(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176359
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】アレイ基板、表示パネル、及びアレイ基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20231206BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20231206BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20231206BHJP
G09F 9/35 20060101ALI20231206BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231206BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L29/78 612A
G02F1/1368
G02F1/1343
G09F9/35
G09F9/30 338
G09F9/00 342
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088601
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小高 秀文
(72)【発明者】
【氏名】大平 真也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 和也
【テーマコード(参考)】
2H092
2H192
5C094
5F110
5G435
【Fターム(参考)】
2H092GA13
2H092HA06
2H092JA24
2H092MA04
2H092MA05
2H092MA14
2H092MA15
2H092MA16
2H092MA18
2H092NA29
2H092QA05
2H192AA24
2H192CB81
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2H192HA13
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2H192HA33
2H192HA35
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2H192JA32
5C094AA42
5C094BA03
5C094BA43
5C094DA13
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5F110AA26
5F110BB01
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5F110QQ05
5G435BB12
5G435HH16
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】アレイ基板の不良をより確実に抑制できる。
【解決手段】アレイ基板30は、絶縁性基板31の主面と交わる方向に沿う突出部80を有する第1導電膜32Gと、第1導電膜32Gの上層側に設けられる第1絶縁膜38と、第1絶縁膜38の上層側に設けられる第2導電膜32Sと、を備え、突出部80の側面は、絶縁性基板31の主面方向に沿う膨出部81を有しており、膨出部81と突出部80の基端元82との間に充填される第2絶縁膜35をさらに備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の上層側に設けられ、前記絶縁性基板の主面と交わる方向に沿う突出部を有する第1導電膜と、
前記第1導電膜の上層側に設けられる第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上層側に設けられる第2導電膜と、を備え、
前記突出部の側面は、前記絶縁性基板の主面方向に沿う膨出部を有しており、
前記膨出部と前記突出部の基端元との間に充填される第2絶縁膜をさらに備えるアレイ基板。
【請求項2】
前記突出部内には、異物が含まれている請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項3】
複数の画素電極及び複数の薄膜トランジスタがマトリクス状に配列されており、
前記第1導電膜は、前記薄膜トランジスタのゲート電極、及び前記ゲート電極と連なるゲート配線を構成するゲート金属膜であり、
前記第1絶縁膜は、ゲート絶縁膜であり、
