(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176419
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】下部コンポーネント脱着装置及び下部コンポーネント脱着装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
G21C 19/20 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G21C19/20 040
G21C19/20 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088693
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】深田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】栗原 圭祐
(57)【要約】
【課題】モータユニットとモータブラケットだけでなくスプールピースも脱着でき、制御棒駆動機構の脱着作業時間をさらに短縮化できる下部コンポーネント脱着装置を提供する
【解決手段】下部コンポーネント32のいずれか1つである第1コンポーネントを保持する第1治具11aと、下部コンポーネント32のいずれか1つである第2コンポーネントを保持し、第1治具11aに着脱自在の第2治具11bと、下部コンポーネント32のいずれか1つである第3コンポーネントを保持し、第1治具11aに着脱自在の第3治具11cと、第1治具11aを昇降可能に支持し、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの少なくとも1つをスプールピース32aが脱着可能な高さまで上昇可能な支持部12と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御棒駆動機構本体、スプールピース、モータブラケット及びモータユニットを含み制御棒を駆動する制御棒駆動機構のコンポーネントのうち、前記スプールピース、前記モータブラケット及び前記モータユニットからなる下部コンポーネントを原子炉圧力容器から脱着するための下部コンポーネント脱着装置であって、
前記下部コンポーネントのいずれか1つである第1コンポーネントを保持する第1治具と、
前記下部コンポーネントのいずれか1つである第2コンポーネントを保持し、前記第1治具に着脱自在の第2治具と、
前記下部コンポーネントのいずれか1つである第3コンポーネントを保持し、前記第1治具に着脱自在の第3治具と、
前記第1治具を昇降可能に支持し、前記第1治具、前記第2治具及び前記第3治具の少なくとも1つを前記スプールピースが脱着可能な高さまで上昇可能な支持部と、
を備えることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記第1治具、前記第2治具及び前記第3治具の少なくとも1つには、前記下部コンポーネントに含まれるコンポーネントをその上方のコンポーネントに結合する複数の結合部品の脱着工具を挿し込むための貫通孔が設けられていることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項3】
請求項1に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記第1治具、前記第2治具及び前記第3治具の少なくとも1つには、複数のピンが設けられており、
前記下部コンポーネントのうち前記複数のピンが設けられた治具によって保持されるコンポーネントには複数の貫通孔が設けられており、
前記複数のピンは、前記複数の貫通孔に挿入され得ることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項4】
請求項1に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記支持部を前記原子炉圧力容器の下方のプラットフォーム上を自在に移動させる移動部を備えることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記移動部には、所定の平面に沿って前記支持部を移動可能なスライドテーブルと、上下方向を中心に前記支持部を回転可能な回転テーブルの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項6】
請求項1に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記支持部は、複数の重なり合った筒が上下に伸び縮みする複数の多段シリンダを備えることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項7】
請求項6に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記複数の多段シリンダは、空気圧により伸縮することを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項8】
請求項4に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記移動部には車輪と把持部が設けられ、
前記支持部の昇降を操作する操作装置が搭載されていることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項9】
請求項2に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記複数の結合部品の各々がボルトであることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項10】
請求項4に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記移動部は、前記プラットフォーム上を走行する自在首振り車輪を備えることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項11】
請求項1に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記原子炉圧力容器から取り外された前記下部コンポーネントを運搬する運搬台車を備える下部コンポーネント脱着装置。
【請求項12】
請求項6に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記複数の多段シリンダの上端に前記第1治具の傾きを吸収する傾き吸収部が設けられていることを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項13】
請求項1に記載の下部コンポーネント脱着装置であって、
前記第1治具、前記第2治具及び前記第3治具の各々の横幅が、前記原子炉圧力容器の下部に設けられた複数の制御棒駆動機構の隣り合う2つの制御棒駆動機構の間隔よりも小さいことを特徴とする下部コンポーネント脱着装置。
【請求項14】
制御棒駆動機構本体、スプールピース、モータブラケット及びモータユニットを含み制御棒を駆動する制御棒駆動機構のコンポーネントのうち、前記スプールピース、前記モータブラケット及び前記モータユニットからなる下部コンポーネントを原子炉圧力容器から脱着するための下部コンポーネント脱着装置の使用方法であって、
前記下部コンポーネントのうち脱着対象のコンポーネントをその上方のコンポーネントに結合させる複数の結合部品を挿入するための複数の貫通孔が前記脱着対象のコンポーネントに設けられており、
前記下部コンポーネント脱着装置は、
前記脱着対象のコンポーネントを保持する治具と、
前記治具を昇降可能に支持し、前記脱着対象のコンポーネントが脱着可能な高さまで前記治具を上昇可能な支持部と、を備え、
