(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176328
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】生産方法
(51)【国際特許分類】
C22C 33/02 20060101AFI20231206BHJP
B22F 3/14 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C22C33/02 103E
B22F3/14 101B
C22C33/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088559
(22)【出願日】2022-05-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年6月1日~3日、粉体粉末冶金協会主催の「2021年度春季大会」において、オンライン開催。 (2)令和3年11月9日~11日、粉体粉末冶金協会主催の「2021年度秋季大会」において、オンライン開催。
(71)【出願人】
【識別番号】593171592
【氏名又は名称】学校法人玉川学園
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】川森 重弘
(72)【発明者】
【氏名】内藤 浩生
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA24
4K018AB07
4K018AC01
4K018BA13
4K018BC08
4K018EA21
4K018KA01
(57)【要約】
【課題】鉄-高炭素合金を安定した品質で生産する方法を提供すること。
【解決手段】純鉄粉末M11と、炭素粉末M12とを混合した混合粉末M2に対して、モース硬度7程度の高硬度ステンレス素材で形成される容器、及び、モース硬度7程度の高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)素材で形成されるボールを用いるメカニカルアロイング処理を施すことで、Fe-30体積%C合金MA粉末M3を生成する。Fe-30体積%C合金MA粉末M3を放電プラズマ焼結用カーボン製治具に粉末を投入し、カーボン治具に収められたFe-30体積%C合金MA粉末M3を放電プラズマ焼結することで、放電プラズマ焼結体M4を生産する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPS体を生産する方法において、
鉄を含む第1粉末と、炭素を含む第2粉末とを混合した結果得られる混合粉末に対して、所定閾値以上の第1硬度の第1素材で形成される容器及び前記所定閾値以上の第2硬度の第2素材で形成されるボールを用いるMA処理を施すことで、合金MA粉末を生成するMA処理ステップと、
前記合金MA粉末を放電プラズマ焼結することで、前記SPS体を生産する焼結ステップと、
を含むSPS体の生産方法。
【請求項2】
前記所定閾値は、モース硬度で略7である、
請求項1に記載のSPS体の生産方法。
【請求項3】
前記第1素材と前記第2素材として、凝着のしにくさの度合が一定以上の2つの素材を選択する素材選択ステップと、
前記素材選択ステップにおいて選択された前記第1素材から前記容器を生成し、前記素材選択ステップにおいて選択された前記第2素材から前記ボールを生成する容器ボール生成ステップと、
をさらに含み、
前記MA処理ステップは、前記容器ボール生成ステップにおいて生成された前記容器及び前記ボールを用いる前記MA処理を前記混合粉末に対して施すステップを含む、
請求項1に記載のSPS体の生産方法。
【請求項4】
前記容器の前記第1素材は、ステンレス鋼であり、
前記ボールの前記第2素材は、SUJ2である、
請求項1に記載のSPS体の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭素を含む割合の高い鉄として鋳鉄の性質の向上等が行われてきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鋳鉄を超える炭素含有率、即ち、炭素含有率6.68質量%以上の高炭素を含有する炭素鋼(以下、「鉄-高炭素合金」と呼ぶ)は、製品としてみられない。即ち、製品を製造するために供給するべく、高炭素を含有する鉄-高炭素合金を、再現性を高く安定した品質で生産することは困難であった。
【0005】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、鉄-高炭素合金を安定した品質で生産する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の生産方法は、
SPS体を生産する方法において、
鉄を含む第1粉末と、炭素を含む第2粉末とを混合した結果得られる混合粉末に対して、所定閾値以上の第1硬度の第1素材で形成される容器及び前記所定閾値以上の第2硬度の第2素材で形成されるボールを用いるMA処理を施すことで、合金MA粉末を生成するMA処理ステップと、
前記合金MA粉末を放電プラズマ焼結することで、前記SPS体を生産する焼結ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉄-高炭素合金を安定した品質で生産する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生産方法の具体例を示す図である。
