(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176358
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】トレーラ点検装置
(51)【国際特許分類】
B60S 5/00 20060101AFI20231206BHJP
B62D 53/00 20060101ALI20231206BHJP
B60T 13/26 20060101ALI20231206BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B60S5/00
B62D53/00 E
B62D53/00 Z
B60T13/26
B60T17/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088600
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000117467
【氏名又は名称】安全自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平口 大輔
【テーマコード(参考)】
3D026
3D048
3D049
【Fターム(参考)】
3D026BA04
3D026BA28
3D026BA30
3D048AA02
3D048CC44
3D048CC53
3D048HH03
3D048HH26
3D048HH68
3D048HH82
3D049AA02
3D049BB36
3D049CC03
3D049HH03
3D049HH20
3D049HH48
3D049HH53
3D049KK20
(57)【要約】
【課題】本開示の少なくとも一つの実施形態は、トラクタと連結せずに、トレーラのブレーキ系統及び電気系統の点検が可能なトレーラ点検装置であって、軽量且つコンパクトに構成することで、移動が容易なトレーラ点検装置を提供すること。
【解決手段】本体と、該本体の端面に形成さる開口に開閉可能に設けられる蓋体と、本体に取り付けられる車輪とを有し移動可能な収納ケース3と、収納ケースの内部に配置され、収納ケースの外部より供給される圧縮空気をエアーブレーキに使用する圧縮圧力に調整してトレーラのブレーキ系統に供給する圧縮空気供給装置7と、収納ケースの内部に配置され、収納ケースの外部より供給される外部電源を電装機器に使用する電源電圧に調整してトレーラの電気系統に供給する電源供給装置9と、収納ケースの内部に配置され、圧縮空気供給装置及び電源供給装置の作動を制御する制御装置15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱形状の本体と、該本体の端面に形成さる開口に開閉可能に設けられる蓋体と、前記本体に取り付けられる車輪とを有し移動可能な収納ケースと、
前記収納ケースの内部に配置され、前記収納ケースの外部より供給される圧縮空気をエアーブレーキに使用する圧縮圧力に調整してトレーラのブレーキ系統に供給する圧縮空気供給装置と、
前記収納ケースの内部に配置され、前記収納ケースの外部より供給される外部電源を電装機器に使用する電源電圧に調整して前記トレーラの電気系統に供給する電源供給装置と、
前記収納ケースの内部に配置され、前記圧縮空気供給装置及び前記電源供給装置の作動を制御する制御装置と、を備えることを特徴とするトレーラ点検装置。
【請求項2】
前記収納ケースの内部は、前記開口の開口面に直交する方向から見たときに開口面を一方側と他方側に仕切るように一方側の第1収納領域と他方側の第2収納領域とを含み、
前記第1収納領域には、前記トレーラのブレーキ系統と前記圧縮空気供給装置とを連結する圧縮空気ホース、及び前記トレーラの電気系統と前記電源供給装置とを連結する電気ケーブルが収納され、前記第2収納領域には、前記圧縮空気供給装置、前記電源供給装置、及び前記制御装置が設置されることを特徴とする請求項1に記載のトレーラ点検装置。
【請求項3】
前記第2収納領域には、前記収納ケース内を前記開口面に直交する方向に仕切るように仕切板が設置され、前記圧縮空気供給装置、前記電源供給装置、及び前記制御装置は前記仕切板に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のトレーラ点検装置。
