(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176319
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20231206BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088545
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】相崎 隆嗣
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA04
2H199CA12
2H199CA25
2H199CA45
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA94
(57)【要約】
【課題】表示品質の高いヘッドマウントディスプレイを提供する。
【解決手段】本実施の形態にかかるヘッドマウントディスプレイ100は、ユーザの前方に配置され、表示画像を形成する表示光の少なくとも一部をユーザの方向に反射する反射部材と、反射部材とユーザの眼との間に配置され、表示光を反射部材に向けて反射するとともに、反射部材で反射した表示光を透過するビームスプリッタ122L、122Rと、を備え、ユーザの眼よりも上側にある第1の位置Y1から眼に向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率が、ユーザの眼よりも下側にある第2の位置Y2から眼に向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率と一致する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの前方に配置され、表示画像を形成する表示光の少なくとも一部を前記ユーザの方向に反射する反射部材と、
前記反射部材と前記ユーザの眼との間に配置され、前記表示光を前記反射部材に向けて反射するとともに、前記反射部材で反射した前記表示光を透過するビームスプリッタと、を備え、
前記ユーザの眼よりも上側にある第1の位置から前記眼に向かう方向における前記ビームスプリッタの透過率が、前記ユーザの眼よりも下側にある第2の位置から眼に向かう方向における前記ビームスプリッタの透過率と一致する、ヘッドマウントディスプレイ。
【請求項2】
前記ビームスプリッタは、厚さに応じて透過率が変化する薄膜を備え、
前記薄膜の厚さが上側から下側に向かうに、徐々に薄くなっていく請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項3】
前記ビームスプリッタは、厚さに応じて透過率が変化する薄膜を備え、
前記ビームスプリッタは、前記第1の位置を含む第1の領域と、前記第2の位置を含む第2の領域に分割されており、
前記第1の領域の薄膜の厚さが前記第2の領域の薄膜の膜厚よりも厚くなっている請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項4】
前記ビームスプリッタには、光を反射する反射膜の微細パターンが形成されており、
前記第1の位置を含む第1の領域と、前記第2の位置を含む第2の領域とで、前記微細パターンの面積占有率が異なっている請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【請求項5】
前記ビームスプリッタには、光を吸収する吸収フィルタが形成されており、
前記第1の位置と、前記第2の位置とで、前記吸収フィルタの吸収率が異なっている請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表示素子と、ビームスプリッタと、コンバイナと、を備えたヘッドマウントディスプレイが開示されている。ユーザの前方の虚像を形成するために、ビームスプリッタ及びコンバイナはハーフミラーとなっている。コンバイナは、ビームスプリッタの前方に配置された凹面鏡である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビームスプリッタに対する光の入射角度がビームスプリッタの位置に応じて変化してしまう。このため、上下方向において、表示画像に輝度差が現れるおそれがある。この点について、
図10を用いて説明する。
図10はヘッドマウントディスプレイの光学系を模式的に示す図である。
【0005】
表示素子部101はビームスプリッタ122の上に配置されている。ビームスプリッタ122は、表示素子部101からの表示光P11を前方に反射する。ビームスプリッタ122で反射された表示光P11は、コンバイナ121に入射する。コンバイナ121は表示光P11を後方に反射する。コンバイナ121で後方に反射された表示光を表示光P12とする。表示光P12はビームスプリッタ122を透過して、ユーザの眼Eに入射する。よって、ユーザは、表示画像の虚像Iを正面前方に視認することができる。
