(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176317
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】二重容器用吸上げパイプ
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20231206BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B65D83/00 K
B65D47/34 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088543
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】東内 義明
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 文人
【テーマコード(参考)】
3E014
3E084
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC07
3E014PD11
3E014PE11
3E014PF10
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA37
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084DA01
3E084DB12
3E084GA04
3E084GB04
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】内容器の減容の仕方に影響されることなく各種タイプの二重容器に適用できると共に、内容物の残量の減少化に繋げること。
【解決手段】内容器10、及び内容器との間に外気を吸入する吸気孔が設けられた外容器11を備える二重容器2の口部2aに装着されるポンプ機構4に設けられる二重容器用吸上げパイプ5であって、シリンダ31の下端部から下方に向かって延びると共にシリンダの内部に連通するパイプ本体40と、パイプ本体の下端開口縁から下方に向けて延びる複数の縦リブ41と、パイプ本体を径方向に貫通すると共にパイプ本体の軸線方向に沿って延びる縦長のスリット孔42とを備え、縦リブは径方向に沿って延びると共に軸線回りに周回する周方向に沿って配置されている二重容器用吸上げパイプを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容されると共に内容物の減少に伴い減容する内容器、及び前記内容器が内装され、前記内容器との間に外気を吸入する吸気孔が設けられた外容器を備える二重容器の口部に装着されるポンプ機構に設けられる二重容器用吸上げパイプであって、
前記ポンプ機構のシリンダの下端部から下方に向かって延びると共に、前記シリンダの内部に連通する筒状のパイプ本体と、
前記パイプ本体の下端開口縁から下方に向けて延びる複数の縦リブと、
前記パイプ本体を径方向に貫通するように形成されると共に、前記パイプ本体の軸線方向に沿って延びる縦長のスリット孔と、を備え、
前記縦リブは、前記径方向に沿って延びると共に、前記軸線回りに周回する周方向に沿って配置されていることを特徴とする、二重容器用吸上げパイプ。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器用吸上げパイプにおいて、
前記縦リブは、前記軸線方向から見た平面視で、前記軸線上で交差した十字状を呈するように前記周方向に沿って4つ配置され、
4つの前記縦リブのうちの2つの縦リブの外端縁には、該縦リブの全長に亘って延び、且つ前記周方向に延びる周壁がそれぞれ形成され、
前記周壁が形成された2つの前記縦リブは、前記平面視において同一直線上に配置されている、二重容器用吸上げパイプ。
【請求項3】
請求項2に記載の二重容器用吸上げパイプにおいて、
前記スリット孔は、前記周方向に間隔をあけて複数配置され、
前記周壁は、周方向位置が前記スリット孔の周方向位置に対して異なる位置となるように形成されている、二重容器用吸上げパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器用吸上げパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に示されるように、内容物が収容される二重容器の口部に装着されるポンプ機構が知られている。
