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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176416
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 648F
H01L21/304 648L
H01L21/304 648K
H01L21/304 651H
H01L21/304 651K
H01L21/304 651L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088685
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】枝光 建治
(72)【発明者】
【氏名】山本 滋
(72)【発明者】
【氏名】岩田 敬次
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健一
(72)【発明者】
【氏名】川井 侑哉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大樹
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB03
5F157AB13
5F157AB34
5F157AC03
5F157AC24
5F157BB03
5F157BB09
5F157CE61
5F157CE62
5F157CE83
5F157CF04
5F157CF14
5F157CF16
5F157CF38
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF60
5F157CF99
5F157DA01
5F157DC86
(57)【要約】
【課題】溶剤が水封水に混入する場合であっても防爆的に問題が生じない基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】制御部111は、水封式真空ポンプ45を作動させてチャンバ3内を減圧し、第3のノズル19から撥水剤ガスを供給して基板Wに対する処理を行う。その後、水封式真空ポンプ45によるチャンバ3内の減圧が完了した場合には、開閉弁73を開放して排水タンク57内の水封水の一部を排出する。したがって、排水タンク57内の水封水における撥水剤の濃度が一定以上に高くなることを抑制できる。その結果、撥水剤が水封水に混入する場合であっても防爆的に問題が生じない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して所定の処理を行う基板処理装置において、
基板を収容して基板に対して処理を行うチャンバと、
純水に対して不溶性の溶剤を前記チャンバ内に溶剤ガスとして供給する溶剤ガス供給手段と、
前記チャンバ内の気体を吸引するものであって、気体を吸引する吸引口と、気体を排出する排出口と、水封水を供給される水封水供給口とを備えた水封式真空ポンプと、
前記チャンバに一端側が連通接続され、他端側が前記吸引口に連通接続された減圧管と、
前記排出口に連通接続され、前記溶剤を含む前記チャンバ内の気体及び水封水を貯留する排水タンクと、
前記排水タンクと前記水封式真空ポンプの水封水供給口とを連通接続する循環配管と、
前記循環配管に設けられ、前記循環配管内を流通する液体を冷却する熱交換器と、
前記排水タンクの上部に連通接続された排気管と、
前記排水タンクの下部に連通接続された排液管と、
前記排液管に設けられ、前記排液管における液体の流通を制御する開閉弁と、
前記水封式真空ポンプを作動させて前記チャンバ内を減圧し、前記溶剤ガス供給手段から溶剤ガスを供給して前記基板に対する処理を行った後、前記水封式真空ポンプによる前記チャンバ内の減圧が完了した場合には、前記開閉弁を開放して前記排水タンク内の液体の一部を排出する制御部と、
を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記水封式真空ポンプを作動させて、前記排水タンク内の液体を前記循環配管により循環させた直後に前記開閉弁を開放することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記チャンバ内に不活性ガスを供給する第1の不活性ガス供給手段をさらに備え、
前記制御部は、前記循環を行わせる際に、前記第1の不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記減圧管に設けられ、前記減圧管における気体の流通を制御する減圧開閉弁と、
前記チャンバ内に配置され、基板を収容して基板を処理液に浸漬させて処理を行う処理槽と、
前記チャンバの底部に一端側が連通接続され、前記チャンバの底部に貯留する処理液を排出するチャンバ排液管と、
前記チャンバ排液管の他端側が連通接続され、前記チャンバの下方に配置された下部タンクと、
前記下部タンクに不活性ガスを供給する第2の不活性ガス供給手段と、
前記下部タンクと前記減圧管とを連通接続した副減圧管と、
前記副減圧管に設けられ、前記副減圧管における気体の流通を制御する副減圧開閉弁と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記循環を行わせる際に、前記減圧開閉弁を閉止し、前記副減圧開閉弁を開放した状態で、前記第2の不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記排水タンクは、前記水封水供給口より高い位置に配置されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記排水タンクにおける液面の所定高さ位置を検出する液面センサをさらに備え、