【0006】
コンバイナ121は、凹面ハーフミラーである。コンバイナ121は、コンバイナ121の前方からの外光P21を透過する。外光P21と表示光P12はビームスプリッタ122を透過して、ユーザの眼Eに入射する。ユーザは、前方の景色に表示画像が重畳した重畳画像を視認することができる。
【0007】
ビームスプリッタ122は平面ハーフミラーとなっている。平面に対する光の入射角度に応じて、ビームスプリッタ122の反射率が変化する。また、上下方向の位置に応じて、ビームスプリッタ122に対する光の入射角度が異なる。
【0008】
例えば、ビームスプリッタ122において、眼Eよりも上にある位置を第1の位置Y1とし、眼Eよりも下にある位置を第2の位置Y2とする。第1の位置Y1における光の入射角を入射角θ1とし、第2の位置Y2における光の入射角を入射角θ2とする。入射角θ1と入射角θ2は、ビームスプリッタ122の平面に対する法線と、眼Eに向かう光の進行方向との成す角度である。
【0009】
入射角θ1は入射角θ2よりも小さくなる。よって、第1の位置Y1における透過率は、第2の位置Y2における透過率よりも大きくなる。よって、ユーザが視認する虚像Iの上側が明るくなり、下側が暗くなる。虚像Iの上下で輝度差が生じてしまうため、表示品質が劣化するおそれがある。
【0010】
本開示は上記の点に鑑みなされたものであり、表示品質の高いヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態にかかるヘッドマウントディスプレイは、ユーザの前方に配置され、表示画像を形成する表示光の少なくとも一部を前記ユーザの方向に反射する反射部材と、前記反射部材と前記ユーザの眼との間に配置され、前記表示光を前記反射部材に向けて反射するとともに、前記反射部材で反射した前記表示光を透過するビームスプリッタと、を備え、前記ユーザの眼よりも上側にある第1の位置から前記眼に向かう方向における前記ビームスプリッタの透過率が、前記ユーザの眼よりも下側にある第2の位置から眼に向かう方向における前記ビームスプリッタの透過率と一致する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、表示品質の高いヘッドマウントディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態にかかるヘッドマウントディスプレイの一部の構成を示す図である。
【
図2】本実施の形態にかかるヘッドマウントディスプレイの機能ブロックを示す図である。
【
図3】ヘッドマウントディスプレイの光学系を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1にかかるヘッドマウントディスプレイのビームスプリッタの構成を示す模式図である。
【
図5】第1及び第2の位置におけるビームスプリッタの透過率を説明するためのグラフである。
【
図6】実施の形態2にかかるヘッドマウントディスプレイの光学系の構成を示す図である。
【
図7】実施の形態2にかかるヘッドマウントディスプレイのビームスプリッタの構成を示す模式図である。
【
図8】実施の形態3にかかるヘッドマウントディスプレイのビームスプリッタの構成を示す模式図である。
【
図9】実施の形態4にかかるヘッドマウントディスプレイのビームスプリッタの構成を示す模式図である。
【
図10】ビームスプリッタの入射位置に応じた入射角を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本開示が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
【0015】
実施の形態1
本実施の形態にかかるヘッドマウントディスプレイ、及びその表示方法について、図を参照して説明する。
図1はヘッドマウントディスプレイ100の一部の構成を模式的に示す斜視図である。
図2はヘッドマウントディスプレイ100の一部の機能ブロックを示す図である。
図1、
図2では、主として、ヘッドマウントディスプレイ100の画像表示に関する構成が示されている。
図1では、ヘッドマウントディスプレイ100の内部構成が示されており、実際には、
図1に示す各構成要素がカバーなどで覆われていてもよい。
【0016】
ヘッドマウントディスプレイ100は、ゲーム用、エンターテインメント用、産業用、医療用、フライトシミュレータ用などの様々な用途に適用可能である。ヘッドマウントディスプレイ100は、例えばVR(Virtual Reality)ヘッドマウントディスプレイやAR(Augmented Reality)ヘッドマウントディスプレイやMR(Mixed Reality)ヘッドマウントディスプレイである。なお、本実施の形態では、ヘッドマウントディスプレイ100が、ARやMRに用いられるオプティカルシースルータイプのヘッドマウントディスプレイとなっているが、非透過型のヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0017】