前記治具を利用して前記脱着対象のコンポーネントを脱着するに際して、
前記複数の貫通孔のうち対角線上に位置する2つの貫通孔に前記結合部品が挿入され、残りの貫通孔からは前記結合部品が外された状態で、前記脱着対象のコンポーネントを前記治具で保持し、
前記脱着対象のコンポーネントを保持する前記治具を前記支持部で昇降させ、
前記脱着対象のコンポーネントに対する前記結合部品の取り外しまたは取り付けを行うことで前記脱着対象のコンポーネントを脱着する
ことを特徴とする下部コンポーネント脱着装置の使用方法。
【請求項15】
請求項14に記載の下部コンポーネント脱着装置の使用方法において、
前記治具を利用して前記脱着対象のコンポーネントを脱着するに際して、
前記複数の貫通孔のうち対角線上に位置する2つの貫通孔に前記結合部品が挿入され、残りの貫通孔からは前記結合部品が外された状態で、前記治具の上面に設けられた複数のピンを前記残りの貫通孔に挿入して前記脱着対象のコンポーネントを前記複数のピンで保持し、
前記脱着対象のコンポーネントを保持する前記治具を前記支持部で昇降させ、
前記脱着対象のコンポーネントに対する前記結合部品の取り外しまたは取り付けを行うことで前記脱着対象のコンポーネントを脱着する
ことを特徴とする下部コンポーネント脱着装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒駆動機構本体の下部に位置するスプールピース、モータブラケット及びモータユニットからなる下部コンポーネントを脱着するための装置である下部コンポーネント脱着装置及び下部コンポーネント脱着装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)では、制御棒駆動機構本体、モータユニット、モータブラケット及びスプールピースを備え、制御棒の微小駆動を可能とする電動駆動方式の改良型制御棒駆動機構(FMCRD:Fine Motion Control Rod Drivemechanism)が採用されている。
【0003】
この改良型制御棒駆動機構は、原子炉の定期検査の際には保守点検のために、原子炉圧力容器下部から取り外され、再び原子炉圧力容器下部に取付けられる。この改良型制御棒駆動機構の脱着作業は放射線量の高い場所で行われるため短時間に行うことが必要となる。
【0004】
これに対応するため、特許文献1には、制御棒駆動機構本体(以下、駆動機構本体という。)用の大型の脱着装置(交換機)とは別に小型の脱着装置として補助取扱台車を設け、制御棒駆動機構を構成するコンポーネントであって駆動機構本体の下部に備わるコンポーネント(以下、下部コンポーネントという。)のうち、モータユニットとモータブラケットの脱着を当該補助取扱台車で行うことで、脱着作業時間の短縮を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御棒駆動機構の下部コンポーネントには、モータユニットとモータブラケットの他、駆動機構本体に結合されるスプールピースが含まれ得る。しかしながら、特許文献1では、駆動機構本体と結合するスプールピースの脱着には、従前と同じように駆動機構本体用の脱着装置(交換機)を利用している(段落0073)。つまり、特許文献1では、スプールピースの脱着に複雑な手順を踏む必要があるため、作業時間短縮に改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、モータユニットとモータブラケットだけでなくスプールピースも脱着でき、制御棒駆動機構の脱着作業時間をさらに短縮化できる下部コンポーネント脱着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、制御棒駆動機構本体、スプールピース、モータブラケット及びモータユニットを含み制御棒を駆動する制御棒駆動機構のコンポーネントのうち、前記スプールピース、前記モータブラケット及び前記モータユニットからなる下部コンポーネントを原子炉圧力容器から脱着するための下部コンポーネント脱着装置であって、前記下部コンポーネントのいずれか1つである第1コンポーネントを保持する第1治具と、前記下部コンポーネントのいずれか1つである第2コンポーネントを保持し、前記第1治具に着脱自在の第2治具と、前記下部コンポーネントのいずれか1つである第3コンポーネントを保持し、前記第1治具に着脱自在の第3治具と、前記第1治具を昇降可能に支持し、前記第1治具、前記第2治具及び前記第3治具の少なくとも1つを前記スプールピースが脱着可能な高さまで上昇可能な支持部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動機構本体の脱着装置を使用することなくスプールピースを脱着でき、制御棒駆動機構の脱着作業時間をさらに短縮化できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置により下部コンポーネントを制御棒駆動機構から脱着させる状態を示す概略側面図である。
【
図2】制御棒駆動機構の下部コンポーネントの分解図である。
【
図5】下部コンポーネントを高位に支持する本発明の第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置の概略側面図である。
【
図6】下部コンポーネントを下位に支持する本発明の第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置の概略側面図である。
【
図7】モータユニットと、モータユニットを保持する第1治具と、第1治具を支持する支持部の斜視図である。
【
図8】モータブラケットと、モータブラケットを保持し、第1治具に着脱自在の第2治具と、第1治具を支持する支持部の斜視図である。
【
図9】スプールピースと、スプールピースを保持し、第1治具に着脱自在の第3治具と、第1治具を支持する支持部の斜視図である。
【
図10】下部コンポーネントを高位に支持する本発明の第2実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置の概略側面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置により下部コンポーネントを制御棒駆動機構から脱着させる状態を示す概略側面図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置により下部コンポーネントを制御棒駆動機構から脱着させる状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の第1実施形態~第4実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置の構成及び動作について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置により下部コンポーネントを制御棒駆動機構から脱着させる状態を示す概略側面図である。
【0013】
下部コンポーネント脱着装置1は、
図1に示すように原子炉圧力容器2の下部に設けられた制御棒駆動機構3の下部コンポーネント32を脱着する装置であり、詳細については後述する。
【0014】
原子炉圧力容器2は燃料集合体を収める円筒状の鋼鉄の構造物で、例えば改良型沸騰水型軽水炉の原子炉格納容器内のペデスタル4に囲まれて形成された円筒状のペデスタル空間5上に設けられている。原子炉圧力容器2の下部には、複数のハウジング21が下方に突出している。
【0015】
制御棒駆動機構3は、燃料集合体の中央に配置される制御棒を炉心に出し入れし核分裂を制御するする装置で、通常は後述するモータユニット32cの動力により制御棒を炉心に出し入れし、異常時には水圧により一気に制御棒を炉心に挿入する。制御棒駆動機構3は、駆動機構本体31と下部コンポーネント32とを備える。
