(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176348
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/164 20060101AFI20231206BHJP
G06T 1/40 20060101ALI20231206BHJP
G06T 5/00 20060101ALI20231206BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231206BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20231206BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01T1/164 Z
G06T1/40
G06T5/00 705
G06T7/00 350C
G06T7/00 614
G01T1/161 C
G01T1/164 J
A61B6/03 360T
A61B6/03 360J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088585
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】大西 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】橋本 二三生
【テーマコード(参考)】
4C093
4C188
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA26
4C093CA06
4C093DA04
4C093FD03
4C093FF03
4C093FF09
4C188EE02
4C188FF04
4C188FF07
4C188KK24
4C188KK33
4C188LL11
5B057AA08
5B057CE02
5B057DC40
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA01
5L096EA05
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】CNNに対し教師あり事前学習の後に教師なし学習を行うことで対象画像のノイズを低減することが容易にできる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置1は、入力画像作成部10、第1演算部20および第2演算部30を備え、対象画像52のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する。第1演算部20は、第1CNN処理部21および第1CNN学習部22を含み、教師あり事前学習の処理を行う。第1入力画像40は、教師画像42に基づいて一部領域の画素値を変更したものである。第2演算部30は、第2CNN処理部31および第2CNN学習部32を含み、教師なし学習の処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象画像のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する画像処理装置であって、
教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させて前記畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成する第1CNN処理部と、
前記第1出力画像と前記教師画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて前記畳み込みニューラルネットワークを学習させる第1CNN学習部と、
第2入力画像を前記畳み込みニューラルネットワークに入力させて前記畳み込みニューラルネットワークにより第2出力画像を作成する第2CNN処理部と、
前記第2出力画像と前記対象画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて前記畳み込みニューラルネットワークを学習させる第2CNN学習部と、
を備え、
前記教師画像および前記第1入力画像の複数の組それぞれについて前記第1CNN処理部および前記第1CNN学習部それぞれの処理を複数回繰り返し行った後、前記第2CNN処理部および前記第2CNN学習部それぞれの処理を複数回繰り返し行って、前記第2出力画像を前記ノイズ低減画像とする、
画像処理装置。
【請求項2】
教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を作成する入力画像作成部を更に備える、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記畳み込みニューラルネットワークは、エンコーダとデコーダとを含むU-net構造のものであり、
前記第1CNN学習部は、前記畳み込みニューラルネットワークのエンコーダおよびデコーダの双方を学習させ、
前記第2CNN学習部は、前記畳み込みニューラルネットワークのデコーダを選択的に学習させる、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1CNN処理部は、各教師画像について、画素値変更の態様が互いに異なる複数の第1入力画像それぞれを前記ニューラルネットワークに入力させて、各第1入力画像に対して前記畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1CNN処理部は、教師画像に基づいてノイズ低減対象領域のうちの一部領域の画素値を変更した第1入力画像を前記畳み込みニューラルネットワークに入力させる、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記対象画像および前記教師画像は、放射線断層撮影装置により取得された情報に基づいて再構成された被検体の断層画像である、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
