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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176395
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】動物用歯磨きセット
(51)【国際特許分類】
   A01K 13/00 20060101AFI20231206BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61C 17/34 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A01K13/00 P
A46B15/00 P
A61C17/34 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088652
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】592116844
【氏名又は名称】アイオニック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522216271
【氏名又は名称】ビスヘルス ディー.オー.オー.ベオグラード
【氏名又は名称原語表記】Vis Health d.o.o. Belgrade
【住所又は居所原語表記】Gavrila Principa 43, 11000 Belgrade, Serbia
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 満
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】栗原 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】堂浦 資寛
(72)【発明者】
【氏名】ネマニャ ジョルジェヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ボヤン ベキッチ
(72)【発明者】
【氏名】ネボイシャ チュピッチ
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA08
3B202AA40
3B202AB16
3B202BA02
3B202BC08
3B202BE10
3B202GB00
(57)【要約】
【課題】歯肉炎を改善すると共に、効率よく歯垢を除去することができる動物用歯磨きセットを提供する。
【解決手段】本発明に係る動物用歯磨きセット100は、イオン歯ブラシ10と、イオン歯ブラシ10と電気的に接続された導電部材20と、を含み、イオン歯ブラシ10で動物Aの歯磨きが行われる場合に、イオン歯ブラシ10、導電部材20、および動物Aを介して電流が流れる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン歯ブラシと、
前記イオン歯ブラシと電気的に接続された導電部材と、
を含み、
前記イオン歯ブラシで動物の歯磨きが行われる場合に、前記イオン歯ブラシ、前記導電部材、および前記動物を介して電流が流れる、動物用歯磨きセット。
【請求項2】
請求項1において、
前記イオン歯ブラシと前記導電部材とを電気的に接続しているコードを含む、動物用歯磨きセット。
【請求項3】
請求項1また2において、
前記イオン歯ブラシは、使用者の一方の手で把持され、
前記導電部材は、前記使用者の他方の手の手首に装着されるリストバンドである、動物用歯磨きセット。
【請求項4】
請求項1また2において、
前記イオン歯ブラシは、使用者の一方の手で把持され、
前記導電部材は、前記使用者の他方の手の指に装着される指サックである、動物用歯磨きセット。
【請求項5】
請求項1また2において、
前記導電部材は、前記動物の下に敷かれるシートである、動物用歯磨きセット。
【請求項6】
請求項2において、
前記イオン歯ブラシは、
使用者に把持される把持部と、
前記把持部に着脱可能に接続されたヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられたブラシ毛と、
を有する、動物用歯磨きセット。
【請求項7】
請求項6において、
前記ヘッド部は、互いに反対を向く第1面および第2面を有し、
前記ブラシ毛は、前記第1面に設けられ、
前記ヘッド部は、前記把持部の長手方向に対して前記第2面側に傾斜して、前記把持部に装着される、動物用歯磨きセット。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記ブラシ毛は、動物の毛で構成されている、動物用歯磨きセット。
【請求項9】
請求項6または7において、