以下、説明の明確化のため、XYZ3次元直交座標系を用いて説明を行う。ユーザを基準として、前後方向(奥行方向)をZ方向、左右方向(水平方向)をX方向、上下方向(鉛直方向)をY方向とする。前方向を+Z方向、後ろ方向を-Z方向、右方向を+X方向、左方向を-X方向、上方向を+Y方向、下方向を-Y方向とする。
【0018】
図示しないユーザが、ヘッドマウントディスプレイ100を装着している。ヘッドマウントディスプレイ100は、表示素子部101と、フレーム102と、左眼用光学系103Lと、右眼用光学系103Rと、制御部105を備えている。制御部105は、制御部105Lと制御部105Rとを備えている。
【0019】
フレーム102はゴーグル形状や眼鏡形状を有しており、図示しないヘッドバンドなどによりユーザの頭部に装着される。フレーム102には、表示素子部101、左眼用光学系103L、右眼用光学系103R、制御部105L、制御部105Rが取り付けられている。なお、
図1では、両眼式のヘッドマウントディスプレイ100が図示されているが、眼鏡形状を有する非没入型ヘッドマウントディスプレイであってもよい。
【0020】
表示素子部101は、左眼用表示素子101Lと右眼用表示素子101Rを備えている。左眼用表示素子101Lは、左眼用の表示画像を生成する。右眼用表示素子101Rは、右眼用の表示画像を生成する。左眼用表示素子101L、及び右眼用表示素子101Rはそれぞれ液晶素子や有機EL(Electro-Luminescence)素子などのフラットパネルディスプレイ素子を備えている。左眼用表示素子101L、及び右眼用表示素子101Rは曲面形状を有するディスプレイでもよい。左眼用表示素子101Lと右眼用表示素子101Rは、それぞれアレイ状に配置された複数の画素を備えている。ここでアレイ状の配置とは、2次元状の配置だけでなく、ペンタイル配列などでもよい。左眼用表示素子101Lは右眼用表示素子101Rの左側(-X側)に配置されている。
【0021】
表示素子部101の上方(+Y側)には、制御部105が設けられている。制御部105には、外部からの映像信号、制御信号、電源が供給されている。例えば、HDMI(登録商標)などの有線接続、又はWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線接続によって、映像信号等が制御部105に入力される。ヘッドマウントディスプレイ100は、映像信号を生成する映像生成部(図示せず)を備えていてもよく、制御部105には、映像生成部が生成した映像信号等が入力されてもよい。
【0022】
制御部105L、制御部105RはCPU(Central Processing Unit)、及びメモリなどのハードウェア資源を備えており、メモリに格納されたコンピュータプログラムにしたがって動作する。さらに、制御部105L、制御部105Rはそれぞれ、ディスプレイの駆動回路等を備えている。制御部105Lは、映像信号、制御信号等に基づいて、左眼用画像の表示信号を生成して、左眼用表示素子101Lに出力する。これにより、左眼用表示素子101Lは、左眼用画像を表示するための表示光を出力する。制御部105Rは、映像信号、制御信号等に基づいて、右眼用画像の表示信号を生成して、右眼用表示素子101Rに出力する。これにより、右眼用表示素子101Rは、右眼用の表示画像を表示するための表示光を出力する。つまり、制御部105は表示信号を表示素子部101に出力する。
【0023】
なお、表示素子部101は、左眼用表示素子101Lと右眼用表示素子101Rを別々の表示素子とする構成に限らず、単一の表示素子とする構成としてもよい。単一の表示素子が、左眼用の表示画像と右眼用の表示画像とを生成してもよい。この場合、表示素子部101は、ディスプレイの表示領域の片側の一部を用いて、左眼用画像を生成し、反対側の一部を用いて、右眼用画像を生成する。
【0024】
表示素子部101、制御部105等の一部又は全部は、フレーム102に固定されている構成に限らず、フレーム102に対して脱着可能に設けられていてもよい。例えば、スマートフォン又はタブレットコンピュータ等をフレーム102に対して取り付けることで、表示素子部101、制御部105等を実現してもよい。この場合、スマートフォン等にヘッドマウントディスプレイ用の表示画像を生成するアプリケーションプログラム(アプリ)を予めインストールしておけばよい。
【0025】