二重容器は、内容物が収容されると共に内容物の減少に伴い減容変形(しぼみ変形)する内容器、及び内容器が内装される外容器を備えている。
ポンプ機構は、上方付勢状態で下方移動可能に立設された筒状のステムと、ステムの上端部に装着された押下ヘッドと、ステムの上下動に連係する筒状のピストンと、ピストンが内部に上下動可能に嵌合された筒状のシリンダと、を主に備えている。シリンダの下端開口部には、内容器内の内容物を吸い上げる吸上げパイプが装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の二重容器の場合、ポンプ機構に吸上げパイプを装着した際、内容物の減少に伴って内容器が徐々にしぼみ変形するため、内容物がまだ残っているにもかかわらず、吸上げパイプの開口部(吸込み口)を内容器が塞いでしまう場合があった。
【0005】
特に、吸上げパイプとして、吸込み口が下端に形成されている、いわゆるディップチューブを採用した場合、内容器が外容器の底面側から先に剥離するタイプの二重容器においては、吸込み口が内容器によって塞がれ易い。そのため、内容物が多く残留し易い傾向にあり、改善の余地がある。
さらに吸上げパイプとして、横断面視で十字形状に形成された支柱を有する、いわゆるディップバーを採用した場合、吸込み口が縦長に延びている。しかしながら、内容器が外容器の首部側から先に剥離するタイプの二重容器においては、吸込み口のうちディップバーの上端部に位置する部分に、内容器が例えば絡まる或いは巻き込まれる等して、実質的に吸込み口を塞いでしまい易い。従って、この場合であっても、内容物が多く残留し易い傾向にあった。
【0006】
このように、従来の吸上げパイプでは、内容器が外容器の底面側から先に剥離するタイプの二重容器、及び内容器が外容器の首部側から先に剥離するタイプの二重容器の両方に対応することが難しかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内容器の減容の仕方に影響されることなく各種タイプの二重容器に適用できると共に、内容物の残量の減少化に繋げることができる二重容器用吸上げパイプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る二重容器用吸上げパイプは、内容物が収容されると共に内容物の減少に伴い減容する内容器、及び前記内容器が内装され、前記内容器との間に外気を吸入する吸気孔が設けられた外容器を備える二重容器の口部に装着されるポンプ機構に設けられる二重容器用吸上げパイプであって、前記ポンプ機構のシリンダの下端部から下方に向かって延びると共に、前記シリンダの内部に連通する筒状のパイプ本体と、前記パイプ本体の下端開口縁から下方に向けて延びる複数の縦リブと、前記パイプ本体を径方向に貫通するように形成されると共に、前記パイプ本体の軸線方向に沿って延びる縦長のスリット孔と、を備え、前記縦リブは、前記径方向に沿って延びると共に、前記軸線回りに周回する周方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る二重容器用吸上げパイプによれば、押下ヘッドの押下げ操作及びその解除を行うことでポンプ機構を作動させることができ、パイプ本体を通じて内容器内からシリンダ内に内容物を吸上げることができる。これにより、内容物を例えば吐出する等して、使用することができる。なお、内容器は、内容物の減少に伴って二重容器の内側にしぼみ変形して減容する。これにより、内容器と外容器との間に負圧が生じるので、負圧によって吸気孔から内容器と外容器との間に外気を流入させることができる。そのため、内容器を減容変形させたままの状態に維持することができる。
【0010】
上述した過程において、パイプ本体には、下端開口縁に複数の縦リブが形成されていると共に、径方向に貫通するように縦長のスリット孔が形成されている。従って、内容物を吸上げる際に、複数の縦リブ同士の間を通じてパイプ本体の下端開口部から内容物を吸上げる第1ルートと、スリット孔を通じて内容物を吸上げる第2ルートと、の2通りのルートを利用して内容物を効率良く吸い上げることができる。