対象画像のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する画像処理方法であって、
教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させて前記畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成する第1CNN処理ステップと、
前記第1出力画像と前記教師画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて前記畳み込みニューラルネットワークを学習させる第1CNN学習ステップと、
第2入力画像を前記畳み込みニューラルネットワークに入力させて前記畳み込みニューラルネットワークにより第2出力画像を作成する第2CNN処理ステップと、
前記第2出力画像と前記対象画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて前記畳み込みニューラルネットワークを学習させる第2CNN学習ステップと、
を備え、
前記教師画像および前記第1入力画像の複数の組それぞれについて前記第1CNN処理ステップおよび前記第1CNN学習ステップそれぞれの処理を複数回繰り返し行った後、前記第2CNN処理ステップおよび前記第2CNN学習ステップそれぞれの処理を複数回繰り返し行って、前記第2出力画像を前記ノイズ低減画像とする、
画像処理方法。
【請求項8】
教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を作成する入力画像作成ステップを更に備える、
請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記畳み込みニューラルネットワークは、エンコーダとデコーダとを含むU-net構造のものであり、
前記第1CNN学習ステップでは、前記畳み込みニューラルネットワークのエンコーダおよびデコーダの双方を学習させ、
前記第2CNN学習ステップでは、前記畳み込みニューラルネットワークのデコーダを選択的に学習させる、
請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記第1CNN処理ステップでは、各教師画像について、画素値変更の態様が互いに異なる複数の第1入力画像それぞれを前記ニューラルネットワークに入力させて、各第1入力画像に対して前記畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成する、
請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記第1CNN処理ステップでは、教師画像に基づいてノイズ低減対象領域のうちの一部領域の画素値を変更した第1入力画像を前記畳み込みニューラルネットワークに入力させる、
請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記対象画像および前記教師画像は、放射線断層撮影装置により取得された情報に基づいて再構成された被検体の断層画像である、
請求項7に記載の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象画像のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する画像処理装置および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像はノイズを含む場合がある。ノイズを含む画像の例として、放射線断層撮影装置により取得された情報に基づいて再構成された被検体の断層画像が挙げられる。放射線断層撮影装置はPET(Positron Emission Tomography)装置およびSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置などである。
【0003】
PET装置は、被検体が置かれる測定空間の周囲に配列された多数の小型の放射線検出器を有する検出部を備えている。PET装置は、陽電子放出アイソトープ(RI線源)が投与された被検体内における電子・陽電子の対消滅に伴って発生するエネルギ511keVの光子対を検出部により同時計数法で検出し、この同時計数情報を収集する。そして、この収集した多数の同時計数情報に基づいて、測定空間における光子対の発生頻度の空間分布(すなわち、RI線源の空間分布)を表す断層画像を再構成することができる。このPET装置は核医学分野等で重要な役割を果たしており、これを用いて例えば生体機能や脳の高次機能の研究を行うことができる。
【0004】
再構成された被検体の断層画像は多くの統計ノイズを含むことから、この断層画像のノイズを低減することが要求されている。また、このようなPET画像(断層画像)に限らず、ノイズを含む対象画像からノイズを低減してノイズ低減画像を作成することが要求される場合がある。ノイズ低減技術として様々な手法が知られている。そのなかでも、深層ニューラルネットワークの一種である畳み込みニューラルネットワークを用いたDeep Image Prior技術によりノイズを低減する技術が注目されている。以下では、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)を「CNN」といい、Deep Image Prior技術を「DIP技術」という。DIP技術は、画像中の意味のある構造の方がランダムなノイズより早く学習される(すなわち、ランダムなノイズは学習されにくい)というCNNの性質を利用して、教師なし学習により、ノイズが低減された画像を作成することができる。
【0005】