【
図3】
図1及び
図2の生産方法により生産したMA処理後の粉末及びSPS体のXRD測定結果を示す図である。
【
図4】
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の密度測定の結果を示す図である。
【
図5】
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の硬さ測定の結果を示す図である。
【
図6】
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の摩擦係数測定の結果を示す図である。
【
図7】
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の比摩耗量測定の結果及び硬さ測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
なお、本実施形態の生産方法は、純鉄粉末と、炭素粉末とから、鉄-高炭素合金を生産する方法である。以下、
図1及び
図2を用いて、炭素含有率30質量%の鉄-高炭素合金を製造する例を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る生産方法の具体例を示す図である。
【0010】
図1に示すステップST11において、鉄を含む第1材料と、炭素を含む第2粉末とを混合する。
具体的には、本実施形態では、鉄を含む第1材料として、純度99%で鉄を含み、粒径150μmの純鉄粉末M11が採用されている。また、炭素を含む第2材料として、純度99.9%で炭素を含み、粒径20μmの炭素粉末M12が採用されている。
そして、純鉄粉末M11と、炭素粉末M12とが、炭素粉末M12とを、炭素含有比率が30体積%(10.9質量%)となるように混合することにより、混合粉末が得られる。
【0011】
次に、ステップST12において、混合粉末M2に対して、モース硬度7程度の高硬度ステンレス素材で形成される容器、及び、モース硬度7程度の高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)素材で形成されるボールを用いるメカニカルアロイング(MA:Mechanical Alloying)処理を施すことで、Fe-30体積%C合金MA粉末M3を生成する。
具体的には、メカニカルアロイング処理のための容器には、モース硬度7程度の高硬度ステンレス素材として、硬質マルテンサイト系ステンレス鋼が採用されている。
詳しくは後述するが、容器及びボールは、夫々異なる素材が採用されていることが重要である。
【0012】
なお、詳しくは後述するが、メカニカルアロイング処理のための容器及びボールの素材は、メカニカルアロイング処理の対象となる材料により適宜選択される。
また、メカニカルアロイング処理のための容器及びボールは、選択された素材により生成(作成)される。ただし、選択された素材やその素材で作成された容器及びボールは、既製品として予め生成(作成)されたものが採用されてもよい。
【0013】
そして、
図1に示すように、以下の条件でメカニカルアロイング処理が施される。
即ち、メカニカルアロイング処理は、容積250立方センチメートルの上述の容器と、80立方センチメートル分の上述のボールを用いた、遊星ボールミル装置により、アルゴン雰囲気において、行われる。
このようなセットアップのもと、10立方センチメートルの混合粉末M2及び4質量%のステアリン酸を材料として、400rpmの回転数で、80時間、1時間毎にインターバル1分+逆回転のメカニカルアロイング処理を施すことで、Fe-30体積%C合金MA粉末M3を生成する。
【0014】
次に、ステップST13において、Fe-30体積%C合金MA粉末M3を放電プラズマ焼結(SPS:Spark Plasma Sintering)用カーボン製治具に粉末を投入する。
【0015】
次に、ステップST14において、カーボン治具に収められたFe-30体積%C合金MA粉末M3を放電プラズマ焼結することで、放電プラズマ焼結体M4(以下、「SPS体M4」と呼ぶ)を生産する。
具体的には、放電プラズマ焼結は、600℃の焼結温度で、80MPaの加圧力を加え、昇温時間6分、焼結時間10分、降温時間13分のパラメータで行う。
【0016】
このようにステップST11乃至ST14の処理により、炭素含有率30質量%の鉄-高炭素合金であるSPS体が生産される。
次に、
図2を用いて、SPS体の生産の流れについて説明する。
図2は、
図1の生産方法の流れを示す図である。
【0017】
図2のステップS1において、容器及びボールの素材を夫々選択する。
具体的な選択の指針については後述するが、メカニカルアロイング処理のための容器及びボールの素材は、メカニカルアロイング処理の対象となる材料により適宜選択される。
【0018】
次に、ステップS2において、容器及びボールをステップS1の処理により選択された素材を用いて夫々生成される。ただし、選択された素材やその素材で作成された容器及びボールは、既製品として予め生成(作成)されたものが採用されてもよい。
【0019】
次に、ステップS3において、混合粉末に対してMA処理を施す。即ち、
図1のステップST11に示すように、純鉄粉末M11と炭素粉末M12を混合して混合粉末M2として、
図1のステップST12に示すようにメカニカルアロイング(MA)処理を施す。これにより、Fe-30体積%C合金MA粉末M3が生成される。
【0020】
