(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176378
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
B05B 11/00 20230101AFI20231206BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B05B11/00 102E
B05B11/00 102G
B65D83/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088632
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】小賀坂 優太
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB01
3E014PC03
3E014PD12
3E014PD13
3E014PE08
3E014PE09
3E014PE10
3E014PE30
3E014PF01
3E014PF10
(57)【要約】
【課題】ノズル部の小型化及び構成の簡略化を図りつつ、トリガー式液体噴出器全体の小型化を図ることができ、さらに加圧した液体を噴出すること。
【解決手段】噴出器本体2が、射出筒部20内の圧力上昇に起因して射出筒部内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を遮断した遮断位置P1から後方に移動することで連通を許容する許容位置に切り換わる蓄圧部材40を備え、射出筒部と蓄圧部材との間には、射出筒部の軸線O2方向に沿って延びると共に周方向の全長に亘って延びるシール部45が形成され、シール部は、遮断位置において、射出筒部と蓄圧部材とに対して面接触する、トリガー式液体噴出器1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体に装着され、液体を噴出する噴出孔が形成されたノズル部と、を備え、
前記噴出器本体は、
前記容器体の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前記縦供給筒部から延設されると共に前記噴出器本体の外部に開口する射出筒部と、
前方付勢状態で後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記射出筒部内を通じて前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、
前記射出筒部内に移動可能に配設されると共に、前記射出筒部内の圧力上昇に起因して、前記射出筒部内を通じた前記縦供給筒部内と前記噴出孔との連通を遮断した遮断位置から後方に移動することで前記連通を許容する許容位置に切り換わる蓄圧部材と、を備え、
前記射出筒部と前記蓄圧部材との間には、前記射出筒部の軸線方向に沿って延びると共に、前記軸線を周回する周方向の全長に亘って延びるシール部が形成され、
前記シール部は、前記遮断位置において、前記射出筒部と前記蓄圧部材とに対して面接触することを特徴とするトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記シール部は、前記蓄圧部材の外周面から径方向に外側に向かって突出し、且つ前記蓄圧部材の全周に亘って延びる環状に形成され、前記遮断位置において、前記射出筒部の内周面に対して径方向の内側から押し当たる、トリガー式液体噴出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記蓄圧部材は、前方に向けて、2.5N~9.5Nの付勢力で付勢されている、トリガー式液体噴出器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記トリガー部を前方付勢する弾性アーム部と、
前記蓄圧部材に対して後方から接触する弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記射出筒部内の圧力上昇に起因して弾性変形することで、前記蓄圧部材の後方への移動を許容すると共に、前記射出筒部内の圧力低下に伴って、弾性復元変形によって前記蓄圧部材を前方に向けて付勢し、
前記弾性体及び前記弾性アーム部は、一体に形成されている、トリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー部の操作によって容器体内から液体を吸い上げ、噴出孔を通じて液体を噴出するトリガー式液体噴出器が知られている。
この種のトリガー式液体噴出器として、例えば下記特許文献1に示されるように、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部と、を備えたトリガー式液体噴出器が知られている。
【0003】
噴出器本体は、容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、縦供給筒部から前方に向けて延びた射出筒部と、前方付勢状態で後方に移動自在に配設されたトリガー部を有するトリガー機構とを備えている。トリガー機構は、トリガー部の後方への移動によって、液体を縦供給筒部内から射出筒部内に導入させると共に、射出筒部内から噴出孔側に向けて射出させる。
ノズル部は、射出筒部の前端部に中継部材を介して組み合わされている。さらにノズル部内には、噴出孔を開閉する蓄圧弁が設けられている。蓄圧弁は、蓄圧室内の圧力が所定圧以上になると噴出孔を開放し、噴出孔から内容物を噴出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1に記載のトリガー式液体噴出器では、ノズル部内に蓄圧弁を設けているため、ノズル部の構造が複雑化するうえ、ノズル部が大型化してしまう。