前記制御部は、前記開閉弁を開放した後、前記液面センサが作動したら前記開閉弁を閉止することを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記制御部は、次の基板が前記チャンバに搬入され、前記チャンバ内が減圧されるまでに前記開閉弁を閉止することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の基板処理装置において、
前記排水タンクに水封水を供給する水封水供給管と、
前記水封水供給管に備えられ、水封水の流通を制御する水封水開閉弁と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記排水タンクの液面レベルに基づいて、前記水封水開閉弁を制御して、前記排水タンクに水封水を補充することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
基板に対して所定の処理を行う基板処理方法において、
チャンバに基板を収容した後、前記チャンバ内を水封式真空ポンプにより減圧する減圧ステップと、
前記減圧を維持しつつ、純水に対して不溶性の溶剤を前記チャンバ内に溶剤ガスとして供給する供給ステップと、
前記水封式真空ポンプによる前記チャンバの減圧が完了した後、前記水封式真空ポンプの排出口に連通接続され、前記溶剤を含む前記チャンバ内の気体及び水封水を貯留する排水タンク内の液体の一部を排出する排出ステップと、
を実施することを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理方法において、
前記水封式真空ポンプによる前記チャンバの減圧が完了した後、前記排水タンクに一端側が連通接続され、前記水封式真空ポンプに他端側が連通接続された循環配管を介して、前記排水タンク内の液体を循環させる循環ステップをさらに実施し、
前記循環ステップの直後に、前記排出ステップにおける排出を行うことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。基板は、例えば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、有機EL(Electroluminescence)用基板、FPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板である。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、基板を加工する装置がある(例えば、特許文献1参照)。この装置は、チャックテーブルと、水封式真空ポンプと、排水タンクと、循環経路と、熱交換器とを備えている。
【0003】
チャックテーブルは、加工対象の基板が載置され、加工水が供給される。チャックテーブルに供給された加工水の一部と空気は、水封式真空ポンプの吸引により、吸引経路を通って排水タンクに貯留される。循環経路は、一端側が排水タンクに連通接続され、熱交換器を介して他端側が水封式真空ポンプの水封水供給口に連通接続されている。排水タンク内に貯留された加工水は、循環経路を通って熱交換器により冷却される。これにより、水封式真空ポンプに対して、冷却された新たな水封水を補充する必要がなく、完全循環式に構成できる。排水タンクは、加工水及び水封水と空気とを分離して、空気を大気に放出する。排水タンクは、開閉弁を備えた排出管が下部に接続されており、開閉弁の操作により排水可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4608074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、加工水と、水封水と、空気とが混合したものが排水タンクに貯留される。ところで、半導体の処理プロセスによっては、水封水に溶剤が混入することがある。そのため、水封水に溶剤が混入し続けると、水封水中の溶剤濃度が高くなり、排水タンク内で溶剤が揮発するので、防爆的に問題となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、溶剤が水封水に混入する場合であっても防爆的に問題が生じない基板処理装置及び基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、基板に対して所定の処理を行う基板処理装置において、基板を収容して基板に対して処理を行うチャンバと、純水に対して不溶性の溶剤を前記チャンバ内に溶剤ガスとして供給する溶剤ガス供給手段と、前記チャンバ内の気体を吸引するものであって、気体を吸引する吸引口と、気体を排出する排出口と、水封水を供給される水封水供給口とを備えた水封式真空ポンプと、前記チャンバに一端側が連通接続され、他端側が前記吸引口に連通接続された減圧管と、前記排出口に連通接続され、前記溶剤を含む前記チャンバ内の気体及び水封水を貯留する排水タンクと、前記排水タンクと前記水封式真空ポンプの水封水供給口とを連通接続する循環配管と、前記循環配管に設けられ、前記循環配管内を流通する液体を冷却する熱交換器と、前記排水タンクの上部に連通接続された排気管と、前記排水タンクの下部に連通接続された排液管と、前記排液管に設けられ、前記排液管における液体の流通を制御する開閉弁と、前記水封式真空ポンプを作動させて前記チャンバ内を減圧し、前記溶剤ガス供給手段から溶剤ガスを供給して前記基板に対する処理を行った後、前記水封式真空ポンプによる前記チャンバ内の減圧が完了した場合には、前記開閉弁を開放して前記排水タンク内の液体の一部を排出する制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御部は、水封式真空ポンプを作動させてチャンバ内を減圧し、溶剤ガス供給手段から溶剤ガスを供給して基板に対する処理を行う。その後、水封式真空ポンプによるチャンバ内の減圧が完了した場合には、開閉弁を開放して排水タンク内の液体の一部を排出する。したがって、排水タンク内の液体における溶剤の濃度が一定以上に高くなることを抑制できる。その結果、溶剤が水封水に混入する場合であっても防爆的に問題が生じない。