特に、内容器のしぼみ変形によって、例えば内容器が複数の縦リブの周囲を塞ぐように覆ったとしても、スリット孔を通じて内容物を吸上げる第2ルートを優先的に利用して内容物の吸上げを継続して行うことができる。その反対に、内容器のしぼみ変形によって、例えば内容器がスリット孔の周囲を覆う、或いはスリット孔内に巻き込まれる等してスリット孔を塞いだとしても、複数の縦リブ同士の間を通じてパイプ本体の下端開口部から内容物を吸上げる第1ルートを優先的に利用して内容物の吸上げを継続して行うことができる。
【0011】
このように、二重容器用吸上げパイプによれば、第1ルート及び第2ルートの2通りのルートを利用できるので、内容器のしぼみ変形の仕方(減容の仕方)に影響されることなく、内容物の吸上げを安定且つ確実に行うことができる。従って、各種タイプの二重容器に適用することができると共に、内容物の残量の減少化に繋げることができる。
【0012】
(2)前記縦リブは、前記軸線方向から見た平面視で、前記軸線上で交差した十字状を呈するように前記周方向に沿って4つ配置され、4つの前記縦リブのうちの2つの縦リブの外端縁には、該縦リブの全長に亘って延び、且つ前記周方向に延びる周壁がそれぞれ形成され、前記周壁が形成された2つの前記縦リブは、前記平面視において同一直線上に配置されても良い。
【0013】
この場合には、複数の縦リブが軸線方向から見た平面視で十字状となるように配置されているので、複数の縦リブ同士の間隔を大きく確保し易い。従って、パイプ本体の下端開口部を通じて内容物を吸上げる第1ルートを利用して、内容物をスムーズに吸上げ易い。
さらに、4つの縦リブのうち、平面視において同一直線上に配置された2つの縦リブの外端縁だけに周壁が形成されているので、内容物のスムーズな吸上げを維持しながらも、周壁を利用して、複数の縦リブ同士の隙間に内容器が巻き込まれる等の不都合を生じさせ難い。従って、第1ルートを適切に確保し易く、内容物の吸上げをより安定して行える。
【0014】
(3)前記スリット孔は、前記周方向に間隔をあけて複数配置され、前記周壁は、周方向位置が前記スリット孔の周方向位置に対して異なる位置となるように形成されても良い。
【0015】
この場合には、スリット孔が複数形成されているので、スリット孔を通じた第2ルートを利用して、内容物をよりスムーズに吸い上げることができる。それに加えて、周壁の周方向位置とスリット孔の周方向位置とが異なっているので、例えば内容器が周壁の外周面に接触したときに、この接触部分を起点としてパイプ本体の外周面に下方から上方に向けて内容器が次第に接触したとしても、スリット孔を塞ぎ難い。従って、第2ルートを適切に確保し易く、内容物の吸上げをより安定して行える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内容器の減容の仕方に影響されることなく各種タイプの二重容器に適用できると共に、内容物の残量の減少化に繋げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る二重容器用吸上げパイプを具備する吐出容器の実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示す二重容器用吸上げパイプの半縦断面図である。
【
図3】
図2に示す二重容器用吸上げパイプを、
図2に示す矢印A方向から見た側面図である。
【
図4】
図2に示す二重容器用吸上げパイプを下方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る二重容器用吸上げパイプの実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では二重容器にポンプ機構が装着された吐出容器に、二重容器用吸上げパイプを適用した場合を例に挙げて説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の吐出容器1は、内容物が内部に収容される有底筒状の二重容器2と、二重容器2の口部2aに装着された有頂筒状の装着キャップ3と、装着キャップ3を介して二重容器2の口部2aに着脱可能に装着されたポンプ機構4と、ポンプ機構4に設けられる吸上げパイプ(本発明に係る二重容器用吸上げパイプ)5と、を備えている。
なお、内容物は、特に限定されるものではないが、例えばシャンプー、ボディソープ、化粧料等の液体内容物が挙げられる。特に、本実施形態の吐出容器1は、クリーム状の内容物等、粘性(粘度)の高い内容物を好適に利用することができる。
