(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176375
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】マークバンド体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/00 20060101AFI20231206BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20231206BHJP
G09F 7/18 20060101ALI20231206BHJP
G09F 7/10 20060101ALI20231206BHJP
G09F 3/06 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G09F3/00 E
B29C45/14
G09F7/18 Z
G09F7/10
G09F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088628
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】390025634
【氏名又は名称】株式会社ケー・シー・シー・商会
(71)【出願人】
【識別番号】522217234
【氏名又は名称】株式会社谷本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】要海 寛司
(72)【発明者】
【氏名】姫野 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】姫野 冨治
(72)【発明者】
【氏名】谷本 康太郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA23
4F206AA29
4F206AB12
4F206AD05
4F206AD15
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JW34
(57)【要約】
【課題】 マークバンド体を製造するにあたり、レーザー機器内で装着し易くしつつ位置ずれが起こらないように製造し、かつ、使用する際には支持棒から各マークバンド片を取り出すことができるマークバンド体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂製の支持棒にマークバンド片をインサート成型する際に、いずれか一方を結晶性樹脂を用い、マークバンド片の融点温度以下の温度で所定時間成型することで、前記支持棒のスライド部に凹凸を形成し、前記凹凸に前記マークバンド片を表面係合させるマークバンド体の製造方法及びマークバンド体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向のスライド部を有する樹脂製の支持棒と、前記スライド部に配される基部と脚部とを有する樹脂製の一又は複数のマークバンド片とからなるマークバンド体に、レーザー照射により印字面に印字するマークバンド体の製造方法であって、
前記支持棒のスライド部を成形型に挿入し、前記マークバンド片を前記支持棒のスライド部へインサート成型を行うにおいて、
前記マークバンド片の材質と前記支持棒の材質との少なくとも一方に結晶性樹脂を用い、
前記マークバンド片の材質の融点温度より前記支持棒の材質の融点温度が高く、かつ、その差異が80度乃至100度の範囲にあって、成形温度を前記マークバンド片の融点温度以下の温度で3乃至5秒間射出成型することで、前記支持棒のスライド部に凹凸を形成し、前記凹凸に前記マークバンド片を表面係合させることを特徴とするマークバンド体の製造方法。
【請求項2】
複数のマークバンド片を表面係合させた支持棒をレーザー照射機に配置し、マークバンド片の印字面に印字することを特徴とする請求項1に記載のマークバンド体の製造方法。
【請求項3】
支持棒の材質にポリアセタール樹脂を用い、マークバンド片の材質にポリアミド樹脂を用い、
マークバンド片のポリアミド樹脂は濃色顔料を添加することを特徴とする請求項2に記載のマークバンド体の製造方法。
【請求項4】
支持棒の材質にポリアセタール樹脂を用い、マークバンド片の材質にポリアミド樹脂を用い、
マークバンド片のポリアミド樹脂は金属イオンを含む白色顔料を添加することを特徴とする請求項2に記載のマークバンド体の製造方法。