【0016】
駆動機構本体31は制御棒を把持し移動させるコンポーネントでハウジング21内に収納され、駆動機構本体31の下端がハウジング21の下部とフランジ締結されている。
【0017】
下部コンポーネント32は、駆動機構本体31の下方に設けられた複数のコンポーネントである。
図2は、制御棒駆動機構3の下部コンポーネント32の分解図である。
図2に示すように、下部コンポーネント32はスプールピース32aとモータブラケット32bとモータユニット32cを備える。
【0018】
図3は、スプールピース32aの斜視図である。スプールピース32aは、モータユニット32cによって発生する回転力を駆動機構本体31へ伝達するコンポーネントである。スプールピース32aの上端には、フランジ部32aaが設けられ、フランジ部32aaには、上下に貫通する複数の貫通孔32abが設けられている。
【0019】
複数の貫通孔32abには、結合部品(ボルトが好ましい。)が下方から挿し込まれ、駆動機構本体31の下部のボルト穴(図示せず)に螺合する。これにより、スプールピース32aは駆動機構本体31に結合される。
【0020】
モータブラケット32bは、スプールピース32aとモータユニット32cを接続する円筒状のコンポーネントで、中央にはモータユニット32cから突出するシャフト32caを挿し込むための貫通孔(図示せず)が設けられている。また、
図2に示すように、モータブラケット32bの本体32baには、上下に貫通する複数の貫通孔32bbが設けられている。
【0021】
複数の貫通孔32bbには、結合部品(ボルトが好ましい。)が下方から挿し込まれ、スプールピース32aの下面に設けられたボルト穴32acに螺合する。これにより、モータブラケット32bはスプールピース32aに結合される。
【0022】
図4は、モータユニット32cの斜視図である。モータユニット32cは駆動源である電動機を内部に有するコンポーネントで、
図4に示すように、上端面から出力軸であるシャフト32caが突出している。モータユニット32cの上部には、フランジ部32cbが設けられ、フランジ部32cbには、上下に貫通する複数の貫通孔32ccが設けられている。
【0023】
複数の貫通孔32ccには、結合部品(ボルトが好ましい。)が下方から挿し込まれ、モータブラケット32bのフランジ部32bcの下面に設けられたボルト穴32bd(
図2参照)に螺合する。これにより、モータユニット32cはモータブラケット32bに結合される。
【0024】
下部コンポーネント脱着装置1は、
図1に示すように、ペデスタル空間5の原子炉圧力容器2下方に備わり遠隔操作により上下方向を中心に回転可能なプラットフォーム6上に敷設されたレール7上に配置されている。下部コンポーネント脱着装置1は、下部コンポーネント32を保持する保持治具11(第1治具11aと第2治具11bと第3治具11c)と、支持部12とを備えている。
【0025】
図5は、下部コンポーネント32(スプールピース32a)を高位に支持する本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置1の概略側面図である。
図6は、下部コンポーネント32(スプールピース32a)を下位に支持する本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置1の概略側面図である。
【0026】
また、
図7は、モータユニット32cと、モータユニット32cを保持する第1治具11aと、第1治具を支持する支持部12の斜視図である。
図8は、モータブラケット32bと、モータブラケット32bを保持し第1治具11aに着脱自在の第2治具11bと、第1治具11aを支持する支持部12の斜視図である。
図9は、スプールピース32aと、スプールピース32aを保持し第1治具11aに着脱自在の第3治具11cと、第1治具11aを支持する支持部12の斜視図である。
【0027】
下部コンポーネント脱着装置1は、下部コンポーネント32のいずれかを保持する保持治具11と、保持治具11を支持する支持部12とを備える。また、保持治具11は、第1治具11aと第2治具11bと第3治具11cとを備える。
【0028】
第1治具11aは下部コンポーネント32のいずれか(本実施形態ではモータユニット32c)を保持する保持治具11である。
図7に示すように、第1治具11aは、円板状の部材の中央の貫通孔(図示せず)に挿入されたモータユニット32cを、モータユニット32cの上側に設けられたフランジ部32cbを上面で保持する。
【0029】
第1治具11aの上面は、モータユニット32cのフランジ部32cbに設けられた複数の貫通孔32cc(例えば、対角線上の2つの貫通孔32ccを除いた複数の貫通孔32cc)に挿し込まれる複数のピン(図示せず)を備えることが好ましい。
【0030】
また、第1治具11aには、円板の外周面から外径方向に突出する2つの突出部11aaが中央の貫通孔を挟んで左右対称に設けられることが好ましい。2つの突出部11aaの各々の下面には、後述する支持部12を形成する2本の多段シリンダ12aの上端が結合する。
【0031】
第2治具11bは下部コンポーネント32のいずれか(本実施形態ではモータブラケット32b)を保持する保持治具11である。
図8に示すように、第2治具11bは円板で、第2治具11bの上面には、外周に沿って上方に突出する2つの扇形突起11baと、モータブラケット32bの本体32baに設けられた複数の貫通孔32bbのうち、例えば、対角線上の2つの貫通孔32bbを除く複数の貫通孔32bbに挿し込まれる複数のピン(図示せず)を備えることが好ましい。
【0032】
また、第2治具11bは、第1治具11aに着脱自在になっており、第1治具11aの上面に設けられた複数のピン(図示せず)を挿し込むための複数の貫通孔(図示せず)を備えることが好ましい。
【0033】
モータブラケット32bは、対角線上の2つの貫通孔32bbを除く複数の貫通孔32bbに、第2治具11bの上面に設けられた複数のピン(図示せず)が挿入され、第2治具11bの上面と2つの扇形突起11baとにより保持される。
【0034】
第3治具11cは下部コンポーネント32のいずれか(本実施形態ではスプールピース32a)を保持する保持治具11で、第1治具11aに着脱自在になっている。
図9に示すように、第3治具11cは円板状の部材で、中央の円孔11caと、円孔11caを挟んで左右対称に設けられ円孔11caと連通する2つの扇型の工具挿込孔11cbと、円孔11caの周囲の上面から上方に突出する複数のピン11ccと、第1治具11aの上面に設けられた複数のピン(図示せず)を挿し込むための複数の貫通孔(図示せず)とを備えることが好ましい。
【0035】
中央の円孔11caには、スプールピース32aが挿入される。2つの工具挿込孔11cbは、スプールピース32aを保持した状態で、スプールピース32aを駆動機構本体31に結合する複数(本実施形態では対角線上の2つ)の結合部品を脱着するため工具を挿し込むための貫通孔である。
【0036】
複数のピン11ccは、スプールピース32aのフランジ部32aaに設けられた複数の貫通孔32abのうち、例えば、対角線上の2つの貫通孔32abを除く複数の貫通孔32abに先端が挿し込まれることが好ましい。
【0037】
また、複数のピン11ccには、上下方向の略中央に鍔状の突起部11cd(
図5,6,9参照)が設けられている。突起部11cdは、中央の円孔11caに挿入されたスプールピース32aの上端に備わるフランジ部32aaに下面に当接し、スプールピース32aを支持する。
【0038】
第3治具11cのこれらの構成により、スプールピース32aは第3治具11cにより保持される。
【0039】