【0009】
また、本発明において、前記制御部は、前記水封式真空ポンプを作動させて、前記排水タンク内の液体を前記循環配管により循環させた直後に前記開閉弁を開放することが好ましい(請求項2)。
【0010】
溶剤が純水に対して不溶性であるので、排水タンク内において貯留する液体では、溶剤が分離する。そこで、循環配管により排水タンク内の液体を循環させることにより、溶剤と純水とを撹拌し、溶剤を純水に混合させる。その直後に開閉弁を開放するので、排水タンクから溶剤成分を確実に排出できる。
【0011】
また、本発明において、前記チャンバ内に不活性ガスを供給する第1の不活性ガス供給手段をさらに備え、前記制御部は、前記循環を行わせる際に、前記第1の不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させることが好ましい(請求項3)。
【0012】
チャンバ内の気体を排出して循環配管による循環を行わせる際に、第1の不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給する。したがって、チャンバ内を減圧することなく、排水タンクの液体を循環させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記減圧管に設けられ、前記減圧管における気体の流通を制御する減圧開閉弁と、前記チャンバ内に配置され、基板を収容して基板を処理液に浸漬させて処理を行う処理槽と、前記チャンバの底部に一端側が連通接続され、前記チャンバの底部に貯留する処理液を排出するチャンバ排液管と、前記チャンバ排液管の他端側が連通接続され、前記チャンバの下方に配置された下部タンクと、前記下部タンクに不活性ガスを供給する第2の不活性ガス供給手段と、前記下部タンクと前記減圧管とを連通接続した副減圧管と、前記副減圧管に設けられ、前記副減圧管における気体の流通を制御する副減圧開閉弁と、をさらに備え、前記制御部は、前記循環を行わせる際に、前記減圧開閉弁を閉止し、前記副減圧開閉弁を開放した状態で、前記第2の不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させることが好ましい(請求項4)。
【0014】
制御部は、循環を行わせる際に、減圧開閉弁を閉止し、副減圧開閉弁を開放した状態で、第2の不活性ガス供給手段から不活性ガスを供給させる。したがって、チャンバ内に影響を与えることなく、水封式真空ポンプを作動させて排水タンク内の液体を循環させることができる。そのため、次の基板をチャンバ内に搬入するタイミングを早めることができるので、スループットを向上できる。
【0015】
また、本発明において、前記排水タンクは、前記水封水供給口より高い位置に配置されていることが好ましい(請求項5)。
【0016】
排水タンク内の液体が水封水供給口へ重力により移動する。したがって、循環配管にポンプなどの動力を必要としない。その結果、構成を簡易化してコストを抑制できるとともに、省電力化を図ることができる。
【0017】
また、本発明において、前記排水タンクにおける液面の所定高さ位置を検出する液面センサをさらに備え、前記制御部は、前記開閉弁を開放した後、前記液面センサが作動したら前記開閉弁を閉止することが好ましい(請求項6)。
【0018】
排水タンク内の液体が所定高さ位置を下回ることを防止できる。したがって、水封式真空ポンプの水封水が不足することに起因して、水封式真空ポンプの動作に悪影響を与えることを防止できる。ここでいう所定高さ位置は、水封式真空ポンプの動作に必要な水封水の容量に対応した高さ位置である。
【0019】
また、本発明において、前記制御部は、次の基板が前記チャンバに搬入され、前記チャンバ内が減圧されるまでに前記開閉弁を閉止することが好ましい(請求項7)。
【0020】
次の基板がチャンバに搬入されると、すぐにチャンバ内を減圧し始めることができる。したがって、次の処理を円滑に行うことができる。
【0021】
また、本発明において、前記排水タンクに水封水を供給する水封水供給管と、前記水封水供給管に備えられ、水封水の流通を制御する水封水開閉弁と、をさらに備え、前記制御部は、前記排水タンクの液面レベルに基づいて、前記水封水開閉弁を制御して、前記排水タンクに水封水を補充することが好ましい(請求項8)。
【0022】
制御部は、排水タンクの液面レベルに基づいて、水封水開閉弁を制御して排水タンクに水封水を補充する。したがって、水封水が不足することがないので、水封式真空ポンプによる減圧動作を長期間にわたって安定して行うことができる。
【0023】
また、請求項9に記載の発明は、基板に対して所定の処理を行う基板処理方法において、チャンバに基板を収容した後、前記チャンバ内を水封式真空ポンプにより減圧する減圧ステップと、前記減圧を維持しつつ、純水に対して不溶性の溶剤を前記チャンバ内に溶剤ガスとして供給する供給ステップと、前記水封式真空ポンプによる前記チャンバの減圧が完了した後、前記水封式真空ポンプの排出口に連通接続され、前記溶剤を含む前記チャンバ内の気体及び水封水を貯留する排水タンク内の液体の一部を排出する排出ステップと、を実施することを特徴とするものである。
【0024】
[作用・効果]請求項9に記載の発明によれば、減圧ステップと供給ステップとの後、排出ステップにおいて、水封式真空ポンプによるチャンバの減圧が完了した後、排水タンク内の液体の一部を排出する。したがって、したがって、排水タンク内の液体における溶剤の濃度が一定以上に高くなることを抑制できる。その結果、溶剤が水封水に混入する場合であっても防爆的に問題が生じない。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る基板処理装置によれば、制御部は、水封式真空ポンプを作動させてチャンバ内を減圧し、溶剤ガス供給手段から溶剤ガスを供給して基板に対する処理を行う。その後、水封式真空ポンプによるチャンバ内の減圧が完了した場合には、開閉弁を開放して排水タンク内の液体の一部を排出する。したがって、排水タンク内の液体における溶剤の濃度が一定以上に高くなることを抑制できる。その結果、溶剤が水封水に混入する場合であっても防爆的に問題が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1に係る基板処理装置の全体構成を示す図である。