【請求項5】
長手方向を有するスライド部を有する樹脂製の支持棒と、前記スライド部に配される基部と脚部とを有する樹脂製の一又は複数のマークバンド片とからなるマークバンド体であって、
前記マークバンド片の材質と前記支持棒の材質との少なくとも一方に結晶性樹脂を用い、
前記支持棒のスライド部に凹凸を形成し、前記凹凸に前記マークバンド片を表面係合させることを特徴とするマークバンド体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マークバンド体を製造する方法及びマークバンド体に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より支持棒に表示環(マークバンド片)をインサート成型する成型方法は存在する(特許文献1)。この成型方法は、支持棒に表示環をインサート成型するに際して型に任意の表示を浮刻りにしたものである。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の製造方法は、型に表示内容が浮刻りにされているため、汎用的な表示を可能とするものではなかった。そのため、汎用的な表示をするためには、別途、表示環を一つ一つ印字しなければならず、結果としてインサート成型する必要性が低かった。
【0004】
また、特許文献1に記載の製造方法は、支持棒の材質を電線表示環の材質より溶融温度の高いものを使用することで、両者が溶融せず、インサート成型するものであり、一度に多くの表示環を成形することで効率的な生産が可能になるものである。ところが、支持棒では表示環が自由にスライドする状態であるため、マークバンド片にレーザー印字をするためには個々の表示環を別途固定しなければならなかった。
【0005】
しかも、個々の表示環(マークバンド片)は小さいことから連続的かつ正確な印字が難しかった。つまり、マークバンドは電線に係合して表示を行うものであるため、サイズによるが小さいものであれば2mm四方の表示体である。これらを個々にレーザー機器に装着して印字すると作業の手間がかかるだけでなく、マークバンド片のずれなどにより正確な印字が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公告昭和58-第42924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、マークバンド体を製造するにあたり、レーザー機器内で装着し易くしつつ位置ずれが起こらないように製造し、かつ、使用する際には支持棒から各マークバンド片を取り出すことができるマークバンド体及びその製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明におけるマークバンド体の製造方法は、長手方向のスライド部を有する樹脂製の支持棒と、前記スライド部に配される基部と脚部とを有する樹脂製の一又は複数のマークバンド片とからなるマークバンド体に、レーザー照射により印字面に印字するマークバンド体の製造方法であって、前記支持棒のスライド部を成形型に挿入し、前記マークバンド片を前記支持棒のスライド部へインサート成型を行うにおいて、前記マークバンド片の材質と前記支持棒の材質との少なくとも一方に結晶性樹脂を用い、前記マークバンド片の材質の融点温度より前記支持棒の材質の融点温度が高く、かつ、その差異が80度乃至100度の範囲にあって、成形温度を前記マークバンド片の融点温度以下の温度で3乃至5秒間射出成型することで、前記支持棒のスライド部に凹凸を形成し、前記凹凸に前記マークバンド片を表面係合させることを特徴とするものである。
【0009】
また、マークバンド体の製造方法は、一又は複数のマークバンド片を表面係合させた支持棒をレーザー照射機に配置し、マークバンド片の印字面に印字することが好ましい。
【0010】
また、マークバンド体の製造方法は、支持棒の材質にポリアセタール樹脂を用い、マークバンド片の材質にポリアミド樹脂を用い、マークバンド片のポリアミド樹脂は濃色顔料を添加することが好ましい。
【0011】
また、マークバンド体の製造方法は、支持棒の材質にポリアセタール樹脂を用い、マークバンド片の材質にポリアミド樹脂を用い、マークバンド片のポリアミド樹脂は金属イオンを含む白色顔料を添加することが好ましい。
【0012】