前記イオン歯ブラシは、前記ヘッド部を振動させるモーターを有し、
前記モーターの駆動によって生じる音の周波数は、170Hz以上250Hz以下である、動物用歯磨きセット。
【請求項10】
請求項7において、
前記イオン歯ブラシは、前記把持部から延出されて前記ヘッド部内に挿入される支軸部を有し、
前記ヘッド部の前記第1面には、前記支軸部を露出する開口部が設けられ、
前記把持部には、電池が収容され、
前記支軸部は、前記電池の一方の電極と電気的に接続され、
前記コードは、前記把持部に設けられた貫通孔を通って、前記電池の他方の電極と電気的に接続される、動物用歯磨きセット。
【請求項11】
請求項1または2において、
前記動物は、犬である、動物用歯磨きセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用歯磨きセットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界中で犬や猫など多くの動物がペットとして飼われている。健康を維持するためには、人間と同様に、ペットにとっても歯磨きが重要である。
【0003】
例えば特許文献1には、握り部と、握り部先端に設けられ、多数本のブラシ毛を植毛したブラシ部と、を有するペット用歯ブラシにおいて、ブラシ毛は、凹部を有することが記載されている。特許文献1には、ブラシ毛の凹部を、臼歯や犬歯の湾曲した表面に沿わせるように当て付けることで、容易にブラッシングできると共に、効果的に歯垢を除去できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-231968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術のように、動物の歯を人間の物理的な力によって磨くだけでは、歯肉炎を改善し、効率よく歯垢を除去できない場合がある。
【0006】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、歯肉炎を改善すると共に、効率よく歯垢を除去することができる動物用歯磨きセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に動物用歯磨きセットの一態様は、
イオン歯ブラシと、
前記イオン歯ブラシと電気的に接続された導電部材と、
を含み、
前記イオン歯ブラシで動物の歯磨きが行われる場合に、前記イオン歯ブラシ、前記導電部材、および前記動物を介して電流が流れる。
【0008】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記イオン歯ブラシと前記導電部材とを電気的に接続しているコードを含んでもよい。
【0009】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記イオン歯ブラシは、使用者の一方の手で把持され、
前記導電部材は、前記使用者の他方の手の手首に装着されるリストバンドであってもよい。
【0010】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記イオン歯ブラシは、使用者の一方の手で把持され、
前記導電部材は、前記使用者の他方の手の指に装着される指サックであってもよい。
【0011】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記導電部材は、前記動物の下に敷かれるシートであってもよい。
【0012】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記イオン歯ブラシは、
使用者に把持される把持部と、
前記把持部に着脱可能に接続されたヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられたブラシ毛と、
を有してもよい。
【0013】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記ヘッド部は、互いに反対を向く第1面および第2面を有し、
前記ブラシ毛は、前記第1面に設けられ、
前記ヘッド部は、前記把持部の長手方向に対して前記第2面側に傾斜して、前記把持部に装着されてもよい。
【0014】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記ブラシ毛は、動物の毛で構成されていてもよい。
【0015】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記イオン歯ブラシは、前記ヘッド部を振動させるモーターを有し、
前記モーターの駆動によって生じる音の周波数は、170Hz以上250Hz以下であってもよい。