次に、ステップS4において、ステップS3の処理により生成されたFe-30体積%C合金MA粉末M3を放電プラズマ焼結する。即ち、
図1のステップST13に示すように、Fe-30体積%C合金MA粉末M3を放電プラズマ焼結用カーボン製治具に粉末を投入し、放電プラズマ焼結することで、SPS体M4を生産する。
【0021】
このような流れにより、鋳鉄を超える炭素含有率の鉄-高炭素合金であるSPS体M4が生産される。
【0022】
以下、
図3乃至
図7を用いて、
図1及び
図2を用いて説明した生産方法で生産した合金の特性について説明する。
図3は、
図1及び
図2の生産方法により生産したMA処理後の粉末及びSPS体のXR
D測定結果を示す図である。
XRD測定結果に基づいて、以下の評価を行った。
即ち、Fe(110)の面間隔から算出した格子定数a0=0.28751(nm)である。そして、αFe中の固溶炭素量と格子定数の関係式によれば、a0(nm)=0.28664+0.00084C(at%)となる。その結果、炭素=1.0357(at%)(0.22784(mass%))である。
そして、平衡状態図より,αFeの最大固溶C量は0.10400(at%)(0.022382(mass%))である。
が生産される。
【0023】
図4は、
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の密度測定の結果を示す図である。
図4に示すように、本実施形態のFe-30体積%炭素合金の密度は、他の比較材や、ねずみ鋳鉄(FC100~FC350)と比較して、有意に低いものとなっている。即ち、本実施形態のFe-30体積%炭素合金は、炭素含有量が多く、軽量なものとなってる。
【0024】
図5は、
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の硬さ測定の結果を示す図である。
図5に示すように、本実施形態のFe-30体積%炭素合金の硬さは、他の比較材や、ねずみ鋳鉄(FC100~FC350)と比較して、有意に高いものとなっている。即ち、本実施形態のFe-30体積%炭素合金は、炭素を多く含むことでより硬度の高いものとなってる。
【0025】
図6は、
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の摩擦係数測定の結果を示す図である。
図6に示すように、本実施形態のFe-30体積%炭素合金の摩擦係数は、他の比較材や、ねずみ鋳鉄(FC100~FC350)と比較して、同等な比較材も存在するが有意に低いものとなっている。即ち、本実施形態のFe-30体積%炭素合金は、摩擦係数の低い、潤滑性の高いものとなってる。
【0026】
図7は、
図1及び
図2の生産方法により生産したSPS体の比摩耗量測定の結果及び硬さ測定の結果を示す図である。
図7に示すように、本実施形態のFe-30体積%炭素合金の比摩耗量及びビッカース硬さは、他の比較材と比較して、優れた比摩耗量及びビッカース硬さを有している。即ち、本実施形態のFe-30体積%炭素合金は、鋳鉄を超える潤滑性及び耐摩耗性を有している。
【0027】
図4乃至
図7に示すように、本実施形態のFe-30体積%炭素合金は、鋳鉄を超える炭素含有率の鉄-高炭素合金として、期待する性能を有しているものである。
【0028】
以下、
図1及び
図2を用いて説明した生産方法と従来の生産方法との相違点について説明する。
【0029】
良好な鉄-高炭素合金を作製することが可能となれば、鋳鉄を超える耐摩耗性、潤滑性及び制振性が期待できるため、産業上利用可能性の高い素材となる。
しかしながら、従来の溶解法で生産しようとした場合、炭素含有率の増加に伴い融点が上昇することや冷却過程で炭素の昇華や遊離等が生じる。そのため、溶解法で目的の炭素含有率を達成した鉄-高炭素合金を生産することは困難であった。
【0030】
これに対して、本実施形態の生産方法では、熱エネルギーに依らず機械的エネルギーで異種粉末の固相反応による合金化する方法、即ち、メカニカルアイロイング(MA)処理を施し、純鉄(Fe)粉末及び炭素(C)粉末を用いて、炭素含有率10.9mass%(30 vol%)の鉄-高C合金粉末を作製することができる。
【0031】
更に、
図3等を用いて説明するが、放電プラズマ焼結法(SPS)により、Fe-高C合金SPS体を生産し、機械的性質を調査した結果、本実施形態の生産方法で生産したSPS体は、実用ねずみ鋳鉄品をはるかに凌ぐ硬さを示し、高い耐摩耗性が期待できる。
【0032】
なお、本実施形態の生産方法で得られたFe-高C合金SPS体M4(超炭素鋼)の組成は、主にFeとFe3Cの超微細粒(平均粒径50nm)およびアモルファスCで構成されていることがわかった。
一般的な実用鉄鋼材料と比較して、軽量(密度:約5.7g/cm3)かつ高硬度(約550HV)であり、摩耗試験に依る摩擦係数が低く、比摩耗量も1~2桁小さいことから、潤滑性かつ耐摩耗性に優れている。
【0033】
上述したように、一般的な合金作製法である溶解法では、C含有率の増加に伴い融点が上昇することや冷却過程でCの昇華・有利等が生じるため、目的の炭素含有率を有する合金の作製は困難である。
【0034】
また、粉末から製品を作製する従来の粉末冶金法を用いようとする場合、炭素含有率6.67質量%以上の鉄粉末と炭素粉末を混合処理した粉末を焼結する工程において、FeとCの焼結温度は大きく異なるため、どんなに均一に混合した粉末であっても、良好な(均一な)焼結体を得ることはできない。
【0035】