さらに本発明のマークバンド体は、長手方向を有するスライド部を有する樹脂製の支持棒と、前記スライド部に配される基部と脚部とを有する樹脂製の一又は複数のマークバンド片とからなるマークバンド体であって、前記マークバンド片の材質と前記支持棒の材質との少なくとも一方に結晶性樹脂を用い、前記支持棒のスライド部に凹凸を形成し、前記凹凸に前記マークバンド片を表面係合させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1または2に記載の発明により、使用していない状態では支持棒にマークバンド片が表面係合しており、レーザー照射をする際にも固定されているため、支持棒ごと個々のマークバンド片をレーザー機器内で位置ずれがなされないようにすることができ、従来のような個々のマークバンド片に印字する場合と比べて、簡単にかつ複数個を一度に印字することが可能になる。また、使用する場合にも、爪などで係合解除して使用することができ、搬出時も支持棒に表面係合した状態でマークバンド片が抜け落ちたりする懸念がない。
【0014】
請求項3または4に記載の発明により、支持棒とマークバンド片とを安定的に表面係合することができる。さらにマークバンド片にポリアミド樹脂を用いることで樹脂発色の発色性・視認性を保ちつつ、マークバンド片として必要な弾力性を兼ねたマークバンド体を製造することが可能になる。また、濃色顔料である黒色顔料を添加することで微細に隆起する白色の印字面が形成されて樹脂発色の発色性・視認性をもつことができ、金属イオンを入れた白色顔料を添加することでも樹脂発色の発色性・視認性を有することが可能になる。
【0015】
請求項5に記載の発明により、レーザー機器内で装着し易くしつつ位置ずれが起こらないように製造し、かつ、使用する際には支持棒から各マークバンド片を取り出すことができるマークバンド体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態のマークバンド体の全体を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態のマークバンド体の全体を示すものであって、(a)が正面図、(b)が平面図である。
【
図3】本実施形態のマークバンド体の全体を示す右側面図である。
【
図4】本実施形態のマークバンド片をコードに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態の支持棒とマークバンド片との表面係合を示す比較概略図であって、(a)が係合していない一般的な成形状態であり、(b)が表面係合した成形状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態及び製造方法について説明する。本説明において、各個別のマークバンド(表示環)を「マークバンド片」とし、1個または複数のマークバンド片を支持棒のスライド部に配した状態のものを「マークバンド体」として説明する。
【0018】
図1、
図2,
図3に示すように、マークバンド体1は、支持棒10と、一又は複数のマークバンド片20,20とからなる。支持棒10は、長手方向に所定の長さを有する棒状体であり、その上側に位置して棒体長手方向に沿って形成されるスライド部11と、スライド部11の先端から上方に傾斜しつつ延長する部材であって、幅長さが徐々に幅広となる排出部12を有する。なお、排出部12の反対側にはスライド部11のみが延長される部材であり、スライド部11にマークバンド片20を挿入することできる挿入部15が形成される。
【0019】
スライド部11の下方には、スライド部11の厚みを薄くして両側から凹を形成する溝部13、13が形成され、後述するマークバンド片20の脚部22が位置するようにしている。溝部13、13の下方からさらに下方に延出する基端部14が形成されている。本実施形態の基端部14は、スライド部の幅よりも幅広となる棒体が接続されており適宜位置に上下方向のリブが形成される。この基端部14により、スライド部11にマークバンド片20をインサート成型する場合に、支持棒10が反り返ることを防止している。
【0020】
マークバンド片20は、立方体形状の基部21と基部21から下方に向けて両側が突出する脚部22,22とからなる。脚部22,22は、基部21の下面であって両側方側からいったん下方に突出し、さらに各々の先端が内側に折曲したカギ状の形態を有する。この脚部22,22により電線、コードに取り付ける場合に電線の外径を挟持するように保持する保持部となり、マークバンド体1ではスライド部11を抱えるように保持する保持部となる。基部21の上面は、平面状に形成され、マークバンド片20に数字や文字からなる印字部を表示するための印字面23となる。