非特許文献1に、DIP技術により対象画像(PET画像)のノイズを低減する技術が記載されている。この文献に記載された技術は、ノイズ低減処理を2つのステップに分けて行う。第1ステップでは、第1入力画像(MRI画像)および教師画像(PET画像)の複数の組それぞれについて、第1入力画像をCNNに入力させてCNNにより第1出力画像を作成し、この第1出力画像と教師画像との間の誤差の評価結果に基づいてCNNを学習(教師あり事前学習)させる。続く第2ステップでは、第1ステップで事前学習済みのCNNに第2入力画像(MRI画像)を入力させてCNNにより第2出力画像を作成し、この第2出力画像と対象画像(PET画像)との間の誤差の評価結果に基づいてCNNを更に学習(教師なし学習)させる。そして、第2出力画像を、対象画像(PET画像)のノイズを低減したノイズ低減画像とする。
【0006】
要するに、非特許文献1に記載されたノイズ低減技術は、第1ステップではCNNが第1入力画像を教師画像へ変換するようにCNNを学習(教師あり事前学習)させ、第2ステップではCNNを更に学習(教師なし学習)させることで、対象画像のノイズを低減したノイズ低減画像を作成する。このようにすることにより、非特許文献1に記載されたノイズ低減技術は、DIP技術のみの場合(教師なし学習のみの場合)と比べて、ノイズ低減性能の向上が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Cui et al. Populational andindividual information based PET image denoising using conditional unsupervisedlearning. Phys. Med. Biol. 66:155001, 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載されたノイズ低減技術は、第1ステップの教師あり事前学習を行う為に、多数の教師画像だけでなく多数の第1入力画像を用意する必要がある。しかし、多数の教師画像の用意とは別個に多数の第1入力画像を用意することは容易ではない。
【0009】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、CNNに対し教師あり事前学習の後に教師なし学習を行うことで対象画像のノイズを低減することが容易にできる画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理装置は、対象画像のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する画像処理装置である。
本発明の画像処理装置の第1態様は、(1) 教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させて畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成する第1CNN処理部と、(2) 第1出力画像と教師画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて畳み込みニューラルネットワークを学習させる第1CNN学習部と、(3) 第2入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させて畳み込みニューラルネットワークにより第2出力画像を作成する第2CNN処理部と、(4) 第2出力画像と対象画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて畳み込みニューラルネットワークを学習させる第2CNN学習部と、を備える。そして、教師画像および第1入力画像の複数の組それぞれについて第1CNN処理部および第1CNN学習部それぞれの処理を複数回繰り返し行った後、第2CNN処理部および第2CNN学習部それぞれの処理を複数回繰り返し行って、第2出力画像をノイズ低減画像とする。
【0011】
本発明の画像処理装置は、次のような態様としてもよい。
第2態様では、第1態様に加えて、画像処理装置は、教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を作成する入力画像作成部を更に備えるのが好適である。
第3態様では、第1態様または第2態様に加えて、畳み込みニューラルネットワークは、エンコーダとデコーダとを含むU-net構造のものであり、第1CNN学習部は、畳み込みニューラルネットワークのエンコーダおよびデコーダの双方を学習させ、第2CNN学習部は、畳み込みニューラルネットワークのデコーダを選択的に学習させるのが好適である。
第4態様では、第1態様~第3態様の何れかに加えて、第1CNN処理部は、各教師画像について、画素値変更の態様が互いに異なる複数の第1入力画像それぞれをニューラルネットワークに入力させて、各第1入力画像に対して畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成するのが好適である。
第5態様では、第1態様~第4態様の何れかに加えて、第1CNN処理部は、教師画像に基づいてノイズ低減対象領域のうちの一部領域の画素値を変更した第1入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させるのが好適である。
第6態様では、第1態様~第5態様の何れかに加えて、対象画像および教師画像は、放射線断層撮影装置により取得された情報に基づいて再構成された被検体の断層画像であるのが好適である。
【0012】
本発明の画像処理方法は、対象画像のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する画像処理方法である。