前記第2導電膜は、前記薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極、及び前記ソース電極と連なるソース配線を構成するソース金属膜であり、
前記突出部は突出端側が先太である請求項1または請求項2に記載のアレイ基板。
【請求項4】
前記第2絶縁膜は、感光性樹脂材料からなる請求項1又は請求項2に記載のアレイ基板。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のアレイ基板と、
前記アレイ基板との間に内部空間を有する形で対向して配される対向基板と、
前記内部空間に配され機能性有機分子を含む媒質層と、を備える表示パネル。
【請求項6】
前記媒質層は液晶分子を含む液晶層である請求項5に記載の表示パネル。
【請求項7】
複数の画素電極及び複数の薄膜トランジスタがマトリクス状に配列されたアレイ基板の製造方法であって、
絶縁性基板の上層側に第1導電膜を成膜し、
前記第1導電膜の上に第1レジスト膜を成膜し、
前記第1レジスト膜を露光し現像して、前記薄膜トランジスタのゲート電極、及び前記ゲート電極と連なるゲート配線のレイアウトパターンに対応する第1レジストパターンを形成し、
前記第1導電膜を前記第1レジストパターンをマスクとしてウエットエッチングして前記ゲート電極、及び前記ゲート配線を形成し、
前記ゲート電極及び前記ゲート配線の上に感光性樹脂材料を塗布し、
前記感光性樹脂材料を前記絶縁性基板の反対側から露光し現像して、前記ゲート電極及び前記ゲート配線の形状を補正するための補正用絶縁膜を形成し、
前記ゲート電極及び前記ゲート配線の上層側にゲート絶縁膜を成膜し、
前記ゲート絶縁膜の上層側に第2導電膜を成膜し、
前記第2導電膜の上に第2レジスト膜を成膜し、
前記第1レジスト膜を露光し現像して、前記薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極、及び前記ソース電極と連なるソース配線のレイアウトパターンに対応する第2レジストパターンを形成し、
前記第2導電膜を前記第2レジストパターンをマスクとしてエッチングして前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記ソース配線を形成するアレイ基板の製造方法。
【請求項8】
前記感光性樹脂材料は、前記第1レジスト膜、または前記第2レジスト膜の少なくとも一つと同一材料である請求項7に記載のアレイ基板の製造方法。
【請求項9】
前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記ソース電極の上層側に保護膜を塗布し、
前記感光性樹脂材料は、前記保護膜と同一材料である請求項7に記載のアレイ基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、アレイ基板、表示パネル、及びアレイ基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは、多数の画素がマトリクス状に配列されており、各画素の画素電極に印加される電圧によって液晶分子の配向を制御することで、所望の画像を表示している。画素電極の印加電圧は、画素毎に設けられたスイッチング素子(TFT、薄膜トランジスタ)により切り替えられる。TFTは、液晶パネルを構成する2つの基板のうち一方の基板(アレイ基板、アクティブマトリクス基板、TFT基板)において各種薄膜を積層して形成される。特許文献1には、TFTの製造方法の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1に記載のTFTは、ソース電極及びドレイン電極が絶縁基板上に形成されており、ソース電極及びドレイン電極は第1導電膜と低抵抗半導体膜とからなる積層膜によって構成されている。ソース電極とドレイン電極との間にはこれらの側面間を被覆する絶縁膜が形成されており、絶縁膜上に半導体膜が形成されている。このような層構成とすることで、ソース電極及びドレイン電極の一部である低抵抗半導体膜と、半導体膜との間の逆リーク電流を軽減できるとされている。また、ソース電極及びドレイン電極の側面を絶縁膜で被覆することで側面の段差を緩和し、上に積層される膜(半導体膜、ゲート絶縁膜、及びゲート電極等)の段差被覆性を改善できるとされている。また、段差被覆性が不十分であると、ゲート電極と半導体膜との短絡、及び耐圧不良が生じてしまうことが指摘されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで液晶パネルでアレイ基板を製造する際、異物の混入を完全に防ぐことは極めて難しい。異物が付着すると、異物による予期しない段差が積層膜に発生してしまい、耐圧不良やリーク電流の原因となり、アレイ基板の不良を引き起こしてしまう。このような段差に対して、特許文献1に記載の技術を適用し段差被覆性を改善することは困難である。特許文献1に記載のTFTにおいて段差の緩和に用いられる絶縁層は、ソース電極とドレイン電極の側面間を埋めるように予め決められた位置に形成される。このため、予期しない異物によって生じる段差を緩和するように当該絶縁層を形成することは難しい実情がある。
