IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユーディーの特許一覧

<>
  • 特開-循環式トイレシステム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176341
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】循環式トイレシステム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/04 20230101AFI20231206BHJP
   C02F 11/12 20190101ALI20231206BHJP
   E03D 1/00 20060101ALI20231206BHJP
   E03D 5/016 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C02F1/04 F ZAB
C02F11/12
E03D1/00 A
E03D5/016
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088576
(22)【出願日】2022-05-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】508324112
【氏名又は名称】株式会社ユーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】塚野 光男
【テーマコード(参考)】
2D039
4D034
4D059
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC09
2D039AC10
4D034AA16
4D034BA03
4D034CA12
4D059AA01
4D059BD01
4D059BE01
4D059BE49
4D059BK17
4D059CB24
(57)【要約】
【課題】下水道と接続されていない水洗式トイレを、衛生車による汲み取りを必要としないように改良する。
【解決手段】トイレ便器10で生じた汚水は、浄水装置20のケース21に導かれて、傾斜した板であるメッシュ板22に落ちる。メッシュ板22には多数の孔が穿たれており、汚水X中の液体X1はメッシュ板22から孔を介して下に落ち、他方汚水X中の固形分X2はメッシュ板22の上を滑り落ち、メッシュ板22の下端の下に開口を持つ回収箱23内に至る。回収箱23内の固形分X2は第1ヒータ24の加熱により乾燥する。他方、ケース21に溜まった液体X1は、第1ヒータ24及び第2ヒータ26により加熱され、蒸気を生じる。蒸気は復水器30で浄水となり再びトイレ便器10での水洗に用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗式のトイレ便器と、前記トイレ便器に水洗用の浄水を供給するための前記浄水を貯めるようになっており、前記トイレ便器にその一端を接続された給水管の他端と接続された浄水タンクと、前記トイレ便器で生じた固形分を含む汚水を前記トイレ便器から排水管を介して受入れ、前記汚水を浄水にして前記浄水タンクに供給する浄水設備と、を含んでなる循環式トイレシステムであって、
前記浄水設備は、
閉空間を形成する、前記排水管が接続されたケースと、
前記ケース内の前記排水管の開口の下側にその一部が位置するようにして傾斜して配置された板材であり、前記汚水中の液体を通過させるための多数の孔が穿たれたメッシュ板と、
前記メッシュ板の上を滑ってきた前記汚水中の前記固形分を受ける、前記メッシュ板の下端側の下方に配置された、前記ケースの底に溜まる前記汚水の予定された最高水位よりも高い位置で上方が開口した箱である回収箱と、
前記回収箱の内部を80℃以上に加熱可能な第1ヒータと、
前記ケース内で生じた水蒸気を前記ケース外に排出するための前記ケース内の空間に連通するようにして前記ケースに接続された排気管と、
前記排気管に設けられた、前記排気管を介して送られてきた水蒸気を液体に戻して浄水とする復水器と、
を備えており、
前記復水器で作られた前記浄水が、前記復水器と前記浄水タンクとにその一端と他端とをそれぞれ接続された接続管を介して前記浄水タンクに供給されるようになっている、
循環式トイレシステム。
【請求項2】
前記第1ヒータは、前記ケース内に溜まった汚水を加熱するようになっている、
請求項1記載の循環式トイレシステム。
【請求項3】
前記第1ヒータは、前記ケースの底に設けられている、
請求項1又は2記載の循環式トイレシステム。
【請求項4】
前記ケース内の気体を80℃以上に加熱可能な第2ヒータを備えている、
