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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176343
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/06 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A45D40/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088579
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
(57)【要約】
【課題】複雑な操作を行うことなく、内容物の残量を低減することのできる繰り出し容器について提供すること。
【解決手段】窓孔14が形成された環状のホルダー10と内容物Mを保持する受け皿20と、ロア突起22iに係合する螺旋溝34が形成された袴部材30と、を備える繰り出し容器1であって、受け皿20は、スリーブ21とスライダー22とを備え、受け皿20は、スリーブ21に設けられたアッパ突起21cと、スライダー22に設けられたロア突起22iとを有し、窓孔14に、アッパ突起21cに適合させて、アッパ突起21cをその部位に留めおく凹部14fと、アッパ突起21cを凹部14fに留めおいたまま、スライダー22をロア突起22iとともに、ホルダー10周りに回動させてその回動停止端を起点に、スライダー22を先端開口11へ向けてさらに移動させる鉤状の延長部分14bを設けたこと。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端開口を有し、周壁に縦長の窓孔が形成された環状のホルダーと該ホルダーの内側にスライド可能に設けられ、該ホルダーの内壁によって区画された空間領域内にて内容物を保持するとともに、外周壁に前記窓孔を通り抜ける突起が形成された受け皿と、該突起に係合する螺旋溝が形成された環状体を有し、前記ホルダーの下端とその周壁を部分的に取り囲む袴部材と、を備え、該袴部材を該環状体とともに、前記ホルダーの周りに相対回転させて前記受け皿を前記窓孔に沿って移動させることにより、内容物を前記ホルダーの先端開口から出し入れする繰り出し容器であって、
前記受け皿は、前記ホルダーの内壁に摺動可能に配置されるスリーブと、該スリーブの内側に配置され、該内容物を受ける天壁が形成されたスライダーとを備え、該スライダーが、該スリーブ内で回動可能かつ、スライド可能に保持されており、
前記突起は、前記スリーブの外周壁に設けられ、前記窓孔において留まる突出代を有するアッパ突起と、前記スライダーの外周壁に設けられ、前記窓孔を通り抜けて前記螺旋溝に係合する突出代を有し、前記アッパ突起の直下に位置するロア突起からなり、
前記窓孔に、前記アッパ突起に適合させて、該アッパ突起をその部位に留めおく凹部と、該アッパ突起を該凹部に留めおいたまま、前記スライダーを前記ロア突起とともに、前記ホルダー周りに回動させてその回動停止端を起点に、前記スライダーを、前記先端開口へ向けてさらに移動させる鉤状の延長部分を設けたことを特徴とする繰り出し容器。
【請求項2】
前記袴部材は、前記ホルダーの下端に位置する底壁と、該底壁の縁部に一体連結して該ホルダーの周壁を部分的に取り囲む周壁からなり、該底壁は、該ホルダーの内側につながる貫通開口を有することを特徴とする請求項1に記載の繰り出し容器。
【請求項3】
前記スライダーは、前記天壁を上下において貫通する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面に、内容物を係留する1または2以上の凹部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の繰り出し容器。
【請求項4】
前記スライダーは、その径方向でアンダーカットによる嵌合により前記スリーブに仮止めされ、前記袴部材の回転により強制的に解除されるものとすること特徴とする請求項1または2に記載の繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の内容物を繰り出し可能に収容する繰り出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅などの化粧料やスティックタイプの糊等の棒状の内容物を収容する容器として、特許文献1および特許文献2に示されるような繰り出し容器が広く利用されている。この繰り出し容器は、例えば、下筒と、下筒に対して容器軸回りに回転可能に設けられた上筒とを有する容器本体と、容器本体内に収容され、かつ棒状の内容物を保持する保持部と、を備え、下筒と上筒とを相対的に回転させることで、保持部を上昇させて内容物を露出させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-026694号公報