図2】実施例1に係る処理の一例を示すタイムチャートである。
図3】実施例1に係る循環ステップを表した模式図である。
図4】実施例2に係る処理の一例を示すタイムチャートである。
図5】実施例2に係る循環ステップを表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施例について説明する。
【実施例0028】
以下、図面を参照して本発明の実施例1について説明する。
図1は、実施例1に係る基板処理装置の全体構成を示す図である。
【0029】
<1.装置構成>
【0030】
基板処理装置1は、基板Wに対して所定の処理を行う。基板Wは、例えば、ほぼ円形状を呈する。基板処理装置1は、複数枚の基板Wに対して同時に同じ処理を行うことが可能である。基板処理装置1は、一枚の基板Wを処理することもできる。基板処理装置1は、いわゆるバッチ式の装置である。
【0031】
基板処理装置1は、チャンバ3を備えている。チャンバ3は、上部に基板Wを搬入出する搬入出口5を備えている。搬入出口5は、図示しないシャッターにより開閉される。チャンバ3は、内部を外部に対して密閉できる。
【0032】
チャンバ3は、内部に処理槽7を備えている。処理槽7は、チャンバ3の下部に配置されている。処理槽7は、チャンバ3の底面から離間して配置されている。処理槽7の底面は、チャンバ3の下部の上面から離間している。処理槽7は、下部の両側に噴出管9を備えている。噴出管9は、処理槽7に処理液を供給する。処理液は、例えば、純水や有機溶剤などである。処理槽7は、底面に急速排液弁11を備えている。急速排液弁11は、処理槽7に貯留する処理液を短時間でチャンバ3の底部に排出する。
【0033】
基板処理装置1は、リフタ13を備えている。リフタ13は、複数枚の基板Wを下部に載置することができる。リフタ13は、複数枚の基板Wを紙面の前後方向に整列させて載置できる。リフタ13は、一枚の基板Wであっても載置できる。リフタ13は、第1の高さH1と、第2の高さH2と、第2の高さH3とに昇降可能である。第1の高さH1は、チャンバ3の外部であって、図示しない搬送機構との間で基板Wを受け渡す位置である。第2の高さH2は、チャンバ3の内部であって、処理槽7の上方の位置である。第2の高さH2は、基板Wを乾燥させる位置である。第3の高さH3は、チャンバ3の内部であって、処理槽7の内部の位置である。第3の高さH3は、基板Wに対して処理槽7において処理液による処理を行う位置である。
【0034】
チャンバ3は、第1のノズル15と、第2のノズル17と、第3のノズル19とを備えている。第1のノズル15と、第2のノズル17と、第3のノズル19とは、それぞれ左右方向に一対のノズルで構成されている。第1のノズル15と、第2のノズル17と、第3のノズル19とは、複数枚の基板Wが整列されている方向に長軸を有する。第1のノズル15は、チャンバ3において最も高い位置に設けられている。第2のノズル17は、第1のノズル15より下方であって、第3のノズル19より上方の位置に設けられている。第3のノズル19は、第2のノズル17より下方であって、処理槽7の上縁より上方の位置に設けられている。
【0035】
第1のノズル15は、供給管21の一端側が連通接続されている。供給管21の他端側には、窒素ガス供給源23が連通接続されている。供給管21は、開閉弁25を備えている。窒素ガス供給源23は、窒素ガス(ドライNガス)を供給する。開閉弁25は、供給管21における窒素ガスの流通を制御する。
【0036】
上述した第1のノズル15は、本発明における「第1の不活性ガス供給手段」に相当する。
【0037】
第2のノズル17は、供給管27の一端側が連通接続されている。供給管27の他端側には、水溶性溶剤供給源29が連通接続されている。供給管27は、開閉弁31を備えている。水溶性溶剤供給源29は、純水に対して可溶性の溶剤を蒸気で供給する。水溶性の溶剤は、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)である。開閉弁31は、供給管27における水溶性溶剤蒸気の流通を制御する。第2のノズル17からの水溶性溶剤蒸気の供給は、高濃度での供給を実現するために、いわゆるキャリアガスを用いない方式であることが好ましい。但し、濃度が低くても処理に問題がない場合には、キャリアガスを用いて供給してもよい。
【0038】
第3のノズル19は、供給管33の一端側が連通接続されている。供給管33の他端側には、撥水剤供給源35が連通接続されている。供給管33は、開閉弁37を備えている。撥水剤供給源35は、撥水剤の蒸気を供給する。撥水剤は、シリル化剤とも呼ばれる。撥水剤は、純水に対して不溶性の溶剤を含む。不溶性の溶剤は、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propyleneglycol monomethyl ether acetate)(ペグミア(PGMEA)とも呼ばれる)が挙げられる。撥水剤供給源35は、不溶性の溶剤を含む処理液を撥水剤の蒸気として供給する。撥水剤は、撥水作用により、基板Wの表面に付着した処理液を排除して、基板Wの乾燥を促進する。
【0039】