本発明の画像処理方法の第1態様は、(1) 教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させて畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成する第1CNN処理ステップと、(2) 第1出力画像と教師画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて畳み込みニューラルネットワークを学習させる第1CNN学習ステップと、(3) 第2入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させて畳み込みニューラルネットワークにより第2出力画像を作成する第2CNN処理ステップと、(4) 第2出力画像と対象画像との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいて畳み込みニューラルネットワークを学習させる第2CNN学習ステップと、を備える。そして、教師画像および第1入力画像の複数の組それぞれについて第1CNN処理ステップおよび第1CNN学習ステップそれぞれの処理を複数回繰り返し行った後、第2CNN処理ステップおよび第2CNN学習ステップそれぞれの処理を複数回繰り返し行って、第2出力画像をノイズ低減画像とする。
【0013】
本発明の画像処理方法は、次のような態様としてもよい。
第2態様では、第1態様に加えて、画像処理方法は、教師画像に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像を作成する入力画像作成ステップを更に備えるのが好適である。
第3態様では、第1態様または第2態様に加えて、畳み込みニューラルネットワークは、エンコーダとデコーダとを含むU-net構造のものであり、第1CNN学習ステップでは、畳み込みニューラルネットワークのエンコーダおよびデコーダの双方を学習させ、第2CNN学習ステップでは、畳み込みニューラルネットワークのデコーダを選択的に学習させるのが好適である。
第4態様では、第1態様~第3態様の何れかに加えて、第1CNN処理ステップでは、各教師画像について、画素値変更の態様が互いに異なる複数の第1入力画像それぞれをニューラルネットワークに入力させて、各第1入力画像に対して畳み込みニューラルネットワークにより第1出力画像を作成するのが好適である。
第5態様では、第1態様~第4態様の何れかに加えて、第1CNN処理ステップでは、教師画像に基づいてノイズ低減対象領域のうちの一部領域の画素値を変更した第1入力画像を畳み込みニューラルネットワークに入力させるのが好適である。
第6態様では、第1態様~第5態様の何れかに加えて、対象画像および教師画像は、放射線断層撮影装置により取得された情報に基づいて再構成された被検体の断層画像であるのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に対する教師あり事前学習の際に用いるCNNへの入力画像を教師画像に基づいて容易に作成することができ、CNNに対し教師あり事前学習の後に教師なし学習を行うことで対象画像のノイズを低減することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、画像処理装置1の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、画像処理方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
【
図5】
図5は、ファントム画像(正解画像)を示す図である。
【
図6】
図6は、腫瘍を有し薬剤として
18F-FDGを投与した頭部を模擬した断層画像(対象画像)を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図8】
図8は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像のPSNR、SSIMおよびCNRの各値を纏めた表である。
【
図11】
図11は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
【
図12】
図12は、薬剤として
18F-AV45を投与した頭部の断層画像(対象画像)を示す図である。
【
図13】
図13は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図14】
図14は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図15】
図15は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図16】
図16は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
【
図17】
図17は、薬剤として
11C-PIBを投与した頭部の断層画像(対象画像)を示す図である。
【
図18】
図18は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図19】
図19は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図20】
図20は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図21】
図21は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
【
図22】
図22は、薬剤として
18F-FDGを投与した頭部の断層画像(対象画像)を示す図である。
【
図23】
図23は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図24】
図24は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図25】
図25は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
【
図26】