【特許文献2】特開2019-097824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような繰り出し容器では、使用時に内容物が折れたり、保持部から抜け落ちたりすることを防止するため、保持部が有底筒状に形成され、また内容物が保持部の上端開口よりも下方位置で支持されている。そのため、内容物の下部が保持部内に残り、最後まで使い切ることができない点に改善の余地があり、従来より様々な方法が検討されている。
【0005】
本発明では、複雑な操作を行うことなく、内容物の残量を低減することのできる繰り出し容器について提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために開発した本発明の繰り出し容器は、先端開口を有し、周壁に縦長の窓孔が形成された環状のホルダーと該ホルダーの内側にスライド可能に設けられ、該ホルダーの内壁によって区画された空間領域内にて内容物を保持するとともに、外周壁に前記窓孔を通り抜ける突起が形成された受け皿と、該突起に係合する螺旋溝が形成された環状体を有し、前記ホルダーの下端とその周壁を部分的に取り囲む袴部材と、を備え、該袴部材を該環状体とともに、前記ホルダーの周りに相対回転させて前記受け皿を前記窓孔に沿って移動させることにより、内容物を前記ホルダーの先端開口から出し入れする繰り出し容器であって、前記受け皿は、前記ホルダーの内壁に摺動可能に配置されるスリーブと、該スリーブの内側に配置され、該内容物を受ける天壁が形成されたスライダーとを備え、該スライダーが、該スリーブ内で回動可能かつ、スライド可能に保持されており、前記突起は、前記スリーブの外周壁に設けられ、前記窓孔において留まる突出代を有するアッパ突起と、前記スライダーの外周壁に設けられ、前記窓孔を通り抜けて前記螺旋溝に係合する突出代を有し、前記アッパ突起の直下に位置するロア突起からなり、前記窓孔に、前記アッパ突起に適合させて、該アッパ突起をその部位に留めおく凹部と、該アッパ突起を該凹部に留めおいたまま、前記スライダーを前記ロア突起とともに、前記ホルダー周りに回動させてその回動停止端を起点に、前記スライダーを、前記先端開口へ向けてさらに移動させる鉤状の延長部分を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の繰り出し容器は、前記袴部材は、前記ホルダーの下端に位置する底壁と、該底壁の縁部に一体連結して該ホルダーの周壁を部分的に取り囲む周壁からなり、該底壁は、該ホルダーの内側につながる貫通開口を有することが好ましい。
【0008】
また、本発明の繰り出し容器は、前記スライダーは、前記天壁を上下において貫通する貫通孔を有し、該貫通孔の内壁面に、内容物を係留する1または2以上の凹部を有することが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の繰り出し容器は、前記スライダーは、その径方向でアンダーカットによる嵌合により前記スリーブに仮止めされ、前記袴部材の回転により強制的に解除されるものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の繰り出し容器によれば、袴部材を螺旋溝が形成された環状体とともにホルダーの周りに適宜回転させることで、内容物が保持された受け皿をホルダー内で窓孔に沿って上下に摺動させて、該内容物を前記ホルダーから繰り出し、またはホルダー内に戻すことができる。しかも、受け皿がスリーブと、該スリーブの内側に配置され、内容物を保持したスライダーと、からなり、前記スリーブの上端から突出する内容物が低減した際、前記袴部材をさらに回転させることだけで、前記スライダーを、前記窓孔に設けた延長部分に沿って移動させて、スリーブに対してさらに上昇させることができるため、内容物を最後まで使い切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にしたがう繰り出し容器の一実施形態を示す断面図である。
図2図1の繰り出し容器を構成部材毎に示した図である。
図3図1の繰り出し容器における受け皿を構成部材毎に示した図である。
