げられる。qは、0又は1であり、qは1であることが好ましい。rは、0又は1であり、1であることが好ましい。qとrの合計は1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0061】
上記式(3)中、pは、3以上の整数を表し、3~21であることが好ましく、6~18であることがより好ましく、6~15であることが更により好ましく、6~12であることが特に好ましく、最も好ましくは9である。またpは、3の倍数であることが好ましい。
【0062】
鎖状ポリシロキサン構造中、p個連続して結合している式(3)で示される構成単位は、それぞれ同じ構成単位であることが好ましい。即ち、p個連続して結合している式(3)で示される構成単位のRxはそれぞれ同じであり、且つ当該構成単位のRyはそれぞれ同じであることが好ましい。このような鎖状ポリシロキサン構造を合成するに当たっては、合成する際に多種の原料を用いる必要が無いため、得られた鎖状ポリシロキサン構造の品質が安定したものになる。
【0063】
式(4)で示される基のうち重合性不飽和基に由来する部分の結合手*は、隣接する式(4)で示される基以外の基と結合していてもよいが、隣接する式(4)で示される基と結合していることが好ましい。
【0064】
式(3)で示される構成単位を含む鎖状ポリシロキサン構造は、両末端が互いに結合しておらず鎖状である。即ち、当該鎖状ポリシロキサン系化合物中のポリシロキサン骨格は環状構造を形成していないものである。当該鎖状ポリシロキサン構造の両末端に結合している基としては、それぞれ独立に水素、炭素数が1~10のアルキル基、炭素数が6~10のアリール基、炭素数が2~10のアシル基、又は炭素数が1~10のアルコキシ基が挙げられる。こられの基としては上記R1で挙げた基及び-ORa1で表される基と同様の基が挙げられる。
【0065】
本発明のシリコーン粒子は、非導電性粒子または導電性粒子の形態として、液晶表示素子用導通材料、液晶表示素子用スペーサー、液体クロマトグラフィー用充填剤、フィルム用滑剤、静電荷像現像用トナー等に用いることができる。
【実施例0066】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0067】
実施例で得られたシリコーン粒子を下記の方法で測定した。
【0068】
(1)粒子形状の観察、及び粒子直径に対する欠損部の開口部直径の比の測定
SEM(日本電子株式会社製 JSM-6510、加圧電力20kV、倍率3000倍、プラチナスパッタリング)にて粒子の形状を観察すると共に、100個の粒子について、それぞれ粒子直径および欠損部の開口部直径をノギスにて測定し、各粒子について粒子直径に対する欠損部の開口部直径の比を求め、それらの算術平均値を計算した。
【0069】
(2)粒子の個数平均粒子径の測定
粒子0.1部に、乳化剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製、「ハイテノール(登録商標)N-08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)を用いて、30,000個の粒子の粒子径(μm)を測定し、個数平均粒子径を求めた。
【0070】
実施例1 シリコーン粒子E1の作製
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水975部、メタノール235部、ポリビニルアルコール(三菱ケミカル社製、「ゴーセノールGH-17R」)2.0部と25%アンモニア水溶液(富士フィルム和光社製)0.2部を仕込み、30℃に保持した。その中へ、重合性不飽和基を有するシラン系単量体である3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM502」、以下「MPDMS」)100部を滴下し、内温を35℃で90分間撹拌することにより、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解、縮合反応を行い、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を作製した。
【0071】
次いで、開環重合剤としてベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製)1.3部をイオン交換水400部に溶解した溶液に、溶媒Xとしてデカン50部を添加した溶液を加え、乳化分散させて乳化液を調製した。乳化分散の開始から1時間後、得られた溶媒X含有乳化液を、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。溶媒X含有乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子と溶媒Xとが相分離した状態で分散していることが確認された。
【0072】
次いで、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V-65」)2.0部を反応液に加え、窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持することによりラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下120℃で2時間乾燥することで、シリコーン粒子E1を得た。
【0073】
実施例2 シリコーン粒子E2の作製
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水974部、ポリビニルアルコール(三菱ケミカル社製、「ゴーセノールGH-17R」)2.0部と25%アンモニア水溶液(富士フィルム和光社製)0.2部を仕込み30℃に保持した。その中へ重合性不飽和基を有するシラン系単量体である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」、以下「MPTMS」)100部とメタノール235部を滴下し、内温を35℃で90分間撹拌することにより、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行い、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を作製した。次いで、溶媒Xとしてデカン50部を加え、30分間撹拌したのち、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V-65」)2.0部を反応液に加え、窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持することによりラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下120℃で2時間乾燥することで、シリコーン粒子E2を得た。
【0074】
比較例1 シリコーン粒子No.C1の作製
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水974部、ポリビニルアルコール(三菱ケミカル社製、「ゴーセノールGH-17R」)2.0部と25%アンモニア水溶液(富士フィルム和光社製)0.2部を仕込み30℃に保持した。その中へ重合性不飽和基を有するシラン系単量体である3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM502」)100部とメタノール235部を滴下し、内温を35℃で90分間撹拌することにより、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランの加水分解、縮合反応を行い、メタクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を作製した。続いて、開環重合剤としてベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製)5.2部を反応液に加え、60℃に昇温させて、60℃で3時間保持することによりアニオン開環重合を行った。次いで、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V-65」)2.0部を反応液に加え、窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持することによりラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、次いでメタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下120℃で2時間乾燥することで、シリコーン粒子C1を得た。
【0075】
上記(1)及び(2)の方法で測定された結果を表1及び
図1に示す。
【0076】
【0077】
図1はシリコーン粒子E1、
図2はシリコーン粒子E2をそれぞれ電子顕微鏡で観察した結果である。
図1、2によれば、シリコーン粒子E1及びE2は、粒子の表面又は内部に欠損部を有し、欠損部の形状が球の少なくとも一部の形状であることが分かる。