【0020】
図1において、二重容器2、ポンプ機構4及び吸上げパイプ5は、それぞれの中心軸線が共通軸上に配置されている。以下、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿った後述する押下ヘッド20側を上方、その反対側である二重容器2側を下方という。さらに容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
(二重容器)
二重容器2は、内容物が収容されると共に、内容物の減少に伴い減容変形(しぼみ変形)する可撓性を有する内容器10と、内容器10が内装される外容器11と、を備えている。
二重容器2は、例えば外容器11の内面に内容器10が剥離可能に積層された積層剥離型容器(デラミボトル)とされている。具体的には、外容器11を形成する合成樹脂と、外容器11に対して相溶性が低い内容器10の合成樹脂を積層して形成した筒状のパリソンを用いた押出ブロー成形によって形成されている。
内容器10及び外容器11の材質は、特に限定されるものではないが、例えば外容器11はポリエチレン又はポリプロピレン、内容器10はエチレンビニルアルコール共重合体とされている。
【0022】
なお、射出成形等によって外容器11用のプリフォーム及び内容器10用のプリフォームを形成し、これらを二重(内外)に組み合わせた後、二軸延伸ブロー成形することで二重容器2を形成しても良い。さらには、外容器11用のプリフォームを先に二軸延伸ブロー成形して外容器11を形成した後、内容器10用のプリフォームを内部に配置し、その後、内容器10用のプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで二重容器2を形成しても構わない。
【0023】
このような場合であっても、内容器10及び外容器11の材質は、特に限定されるものではないが、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂とされている。
ただし、内容器10及び外容器11の材質は、剥離可能な組み合わせであれば互いに同材質でも構わないし異材質でも構わない。合成樹脂材料の一例としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン(ポリアミド)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等が挙げられる。これらの合成樹脂材料の中から、外容器11と内容器10とは剥離可能(相溶性がない)となる組み合わせで、単独又は2種以上の多層構成で形成されることが好ましい。
【0024】
二重容器2は、口部2a、肩部2b、胴部2c及び底部2dが上側から順に連設された有底筒状に形成されている。
本実施形態の二重容器2を構成する外容器11は、一定の剛性を有するように形成され、外容器11の胴部2cを径方向の内側(容器内側)に向かって押圧したとしてもスクイズ変形し難い構成とされている。
【0025】
上述のように構成された二重容器2において、外容器11には、内容器10との間に外気を吸入(導入)する図示しない吸気孔が形成されている。吸気孔の形成位置としては、特に限定されるものではないが、例えば二重容器2の底部2dに位置する部分に形成されている。具体的には、ブロー成形時に底部2dに形成されるピンチオフ部のスリットを吸気孔として利用することが可能である。
【0026】
本実施形態の吐出容器1は、未使用段階では、後述するステム30及び押下ヘッド20が下降端位置に位置し、且つ押下ヘッド20が後述する規制筒32に螺着して保持されることで、装着キャップ3に対する押下ヘッド20の上方移動が規制されている。一方、使用段階では、
図1に示すように、ステム30及び押下ヘッド20は上昇端位置に位置して、吐出操作のための待機状態を維持する。
【0027】
(ポンプ機構)
ポンプ機構4は、二重容器2の口部2a内に挿入された状態で、装着キャップ3によって二重容器2の口部2aの内側に保持されている。