図4】受け皿の動きを説明する斜視図であり、(a)は通常使用時、(b)はスライダーを周方向に回転させた状態を示した図であり、(c)は(b)の状態からさらにスライダーをスライドさせた状態を示した図である。
図5図1の繰り出し容器について、内容物の繰り出しを、受け皿に設けられたアッパ突起およびロア突起の窓孔内における動き(平面図で表示)と共に段階的に示した図である。
図6図5の各図について、ホルダーの側面を、窓孔におけるアッパ突起およびロア突起の動き(平面図で表示)と共に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明にしたがう繰り出し容器の一実施形態を示す断面図であり、図2は、図1の繰り出し容器を構成部材毎に示した図であり、図3は、図1の繰り出し容器における受け皿を構成部材毎に示した図であり、図4は、受け皿の動きを説明する斜視図であり、(a)は通常使用時、(b)はスライダーを周方向に回転させた状態を示した図であり、(c)は(b)の状態からさらにスライダーをスライドさせた状態を示した図である。
なお、本発明にしたがう繰り出し容器は、その構成部材の全てを合成樹脂で構成することができるが、その全部もしくは一部分を金属製部材で構成してもよい。
【0013】
図1における符号1は、繰り出し容器であり、主としてホルダー10、受け皿20、袴部材30、封止部材40およびカバーキャップ50により構成されている。
【0014】
ホルダー10、受け皿20、袴部材30、封止部材40およびカバーキャップ50の各軸芯は、共通軸線上に位置している。以下、この共通軸線を容器軸線Lと言い、容器軸線Lに沿ったオーバーキャップ50側を上側、その反対側を下側と言う。また、容器軸線Lに直交する方向を径方向と言い、容器軸線L回りに周回する方向を周方向と言う。
【0015】
ホルダー10は、図2に示すように、後述する受け皿20を取り囲む環状をなし、受け皿20の上下移動を案内するものである。また、ホルダー10は、受け皿20を構成するスライダー22の天壁22aと協働して、その内側に内容物Mの充填空間Sを形成し、その上部の先端開口11が内容物Mの押し出し口となる。
【0016】
ホルダー10は、内容物Mの充填空間Sを形成する上半部10aと、周壁に受け皿20の上下移動を案内する縦長の窓孔14を有する下半部10bとからなり、下半部10bの上部外面には、後述する封止部材40を支持するための環状リブ12が形成されている。
【0017】
本実施形態では下半部10bの周壁に、径方向に対向して2つの窓孔14を設けているが、窓孔14の数はとくに限定されない。窓孔14は、後述するように受け皿20のスリーブ21に設けられたアッパ突起21cと、スライダー22に設けられたロア突起22iを案内するものであり、容器軸線Lに沿って延在した縦長開孔部分14aからなる。縦長開孔部分14aの上部には、そこから分岐して周方向に延在した水平部14b1と、その端部から容器軸線Lに沿って上側に延在した垂直部14b2とからなる鉤状の延長部分14bが形成されている。なお、水平部14b1は、縦長開孔部分14aの上端から、アッパ突起21cの容器軸線L方向長さ分だけ下降した位置から延設されている。なお、水平部14b1については、縦長開口部分14aから上方または下方に傾斜して周方向に延在した傾斜部としてもよい。
【0018】
窓孔14の縦長開孔部分14aの下端は、後述する受け皿20のスリーブ21に設けられたアッパ突起21cと、スライダー22に設けられたロア突起22iを挿入し易いように、末広がりのテーパー部14cが形成され、該テーパー部14cに続いて、アッパ突起21cおよびロア突起22iの脱落を防止する抜け止め用の凸部14dが形成されている。
【0019】
縦長開孔部分14aの上端は、受け皿20のスリーブ21に設けられたアッパ突起21cを嵌め入れる凹部14fからなり、該アッパ突起21cの下面を保持してその部位に留めおくことのできる凸部14eが設けられている。凹部14fは、アッパ突起21cの上部と略同形からなることが好ましく、本実施形態では弧状からなる。なお、縦長開口部分14aの上端部に凸部14eのような係止手段を設けることなく、例えば、アッパ突起21cを圧入等によって凹部14fに係合、保持できるような係止手段であってもよく、またこれらのような係止手段を設けなくてもよい。
【0020】
また、延長部分14bの垂直部14b2の上端部は、スライダー22に設けられたロア突起22iを嵌め入れて、その部位に留め置くことのできるように、ロア突起22iの上部と略同形からなることが好ましく、より好ましくはロア突起22iが垂直部14b2の上端に圧入や突起の乗り越え等の手段により係合できるようにする。