【0021】
マークバンド体1は、複数のマークバンド片20,20が支持棒10のスライド部11に取り付けた状態のものである。従来は、支持棒10とマークバンド片20,20とを別個に成形し、マークバンド片20,20を挿入部15から挿入してスライド部11に配していた。マークバンド片20,20の印字面23への印字も各個別に墨入れを行う手作業が主であった。使用の際には、排出部12を電線に沿わせ、マークバンド片20を排出部12の方向にスライドさせると、幅広の排出部12を経由するときに脚部22,22がいったん広げられるように弾性変形し、
図4に示すようにコード、電線Cに移って脚部22,22で保持する。
【0022】
支持棒10と一または複数のマークバンド片20,20とからなるマークバンド体1の製造方法について説明する。支持棒10は射出成型することにより一体成型する。支持棒10の材質は結晶性樹脂であるPOM樹脂(ポリアセタール樹脂)、好ましくはホモポリマー樹脂を用いている。支持棒10の材質であるポリアセタール樹脂の融点温度は175℃である。
【0023】
マークバンド片20,20は、支持棒10を成形機(図示しない)に挿入し、支持棒10のスライド部11にインサート成型を行う。マークバンド片20,20の材質は、結晶性樹脂であるポリアミド樹脂(ナイロン)、好ましくはナイロン66を用いている。ナイロン66の融点温度は265℃である。
【0024】
成形前に成形金型の金型温度を40℃乃至60℃、好ましくは40℃乃至50℃に設定する。支持棒10のスライド部11を成形機の金型内に現出するように配置し、マークバンド片材であるナイロン66樹脂を射出する。このときのナイロン66樹脂の成形温度をナイロン66の融点温度かそれより若干低い240℃乃至260℃、好ましくは240℃~250℃とする。また、射出時間を5~7秒間、好ましくは5秒間とする。射出後に15秒間乃至25秒間、好ましくは20秒間の保温時間をもって成形を完了する。
【0025】
上記成形条件によるインサート成型を行った場合、支持棒10と成形されたマークバンド片20,20との表面係合となる状態で成形される。本発明でいう表面係合を比較概略図である
図5(a)、(b)にて説明する。通常の成形であれば
図5(a)に示すように、支持棒10とマークバンド片20とが別個に成形され、両者は溶着せずに、マークバンド片20がスライド部11をスライド自在となっている。一方、
図5(b)に示すように、本実施形態の表面係合とは、インサート成型する際に既成形部分である支持棒10のスライド部11の表面を変形させて微細な凹凸部分を形成しつつ、成形部分であるマークバンド片20,20が微細な凹凸部分を覆って成形されることで、両者の接触面で軽く係合している状態をいう。
【0026】
表面係合した支持棒10とマークバンド片20,20は、軽く係合している状態で例えば指でマークバンド片をなぞったり、支持棒10の一端を握ってマークバンド体1を振ったりしても、個々のマークバンド片20,20の係合が外れてスライド部11上でスライド移動しない。しかし、例えばマークバンド片20とマークバンド片20との間に爪を入れて掻き出すように引き出すと、マークバンド片20の係合が外れてスライド移動が可能になる状態である。
【0027】
支持棒10のスライド部11とマークバンド片20,20が表面係合した状態のマークバンド体1をレーザー照射装置にセッティングする。支持棒10は、スライド部11の先端側に排出部12,後端側に挿入部15が延長形成されていることから、これらの排出部12と挿入部15をレーザー照射装置の治具にセッティングすることで、個々のマークバンド片20,20が動いてレーザー照射の位置ずれを防止することができる。例えば、治具を装置内の両側に配置し、支持棒10の排出部12を挿入固定する第1の挿入溝を有し、支持棒10の挿入部15を挿入固定する第2の挿入溝を有することで、マークバンド片20,20の印字面をレーザー照射側に向けて複数の支持棒を固定して、連続して印字面に印字して印字部を形成することができる。
【0028】