ポンプ機構4は、上方付勢状態で下方移動可能に立設され、上端部に押下ヘッド20が装着される筒状のステム30と、ステム30の上下動に連係する筒状のピストン(不図示)と、ピストンが内部に上下動可能に嵌合された筒状のシリンダ31と、ピストンの内側に挿通され、ステム30の上下動に連係するピストンガイド(不図示)と、ステム30の上下動に連係して作動すると共に、シリンダ31内の圧力変化に応じてシリンダ31の下端開口部を開閉する下部弁体(不図示)と、シリンダ31の上端部に装着されると共に、押下ヘッド20を下降端位置で保持する規制筒32と、を備えている。
【0028】
シリンダ31は、容器軸Oと同軸に配置され、二重容器2の口部2aから下方に向けて延びるように配置されている。シリンダ31の下端部には、下方に向けて延びる吸込み筒33が形成されている。これにより、シリンダ31内と二重容器2内とは、シリンダ31の下端開口部及び吸込み筒33の内側を通じて連通している。
【0029】
なお、下部弁体は、シリンダ31内の加圧時にシリンダ31の下端開口部を閉塞すると共に、シリンダ31内の減圧時にシリンダ31の下端開口部を開放する逆止弁として機能する。これにより、シリンダ31内の加圧時に、シリンダ31内から二重容器2内への下端開口部を通じた内容物の流出を規制することができると共に、シリンダ31内の減圧時に、二重容器2内からシリンダ31内への下端開口部を通じた内容物の流入を許容することが可能とされている。
【0030】
下部弁体とピストンガイドとの間には、ステム30及びピストンガイドを弾性復元力によって上方付勢すると共に、ステム30及びピストンガイドの下方移動に伴って弾性変形するコイルばね(不図示)が配設されている。
これにより、ステム30は、ピストンガイドを介して伝えられるコイルばねからの弾性復元力によって、上方付勢状態で下方移動可能とされている。
【0031】
規制筒32は、雄ねじ部32aが形成された雄ねじ筒32bを有している。
押下ヘッド20は、有頂筒状の操作部21と、操作部21における天板部から下方に向けて延設された嵌合筒(不図示)と、天板部から下方に向けて延設されると共に、嵌合筒を径方向の外側から囲む雌ねじ筒22と、先端に吐出孔23aが形成された吐出筒23と、を備えている。
【0032】
嵌合筒は、下端部がステム30の上端部の内側に嵌合されている。雌ねじ筒22の内周面には、規制筒32の雄ねじ部32aに螺合する雌ねじ部(不図示)が形成されている。雌ねじ筒22は、押下ヘッド20及びステム30が下降端位置に位置しているときに、規制筒32の雄ねじ筒32bに螺着される。これにより、押下ヘッド20及びステム30は、下降端位置で保持される。
【0033】
吐出筒23は、操作部21における周壁部から径方向の外側に向けて突出するように形成されていると共に嵌合筒を通じてステム30内に連通している。これにより、ステム30内及び吐出筒23内を通じて、吐出孔23aから内容物を外部に向けて吐出することが可能である。
【0034】
(吸上げパイプ)
吸上げパイプ5は、容器軸Oと同軸に配置され、ポンプ機構4におけるシリンダ31の吸込み筒33の内側に嵌合されている。
図1~
図4に示すように、吸上げパイプ5は、シリンダ31の下端部から下方に向かって延びると共に、シリンダ31の内部に連通する筒状のパイプ本体40と、パイプ本体40の下端開口縁から下方に向けて延びる複数の縦リブ41と、パイプ本体40を径方向に貫通するように形成されると共に、上下方向に延びる縦長の複数のスリット孔42と、を備えている。
【0035】
パイプ本体40は、吸込み筒33の内径よりも外径が僅かに小さい円筒状に形成され、容器軸Oと同軸に配置されている。パイプ本体40の上端部は、吸込み筒33の内側に下方から挿し込まれることで、吸込み筒33の内側に密に嵌合している。なお、パイプ本体40の上端部の外周面には、径方向の外側に向かって突出する環状のシール突起43がパイプ本体40の全周に亘って形成されている。
【0036】
複数の縦リブ41は、径方向に沿って延びると共に、容器軸Oを中心として周方向に沿って配置されている。
本実施形態では、縦リブ41は、容器軸O方向から見た平面視で、容器軸O上で交差した十字状を呈するように周方向に沿って4つ配置されている。これら4つの縦リブ41は、パイプ本体40の外周面よりも径方向の外側に向けて突出しないように形成されている。さらに4つの縦リブ41は、下方に向けて同じ長さで延びるように形成されている。なお、4つの縦リブ41の下端は、二重容器2の底部2dよりも上方に配置されている。
【0037】