なお、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの各々の横幅は、原子炉圧力容器2の下部に設けられた複数の制御棒駆動機構3の隣り合う2つの制御棒駆動機構3の間隔よりも小さいことが好ましい。
【0040】
支持部12は、第1治具11aを昇降可能に支持し、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの少なくとも1つ(本実施形態では第3治具11c)を下部コンポーネント32のうち最も高位にあるスプールピース32aが脱着可能な高さ(駆動機構本体31とスプールピース32aの結合部)まで上昇可能な部品である。
【0041】
支持部12は、
図5,6に示すように、例えば、複数の重なり合った筒が上下に伸び縮みする複数(本実施形態では2本)の多段シリンダ12aを備えることが好ましい。また、複数の多段シリンダ12aは、空気圧により伸縮することが好ましい。また、下部コンポーネント脱着装置1には、支持部12の昇降を操作する操作装置(図示せず)が搭載されていることが好ましい。
【0042】
また、下部コンポーネント脱着装置1は、
図1,5,6に示すように、支持部12を原子炉圧力容器2の下方のプラットフォーム6上を自在に移動させる移動部13を備えることが好ましい。
【0043】
移動部13は、
図5,6に示すように、プラットフォーム6上に敷設させたレール7に沿って人力により移動可能なフランジ付車輪13aaと、作業者が下部コンポーネント脱着装置1を移動させるための把持部13acと有する台車13aを備えることが好ましい。また、台車13aには、下部コンポーネント32の下方に移動させた台車13aを固定させるストッパ13abが設けられていることが好ましい。
【0044】
また、移動部13には、所定の平面に沿って支持部12を移動可能であるとともに位置決め可能なスライドテーブル13bと、上下方向を中心として支持部12を回転可能であるとともに回転角度を位置決め可能な回転テーブル13cの少なくとも1つが設けられているが好ましい。なお、本実施形態のスライドテーブル13bは、台車13aのスライドテーブル13bを載置した平面に沿って支持部12を移動可能とする。
【0045】
本実施形態では、スライドテーブル13bは台車13a上に固定され、回転テーブル13cはスライドテーブル13b上に固定され、支持部12の下端は回転テーブル13c上に固定されている。
【0046】
また、スライドテーブル13bは、スライドさせたテーブルを位置決めするためのストッパ(図示せず)を備えることが好ましく、回転テーブル13cは、ス回転させたテーブルの回転角度を位置決めするためのストッパ(図示せず)を備えることが好ましい。
【0047】
次に、本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置1の使用方法について説明する。
【0048】
最初に、下部コンポーネント32を原子炉圧力容器2から取り外す場合の下部コンポーネント脱着装置1の使用方法について説明する。
【0049】
まず、プラットフォーム6上に敷設されたレール7が、取り外すモータユニット32cの下方を通過するようにプラットフォーム6を遠隔操作により回転させる。
【0050】
次いで、台車13aに取りつけられた把持部13acを人力で押してレール7に沿って下部コンポーネント脱着装置1を取り外すモータユニット32cの直下に移動させ、ストッパ13abにより台車13aを固定する。
【0051】
次いで、モータユニット32cをモータブラケット32bに結合させる複数のボルトのうち、対角線上に配置された2本のボルトを除いた複数のボルトを、工具(例えば、長尺な六角ディープソケット)を用いて外す。
【0052】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1に備わる操作装置により支持部12に圧縮空気を注入して支持部12を伸ばし、第1治具11aによってモータユニット32cを保持させる。
【0053】
このとき、第1治具11aを周囲の制御棒駆動機構3と干渉させることなく、第1治具11aの中央の円孔(図示せず)にモータユニット32cを挿し込み、モータユニット32cをモータブラケット32bに結合させる複数のボルトを取り外したモータユニット32cの貫通孔32ccに第1治具11aの上面に設けられた複数のピンを挿し込むとともに、モータユニット32cをモータブラケット32bに結合する2本のボルトを第1治具11aの工具挿込孔(図示せず)から取り外せるように、スライドテーブル13bと回転テーブル13cにより支持部12の位置と向きを微調整する。
【0054】
モータユニット32cが第1治具11aの中央の円孔に挿し込まれ、第1治具11aの上面に設けられた複数のピンがモータユニット32cの貫通孔32ccに挿し込まれ、フランジ部32cbが第1治具11aの表面に当接し、モータユニット32cが保持されたことを確認した後に支持部12を伸ばすことを停止し第1治具11aの高さを固定する。
【0055】
次いで、第1治具11aの工具挿込孔に工具を挿し込んでモータユニット32cをモータブラケット32bに結合させる2本のボルトを取り外し、原子炉圧力容器2から取り外す。
【0056】
次いで、支持部12を縮めてモータユニット32cを降下させる。そして、プラットフォーム6を遠隔操作により旋回させ、下部コンポーネント32の保守点検を行う補修室8(
図1参照)に下部コンポーネント脱着装置1をレール7に沿って移動させ、モータユニット32cを下部コンポーネント脱着装置1から降ろす。
【0057】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1をプラットフォーム6上のレール7上に戻した後、取り外すモータブラケット32bの下方をレール7が通過するようにプラットフォーム6を遠隔操作により旋回させる。
【0058】
次いで、レール7に沿って下部コンポーネント脱着装置1を、取り外すモータブラケット32bの直下に人力により移動させ、ストッパ13abにより台車13aを固定する。
【0059】
次いで、モータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる複数のボルトのうち、対角線上に配置された2本のボルトを除いたボルトを、工具(例えば、長尺な六角ディープソケット)を用いて外す。
【0060】
次いで、第1治具11aの上面に設けられた複数のピンを第2治具11bに設けられた複数の貫通孔に挿入させて第1治具11aに第2治具11bを取り付ける。
【0061】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1に備わる操作装置により支持部12に圧縮空気を注入して支持部12を伸ばし、第2治具11bによってモータブラケット32bを保持させる。
【0062】
このとき、第1治具11aと第2治具11bとを周囲の制御棒駆動機構3と干渉させることなく、第2治具11bの2つの扇形突起11baの間にモータブラケット32bのフランジ部32bcが挿し込まれ、モータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる複数のボルトを取り外した後のモータブラケット32bの貫通孔32bbに第2治具11bの上面に設けられた複数のピン(図示せず)を挿し込むとともに、モータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる2本のボルトを第2治具11bの工具挿込孔(図示せず)から取り外せるように、スライドテーブル13bと回転テーブル13cにより支持部12の位置と向きを微調整する。
【0063】
第2治具11bの2つの扇形突起11baの間にモータブラケット32bのフランジ部32bcが挿し込まれ、第2治具11bの上面に設けられた複数のピンがモータブラケット32bの貫通孔32bbに挿し込まれ、フランジ部32bcの下面が第2治具11bの表面に当接し、モータブラケット32bが第2治具11bにより保持されたことを確認した後に支持部12を伸ばすことを停止し第2治具11bの高さを固定する。