そのため、結果的にトリガー式液体噴出器全体の大型化に繋がってしまっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ノズル部の小型化及び構成の簡略化を図りつつ、トリガー式液体噴出器全体の小型化を図ることができ、さらに加圧した液体を噴出することが可能なトリガー式液体噴出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るトリガー式液体噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体に装着され、液体を噴出する噴出孔が形成されたノズル部と、を備え、前記噴出器本体は、前記容器体の液体を吸上げる縦供給筒部と、前記縦供給筒部から延設されると共に前記噴出器本体の外部に開口する射出筒部と、前方付勢状態で後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記射出筒部内を通じて前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、前記射出筒部内に移動可能に配設されると共に、前記射出筒部内の圧力上昇に起因して、前記射出筒部内を通じた前記縦供給筒部内と前記噴出孔との連通を遮断した遮断位置から後方に移動することで前記連通を許容する許容位置に切り換わる蓄圧部材と、を備え、前記射出筒部と前記蓄圧部材との間には、前記射出筒部の軸線方向に沿って延びると共に、前記軸線を周回する周方向の全長に亘って延びるシール部が形成され、前記シール部は、前記遮断位置において、前記射出筒部と前記蓄圧部材とに対して面接触することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るトリガー式液体噴出器によれば、前方付勢力に抗してトリガー部を操作して後方に移動させることで、液体を縦供給筒部内から射出筒部内を通じて噴出孔側に向けて流通させることができる。この際、射出筒部内に蓄圧部材が配設されているので、射出筒部内に供給された液体は、射出筒部内の圧力を上昇させる。そして、射出筒部内の圧力が上昇すると、この圧力上昇に起因して蓄圧部材が後方に移動する。これにより、蓄圧部材を遮断位置から後方に移動させることができ、射出筒部内を通じた縦供給筒部内と噴出孔との連通を許容する許容位置に切り換えることができる。従って、圧力が高まった液体をノズル部の噴出孔まで導くことができ、噴出孔から外部に向けて噴出させることができる。さらに、蓄圧部材を具備していることで、噴出孔から噴出される液体の圧力を安定させることができるので、液体を所期した態様で噴出することができる。
【0009】
さらに、蓄圧部材が射出筒部内に設けられているため、蓄圧部材をノズル部内に設けた従来の場合に比べて、ノズル部を小型化することができるうえ、構造を簡略化することができ、例えばノズル部の前後方向や上下方向のかさ張り等を容易に抑えることができる。従って、トリガー式液体噴出器全体の小型化を図ることができる。
さらに、蓄圧部材が射出筒部内に設けられているため、部品点数を増加させずに射出筒部の内容積を減少させることができる。これにより、トリガー部を操作したときに、射出筒部内の圧力を速やかに上昇させることができ、プライミング回数を抑えることが可能である。さらに、射出筒部の内容積が減少することで、射出筒部内に空気が残存し難くなるので、空気の残存によって生じる噴出量のばらつきや噴出孔からの液だれ等を抑制することができる。
【0010】
特に、射出筒部と蓄圧部材との間には、射出筒部の軸線方向に沿って延び、且つ周方向の全長に亘って延びるシール部が形成されているので、蓄圧部材が遮断位置にあるときに射出筒部と蓄圧部材とに対してシール部を面接触させることができる。具体的には、シール部は、射出筒部と蓄圧部材とに対して締め代を有した状態で面接触させることができる。従って、シール部を介して射出筒部と蓄圧部材との間の接触面積を確保することができると共に、射出筒部と蓄圧部材との間に大きな抵抗力(摩擦力)を確保することができる。特に、射出筒部と蓄圧部材との間に、締め代に起因する大きな抵抗力を確保することができる。従って、射出筒部内の圧力が上昇する際に、所望する圧力値に達する前に蓄圧部材が許容位置に向けて移動してしまうことを抑制することができる。そのため、蓄圧をより確実に行うことができる。そして、射出筒部内の圧力が上記圧力値を超えたときに、蓄圧部材を勢い良く許容位置に向けて移動させることができ、蓄圧によって圧力が高まった液体を勢い良く噴出させることができる。さらに、シール部による上記接触面積を調整するだけの簡便な方法で蓄圧量を調整できるので、該調整を容易に行い易い。
【0011】
(2)前記シール部は、前記蓄圧部材の外周面から径方向に外側に向かって突出し、且つ前記蓄圧部材の全周に亘って延びる環状に形成され、前記遮断位置において、前記射出筒部の内周面に対して径方向の内側から押し当たっても良い。
【0012】
この場合には、シール部が蓄圧部材の外周面から径方向の外側に向けて突出するように環状に形成されているため、蓄圧部材が遮断位置に位置しているときに、射出筒部と蓄圧部材との間でシール部を径方向に締め込む(挟み込む)ことができる。これにより、シール部によるシール性能を高めることができると共に、射出筒部と蓄圧部材との間の抵抗力(摩擦力)をさらに確保し易い。
【0013】
(3)前記蓄圧部材は、前方に向けて、2.5N~9.5Nの付勢力で付勢されても良い。
【0014】
この場合には、蓄圧部材が遮断位置に位置しているときに、蓄圧部材を予め前方に向けて付勢することができる。従って、蓄圧部材を遮断位置に位置決めすることができると共に、射出筒部での液体の蓄圧をさらに効果的に行うことができる。
【0015】
(4)前記トリガー部を前方付勢する弾性アーム部と、前記蓄圧部材に対して後方から接触する弾性体と、を備え、前記弾性体は、前記射出筒部内の圧力上昇に起因して弾性変形することで、前記蓄圧部材の後方への移動を許容すると共に、前記射出筒部内の圧力低下に伴って、弾性復元変形によって前記蓄圧部材を前方に向けて付勢し、前記弾性体及び前記弾性アーム部は、一体に形成されても良い。
【0016】
この場合には、弾性アーム部による付勢に抗してトリガー部を操作して後方に移動させることで、液体を縦供給筒部内から射出筒部内を通じて噴出孔側に向けて流通させることができ、射出筒部内の圧力を徐々に上昇させることができる。そして、射出筒部内の圧力が上昇すると、この圧力上昇に起因して蓄圧部材が弾性体の付勢に抗して後方に移動する。これにより、蓄圧部材を遮断位置から後方に移動させて許容位置に切り換えることができるので、圧力が高まった液体を噴出孔から外部に向けて噴出させることができる。
【0017】
さらに液体の噴出後、射出筒部内の圧力が低下することに伴って、弾性体が弾性復元変形することで蓄圧部材を前方に向けて付勢することができる。そのため、蓄圧部材を前方に向けて復元移動させて遮断位置に速やかに復帰させることができる。これにより、シール部を利用して、射出筒部内を通じた縦供給筒部内と噴出孔との連通を遮断することができる。また、弾性アーム部の弾性復元力によってトリガー部を前方に向けて付勢して、該トリガー部を復元移動させることができる。
従って、次回の噴出を可能とする状態に速やかに復帰させることができ、使い易い。
【0018】