左眼用光学系103Lは、左眼用表示素子101Lが出力した表示光を、左眼用画像としてユーザの左眼ELに導く。右眼用光学系103Rは、右眼用表示素子101Rが出力した表示光を、右眼用画像としてユーザの右眼ERに導く。左眼用光学系103Lは右眼用光学系103Rの左側(-X側)に配置されている。左眼用光学系103Lは、ユーザの左眼ELの前方(+Z方向)に配置されている。右眼用光学系103Rは、ユーザの右眼ERの前方(+Z方向)に配置されている。ユーザは、表示素子部101が生成した表示画像の虚像を正面前方(+Z方向)に視認することができる。
【0026】
上記の通り、本実施の形態にかかるヘッドマウントディスプレイ100は、半透過型又は非透過型のヘッドマウントディスプレイのいずれにも可能である。なお、ここではヘッドマウントディスプレイ100が、半透過型のヘッドマントディスプレイであるとして説明を行う。従って、左眼用光学系103L、及び右眼用光学系103Rは、後述するコンバイナを備えている。半透過型のヘッドマウントディスプレイ100では、表示素子部101からの表示光と、外光とが、左眼EL及び右眼ERに入射する。よって、ユーザは、前方(+Z方向)の景色に表示画像が重畳した重畳画像を視認することができる。
【0027】
以下、左眼用光学系103Lと右眼用光学系103R(以下、まとめて単に光学系と称する)の例について説明する。
図3は、光学系を模式的に示す側面図である。なお、左眼用光学系103Lと右眼用光学系103Rとは同様の構成となっているため、
図3においては、左眼用光学系103Lについてのみ説明を行う。
【0028】
左眼用光学系103Lは、コンバイナ121Lと、ビームスプリッタ122Lと、を備えている。コンバイナ121L、ビームスプリッタ122Lは、
図1で示したフレーム102に固定されている。
【0029】
コンバイナ121Lは凹面鏡となっており、ビームスプリッタ122Lは平面鏡となっている。コンバイナ121L、及びビームスプリッタ122Lはハーフミラー等のビームスプリッタであり、入射光の一部を反射して、一部を透過する。コンバイナ121Lの反射の比率と透過の比率とが等しいとすると、コンバイナ121Lは、入射光のほぼ半分の光量を透過し、残りの半分を反射する。同様に、ビームスプリッタ122Lの反射の比率と透過の比率とが等しいとすると、ビームスプリッタ122Lは、入射光のほぼ半分の光量を透過し、残りの半分を反射する。コンバイナ121L及びビームスプリッタ122Lは、反射の比率を増やし透過の比率を減らしてもよいし、反射の比率を減らし透過の比率を増やしてもよい。
【0030】
コンバイナ121L、及びビームスプリッタ122Lはユーザの左眼ELの正面前方(+Z方向)に配置されている。また、コンバイナ121Lは、ビームスプリッタ122Lの前方(+Z方向)に配置されている。
【0031】
ビームスプリッタ122Lの上方(+Y方向)には、左眼用表示素子101Lが配置されている。左眼用表示素子101Lは表示画像を形成するための表示光PL11を出射する。つまり、左眼用表示素子101Lは、左眼ELの前方斜め上に配置されている。
【0032】
左眼用表示素子101Lからの表示光PL11について説明する。左眼用表示素子101Lの表示面は、下方(-Y方向)に面している。したがって、左眼用表示素子101Lからの表示光PL11は、下方(-Y方向)に出射される。左眼用表示素子101Lの下方(-Y方向)には、ビームスプリッタ122Lが傾斜して配置されている。左眼用表示素子101Lからの表示光PL11は、ビームスプリッタ122Lに入射する。ビームスプリッタ122Lは、表示光PL11の一部を反射する。
【0033】
なお、ビームスプリッタ122Lの下側に遮光部を設けてもよい。遮光部は、ビームスプリッタ122Lを透過した残りの表示光PL11を遮光する。これにより、ビームスプリッタ122を透過した表示光を遮光することができるため、ビームスプリッタ122Lよりも下側が明るくなることを防ぐことができる。
【0034】
ビームスプリッタ122Lは、左眼用表示素子101Lからの表示光PL11を前方(+Z方向)に反射する。そして、表示光PL11は、コンバイナ121Lに入射する。コンバイナ121Lは、後方(-Z方向)に表示光PL11の一部を反射する。コンバイナ121Lで反射された表示光PL11を表示光PL12とする。さらに、コンバイナ121Lは凹面鏡であり、表示光PL12を左眼ELに向けて集光するように、表示光PL11を反射する。コンバイナ121Lで反射された表示光PL12は、ビームスプリッタ122Lに入射する。ビームスプリッタ122Lは、表示光PL12の一部を透過する。
【0035】
ビームスプリッタ122Lを透過した表示光PL12は、左眼ELに入射する。このように、左眼用光学系103Lが、左眼用表示素子101Lからの表示光PL11を、ユーザの左眼ELに導く。このような光学系により、ユーザの前方(+Z方向)に虚像Iを表示させることができる。また、コンバイナ121Lとして凹面鏡を用いているため、表示画像が拡大して表示される。
【0036】