【0021】
水平部14b1と垂直部14b2とが交差する位置(回転停止端)には、水平部14b1側の下縁部に凸部14gが設けられており、該凸部14gによって水平部14b1と垂直部14b2とが交差する位置に進入したロア突起22iを、その部位に留め置くことができると共に、該凸部14gを乗り越えた際のクリック感によって使用者がロア突起22iの位置を確認することができるようになっている。
【0022】
受け皿20は、内容物Mを保持し、ホルダー10の窓孔14に沿って上下摺動することで、内容物Mをホルダー10の先端開口11から繰り出し、またはホルダー10内に収納させるものである。
【0023】
受け皿20は、図3に示すようにスリーブ21およびスライダー22により構成されている。
【0024】
スリーブ21は、環状のスリーブ本体21aと、該スリーブ本体21aの下端から吊り下げ配置され、径方向に対向する一対のアーム21bとを有し、該アーム21bの外周壁下端にはアッパ突起21cが設けられている。アッパ突起21cの下面は、平坦面(水平面)となっている。また、本実施形態では、アッパ突起21cの上部が凸円弧状の湾曲面を有しているが、形状については限定されない。
【0025】
スライダー22は、ホルダー10の上半部10aと協働して内容物の充填空間Sを形成する、上面が弧状からなる天壁22aを有する円筒状のスライダー上部22bと、該スライダー上部22bよりも大径の円筒状のスライダー下部22dと、からなり、該スライダー上部22bとスライダー下部22dは、上面部22fを介して連結されている。天壁22aの中央部にはスライダー22の下方から充填された内容物の、充填空間S内への充填口となる円形の貫通孔22cが設けられている。
【0026】
貫通孔22cの内壁面は、1または2以上の凹部22c1が形成されていて、該凹部22c1によって内容物Mの抜け落ちを抑制し、該内容物Mを天壁22a上に係留、保持することができる。このため、天壁22aの上面に、内容物Mを係止するための突起や係止爪等を設ける必要がなく、内容物Mの残量が少なくなって天壁22aが直接、肌等に触れることがあっても違和感(痛み等)なく使用することができる。
【0027】
スリーブ21とスライダー22は、図3および図4に示すように、スリーブ21の一対のアーム21bを、スライダー22の凹部22g内に嵌め入れると共に、スライダー上部22bをスリーブ21のスリーブ本体21a内に挿入し、該スライダー上部22bの外周壁に設けた係合部22eと、スリーブ本体21aの内周壁に設けられた係合部21dとを、着脱自在に嵌合することで一体とすることができる。なお、スライダー上部22bの係合部22eと、スリーブ本体21aの係合部21dとの係合は、図4(b)に示すようにスライダー22を周方向に回転することで解除される。
【0028】
また、スライダー上部22bの係合部22eとスリーブ本体21aの係合部21dは、いずれも凸部によって形成してもよいし、凸部と凹部の組み合わせとしてもよい。また、スライダー上部22bの係合部22eとスリーブ本体21aの係合部21dの両方または一方を、全周に亘って連続に設けてもよく、この場合には、スライダー22が垂直部14b2に沿って上昇する際に、両者の係合を解除することができる。
【0029】
スライダー下部22dの周壁には、径方向に対向する位置に凹部22gが設けられている。凹部22gは、上記したようにスリーブ21とスライダー22とを嵌合した際、アーム21bが位置する第1凹部分22g1と、図4(b)および(c)に示すようにスライダー22を周方向に回転させた際に、アーム21bを案内、収容する第2凹部分22g2からなる。第2凹部分22g2は、第1凹部分22g1よりも容器軸線L方向長さが長く、そのため第1凹部分22g1の下部に段差部22hが形成される。なお、第2凹部分22g2は、図ではスライダー下部22dの全長に延在して設けられているが、それに限定されない。
【0030】
段差部22hの外周壁には、後述する袴部材30の螺旋溝34に係合可能なロア突起22iが設けられ、図4(a)に示したように、スリーブ21とスライダー22とが嵌合した際、アーム21bに設けられたアッパ突起21cとロア突起22iが容器軸線L方向に重なる(一列に並ぶ)ように設けられている。
【0031】
なお、本実施形態では、ロア突起22iが円柱状からなるが、これに限定されるものではない。また、ロア突起22iは、窓孔14を貫通して後述する袴部材30の螺旋溝34に螺合できるように、アッパ突起21cよりも径方向に突出している(突出代が大きい)。