【0006】
本願明細書に記載の技術は、上記のような実情に基づいて完成されたものであって、アレイ基板の不良をより確実に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本願明細書に記載の技術に関わるアレイ基板は、絶縁性基板と、前記絶縁性基板の上層側に設けられ、前記絶縁性基板の主面と交わる方向に沿う突出部を有する第1導電膜と、前記第1導電膜の上層側に設けられる第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上層側に設けられる第2導電膜と、を備え、前記突出部の側面は、前記絶縁性基板の主面方向に沿う膨出部を有しており、前記膨出部と前記突出部の基端元との間に充填される第2絶縁膜をさらに備える。
【0008】
(2)また、上記アレイ基板は、上記(1)に加え、前記突出部内には、異物が含まれていてもよい。
【0009】
(3)また、上記アレイ基板は、上記(1)または(2)に加え、複数の画素電極及び複数の薄膜トランジスタがマトリクス状に配列されており、前記第1導電膜は、前記薄膜トランジスタのゲート電極、及び前記ゲート電極と連なるゲート配線を構成するゲート金属膜であり、前記第1絶縁膜は、ゲート絶縁膜であり、前記第2導電膜は、前記薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極、及び前記ソース電極と連なるソース配線を構成するソース金属膜であり、前記突出部は突出端側が先太であってもよい。
【0010】
(4)また、上記アレイ基板は、上記(1)から(3)のいずれか1つに加え、前記第2絶縁膜は、感光性樹脂材料からなっていてもよい。
【0011】
(5)本願明細書に記載の技術に関わる表示パネルは、上記(1)から(4)のいずれか1つのアレイ基板と、前記アレイ基板との間に内部空間を有する形で対向して配される対向基板と、前記内部空間に配され機能性有機分子を含む媒質層と、を備える。
【0012】
(6)また、上記表示パネルは、上記(5)に加え、前記媒質層が液晶分子を含む液晶層であってもよい。
【0013】
(7)本願明細書に記載の技術に関わるアレイ基板の製造方法は、複数の画素電極及び複数の薄膜トランジスタがマトリクス状に配列されたアレイ基板の製造方法であって、絶縁性基板の上層側に第1導電膜を成膜し、前記第1導電膜の上に第1レジスト膜を成膜し、前記第1レジスト膜を露光し現像して、前記薄膜トランジスタのゲート電極、及び前記ゲート電極と連なるゲート配線のレイアウトパターンに対応する第1レジストパターンを形成し、前記第1導電膜を前記第1レジストパターンをマスクとしてウエットエッチングして前記ゲート電極、及び前記ゲート配線を形成し、前記ゲート電極及び前記ゲート配線の上に感光性樹脂材料を塗布し、前記感光性樹脂材料を前記絶縁性基板の反対側から露光し現像して、前記ゲート電極及び前記ゲート配線の形状を補正するための補正用絶縁膜を形成し、前記ゲート電極及び前記ゲート配線の上層側にゲート絶縁膜を成膜し、前記ゲート絶縁膜の上層側に第2導電膜を成膜し、前記第2導電膜の上に第2レジスト膜を成膜し、前記第1レジスト膜を露光し現像して、前記薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極、及び前記ソース電極と連なるソース配線のレイアウトパターンに対応する第2レジストパターンを形成し、前記第2導電膜を前記第2レジストパターンをマスクとしてエッチングして前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記ソース配線を形成する。
【0014】
(8)また、上記アレイ基板の製造方法は、上記(7)に加え、前記感光性樹脂材料は、前記第1レジスト膜、または前記第2レジスト膜の少なくとも一つと同一材料であってもよい。
【0015】