さらに、弾性体と弾性アーム部とが一体に形成されているため、トリガー部を前方に付勢する付勢部材等を別途設ける必要がない。従って、部品点数の削減化を図ることができるうえ、低コスト化にも繋げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るトリガー式液体噴出器によれば、ノズル部の小型化及び構成の簡略化を図りつつ、トリガー式液体噴出器全体の小型化を図ることができ、さらに加圧した液体を噴出することができる。特に、所望する圧力値に達する前に蓄圧部材が許容位置に向けて移動し難いので、蓄圧を確実に行うことができ、圧力が高まった液体を適切に噴出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施形態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1に示すトリガー式液体噴出器の斜視図である。
【
図3】
図1に示す蓄圧部材の周辺を拡大した縦断面図である。
【
図5】
図3に示す状態から蓄圧部材が後方移動した状態を示す縦断面図である。
【
図6】トリガー式液体噴出器の変形例を示す図であって、蓄圧部材の周辺を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、トリガー式液体噴出器が容器体に取り付けられた噴出容器を例にして説明する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、液体を収容する容器体Aに装着される噴出器本体2と、液体を噴出する噴出孔4が形成され、噴出器本体2に装着されたノズル部3と、噴出器本体2及びノズル部3を覆うカバー体5と、を備えている。
なお、
図2では、カバー体5の図示を省略している。さらに、トリガー式液体噴出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0023】
(噴出器本体)
噴出器本体2は、縦供給筒部10と、射出筒部20と、装着キャップ30と、蓄圧部材40と、閉塞部材50と、トリガー機構60と、ボール弁70とを主に備えている。
【0024】
本実施形態では、縦供給筒部10の中心軸線を軸線O1とし、この軸線O1に沿って容器体A側を下側、その反対側を上側といい、軸線O1に沿う方向を上下方向という。さらに、上下方向から見た平面視において、軸線O1に交差する一方向を前後方向L1といい、上下方向及び前後方向L1の双方向に直交する方向を左右方向L2という。
【0025】
さらに本実施形態では、射出筒部20の中心軸線を軸線O2とする。本実施形態において軸線O2は、前後方向L1に延びている。従って、本実施形態において前後方向L1は、射出筒部20の中心軸線に沿う軸方向に相当する。ただし、軸線O2に沿う軸方向は、前後方向L1と一致していなくても良い。
【0026】
(縦供給筒部)
図1に示すように、縦供給筒部10は、上下方向に延在し、容器体A内の液体を吸い上げる機能を有する。縦供給筒部10は、装着キャップ30によって、容器体Aに装着されている。縦供給筒部10は、有頂筒状の外筒11と、外筒11内に嵌合された内筒12と、を備えている。
なお、縦供給筒部10の軸線O1は、容器体Aの容器軸より後方に位置している。
【0027】
外筒11は、大径部11aと、大径部11aの上方に配置され、且つ大径部11aよりも縮径した小径部11bと、大径部11aの上端部と小径部11bの下端部とを連結した環状連結部11cと、小径部11bの上方に配設され、且つ小径部11bよりも縮径した接続筒部11dと、小径部11bの上端部と接続筒部11dの下端部とを連結する天壁部11eと、を備えている。
【0028】
なお、小径部11bは軸線O1と同軸に配置され、接続筒部11dは軸線O1に対して前方に偏心した位置に配置されている。天壁部11eは、ボール弁70の上方を覆っている。
【0029】
内筒12は、大径部12aと、大径部12aの内側に配置され、且つ大径部12aよりも縮径した小径部12bと、大径部12aと小径部12bとを連結した環状連結部12cと、を備えている。
大径部12aは、外筒11の大径部11aの内側に組み合わされている。図示の例では、大径部12aは、外筒11の大径部11aの内側にアンダーカット嵌合によって組み合わされている。大径部12aのうち、外筒11の大径部11aよりも下方に突出した部分には、径方向の外側に向けて突出した環状の鍔部12dが形成されている。鍔部12dは、パッキンを介して容器体Aの口部における上端開口縁上に配置され、容器体Aの口部に例えば螺着によって装着される装着キャップ30によって、口部の上端開口縁との間に上下方向に挟まれている。これにより、噴出器本体2の全体は、装着キャップ30を介して容器体Aの口部に装着されている。
【0030】
小径部12bは、円筒状に形成され、軸線O1と同軸に配設されている。小径部12bは、上下方向の両方に開口していると共に、外筒11の小径部11b内に配設されている。小径部12bの上端開口縁は、外筒11の天壁部11eよりも僅かに下方に離れている。小径部12bの下側部分の内側には、上下方向に延びるパイプ13の上端部が嵌合されている。なお、パイプ13の下端開口部は、容器体Aの図示しない底部に位置している。
【0031】
(射出筒部)
縦供給筒部10の上方には、射出筒部20が配置されている。
射出筒部20は、縦供給筒部10における接続筒部11dの上端部に接続され、軸線O2を中心として前方向けて延びるように形成されている。射出筒部20は、前方及び後方が開放された筒状に形成されている。射出筒部20の前方側の開口部は、液体を前方に向けて供給する射出開口部21とされている。
【0032】
図1及び
図3に示すように、射出筒部20の内径は、前後方向L1の途中で異なっている。これにより、射出筒部20の内径は、前後方向L1に2段階に変化するように形成されている。具体的には、射出筒部20のうち、前後方向L1の略中間部よりも前方側に位置する部分の内径(以下、第1内径と称する場合がある)が、中間部よりも後方側に位置する部分の内径(以下、第2内径と称する場合がある)よりも小さく形成されている。
これにより、
図3に示すように、射出筒部20における中間部の内周面には、第1内径と第2内径とを繋ぐと共に、後方を向いた段差壁20aが形成されている。
【0033】
なお、段差壁20aの位置は、射出筒部20の前後方向L1における中間部に形成される場合に限定されるものではなく、中間部よりも前方或いは後方に寄った位置に形成されても構わない。
【0034】
図1~
図3に示すように、射出筒部20の後端部には、軸線O2と同軸に配置された後筒部22が形成されている。なお、後筒部22は、射出筒部20を構成する一部である。
後筒部22は、内径及び外径が射出筒部20の内径(第2内径)及び外径よりも大きい筒状に形成されていると共に、後方に開口している。後筒部22は、縦供給筒部10における接続筒部11dの上端部に一体に形成されていると共に、接続筒部11dよりも後方に延びるように形成されている。