次に、ユーザの前方(+Z方向)からの外光PL21について説明する。外光PL21の一部は、コンバイナ121Lを透過する。コンバイナ121Lを透過した外光PL21は、ビームスプリッタ122Lに入射する。ビームスプリッタ122Lは、外光PL21の一部を透過する。ビームスプリッタ122Lを透過した外光PL21は、左眼ELに入射する。
【0037】
ヘッドマウントディスプレイ100が半透過型であるため、コンバイナ121Lは、前方(+Z方向)からの外光PL21と左眼用表示素子101Lからの表示光PL11を合成する。右眼用光学系103Rについては、左眼用光学系103Lと同様になっている。コンバイナ121Rは、前方(+Z方向)からの外光PR21と右眼用表示素子101Rからの表示光PR11を合成する。ユーザの前方(+Z方向)にコンバイナ121L、121Rを設けることで、ヘッドマウントディスプレイ100を光学シースルー方式とすることができる。ユーザの前方(+Z方向)の景色に、表示画像が重畳される。つまり、ユーザは、表示画像が重畳された景色を視認することができる。
【0038】
ビームスプリッタ122LはZ方向から傾斜している。すなわち、ビームスプリッタ122の表面が、XY平面から傾斜している。ビームスプリッタ122Lの上下位置(Y位置)に応じて、表示光PR12の入射角度が変わる。なお、
図3では、Z方向に対するビームスプリッタ122Lの傾斜角度は45°となっている。
【0039】
例えば、ビームスプリッタ122Lにおいて、左眼ELよりも上側にある位置を第1の位置Y1とし、左眼ELよりも下側にある位置を第2の位置Y2とする。第1の位置Y1における光の入射角を入射角θ1とし、第2の位置Y2における光の入射角を入射角θ2とする。入射角θ1と入射角θ2は、ビームスプリッタ122の平面に対する法線と、光の進行方向との成す角度である。ここで、入射角θ1、θ2を規定する光は、コンバイナ121Lで反射して左眼ELに向かう表示光PL12、又はコンバイナ121Lを透過して左眼ELに向かう外光PL21とすることができる。
【0040】
図3に示すように、ビームスプリッタ122Lは下側(-Y側)になるほど、前側(+Z側)になるように傾斜している。よって、入射角θ1は入射角θ2よりも小さくなる。例えば、ビームスプリッタ122Lは入射角が小さくなるほど、透過率が高くなっている。よって、ビームスプリッタ122Lの上側が明るくなり、下側が暗くなってしまい、虚像Iに輝度差が生じてしまうおそれがある。
【0041】
そこで、本実施の形態では、入射角の違いに起因する虚像の輝度差を低減するため、ビームスプリッタ122Lの透過率の空間分布を調整している。以下、ビームスプリッタ122Lの詳細な構成について、
図4を用いて説明する。ビームスプリッタ122Lの構成を模式的に示す側面断面図である。
【0042】
ビームスプリッタ122Lは、基板1221と、ハーフミラー膜1222と、を備えている。基板1221は光を透過する透明基板である。例えば、基板1221は、ガラス基板又は樹脂基板などとなっている。ハーフミラー膜1222は、基板1221のコンバイナ121L側の面に形成された薄膜である。ハーフミラー膜1222は、入射した光の一部を透過する。ハーフミラー膜1222は、膜厚に応じて光の透過率が変化する。膜厚が厚くなるほど、ハーフミラー膜1222の透過率が低くなる。例えば、膜厚と透過率とが反比例の関係となっている。
【0043】
図4に示すように、下側(-Y側)になるほど、ハーフミラー膜1222の膜厚が薄くなっていく。Z方向において左眼ELから離れるにつれて、ハーフミラー膜1222の膜厚が薄くなっている。このようにすることで、入射角の違いに起因する虚像の輝度差を低減することができる。ヘッドマウントディスプレイ100の表示品質を向上することができる。
【0044】
具体的には、第1の位置Y1における膜厚が、第2の位置Y2における膜厚よりも厚くなる。第1の位置Y1から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率が、第2の位置Y2から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率と一致する。換言すると、Z方向と平行に進む光がビームスプリッタ122Lに入射した場合、第1の位置Y1における透過率が第2の位置Y2における透過率よりも低くなる。
【0045】
このように、ビームスプリッタ122Lは、厚さに応じて透過率が変化するハーフミラー膜1222を有している。そして、ハーフミラー膜1222の厚さが上側から下側に向かうに、徐々に薄くなっていく。このようにすることで、第1の位置Y1から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率と、第2の位置Y2から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率とが等しくなる。よって上下方向における虚像の輝度差を低減することができる。ヘッドマウントディスプレイ100の表示品質を向上することができる。