(9)また、上記アレイ基板の製造方法は、上記(7)に加え、前記ソース電極、前記ドレイン電極、及び前記ソース電極の上層側に保護膜を塗布し、前記感光性樹脂材料は、前記保護膜と同一材料であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本願明細書に記載の技術によれば、アレイ基板、及びこれを備える表示パネルの不良をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図10】比較例1に係るアレイ基板の断面顕微鏡写真
【
図11B】比較例1に係るアレイ基板の製造工程を示す図
【
図11F】比較例1に係るアレイ基板の製造工程を示す図
【
図11G】比較例1に係るアレイ基板の製造工程を示す図
【
図11H】比較例1に係るアレイ基板の製造工程を示す図
【
図11I】比較例1に係るアレイ基板の製造工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
第1実施形態に関わるアレイ基板30の構成及び製造方法について、
図1から
図9Iを参照して説明する。なお、各図面の一部にはX軸、Y軸及びZ軸を示しており、各軸方向が各図面で共通する方向となるように描かれている。また、Z軸方向については、図の上側を表側とし、下側を裏側とする。
【0019】
アレイ基板30は、液晶パネル10(表示パネルの一例)に用いられる。液晶パネル10は、
図1に示すように、2つの基板20、30と、液晶層18と、シール部40と、を少なくとも備える。2つの基板20、30のうち液晶パネル10の表示面側(表側)がCF基板(対向基板、カラーフィルター基板)20とされ、その反対側(裏側)がアレイ基板30とされる。液晶層18は、両基板20、30間の内部空間に挟持され、電界印加に伴って光学特性が変化する物質である液晶分子を含んでいる。シール部40は、液晶層18を取り囲む形で両基板20、30間に介在し、液晶層18を封入している。また両基板20、30の外面側には、それぞれ偏光板10C、10Dが貼り付けられている。液晶パネル10の面内は、画像を表示可能で且つ中央側に配される表示領域(アクティブエリア)AAと、表示領域AAを取り囲み平面に視て枠状(額縁状)をなす非表示領域(ノンアクティブエリア)NAAと、に区画されている。
【0020】
CF基板20は、
図1に示すように、ガラス基板21と、ガラス基板21上に積層形成された複数の薄膜20Aと、を有する。複数の薄膜20Aには、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)等の各着色部が所定配列で配置されたカラーフィルタや対向電極が含まれている。
【0021】
アレイ基板30は、
図1に示すように、ガラス基板31(絶縁性基板の一例)と、ガラス基板31上に積層形成された複数の薄膜30Aと、を有する。アレイ基板30は、表示領域AAにおいて、
図2に示すように、平面視で略矩形状をなす複数の画素電極34と、各画素電極34に1つずつ接続された複数のTFT32(スイッチング素子の一例)と、複数のゲート配線(走査線)36Gと、複数のソース配線(データ線、信号線)36Sと、を備える。TFT32に対してゲート配線36Gを通じてゲート電圧が印加され、ソース配線36Sを通じてデータ電圧が印加されると、画素電極34とCF基板20の対向電極(共通電極)との電位差が変化する。この電位差によって液晶層18に印加される電界が制御され、液晶分子の配向状態が適切にスイッチングされて、液晶パネル10が駆動される。なお、液晶パネル10は、IPS(In-Plane Switching)やFFS(Fringe Field Switching)等の動作方式であっても構わない。IPS方式やFFS方式の場合、共通電極はアレイ基板30に設けられることが一般的である。
【0022】
複数の画素電極34は、マトリックス状に配列されている。各画素電極34は、平面に視て矩形状の本体部34Aと、接続部34Bと、を有する。本体部34Aは、接続部34Bに比して十分大きく、画素電極34のほぼ全体を占める大きさを有するが、
図2では、接続部34Bを明示するために接続部34Bを実際より大きく図示している。本体部34Aは、CF基板20の対向電極との間で電界を発生する。接続部34Bは、本体部34Aの一部からTFT32に向かって面内方向に突出し、本体部34AとTFT32(後述するドレイン電極32D)とを接続する。
【0023】
ゲート配線36G及びソース配線36Sは、互いに直交しており、各画素電極34を取り囲むように、格子状に設けられている。ゲート配線36Gとソース配線36Sとが平面に視て重畳する部分には、TFT32が設けられている。ゲート配線36Gの一部は、TFT32を構成するゲート電極32Gをなし、ソース配線36Sの一部は、TFT32を構成するソース電極32Sをなしている。ゲート配線36Gはゲート電極32Gに連なり、ソース配線36Sはソース電極32Sに連なっている。