【0016】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記イオン歯ブラシは、前記把持部から延出されて前記ヘッド部内に挿入される支軸部を有し、
前記ヘッド部の前記第1面には、前記支軸部を露出する開口部が設けられ、
前記把持部には、電池が収容され、
前記支軸部は、前記電池の一方の電極と電気的に接続され、
前記コードは、前記把持部に設けられた貫通孔を通って、前記電池の他方の電極と電気的に接続されてもよい。
【0017】
前記動物用歯磨きセットの一態様において、
前記動物は、犬であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に動物用歯磨きセットでは、イオン歯ブラシと、イオン歯ブラシと電気的に接続された導電部材と、を含み、イオン歯ブラシで動物の歯磨きが行われる場合に、イオン歯ブラシ、導電部材、および動物を介して電流が流れる。そのため、本発明に係るイオン歯ブラシでは、歯肉炎を改善すると共に、効率よく歯垢を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る動物用歯磨きセットを模式的に示す斜視図。
図2】本実施形態に係る動物用歯磨きセットを模式的に示す正面図。
図3】本実施形態に係る動物用歯磨きセットを模式的に示す背面図。
図4】本実施形態に係る動物用歯磨きセットを模式的に示す側面図。
図5】本実施形態に係る動物用歯磨きセットを模式的に示す側面図。
図6】本実施形態に係る動物用歯磨きセットの使用方法を説明するための図。
図7】本実施形態の第1変形例に係る動物用歯磨きセットの使用方法を説明するための図。
図8】本実施形態の第2変形例に係る動物用歯磨きセットの使用方法を説明するための図。
図9】歯磨きを8週間行った後の犬の歯肉炎指数を示す表。
図10】歯磨きを8週間行った後の犬の口腔の細菌除去率を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0021】
1. 動物用歯磨きセット
1.1. 構成
まず、本実施形態に係る動物用歯磨きセットについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る動物用歯磨きセット100を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る動物用歯磨きセット100を模式的に示す正面図である。図3は、本実施形態に係る動物用歯磨きセット100を模式的に示す背面図である。図4および図5は、本実施形態に係る動物用歯磨きセット100を模式的に示す側面図である。
【0022】
動物用歯磨きセット100は、図1図5に示すように、例えば、イオン歯ブラシ10と、導電部材20と、コード30と、を含む。なお、便宜上、図2図5では、導電部材20およびコード30の図示を省略している。
【0023】
イオン歯ブラシ10は、図2図5に示すように、例えば、把持部110と、電池120と、キャップ130と、モーター140と、ボタン150と、支軸部160と、ヘッド部170と、ブラシ毛180と、を有している。
【0024】
なお、便宜上、図5では、ヘッド部170およびブラシ毛180の図示を省略している。また、図2図5では、互いに直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0025】
把持部110は、動物用歯磨きセット100の使用者の一方の手で把持される部分である。図示の例では、把持部110は、Z軸方向に長手方向を有する形状である。把持部110の内部は、空洞である。把持部110は、電池120およびモーター140を収容することができる。
【0026】
把持部110の材質は、例えば、絶縁性樹脂である。把持部110の材質は、例えば、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどである。把持部110は、例えば、3Dプリンター、射出成形機で形成される。
【0027】
把持部110は、キャップ130と係合する第1係合部112と、ヘッド部170と係合する第2係合部114と、を有している。図示の例では、第1係合部112は、把持部110の-Z軸方向の端に位置している。第2係合部114は、把持部110の+Z軸方向の端に位置している。
【0028】
電池120は、把持部110に収容されている。図示の例では、電池120は、2つの乾電池122で構成されている。2つの乾電池122は、直列に接続されている。乾電池122は、例えば、アルカリ乾電池、マンガン乾電池などである。なお、電池120を構成する乾電池122の数は、特に限定されず、例えば、電池120は、1つの乾電池12
2のみで構成されていてもよい。電池120は、一方の電極としての第1電極124と、他方の電極としての第2電極126と、を有している。第1電極124は、例えば、負極である。第2電極126は、例えば、正極である。