請求項1記載の循環式トイレシステム。
【請求項5】
前記第2ヒータは、前記ケース内に温風を送風するようになっている、
請求項4記載の循環式トイレシステム。
【請求項6】
前記ケースに、前記回収箱を出し入れするための開閉自在な扉が設けられている、
請求項1記載の循環式トイレシステム。
【請求項7】
水洗式のトイレ便器と、前記トイレ便器に水洗用の浄水を供給するための前記浄水を貯めるようになっており、前記トイレ便器にその一端を接続された給水管の他端と接続された浄水タンクと、組合せることにより、循環式トイレシステムを構成するものであり、
前記トイレ便器で生じた固形分を含む汚水を前記トイレ便器から排水管を介して受入れ、前記汚水を浄水にして前記浄水タンクに供給する浄水設備であって、
閉空間を形成する、前記排水管が接続されたケースと、
前記ケース内の前記排水管の開口の下側にその一部が位置するようにして傾斜して配置された板材であり、前記汚水中の液体を通過させるための多数の孔が穿たれたメッシュ板と、
前記メッシュ板の上を滑ってきた前記汚水中の前記固形分を受ける、前記メッシュ板の下端側の下方に配置された、前記ケースの底に溜まる前記汚水の予定された最高水位よりも高い位置で上方が開口した箱である回収箱と、
前記回収箱の内部を80℃以上に加熱可能な第1ヒータと、
前記ケース内で生じた水蒸気を前記ケース外に排出するための前記ケース内の空間に連通するようにして前記ケースに接続された排気管と、
前記排気管に設けられた、前記排気管を介して送られてきた水蒸気を液体に戻して浄水とする復水器と、
を備えており、
前記復水器で作られた前記浄水が、前記復水器と前記浄水タンクとにその一端と他端とをそれぞれ接続された接続管を介して前記浄水タンクに供給されるようにして用いられる、
浄水設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗式トイレ便器を含んでおり、水洗式トイレ便器で生じた汚水を浄化して再び水洗式トイレ便器洗浄用の浄水として用いるようにされた循環式トイレシステムに主に関する。
【背景技術】
【0002】
先進国では皆そうであるが、日本において現在存在するトイレの殆どは水洗式である。水洗式トイレは、水洗することによって汚水が生じる。汚水には、場合にもよるが固形分が含まれる。水洗式トイレで生じた汚水は、下水道に流されるのが一般的である。
【0003】
とはいうものの、現在の日本の下水道普及率は人数ベースで80%強であり、下水道と接続されていない水洗式トイレも相当数存在している。特に、島嶼部や山間部にはそのような下水道と接続されていない水洗式トイレが多く存在する。
下水道と接続されていない水洗式トイレは便槽か、浄化槽を備えている。便槽は汚水を貯めるためのタンクである。汚水は便槽に貯められ、例えば1ヶ月毎等の所定の期間毎に汲み取られる。浄化槽は、汚水を浄化する機能を有しており、場合によっては循環式のものもある。浄化槽を用いる場合においても、便槽を用いる場合程頻繁ではないが、汚水の汲み取りが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
汚水の汲み取りには、衛生車が必要である。衛生車の派遣には手間もコストも当然かかる。
下水道と接続されていない水洗式トイレを、衛生車による汲み取りを必要としないように改良しようという試みは以前からなされているが、便槽と浄化槽はともに原理上汲み取りが必要であるから、少なくとも実用的なレベルの技術は現時点で存在していない。
【0005】
本願発明は、下水道と接続されていない水洗式トイレを、衛生車による汲み取りを必要としないようにするための技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は以下のようなものである。
本願発明は、水洗式のトイレ便器と、前記トイレ便器に水洗用の浄水を供給するための前記浄水を貯めるようになっており、前記トイレ便器にその一端を接続された給水管の他端と接続された浄水タンクと、前記トイレ便器で生じた固形分を含む汚水を前記トイレ便器から排水管を介して受入れ、前記汚水を浄水にして前記浄水タンクに供給する浄水設備と、を含んでなる循環式トイレシステムである。
そして、前記浄水設備は、閉空間を形成する、前記排水管が接続されたケースと、前記ケース内の前記排水管の開口の下側にその一部が位置するようにして傾斜して配置された板材であり、前記汚水中の液体を通過させるための多数の孔が穿たれたメッシュ板と、前記メッシュ板の上を滑ってきた前記汚水中の前記固形分を受ける、前記メッシュ板の下端側の下方に配置された、前記ケースの底に溜まる前記汚水の予定された最高水位よりも高い位置で上方が開口した箱である回収箱と、前記回収箱の内部を80℃以上に加熱可能な第1ヒータと、前記ケース内で生じた水蒸気を前記ケース外に排出するための前記ケース内の空間に連通するようにして前記ケースに接続された排気管と、前記排気管に設けられた、前記排気管を介して送られてきた水蒸気を液体に戻して浄水とする復水器と、を備えている。