【0032】
袴部材30は、内容物Mの繰り出しあるいは引き込みに際して使用者が指等で把持して回動させる部材である。袴部材30は、図1および図2に示すようにホルダー10の下端を閉塞する底壁31と、底壁31の縁部に一体連結してホルダー10下部の周壁を取り囲む周壁32とを有する。周壁32の内周面には、螺旋溝34が形成された環状体33が設けられている。
【0033】
螺旋溝34は、窓孔14(縦長開孔部分14a)を貫通してきたロア突起22iと係合し、袴部材30の相対回動に伴い、窓孔14(縦長開孔部分14a)による案内下でロア突起22iを上下動させる。なお、このときアッパ突起21cは、螺旋溝34に係合していないが、アーム21bの下端縁が、第1凹部分22g1の段差部22hにより支持されているため、スリーブ21とスライダー22が一体として上下動する。これにより、受け皿20をホルダー10の内側で上下にスライドさせることができる。また、螺旋溝34は、窓孔14の水平部14b1による案内下でロア突起22iを図4(b)に示すように周方向に移動させ、さらに図4(c)に示すように窓孔14の垂直部14b2による案内下でロア突起22iを上側にスライドさせることができる。なお、図4(c)に示すようにロア突起22iの上側への移動に伴って、スライダー22の天壁22aが、スリーブ21の上端縁まで上昇し、これによって天壁22aの上面に設けた内容物Mをスリーブ21の上方まで繰り出すことができる。
【0034】
環状体33は、外周面に複数の凹条(図示しない)を有し、該凹条に袴部材30の周壁32の内周面に設けた複数の縦リブ(図示しない)と係合することで、環状体33と袴部材30との間の回り止めを可能にして、一体で回動できるように構成されている。なお、回り止め手段はこれに限定されず、環状体33および袴部材30を接着もしくは溶着により互いに固着してもよく、環状体33および袴部材30を一体物として形成することもできる。
【0035】
袴部材30の底壁31は、中央部に貫通開口31aを有し、該貫通開口31aおよびスライダー22の貫通孔22cを通じて、該スライダー22の天壁22aとホルダー10の内周壁によって区画される充填区間Sに内容物Mを充填することができる。貫通開口31aは、内容物の充填後に底壁31にラベル等を貼り付けることにより閉鎖することができる。
【0036】
封止部材40は、袴部材30とホルダー10との間からゴミや埃等が進入するのを防止するものである。本実施形態では、封止部材40が、断面略L字形の下側封止リング41と上側封止リング42とからなる2ピース構造を有するが、封止部材40は1ピース構造のものでもよい。上側封止リング42は、袴部材30の周壁32との間に嵌入させた下嵌入壁42aと、周壁32の上端面に載置されるフランジ部42bと、フランジ部42bからホルダー10に沿って起立する上嵌合壁42cと、を有している。下側封止リング41は、下端がホルダー10の下半部10bの外壁面に設けられた環状リブ12によって支持されている。
【0037】
カバーキャップ50は、図1に示すように、ホルダー10の上半部10aの全体を覆うように有頂筒状に形成され、封止部材40の上側封止リング42に着脱可能に装着された本体51と、内容物Mへの異物の付着や乾燥等を防止するため本体51内でホルダー10の先端開口11をシールする内蓋52と、からなる2重構造を有する。なお、内蓋52は、省略することもできる。
【0038】
内容物Mは、口紅などの化粧料やスティックタイプの糊等、棒状にして使用するものであればどのようなものであってもよく、液状または粘稠状のものを、カバーキャップ50をホルダー10に取り付けて、ホルダー10の先端開口11を密閉した状態で、袴部材30の底壁31に設けた貫通開口31aおよびスライダー22の貫通孔22cを通してスライダー22の天壁22aとホルダー10によって形成される充填空間S内に充填し、固化させることで使用に供することができる。また、内容物Mは、貫通開口31aから内部に充填ノズルを挿入し、スライダー22の貫通孔22cに近い部分から充填することが好ましく、この場合には、貫通孔22cからはみ出る内容物Mの量を少なくすることができ、コストを削減することができる。
【0039】
次に、上述した繰り出し容器1の作用について図5および図6に従って説明する。
図5は、繰り出し容器1について、内容物Mの繰り出しを、受け皿20に設けられたアッパ突起21cおよびロア突起22iの窓孔14内における動き(平面図で表示)と共に段階的に示した図であり、図6は、その際のホルダー10の側面を、窓孔14におけるアッパ突起21cおよびロア突起22iの動き(平面図で表示)と共に示した図である。