4つの縦リブ41のうち、容器軸Oを挟んで径方向に対向し合う2つの縦リブ41は、第1組の縦リブ45として機能する。そして、4つの縦リブ41のうち、残り2つの縦リブ41は、容器軸Oを挟んで径方向に対向し合う第2組の縦リブ46として機能する。
従って、第1組の縦リブ45は、平面視において同一直線上に配置されている。また、第2組の縦リブ46についても、平面視において同一直線上に配置されている。
【0038】
このうち第1組の縦リブ45の外端縁には、縦リブ41の全長に亘って延び、且つ周方向に延びる周壁47がそれぞれ形成されている。周壁47は、第1組の縦リブ45の外端縁から、周方向に隣接する第2組の縦リブ46の外端縁に向かってそれぞれ延びるように形成されている。
【0039】
複数のスリット孔42は、吸上げパイプ5の中央部分に周方向に間隔をあけて配置されている。本実施形態では、スリット孔42は、容器軸Oを中心として等間隔をあけて3つ形成されている。なお、スリット孔42は、吸上げパイプ5の装着時において、上方開口端が吸込み筒33よりも下方に位置し、且つ下方開口端がパイプ本体40の下端部よりも上方に位置するように、縦長に形成されている。
【0040】
さらに、上述した周壁47とスリット孔42とは、周方向位置が異なる位置となるように形成されている。これにより、
図3に示すように、パイプ本体40のうち周壁47よりも上方に位置する部分は、周方向に隣接するスリット孔42同士の間に位置するスリット孔42の未形成部分とされている。
【0041】
(吸上げパイプの作用)
次に、上述のように構成された吐出容器1を利用して内容物を吐出する場について説明すると共に、その過程における吸上げパイプ5の作用について説明する。
【0042】
内容物を吐出する場合には、
図1に示すように、上昇端位置に位置している押下ヘッド20を押下げ操作及びその解除を行うことで、ポンプ機構4を作動させることができ、パイプ本体40を通じて内容器10内から、シリンダ31内に内容物を吸上げることができる。
【0043】
簡単に説明すると、押下ヘッド20を押下げ操作することでステム30及びピストンガイドを下方移動させることができる。これにより、ピストンを下方移動させることができ、シリンダ31内を加圧することができる。これにより、シリンダ31内の内容物をステム30内に流入させることができる。そのため、ステム30内の内容物を、押下ヘッド20の吐出筒23内を通じて吐出孔23aから外部に吐出することができる。
【0044】
そして内容物の吐出後、押下ヘッド20の押下げを解除すると、コイルばねによる上方付勢力(弾性復元力)によって、ピストンガイド、ピストン、ステム30及び押下ヘッド20が上方に向けて復元移動する。これにより、シリンダ31内が減圧されて、下部弁体がシリンダ31の下端開口部を開放するので、内容器10内の内容物を、吸上げパイプ5及び下端開口部を通じてシリンダ31内に吸い上げることができる。その結果、次回の押下ヘッド20の押下げ操作による内容物の吐出操作に備えることができる。
【0045】
ところで内容器10は、内容物の減少に伴って二重容器2の内側にしぼみ変形して減容する。これにより、内容器10と外容器11との間に負圧が生じるので、負圧によって吸気孔から内容器10と外容器11との間に外気を流入させることができる。そのため、内容器10を減容変形させたままの状態に維持することができる。
その結果、内容器10を徐々に減容変形させながら、内容物を吐出することができる。従って、内容物の酸化等、劣化や変質を抑制することができ、内容物の品質を維持するという高付加価値を維持することができる。
【0046】
上述した過程において、パイプ本体40には、下端開口縁に複数の縦リブ41が形成されていると共に、径方向に貫通するように縦長の複数のスリット孔42が形成されている。従って、内容物を吸上げる際に、複数の縦リブ41同士の間を通じてパイプ本体40の下端開口部から内容物を吸上げる第1ルートと、複数のスリット孔42を通じて内容物を吸上げる第2ルートと、の2通りのルートを利用して内容物を効率良く吸い上げることができる。
【0047】
特に、内容器10のしぼみ変形によって、例えば内容器10が複数の縦リブ41の周囲を塞ぐように覆ったとしても、複数のスリット孔42を通じて内容物を吸上げる第2ルートを優先的に利用して内容物の吸上げを継続して行うことができる。