チャンバ3は、第1の液面センサ39と、第2の液面センサ41とを備えている。第1の液面センサ39と、第2の液面センサ41は、チャンバ3の下部に配置されている。第1の液面センサ39と第2の液面センサ41とは、処理槽7からチャンバ3に排出された処理液の液面について所定の高さ位置を検出する。第1の液面センサ39は、処理液の液面について、貯留可能な上限の高さ位置を検出する。第2の液面センサ41は、処理液の液面について下限の高さ位置を検出する。
【0040】
チャンバ3には、減圧管43の一端側が連通接続されている。チャンバ3は、その側壁から内部に減圧管43の一端側が連通接続されている。減圧管43の他端側には、水封式真空ポンプ45が連通接続されている。水封式真空ポンプ45は、内部に封水と呼ばれる水を入れ、インペラー(不図示)の遠心力で水のリングを生成することにより、内部に真空状態を生み出すポンプである。減圧管43には、減圧開閉弁47が取り付けられている。減圧管43は、チャンバ3の内部の気体を排出して、チャンバ3の内部を減圧する。減圧開閉弁47は、減圧管43を流通する流体の流量を調整することができる。減圧開閉弁47は、調整された流量での流体の流通を許容したり遮断したりすることができる。
【0041】
水封式真空ポンプ45は、吸引口49と、排出口51と、水封水供給口53とを備えている。水封式真空ポンプ45は、減圧管43を介してチャンバ3内の気体を水溶性溶剤や不溶性溶剤などの蒸気を含めて排出し、チャンバ3内を減圧する。吸引口49は、気体を吸引する。排出口51は、吸引口49から吸引された気体を水封水とともに排出する。水封水供給口53は、水封水を供給される。
【0042】
排出口51には、排出管55の一端側が連通接続されている。排出管55の他端側には、排水タンク57が連通接続されている。排出管55は、常時開放されている。換言すると、排出管55は、内部の流体の流通を制御するための開閉弁などを備えていない。排水タンク57は、水封水供給口53よりも高い位置に配置されている。そのため、排水タンク57内の液体が水封水供給口へ重力により移動する。したがって、後述する循環配管75にポンプなどの動力を必要としない。その結果、構成を簡易化してコストを抑制できるとともに、消費電力を抑制できる。
【0043】
排水タンク57は、水封式真空ポンプ45が排出するチャンバ3内の気体及び液体を貯留する。チャンバ3内の気体は、空気や窒素ガスなどの気体や、チャンバ3に供給された水溶性溶剤や不溶性溶剤の蒸気を含む。液体は、チャンバ3に供給された水溶性溶剤や不溶性溶剤(撥水剤)が液化したものや、水封式真空ポンプ45の水封水を含む。
【0044】
排水タンク57は、水封水供給管59の一端側が連通接続されている。水封水供給管59の他端側には、純水供給源61が連通接続されている。水封水供給管59は、水封水開閉弁61を備えている。水封水開閉弁61は、水封水供給管59における純水の流通を制御する。排水タンク57は、液面センサ63を備えている。液面センサ63は、排水タンク57における液面の高さ位置を検出する。液面センサ63は、排水タンク57における液面の所定高さ位置を検出できる。液面センサ63は、排水タンク57内における液面の高さ位置のうち、所定の上限位置と、所定の下限位置とを検出できる。上限位置は、例えば、排水タンク57内における液体を排出するのに好適なタイミングを規定する。下限位置は、例えば、排水タンク57内の液体を排出した際、排出を停止するのに好適なタイミングを規定する。下限位置は、水封式真空ポンプ45の動作に必要な水封水の最低限の容量に対応した高さ位置である。
【0045】
排水タンク57は、排気管65を備えている。詳細には、排水タンク57は、上部に排気管65の一端側が連通接続されている。排気管65の他端側は、排気設備67が連通接続されている。排気設備67は、排気管65から排出された気体に含まれる溶剤を処理する。
【0046】
排水タンク57は、排液管69を備えている。具体的には、排水タンク57は、下部に排液管69の一端側が連通接続されている。排液管69の他端側は、排液設備71に連通接続されている。排液設備71は、排液管69から排出された液体に含まれる純水や溶剤を処理する。排液管69は、開閉弁73を備えている。開閉弁73は、排液管69における液体の流通を制御する。
【0047】
排水タンク57は、循環配管75の一端側が連通接続されている。排水タンク57は、その下部に循環配管75を備えている。循環配管75の他端側は、水封式真空ポンプ45の水封水供給口53に連通接続されている。循環配管75は、排水タンク57と封水式真空ポンプ45の水封水供給口53とを連通接続する。循環配管75は、熱交換器77を備えている。熱交換器77は、循環配管75を流通する液体との間で熱交換を行う。熱交換器77は、循環配管75を流通する液体を冷却する。具体的には、熱交換器77は、循環配管75を流通する、溶剤等を含む純水からなる水封水を冷却する。
【0048】
チャンバ3の下方には、下部タンク79が配置されている。下部タンク79は、チャンバ3より容積が小さい。換言すると、チャンバ3は、下部タンク79より容積が大きい。下部タンク79は、チャンバ3の下部に貯留する処理液が排出される。チャンバ3は、底部にチャンバ排液管81の一端側が連通接続されている。チャンバ排液管81の他端側は、下部タンク79に連通接続されている。チャンバ排液管81は、開閉弁83を備えている。開閉弁83は、チャンバ排液管81における処理液の流通を制御する。
【0049】
減圧管43には、分岐減圧管85の一端側が連通接続されている。詳細には、減圧管43の減圧開閉弁47よりもチャンバ3側に分岐減圧管85の一端側が連通接続されている。分岐減圧管85の他端側は、下部タンク79に連通接続されている。分岐減圧管85は、開閉弁87を備えている。開閉弁87は、分岐減圧管85における気体の流通を制御する。分岐減圧管85は、チャンバ3の減圧とともに下部タンク79を減圧するときに用いられる。
【0050】