また、この循環式トイレシステムでは、前記復水器で作られた前記浄水が、前記復水器と前記浄水タンクとにその一端と他端とをそれぞれ接続された接続管を介して前記浄水タンクに供給されるようになっている。
【0007】
本願が提案するのは、循環式トイレシステムである。
循環式トイレシステムは、浄水タンク、水洗式のトイレ便器、浄水設備を含んで構成される。トイレ便器は、水洗式のものであり、従来と同じものでも良い。浄水タンクも、従来と同じものでも良い。汚水又は浄水は、循環式トイレシステム内において、浄水タンク→(給水管)→トイレ便器→(排水管)→浄水設備→(接続管)→浄水タンクの順に循環するようになっている。
循環式トイレシステムは、浄水設備を備えている。
浄水設備は、閉空間を形成する、ケースを備えている。ケースには、トイレ便器から伸びる排水管が接続されている。
ケース内の排水管の開口の下側には、板材であるメッシュ板が傾斜した状態で設けられている。メッシュ板は、固形分(主に、大便とトイレットペーパー)が含まれることのある汚水に対して、固形分と液体とを分離するいわゆる固液分離を行うためのものである。メッシュ板は、汚水による腐食に強い材料でできているのが好ましく、例えば、ステンレス製とするのが良い。メッシュ板は、傾斜して配された板材であり、多数の孔が穿たれている。多数の孔は、汚水中の液体を通過させてメッシュ板の下方に落とすためのものである。排水管の開口の下にメッシュ板が位置するため、排水管の開口から汚水がメッシュ板の上面に落ちてくる。そうすると、傾斜したメッシュ板の上面を汚水中の固形分が滑り落ちていくが、その間に汚水中の液体はメッシュ板に多数穿たれた孔を介して、メッシュ板の下方に落下していく。それにより、汚水の固液分離がなされることになる。傾斜するメッシュ板の比較的高い位置に排水管から汚水が落ちてくるようにすると、メッシュ板の多くの面積を固液分離に用いることができて効率的である。
ケース内のメッシュ板の下端側の下方には、上方が開口した箱である回収箱が配置されている。回収箱は、傾斜したメッシュ板の上を滑ってきた汚水中の固形分を受けるための箱である。箱の開口は、ケースの底に溜まる汚水の予定された最高水位よりも高い位置に位置している。回収箱の中に汚水が入るのを防ぐためである。
このような仕組みにより、本願発明の循環式トイレシステムの浄水設備のケース内では、ケースの底に汚水中の液体が、回収箱の中に汚水中の固形分が、それぞれ分けた状態で溜められる。
浄水設備には、前記回収箱の内部を80℃以上に加熱可能な第1ヒータが設けられている。それにより、回収箱内の固形分は、乾燥して例えば粉状となる。また、加熱の時間にもよるが、例えば、回収箱の内部を100℃以上とすることで回収箱内の固形分を炭化させることも可能であり、そうしても良い。固形分は乾燥していく(場合によっては炭化していく)過程で、それが発する臭いが軽減されていく。第1ヒータによる回収箱の内部の加熱は、連続的なものではなく間欠的或いはバッチ的なものであってもよい。
他方、浄水設備は、前記ケース内で生じた水蒸気を前記ケース外に排出するための前記ケース内の空間に連通するようにして前記ケースに接続された排気管と、前記排気管に設けられた、前記排気管を介して送られてきた水蒸気を液体に戻して浄水とする復水器と、を備えている。上述したように、汚水に含まれる液体は、ケースの底に溜まる。浄水設備は上述したように第1ヒータを備えており、第1ヒータからの熱は、例えばケースや回収箱を介してケースの底に溜まった液体にも伝わる。それにより、液体の一部が蒸発する。液体を加熱し、蒸発させる過程でバクテリア等が死滅し、有機物の代謝を阻害する作用が生じ、その結果、悪臭の元である硫化水素などの発生が抑えられるため、液体の臭いが低減される。液体が蒸発することによって生じた蒸気は、排気管を介して復水器に至り、復水器で液体に戻される。復水器で蒸気から得られた液体が浄水である。
この浄水は、復水器から接続管を介して浄水タンクに送られ、トイレ便器での水洗に再び使用される。このようにして、この循環式トイレシステムでは、浄水と汚水を循環させて使用することが可能となる。
【0008】
上述したように、本願の循環式トイレシステムでは、固形分は回収箱の中で乾燥した状態となる。したがって、乾燥した固形分を所定の期間おきに回収することが必要となるにしても、少なくともこの循環式トイレシステムでは、固形分に関して「汲み取り」の作業は不要となる。