後筒部22における下側部分には、後筒部22を上下方向に貫通する貫通孔23が形成されている。これにより、貫通孔23を通じて、後筒部22内と接続筒部11d内とが連通している。そのため、射出筒部20の内部は、貫通孔23を通じて接続筒部11d内に連通している。
【0035】
なお、後筒部22の下側部分と縦供給筒部10における外筒11の天壁部11eとの間には、後方及び左右方向L2の両方に開口した嵌合空間24が形成されている。
【0036】
さらに射出筒部20の後端部には、後方に向けて延びた中筒部25が形成されている。中筒部25は、軸線O2と同軸に配置され、後筒部22の内側に配置されている。中筒部25は、内径が射出筒部20の内径(第2内径)と同等とされ、且つ外径が後筒部22の内径よりも小さい筒状に形成されている。これにより、中筒部25と後筒部22との間には、軸線O2を中心とした環状の空間が形成されている。
なお、中筒部25における下側部分は、上述した貫通孔23を上方から覆うように配置されている。
【0037】
上述のように構成された射出筒部20には、後筒部22を後方から閉塞する閉塞部材50が装着されている。これにより、射出筒部20の全体は、閉塞部材50によって内部が閉塞されている。
なお、閉塞部材50については、後に詳細に説明する。
【0038】
(蓄圧部材)
図1及び
図3に示すように、上述した射出筒部20内には蓄圧部材40が配置されている。
蓄圧部材40は、射出筒部20内に前後方向L1に移動可能に配置されている。蓄圧部材40は、射出筒部20内の圧力上昇に起因して、射出筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を遮断した遮断位置P1(
図1及び
図3参照)から後方に移動して、上記連通を許容する許容位置P2(
図5参照)に切り換え可能とされている。
【0039】
蓄圧部材40は、前後方向L1に沿って延びる軸状に形成され、軸線O2と同軸に配置された蓄圧軸41を備えている。
蓄圧軸41は、射出筒部20内に後方から挿入され、射出筒部20の全長に亘って配置されている。この際、蓄圧軸41は、前端部が射出開口部21の内側に配置され、且つ後端部が中筒部25よりも後方に位置するように、前後方向L1に沿って延びている。
【0040】
蓄圧軸41は、前方蓄圧軸42と、前方蓄圧軸42よりも後方に配置され、且つ前方蓄圧軸42よりも外径が大きく形成された中間蓄圧軸43と、中間蓄圧軸43よりも後方に配置され、且つ中間蓄圧軸43よりも外径が大きく形成された後方蓄圧軸44と、を有している。これにより、蓄圧軸41は、前後方向L1に沿って外径が3段階に変化した軸状に形成されている。
【0041】
蓄圧部材40が遮断位置P1に位置している際、前方蓄圧軸42及び中間蓄圧軸43は、射出筒部20の内周面に形成された段差壁20aよりも前方に配置されている。さらに前方蓄圧軸42及び中間蓄圧軸43は、射出筒部20の第1内径よりも外径が小さく形成されている。そのため、前方蓄圧軸42及び中間蓄圧軸43の外周面と、射出筒部20の内周面との間には、前後方向L1に延びる環状の第1隙間S1が形成されている。
【0042】
なお、図示の例では、蓄圧軸41が外径の異なる前方蓄圧軸42と中間蓄圧軸43とを具備しているが、この場合に限定されるものではなく、例えば前方蓄圧軸42の外径を中間蓄圧軸43の外径と同一にするように形成しても構わない。この場合には、蓄圧軸41は、前後方向L1に沿って外径が2段階に変化した軸状に形成される。
【0043】
蓄圧部材40が遮断位置P1に位置している際、後方蓄圧軸44は、射出筒部20の内周面に形成された段差壁20aよりも後方に配置されている。さらに後方蓄圧軸44は、射出筒部20の第2内径よりも外径が小さく形成されている。そのため、後方蓄圧軸44の外周面と射出筒部20の内周面との間には、前後方向L1に延びる環状の第2隙間S2が形成されている。
さらに後方蓄圧軸44は、後方に開口した筒状に形成されていると共に、中筒部25よりも後方に延びるように形成されている。
【0044】
上述のように構成された蓄圧軸41と射出筒部20との間には、軸線O2に沿って延びると共に、軸線O2を周回する周方向に全周に亘って延びるシール部45が形成されている。
図3に示すように、シール部45は、中間蓄圧軸43の後方部分における外周面から、中間蓄圧軸43の径方向の外側に向かって突出し、且つ中間蓄圧軸43の全周に亘って延びる環状に形成されている。これにより、シール部45は、蓄圧部材40が遮断位置P1に位置しているときに、射出筒部20の内周面のうち段差壁20aよりも前方側に位置する部分に対して、径方向の内側から密に押し当たるように接触している。
そのため、シール部45は、蓄圧部材40が遮断位置P1に位置しているときに、第1隙間S1と第2隙間S2との連通を遮断していると共に、射出筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を遮断している。
【0045】
なおシール部45は、蓄圧部材40が遮断位置P1から後方に移動して許容位置P2に位置した場合(
図5参照)には、段差壁20aよりも後方側に移動する。これにより、シール部45によるシールを解除することができ、第1隙間S1と第2隙間S2との連通を許容することで、射出筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を許容することができる。
【0046】
さらに本実施形態のシール部45には、締め代が形成されている。具体的にシール部45には、径方向片側で最大0.03mmの締め代が形成されている。この締め代は、前後方向0.5mmの範囲で前方に向かうにしたがって、突出量が小さくなるように傾斜している。つまり、シール部45は、前方から後方に向かうにしたがって拡径するように断面テーパ状に形成されている(
図5参照)。なお、締め代は、上述した値に限定されるものではない。
これにより、
図3に示すように、蓄圧部材40が遮断位置P1に位置している際、シール部45は、段差壁20aよりも前方側に位置する部分に対して、径方向の内側から上記締め代を利用して密に押し当たるように接触している。これにより、射出筒部20と蓄圧部材40との間に、シール部45の締め代に起因する大きな抵抗力を確保することができる。
【0047】
さらに
図3に示すように、シール部45の後端部における外周面と、後方蓄圧軸44の前端部における外周面との間は、後方に向かうにしたがって拡径する断面テーパ状のテーパ面46によって連設されている。テーパ面46は、蓄圧部材40が遮断位置P1に位置しているときに、段差壁20aの開口縁に対して後方から密に接触している。
【0048】
後方蓄圧軸44のうち中筒部25よりも後方に位置する後端部には、径方向の外側に向かって延びる環状のフランジ部47が形成されている。