【0064】
次いで、第2治具11bの工具挿込孔に工具を挿し込んでモータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる2本のボルトを取り外し、原子炉圧力容器2から取り外す。
【0065】
次いで、支持部12を縮めてモータブラケット32bを降下させる。そして、プラットフォーム6を遠隔操作により旋回させ、下部コンポーネント32の保守点検を行う補修室に下部コンポーネント脱着装置1をレール7に沿って移動させ、モータブラケット32bを下部コンポーネント脱着装置1から降ろす。
【0066】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1をプラットフォーム6上のレール7上に戻した後、取り外すスプールピース32aの下方をレール7が通過するようにプラットフォーム6を遠隔操作により旋回させる。
【0067】
次いで、レール7に沿って下部コンポーネント脱着装置1を人力により取り外すスプールピース32aの直下に移動させ、ストッパ13abにより台車13aを固定する。
【0068】
次いで、スプールピース32aを駆動機構本体31に結合させる複数のボルトのうち、対角線上に配置された2本のボルトを除いたボルトを、工具(例えば、長尺な六角ディープソケット)を用いて外す。
【0069】
次いで、第2治具11bを第1治具11aから取り外した後に、第1治具11aの上面に設けられた複数のピンを第3治具11cに設けられた複数の貫通孔に挿入させて第1治具11aに第3治具11cを取り付ける。
【0070】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1に備わる操作装置により支持部12に圧縮空気を注入して支持部12を伸ばし、第3治具11cによってスプールピース32aを保持させる。
【0071】
このとき、第1治具11aと第3治具11cとを周囲の制御棒駆動機構3に干渉させることなく、第3治具11cの中央の円孔11caにスプールピース32aが挿し込まれ、スプールピース32aを駆動機構本体31に結合させる複数のボルトを取り外した後のスプールピース32aの貫通孔32abに第3治具11cの上面に設けられた複数のピン11cc(
図9参照)を挿し込むとともに、スプールピース32aを駆動機構本体31に結合させる2本のボルトを第3治具11cの工具挿込孔11cb(
図9参照)から取り外せるように、スライドテーブル13bと回転テーブル13cにより支持部12の位置と向きを微調整する。
【0072】
第3治具11cの中央の円孔11caにスプールピース32aが挿し込まれ、第3治具11cの上面に設けられた複数のピン11ccがスプールピース32aの貫通孔32abに挿し込まれ、フランジ部32aaの下面が第3治具11cの複数のピン11ccに設けられた突起部11cdの上端に当接し、スプールピース32aが第3治具11cにより保持されたことを確認した後に支持部12を伸ばすことを停止し第3治具11cの高さを固定する。
【0073】
次いで、第3治具11cの工具挿込孔11cbに工具を挿し込んでスプールピース32aを駆動機構本体31に結合させる2本のボルトを取り外し、原子炉圧力容器2から取り外す。
【0074】
次いで、支持部12を縮めてスプールピース32aを降下させる。そして、プラットフォーム6を遠隔操作により旋回させ、補修室8に下部コンポーネント脱着装置1をレール7に沿って移動させ、スプールピース32aを下部コンポーネント脱着装置1から補修室に降ろす。
【0075】
上記の下部コンポーネント脱着装置1の使用方法により、下部コンポーネント32の各々は原子炉圧力容器2から取り外される。
【0076】
次に、下部コンポーネント32を原子炉圧力容器2に取り付ける場合の下部コンポーネント脱着装置1の使用方法について説明する。
【0077】
まず、補修室で保守点検されたスプールピース32aの貫通孔32abを、下部コンポーネント脱着装置1の縮められた支持部12の上端に備わる第1治具11aに取り付けられた第3治具11cの上面に設けられた複数のピン11ccに挿し込み、スプールピース32aを第3治具11cで保持する。
【0078】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1をプラットフォーム6上のレール7上に戻し、スプールピース32aを取り付ける駆動機構本体31の下方をレール7が通過するようにプラットフォーム6を遠隔操作により旋回させる。
【0079】
次いで、レール7に沿って下部コンポーネント脱着装置1を人力によりスプールピース32aを取り付ける駆動機構本体31の直下に移動させ、ストッパ13abにより台車13aを固定する。
【0080】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1に備わる操作装置により支持部12に圧縮空気を注入して支持部12を伸ばし、スプールピース32aを駆動機構本体31の下端まで上昇させる。
【0081】
このとき、第1治具11aと第3治具11cとを周囲の制御棒駆動機構3に干渉させることなく、スプールピース32aを駆動機構本体31の下端まで上昇させ、2本のボルトを第3治具11cの工具挿込孔11cb(
図9参照)からスプールピース32aのフランジ部32aaに設けられた上下に貫通する貫通孔32abを介して駆動機構本体31の下面に設けられた対角線上の2つのボルト穴(図示せず)に取り付けられるように、スライドテーブル13bと回転テーブル13cにより支持部12の位置と向きを微調整する。
【0082】
次いで、2本のボルトを第3治具11cの工具挿込孔11cbからスプールピース32aの貫通孔32abを介して駆動機構本体31の下面の対角線上の2つのボルト穴に螺合させて、スプールピース32aを駆動機構本体31に結合させる。
【0083】
次いで、支持部12を縮めて第3治具11cを降下させ、駆動機構本体31の下面の残りのボルト穴にスプールピース32aの貫通孔32abを介してボルトを螺合させ、スプールピース32aを駆動機構本体31に結合させる。
【0084】
次いで、プラットフォーム6を遠隔操作により旋回させ、補修室8に下部コンポーネント脱着装置1をレール7に沿って移動させる。
【0085】
次いで、第3治具11cを第1治具11aから取り外した後に、第1治具11aの上面に設けられた複数のピンを第2治具11bに設けられた複数の貫通孔に挿入させて第1治具11aに第2治具11bを取り付ける。
【0086】
次いで、保守点検されたモータブラケット32bの貫通孔32bbを、第2治具11bの上面に設けられた複数のピン(図示せず)に挿し込み、モータブラケット32bを第2治具11bで保持する。
【0087】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1をプラットフォーム6上のレール7上に戻し、モータブラケット32bを取り付けるスプールピース32aの下方をレール7が通過するようにプラットフォーム6を遠隔操作により旋回させる。
【0088】
次いで、レール7に沿って下部コンポーネント脱着装置1を人力によりモータブラケット32bを取り付けるスプールピース32aの直下に移動させ、ストッパ13abにより台車13aを固定する。
【0089】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1に備わる操作装置により支持部12に圧縮空気を注入して支持部12を伸ばし、モータブラケット32bをスプールピース32aの下端まで上昇させる。
【0090】