【0046】
ハーフミラー膜1222としては、例えば、蒸着膜を用いることができる。ハーフミラー膜1222は、基板1221の面内において、膜厚が異なるように斜方蒸着されたウェッジコートとなっている。蒸着源に対して基板1221を傾けた状態として、ハーフミラー膜1222を基板1221上に蒸着すればよい。つまり、蒸着源に対して基板1221を斜めに配置することで、蒸着源から基板1221の一端までの距離が、蒸着源から基板1221の他端までの距離よりも大きくなる。これにより、基板1221の一端から基板1221の他端に向かうにつれて、ハーフミラー膜1222の膜厚が徐々に厚くなるように、蒸着膜を形成することができる。なお、
図4では、ハーフミラー膜1222の厚さが連続的に変化しているが、ハーフミラー膜1222の厚さが段階的に変化していても良い。例えば、2段階以上の異なる膜厚でハーフミラー膜1222を形成すれば良い。ハーフミラー膜1222は単層膜でもよく、多層積層膜でもよい。
【0047】
図5は、第1の位置Y1と第2の位置Y2とにおける光の透過率特性を示すグラフである。
図5において、横軸が光の波長であり、縦軸が透過率となっている。
図5では、入射角が40°、45°、50°の場合の透過率が示されている。第1の位置Y1での透過率をT1とし、第2の位置Y2での透過率をT2とする。例えば、入射角θ1が40°の透過率T1がT1(40°)として示されている。
【0048】
図5に示すように、ビームスプリッタ122Lは、T1(40°)とT2(50°)とが一致するような透過率分布を有している。具体的には、
図4において、第1の位置Y1での表示光PL12がZ軸に対して-5°傾いており、第2の位置Y2での表示光PL12がZ軸に対して+5°傾いている。このような場合、ビームスプリッタ122Lが、T1(40°)とT2(50°)とが一致するような透過率分布を有するように、ハーフミラー膜1222の膜厚分布を調整する。第1の位置Y1において、Z方向から-5°傾いた方向に進む光の透過率が、第2の位置Y2において、Z方向から+5°傾いた方向に進む光の透過率と一致している。
【0049】
換言すると、ハーフミラー膜1222は、入射角が同じ場合、T1がT2よりも低くなるような膜厚分布を有している。例えば、T1(45°)はT2(45°)よりも小さくなる。このようにすることで、上下方向の輝度差を低減することができるため、表示品質を向上することができる。
【0050】
実施の形態2
実施の形態2では、ビームスプリッタ122L、122Rの構成が実施の形態1と異なっている。
図6は、光学系の光学系を示す模式図である。
図7は、ビームスプリッタ122Lの構成を模式的に示す側面断面図である。ビームスプリッタ122L、122R以外の構成については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。また、ビームスプリッタ122Rはビームスプリッタ122Lと同様であるため、適宜、説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、ビームスプリッタ122Lは、第1の領域S1と第2の領域S2に分割されている。第1の領域S1は第1の位置Y1を含む領域である。第2の領域S2は、第2の位置Y2を含む領域である。
図6に示すように、ビームスプリッタ122Lの上側半分が第1の領域S1となっており、下側半分が第2の領域S2となっている。第2の領域S2は第1の領域S1の前側にある。
【0052】
図7に示すように、第1の領域S1と第2の領域S2とで、ビームスプリッタ122Lが分割されている。具体的には、第1の領域S1におけるビームスプリッタ122Lを上側ビームスプリッタ1224とし、第2の領域S2におけるビームスプリッタ122Lを下側ビームスプリッタ1225とする。しがって、ビームスプリッタ122Lは上側ビームスプリッタ1224と下側ビームスプリッタ1225とを備えている。
【0053】
上側ビームスプリッタ1224は基板1221aとハーフミラー膜1222aとを備えている。下側ビームスプリッタ1225は基板1221bとハーフミラー膜1222bとを備えている。基板1221aと基板1221bとは、透明な基板などであり、同じ厚さとなっている。
【0054】
ハーフミラー膜1222a、1222bは、基板1221a、1221bのコンバイナ121L側の面に形成されている。ハーフミラー膜1222a、1222bは、膜厚に応じて光の透過率が変化する薄膜である。膜厚が厚くなるほど、ハーフミラー膜1222の透過率が低くなる。例えば、膜厚と透過率とが反比例の関係となっている。ハーフミラー膜1222aと、ハーフミラー膜1222bとは、同じ材料で形成された薄膜である。ハーフミラー膜1222a、1222bは単層膜でもよく、多層積層膜でもよい。