フランジ部47には、該フランジ部47の前面から前方に向けて突出する摺動筒部48が形成されている。摺動筒部48は、後筒部22と中筒部25との間に配置されていると共に、前方に向かうに従い漸次射出筒部20の径方向の外側に向かって延びている。摺動筒部48は、弾性変形可能に形成され、弾性復元力によって摺動筒部48の前端部が後筒部22の内周面に密に接触している。
これにより、摺動筒部48は、蓄圧部材40が前後方向L1に移動する際に、後筒部22との間に一定のシール性を維持した状態で後筒部22の内周面上を摺動することが可能とされている。
【0049】
さらに後方蓄圧軸44の後端部における開口縁には、前方から後方に向けて漸次拡径する断面テーパ状の案内面49が形成されている。
【0050】
上述のように構成された蓄圧部材40及び射出筒部20において、フランジ部47、摺動筒部48及び後筒部22によって囲まれた空間は、蓄圧室S3として機能する。なお、蓄圧室S3は、第2隙間S2を含んでいる。蓄圧室S3は、貫通孔23を通じて縦供給筒部10の接続筒部11d内に連通している。
【0051】
図1及び
図2に示すように、射出筒部20よりも下方に位置し、且つ装着キャップ30よりも上方に位置する部分には、前方に向けて突出するシリンダ用筒部15が外筒11と一体に形成されている。シリンダ用筒部15は、前方に向けて開口している。
【0052】
(中継部材)
さらに射出筒部20には、射出筒部20とノズル部3との間を接続する中継部材80が装着されている。
図1及び
図2に示すように、中継部材80は、射出筒部20に対して前方から装着されている。中継部材80は、射出筒部20の射出開口部21よりも前方側に位置すると共に、射出開口部21に対して対向配置された対向壁部81と、対向壁部81から後方に向けて延びると共に射出筒部20に外嵌された第1中継筒部82と、対向壁部81から前方に向けて延びる第2中継筒部83と、第2中継筒部83の内側に位置し、且つ対向壁部81から前方に向けて延びるガイド軸84と、を備えている。
【0053】
第2中継筒部83及びガイド軸84は、射出筒部20の軸線O2に対して下方に偏心した軸線O3を中心に配置されている。対向壁部81のうち、ガイド軸84の上方に位置し、且つ第2中継筒部83の内側に位置する部分には、射出筒部20の射出開口部21に連通する連通孔85が形成されている。これにより、第2中継筒部83の内部は、連通孔85及び射出開口部21を通じて射出筒部20の内部に連通している。
ガイド軸84の外周面には、前後方向L1に延びる第1切換溝86が形成されている。第1切換溝86は、軸線O3回りに間隔をあけて複数形成されている。
【0054】
さらに対向壁部81のうち第2中継筒部83を挟んで左右方向L2の両側に位置する部分には、
図2に示すように、後方に向けて延びる一対のレバー支持壁87が形成されている。レバー支持壁87は、第2中継筒部83との間に隙間をあけて配置されている。
【0055】
(トリガー機構)
図1及び
図2に示すように、トリガー機構60は、トリガー部61と、主シリンダ62と、主ピストン63とを備えている。トリガー機構60は、トリガー部61の後方への揺動によって、液体を縦供給筒部10内から射出筒部20内を通じて噴出孔4側に向けて流通させることが可能とされている。
【0056】
主シリンダ62は、シリンダ用筒部15内に嵌合されている。主シリンダ62は、前方に開口する有底筒状に形成されている。主シリンダ62内は、縦供給筒部10における外筒11内のうち内筒12よりも上方に位置する部分に連通している。
【0057】
主ピストン63は、主シリンダ62内に前後方向L1に移動可能に配置されている。主ピストン63は、トリガー部61の揺動に連動して前後方向L1に移動可能とされている。これにより、主シリンダ62の内部は、主ピストン63の前後方向L1の移動に伴って加圧及び減圧される。なお、主ピストン63は、後方に開口すると共に前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。
【0058】
主ピストン63は、トリガー部61と共に後述する閉塞部材50の弾性アーム部52による付勢力によって前方に付勢されている。主ピストン63は、トリガー部61の後方への揺動に伴って後方に移動して主シリンダ62内に押し込まれる。
なお、主ピストン63は、トリガー部61が最前方揺動位置にあるときに、これに対応して最前方位置に位置している。
【0059】
トリガー部61は、トリガー本体65と、支持片66と、受部67とを備え、主ピストン63の前方に前後動可能に配置されている。
トリガー本体65は、主ピストン63の前方を上方から下方に向かうに従い前方に傾斜するように延びている。トリガー本体65は、噴出操作を行うにあたって把持操作される部分であり、例えば人差し指等が前方から引っ掛けられる。
トリガー本体65における上下方向の中間部分には、主ピストン63の前端部が連結されている。これにより、主ピストン63は、トリガー部61の前後動に伴って前後移動する。
【0060】
支持片66は、トリガー本体65の上端部に左右方向L2に間隔をあけて一対設けられている。一対の支持片66は、中継部材80に形成された一対のレバー支持壁87に、左右方向L2に沿う軸線O4回りに回動可能にそれぞれ組み合わされている。これにより、トリガー部61は、一対の支持片66を支点にして軸線O4回りに回動操作可能とされている。
【0061】
受部67は、トリガー本体65の左右両側に一対設けられている。受部67は、トリガー本体65から左右方向L2の両側に突出していると共に、上方及び後方に向けて開口するように形成されている。受部67には、後述する閉塞部材50の弾性アーム部52が嵌め込まれる。これにより、トリガー部61は、弾性アーム部52の弾性復元力によって前方に付勢される。
【0062】
(ボール弁)
図1に示すように、ボール弁70は、縦供給筒部10における内筒12の内側に設けられている。
ボール弁70は、内筒12の上端部の内側に配置されていると共に、内筒12の内周面から内側に向けて突出した環状のテーパ筒71に対して離反可能に着座している。ボール弁70は、主シリンダ62内の加圧時に、縦供給筒部10内を通じた容器体A内と主シリンダ62内との連通を遮断すると共に、主シリンダ62内の減圧時に上方に向けて移動し、テーパ筒71から離反することで、縦供給筒部10内を通じた容器体A内と主シリンダ62内との連通を許容する逆止弁とされている。なお、ボール弁70は、外筒11における天壁部11eによって上方への移動量が規制される。
【0063】
(閉塞部材)
図1及び
図2に示すように、上述のように構成された噴出器本体2において、射出筒部20の後筒部22には後方から閉塞部材50が組み合わされている。これにより、閉塞部材50は、射出筒部20の内側に蓄圧部材40を閉じ込めた状態で、射出筒部20を後方から閉塞している。