加えて、浄水+汚水の量は、循環式トイレシステムにおけるトイレ便器の利用により汚水が増えていくため基本的には追加する必要はないが、むしろ増えすぎた場合には問題が生じる。しかしながら、循環式トイレシステムにおける浄水+汚水の量が増えすぎた場合には、復水器へと導かずに蒸気の状態で外部の系に放出すれば良い。したがって、この循環式トイレシステムでは、汚水に関しても「汲み取り」の作業は不要となる。
仮に、固形分の所定期間おきの回収が必要になるとしても、臭いが抑制された、水分を失って乾燥した状態となった固形分を回収するのであれば、衛生車も特殊な作業も必要ないので、下水道と接続されていない従来の水洗式トイレと比べると、維持に関する手間とコストに優れる。
【0009】
前記第1ヒータは、前記ケース内に溜まった汚水を加熱するようになっていても構わない。例えば、第1ヒータは、ケースの底に設けることができ、例えばケースの底の下側に設けてケースの底を下側から加熱するようにすることができる。
第1ヒータにより積極的にケース内に溜まった汚水を加熱するようにすることで、汚水から生じる蒸気の量を増やすことができるようになり、結果的に復水器で生じる浄水の量を増やすことができるようになる。それにより、トイレ便器での水洗に利用可能な浄水が不足するという事態の発生を防ぐことができるようになる。
第1ヒータにより汚水を加熱して汚水から蒸気を積極的に発生させることにより、バクテリア等が死滅し、有機物の代謝を阻害する作用が生じ、その結果、悪臭の元である硫化水素などの発生が抑えられるという効果、つまり液体の臭いが低減されるという効果がより強調されることになる。
循環式トイレシステムは、第1ヒータの他、前記ケース内の気体を80℃以上に加熱可能な第2ヒータを備えていてもよい。第2ヒータが存在することにより、ケース内の気体を温めることが可能となる。それにより、ケースの底に溜まった汚水の温度が上がることとも相俟って、汚水から生じる蒸気の量を増やすことが可能となる。
前記第2ヒータは、前記ケース内に温風を送風するようになっていてもよい。第2ヒータをそのようなものとすることにより、ケース内の気体の温度を全体として均一にすることができるようになる。
【0010】
本願発明の循環式トイレシステムでは、上述したように、回収箱の中に乾燥した固形分が溜まる。乾燥する過程で固形分はその体積が元の10~20%程度とされるから、乾燥した固形分の回収の頻度はそれ程高くない。とはいえ、回収箱内の固形分は、所定の期間毎に回収する必要がある。
そのような回収を容易とするためには、前記ケースに、前記回収箱を出し入れするための開閉自在な扉を設けておいても良い。
【0011】
本願発明の循環式トイレシステムは上述のように浄水タンク、水洗式のトイレ便器、浄水設備を含んで構成される。これも先に述べたように、トイレ便器は、水洗式のものであり、従来と同じものでも良い。浄水タンクも、従来と同じものでも良い。つまり、本願発明の循環式トイレシステムにおけるここまでに説明した浄水設備は、既存(設置済みであるか否かを問わない)のトイレ便器、及び浄水タンクと組合せることによって、本願発明における循環式トイレシステムを構成することができるものである。
一例となる浄水設備は、水洗式のトイレ便器と、前記トイレ便器に水洗用の浄水を供給するための前記浄水を貯めるようになっており、前記トイレ便器にその一端を接続された給水管の他端と接続された浄水タンクと、組合せることにより、循環式トイレシステムを構成するものであり、前記トイレ便器で生じた固形分を含む汚水を前記トイレ便器から排水管を介して受入れ、前記汚水を浄水にして前記浄水タンクに供給する浄水設備である。
そして、その浄水設備は、閉空間を形成する、前記排水管が接続されたケースと、前記ケース内の前記排水管の開口の下側にその一部が位置するようにして傾斜して配置された板材であり、前記汚水中の液体を通過させるための多数の孔が穿たれたメッシュ板と、前記メッシュ板の上を滑ってきた前記汚水中の前記固形分を受ける、前記メッシュ板の下端側の下方に配置された、前記ケースの底に溜まる前記汚水の予定された最高水位よりも高い位置で上方が開口した箱である回収箱と、前記回収箱の内部を80℃以上に加熱可能な第1ヒータと、前記ケース内で生じた水蒸気を前記ケース外に排出するための前記ケース内の空間に連通するようにして前記ケースに接続された排気管と、前記排気管に設けられた、前記排気管を介して送られてきた水蒸気を液体に戻して浄水とする復水器と、を備えている。