本実施説明におけるレーザー照射は、エンドポンピング方式のYVO4レーザーマーカー(波長355nm)を用いる。マークバンド片20,20は、材質であるナイロン66に濃色顔料として黒色顔料を添加している。若しくは白色顔料に金属イオンである酸化チタンを添加するものであってもよい。濃色顔料を用いたマークバンド片20,20は、レーザー照射により樹脂が発色する。レーザー照射による樹脂の発色は、樹脂材にレーザー照射を行うことで、熱効果により対象樹脂材の照射位置にガス泡が発生する。ガス化して蒸発した気泡が対象樹脂材の表面層に閉じ込められて隆起して淡色化するように発色する。さらに、金属イオンを添加した白色顔料を使用することによりイオンの結晶構造の変化し、結晶中の水和量が増加することで成分そのものが化学変化を起こして樹脂そのものが発色する。
【0029】
材質に関する実験例を説明する。マークバンド片20,20の材質として所謂ナイロンであるPA樹脂(ポリアミド)、特に所謂ナイロン66が好適であることは上述した。その他の材質として、POM樹脂(ポリアセタール)、ABS樹脂(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン)、PC樹脂(ポリカーボネード)、PP樹脂(ポリプロピレン)、PE樹脂(ポリエチレン)、PU樹脂(ポリウレタン)の実験を行った。
【0030】
マークバンド片の材質としては、発色性・視認性と弾力性を要件に選定をした。発色性・視認性とは、マークバンド片の印字面にレーザー照射を行って発色した印字部(文字)の視認性であり、具体的には黒色の印字面から文字部分にレーザー照射を行って白色文字とする場合と、黒色の印字面から文字部分以外にレーザー照射を行って黒色文字とする場合である。視認性は、出願人社員3人が検査を行い、日中の明るさで約30cm離れて文字が視認できるかどうかを判別した。二重丸を良く視認できた、丸を視認できた、バツを視認できなかったものとして判別した。
【0031】
マークバンド片20の弾力性とは、マークバンド片20を支持棒10のスライド部11から排出部12を通じて電線Cへ排出する際にマークバンド片20の脚部22,22をいったん広げ、電線に移したときに挟持するようにする弾力性である。弾力性がないと排出部12をとおるときに脚部22,22が欠損したり、電線に移したときに挟持して保持することができなくなる。
【0032】
【0033】
上記のとおり、マークバンド片20としての発色性を有しつつ、弾力性を有するのはPA樹脂(ポリアミド・ナイロン)であり、特にナイロン66が好ましい。
【0034】
また、同じく、金属イオンを含んだ白色顔料を塗布したマークバンドの印字部にレーザー照射を行って発色した文字の発色性・視認性の実験を行った。白色の印字面から文字部分にレーザー照射を行って黒色文字としたものである。出願人社員3人が検査を行い、日中の明るさで約30cm離れて文字が視認できるかどうかを判別した。「◎」を良く視認できた、「○」を視認できた、「△」を一応視認ができた、「×」を視認できなかった、ものとして判別した。
【0035】
【0036】
上記のとおり、この場合も、黒色顔料を用いる場合よりは少し劣るものの一定の発色性(視認性)を有しつつ、弾力性を有するのはPA樹脂(ポリアミド樹脂)であり、特に一般的に言う「ナイロン66」が好ましい。
【0037】
次に、支持棒10にマークバンド片20をインサート成形する場合の素材について説明する。インサート成型を行うときに、非結晶性樹脂どうしであればインサート成型時に化学的結合がなされてしまい溶着してしまう。溶着すると、支持棒10からマークバンド片20を個別に排出することができない。そこで、支持棒10とマークバンド片20の材質は両方を結晶性樹脂とするか少なくとも一方を結晶性樹脂とすることが好ましく、両方を結晶性樹脂とすることが好適である。
【0038】
【0039】
さらに、マークバンド片20の材質をPA樹脂(ポリアミド ナイロン)としたときに、支持棒10の材質との融点温度の温度差は80℃~100℃が好ましい。マークバンド片20の材質の融点温度と支持棒10の材質の融点温度との差異が100℃以上となる場合は、マークバンド片20をインサート成型するにあたって支持棒10が大幅に溶けて変形してしまう。
【0040】
【0041】
上記表3に示すように、マークバンド片20にPA樹脂、特にナイロン66を使用した場合、好適な80℃~100℃の融点温度差となるものはPOM樹脂(ポリアセタール)、PP樹脂(ポリプロピレン)であった。
【0042】