図26は、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像のCNRの値を纏めた表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
図1は、画像処理装置1の構成を示す図である。画像処理装置1は、入力画像作成部10、第1演算部20および第2演算部30を備え、対象画像52のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する。
【0018】
この図では、第1入力画像40、第1出力画像41、教師画像42、第2出力画像51および対象画像52それぞれの例として頭部のPET画像を示し、第2入力画像50の例として頭部のMRI画像を示している。以降では、これを前提として説明をする。ただし、本実施形態は、これに限られない。本実施形態は、放射線断層撮影装置により取得された情報に基づいて再構成された被検体の断層画像(例えばPET画像)を対象画像として、この対象画像のノイズを低減するのに好適なものである。これらの画像は、2次元画像であってもよいし、3次元画像であってもよい。
【0019】
画像処理装置1は、CNNを用いた処理を行うGPU(Graphics Processing Unit)、操作者の入力を受け付ける入力部(例えばキーボードやマウス)、画像等を表示する表示部(例えば液晶ディスプレイ)、および、様々な処理を実行する為のプログラムやデータを記憶する記憶部を備える。画像処理装置1として、CPU、RAM、ROMおよびハードディスクドライブ等を有するコンピュータが用いられる。
【0020】
入力画像作成部10は、教師画像42に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像40を作成する。
【0021】
第1演算部20は、第1CNN処理部21および第1CNN学習部22を含み、教師あり事前学習の処理を行う。第1CNN処理部21は、第1入力画像40をCNNに入力させて、CNNにより第1出力画像41を作成する。第1CNN学習部22は、第1出力画像41と教師画像42との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいてCNNを学習させる。第1演算部20は、教師画像42および第1入力画像40の複数の組それぞれについて、第1CNN処理部21および第1CNN学習部22それぞれの処理を複数回繰り返し行う。
【0022】
第2演算部30は、第2CNN処理部31および第2CNN学習部32を含み、教師なし学習の処理を行う。第2CNN処理部31は、第2入力画像50をCNNに入力させて、CNNにより第2出力画像51を作成する。第2CNN学習部32は、第2出力画像51と対象画像52との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいてCNNを学習させる。第2演算部30は、第1演算部20の繰り返し処理の終了の後、その終了時点でのCNNの学習状態を初期値として、第2CNN処理部31および第2CNN学習部32それぞれの処理を複数回繰り返し行う。そして、第2演算部30の繰り返し処理の終了時点での第2出力画像51をノイズ低減画像とする。
【0023】
図2は、画像処理方法のフローチャートである。画像処理方法は、入力画像作成ステップS10、第1演算ステップS20および第2演算ステップS30を順に行うことで、対象画像52のノイズを低減してノイズ低減画像を作成する。
【0024】
入力画像作成ステップS10は、入力画像作成部10により行われる処理である。入力画像作成ステップS10では、教師画像42に基づいて一部領域の画素値を変更した第1入力画像40を作成する。
【0025】
第1演算ステップS20は、第1演算部20により行われる教師あり事前学習の処理であり、第1CNN処理ステップS21および第1CNN学習ステップS22を含む。第1CNN処理ステップS21は、第1CNN処理部21により行われる処理である。第1CNN学習ステップS22は、第1CNN学習部22により行われる処理である。第1CNN処理ステップS21では、第1入力画像40をCNNに入力させて、CNNにより第1出力画像41を作成する。第1CNN学習ステップS22では、第1出力画像41と教師画像42との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいてCNNを学習させる。第1演算ステップS20では、教師画像42および第1入力画像40の複数の組それぞれについて、第1CNN処理ステップS21および第1CNN学習ステップS22それぞれの処理を複数回繰り返し行う。
【0026】
第2演算ステップS30は、第2演算部30により行われる教師なし学習の処理であり、第2CNN処理ステップS31および第2CNN学習ステップS32を含む。第2CNN処理ステップS31は、第2CNN処理部31により行われる処理である。第2CNN学習ステップS32は、第2CNN学習部32により行われる処理である。第2CNN処理ステップS31では、第2入力画像50をCNNに入力させて、CNNにより第2出力画像51を作成する。第2CNN学習ステップS32では、第2出力画像51と対象画像52との間の誤差を評価して当該誤差評価結果に基づいてCNNを学習させる。第2演算ステップS30では、第1演算ステップS20における繰り返し処理の終了の後、その終了時点でのCNNの学習状態を初期値として、第2CNN処理ステップS31および第2CNN学習ステップS32それぞれの処理を複数回繰り返し行う。そして、第2演算ステップS30における繰り返し処理の終了時点での第2出力画像51をノイズ低減画像とする。
【0027】
図3は、CNNの構成例を示す図である。この図に示されるように、CNNは、エンコーダとデコーダとを含むU-net構造のものであるのが好適である。この図には、CNNに入力される入力画像の画素数をN×N×64として、CNNの各層のサイズが示されている。第1CNN学習ステップS22において、第1CNN学習部22は、CNNのエンコーダおよびデコーダの双方を学習させる。第2CNN学習ステップS32において、第2CNN学習部32は、CNNのエンコーダおよびデコーダの双方を学習させてもよいが、学習に要する時間を短縮する為にCNNのエンコーダおよびデコーダのうちのデコーダを選択的に学習させるのが好適である。