【0055】
ハーフミラー膜1222aと、ハーフミラー膜1222bとは、膜厚が異なっている。ハーフミラー膜1222aはハーフミラー膜1222bよりも厚く形成されている。例えば、基板1221a上にハーフミラー膜1222aとなる薄膜を形成することで上側ビームスプリッタ1224が形成される。基板1221b上にハーフミラー膜1222bとなる薄膜を形成することで下側ビームスプリッタ1225が形成される。
【0056】
このようにすることで、第1の位置Y1から左眼ELに向かう方向における上側ビームスプリッタ1224の透過率が、第2の位置Y2から左眼ELに向かう方向における下側ビームスプリッタ1225の透過率と一致する。よって、上下方向における虚像Iの輝度差を抑制することができる。ヘッドマウントディスプレイ100の表示品質を向上することができる。なお、上側ビームスプリッタ1224と、下側ビームスプリッタ1225との分割線は、左眼ELの近傍であるため、ぼやけて視認できない。よって、ユーザは分割線による表示品質の劣化の影響を受けにくい。
【0057】
実施の形態3
実施の形態3にかかるヘッドマウントディスプレイの構成について、
図8を用いて説明する。
図8はヘッドマウントディスプレイのビームスプリッタ122Lの構成を模式的に示す正面図である。なお、ビームスプリッタ122L、122R以外の構成については、実施の形態1,2と同様であるため説明を省略する。また、ビームスプリッタ122Rは、ビームスプリッタ122Rと同様であるため、説明を省略する。
【0058】
実施の形態3では、ビームスプリッタ122Lが、例えば、ポルカドットビームスプリッタとなっている。具体的には、ビームスプリッタ122Lは、基板1221と、反射膜のパターン1228とを備えている。基板1221は透明な基板となっている。基板1221上に、微細な反射膜のパターン1228が形成されている。基板1221に、アルミニウムなどの金属膜をコーティングすることで、反射膜のパターン1228が形成される。
【0059】
よって、反射膜のパターン1228が形成されている箇所に入射した光は、ビームスプリッタ122Lで反射される。パターン1228が形成されていない箇所に入射した光は、ビームスプリッタ122Lを透過する。パターン1228が形成されていない箇所では、光が透明な基板1221を透過する。パターン1228の面積占有率、つまり開口率を調整することで、反射率を調整することができる。なお、面積占有率は、単位面積当りにおいて、反射膜のパターン1228が占める割合である。パターン1228が占める割合を高くすることで、透過率を下げることができる。パターン1228が占める割合を低くすることで、透過率を上げることができる。
【0060】
反射膜のパターン1228は、左眼ELの近傍にあり、ユーザが視認できないほどのサイズとなっている。パターン1228は、ユーザが肉眼で視認できないほどの微細パターンである。よって、ユーザが虚像中にパターン1228を視認することがない。パターン1228は複数の円形ドットを含んでいる。つまり、反射膜のパターン1228は、複数のドットパターンとして形成されている。パターン1228は円形以外の形状であってもよい。反射膜のパターン1228は単層膜でもよく、多層積層膜でもよい。
【0061】
第1の位置Y1を含む第1の領域S1は、ユーザの左眼よりも上側に配置されている。第2の位置Y2を含む第2の領域S2は、ユーザの左眼よりも下側に配置されている。第1の領域S1と第2の領域S2とで、パターン1228の面積占有率が異なっている。
【0062】
具体的には、第1の領域S1におけるパターン1228の面積占有率が、第2の領域S2におけるパターン1228の面積占有率よりも大きくなっている。このようにすることで、入射角が同じ場合、第1の領域S1の透過率を第2の領域S2の透過率よりも小さくすることができる。つまり、入射角が同じ場合、第1の領域S1では、第2の領域S2よりも多くの光を反射する。第1の位置Y1から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率が、第2の位置Y2から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率と一致する。上下方向の輝度差を低減することができるため、ヘッドマウントディスプレイ100の表示品質を向上することができる。
【0063】
図8では、第1の領域S1のパターン1228は、第2の領域S2のパターン1228よりも大きなサイズとなっている。つまり、第1の領域S1のパターン1228のドットサイズは、第2の領域S2のパターン1228のドットサイズよりも大きくなっている。第1の領域S1と第2の領域S2とで、パターン1228のピッチは同じとなっている。このようにすることで、それぞれの位置で左眼ELに向かう方向における透過率を一致させることができる。