次に、表面係合がなされるか否かの実験について説明する。表面係合とは上述のとおり支持棒10のスライド部11の表面を一部変形させて凹凸を形成し、当該凹凸にインサート成型を行うマークバンド片20が表面的に係合することをいう。実験は、PA樹脂(ポリアミド ナイロン66)を用いて成形温度、成形条件を変えて行った。成形温度は200℃、240℃、260℃、280℃とし、成形条件として射出時間を3秒、5秒、10秒、15秒とした。
【0043】
表面係合がなされているかどうかは、上述と同じく出願人従業員3名により、支持棒10への係合、支持棒10からの係合解除性、スライド部11でのスライド状態により判定した。支持棒10への係合状態とは、支持棒10のスライド部11に複数のマークバンド片20,20をインサート成型した状態で、指でマークバンド片20,20の表面をなぞったり、マークバンド体1全体を振ったりしたときにマークバンド片20,20の係合状態が解除されないかどうか、で判断している。また、係合解除性とはマークバンド片20,20の表面係合の状態から爪をマークバンド片20,20の間に挿入してスライドさせたときに係合状態が容易に解除できるかどうか、で判断している。さらにスライド状態とは、係合解除されたマークバンド片20がスライド部11上をスムーズに走行可能か否かにより判断している。
【0044】
成形温度が高い場合や射出時間を長くすると、スライド部11の凹凸変形が過剰になって強い係合状態となる。強い係合状態とすると、係合解除性が低くなるだけではなくスライド部11の変形も大きくなるためにマークバンド片20のスライド性が低くなってしまう。成形温度が低かったり射出時間が短すぎるとそもそもマークバンド片20の表面係合がなされないため、本発明の目的が達成し得ないことになる。
【0045】
【0046】
【0047】
支持棒10はPP樹脂よりもPOM樹脂が適切であった。POM樹脂に比してPP樹脂は耐熱温度が高いため、インサート成型時に表面の凹凸がPOM樹脂を用いる場合に比して形成されにくい状況にあった。そこで、支持棒10を使用し、成形温度を240℃~260℃、射出時間を3~5秒とすることが表面係合を行うに際して適切な条件であることが判明した。
【0048】
上記製造方法によって支持棒10のスライド部11とマークバンド片20とを表面係合させた状態とすることができる。上述のとおり、表面係合とは、インサート成型する際に既成形部分である支持棒10のスライド部11の表面を変形させて凹凸部分を形成しつつ、成形部分であるマークバンド片20,20が凹凸部分を覆って成形されることで、両者の接触面で軽く係合している状態である。この表面係合によるものであるために、使用者が爪で押し出すと各マークバンド片20の係合が解除されて通常のマークバンド片として利用することができるが、係合状態を維持することでレーザー照射をするにあたって比較的小さなマークバンド片20,20の位置決め・位置取りをすることが可能になる。
【0049】
すなわち、個々のマークバンド片20,20は比較的小さな小片であるため、レーザー印字をする場合に治具に固定しなければならない。そのため、従来方法によると個々のマークバンド片を賽の目状となる治具に個々に挿入しなければならず、簡易な手法でレーザー照射による印字ができなかった。
【0050】
支持棒10に複数のマークバンド片20,20を表面係合するようにインサート成型することで、使用者が印字部を指でなぞる程度では係合が解除されずに各マークバンド片20,20が支持棒10に係合して固定されている。この状態をもってマークバンド体1のマークバンド片20,20の位置決め・位置取りが容易となり、レーザー照射による印字が容易となる。具体的には、レーザー照射機内において治具(図示しない)に支持棒10の排出部12,挿入部15とを挿入固定するための第1及び第2の挿入溝を相互に対にするように形成し、当該溝部に支持棒10を固定する。この治具に固定された支持棒10に配されたマークバンド片20,20の位置が特定され、レーザー照射であれば表面係合が解除されず、固定された状態で全てのマークバンド片20,20へのレーザー照射による印字が可能になる。
【0051】
また、レーザー照射以外にも本説明によるマークバンド体1とすると、出荷した状態では支持棒10にマークバンド片20,20が表面係合された状態であり、従来のものよりもマークバンド片20,20が自由にスライドするものではないため、不意にマークバンド片20が外れたりする不良を防止することも可能になる。
【符号の説明】
【0052】
1…マークバンド体、10…支持棒、11…スライド部、12…排出部、13…溝部、
14…基端部、15…挿入部、20…マークバンド片、21…基部、22…脚部。