その反対に、内容器10のしぼみ変形によって、例えば内容器10が複数のスリット孔42の周囲を覆う、或いはスリット孔42内に巻き込まれる等してスリット孔42を塞いだとしても、複数の縦リブ41同士の間を通じてパイプ本体40の下端開口部から内容物を吸上げる第1ルートを優先的に利用して内容物の吸上げを継続して行うことができる。
【0048】
このように、本実施形態の吸上げパイプ5によれば、第1ルート及び第2ルートの2通りのルートを利用できるので、内容器10のしぼみ変形の仕方(減容の仕方)に影響されることなく、内容物の吸上げを安定且つ確実に行うことができる。
従って、各種タイプの二重容器2に適用することができると共に、内容物の残量の減少化に繋げることができる。
【0049】
具体的には、吸上げパイプとして、従来のディップチューブを採用した場合には、二重容器2内に残留した内容物の残留量は、平均して11%(最小9%、最大16%)の残量であることが確認された。さらに吸上げパイプとして、従来のディップバーを採用した場合には、二重容器2内に残留した内容物の残留量は、平均して7%(最小6%、最大9%)の残量であることが確認された。
これに対して、本実施形態の吸上げパイプ5を採用した場合には、二重容器2内に残留した内容物の残留量は、平均して5%(最小3%、最大9%)の残量であることが確認された。
【0050】
このように、本実施形態の吸上げパイプ5によれば、第1ルート及び第2ルートの2通りのルートを利用できるので、内容物の残量の減少化に効果に繋げることができる。なお、上述した残留量の確認は吸上げパイプ5以外の各種構成及び条件は同じ状況で行った。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の吸上げパイプ5によれば、内容器10の減容の仕方に影響されることなく各種タイプの二重容器2に適用できると共に、内容物の残量の減少化に繋げることができる。
【0052】
さらに本実施形態では、複数の縦リブ41が平面視で十字状となるように配置されているので、複数の縦リブ41同士の間隔を大きく確保し易い。従って、パイプ本体40の下端開口部を通じて内容物を吸上げる第1ルートを利用して、内容物をスムーズに吸上げ易い。
さらに第1組の縦リブ45の外端縁だけに周壁47が形成されているので、内容物のスムーズな吸上げを維持しながらも、複数の縦リブ41同士の隙間に内容器10が巻き込まれる等の不都合を生じさせ難い。従って、第1ルートを適切に確保し易く、内容物の吸上げをより安定して行える。
【0053】
さらに、周壁47の周方向位置とスリット孔42の周方向位置とが異なっているので、例えば内容器10が周壁47の外周面に接触したときに、この接触部分を起点としてパイプ本体40の外周面に下方から上方に向けて内容器10が次第に接触したとしても、スリット孔42を塞ぎ難い。従って、第2ルートを適切に確保し易く、内容物の吸上げをより安定して行える。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが可能であることに加え、各実施形態における変形例を適宜組み合わせてもよい。さらに、本実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0055】
例えば、上記実施形態では、内容器10が外容器11の内面に剥離可能に積層された積層剥離型容器を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば内容器10と外容器11との間に隙間が確保された二重容器を採用しても構わない。
さらに上記実施形態では、吸気孔を二重容器2の底部2dに形成したが、この場合に限定されるものではなく、例えば外容器11の口部或いは胴部等に形成しても構わない。
【0056】
さらに上記実施形態では、3つのスリット孔42を形成した場合を例に挙げて説明したが、スリット孔42の数は適宜変更して構わない。さらに上記実施形態では、4つの縦リブ41を形成したが、縦リブ41についても、その数を適宜変更して構わない。さらに上記実施形態では、4つの縦リブ41を平面視で十字状に呈するように配置したが、この場合に限定されるものではない。例えば、複数の縦リブ41を平面視で容器軸Oを中心として放射状に配置しても構わない。
【符号の説明】
【0057】
2…二重容器
4…ポンプ機構
5…吸上げパイプ(二重容器用吸上げパイプ)
10…内容器
11…外容器
31…シリンダ
40…パイプ本体
41…縦リブ
42…スリット孔
47…周壁