【0029】
キャップ130は、把持部110の第1係合部112と係合する。キャップ130は、例えば、第1係合部112と螺合する。キャップ130は、把持部110に対して着脱可能である。キャップ130の材質は、例えば、把持部110と同じである。キャップ130は、例えば、3Dプリンター、射出成形機で形成される。使用者は、電池120の容量が減った場合に、キャップ130を把持部110から取り外して、電池120を交換することができる。
【0030】
モーター140は、把持部110に収容されている。図示の例では、モーター140は、電池120よりも+Z軸方向に位置している。モーター140は、ヘッド部170を振動させる。モーター140は、例えば、支軸部160を振動させることにより、ヘッド部170を振動させる。モーター140は、例えば、支軸部160と接触している。モーター140は、例えば、偏心モーターである。
【0031】
モーター140が駆動された場合に、モーター140の駆動によって生じる音の周波数は、例えば、好ましくは170Hz以上250Hz以下であり、より好ましくは190Hz以上230Hz以下である。モーター140の駆動によって生じる音の周波数は、例えば、周波数測定器によって測定される。
【0032】
ボタン150は、把持部110の表面に設けられている。使用者がボタン150を押すと、イオン歯ブラシ10は、オン状態となり、把持部110に収容された図示せぬ回路基板が作動して、モーター140に電圧が印加される。さらに、ON状態では、把持部110に収容された図示せぬスイッチ機構によって、電池120の第1電極124と、支軸部160とが、電気的に接続される。使用者が再度ボタン150を押すと、イオン歯ブラシ10は、オフ状態となり、回路基板の作動が停止されて、モーター140に電圧が印加されなくなる。さらに、オフ状態では、第1電極124と支軸部160との電気的接続が解除される。イオン歯ブラシ10は、ボタン150が押される度に、オフ状態からオン状態へ、またはオン状態からオフ状態へ切り替わる。
【0033】
支軸部160は、把持部110から延出している。具体的には、支軸部160は、把持部110の第2係合部114から延出している。支軸部160は、把持部110の長手方向に対して、傾斜した方向に延出している。支軸部160の形状は、例えば、棒状である。支軸部160は、ヘッド部170内に挿入される。
【0034】
支軸部160は、導電性を有している。支軸部160は、電池120の第1電極124と電気的に接続可能である。具体的には、支軸部160は、イオン歯ブラシ10がオン状態で、第1電極124と電気的に接続される。支軸部160の材質は、例えば、SUS(steel use stainless)である。
【0035】
ヘッド部170は、支軸部160に支持されている。ヘッド部170は、把持部110の第2係合部114に係合する。ヘッド部170は、例えば、第2係合部114と嵌合する。ヘッド部170は、例えば、把持部110に着脱可能に接続される。ヘッド部170の材質は、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレンなどである。
【0036】
ヘッド部170は、互いに反対を向く第1面171および第2面172を有している。第1面171および第2面172は、例えば、互いに平行である。ヘッド部170は、把持部110の長手方向に対して第2面172側に傾斜して、把持部110に装着される。
図4に示す例では、ヘッド部170の第2面172は、XZ平面と平行な仮想平面Sに対して、+Y軸方向に傾斜している。仮想平面Sに対する第2面172の傾斜角θは、例えば、5°以上30°以下であり、好ましくは10°以上20°以下である。
【0037】
ヘッド部170の第1面171には、図2に示すように、開口部173が設けられている。図示の例では、開口部173は、ヘッド部170の長手方向に沿った溝である。ヘッド部170は、例えば、ブラシ毛180が設けられたブラシ部174と、ブラシ部174から一体的にくびれて延出しているシャンク部175と、を有している。開口部173は、例えば、シャンク部175のブラシ部174と隣接する部分に設けられている。開口部173は、支軸部160の一部を露出している。
【0038】
ヘッド部170のシャンク部175には、支軸部160が挿入される挿入孔176が設けられている。挿入孔176は、開口部173と連通している。シャンク部175は、把持部110の第2係合部114と係合するように構成されている。
【0039】
ブラシ毛180は、ブラシ部174の第1面171に設けられている。ブラシ毛180は、複数設けられている。ブラシ毛180の数は、特に限定されない。ブラシ毛180は、ポリエステル、ナイロンなどの化学繊維で構成されていてもよく、動物の毛で構成されていてもよい。ブラシ毛180を構成する動物の毛としては、例えば、馬の毛、山羊の毛、豚の毛などが挙げられる。