【請求項4】
前記仕切板は複数設けられ、それぞれの前記仕切板は前記開口面に直交する方向に間隔を有し、且つ前記開口面に直交する方向から見たときに重なるように設置されることを特徴とする請求項3に記載のトレーラ点検装置。
【請求項5】
前記開口面に最も近い前記仕切板の前記開口面側に、前記電源供給装置からトレーラの灯火機器への電源を出力する灯火機器点検用端子、及びトレーラのABS点検のための電源を出力するABS点検用端子が設置されることを特徴とする請求項4に記載のトレーラ点検装置。
【請求項6】
無線操作装置をさらに備え、前記制御装置は、前記無線操作装置からの信号に基づいて前記圧縮空気供給装置及び前記電源供給装置の作動を制御することを特徴とする請求項1に記載のトレーラ点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トレーラ点検装置に関する。詳しくは、トラクタを連結せずにトレーラの加圧空気系統及び電気系統等の点検が可能な点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレーラの点検において、トラクタを連結せずにトレーラの加圧空気系統及び電気系統等の点検が可能な点検装置として、例えば、特許文献1のように、トラクタが有している点検に必要な各機能を、トラクタとは別に移動台車にまとめた点検装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、移動台車上にバッテリと、バッテリを電源としたコンプレッサと、このコンプレッサの出力を昇圧して高圧の空気を得る増圧弁と、点検用計器類とを搭載し、加圧空気系統と電気系統とをトレーラの加圧空気系統と電気系統にそれぞれ接続可能にした構成が示されている。
【0004】
さらに、移動台車の床には、移動台車の移動用の車輪が4箇所に設けられている。また、移動台車は搭載されるバッテリ、コンプレッサ、増圧弁等の各種機器を覆うようにカバー部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のトレーラの点検装置では、移動台車の床上にバッテリ及びコンプレッサが載置されるとともに、移動台車全体がカバー部材で覆われる構造であるため、移動台車の全体が大型化するとともに重量が増大化する虞がある。そのため、移動台車の移動が困難になり、点検作業の効率が低下する要因となっている。
【0007】
そこで、上記課題に鑑み、本開示の少なくとも一つの実施形態は、トラクタと連結せずに、トレーラのブレーキ系統及び電気系統の点検が可能なトレーラ点検装置であって、軽量且つコンパクトに構成することで、移動が容易なトレーラ点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前述した目的を達成するために発明されたものであり、本開示の少なくとも一つの実施形態は、箱形状の本体と該本体の端面に形成さる開口に開閉可能に設けられる蓋体と前記本体に取り付けられる車輪とを有し移動可能な収納ケースと、前記収納ケースの内部に配置され、前記収納ケースの外部より供給される圧縮空気をエアーブレーキに使用する圧縮圧力に調整してトレーラのブレーキ系統に供給する圧縮空気供給装置と、前記収納ケースの内部に配置され、前記収納ケースの外部より供給される外部電源を電装機器に使用する電源電圧に調整して前記トレーラの電気系統に供給する電源供給装置と、前記収納ケースの内部に配置され、前記圧縮空気供給装置及び前記電源供給装置の作動を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成(1)によれば、移動可能な収納ケースの内部には、収納ケースの外部より供給される圧縮空気をエアーブレーキに使用する圧縮圧力に調整してトレーラのブレーキ系統に供給する圧縮空気供給装置と、収納ケースの外部より供給される外部電源を電装機器に使用する電源電圧に調整してトレーラの電気系統に供給する電源供給装置と、圧縮空気供給装置及び電源供給装置の作動を制御する制御装置と、が備えられるので、すなわち、収納ケースの内部には、エアーブレーキに使用する圧縮空気を生成するコンプレッサや灯火機器の電源としてのバッテリを搭載しないため、移動可能な点検装置を軽量且つコンパクトに構成できる。