【0024】
次に、アレイ基板30の層構成について
図3から
図5を参照して説明する。ゲート電極32G、及びゲート配線36Gは、ガラス基板31上に積層されたゲート金属膜(第1導電膜の一例)からなる。ソース電極32S、ドレイン電極32D、及びソース配線36Sは、ソース金属膜(第2導電膜の一例)からなる。ソース金属層は、ゲート金属膜の上層側にゲート絶縁膜38(第1絶縁膜の一例)を介して積層される。TFT32は、ボトムゲート型のTFTとされ、これらの形成領域には、ゲート絶縁膜38とソース金属膜との間に、TFT32のチャネル領域となる半導体膜33が積層される。ソース金属膜の上には、層間絶縁膜39が積層され、その上には透明電極膜からなる画素電極34が形成される。画素電極34の上には、複数の薄膜30Aを保護すると共に、表面を平坦化するための保護膜37(パシベーション膜、平坦化膜)が積層される。
【0025】
ゲート電極32G及びゲート配線36Gは、後述する製造工程にて説明するように、ゲート金属膜をウエットエッチングすることでパターン形成される。ゲート電極32G及びゲート配線36Gは、ガラス基板31の主面と交わる方向(Z軸方向)に沿って突出する突出部となる。液体を腐食剤とするウエットエッチングは、気体を腐食剤とするドライエッチングに比べてエッチング方向に異方性が生じやすい。その結果、ガラス基板31側(突出部の基端元側)のエッチング度合いがガラス基板31と反対側(突出部の突出端側)に比べて大きくなり、ゲート電極32G及びゲート配線36Gは、
図3及び
図5に示すように、突出端側が先太となる断面逆テーパー形状に形成される。これにより、ゲート電極32G、及びゲート配線36Gの側面はそれぞれ、ガラス基板31の主面方向(X-Y面方向)に沿う膨出部32G1、36G1(断面逆テーパー形状の先端部)を有するものとなる。
【0026】
また、ゲート金属膜の一部には、例えば
図6のゲート電極32Gに示すように、予期しない異物90が混入しているものとする。異物90はゲート金属膜とは異なる材料からなる場合だけでなく、ゲート金属膜と同一材料からなる場合もある(成膜ダスト等)。異物90は、例えばゲート金属膜を蒸着によって成膜している際、成膜中のゲート金属膜の表面に付着することで混入する。付着した異物90上にゲート金属膜が引き続き蒸着されると、ゲート金属膜にはガラス基板31の主面と交わる方向に沿って突出する突出部80が生じてしまう。突出部80の形状は内部の異物90の形状に倣うものとなるが、本実施形態では突出部80は丸みを帯びた形状をなしており、突出部80の側面はガラス基板31の主面方向に沿う膨出部81を有する。
【0027】
ゲート電極32G、ゲート配線36G、及び突出部80のガラス基板31側にはそれぞれ、
図3、
図5及び
図6に示すように、これらの形状を補正するための補正用絶縁膜35(第2絶縁膜の一例)が形成されている。補正用絶縁膜35は、ゲート電極32G(突出部)の膨出部32G1とゲート電極32Gの基端元(ガラス基板31との接続部)との間(
図3)、及びゲート配線36G(突出部)の膨出部36G1とゲート配線36Gの基端元との間に充填形成されている(
図5)。また補正用絶縁膜35は、突出部80の膨出部81と基端元82との間に充填形成されている(
図6)。
【0028】
ゲート金属膜及びソース金属膜は、銅(Cu)等の金属、合金の単層膜又はこれらの積層膜からなる。ゲート金属膜及びソース金属膜の材料は、同一であっても、異なっていても構わない。ゲート絶縁膜38、及び層間絶縁膜39は、酸化シリコン(SiOx)、酸窒化ケイ素(SiON)、窒化ケイ素(SiNx)等の単層又はその積層である透明な無機絶縁材料からなる。半導体膜33は、酸化物半導体、アモルファスシリコン等からなる。透明電極膜は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料からなる。保護膜37は、例えばアクリル樹脂(PMMA等)やポリイミド樹脂等の透明な有機絶縁材料からなる。補正用絶縁膜35は感光性樹脂材料からなり、露光可能な樹脂材料であればその種類は限定されない。本実施形態では、補正用絶縁膜35は保護膜37と同一材料からなるが、後述する製造工程で使用されるレジスト膜L2、L5と同一材料であっても良い。
【0029】
続いて、アレイ基板30の製造方法について
図7Aから
図9Iを参照して説明する。まずガラス基板31上にスパッタリング法や蒸着法等を用いてゲート金属膜L1を成膜し、ゲート金属膜L1の上に第1レジスト膜L2を塗布する(
