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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176422
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】サーボアンプ
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20231206BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALN20231206BHJP
【FI】
H02P29/00
H01R13/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088697
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】大友 佑太
【テーマコード(参考)】
5E021
5H501
【Fターム(参考)】
5E021FC19
5H501BB06
5H501DD01
5H501GG01
5H501HA01
5H501KK07
5H501LL35
(57)【要約】
【課題】他の装置に対して通信ケーブルによって接続されるサーボアンプにおいて、当該他の装置における接地の形態によらず、流入ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制する。
【解決手段】サーボアンプ10は、通信ケーブルを接続可能なコネクタ11と、筐体に設定されるフレームグランド13とは別個に設けられて物理層トランシーバ14などの内部回路に対する接地電位を与えるシグナルグランド15と、を有する。コネクタ11は、通信ケーブルがシールド付きケーブルであるときに通信ケーブルのシールドと電気的に接続するシールド用導体部(例えば金属製のシェル12)を備え、シールド用導体部は、フレームグランド13に対してフローティングとされてカップリング用のコンデンサ17を介してシグナルグランド15に電気的に接続する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の装置に対して通信ケーブルによって接続されてサーボモータの制御を行なうサーボアンプであって、
前記通信ケーブルを接続可能なコネクタと、
前記通信ケーブルを介した前記他の装置との通信に関して物理層での送受信処理を行う物理層トランシーバと、
前記物理層トランシーバを介して入力した指令に基づいて前記サーボモータに対する内部指令を生成する制御回路と、
前記サーボモータを駆動するための電源電圧が供給されて前記内部指令に応じて前記サーボモータを駆動するドライバ回路と、
前記サーボアンプの筐体に設定されるフレームグランドとは別個に設けられて前記物理層トランシーバ及び前記制御回路に対する接地電位を与えるシグナルグランドと、
を有し、
前記コネクタは、前記通信ケーブルがシールド付きケーブルであるときに前記通信ケーブルのシールドと電気的に接続するシールド用導体部を備え、
前記シールド用導体部は、前記フレームグランドに対してフローティングとされるとともに第1のコンデンサを介して前記シグナルグランドに接続している、サーボアンプ。
【請求項2】
前記シグナルグランドは、前記第1のコンデンサとは異なる第2のコンデンサと抵抗とからなる並列回路を介して前記フレームグランドに接続し、
前記シールド用導体部は前記フレームグランドを経由することなく前記シグナルグランドに接続している、請求項1に記載のサーボアンプ。
【請求項3】
前記通信ケーブルは平衡線路を有し、
前記サーボアンプにおいて、前記コネクタにおける前記平衡線路に接続すべき1対のコンタクトと前記物理層トランシーバとの間にパルストランスを備え、
前記パルストランスのセンタータップが少なくとも終端抵抗を介して前記シールド用導体部に接続している、請求項1または2に記載のサーボアンプ。
【請求項4】
前記通信ケーブルは平衡線路を有し、
前記サーボアンプにおいて、前記コネクタにおける前記平衡線路に接続すべき1対のコンタクトと前記物理層トランシーバとの間にパルストランスを備え、
前記パルストランスのセンタータップが、終端抵抗と、前記第1のコンデンサとは異なる第2のコンデンサとを介して前記シグナルグランドに接続している、請求項1または2に記載のサーボアンプ。
【請求項5】
前記コネクタは、RJ45型のジャックであって前記導電部は前記ジャックのシェルである、請求項1または2に記載のサーボアンプ。
【請求項6】
前記コネクタはUSBコネクタである、請求項1または2に記載のサーボアンプ。
【請求項7】
前記コネクタはI/Oコネクタである、請求項1または2に記載のサーボアンプ。
【請求項8】
複数の前記コネクタを備えて他のサーボアンプとの間でのデイジーチェーン接続が可能である、請求項1または2に記載のサーボアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータの制御を行なうサーボアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