これによって、トレーラ点検装置の移動が容易になる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、前記収納ケースの内部は、前記開口の開口面に直交する方向から見たときに開口面を一方側と他方側に仕切るように一方側の第1収納領域と他方側の第2収納領域とを含み、前記第1収納領域には、前記トレーラのブレーキ系統と前記圧縮空気供給装置とを連結する圧縮空気ホース、及び前記トレーラの電気系統と前記電源供給装置とを連結する電気ケーブルが収納され、前記第2収納領域には、前記圧縮空気供給装置、前記電源供給装置、及び前記制御装置が設置されることを特徴とする。
【0011】
このような構成(2)によれば、収納ケースの内部は、第1収納領域と第2収納領域とを含んでおり、第1収納領域には圧縮空気ホース及び電気ケーブが収納され、第2収納領域には圧縮空気供給装置、電源供給装置、及び制御装置が設置されるので、圧縮空気ホース及び電気ケーブの収納スペースが収納ケース内に確保される。これによって、収納ケースを移動することで、他の場所でのトレーラの点検作業を迅速かつ容易に行うことが可能になる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、前記第2収納領域には、前記収納ケース内を前記開口面に直交する方向に仕切るように仕切板が設置され、前記圧縮空気供給装置、前記電源供給装置、及び前記制御装置は前記仕切板に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
このような構成(3)によれば、圧縮空気供給装置、電源供給装置、及び制御装置は仕切板に取り付けられるので、収納ケースを移動する際の振動に対してこれら装置の支持が安定する。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、前記仕切板は複数設けられ、それぞれの前記仕切板は前記開口面に直交する方向に間隔を有し、且つ前記開口面に直交する方向から見たときに重なるように設置されることを特徴とする。
【0015】
このような構成(4)によれば、複数の仕切板によって収納ケースの内部空間を有効に利用することができるため、圧縮空気供給装置、電源供給装置、及び制御装置を、スペースを取らずに収納できる。これによって点検装置をさらにコンパクト化できる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、前記開口面に最も近い前記仕切板の前記開口面側に、前記電源供給装置からトレーラの灯火機器への電源を出力する灯火機器点検用端子、及びトレーラのABS点検のための電源を出力するABS点検用端子が設置されることを特徴とする。
【0017】
このような構成(5)によれば、収納ケースの蓋体を開くことで、灯火機器点検用端子及びABS点検用端子が現れるので、トレーラの電気系統と電源供給装置とを連結する電気ケーブルの着脱が容易になる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、無線操作装置をさらに備え、前記制御装置は、前記無線操作装置からの信号に基づいて前記圧縮空気供給装置及び前記電源供給装置の作動を制御することを特徴とする。
【0019】
このような構成(6)によれば、無線操作装置によって、収納ケースから離れた位置でトレーラのブレーキ系統及び電気系統の点検が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の少なくとも一つの実施形態によれば、トラクタと連結せずに、トレーラのブレーキ系統及び電気系統の点検が可能なトレーラ点検装置を、軽量且つコンパクトに構成することができる。これによって、トレーラ点検装置の移動が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一実施形態に係るトレーラ点検装置の全体構成の概要を示す構成ブロック図である。
【
図2】トレーラ側のブレーキ系統及び電気系統の全体構成の概要を示す構成ブロック図である。
【