この浄水設備は、前記復水器で作られた前記浄水が、前記復水器と前記浄水タンクとにその一端と他端とをそれぞれ接続された接続管を介して前記浄水タンクに供給されるようにして用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態による循環式トイレシステム全体構成を概略的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
この実施形態では、循環式トイレシステムについて説明する。
図1に、循環式トイレシステムの概略的な全体側面図を示す。後述する浄水設備におけるケースの部分は断面図とされている。
【0015】
循環式トイレシステムを構成する主要な構成要素は、トイレ便器10と、浄水装置20と、復水器30と、浄水タンク40である。
トイレ便器10と浄水装置20とは、排水管51によって接続されている。浄水装置20と復水器30とは、排気管52によって接続されている。復水器30と浄水タンク40とは接続管53によって接続されている。浄水タンク40とトイレ便器10とは、給水管54によって接続されている。
排水管51、排気管52、接続管53、給水管54はいずれも管である。これらのうち、排水管51、接続管53、給水管54はそれらの中を液体が、排気管52はその中を気体が通過する。排水管51、排気管52、接続管53、給水管54はその内部を通過する気体又は液体が漏れ出さないようなものであれば周知のもので構わず、金属製や樹脂製とすることができる。
【0016】
トイレ便器10は、水洗式のトイレ便器である。トイレ便器10は、水洗式のトイレ便器であれば従来から存在するもので十分であり、市販のものでも十分である。
トイレ便器10が使用され浄水で水洗されると、汚水が生じる。生じた汚水には固形分が含まれる場合がある。固形分は主に大便とトイレットペーパーである。トイレ便器10で生じた汚水は、排水管51を介して浄水装置20へ送られるようになっている。なお、これには限られないがこの実施形態では、排水管51の途中にラインポンプ51Aが設けられている。ラインポンプ51Aは、吸込口と吐出口とが一直線になっているポンプである。それ故、ラインポンプ51Aは、直線的に配された排水管51の途中に取付けるのが容易である。ラインポンプ51Aはトイレ便器10で生じた汚水を浄水装置20へと送る機能を有している。ラインポンプ51Aが起動するのは、トイレ便器10で汚水が生じたときのみで良い。なお、ラインポンプ51Aが取付けられる排水管51が直線的でない場合には、ラインポンプ51Aは、汚水を浄水装置20へ送ることができる限り他の種類のポンプであっても良い。
【0017】
浄水装置20は、復水器30との組合せにより、本願で言う浄水設備として機能する。より正確には、浄水装置20から復水器30までの一連の機器の組合せが、本願で言う浄水設備である。浄水装置20と復水器30との組合せにより構成される本願で言う浄水設備の機能は、汚水に含まれている固形分の乾燥による体積の縮小と、汚水中の液体からの浄水の生成である。
【0018】
浄水装置20は、ケース21を備えている。ケース21は、閉空間を形成する箱状体である。ケース21は、例えば金属製であり、例えばこれも金属製の棒状体である柱21Aの上に固定されている。柱21Aは必須ではない。
ケース21には、排水管51が接続されている。排水管51はこの実施形態では、ケース21内にまで伸びておりその先端が下向きに曲折されているがこれはこの限りではない。
【0019】
ケース21内には、板であるメッシュ板22が固定的に配置されている。メッシュ板22のケース21内での固定方法は、公知或いは周知技術に倣えば良い。メッシュ板22は、多数の孔(図示せず)が穿たれた板であり、傾斜した状態で配されている。メッシュ板22は腐食しづらい素材でできているのが好ましい。これには限られないが、メッシュ板22は例えばステンレス製である。これには限られないがこの実施形態におけるメッシュ板22は矩形であり、その平行な2辺がともに水平となるようにしてケース21内に配置されている。図1では、そのメッシュ板22を側方から見た状態となっている。メッシュ板22の下端は、ケース21の底からある程度上方に位置にしている。
メッシュ板22の一部、例えば、傾斜するメッシュ板22の上端付近の一部は排水管51の先端の開口の下側に位置している。このようにメッシュ板22は、排水管51から落下してくる汚水を受けられる位置に設けられる。メッシュ板22は後述するようにして、汚水を固形分と液体とに固液分離するために用いられるが、その機能をメッシュ板22のうちのなるべく大きな面積で発揮させるためには、排水管51からメッシュ板22に汚水が落下する位置を、メッシュ板22の上端に近い位置にするのが有利である。