【0040】
導電部材20は、図1に示すように、イオン歯ブラシ10に電気的に接続されている。図示の例では、導電部材20は、コード30を介して、イオン歯ブラシ10に接続されている。導電部材20は、導電性を有している。導電部材20は、使用者の他方の手の手首に装着されるリストバンドである。
【0041】
導電部材20の材質は、導電性フィラーを含む導電性樹脂である。具体的には、導電部材20の材質は、炭素を含む(炭素が添加された)ABS樹脂である。ABS樹脂に添加される炭素は、導電性フィラーであり、例えば、カーボンブラック、黒鉛、天然グラファイト、人造グラファイトなどである。なお、導電性フィラーは、炭素に限定されず、例えば、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅などであってもよい。また、導電性フィラーが添加される樹脂は、ABS樹脂に限定されず、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどであってもよい。また、導電部材20は、金属繊維、金属メッキ繊維を含んで構成されていてもよい。
【0042】
コード30は、イオン歯ブラシ10と導電部材20とを電気的に接続している。図示の例では、コード30は、イオン歯ブラシ10および導電部材20と接触している。コード30は、把持部110に設けられた貫通孔116を通って、電池120の第2電極126と電気的に接続される。コード30の形状は、例えば、紐状である。図示の例では、コード30は、伸縮可能なコイル状のカールコードである。コード30の材質は、例えば、導電部材20と同じである。
【0043】
1.2. 使用方法
図6は、本実施形態に係る動物用歯磨きセット100の使用方法を説明するための図である。なお、便宜上、図6では、イオン歯ブラシ10、導電部材20、およびコード30を簡略化して図示している。
【0044】
動物Aの歯磨きを行う場合、動物用歯磨きセット100の使用者は、一方の手(図示の例では右手)RHでイオン歯ブラシ10を把持する。さらに、使用者は、他方の手(図示
の例では左手)LHの手首に、リストバンドである導電部材20を装着する。そして、使用者は、左手LHで動物Aに触れながら、ボタン150を押してイオン歯ブラシ10をオン状態とし、右手RHに把持しているイオン歯ブラシ10で、動物Aの歯磨きを行う。図示の例では、動物Aは、犬である。
【0045】
なお、使用者が左手LHで触れる動物Aの部分は、特に限定されないが、例えば、使用者は、左手LHの人差し指で、動物Aの歯肉に触れる。電気抵抗の低下を考慮すると、使用者は、動物Aの歯肉など歯に近い部分に触れることが好ましい。
【0046】
イオン歯ブラシ10で、動物Aの歯磨きを行うと、イオン歯ブラシ10のブラシ毛180は、動物Aの唾液によって濡れ、開口部173を含む唾液の連なった経路を介して支軸部160と電気的に導通可能な状態となる。すなわち、開口部173は、唾液を媒体として、ブラシ毛180と支軸部160とを電気的に導通可能にするための開口部である。そのため、イオン歯ブラシ10、導電部材20、および動物Aを介して電流が流れる。具体的には、電流は、電池120の第2電極126から、コード30、導電部材20、使用者の左手LH、動物Aの体、動物Aの歯、ブラシ毛180、動物A唾液の連なった経路、支軸部160、および電池120の第1電極124を介して、流れる。これにより、イオン歯ブラシ10で発生したマイナスイオンが動物Aの唾液中のプラスイオンを吸い寄せることで、動物Aの歯と、マイナスに帯電した歯垢と、の結びつきを緩めることができる。これにより、強い力でブラッシングすることなく、歯肉を傷つけずに歯垢を除去することができる。
【0047】
なお、動物Aの歯磨きを行う場合に、使用者は、右手に導電部材20を装着し、左手でイオン歯ブラシ10を把持し、右手で動物Aに触れながら、左手に把持したイオン歯ブラシで動物Aの歯磨きを行ってもよい。
【0048】
1.3. 作用効果
動物用歯磨きセット100では、イオン歯ブラシ10と、イオン歯ブラシ10と電気的に接続された導電部材20と、を含み、イオン歯ブラシ10で動物Aの歯磨きが行われる場合に、イオン歯ブラシ10、導電部材20、および動物Aを介して電流が流れる。そのため、動物用歯磨きセット100では、強い力でブラッシングすることなく、歯肉を傷つけずに歯垢を除去することができる。その結果、歯肉炎を改善すると共に、効率よく歯垢を除去することができる。
【0049】
動物用歯磨きセット100では、イオン歯ブラシ10と導電部材20とを電気的に接続しているコード30を含む。そのため、動物用歯磨きセット100では、例えばイオン歯ブラシと導電部材とが直接接続されている場合に比べて、動物Aの歯磨きを容易に行うことができる。
【0050】