図7A、
図8A、
図9A)。
図9Aに示すように、ゲート金属膜L1の一部には異物90が混入しており、突出部80が生じている。第1レジスト膜L2は、フォトリソグラフィー法で用いられる既知のフォトレジスト材料が適宜用いられる。次に、第1レジスト膜L2を露光、及び現像して、ゲート電極32G、及びゲート配線36Gのレイアウトパターンに対応する第1レジストパターンを形成する。そして、第1レジストパターンをマスクとしてゲート金属膜L1をウエットエッチングして、ゲート電極32G及びゲート配線36Gを形成する(
図7B、
図8B、
図9B)。既述したように、ウエットエッチングによってゲート電極32G及びゲート配線36Gは、断面逆テーパー形状となり、膨出部32G1、36G1を有するものとなる。ウエットエッチングの腐食剤には、フォトリソグラフィー法で用いられる既知の腐食剤(例えば蓚酸)が適宜用いられる。
【0030】
ゲート電極32G及びゲート配線36Gの形成後、これらの上に補正用絶縁膜35の原材料である感光性樹脂材料L3を塗布する(
図7C、
図8C、
図9C)。塗布された感光性樹脂材料L3は、ゲート電極32G、ゲート配線36G、及び突出部80のガラス基板31側にも流入する。塗布した感光性樹脂材料L3をガラス基板31と反対側から露光すると、ゲート電極32G、ゲート配線36G、及び突出部80がマスクのような役割を担い、ゲート電極32G、ゲート配線36G、及び突出部80のガラス基板31側の感光性樹脂材料L3が残存する。残存量は、主に露光量で調整可能であり、追加のマスクは必要とされない。残存した感光性樹脂材料L3を焼結して硬化すると、補正用絶縁膜35が形成される(
図7D、
図8D、
図9D)。
【0031】
補正用絶縁膜35の形成後、ゲート絶縁膜38、及び半導体膜33をフォトリソグラフィー法により順次形成する(
図7E、
図8E、
図9E)。次に、スパッタリング法や蒸着法等を用いてソース金属膜L4を成膜する(
図7F、
図8F、
図9F)。成膜したソース金属膜L4の上に第2レジスト膜L5を塗布、露光、及び現像して(
図7G、
図8G、
図9G)、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及びソース配線36Sのレイアウトパターンに対応する第2レジストパターンを形成する(
図7H、
図8H、
図9H)。第2レジスト膜L5には、フォトリソグラフィー法で用いられる既知のフォトレジスト材料が適宜用いられる。第2レジスト膜L5は、第1レジスト膜L2と同一材料であっても、異なる材料であっても構わない。
【0032】
形成した第2レジストパターンをマスクとしてソース金属膜L4をウエットエッチングして、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及びソース配線36Sを形成する(
図7I、
図8I、
図9I)。これらの上に、層間絶縁膜39、及び画素電極34をフォトリソグラフィー法により形成し、その後、表面全体に保護膜37を塗布すると、
図3、
図5、
図6に示すアレイ基板30となる。液晶層18に面する最上層として配向膜がさらに塗布されるが、
図3から
図6では保護膜37より上層の図示は省略されている。
【0033】
ソース金属膜L4のエッチング方法はドライエッチングを用いても構わない。ウエットエッチングを用いると、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及びソース配線36Sも断面逆テーパー形状となる。しかしながら、これらの上層側に積層される膜の数は、ゲート電極32G、及びゲート配線36Gより少なく、これらが断面逆テーパー形状であっても、アレイ基板30への悪影響は小さい。このため、各図においてはソース電極32S、ドレイン電極32D、及びソース配線36Sは断面逆テーパー形状には図示していない。
【0034】
続いて、上記したアレイ基板30及びその製造方法の作用効果について説明する。アレイ基板30は、ゲート金属膜からなる突出部(ゲート電極32G、ゲート配線36G、及び突出部80)の形状を補正するための補正用絶縁膜35を備える。補正用絶縁膜35を設けることで、例え予期しない異物90上にゲート金属膜が積層されて突出部80が形成された場合であっても、段差被覆性を改善できる。その結果、ゲート金属膜(ゲート電極32G、ゲート配線36G、及び突出部80)とソース金属膜(ソース電極32S、ドレイン電極32D、及びソース配線36S)との間の耐圧不良、ひいてはリーク電流の発生を抑制できる。
【0035】