閉塞部材50は、蓄圧部材40に対して後方から接触する弾性突起(弾性体)51と、トリガー部61を前方に向けて付勢する一対の弾性アーム部52とを少なくとも備えている。
【0064】
閉塞部材50について、詳細に説明する。
図1~
図4に示すように、閉塞部材50は、射出筒部20における後筒部22の後方開口端に対して後方から接触する閉塞壁53と、閉塞壁53から前方に向かって延びると共に、後筒部22の内側に嵌合される嵌合筒54と、を備えている。
【0065】
弾性突起51は、閉塞壁53のうち嵌合筒54の内側に位置する部分から前方に向けて延びるように形成され、軸線O2を中心として周方向に間隔をあけて並ぶように複数配置されている。一対の弾性アーム部52は、閉塞壁53のうち嵌合筒54を挟んで左右方向L2の両側に位置する部分から、前方に向けて延びるように形成されている。
【0066】
閉塞壁53は、後筒部22の後方開口端の全周に亘って後方から接触している。嵌合筒54の外周面には、射出筒部20における径方向の外側に向かって突出すると共に、後筒部22に形成された係止孔22aに対して嵌まり込むことで、係止孔22aに対して前方から係止された第1係止突起55が形成されている。
第1係止突起55は、嵌合筒54における上側部分に少なくとも形成されている。図示の例では、第1係止突起55は、嵌合筒54の外周面に周方向に延びるように形成されている。これにより、嵌合筒54は、第1係止突起55によって後方への抜け止めがされた状態で、後筒部22の内側に嵌合されている。
【0067】
弾性突起51は、蓄圧部材40における後方蓄圧軸44に形成された断面テーパ状の案内面49に対して後方から接触している。弾性突起51は、射出筒部20内の圧力、すなわち蓄圧室S3内の圧力上昇に起因して弾性変形することで、蓄圧部材40の後方への移動を許容すると共に、蓄圧室S3内の圧力低下に伴って弾性復元変形によって蓄圧部材40を前方に向けて付勢する。
【0068】
特に弾性突起51は、蓄圧部材40の案内面49に対して後方から、2.5N~9.5Nの範囲内の付勢力で予め付勢しながら接触している。そのため、弾性突起51は、予め径方向の内側に向けて撓み変形した状態で、蓄圧部材40を前方に向けて付勢している。これにより、弾性突起51は、蓄圧部材40を遮断位置P1に位置決めすることが可能とされている。
なお、弾性突起51が2.5N~9.5Nの付勢力で蓄圧部材40を予め付勢している場合には、弾性突起51は、予め付勢していない場合に比べて0.2mm~0.5mm程度の撓み量で撓み変形している。
【0069】
なお弾性突起51は、蓄圧部材40を予め付勢する場合に限定されるものではなく、例えば後方から単に接触しているだけでも構わない。ただし、蓄圧部材40を予め付勢する場合には、蓄圧部材40を遮断位置P1に位置決めし易いうえ、液体の蓄圧を効果的に行うことができるので好ましい。
さらに、弾性突起51の付勢力としては、4.5N~7.0Nの範囲内の付勢力で予め付勢することがより好ましい。この場合の弾性突起51の撓み量としては、0.3mm~0.4mm程度となる。
【0070】
具体的に本実施形態では、弾性突起51は、6.5Nの付勢力で蓄圧部材40を予め前方に向けて付勢している。この場合の弾性突起51の撓み量としては、0.35mmとされている。
なお、上述のように、蓄圧部材40を予め前方に向けて付勢する場合の弾性突起51を実現可能とする材料としては、例えば「ポリプラスチックス株式会社製」のポリアセタール樹脂(POM)、「M270-57」が挙げられる。
【0071】
上述のように構成された弾性突起51は、蓄圧室S3内の圧力が所定値に達するまでは蓄圧部材40を遮断位置P1に位置決めし、蓄圧室S3内の圧力が所定値を超えたとき(所定値を含む、すなわち所定値以上となったとき)に弾性変形して、許容位置P2に向けた蓄圧部材40の後方移動を許容する。
【0072】
具体的には、弾性突起51は、蓄圧室S3内の圧力が所定値を超えたときに、蓄圧部材40の案内面49に沿いながら、射出筒部20における径方向の内側に向けてさらに撓むように弾性変形する。これにより、弾性突起51の弾性変形によって、蓄圧部材40は後方への移動が許容される。
その後、弾性突起51は、蓄圧室S3内の圧力低下に伴って径方向の外側に向けて弾性復元変形する。これにより、弾性突起51によって蓄圧部材40を前方に向けて付勢することができ、蓄圧部材40を前方に向けて復元移動させることが可能となる。
【0073】
図2に示すように、一対の弾性アーム部52は、射出筒部20を挟んで左右方向L2の両側に配置されている。一対の弾性アーム部52は、左右方向L2から見た側面視において、上方に向けて突の円弧状となるように弾性変形した状態で、前端部(下端部)がトリガー部61の受部67内に収容されている。これにより、弾性アーム部52は、後端部側を起点にして撓み変形した状態で受部67内に収容され、前端部がトリガー部61の操作に伴って前後方向L1に弾性変位する。これにより、弾性アーム部52は、トリガー部61を前方に向けて付勢している。
【0074】
図2及び
図4に示すように、閉塞壁53の下側部分には、前方に向けて延びると共に、一対の弾性アーム部52同士を左右方向L2に連結する連結壁56が形成されている。これにより、一対の弾性アーム部52の後端部は、連結壁56を介して一体に連結され、所定の剛性が確保されている。
なお、
図1に示すように、連結壁56は、後筒部22の下側部分と外筒11の天壁部11eとの間に形成された嵌合空間24内に後方から入り込むことで、嵌合空間24内に嵌合されている。そのため、閉塞部材50の全体は、上下方向へのがたつき等が抑制された状態で射出筒部20に組み合わされている。
【0075】
さらに、
図2及び
図4に示すように、一対の弾性アーム部52の後端部側には、下方に向けて第2係止突起57がそれぞれ形成されている。第2係止突起57は、噴出器本体2のサイド突起58に対して前方から係止している。
サイド突起58は、シリンダ用筒部15の外周面のうち、射出筒部20を挟んで左右方向L2の両側に位置する部分に形成されている。すなわち、サイド突起58は、噴出器本体2の上面視で、シリンダ用筒部15の外周面のうち、射出筒部20を挟んで射出筒部20の径方向の両側に位置する部分に形成されている。
【0076】
上述したように、閉塞壁53は、第1係止突起55及び第2係止突起57によって後方への抜け止めがされた状態で射出筒部20に組み合わされている。
【0077】
(ノズル部)
図1及び
図2に示すように、ノズル部3は、第2中継筒部83に装着されている。これにより、ノズル部3は、中継部材80を介して噴出器本体2に装着されている。