このとき、第1治具11aと第2治具11bとを周囲の制御棒駆動機構3に干渉させることなく、モータブラケット32bをスプールピース32aの下端まで上昇させ、モータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる複数のボルトを取り外した後のモータブラケット32bの貫通孔32bbに第2治具11bの上面に設けられた複数のピン(図示せず)を挿し込むとともに、2本のボルトを第2治具11bの工具挿込孔(図示せず)からモータブラケット32bの本体32baに設けられた上下に貫通する貫通孔32bbを介してスプールピース32aの下面に設けられた対角線上の2つのボルト穴32ac(
図2参照)に取り付けられるように、スライドテーブル13bと回転テーブル13cにより支持部12の位置と向きを微調整する。
【0091】
次いで、モータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる複数のボルトを取り外した後のモータブラケット32bの貫通孔32bbに第2治具11bの上面に設けられた複数のピン(図示せず)を挿し込む。
【0092】
次いで、2本のボルトを第2治具11bの工具挿込孔からモータブラケット32bの本体32baに設けられた貫通孔32bbを介してスプールピース32aの下面の対角線上の2つのボルト穴32acに螺合させて、モータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる。
【0093】
次いで、支持部12を縮めて第2治具11bを降下させ、スプールピース32aの下面の残りのボルト穴32acにモータブラケット32bの貫通孔32bbを介してボルトを螺合させ、モータブラケット32bをスプールピース32aに結合させる。
【0094】
次いで、プラットフォーム6を遠隔操作により旋回させ、補修室に下部コンポーネント脱着装置1をレール7に沿って移動させる。補修室では縮められた支持部12の上端に備わる第1治具11aに組み付いた第2治具11bを取り外す。
【0095】
次いで、保守点検されたモータユニット32cの貫通孔32cc(
図4参照)を、第1治具11aの上面に設けられた複数のピン(図示せず)に挿し込み、モータユニット32cを第1治具11aで保持する。
【0096】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1をプラットフォーム6上のレール7上に戻した後に、モータユニット32cを取り付けるモータブラケット32bの下方をレール7が通過するようにプラットフォーム6を遠隔操作により旋回させる。
【0097】
次いで、レール7に沿って下部コンポーネント脱着装置1を人力によりモータユニット32cを取り付けるモータブラケット32bの直下に移動させ、ストッパ13abにより台車13aを固定する。
【0098】
次いで、下部コンポーネント脱着装置1に備わる操作装置により支持部12に圧縮空気を注入して支持部12を伸ばし、モータユニット32cをモータブラケット32bの下端まで上昇させる。
【0099】
このとき、第1治具11aを周囲の制御棒駆動機構3に干渉させることなく、モータユニット32cをモータブラケット32bの下端まで上昇させ、モータユニット32cをモータブラケット32bに結合させる複数のボルトを取り外したモータユニット32cの貫通孔32ccに第1治具11aの上面に設けられた複数のピンを挿し込むとともに、2本のボルトを第1治具11aの工具挿込孔(図示せず)からモータユニット32cのフランジ部32cbに設けられた上下に貫通する貫通孔32ccを介してモータブラケット32bのフランジ部32bcの下面に設けられたボルト穴32bdのうち対角線上の2つのボルト穴32bd(
図2参照)に取り付けられるように、スライドテーブル13bと回転テーブル13cにより支持部12の位置と向きを微調整する。
【0100】
次いで、モータユニット32cをモータブラケット32bに結合させる複数のボルトを取り外したモータユニット32cの貫通孔32ccに第1治具11aの上面に設けられた複数のピンを挿し込む。
【0101】
次いで、2本のボルトを第1治具11aの2つの工具挿込孔からモータユニット32cのフランジ部32cb(
図7参照)に設けられた複数の貫通孔32ccのうち対角線上の貫通孔32ccを介してモータブラケット32bのフランジ部32bcの下面に設けられたボルト穴32bdのうち対角線上の2つのボルト穴32bd(
図2参照)に螺合させて、モータユニット32cをモータブラケット32bに結合させる。
【0102】
次いで、支持部12を縮めて第1治具11aを降下させ、モータブラケット32bの下面の残りのボルト穴32bdにモータユニット32cの貫通孔32ccを介してボルトを螺合させ、モータユニット32cをモータブラケット32bに結合させる。
【0103】
上記の下部コンポーネント脱着装置1の使用方法により、下部コンポーネント32の各々は原子炉圧力容器2に取り付けられる。
【0104】
(作用・効果)
本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1は、駆動機構本体31、スプールピース32a、モータブラケット32b及びモータユニット32cを含み制御棒を駆動する制御棒駆動機構3のコンポーネントのうち、スプールピース32a、モータブラケット32b及びモータユニット32cからなる下部コンポーネント32を原子炉圧力容器2から脱着するための下部コンポーネント脱着装置1であって、下部コンポーネント32のいずれか1つである第1コンポーネント(本実施形態ではモータユニット32c)を保持する第1治具11aと、下部コンポーネント32のいずれか1つである第2コンポーネント(本実施形態ではモータブラケット32b)を保持し、第1治具11aに着脱自在の第2治具11bと、下部コンポーネント32のいずれか1つである第3コンポーネント(本実施形態ではスプールピース32a)を保持し、第1治具11aに着脱自在の第3治具11cと、第1治具11aを昇降可能に支持し、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの少なくとも1つをスプールピース32aが脱着可能な高さ(駆動機構本体31とスプールピース32aの結合部までの高さ)まで上昇可能な支持部12と、を備える。
【0105】
即ち、本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1は、モータユニット32c、モータブラケット32b及びスプールピース32aを保持する保持治具11(第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11c)を備え、スプールピース32aを保持する保持治具11を、スプールピース32aが脱着可能な高さまで昇降できる。そのため、駆動機構本体31の下部に取り付けられたモータユニット32cとモータブラケット32bだけでなくスプールピース32aも脱着できるので、スプールピース32aを駆動機構本体31の脱着装置を使用することなく脱着でき、制御棒駆動機構3の脱着作業時間を短縮化できる。
【0106】
また、本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1では、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの少なくとも1つには、下部コンポーネント32に含まれるコンポーネントをその上方のコンポーネント31,32に結合する複数の結合部品の脱着工具を挿し込むための工具挿込孔(例えば、工具挿込孔11cb)が設けられている。
【0107】
これにより、下部コンポーネント32を第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cが保持した状態において、下部コンポーネント32に含まれるコンポーネントをその上方のコンポーネント31,32に結合する複数の結合部品(例えばボルト)を容易に脱着できるので、制御棒駆動機構3の脱着作業時間を短縮化できる。また、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cが下部コンポーネント32を保持する部分を結合部品の位置に関わらず大きくすることができ、下部コンポーネント32を安定して保持できる。