動物用歯磨きセット100では、イオン歯ブラシ10は、使用者の一方の手RHで把持され、導電部材20は、使用者の他方の手LHの手首に装着されるリストバンドである。そのため、動物用歯磨きセット100では、他方の手LHであれば、どの指で動物Aに触れても電流が流れるため、例えば導電部材が指サックである場合に比べて、他方の手LHの自由度を高めることができる。例えば他方の手LHで動物Aを撫でながら、動物Aの歯磨きを行うことができる。さらに、例えば導電部材が動物Aの下に敷かれるシートである場合に比べて、導電部材20の小型化を図ることができる。
【0051】
動物用歯磨きセット100では、イオン歯ブラシ10は、使用者に把持される把持部110と、把持部110に着脱可能に接続されたヘッド部170と、ヘッド部170に設けられたブラシ毛180と、を有する。そのため、動物用歯磨きセット100では、ブラシ
毛180が劣化した場合に、ヘッド部170を交換すればよいので、イオン歯ブラシ全体を交換する場合に比べて、低コスト化を図ることができる。さらに、複数の動物Aに対して歯磨きを行う場合に、動物Aごとに、ヘッド部170を交換して歯磨きを行うことができるので、衛生的である。
【0052】
動物用歯磨きセット100では、ヘッド部170は、互いに反対を向く第1面171および第2面172を有し、ブラシ毛180は、第1面171に設けられ、ヘッド部170は、把持部110の長手方向に対して第2面172側に傾斜して、把持部110に装着される。そのため、動物用歯磨きセット100では、例えばヘッド部が把持部の長手方向に対して傾斜していない場合や第1面側に傾斜している場合に比べて、動物Aの歯磨きを容易に行うことができる。
【0053】
動物用歯磨きセット100では、ブラシ毛180は、動物の毛で構成されていることが好ましい。ブラシ毛180が動物の毛で構成されている場合には、例えばブラシ毛が化学繊維で構成されている場合に比べて、動物Aがブラシ毛180を口腔内に入れられることを嫌がる可能性を、小さくすることができる。
【0054】
動物用歯磨きセット100では、イオン歯ブラシ10は、ヘッド部170を振動させるモーター140を有し、モーター140の駆動によって生じる音の周波数は、好ましくは170Hz以上250Hz以下である。ここで、人間の成人女性の声の周波数は、163Hz以上255Hz以下である。そのため、動物Aは、モーター140の駆動によって生じる音を飼い主の声と勘違いする場合があり、動物Aがモーター140の駆動によって生じる音を嫌がる可能性を、小さくすることができる。
【0055】
動物用歯磨きセット100では、イオン歯ブラシ10は、把持部110から延出されてヘッド部170内に挿入された支軸部160を有し、ヘッド部170の第1面171には、支軸部160を露出する開口部173が設けられ、把持部110には、電池120が収容され、支軸部160は、電池120の一方の電極124と電気的に接続され、コード30は、把持部110に設けられた貫通孔116を通って、電池120の他方の電極126と電気的に接続される。そのため、動物用歯磨きセット100では、電池120の他方の電極126から、コード30、導電部材20、動物Aの体、動物Aの歯、ブラシ毛180、動物Aの唾液等の液体の連なった経路、支軸部160、および電池120の一方の電極124を介して、電流が流れる。
【0056】
動物用歯磨きセット100では、動物Aは、犬である。そのため、動物用歯磨きセット100では、犬の歯垢を除去することができる。なお、動物Aは、特に限定されず、例えば、猫であってもよい。
【0057】
2. 動物用歯磨きセットの変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る動物用歯磨きセットについて、図面を参照しながら説明する。図7は、本実施形態の第1変形例に係る動物用歯磨きセット200を模式的に示す図であり、動物用歯磨きセット200の使用方法を説明するための図である。なお、便宜上、図7では、イオン歯ブラシ10、導電部材20、およびコード30を簡略化して図示している。
【0058】
以下、本実施形態の第1変形例に係る動物用歯磨きセット200において、上述した本実施形態に係る動物用歯磨きセット100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0059】
上述した動物用歯磨きセット100では、図6に示すように、導電部材20は、リストバンドであった。
【0060】
これに対し、動物用歯磨きセット200では、図7に示すように、導電部材20は、指サックである。図示の例では、指サックである導電部材20は、使用者の左手LHの人差し指に装着されている。導電部材20は、動物Aと接触している。
【0061】
動物用歯磨きセット200では、導電部材20は、使用者の他方の手LHに装着される指サックである。そのため、動物用歯磨きセット200では、例えば導電部材が動物Aの下に敷かれるシートである場合に比べて、導電部材20の小型化を図ることができる。