【0064】
もちろん、第1の領域S1のパターン1228と、第2の領域S2のパターン1228とは同じサイズとしてもよい。この場合で、第1の領域S1のパターン1228と、第2の領域S2のパターン1228とを異なるピッチで形成する。つまり、サイズ、ピッチ、形状、数等の少なくとも一つを変えることで、面積占有率を変えることができる。パターン1228に面内分布を設けることで、それぞれの位置における透過率を一致させることができる。これにより、上下方向の輝度ムラを抑制することができるため、表示品質を向上することができる。また、ビームスプリッタ122Lにおける透過率が異なる領域を更に細分化し、それぞれの領域の一地点から左眼ELに向かう方向における透過率が一致するようにしてもよい。
【0065】
実施の形態4
実施の形態4にかかるヘッドマウントディスプレイ100について、
図9を用いて説明する。
図9は、ヘッドマウントディスプレイ100のビームスプリッタ122Lの構成を模式的に示す側面図である。なお、ビームスプリッタ122L以外の構成は実施の形態1~3と同様であるため説明を省略する。例えば、ビームスプリッタ122Lは、
図6に示したように、第1の領域S1と第2の領域S2に分割されている。第1の領域S1は、左眼よりも上にある第1の位置Y1を含む領域であり、第2の領域S2は、左眼ELよりも下にある第2の位置Y2を含む領域である。
【0066】
ビームスプリッタ122Lは基板1221とハーフミラー膜1222と吸光フィルタ1229とを備えている。基板1221のコンバイナ121L側の面には、ハーフミラー膜1222が形成されている。基板1221の左眼EL側の面には、吸光フィルタ1229が形成されている。つまり、後方から、吸光フィルタ1229,基板1221,ハーフミラー膜1222の順番で配置されている。吸光フィルタ1229は光の一部を吸収して、残りを透過する。
【0067】
ハーフミラー膜1222は面内全体で均一な膜厚で形成されている。よって、ハーフミラー膜1222の反射率及び透過率は面内で均一になっている。一方、吸光フィルタ1229の吸収率が面内で均一となっていない。第1の領域S1と第2の領域S2とで、吸光フィルタ1229の吸収率が異なっている。第1の領域S1の吸光フィルタ1229の吸収率は第2の領域S2の吸光フィルタ1229の吸収率よりも高くなっている。
【0068】
よって、第1の位置Y1から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率が、第2の位置Y2から左眼ELに向かう方向におけるビームスプリッタ122Lの透過率と一致する。上下方向の輝度差を低減することができる。このような吸光フィルタ1229を基板1221に貼り合わせることで、表示品質を向上することができる。
【0069】
吸光フィルタ1229の吸収率は、透明材料中に含まれる吸光材の濃度により、調整することができる。例えば、吸光材の濃度を高くするほど、吸収率が高くなる。第1の領域S1において、吸光材の濃度が高くなっており、第2の領域S2では吸光材の濃度が低くなっている。このように、第1の領域S1の吸光材の濃度を第2の領域S2の濃度よりも高くすることで、上下方向の輝度ムラを改善することができる。なお、第1の領域S1の吸光フィルタ1229と第2の領域S2の吸光フィルタ1229は一体的に形成されていてもよく、別体として形成されていてもよい。
【0070】
なお、ヘッドマウントディスプレイ100がオプティカルシースルー方式のヘッドマントディスプレイとして説明したが、ヘッドマウントディスプレイ100は非透過型のヘッドマントディスプレイであってもよい。非透過型のヘッドマウントディスプレイの場合、コンバイナ121L、121Rの代わりに、反射ミラーが設けられていればよい。つまり、ビームスプリッタ122の前方に配置される反射部材は、ハーフミラーなどのビームスプリッタであってもよく、反射ミラーであってもよい。反射部材が表示光をユーザの方向に反射する。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記の実施の形態の2つ以上を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
EL 左眼
ER 右眼
100 ヘッドマウントディスプレイ
101 表示素子部
101L 左眼用表示素子
101R 右眼用表示素子
102 フレーム
103L 左眼用光学系
103R 右眼用光学系
121L、121R、121 コンバイナ
122L、122R、122 ビームスプリッタ
PL11、PL12 表示光
PL21 外光
1221 基板
1222 ハーフミラー膜
1224 上側ビームスプリッタ
1225 下側ビームスプリッタ
1228 パターン
1229 吸光フィルタ
S1 第1の領域
S2 第2の領域
Y1 第1の位置
Y2 第2の位置