【0108】
また、本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1の第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの少なくとも1つには、複数のピンが設けられており、下部コンポーネント32の複数のピンが設けられた保持治具11によって保持されるコンポーネントには複数の貫通孔32ab,32bb,32ccが設けられており、複数のピンは、複数の貫通孔32ab,32bb,32ccに挿入され得る。
【0109】
これにより、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cのそれぞれは、複数の下部コンポーネント32のいずかを位置決めして保持できる。そのため、下部コンポーネント32を上方のコンポーネント31,32に結合する複数の結合部品を脱着する際に、保持治具11に設けられた工具を挿し込むための工具挿込孔(例えば、工具挿込孔11cb)と、下部コンポーネントに設けられた結合部品を挿し込むための複数の貫通孔32ab,32bb,32cc(
図2~4参照)と、下部コンポーネント32と結合する上方のコンポーネント31,32に設けられた結合部品を結合する部分(例えば、ボルト穴32ac,32bd)の位置合わせが容易となり、制御棒駆動機構3の脱着作業時間を短縮化できる。
【0110】
本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1には、支持部12を原子炉圧力容器2の下方のプラットフォーム6上を自在に移動させる移動部13を備える。そのため、下部コンポーネント脱着装置1は、ペデスタル空間5の原子炉圧力容器2の下方に設けられたプラットフォーム6上を自在に移動できるので、複数の制御棒駆動機構3の脱着作業時間をさらに短縮化できる。
【0111】
また、本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1の移動部13には、所定の平面に沿って支持部12を移動可能なスライドテーブル13bと、上下方向を中心に回転軸として支持部12を回転可能な回転テーブル13cの少なくとも1つが設けられている。
【0112】
これにより、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cが制御棒駆動機構3と干渉しないように支持部12をスライド及び回転できる。また、下部コンポーネント32を上方のコンポーネント31,32に結合させる複数の結合部品(ボルト)を取り外した後の下部コンポーネント32の貫通孔32ab,32bb,32cc(
図2~4参照)に第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの上面に設けられた複数のピン(例えば、ピン11cc)を挿し込めるように支持部12の位置と向きを微調整できる。また、下部コンポーネント32の各々に設けられた結合部品(例えば、ボルト)を通す貫通孔32ab,32bb,32cc(
図2~4参照)と、上方のコンポーネントに設けられた結合部品を結合させる部分(例えば、ボルト穴32ac,32bd)と、保持治具に設けられた工具を挿し込むための工具挿込孔(例えば、工具挿込孔11cb)の位置合わせを容易にすることができる。
【0113】
また、本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1の支持部12は、複数の重なり合った筒が上下に伸び縮みする複数(本実施形態では2つ)の多段シリンダ12aを備える。
【0114】
多段シリンダ12aは小さな取付面積で大きな推力を得られるとともに短い取付長で長い作動ストロークを与えることができる。そのため、支持部12の取付面積を狭くできるとともに、保持治具11を高位に容易かつ迅速に昇降させることできるので、複数の制御棒駆動機構3の脱着作業時間をさらに短縮化できる。
【0115】
本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1の複数の多段シリンダ12aは、空気圧により伸縮する。そのため、上方から落下する水滴による多段シリンダ12aの故障リスクを低減できる。また、ペデスタル空間5には圧縮空気を供給するサービスエア系統のポートが設けられており、そのポートに接続することにより容易に圧縮空気を多段シリンダ12aに供給することができるので、圧力供給源を新たに設ける必要がなくコストを抑制することができる。
【0116】
本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1では、移動部13には車輪13aaと把持部13acが設けられ、支持部12の昇降を操作する操作装置が下部コンポーネント脱着装置1に搭載されている。そのため、遠隔操作室から操作することなく機側操作ができるので、移動部13と支持部12の微調整が容易となり、作業時間を短縮化できる。
【0117】
本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1では、複数の結合部品がボルトである。そのため、複数の結合部品の脱着を作業者の手動で行うことができるので、複数の制御棒駆動機構3が設けられ作業スペースが狭隘になっていても容易に複数の下部コンポーネント32の脱着作業ができる。
【0118】
本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1では、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cの各々の横幅が、原子炉圧力容器2の下部に設けられた複数の制御棒駆動機構3のうち隣り合う2つの制御棒駆動機構3の間隔よりも小さい。
【0119】
そのため、保守点検のために原子炉圧力容器2の下部から取外される下部コンポーネント32の周囲の制御棒駆動機構3に干渉させることなく、保持治具11を上昇させることができる。したがって、下部コンポーネント32を安全に脱着させることができる。
【0120】
また、本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1の使用方法は、駆動機構本体31、スプールピース32a、モータブラケット32b及びモータユニット32cを含み制御棒を駆動する制御棒駆動機構3のコンポーネントのうち、スプールピース32a、モータブラケット32b及びモータユニット32cからなる下部コンポーネント32を原子炉圧力容器2から脱着するための下部コンポーネント脱着装置1の使用方法であって、下部コンポーネント32のうち脱着対象のコンポーネントをその上方のコンポーネントに結合させる複数の結合部品を挿入するための複数の貫通孔32ab,32bb,32ccが脱着対象のコンポーネント32に設けられており、下部コンポーネント脱着装置1は、脱着対象のコンポーネントを保持する保持治具11と、保持治具11を昇降可能に支持し、脱着対象のコンポーネント32が脱着可能な高さまで保持治具11を上昇可能な支持部12と、を備え、保持治具11を利用して脱着対象のコンポーネント32を脱着するに際して、複数の貫通孔32ab,32bb,32ccのうち対角線上に位置する2つの貫通孔32ab,32bb,32ccに結合部品が挿入され、残りの貫通孔32ab,32bb,32ccからは結合部品が外された状態で、脱着対象コンポーネント32を保持治具11で保持し、脱着対象のコンポーネント32を保持する保持治具11を支持部12で昇降させ、脱着対象のコンポーネント32に対する結合部品の取り外しまたは取り付けを行うことで脱着対象のコンポーネント32を脱着する。