【0062】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る動物用歯磨きセットについて、図面を参照しながら説明する。図8は、本実施形態の第2変形例に係る動物用歯磨きセット300を模式的に示す図であり、動物用歯磨きセット300の使用方法を説明するための図である。なお、便宜上、図8では、イオン歯ブラシ10、導電部材20、およびコード30を簡略化して図示している。
【0063】
以下、本実施形態の第2変形例に係る動物用歯磨きセット300において、上述した本実施形態に係る動物用歯磨きセット100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0064】
上述した動物用歯磨きセット100では、図6に示すように、導電部材20は、リストバンドであった。
【0065】
これに対し、動物用歯磨きセット300では、図8に示すように、導電部材20は、動物Aの下に敷かれるシートである。図示の例では、導電部材20は、動物Aの4本と脚と接触している。
【0066】
動物用歯磨きセット300では、導電部材20は、動物Aの下に敷かれるシートである。そのため、動物用歯磨きセット300では、例えば導電部材がリストバンドや指サックである場合に比べて、イオン歯ブラシ10を把持していない他方の手LHで、動物Aに触れる必要がないため、他方の手LHの自由度を高めることができる。
【0067】
3. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
【0068】
犬種、年齢、性別が様々な犬12匹を、第1グループと第2グループとに6匹ずつ分け、歯磨きを8週間行った。第1グループの犬に対しては、イオン歯ブラシと、リストバンドとしての導電部材と、コードと、を含む、上述した動物用歯磨きセット100に対応する動物用歯磨きセットを用いて、歯磨きを行った。第2グループの犬に対しては、イオン歯ブラシではない歯ブラシ(電流が流れない歯ブラシ)を用いて、歯磨きを行った。
【0069】
図9は、歯磨きを8週間行った後の犬の歯肉炎指数(Gingival Index:GI)を示す表である。歯肉炎とは、歯周病の中でも初期の段階で、歯肉に炎症が起きている状態をいう。歯肉炎指数は、歯肉炎の程度を評価する指数であり、歯肉炎指数が高いほど、強度の炎症が生じていることを示している。図9では、歯肉炎指数の指標として、以下のA,B,Cを用いている。
【0070】
A:歯磨きの実験を行う前に比べて、歯肉炎指数が減少した。
B:歯磨きの実験を行う前に比べて、歯肉炎指数が変化しなかった。
C:歯磨きの実験を行う前に比べて、歯肉炎指数が増加した。
【0071】
図9に示すように、第1グループでは、半数以上の犬で、歯肉炎指数の減少が確認された。第1グループでは、歯肉炎指数が増加した犬は、いなかった。一方、第2グループでは、歯肉炎指数が減少した犬は、いなかった。さらに、第2グループでは、歯肉炎指数が増加した犬がいた。
【0072】
図10は、歯磨きを8週間行った後の犬の口腔内細菌除去率を示す表である。図10は、歯磨きの実験を行う前に犬の口腔内で確認された細菌を、全て除去できた場合を細菌除去率100%とし、全く除去できていない場合を細菌除去率0%としている。図10では、第1グループおよび第2グループの各々において、細菌除去率の平均値を示している。細菌除去率が大きいほど、歯垢がよく除去されていることを示している。
【0073】
図10に示すように、第1グループの犬は、大腸菌、β溶血性レンサ球菌、およびパスツレラ菌の細菌除去率が、第2グループの犬に比べて、大きかった。
【0074】
本実験例により、イオン歯ブラシは、イオン歯ブラシではない歯ブラシに比べて、口腔内の細菌をより除去でき、歯肉炎を改善できることがわかった。
【0075】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0076】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0077】
10…イオン歯ブラシ、20…導電部材、30…コード、100…動物用歯磨きセット、110…把持部、112…第1係合部、114…第2係合部、116…貫通孔、120…電池、122…乾電池、124…第1電極、126…第2電極、130…キャップ、140…モーター、150…ボタン、160…支軸部、170…ヘッド部、171…第1面、172…第2面、173…開口部、174…ブラシ部、175…シャンク部、176…挿入孔、180…ブラシ毛、200,300…動物用歯磨きセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10