メッシュ板22に設けられる多数の孔の大きさ、形状、数は、上述したような固液分離をメッシュ板22が行える範囲で決定される。つまり、汚水中の液体が孔を通過して、メッシュ板22の真下に落下し、他方汚水中の固形分が孔を概ね通過できず、メッシュ板22の上面を下方に滑り落ちていくようにされている。孔の大きさはすべての孔において均一である必要もないし、孔の形がすべての孔で同一である必要もない。また、孔はメッシュ板22の全体に均一に散在しているが、これもこの限りではない。
この実施形態では、メッシュ板22は、ステンレス(SUS304)製のワイヤを平織りして作られた、平織金網である。その目開きは、例えば、0.5mm以上、1mm以下である。
メッシュ板22の傾斜角は、メッシュ板22が上述した固液分離の機能を発揮できるような角度とされている。メッシュ板22の傾斜角度はこれには限られないが例えば、35°内外である。
【0020】
ケース21には、回収箱23が配置されている。回収箱23は、ケース21内の底近くに配置されている。回収箱23は、ケース21に対して着脱自在とされている。
回収箱23は、メッシュ板22の上を滑り落ちてきた汚水中の固形分を受けるための箱である。回収箱23はこれには限られないがこの実施形態では略直方体形状であり、その上面が開口している。メッシュ板22の上を滑り落ちてきた汚水中の固形分は、メッシュ板22の下端から落下し、その開口から、回収箱23の中に落ちるようになっている。そのために、回収箱23の高さ、或いは回収箱23の開口の高さは、メッシュ板22の下端よりも低くなっている。また、回収箱23の高さ、或いは回収箱23の開口の高さは、後述するようにケース21の底に溜まる汚水の予定された最高水位の位置よりも高い位置に位置させられている。それにより、回収箱23の中に汚水中の液体が入り込むことが防がれる。
【0021】
ケース21には、回収箱23の中を加熱して、回収箱23の中に溜まった汚水中の固形分を乾燥させ、固形分の体積を減じさせるための第1ヒータ24が設けられている。
第1ヒータ24は、回収箱23の中を加熱して固形分を乾燥させることができるようなものであればその詳細は問わない。この実施形態では、第1ヒータ24は、回収箱23の中を80℃以上に加熱できるようなものとなっている。第1ヒータ24は回収箱23の中を常に加熱できるようになっていても良いし、バッチ的に加熱できるようになっていても良い。第1ヒータ24は公知或いは周知のもので十分であり、例えば、電熱ヒータ、より詳細には複数本配列したシーズヒータとすることができる。第1ヒータ24は、回収箱23の中を効率的に加熱できるように、図1に示したように、回収箱23の底側から一定の高さまでの周囲を囲むようになっている。
第1ヒータ24は、この実施形態では、回収箱23の中のみならず、ケース21の底に溜まった汚水中の液体をも加熱するようになっている。それを可能とするように、第1ヒータ24は、必ずしもそうする必要はないが、この実施形態では、平面視した場合のケース21の底面の略全面を覆うようになっている。回収箱23の中を加熱することで、ケース21内が加熱されるから、第1ヒータ24は間接的にケース21の底に溜まった汚水中の液体を加熱する。それだけでなく、ケース21内の汚水が溜まる部分の下側に回り込んでいる第1ヒータ24は、液体をより効率的に加熱するようになっている。それにより、ケース21の底に溜まった汚水中の液体は、第1ヒータ24がそうなっていない場合よりも大量に蒸発するようになっている。
この実施形態では、ケース21の底付近に、第1ヒータ24が存在する空間と、回収箱23及びケース21の底に溜まった汚水中の液体とが存在する空間とを区画するための板である仕切り板25が設けられている。仕切り板25は、第1ヒータ24から回収箱23及びケース21の底に溜まった汚水中の液体への熱の伝導を妨げないような素材でできているのが好ましく、この実施形態では金属製である。
この実施形態における回収箱23は、仕切り板25に設けられた窪みに嵌め込まれており、且つ仕切り板25の窪みから取り外せるようになっている。ケース21の、回収箱23の付近の適宜の位置には、回収箱23をケース21内から出し入れするための開閉自在とされた扉21Bが設けられている。扉21Bを開いた状態で、回収箱23はケース21内外に出し入れすることができるようになっている。
【0022】
ケース21の内部、これには限られないが、この実施形態では、ケース21の上部には、第2ヒータ26が設けられている。第2ヒータ26は、ケース21内の気体を加熱するためのものである。ケース21内の気体を加熱することにより、ケース21の底に溜まった汚水中の液体をより効率的に蒸発させることが可能となる。