【0040】
図5(a)および図6(a)は、使用開始時の繰り出し容器1を示す図であり、アッパ突起21cおよびロア突起22iは、窓孔14(縦長開孔部分14a)の下端に位置している。使用開始にあたり、袴部材30を図に矢印で示す方向(袴部材30の底から見て時計回り)に回転させると、窓孔14を貫通し、袴部材30の環状体33に設けられた螺旋溝34に係合したロア突起22iが、該窓孔14の縦長開孔部分14aに沿って上方に移動する。これに伴い、スライダー22が、スリーブ21を押し上げ、受け皿20がホルダー10に沿って上方に移動する。受け皿20の上方への移動によって、充填空間S内の内容物Mが上方に繰り出されて、ホルダー10の先端開口11より露出される。なお、袴部材30を図に矢印で示す方向とは逆方向(袴部材30の底から見て反時計回り)に回転することで、露出した内容物Mをホルダー10内に戻すことができる。
【0041】
袴部材30の時計回りの回転を続けると、図5(b)および図6(b)に示すように、受け皿20のスリーブ21に設けたアッパ突起21cが、縦長開孔部分14aの上端(凹部14f)に到達する(受け皿20の上昇限界位置)。なお、ホルダー10の先端開口11は、この受け皿20の上昇限界位置において、スリーブ21の上端と同じ位置(図示例)もしくは低い位置になる。この状態では、図5(b)に示したようにスリーブ21の上端とスライダー22の天壁22aとの間に多くの内容物Mが残存している。
【0042】
アッパ突起21cが縦長開孔部分14aの上端(凹部14f)に到達すると、該縦長開孔部分14aの上部に設けられた凸部14eをアッパ突起21cが乗り越え、該アッパ突起21cを設けたスリーブ21が、その位置に固定されることになる。
【0043】
この状態から図5(c)および図6(c)に示すように、さらに袴部材30を時計回りに回転させると、図4(b)に示したように、スライダー上部22bの係合部22eと、スリーブ本体21aの係合部21dとの嵌合が解除され、縦長開孔部分14aの上端部に固定されたスリーブ21を残して、スライダー22が周方向に回転することになる。したがって、スライダー22に設けたロア突起22iのみが窓孔14の延長部分14bの水平部14b1に誘導され、該水平部14b1内に沿って周方向に移動し、水平部14b1と垂直部14b2の交差位置(回転停止端)まで移動する。なお、このとき、ロア突起22iが、水平部14b1の凸部14dを超えることで、そのクリック感によってロア突起22iの位置を確認することができる。
【0044】
この状態から図5(d)および図6(d)に示すように、さらに袴部材30を時計回りに回転させると、ロア突起22iが、窓孔14の垂直部14b2に誘導される。図4(c)に示すように受け皿20のスライダー22がスリーブ21に対して上昇し、スライダー22の天壁22aに設けられた内容物Mが上方に繰り出される。したがって、スリーブ21の上端とスライダー22の天壁22aとの間に残留していた内容物Mが露出されて利用に供することができ、内容物Mを使い切ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の繰り出し容器は、化粧料や薬剤、化学品等の棒状の内容物を収容する容器として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 繰り出し容器
10 ホルダー
10a 上半部
10b 下半部
11 先端開口
12 環状リブ
14 窓孔
14a 縦長開孔部分
14b 延長部分
14b1 水平部
14b2 垂直部
14c テーパー部
14d 凸部
14e 凸部
14f 凹部
14g 凸部
20 受け皿
21 スリーブ
21a スリーブ本体
21b アーム
21c アッパ突起
21d 係合部
22 スライダー
22a 天壁
22b スライダー上部
22c 貫通孔
22c1 凹部
22d スライダー下部
22e 係合部
22f 上面部
22g 凹部
22g1 第1凹部分
22g2 第2凹部分
22h 段差部
22i ロア突起
30 袴部材
31 底壁
31a 貫通開口
32 周壁
33 環状体
34 螺旋溝
40 封止部材
41 下側封止リング
42 上側封止リング
42a 下嵌入壁
42b フランジ部
42c 上嵌合壁
50 カバーキャップ
51 本体
52 内蓋
S 充填空間
M 内容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6