ノズル部3は、中継部材80の対向壁部81よりも前方に配設され、噴出孔4が形成されたノズル壁部90と、ノズル壁部90から後方に向けて延びると共に、第2中継筒部83に対して前方から外嵌された外嵌筒部91と、を備えている。なお、第2中継筒部83内は、連通孔85を通じて射出筒部20内に連通可能とされている。
【0078】
なお、外嵌筒部91は、第2中継筒部83に対して前方に抜け止めがされた状態で軸線O3回りに回転可能に装着されている。これにより、ノズル部3は、軸線O3回りに回転可能に中継部材80に組み合わされている。
【0079】
さらにノズル壁部90のうち外嵌筒部91の内側に位置する部分には、ガイド軸84に対して回転可能に外嵌する内筒部92が後方に向けて突設されている。内筒部92の内周面には、前後方向L1に沿って延びる第2切換溝93が形成されている。さらにノズル壁部90の後面のうち、内筒部92の内側に位置する部分には、第1切換溝86に連通可能なスピン室94が凹状に形成されている。
【0080】
ガイド軸84に形成された第1切換溝86と、内筒部92に形成された第2切換溝93とは、軸線O3を中心としたノズル部3の所定の回転位置で連通し、それ以外の回転位置で非連通状態となる。
第1切換溝86と第2切換溝93とが連通することで、噴出孔4と第2中継筒部83内とがスピン室94、第1切換溝86及び第2切換溝93を通じて連通する。従って、ノズル部3は、軸線O3回りの回転に伴って、噴出孔4からの液体の噴出を許容する噴出許容状態と、噴出が規制される噴出規制状態との切り換えを行うことが可能とされている。
【0081】
(カバー体)
図1に示すように、カバー体5は、縦供給筒部10のうちの下端部を除く全体及び射出筒部20の全体を、少なくとも左右方向L2の両側及び上方から覆うように形成されている。
【0082】
(トリガー式液体噴出器の作用)
次に、上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1を使用する場合について説明する。なお、
図1に示すトリガー部61の複数回の操作によって、トリガー式液体噴出器1の各部内に液体が充填され、縦供給筒部10内に液体を吸い上げることができる状態になっているものとする。
【0083】
図1に示すトリガー部61を弾性アーム部52による付勢に抗して、矢印Fに示す如く、後方に引くように操作すると、主ピストン63が最前方位置から後方に移動し、主シリンダ62内が加圧される。これにより、主シリンダ62内の液体を、縦供給筒部10内に供給することができると共に、ボール弁70を下方に押下げて、テーパ筒71に対して押し付ける。
【0084】
これにより、縦供給筒部10内に供給した液体を、接続筒部11d内及び貫通孔23を通じて、射出筒部20内に供給することができる。すなわち、縦供給筒部10内に供給した液体を、第2隙間S2を含む蓄圧室S3内に導入することができる。この際、蓄圧部材40のシール部45による締め代によって、射出筒部20と中間蓄圧軸43との間がシールされているので、蓄圧室S3内に導入された液体によって蓄圧室S3内の圧力を徐々に上昇させることができる。
【0085】
そして、蓄圧室S3内の圧力が所定値を超えると、弾性突起51が蓄圧部材40の案内面49に沿いながら、射出筒部20における径方向の内側に向けてさらに撓むように弾性変形する。これにより、蓄圧部材40を弾性突起51の付勢に抗して後方に移動させることができる。そのため、蓄圧部材40を遮断位置P1から後方に移動させることができ、射出筒部20内を通じた縦供給筒部10内と噴出孔4との連通を許容する許容位置P2に切り換えることができる。
つまり、
図5に示すように、シール部45を段差壁20aよりも後方に移動させることができ、蓄圧室S3を構成する第2隙間S2と、第1隙間S1とを連通させることができる。
【0086】
従って、圧力が高まった液体を、
図1に示す射出開口部21を通じて射出筒部20から第2中継筒部83内に向けて勢い良く射出させることができると共に、第2切換溝93、第1切換溝86及びスピン室94を通じて噴出孔4に導くことができ、噴出孔4から外部に向けて噴出させることができる。
【0087】
なお、液体の噴出後、トリガー部61を解放すると、主シリンダ62内から縦供給筒部10内を通じた射出筒部20内への液体の供給を停止することができる。これにより、蓄圧室S3内の圧力が低下するので、弾性突起51が弾性復元変形する。そのため、弾性突起51によって蓄圧部材40を前方に向けて付勢することができ、蓄圧部材40を前方に向けて復元移動させることができる。そのため、
図1及び
図3に示すようにシール部45を利用して、射出筒部20と中間蓄圧軸43との間をシールすることができ、第1隙間S1と第2隙間S2との間の連通を遮断することができる。特に、シール部45の締め代を利用して、射出筒部20と中間蓄圧軸43との間を確実にシールすることができる。
【0088】
さらに、弾性アーム部52の弾性復元力によってトリガー部61を前方に向けて付勢して、該トリガー部61を復元移動させることができる。そのため、トリガー部61に連動させて、主ピストン63を主シリンダ62内で前方に向けて復元移動させることができる。従って、主シリンダ62内を減圧させて、容器体A内の圧力よりも低い圧力にすることができるので、ボール弁70を上昇させてテーパ筒71から離反させることができる。
従って、容器体A内の液体を、縦供給筒部10内に吸い上げ、主シリンダ62内に導入することができる。これにより、次回の噴出に備えることができる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1によれば、トリガー部61を後方に引く操作を行う毎に、液体を噴出孔4から噴出させることができる。特に、蓄圧部材40を具備しているので、噴出孔4から噴出される液体の圧力を安定させることができ、液体を所期した態様(例えば霧状等)で噴出することができる。
【0090】
しかも、蓄圧部材40が射出筒部20内に設けられているので、蓄圧部材40をノズル部3内に設けた従来の場合に比べて、ノズル部3を小型化することができるうえ、構造を簡略化することができ、例えばノズル部3の前後方向L1、左右方向L2、上下方向へのかさ張り等を容易に抑えることができる。従って、トリガー式液体噴出器1全体の小型化を図ることができる。
さらに、蓄圧部材40を射出筒部20内に設けることで、ノズル部3の構造の自由度を高めることができる。従って、トリガー式液体噴出器1として、例えば本実施形態のように、ノズル部3の回転に伴って、噴出孔4からの噴出が許容された噴出許容状態と、噴出が規制された噴出規制状態を切換える構成等を容易に採用することができる。
【0091】