第2ヒータ26は常にケース21内の気体を加熱するようになっていてもよいし、バッチ的にケース21内の気体を加熱するようになっていてもよい。
ケース21内の気体を加熱することができるようになっていれば、第2ヒータ26の構成の詳細は問わないし、公知或いは周知のものによりそれを構成することができる。第2ヒータ26は、例えば、ケース21外の熱をケース21内に移動させるヒートポンプにより構成することができ、これには限られないが、この実施形態ではそうされている。
第2ヒータ26のケース21の内部に面する位置には、送風ファン27が配置されている。送風ファン27は、ヒートポンプである第2ヒータ26によってケース21内に持ち込まれた熱(詳細には、熱せられたケース21内の気体)をケース21の内部に向けて送風するものである。送風ファン27の存在により、ケース21内の気体はそれが無いときよりも均一に加熱されることになる。
【0023】
ケース21には、管である排気管52が接続されている。
ケース21内では上述したように、汚水中の液体から蒸気が発生する。ケース21内で発生した蒸気は、排気管52を介してケース21外に導かれるようになっている。
【0024】
排気管52には、復水器30が接続されている。復水器30は、排気管52を介して受け取った蒸気を液体、つまり浄水に戻すものである。復水器30は蒸気を液体に戻すことができるものであればどのようなものでもよく、公知又は周知のもので良い。
排気管52の復水器30の手前には弁30Aが設けられている。弁30Aは、排気管52の或いはケース21内の気体の圧力が過剰となった場合に排気管52内の気体を外部の系に排出するためのものである。具体的には、排気管52内の気体の圧力が予め定められた圧力を超えた場合に、弁30Aが作動して排気管52内の気体が外部の系に排出される。そのような動作をする弁は公知或いは周知なので、弁30Aとしてはそのようなものを利用すれば十分である。弁30Aの存在により、ケース21内の圧力が過剰となったとき、その主な原因となる汚水中の過剰な液体から生じた蒸気が外部の系に放出されるため、循環式トイレシステム内に存在する液体の量が過剰となるのが防止される。
【0025】
復水器30は、接続管53と接続されている。接続管53を介して、復水器30で作られた浄水が浄水タンク40に送られるようになっている。
浄水タンク40は浄水を溜めるタンクである。そのような機能を満足することができるのであれば、浄水タンク40はどのようなものであっても構わず、公知或いは周知のタンクを浄水タンク40に利用することができる。
【0026】
浄水タンク40は、給水管54を介してトイレ便器10に接続されている。トイレ便器10で水洗がなされるとき、浄水タンク40に溜められていた浄水は、給水管54を介して浄水タンク40からトイレ便器10に送られるようになっている。
【0027】
以上で説明した循環式トイレシステムの使用方法、及び動作について説明する。
ユーザが循環式トイレシステムのトイレ便器10を用いる。トイレ便器10をユーザが利用したら、トイレ便器10で水洗がなされる。水洗は、浄水をトイレ便器10に流すことにより行われる。トイレ便器10に浄水を流す場合、浄水タンク40に溜まっていた浄水が、給水管54を介してトイレ便器10に送られる。なお、トイレ便器10に小型の浄水タンクを設けておき、トイレ便器10での水洗には小型の浄水タンクに溜められていた浄水が用いられるようにしても良い。その場合には、トイレ便器10の水洗に用いられることで不足した分の浄水が、適宜のタイミングで浄水タンク40から、トイレ便器10に設けられた小型の浄水タンクに給水管54を介して送られることになる。
【0028】
トイレ便器10で水洗が行われると汚水が生じる。汚水には固形分が含まれることがある。トイレ便器10で生じた汚水は、排水管51を介して浄水装置20に、より詳細には浄水装置20のケース21に送られる。
トイレ便器10から浄水装置20に汚水を確実に流すために、排水管51の途中に設けられたラインポンプ51Aが作動する。ラインポンプ51Aは、例えば、トイレ便器10で汚水が生じた場合にのみ作動するようになっている。ラインポンプ51Aの働きにより、汚水は確実にトイレ便器10から浄水装置20へと送られることになる。
【0029】
浄水装置20に送られた汚水Xは、排水管51の先端の開口から、ケース21の中を落下する。
落下した汚水Xは、ケース21内にあるメッシュ板22の上に落ちる。この実施形態では、傾斜したメッシュ板22の上端付近に落ちる。
メッシュ板22の上に落ちた汚水Xは、メッシュ板22の上を落ちながら固液分離される。具体的には、汚水X中の液体X1は、メッシュ板22に多数設けられた孔を介してメッシュ板22の直下に落ちていく。他方、汚水X中の固形分X2は、孔を介してメッシュ板22の直下に落ちることはなく、メッシュ板22の上を滑ってメッシュ板22の下端にまで至り、そこから落下して、開口から回収箱23の中に落ちる。