図3】収納ケースの蓋体を開いた状態を示す全体斜視図である。
【
図4A】
図3の収納ケースの蓋体を閉じた状態で上方から見た上平面図である。
【
図4C】
図4Bにおいて収納ケースの蓋体を開いた状態を示す側面図であり、収納ケースの一部を取り除いて内部構造を示す。
【
図5】1段目仕切板に設置される部品の配置概要を示し、上方から見た上平面図である。
【
図6】2段目仕切板に設置される部品の配置概要を示し、上方から見た上平面図である。
【
図7】無線操作装置の操作部の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本開示の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1~7を参照して本開示の一実施形態を説明する。トレーラ点検装置1の全体構成の概要を
図1の構成ブロック図に示す。
図1に示すように、トレーラ点検装置1は、移動可能な収納ケース3と、収納ケース3の内部に配置され、収納ケース3の外部より供給される圧縮空気をエアーブレーキに使用する圧縮圧力に調整してトレーラ5のブレーキ系統に供給する圧縮空気供給装置7と、収納ケース3の内部に配置され、収納ケース3の外部より供給される外部電源を電装機器に使用する電源電圧に調整してトレーラ5の電気系統に供給する電源供給装置9と、収納ケース3の内部に配置され、圧縮空気供給装置7及び電源供給装置9の作動を無線操作装置11の操作部13からの指示に基づいて制御する制御装置15と、を備えて構成されている。
【0024】
収納ケース3について
図3~6を参照して説明する。
図3は、収納ケース3を床面上に使用状態にして置いた状態であり、蓋体17が本体19の上面(請求項1の端面)に位置され、その蓋体17を開いた状態を示す。
【0025】
図3~4Cに、収納ケース3の全体外観図を示す。全体外観形状は、箱形状の本体19と、本体19の上面に形成さる開口21に開閉可能に設けられる蓋体17と、本体19に取り付けられるキャスタ(車輪)23と、を有し移動可能に構成されている。また、この収納ケース3は、樹脂製で成形されている。
【0026】
図4Aは、
図3の収納ケース3の蓋体17を閉めて上方から見た上平面図であり、長方形状を有している。
図4Bは、
図4Aの矢印A方向から見た側面図であり、本体19の長手方向の中央部分に折り畳み式のハンドル25が装着されている。また、本体19の短手方向の中央部分にも折り畳み式のハンドル27が装着されている。
【0027】
また、
図4Bにおいて本体19の底部29の左端にはキャスタ23が設けられている。なお、このキャスタ23は、本体19の短手方向の反対側においても同様に設けられている。
【0028】
さらに、
図4Bにおいて本体19の底部29の右端には伸縮式のハンドル33が格納されている。
図4Bはハンドル33が格納されている状態を示し、収納ケース3を移動の際には、キャスタ23が路面に接地するように収納ケース3を左側に起こして立てて、ハンドル33を引き出して利用することで、収納ケース3の移動が容易になる。
【0029】
図4Cは、
図4Bの側面図において蓋体17を開いた状態を示し、また、
図4Cは、収納ケース3の一部を取り除いて内部構造を示す。
図4Cに示すように蓋体17のケース内側には衝撃吸収用及び吸音用としてスポンジ部材35が貼りつけられている。
【0030】
収納ケース3の内部は、
図3、
図4Cに示すように、上下方向(開口21の開口面21Aに直交する方向)から見たときに開口面21Aを一方側と他方側に仕切るように一方側の第1収納領域37と他方側の第2収納領域39とを含んでいる。
【0031】
第1収納領域37は単なる空間であり、収納ケース3内に設置される圧縮空気供給装置7と点検を行うトレーラ5側のブレーキ系統とを連結する連結用圧縮空気ホース41、及び、収納ケース3内に設置される電源供給装置9とトレーラ5側の電気系統とを連結する連結用電気ケーブル43、さらには、収納ケース3の外部から供給される電源用の外部電源ケーブル45、収納ケース3の外部から供給される圧縮空気用の外部圧縮空気ホース47等のトレーラ5の点検に必要な各種圧縮空気ホース及び電気ケーブルが収納されるようになっている。
【0032】
トレーラ5側のブレーキ系統は、