さらに、蓄圧部材40が射出筒部20内に設けられているため、部品点数を増加させずに射出筒部20の内容積を減少させることができる。これにより、トリガー部61を操作した際、射出筒部20内(蓄圧室S3内)の液体の圧力を速やかに上昇させることができ、プライミング回数を抑えることができる。さらに射出筒部20内に空気が残存し難くなるので、空気の残存によって生じる噴出量のばらつきや、噴出孔4からの液だれ等を抑制することができる。
【0092】
特に、射出筒部20と蓄圧部材40における中間蓄圧軸43との間にはシール部45が形成されているので、蓄圧部材40が遮断位置P1にあるときに、射出筒部20と蓄圧部材40とに対して、シール部45を、締め代を有した状態で面接触させることができる。従って、シール部45を介して射出筒部20と蓄圧部材40との間の接触面積を確保することができると共に、射出筒部20と蓄圧部材40との間に、締め代に起因する大きな抵抗力(摩擦力)を確保することができる。
従って、射出筒部20内の圧力が上昇する際に、所望する圧力値に達する前に蓄圧部材40が許容位置P2に向けて移動してしまうことを抑制することができる。そのため、蓄圧をより確実に行うことができ、圧力が高まった液体を勢い良く噴出することができる。
【0093】
しかも、蓄圧部材40が遮断位置P1に位置しているときに、弾性突起51によって蓄圧部材40を予め前方に向けて付勢しているので、蓄圧部材40を遮断位置P1に位置決めすることができると共に、射出筒部20内での液体の蓄圧をさらに効果的に行うことができる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1によれば、ノズル部3の小型化及び構成の簡略化を図りつつ、トリガー式液体噴出器1全体の小型化を図ることができ、さらに加圧した液体を噴出することができる。特に、所望する圧力値に達する前に蓄圧部材40が許容位置P2に向けて移動し難いので、蓄圧を確実に行って圧力が高まった液体を適切に噴出することができる。
【0095】
さらに本実施形態では、シール部45が中間蓄圧軸43の外周面から径方向の外側に向けて突出するように環状に形成されているため、蓄圧部材40が遮断位置P1に位置しているときに、射出筒部20と蓄圧部材40との間でシール部45を径方向に締め込むことができる。これにより、シール部45によるシール性能を高めることができると共に、射出筒部20と蓄圧部材40との間の抵抗力(摩擦力)をさらに確保し易い。
【0096】
さらに本実施形態では、閉塞部材50が、トリガー部61を前方に向けて付勢する弾性アーム部52を有している。そのため、トリガー部61を前方に向けて付勢する付勢部材等を別途設ける必要がないので、部品点数の削減化を図ることができるうえ、低コスト化にも繋げることができる。
特に、弾性突起51及び弾性アーム部52を有する閉塞部材50として、1つのユニットとして取り扱うことができるので、部品点数の削減化を図りつつ、組立性の向上化を図ることもできる。
【0097】
さらに、射出筒部20の全長に亘って蓄圧軸41が配置されているので、射出筒部20の内容積をより減少させることができる。従って、より効果的にプライミング回数を低減することができると共に、射出筒部20内での空気の残存を抑制することができる。
【0098】
さらに、閉塞部材50は、第1係止突起55及び第2係止突起57の複数個所での係止によって、射出筒部20に対する後方への抜け止めがされている。従って、弾性アーム部52を利用してトリガー部61をより安定して前方に向けて付勢することができると共に、トリガー部61の後方への操作の際に、閉塞部材50をがたつかせることなく安定させ易い。さらに、射出筒部20に対して閉塞部材50をより安定に組み合わせることができるので、射出筒部20と閉塞部材50との間のシール性をより強固に確保することができ、製品信頼性を向上することができる。
【0099】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0100】
例えば上記実施形態では、主シリンダ62及び主ピストン63を備えるトリガー機構60を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば蛇腹状に収縮変形するポンプを備えたトリガー機構によって、縦供給筒部10内から射出筒部20内を通じて噴出孔4側に向けて容器体A内の液体を流通させる構成を採用しても良い。
【0101】
さらに上記実施形態では、液体を噴出孔4から前方に向けて噴出するトリガー式液体噴出器1について説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば上向きや左向き等、前方以外の方向に向けて液体を噴出するトリガー式液体噴出器1としても構わない。
【0102】
さらに上記実施形態では、弾性体の一例として弾性突起51を採用した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば板ばね等の弾性部材を閉塞壁53に一体形成しても構わない。
【0103】
さらに上記実施形態において、ノズル部3にノズルチップ等の部材を設け、噴出孔4から噴出する液体に対してスピンをかけるためのスピン溝を形成しても構わない。
【0104】
さらに上記実施形態において、
図6に示すように、閉塞部材50の閉塞壁53と、蓄圧部材40のフランジ部47との間に、前後方向L1に弾性変形可能なコイルばね等の弾性部材100を別途設けても構わない。このようにすることで、弾性突起51による弾性復元力に加えて、コイルばね等の弾性部材100の弾性復元力を利用することができるので、蓄圧量を増大させることが可能となる。
【0105】
なお、本実施形態のトリガー式液体噴出器1において、例えば射出筒部20の後筒部22から閉塞部材50を取り外すことで、シール部45が形成された蓄圧部材40を容易に組み込む、或いは交換等することができる。従って、トリガー式液体噴出器1の組立作業効率を向上させることができる。
さらに、用途等に応じて、例えばシール部45を有する蓄圧部材40に代えて、シール部45を具備せず、テーパ面46のみが形成された蓄圧部材を組み込んでも構わない。この場合の蓄圧部材は、シール部45を具備しないため、射出筒部20内(蓄圧室S3内)の液体上昇に伴って蓄圧部材を後方に移動させ、液体を速やかに噴出させ易い。従って、トリガー部61の操作によって、容易に液体を噴出することができる、いわゆる直圧式タイプのトリガー式液体噴出器への製造切替を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0106】
A…容器体
O2…射出筒部の軸線
P1…遮断位置
P2…許容位置
1…トリガー式液体噴出器
2…噴出器本体
3…ノズル部
4…噴出孔
10…縦供給筒部
20…射出筒部
40…蓄圧部材
45…シール部
50…閉塞部材
51…弾性突起(弾性体)
52…弾性アーム部
53…閉塞壁
60…トリガー機構
61…トリガー部