汚水X中の液体X1は、ケース21の底に溜まる。液体X1の水位は最も高くなったときでも、回収箱23の開口にまで至ることはない。
【0030】
第1ヒータ24は、適宜のタイミングで適宜の時間だけ駆動する。それにより、第1ヒータ24が発した熱により、回収箱23の内部が加熱される。その熱によって回収箱23の中に溜まった汚水X中の固形分X2は乾燥していく。
第1ヒータ24によって加熱されたとき、回収箱23の中の温度は少なくとも80℃以上となる。それにより、回収箱23の中に溜まった固形分X2は、乾燥してその体積が小さくなる。また、その過程で固形分X2の臭いが抑制されていく。回収箱23の中で固形分X2は、例えば粉末状に近い状態になる。第1ヒータ24によって加熱されたとき、回収箱23の中の温度が十分に高いと、例えば、100℃以上であると、加熱時間の長さにもよるが、固形分X2は炭化していく。そうすることで、固形分X2の体積はより小さくなり、またその臭いがより抑制されることになる。
【0031】
第1ヒータ24は、回収箱23の中のみならず、ケース21の底に溜まった汚水Xから生じた液体X1をも加熱する。
他方、適宜のタイミングで第2ヒータ26が駆動する。第2ヒータ26が駆動し、また第2ヒータ26が駆動しているときに送風ファン27が駆動することで、温度が上がった気体が第2ヒータ26付近からケース21内に送られる。
それにより、ケース21の底に溜まった汚水Xから生じた液体X1の温度は、例えば、80~100℃程度に保たれる。他方、ケース21内の気体の温度は、例えば、70~80℃程度に保たれる。
そうすると、液体X1から、蒸気が生じてケース21内に充満する。なお、液体X1から生じた蒸気は殆どが水蒸気である。液体X1を加熱し、蒸発させる過程で液体X1中のバクテリア等が死滅し、有機物の代謝を阻害する作用が生じ、その結果、悪臭の元である硫化水素などの発生が抑えられるため、液体X1の臭いも、水蒸気の臭いも元の液体X1の臭いよりも低減された状態となっている。
【0032】
液体X1から生じた蒸気は、排気管52を介して復水器30に導かれる。
排気管52の復水器30に至るまでの途中には、弁30Aが設けられている。この実施形態では、排気管52内の気体の圧力が予め定められた圧力を超えた場合には、排気管52内の気体が弁30Aを介して外部の系へ放出される。
この循環式トイレシステムでは、汚水と浄水とは循環するからその量は基本的には不変であるものの、トイレ便器10の使用により汚水の量が増えていくから、循環式トイレシステム内の汚水と浄水とを合計した量が増えていく。過剰となった汚水と浄水の主成分である水は、弁30Aを介して外部の系へと排出される。
排気管52から復水器30へと運ばれた蒸気は、復水器30で液体に戻される。復水器30で生じた液体が浄水である。浄水の臭いは、水蒸気の臭いが抑制されていることもあり、汚水X或いは液体X1と比べて抑制されている。
【0033】
浄水は復水器30から接続管53を介して浄水タンク40へと運ばれる。浄水タンク40に溜められた浄水は、既に述べたように、トイレ便器10での水洗に用いられる。
【0034】
このようにして循環式トイレシステムでは、汚水と浄水が循環する。
循環式トイレシステムの浄水装置20のケース21内に溜まった汚水Xは、弁30Aによる蒸気の排出を適宜に行うことにより一定以上増えることはないためいわゆる汲み取りの作業は不要である。その反面、蒸気の発生量を十分なものとするとともに、弁30Aによる蒸気の排出を適宜の量に抑えることにより、トイレ便器10の水洗のために必要となる浄水タンク40内の浄水の量が不足することもない。
他方、循環式トイレシステムで生じる固形分X2は乾燥して体積が減少しているか、場合によっては炭化しているので、固形分X2についても汲み取りは不要である。ただし、回収箱23内の固形分X2は、体積が減っているとはいえ、所定の期間毎に回収する必要がある。
乾燥した固形分X2の回収は、ケース21の扉21Bを開け、回収箱23をケース21から取り出すことにより行う。回収箱23から固形分X2を回収したら、回収箱23を開いた扉21Bからケース21内の元の位置に戻し、扉21Bを再び閉めれば良い。
【符号の説明】
【0035】
10 トイレ便器
20 浄水装置
21 ケース
22 メッシュ板
23 回収箱
24 第1ヒータ
26 第2ヒータ
27 送風ファン
30 復水器
30A 弁
40 浄水タンク
51 排水管
52 排気管
53 接続管
54 給水管
X 汚水
X1 液体
X2 固形分
図1