図2に示すように、サプライライン49とコントロールライン51とを有するため、連結用圧縮空気ホース41は、サプライライン49への供給のためのサプライライン連結用ホース41Aとコントロールライン51への供給のためのコントロールライン連結用ホース41Bとがそれぞれ収納される。
【0033】
また、トレーラ5側の電気系統は、
図2に示すように、エレクトリックライン53とABSコントロールライン55とを有するため、連結用電気ケーブル43は、エレクトリックライン53への供給のためのエレクトリック連結用ケーブル43AとABSコントロールライン55への供給のためのABS連結用ケーブル43Bとがそれぞれ収納される。さらに、無線操作装置11も、この第1収納領域37に収納される(
図3参照)。
【0034】
また、第2収納領域39には、
図4Cに示すように、収納ケース3内を上下方向(開口面21Aに直交する方向)に仕切るように上方側の1段目仕切板(仕切板)57及び下方側の2段目仕切板(仕切板)59の2段(複数)の仕切板が設置されている。
【0035】
1段目仕切板57及び2段目仕切板59は、上下方向に間隔を有し、且つ上下方向から見たときに重なるように設置されている。上方側の1段目仕切板57及び下方側の2段目仕切板59に、圧縮空気供給装置7、電源供給装置9を構成する各種部品、及び制御装置15が取り付けられる。
【0036】
なお、これら1段目仕切板57及び2段目仕切板59は、アルミニウム合金製による平板状の部材である。また、1段目仕切板57及び2段目仕切板59は、収納ケース3の内壁にビス止め又は面ファスナによって固定される。
【0037】
このように収納ケース3の内部が、第1収納領域37と第2収納領域39とを含んでおり、第1収納領域37には圧縮空気ホース及び電気ケーブが収納され、第2収納領域39には圧縮空気供給装置7、電源供給装置9、及び制御装置15が設置されるので、圧縮空気ホース及び電気ケーブの収納スペースが収納ケース3内に確保される。これによって、収納ケース3を移動することで、他の場所でのトレーラ5の点検作業を迅速かつ容易に行うことが可能になる。
【0038】
さらに、圧縮空気供給装置7、電源供給装置9、及び制御装置15は、1段目仕切板57及び2段目仕切板59に取り付けられるので、収納ケース3を移動する際の振動に対してこれら装置の支持が安定する。
【0039】
さらに、上方側の1段目仕切板57及び下方側の2段目仕切板59の複数の仕切板によって収納ケース3の内部空間を有効に利用することができるため、圧縮空気供給装置7、電源供給装置9、及び制御装置15を、スペースを取らずに収納ケース3内に収納できる。これによってトレーラ点検装置1をさらにコンパクト化できる。
【0040】
次に、収納ケース3内に配置される圧縮空気供給装置7、電源供給装置9、制御装置15について、さらに、無線操作装置11ついて説明する。
【0041】
圧縮空気供給装置7は、収納ケース3の外部より供給される圧縮空気をエアーブレーキに使用する圧縮圧力に調整してトレーラ5のブレーキ系統に供給する。トレーラ5の点検を行う整備工場や、点検のための出張用サービスカーには、圧縮空気を生成するコンプレッサが備えられていることが多い。
【0042】
このため、圧縮空気供給装置7では、それらの外部圧縮空気61を利用して、例えば、外部から1.4MPaの圧力の圧縮空気が供給されて、圧縮空気供給装置7を構成するレギュレータ63(
図5参照)によってエアーブレーキに使用する0.7Mpaに調整される。
【0043】
また、圧縮空気供給装置7は、ソレノイドバルブ65(
図6参照)を含んでおり、このソレノイドバルブ65は、調整された圧力の圧縮空気をトレーラ5側のブレーキ系統への供給と排出とを、制御装置15からの制御信号によって切り替える。すなわち、ソレノイドバルブ65のON/OFF制御によって、トレーラ5側のブレーキ系統のコントロールライン51への圧縮空気供給と排出とを行うことで、疑似的にブレーキペダルを踏んだ状態と離した状態とを作り出すことができる。
【0044】
電源供給装置9は、収納ケース3の外部より供給される外部電源67をトレーラ5側の電装機器に使用する電源電圧に調整してトレーラ5の電気系統に供給する。
【0045】