【0121】
これにより、複数の下部コンポーネント32を原子炉圧力容器から外す際には対角線上に配置された2本の結合部品だけを外せばよくなるので、作業時間を短縮化できる。
【0122】
さらに、本実施形態の下部コンポーネント脱着装置1の使用方法は、保持治具11を利用して脱着対象のコンポーネント32を脱着するに際して、複数の貫通孔32ab,32bb,32ccのうち対角線上に位置する2つの貫通孔32ab,32bb,32ccに結合部品が挿入され、残りの貫通孔32ab,32bb,32ccからは結合部品が外された状態で、保持治具11の上面に設けられた複数のピン(例えば、ピン11cc)を、残りの貫通孔32ab,32bb,32ccに挿入して脱着対象コンポーネント32を複数のピン(例えば、ピン11cc)で保持し、脱着対象のコンポーネント32を保持する保持治具11を支持部12で昇降させ、脱着対象のコンポーネント32に対する結合部品の取り外しまたは取り付けを行うことで前記脱着対象のコンポーネントを脱着する。
【0123】
これにより、下部コンポーネント32を上方のコンポーネント31,32に結合する複数の結合部品を脱着する際に、保持治具11に設けられた工具を挿し込むための貫通孔(例えば、工具挿込孔11cb)と、下部コンポーネントに設けられた結合部品を挿し込むための複数の貫通孔32ab,32bb,32cc(
図2~4参照)と、下部コンポーネント32と結合する上方のコンポーネント31,32に設けられた結合部品を結合する部分(例えば、ボルト穴32ac,32bd)の位置合わせが容易となり、制御棒駆動機構3の脱着作業時間を短縮化できる。
【0124】
(第2実施形態)
図10は、下部コンポーネント32(スプールピース32a)を高位に支持する本発明の第2実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置201の概略側面図である。
【0125】
本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置201が第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置1と異なる点は移動部213である。すなわち、第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置1の移動部13は、
図5,6に示すように、プラットフォーム6上に敷設させたレール7に沿って人力により移動可能なフランジ付車輪13aaを有する。一方、本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置201の移動部213は、プラットフォーム6上を走行する自在首振り車輪213aaを備える。
【0126】
(作用・効果)
本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置201の移動部213は、プラットフォーム6上を走行する自在首振り車輪213aaを備える。これにより、下部コンポーネント脱着装置201は、プラットフォーム6上に敷設されたレール7上ではなくプラットフォーム6上を自在に移動できるので、遠隔操作によるプラットフォーム6の旋回操作が不要となり、移動が容易となるとともに、移動時間を短縮化できる。
【0127】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置301により下部コンポーネント32を原子炉圧力容器2から脱着させる状態を示す概略側面図である。
【0128】
本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置301が第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置1と異なる点は運搬台車314を備える点である。
【0129】
運搬台車314は、下部コンポーネント32を載置する載置台と車輪を備え、原子炉圧力容器2から取り外された下部コンポーネント32を補修室8に運搬可能になっている。
【0130】
(作用・効果)
本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置301は、原子炉圧力容器2から取り外された下部コンポーネント32を運搬する運搬台車314を備える。これにより、原子炉圧力容器2から取り外された下部コンポーネント32を容易かつ迅速に補修室8に運搬できるとともに、補修室8で保守点検された下部コンポーネント32を容易かつ迅速に補修室8から運搬できる。そのため、複数の制御棒駆動機構3の脱着作業の効率を向上させることができる。
【0131】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置401により下部コンポーネント32を原子炉圧力容器2から脱着させる状態を示す概略側面図である。
【0132】
本実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置401が第1実施形態に係る下部コンポーネント脱着装置1と異なる点は、複数の多段シリンダ12aの上端に第1治具11aの傾きを吸収する傾き吸収部412bが設けられている点である。
【0133】
傾き吸収部412bには、例えば、サスペンション(Suspension:懸架装置)を用いることができる。
【0134】
(作用・効果)
本実施形態の下部コンポーネント脱着装置401では、複数の多段シリンダ12aの上端に第1治具11aの傾きを吸収する傾き吸収部412bが設けられている。そのため、下部コンポーネント32のいずれか1つを保持する際に、第1治具11a、第2治具11b及び第3治具11cを下部コンポーネント32の接触面に沿って傾けることができるので、下部コンポーネント32を安定させて脱着することができる。
【0135】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0136】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。すなわち、第1治具11aはモータユニット32cを保持し、第2治具11bはモータブラケット32bを保持し、第3治具11cはスプールピース32aを保持する実施形態を示したがこれに限定されない。例えば、第2治具11bはモータユニット32cを保持し、第3治具11cはモータユニット32cを保持し、第1治具11aはスプールピース32aを保持する実施形態にしてもよい。また、第3治具11cはモータユニット32cを保持し、第1治具11aはモータユニット32cを保持し、第2治具11bはスプールピース32aを保持する実施形態にしてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1,201,301,401…下部コンポーネント脱着装置、2…原子炉圧力容器、3…制御棒駆動機構、4…ペデスタル、5…ペデスタル空間、6…プラットフォーム、7…レール、8…補修室、11…保持治具、11a…第1治具、11aa…突出部、11b…第2治具、11ba…扇形突起、11c…第3治具、11ca…円孔、11cb…工具挿込孔、11cc…ピン、11cd…突起部、12…支持部、12a…多段シリンダ、13…移動部、13a…台車、13aa…フランジ付車輪、13ab…ストッパ、13ac…把持部、13b…スライドテーブル、13c…回転テーブル、21…ハウジング、31…駆動機構本体、32…下部コンポーネント、32a…スプールピース、32aa…フランジ部、32ab…貫通孔、32ac…ボルト穴、32b…モータブラケット、32ba…本体、32bb…貫通孔、32bc…フランジ部、32bd…ボルト穴、32c…モータユニット、32ca…シャフト、32cb…フランジ部、32cc…貫通孔、213…移動部、314…運搬台車、412b…傾き吸収部