【0028】
第1CNN学習ステップS22における第1CNN学習部22および第2CNN学習ステップS32における第2CNN学習部32それぞれにおいて、二つの画像の間の誤差を評価する関数は任意でよい。誤差評価関数は、例えば、L1ノルム、L2ノルム、ポアソン分布における負の対数尤度などを用いることができる。
【0029】
画像処理装置1または画像処理方法において、各画像は次のようなものである。
対象画像52は、ノイズを低減する対象となる画像であり、ここでは頭部のPET画像である。このようなPET画像は、一般に、ノイズを低減する対象とすべき領域(ノイズ低減対象領域)である頭部の画像領域と、頭部領域の周囲にある背景領域とからなる。
【0030】
教師画像42は、対象画像52と同様の頭部のPET画像である。複数の教師画像42が用意されてもよいし、一つの教師画像42が用意されてもよい。対象画像52そのものを教師画像42としてもよい。
【0031】
第1入力画像40は、教師画像42に基づいて一部領域の画素値を変更したものであり、好ましくは、教師画像42に基づいてノイズ低減対象領域のうちの一部領域の画素値を変更したものである。各教師画像42に対して複数の第1入力画像40が用意されてもよい。教師画像42に対する第1入力画像40の画素値変更は、任意の態様が可能である。画素値を変更する一部領域は、任意の形状、任意の大きさ、任意の個数であってよい。一部領域における画素値の変更は、例えば、画素値の非線形変換、複数の画素の間での画素値の交換、一定の画素値への置換、ランダムな画素値への置換、等であってよい。画素値変更の態様(例えば、画素値を変更する一部領域の形状、大きさ及び個数や、画素値変更の方法)は、複数の第1入力画像40の間で互いに異なっているのが好ましい。入力画像作成ステップS10において、入力画像作成部10は、このような第1入力画像40を教師画像42に基づいて作成する。
【0032】
第2入力画像50は、被検体の形態情報を表す画像であってよく、
図1中に示されているようなMRI画像であってもよいし、CT画像や静的PET画像であってもよい。第2入力画像50は、ランダムノイズ画像であってもよい。
【0033】
次に、デジタル脳ファントム画像を用いて頭部用PET装置のモンテカルロ・シミュレーションにより対象画像を作成し、これを用いて実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法によりノイズ低減処理を行った結果について、
図4~
図10を用いて説明する。ファントム画像は、BrainWeb(https://brainweb.bic.mni.mcgill.ca/brainweb/)から入手したものである。
【0034】
実施例の画像処理方法は、上記実施形態によるものである。比較例1の画像処理方法は、従来のDIP技術によるものである。比較例2の画像処理方法は、非特許文献1に記載された技術によるものである。
【0035】
実施例および比較例2それぞれの画像処理方法における教師あり事前学習では、ファントム画像に基づいて作成した20個の教師画像を用いた。実施例の画像処理方法では、各教師画像に対し画素値変更態様を様々に異ならせて作成した32個の第1入力画像を用いた。比較例2の画像処理方法では、CNNへの入力画像としてMRI画像を用いた。
【0036】
実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法における教師なし学習では、対象画像として、腫瘍を有し薬剤として18F-FDGを投与した頭部を模擬した断層画像を用いた。CNNへの入力画像としてMRI画像を用いた。
【0037】
図4~
図9それぞれは、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法における教師なし学習で使用された又は作成された断層画像を示す図である。
図4は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
図5は、ファントム画像(正解画像)を示す図である。
図6は、腫瘍を有し薬剤として
18F-FDGを投与した頭部を模擬した断層画像(対象画像)を示す図である。
図7は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図8は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図9は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図4~
図9それぞれにおいて、(a)は横断面の画像であり、(b)は冠状断面の画像であり、(c)は矢状断面の画像である。
【0038】
図10は、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像のPSNR、SSIMおよびCNRの各値を纏めた表である。PSNR(Peak Signal to Noise Ratio)は、画像の品質をデシベル(dB)で表したものである。SSIM(structural similarity index)は、画像の輝度およびコントラストならびに構造の変化を定量化する指標である。CNR(Contrast to Noise Ratio)は、画像のコントラストとノイズとの比である。PSNR、SSIMおよびCNRの何れも、値が大きいほど良好な画質であることを意味する。
図4~
図10に示されるとおり、比較例1,2と比べて実施例では、PSNR、SSIMおよびCNRの何れも値が大きく、より効果的に対象画像のノイズを低減することができることが確認できた。
【0039】