仮に補正用絶縁膜35が設けられていない場合(比較例1に係るアレイ基板)、
図10に示すように、異物90上にゲート金属膜が積層されて突出部80が形成されると、ゲート絶縁膜38の膜厚が不均一になり、ゲート絶縁膜38が過度に薄膜化する部分が生じてしまう。その結果、耐圧不良によるリーク電流が発生してしまう。また、ゲート絶縁膜38だけでなく、その上層に設けられるソース金属膜等の膜厚も不均一になってしまう。
【0036】
また比較例1に係るアレイ基板の場合、既述したアレイ基板30の
図8B、
図8Fから
図8Iに対応する製造工程を示す図は、
図11B、
図11Fから
図11Iの各図に示すようになる。断面逆テーパー形状をなすゲート電極32G、ゲート配線36Gの膨出部32G1、36G1は、製造工程において欠落しやすい(
図11B)。欠落した膜片はゲート金属膜からなり、これによってリーク電流が発生することがある。またゲート絶縁膜38の形状は、ゲート配線36Gの断面逆テーパー形状に倣うものとなる(
図11Fから
図11I)。これによりゲート絶縁膜38の膜厚は不均一になり、ゲート絶縁膜38の一部は過度に薄膜化し、ゲート配線36G(ゲート金属膜の段差部分)の被覆性(段差被覆性)が不十分となってしまう。その結果、耐圧不良、及びリーク電流が発生してしまう。また、ゲート絶縁膜38だけでなく、その上層に設けられるソース金属膜等の膜厚も不均一になってしまう。
【0037】
また比較例1に係るアレイ基板の場合、第2レジスト膜L5を露光する際(
図11G)、照射された光が逆テーパー形状部分に遮られてしまい、第2レジスト膜L5の除去不良が生じてしまうことがある(例えば
図11H)。また、この第2レジスト膜L5の除去不良によって、ソース金属膜L4のエッチング不良による膜残りが生じてしまうことがある(
図11I)。これによってもリーク電流が発生してしまう。
【0038】
その点、本実施形態では補正用絶縁膜35によってゲート金属膜の段差被覆性を改善できるため、上記したアレイ基板の不良を抑制できる。補正用絶縁膜35は、保護膜37と同一材料、または製造工程で使用されるレジスト膜L2、L5と同一材料からなることが好ましい。このようにすれば追加のマスクを用いることなく、既存設備を用いて補正用絶縁膜35を形成できる。補正用絶縁膜35の原材料となる感光性樹脂材料L3を露光する際、照射された光は、ゲート金属膜からなる突出部(ゲート電極32G、ゲート配線36G、及び突出部80)の膨出部32G1、36G1、81によって遮られる。このため、異物90上にゲート金属膜が積層されて突出部80が形成された場合であっても、突出部80のガラス基板31側に感光性樹脂材料L3を残存可能である。その結果、予期しない位置に突出部80が生じた場合であっても、突出部80の発生位置に対応して補正用絶縁膜35を設けることができ、アレイ基板30の不良をより確実に抑制できる。
【0039】
<他の実施形態>
本願明細書に記載の技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)アレイ基板30の層構成及びレイアウトパターンは、図示したものに限られない。例えば、TFT32はトップデート型やデュアルゲート型のTFTであっても構わない。その場合、補正用絶縁膜35は、TFTを構成する導電膜のうち、少なくとも最も下層側(ガラス基板31側)の導電膜における突出部に対して設けられる。アレイ基板30の不良は、下層側の導電膜における突出部によって生じやすい。このため、補正用絶縁膜35は、下層側の導電膜の突出部の形状を補正するように設けることが効果的である。
【0041】
(2)本願明細書に記載の技術は、液晶パネル10以外の表示パネルにも適用可能である。例えば2つの基板20,30間に液晶層18以外の機能性有機分子(媒質層)を挟持した表示パネルや、有機EL(electro-luminescence)パネル等の自発光型の表示パネルにも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
10…液晶パネル(表示パネル)、30…アレイ基板、31…ガラス基板(絶縁性基板)、32…TFT(薄膜トランジスタ)、32G…ゲート電極(第1導電膜)、32S…ソース電極(第2導電膜)、32D…ドレイン電極(第2導電膜)、35…補正用絶縁膜(第2絶縁膜)、36G…ゲート配線(第1導電膜、突出部)、36G1…膨出部、36S…ソース配線(第2導電膜)、37…保護膜、38…ゲート絶縁膜(第1絶縁膜)、80…突出部、81…膨出部、82…基端元、90…異物、L1…ゲート金属膜(第1導電膜)、L2…第1レジスト膜、L4…ソース金属膜(第2導電膜)、L5…第2レジスト膜