外部電源としては、トレーラ5の点検を行う整備工場には、ほぼAC100V電源が備えられているので、電源供給装置9では、この外部電源67のAC100Vを利用する。電源供給装置9を構成するスイッチングレギュレータ69(
図6参照)によって、例えば、AC100VをDC24Vに調整して、本トレーラ点検装置1の作動電源とし、さらにトレーラ5の灯火機器、ABSコントローラ71、ABSコントロールバルブ73等の電装機器の作動電源とする。
【0046】
また、電源供給装置9は、
図6に示すようにリレー75を含んでおり、このリレー75は、スイッチングレギュレータ69によって調整された電圧の電源を、点検するトレーラ5の灯火機器、ABSコントローラ71、ABSコントロールバルブ73等の電装機器への供給と停止とを、制御装置15からの制御信号によって切り替える。
【0047】
制御装置15は、圧縮空気供給装置7及び電源供給装置9の作動を無線操作装置11の操作部13からの操作指示に基づいて制御する。すなわち、受信部77で受信した無線操作装置11の操作部13からの操作信号を処理して、圧縮空気供給装置7のソレノイドバルブ65を制御して圧縮空気の供給と排出とを切り替え、また、電源供給装置9のリレー75を制御してトレーラ5の電装機器への電源のONとOFFとを切り替える。
【0048】
無線操作装置11は、所謂、無線リモートコントロール装置(無線リモコン装置)であり、無線操作装置11には、
図7に示すような操作部13に操作ボタンが配置されている。最も上方にトレーラ点検装置1の主電源スイッチ13Aが設けられ、その主電源スイッチ13Aの下方には、左側に方向指示器(左)の操作ボタン13B、右側に駐車灯の操作ボタン13C、次の下段には、左側に方向指示器(右)の操作ボタン13D、右側に制動灯の操作ボタン13E、次の下段には、左側に後退灯の操作ボタン13F、右側に尾灯・番号灯、車幅灯の操作ボタン13G、次の下段には、左側にABSの操作ボタン13H、右側にソレノイドバルブの操作ボタン13Iがそれぞれ設置されている。
【0049】
このように、無線操作装置11の操作部13の操作ボタン13B~13Iを操作することで、収納ケース3から離れた位置でトレーラ5のブレーキ系統及び電気系統の点検が可能になる。
【0050】
次に、
図4C、5、6を参照して、上方側の1段目仕切板57及び下方側の2段目仕切板59のそれぞれに設置される圧縮空気供給装置7、電源供給装置9、及び制御装置15の設置例を説明する。
【0051】
図5に示すように、1段目仕切板57の上面(開口面21A側)には、無線操作装置11からの信号の受信アンテナ81が設置されている。また、トレーラ点検装置1の電源確認ランプ83、ABS装置を作動させるためのABSコントローラ71の作動確認ランプ85、ABSコントロールバルブ73の作動確認ランプ87等の確認ランプが設置されている。また、
図5の紙面において、確認ランプの下方側には、圧縮空気供給装置7を構成するレギュレータ63が設置されている。
【0052】
また、
図5の紙面において、レギュレータ63の下方側には、トレーラ点検装置1への外部電源67のAC100Vの電源用コネクタ89、トレーラ5のエレクトリックライン53への電源供給のためのエレクトリック連結用ケーブル43Aが接続される灯火機器点検用コネクタ(灯火機器点検用端子)91、トレーラ5のABSコントロールライン55への電源供給のためのABS連結用ケーブル43Bが接続されるABS点検用コネクタ(ABS点検用端子)93がそれぞれ設置されている。
【0053】
また、
図6に示すように、2段目仕切板59の上面(開口面21A側)には、受信部77、制御装置15、電源供給装置9を構成するスイッチングレギュレータ69が設置されている。
図6の紙面において左端には、圧縮空気供給装置7を構成するソレノイドバルブ65が設置されている。このソレノイドバルブ65は、他の部品との干渉を避けて、収納ケース3内のスペースの有効利用のために2段目仕切板59の下面側に取り付けられている。また、ソレノイドバルブ65には、圧縮空気の抜け口から圧縮空気の排出時に発生する排出音の防止のためにサイレンサ95が設けられている。また、
図6の紙面において下端側には、電源供給装置9を構成する複数のリレー75が設置されている。
【0054】