下部タンク79は、圧力センサ89と、上限センサ91と、下限センサ93とを備えている。圧力センサ89は、下部タンク79の内部の圧力を検出する。圧力センサ89は、チャンバ3の内部の圧力より下部タンク79の圧力が低くなったことを検出するために用いられる。上限センサ91及び下限センサ93は、下部タンク79内における処理液の液面について所定の高さ位置を検出する。具体的には、上限センサ91は、処理液の液面レベルが予め決められた上限の高さ位置に到達したことを検出する。下限センサ93は、処理液の液面レベルが予め決められた下限の高さ位置に到達したことを検出する。
【0051】
減圧管43には、副減圧管95の一端側が連通接続されている。詳細には、減圧管43のうち、減圧開閉弁47と、水封式真空ポンプ45の吸引口49との間に副減圧管95の一端側が連通接続されている。副減圧管95の他端側は、下部タンク79に連通接続されている。副減圧管95は、副減圧開閉弁97を備えている。副減圧開閉弁97は、副減圧管95における気体の流量を調整できる。副減圧開閉弁97は、調整された流量での気体の流通を許容したり遮断したりすることができる。
【0052】
下部タンク79は、下部に排液管99の一端側が連通接続されている。排液管99の他端側は、排液設備101に連通接続されている。排液管99は、開閉弁103を備えている。開閉弁103は、排液管99における液体の流通を制御する。排液管99は、下部タンク79に貯留する液体を排出する。液体は、純水、溶剤、撥水剤を含む。
【0053】
下部タンク79は、上部に供給管105の一端側が連通接続されている。供給管105の他端側は、窒素ガス供給源107に連通接続されている。窒素ガス供給源107は、窒素ガスを供給する。供給管105は、流量調整弁109を備えている。流量調整弁109は、供給管105における窒素ガスの流量を調整できる。流量調整弁109は、調整された流量での窒素ガスの流通を許容したり遮断したりすることができる。
【0054】
なお、上述した供給管105が本発明における「第2の不活性ガス供給手段」に相当する。
【0055】
制御部111は、CPUやメモリを備えている。制御部111は、基板W(あるいはロット)を処理するための処理手順に応じたレシピに基づいて各部を操作する。制御部111は、排水タンク57の液面センサ63による液面レベルに基づいて、水封水開閉弁61を制御して排水タンク57に水封水を補充する。したがって、水封水が不足することがないので、水封式真空ポンプ45による減圧動作を長期間にわたって安定して行うことができる。
【0056】
上述した急速排液弁11と、リフタ13と、開閉弁25と、開閉弁31と、開閉弁37と、水封式真空ポンプ45と、減圧開閉弁47と、水封水開閉弁61と、開閉弁73と、開閉弁83と、開閉弁87と、副減圧開閉弁97と、開閉弁103と、流量調整弁109とは、制御部111により操作される。制御部111は、第1の液面センサ39と、第2の液面センサ41と、液面センサ63と、圧力センサ89と、上限センサ91と、下限センサ93との出力を受信する。なお、図示を簡略化するために、図1においては、上述した全ての構成のうちの一部に対してのみ、制御部111との間を信号線として点線で描いてある。
【0057】
<2.処理の具体例>
【0058】
ここで、図2及び図3を参照して、基板Wの処理について具体的に説明する。図2は、実施例1に係る処理の一例を示すタイムチャートである。図3は、実施例1に係る循環ステップを表した模式図である。以下においては、基板Wを処理するとして説明するが、一枚の基板Wや複数枚の基板W、あるいはこれらをロットと称した場合であっても同様である。また、以下の説明においては、排水タンク57における排水制御以外については、簡略化して記載してある。図2中において、符号Oは、オープンの意味であり、開放状態を表し、符号Cは、クローズの意味であり、閉止状態を表す。
【0059】
初期状態では、処理槽7に純水が貯留されているものとする。処理槽7には、噴出管7から上方に向けて純水が供給されている。0~t1時点では、基板Wを載置したリフタ13は、チャンバ3の外部に相当する第1の高さH1に位置している。また、開閉弁25が開放され、第1のノズル15からチャンバ3内に窒素ガスが供給されている。
【0060】
制御部111は、t1時点においてリフタ13を第3の高さ位置H3に下降させる。これにより、リフタ13に載置された基板Wが純水により洗浄される。この状態をt6時点まで維持して、純水洗浄処理を行う。純水洗浄処理により、基板Wに付着していたパーティクルや処理液が基板Wから除去される。
【0061】
制御部111は、t2時点で開閉弁25を閉止して窒素ガスの供給を停止する。さらに、制御部111は、t2時点で減圧開閉弁47を第1の流量で開放する。制御部111は、同時に水封式真空ポンプ45を動作させる。制御部111は、この状態をt11時点まで維持する。これにより、チャンバ3内が所定の処理圧力まで減圧される。このとき、排水タンク57には、排出管55から窒素ガスと水封水とが排出される。排水タンク57内の水封水は、循環配管75を通って熱交換器77で冷却され、水封水として水封式真空ポンプ45に再び供給される。
【0062】
制御部111は、チャンバ3内がある程度減圧された状態であるt3時点にて、開閉弁31を開放する。開閉弁31が開放されると、チャンバ3内に第2のノズル17からIPA蒸気が供給される。この状態をt7時点まで継続する。
【0063】
制御部111は、例えば、t4時点において、副減圧開閉弁97を第2の流量で開放する。この状態をt5時点まで維持する。つまり、制御部111は、副減圧開閉弁97をt5時点で閉止する。第2の流量は、チャンバ3を減圧する第1の流量よりも大流量である。これにより、下部タンク79内が減圧される。第2の流量が第1の流量よりも大流量であるので、下部タンク79は、チャンバ3よりも低い圧力にまで減圧される。
【0064】