次に、臨床データを用いて実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法によりノイズ低減処理を行った結果について、
図11~
図26を用いて説明する。
【0040】
実施例および比較例2それぞれの画像処理方法における教師あり事前学習では、臨床データの24個の断層画像を教師画像として用いた。これらの断層画像は、薬剤として18F-AV45を投与した頭部のPET画像である。実施例の画像処理方法では、各教師画像に対し画素値変更態様を様々に異ならせて作成した32個の第1入力画像を用いた。比較例2の画像処理方法では、CNNへの入力画像としてMRI画像を用いた。
【0041】
実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法における教師なし学習では、対象画像として、薬剤として18F-AV45,11C-PIBおよび18F-FDGの何れかを投与した頭部の断層画像を用いた。CNNへの入力画像としてMRI画像を用いた。
【0042】
図11~
図15それぞれは、薬剤として
18F-AV45を投与した頭部の断層画像を対象画像として用いた場合に、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法における教師なし学習で使用された又は作成された断層画像を示す図である。
図11は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
図12は、薬剤として
18F-AV45を投与した頭部の断層画像(対象画像)を示す図である。
図13は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図14は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図15は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図11~
図15それぞれにおいて、(a)は横断面の画像であり、(b)は冠状断面の画像であり、(c)は矢状断面の画像である。
【0043】
図16~
図20それぞれは、薬剤として
11C-PIBを投与した頭部の断層画像を対象画像として用いた場合に、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法における教師なし学習で使用された又は作成された断層画像を示す図である。
図16は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
図17は、薬剤として
11C-PIBを投与した頭部の断層画像(対象画像)を示す図である。
図18は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図19は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図20は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図16~
図20それぞれにおいて、(a)は横断面の画像であり、(b)は矢状断面の画像である。
【0044】
図21~
図25それぞれは、薬剤として
18F-FDGを投与した頭部の断層画像を対象画像として用いた場合に、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法における教師なし学習で使用された又は作成された断層画像を示す図である。
図21は、CNNへの入力画像(MRI画像)を示す図である。
図22は、薬剤として
18F-FDGを投与した頭部の断層画像(対象画像)を示す図である。
図23は、比較例1の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図24は、比較例2の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図25は、実施例の画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像を示す図である。
図21~
図25それぞれにおいて、(a)は横断面の画像であり、(b)は矢状断面の画像である。
【0045】
図26は、実施例および比較例1,2それぞれの画像処理方法によるノイズ低減処理後の断層画像のCNRの値を纏めた表である。この表には、薬剤として
18F-AV45,
11C-PIBおよび
18F-FDGそれぞれを頭部に投与した場合について、CNRの値が示されている。
【0046】
図11~
図26から次のようなことが分かる。比較例1,2と比べて実施例では、CNRの値が大きく、より効果的に対象画像のノイズを低減することができることが確認できた。薬剤として
18F-FDGを頭部に投与したときの断層画像を対象画像とした場合には、比較例1と比べて比較例2ではCNRの改善の程度が僅かであるのに対して、比較例1,2と比べて実施例ではCNRの改善の程度が大きかった。このように、教師画像と対象画像との間で頭部に投与された薬剤の種類が互いに異なる場合、比較例2ではノイズ除去の程度が比較例1と同程度であるのに対して、実施例ではノイズ除去の程度が比較例1,2より向上することが確認できた。
【0047】
以上のとおり、本実施形態によれば、CNNに対する教師あり事前学習の際に用いるCNNへの入力画像を教師画像に基づいて容易に作成することができるので、CNNに対し教師あり事前学習の後に教師なし学習を行うことで対象画像のノイズを低減することが容易にできる。また、教師画像と対象画像との間で被検体に投与された薬剤の種類が互いに異なる場合であっても、効果的に対象画像のノイズを低減することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…画像処理装置、10…入力画像作成部、20…第1演算部、21…第1CNN処理部、22…第1CNN学習部、30…第2演算部、31…第2CNN処理部、32…第2CNN学習部。