収納ケース3の蓋体17を開くと、1段目仕切板57の上面に設置された電源用コネクタ89、灯火機器点検用コネクタ91及びABS点検用コネクタ93が現れるので、外部電源ケーブル45、エレクトリック連結用ケーブル43A、ABS連結用ケーブル43Bの連結作業が容易になる。これら外部電源ケーブル45、エレクトリック連結用ケーブル43A、ABS連結用ケーブル43Bは、他の連結用圧縮空気ホース41に比べて着脱する頻度が多いため作業が容易化する。
【0055】
次に、トレーラ5側のブレーキ系統及び電気系統の全体構成の概要を、
図2に示す構成ブロック図を参照して説明する。トレーラ5側の構成は、一般的に知られている構成であり、
図2の構成は、社団法人日本自動車車体工業会トレーラ部会発行の「トレーラサービルマニアル」からの一部抜粋を基に作成したものである。
【0056】
トレーラ5側のブレーキ系統のサプライライン49は、トラクタからエアータンク99に常時圧縮空気を補給する。なお、本実施形態では、トレーラ点検装置1の圧縮空気供給装置7からエアータンク99に常時圧縮空気を補給する。
【0057】
トレーラ5側のブレーキ系統のコントロールライン51は、トラクタのブレーキペダルの踏込み量に応じた圧力をリレーエマージェンシバルブ101に伝え、リレーエマージェンシバルブ101では、コントロールライン51の圧力に応じた圧縮空気圧をエアータンク99からブレーキチャンバ103に供給する。また、ホース切断等によりサプライライン49の圧力が低下したときに非常ブレーキをかける。
【0058】
なお、本実施形態では、トレーラ点検装置1の無線操作装置11からの指示に基づき圧縮空気供給装置7のソレノイドバルブ65のON/OFF制御によって、トレーラ5側のブレーキ系統のコントロールライン51への圧縮空気の供給と排出とを行い、圧縮空気圧をエアータンク99からブレーキチャンバ103に供給してブレーキをかける。
【0059】
トレーラ5側の電気系統のエレクトリックライン53は、トラクタから各種の灯火機器、例えば、方向指示器105に電源を供給して作動させる。なお、本実施形態では、トレーラ点検装置1の無線操作装置11からの指示に基づき電源供給装置9から支持された灯火機器へ電源を供給する。
【0060】
ABSコントロールライン55は、トラクタからABSコントローラ71及びABSコントロールバルブ73に電源を供給して作動させる。ABSコントローラ71は、スピードセンサ107からの信号を基に車輪のロック状態の有無を判定してABSコントロールバルブ73に電気信号を送り、ブレーキチャンバ103のエアー圧の昇圧、減圧、保持を行う。なお、本実施形態では、トレーラ点検装置1の無線操作装置11からの指示に基づき電源供給装置9からABSコントローラ71及びABSコントロールバルブ73に電源を供給してABSを作動させる。
【0061】
次に、以上のような構成を有するトレーラ点検装置1による点検手順及び点検方法について概要を説明する。
【0062】
まず、収納ケース3の蓋体17を開いて、1段目仕切板57の上面に設置されたトレーラ点検装置1の電源用コネクタ89に、外部電源ケーブル45を接続する。
【0063】
さらに、トレーラ点検装置1の圧縮空気供給装置7のレギュレータ63の出力端子とトレーラ5側のブレーキ系統のサプライライン49のカプラC1とをサプライライン連結用ホース41Aによって連結し、ソレノイドバルブ65の出力端子とトレーラ5側のブレーキ系統のコントロールライン51のカプラC2とをコントロールライン連結用ホース41Bによって連結する。
【0064】
さらに、1段目仕切板57の上面に設置された灯火機器点検用コネクタ91とトレーラ5側のエレクトリックライン53のコネクタC3とをエレクトリック連結用ケーブル43Aによって連結し、1段目仕切板57の上面に設置されたABS点検用コネクタ93とトレーラ5側のABSコントロールライン55のコネクタC4とをABS連結用ケーブル43Bによって連結する。
【0065】
トレーラ5の点検に必要な各種圧縮空気ホース及び電気ケーブルを接続した後に、無線操作装置11の主電源スイッチ13Aによってトレーラ点検装置1の電源をONにする。1段目仕切板57の上面に設置されたトレーラ点検装置1の電源確認ランプ83によって電源が供給されたことを確認する。その後は、無線操作装置11の操作ボタン13B~13IのON/OFF操作によって、作動を確認する。なお、主電源スイッチ13A及び操作ボタン13B~13Iは、1回押すごとにONとOFFとが切り替わるON/OFF切替式になっている。