制御部111は、t6時点において、リフタ13を第2の高さH2に上昇させる。これにより、リフタ13に保持された基板Wがチャンバ3の処理槽7の純水液面を切って上昇される。制御部111は、リフタ13を第2の高さH2にt10時点まで維持する。これにより、基板Wに対して置換処理が行われる。具体的には、基板Wに付着した純水が水溶性溶剤であるIPA蒸気によるIPAで置換される。置換処理の間も、水封式真空ポンプ45による減圧が継続されている。したがって、排水タンク57には、IPAが溶け込んだ水封水が排出管55から排出される。
【0065】
制御部111は、t6時点において、リフタ13を第2の高さH2に上昇させるとともに急速排液弁11を開放する。これにより、処理槽7内の純水がチャンバ3の下部に短時間で排出される。
【0066】
制御部111は、t6時点において、開閉弁37を開放する。これにより、チャンバ3内には、第3のノズル19から撥水剤の蒸気が供給され、撥水化処理が行われる。これにより、リフタ13に保持された基板Wの表裏面及び端面が疎水化される。つまり、純水をIPAで置換された基板Wの全体に撥水剤が付着し、基板Wの全体が疎水化される。これにより基板Wに残っていた純水や水溶性の溶剤が基板Wから離脱しやすくできる。
【0067】
制御部111は、t7時点にて、開閉弁31を閉止する。これにより、第2のノズル17からチャンバ3内へのIPA蒸気が遮断される。
【0068】
制御部111は、t8からt9時点にわたって、開閉弁83を開放する。これにより、チャンバ3の下部に貯留していた、IPAや撥水剤を含む純水が下部タンク79に排出される。下部タンク79は、t4からt5時点において、チャンバ3よりも低い圧力にまで減圧されている。したがって、減圧状態のチャンバ3であっても、貯留している純水が下部タンク79へ円滑に排出される。
【0069】
このようにチャンバ3の下部に貯留している純水を下部タンク79に排出する。したがって、減圧されているチャンバ3の下部から水分が蒸発して基板Wに付着し、乾燥を妨げる不都合を回避できる。
【0070】
制御部111は、t10時点において、開閉弁37を閉止する。これにより、チャンバ3内への撥水剤の供給が停止される。したがって、基板Wへの撥水化処理が終了する。
【0071】
制御部111は、t10時点において、開閉弁25を開放して第1のノズル15からチャンバ3内に窒素ガスを供給する。この窒素ガスの供給は、t13時点で次の基板Wが搬入されるまで継続される。このときの窒素ガスの流量は、水封式真空ポンプ45による排気の流量と同程度である。したがって、チャンバ3内は、加圧も減圧もされない状態で、大気圧程度の圧力に戻される。換言すると、チャンバ3内は、大気圧に開放される。但し、水封式真空ポンプ45によるチャンバ3内の排気動作は継続されている。制御部111は、リフタ13を第1の高さH1に上昇させる。これにより、処理を終えた基板Wは、チャンバ3の外部へ搬出される。
【0072】
なお、基板Wが搬出された後も、水封式真空ポンプ45の動作はt11時点まで継続されている。このとき、図3に示すように、チャンバ3に第1ノズル15から窒素ガスが供給され、水封式真空ポンプ45は、チャンバ3内の気体を排出している。したがって、チャンバ3内を減圧することなく、排水タンク57の水封水を循環させることができる。これにより、図3に示すように、循環配管75を介してIPAや撥水剤を含む水封水が排水タンク57に循環される。このとき、熱交換器77で水封水が冷却されるので、水封式真空ポンプ45の動作に伴って昇温した水封水が冷却される。そのため、水封水を循環させても水封式真空ポンプ45の動作に悪影響が生じない。また、水封水には、IPAや撥水剤が含まれている。そのため、冷却により水溶性溶剤や撥水剤が効率的に濃縮される。
【0073】
制御部111は、上記のように水封水を循環させた直後のt11時点で水封式真空ポンプ45を停止させる。制御部111は、t11からt12時点にわたって開閉弁73を開放する。これにより、排水タンク57に貯留している水封水の一部が排液設備71に排出される。この水封水は、水溶性溶剤や撥水剤が濃縮され、しかも循環されているので、純水に対して不溶性である撥水剤も撹拌により純水に混合されている。したがって、排水タンク57の下部に設けられた排液管69から水封水を排出しても、撥水剤を適切に排出できる。
【0074】
制御部111は、次の基板Wが搬入されるt13時点より前のt12時点で開閉弁73を閉止している。これにより、次の基板Wがチャンバ3に搬入されると、すぐに封水式真空ポンプ45を動作させてチャンバ3内を減圧し始めることができる。したがって、次の処理を円滑に行うことができる。
【0075】
制御部111は、t12時点で開閉弁73を閉止しているが、液面センサ63が検出した所定の液面レベルに達した場合に、開閉弁73を閉止するようにしてもよい。これにより、水封水を排出し過ぎ、水封水が不足することに起因して水封式真空ポンプ45の動作に悪影響が生じることを回避できる。
【0076】
なお、撥水剤は、純水より軽い。そのため、循環配管75を介して循環させる撹拌を行わない場合には、撥水剤が純水の上部に層をなして分離した状態となる。そのため、この状態で排水タンク57の下部から排水を行うと、撥水剤が排出されない。このような排出を継続すると、排水タンク57内における撥水剤の濃度が高くなって防爆的に問題となる。本実施例によると、適切に撥水剤を排出するので、防爆的な問題を解決できる。また、排液設備71は、撥水剤の濃度が所定値以上である場合を想定して処理する。そのため、撥水剤の濃度があまりに低いと適切に排液処理が行えない恐れがある。本実施例によると撹拌により適切に排液処理を行える。
【0077】
ところで、排水タンク57に貯留している水封水内における撥水剤の濃度を測定する濃度計を設け、その濃度以上となり、かつ、基板Wの処理が終了した時点で水封式真空ポンプ45を停止させて開閉弁73を開放するようにしてもよい。これにより、t10からt11までの循環時間を抑制できる。その結果、撹拌に要する水封式真空ポンプ45の動作時間を短縮できるので、消費電力を抑制できる。撥水剤の濃度は、排水タンク57の上部に撥水剤の濃度を測定する濃度計を設けてもよい。つまり、排水タンク57に貯留している水封水内から揮発した撥水剤の濃度を測定する。