これに対して、本実施形態ではMA処理を施して鉄と炭素を合金化したFe-30体積%C合金MA粉末M3を生成するのである。即ち、Fe粉末とC粉末ではなく、Fe-高C合金粉末をSPS焼結するため、良好な(均一な)SPS体M4を得ることが可能となるのである。
【0036】
ここで、単にMA処理及びSPS法を採用したのみでは、同じMA処理とSPSの条件を設定した場合であっても、生産されるSPS体の密度や硬さの特性には再現性が見られないことがあった。
発明者は、MA粉末の生成時のMA処理用の容器及びボールに、いずれも鉄鋼を素材とした採用した場合、SPS体の密度や硬さの再現性に大きな影響を及ぼしていることを見出した。
即ち、上述の本実施形態のように、容器及びボールの素材を選択することにより、再現性があるSPS体M4を生産することが可能となるのである。
【0037】
即ち、従来、ボールミル容器及びボールの素材を特別に選定しない場合、MA処理において、MA処理時のボールミル容器および粉砕ボールに、同じ材質のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304(モース硬度5程度)製を用いることが考えられる。
この場合、容器とボールの摩耗が激しく同条件でMA処理を行ったとしても、生成されたMA処理後の粉末には毎回異なる量の摩耗粉が混入する。これにより、MA処理後の粉末をプラズマ焼結したSPS体の特性の再現性を得ることは困難であった。
【0038】
上述したように、容器及びボールは、異なる素材を採用することが重要である。以下、より具体的に説明する。
トライボロジー分野では、一般的に同じ材質の金属同士の組み合わせの摩擦のことを「ともがね」と呼ぶ。同じ材質の金属同士の組み合わせの摩擦においては、同じ結晶構造を有していることで互いの原子同士の化学結合が容易となるため、凝着し易くなるといわれている。そのため、従来の同じ材質のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304(モース硬度5程度)製を用いたMA処理時には、容器とボールとが凝着し易いことで,互いが削れやすくなった、即ち、摩耗が激しくなると考えられる。
【0039】
また、上述のステンレス鋼製容器と同じ素材のボールを採用した場合ほどではないとはいえ、ステンレス鋼よりも高硬度(モース硬度8.5)であるセラミックスのジルコニア製容器と同じ素材である粉砕ボールを用いた場合においても、容器とボールの摩耗は顕著となる。
このことから金属に限らず、同じ素材の容器とボール組み合わせは、MA処理時に生じるボールと容器の衝突の時に互いに凝着し易くなり、その結果としてそれぞれの摩耗が多く生じると考えられた。また,摩耗量については、互いの硬さが高いほうが少ない傾向があると考えられる。
【0040】
そこで、発明者は、高硬度(モース硬度7程度)を有する硬質マルテンサイト系ステンレス鋼製ボールミル容器と同等の硬さであるが、素材の異なる高炭素クロム軸受鋼SUJ2製ボールの組み合わせを選択した。
なお、いずれも熱処理材である。これらの熱処理材料は、実用軸受鋼として用いられており、高い耐摩耗性を有していることで知られている。また、材質が異なる組み合わせであることや互いの結晶構造が異なること、さらに軸に容器に用いるステンレス鋼と類似の化学成分のステンレス鋼を用い、軸受にSUJ2用いた実用品が存在することから、凝着しづらい組み合わせが好適ではないかと予測した。
このように、より高硬度であり、凝着の程度が低いと考えられる素材の組合せの容器及びボールを選択することが、SPS体M4の再現性を向上させるために重要である。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものとみなす。
【0042】
以上をまとめると、本発明が適用される生産方法は、次のようなステップを有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される生産方法は、
SPS体を生産する方法において、
鉄を含む第1粉末と、炭素を含む第2粉末とを混合した結果得られる混合粉末に対して、所定閾値以上の第1硬度の第1素材で形成される容器及び前記所定閾値以上の第2硬度の第2素材で形成されるボールを用いるMA処理を施すことで、合金MA粉末を生成するMA処理ステップと、
前記合金MA粉末を放電プラズマ焼結することで、前記SPS体を生産する焼結ステップと、
を含めば足りる。
これにより、鉄-高炭素合金を安定した品質で生産する方法を提供することができる。
【0043】
前記所定閾値は、モース硬度で略7とすることができる。
【0044】
前記第1素材と前記第2素材として、凝着のしにくさの度合が一定以上の2つの素材を選択する素材選択ステップと、
前記素材選択ステップにおいて選択された前記第1素材から前記容器を生成し、前記素材選択ステップにおいて選択された前記第2素材から前記ボールを生成する容器ボール生成ステップと、
をさらに含み、
前記MA処理ステップは、前記容器ボール生成ステップにおいて生成された前記容器及び前記ボールを用いる前記MA処理を前記混合粉末に対して施すステップを含む、ことができる。
【0045】
前記容器の前記第1素材は、ステンレス鋼であり、
前記ボールの前記第2素材は、SUJ2、とすることができる。
【符号の説明】
【0046】
S1乃至S4・・・ステップ、M11・・・純鉄粉末、M12・・・炭素粉末、M2・・・混合粉末、M3・・・Fe-30体積%C合金MA粉末、M4・・・Fe-30体積%C合金SPS体