【0066】
例えば、方向指示器の操作ボタン13B、13DのON操作によって、方向指示器105が一定時間で点滅するかを目視で確認する。同様に、駐車灯の操作ボタン13C、制動灯の操作ボタン13E、後退灯の操作ボタン13F、尾灯・番号灯、車幅灯の操作ボタン13GのそれぞれのON/OFF操作によって点灯及び消灯を目視で確認する。
【0067】
ABSの操作ボタン13Hの操作によって、ABSコントローラ71及びABSコントロールバルブ73を作動させる。1段目仕切板57の上面に設置されたABSコントローラ71の作動確認ランプ85、及びABSコントロールバルブ73の作動確認ランプ87によって、電源が供給されたことを確認し、さらに、ブレーキチャンバ103が作動して動くことを目視及び音によって確認する。
【0068】
ソレノイドバルブの操作ボタン13Iの操作によって、圧縮空気供給装置7のソレノイドバルブ65をON/OFF制御して、トレーラ5のコントロールライン51の圧縮空気の供給と排出とを行うことで、疑似的にブレーキペダルを踏んだ状態と離した状態とを作り出し、ブレーキのロックと解除の作動点検をする。この作動点検は、ブレーキチャンバ103が作動して動くことを目視及び音によって確認する。また、配管からのエアー漏れを音や洗剤による泡の発生によって確認する。
【0069】
以上説明した一実施形態によれば、移動可能な収納ケース3の内部には、収納ケース3の外部より供給される圧縮空気をエアーブレーキに使用する圧縮圧力に調整してトレーラ5のブレーキ系統に供給する圧縮空気供給装置7と、収納ケース3の外部より供給される外部電源を電装機器に使用する電源電圧に調整してトレーラ5の電気系統に供給する電源供給装置9と、圧縮空気供給装置7及び電源供給装置9の作動を無線操作装置11の操作部13からの指示に基づいて制御する制御装置15と、が備えられるので、すなわち、収納ケース3の内部には、エアーブレーキに使用する圧縮空気を生成するコンプレッサや灯火機器の電源としてのバッテリを搭載しないため、移動可能なトレーラ点検装置1を軽量且つコンパクトに構成できる。これによって、トレーラ点検装置1の移動が容易になる。
【0070】
なお、以上説明した一実施形態では、電源供給装置9について、外部からAC100Vの電源の供給について説明したが、AC100電源に限るものではなく点検のための出張用サービスカーに、圧縮空気を生成するコンプレッサと共にDC24Vのバッテリが搭載されている場合には、外部から直接DC24V電源を供給してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示の少なくとも一つの実施形態によれば、トラクタと連結せずに、トレーラのブレーキ系統及び電気系統の点検が可能なトレーラ点検装置を、軽量且つコンパクトに構成することができ、トレーラ点検装置の移動が容易になるので、トレーラ点検装置への利用に適している。
【符号の説明】
【0072】
1 トレーラ点検装置
3 収納ケース
5 トレーラ
7 圧縮空気供給装置
9 電源供給装置
11 無線操作装置
13 操作部
13A 主電源スイッチ
13B~13I 操作ボタン
15 制御装置
17 蓋体
19 本体
21 開口
21A 開口面
23 キャスタ(車輪)
25、27、33 ハンドル
37 第1収納領域
39 第2収納領域
41 連結用圧縮空気ホース
41A サプライライン連結用ホース
41B コントロールライン連結用ホース
43 連結用電気ケーブル
43A エレクトリック連結用ケーブル
43B ABS連結用ケーブル
45 外部電源ケーブル
47 外部圧縮空気ホース
57 1段目仕切板(仕切板)
59 2段目仕切板(仕切板)
61 外部圧縮空気
63 レギュレータ
65 ソレノイドバルブ
67 外部電源
69 スイッチングレギュレータ
75 リレー
77 受信部
89 電源用コネクタ
91 灯火機器点検用コネクタ(灯火機器点検用端子)
93 ABS点検用コネクタ(ABS点検用端子)