【0078】
なお、上述したt2~t10時点のT1期間が本発明における「減圧ステップ」に相当する。上述したt6~t10時点のT2期間が本発明における「供給ステップ」に相当する。上述したt10~t11時点のT3期間が本発明における「循環ステップ」に相当する。上述したt11~t12時点のT4期間が本発明における「排出ステップ」に相当する。
【0079】
本実施例によると、制御部111は、水封式真空ポンプ45を作動させてチャンバ3内を減圧し、第3のノズル19から撥水剤を供給して基板Wに対する処理を行う。その後、水封式真空ポンプ45によるチャンバ3内の減圧が完了した場合には、開閉弁73を開放して排水タンク57内の水封水の一部を排出する。したがって、排水タンク57内の水封水における撥水剤の濃度が一定以上に高くなることを抑制できる。その結果、撥水剤が水封水に混入する場合であっても防爆的に問題が生じない。
【実施例0080】
次に、図面を参照して本発明の実施例2について説明する。なお、基板処理装置1の構成は、上述した実施例1と同じである。実施例2において実施例1と相違するのは、制御部111による制御である。したがって、図4及び図5を参照して、処理の例についてのみ説明する。
【0081】
図4は、実施例2に係る処理の一例を示すタイムチャートである。図5は、実施例2に係る循環ステップを表した模式図である。
【0082】
実施例2は、制御部111が行うt10~t11のT3期間における制御が上述した実施例1と相違する。制御部111は、チャンバ3内の減圧が完了したt10時点において、減圧開閉弁47を閉止する。さらに、制御部111は、チャンバ3内の減圧が完了したt10時点において、副減圧開閉弁97及び流量調整弁109を開放する。これにより、まず下部タンク79が大気圧に開放される。制御部111は、循環が完了するt11時点において副減圧開閉弁97及び流量調整弁109を閉止する。
【0083】
T3期間では、封水式真空ポンプ45は、下部タンク79内の窒素ガスを排水タンク57に排出する。その間、図5に示すように、循環配管75を水封水が循環される。そして、その直後のt11~t12時点において、開閉弁73が開放され、排水タンク57に貯留している水封水の一部が排液設備71に排出される。
【0084】
本実施例によると、上述した実施例1と同様の効果を奏する。さらに、本実施例によると、制御部111は、循環を行わせる際に、減圧開閉弁47を閉止し、副減圧開閉弁97を開放した状態で、窒素ガス供給源107から不活性ガスを供給させる。したがって、チャンバ3内に影響を与えることなく、水封式真空ポンプ45を作動させて排水タンク57内の水封水を循環させることができる。そのため、例えば、図4に点線で示すように、t10a時点で基板Wをチャンバ3内に搬入し、次の基板Wをチャンバ3内に搬入するタイミングを早めることができる。したがって、スループットの向上が期待できる。
【0085】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0086】
(1)上述した各実施例1,2では、排水タンク57内の液体を循環配管75で循環させた直後に開閉弁73を開放して排出させている。しかしながら、本発明は、このような実施形態に限定されるものではない。例えば、直後でなくとも、所定時間(数分)後に開閉弁73を開放するようにしてもよい。
【0087】
(2)上述した実施例1では、循環を行わせる際に、チャンバ3に窒素ガスを供給している。しかしながら、本発明は、このような形態に限定されない。例えば、チャンバ3に窒素ガスを供給せずにチャンバ3内が負圧となるようにしてもよい。
【0088】
(3)上述した実施例2では、副減圧管95及び下部タンク79を排気して水封水の循環を行っている。しかしながら、本発明は、このような形態に限定されない。例えば、減圧管43に三方弁を設け、チャンバ3に連通する状態と、大気に連通する状態とに切り替え可能にしておく。そして、水封水を循環させる際には、大気に連通する状態に三方弁を切り換えるようにしてもよい。これによると、チャンバ3や下部タンク79に影響を与えることなく循環させることができる。したがって、チャンバ3への基板Wの搬入を前倒しできるとともに、下部タンク79を減圧するタイミングを早めることができる。その結果、スループットの向上を期待できる。
【0089】
(4)上述した各実施例1,2では、排水タンク57が水封式真空ポンプ45の水封水供給口53より高い位置に配置されている。しかしながら、本発明は、この構成に限定されない。例えば、排水タンク57を水封式真空ポンプ45の水封水供給口53より低い位置に配置してもよい。この場合には、循環配管75にポンプを配置して、水封水をポンプで積極的に循環させるようにする。
【0090】
(5)上述した各実施例1,2では、純水に不溶性の溶剤として、ペグミア(PGMEA)を含む撥水剤を例にとって説明した。しかしながら、本発明は、撥水剤にペグミアを含むものに限定されない。
【符号の説明】
【0091】
W … 基板
1 … 基板処理装置
3 … チャンバ
7 … 処理槽
11 … 急速排液弁
13 … リフタ
15 … 第1のノズル
17 … 第2のノズル
19 … 第3のノズル
35 … 撥水剤供給源
43 … 減圧管
45 … 水封式真空ポンプ
47 … 減圧開閉弁
49 … 吸引口
51 … 排出口
53 … 水封水供給口
55 … 排出管
57 … 排水タンク
59 … 水封水供給管
61 … 水封水開閉弁
63 … 液面センサ
65 … 排気管
69 … 排液管
73 … 開閉弁
75 … 循環配管
77 … 熱交換器
79 … 下部タンク
81 … チャンバ排液管
95 … 副減圧管
97 … 副減圧開閉弁
105 … 供給管
109 … 流量調整弁
111 … 制御部
図1
図2
図3
図4
図5