工場などにおいて複数の場所にサーボモータが設けられる場合、これらのサーボモータを集中的に管理し制御するために上位装置を設け、場所ごとあるいはモータごとに設けられるサーボアンプが上位装置からの指令に基づいてそれぞれのモータを駆動する構成とすることが多い。この場合、上位装置がマスタ装置、各サーボアンプをスレーブ装置とするマスタ-スレーブ構成とすることができる。上位装置とサーボアンプとを接続するために用いられる通信プロトコルの例として、イーサネット(登録商標)に基づく産業用のプロトコルであるEtherCAT(登録商標)や、CC-Link(登録商標)がある。これらのプロトコルは、上位装置に対して複数のサーボアンプをデイジーチェーン形態で接続することを可能にする高速シリアル通信プロトコルである。また装置間の接続に用いられる通信ケーブルとしては、イーサネット(登録商標)に基づく一般的なLAN(ローカルエリアネットワーク)ケーブルである4対8線のツイストペアケーブルが広く用いられている。ツイストペアケーブルの各ツイストペア(撚り対)の信号線は、平衡線路を構成する。このようなツイストペアケーブルを用いる場合、ツイストペアケーブルの両端にはRJ45型のプラグが取り付けられ、これに対応して装置側にはRJ45型のジャックが設けられており、ケーブルを装置に対して取り外し可能に接続できる。装置側では、ケーブルの各信号線対に対応してRJ45型のジャックと物理層トランシーバの間にパルストランスが設けられ、パルストランスのセンタータップには終端抵抗が接続する。
【0003】
サーボアンプが設置される工場などの空間は、電磁ノイズが多い環境である。そのため、上位装置とサーボアンプとの接続に用いる通信ケーブルには、STP(Shielded Twisted Pair:シールド付きツイストペア)ケーブルなどのシールド付きのケーブルが使用される。シールド付きのケーブルを用いるときは、装置側のコネクタすなわちジャックについてもシールド付きケーブルに対応したものを使用する必要がある。シールド付きケーブルのシールドは、ケーブルの端部のプラグに設けられたシールド接続部に電気的に接続しており、シールド対応のジャックでは、プラグ側のシールド接続部に対応する位置にシールド用導体部が設けられている。ケーブルを装置に接続したときにはケーブル側のシールド接続部が装置側のシールド用導体部と接触し、それによりケーブルのシールドを装置側の接地点に電気的に接続することが可能になる。シールド対応のRJ45型のジャックでは、その外装部(シェル)がシールド用導体部として金属により形成されるともにプラグ側のシールド接続部と接触できるように構成されており、ケーブル端部のプラグをジャックに挿し込んだときに、ケーブル内のシールドがジャック側のシールド用導体部であるシェルに電気的に接続する。パルストランスのセンタータップに接続された終端抵抗は、例えばコンデンサを介してジャックのシェルに電気的に接続する。ジャックのシェルは、通常、装置のフレームグランド(FG;装置の筐体における接地点であり一般に保安接地などのため用いられる接地点)に接続される。
【0004】
2つの装置間で接地電位が異なる場合、それら2つの装置間をシールド付きケーブルで接続し、かつ、ケーブルのシールドをそれぞれの装置においてフレームグランドに接続した場合、ケーブルのシールドに電流が流れ、ケーブル内の信号線にノイズが重畳することがある。このような不具合を防ぐために特許文献1は、STPケーブルが接続されるスイッチングハブ装置において、装置側のRJ45型のジャックのシェルをフレームグランドに接続するときに、STPケーブルのシールドに電流が流れないようにするために開放可能な切替スイッチをフレームグランドへの経路に設けることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-255139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーボアンプは電磁ノイズが多い環境で使用される装置であり、また、モータを駆動し制御するという特徴からそれ自体もノイズを発生する可能性を有するものである。そのため、サーボアンプは、外来ノイズの影響を受けず、また良好なEMC(電磁両立性)特性を有するように慎重に設計される。そのため、上位装置との接続に用いられるコネクタ類、例えばRJ45型ジャックについても、上述したようにフレームグランドに接続されるべき場所はそのように構成される。しかしながら上位装置では、電磁ノイズが多い環境で使用されるとは限られないのでEMC特性への影響や接地についての配慮が十分にはなされないことがあり、また、種々の装置が上位装置として用いられることがある。そのため、サーボアンプがケーブルを介して接続される上位装置では、ケーブルと上位装置の接続位置における接地の形態がまちまちであってケーブルのシールドの処理が適切になされていないことがあり、サーボアンプの側でそのフレームグランドにケーブルのシールドが電気的に接続している場合に、かえってノイズによる誤動作やEMC特性の低下が起こることがある。デイジーチェーン接続されているスレーブ装置の中にシールド処理が不十分なものがあるときも同様である。
【0007】
本発明の目的は、他の装置に対して通信ケーブルによって接続されるサーボアンプであって、当該他の装置における接地の形態によらず、流入ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することができるサーボアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、サーボアンプは、他の装置に対して通信ケーブルによって接続されてサーボモータの制御を行なうサーボアンプであって、通信ケーブルを接続可能なコネクタと、通信ケーブルを介した他の装置との通信に関して物理層での送受信処理を行う物理層トランシーバと、物理層トランシーバを介して入力した指令に基づいてサーボモータに対する内部指令を生成する制御回路と、サーボモータを駆動するための電源電圧が供給されて内部指令に応じてサーボモータを駆動するドライバ回路と、サーボアンプの筐体に設定されるフレームグランドとは別個に設けられて物理層トランシーバ及び制御回路に対する接地電位を与えるシグナルグランドと、を有し、コネクタは、通信ケーブルがシールド付きケーブルであるときに通信ケーブルのシールドと電気的に接続するシールド用導体部を備え、シールド用導体部は、フレームグランドに対してフローティングとされるとともに第1のコンデンサを介してシグナルグランドに電気的に接続している。
【0009】
サーボアンプを上位装置などの他の装置に対して通信ケーブルにより接続するときにシールド付きケーブルを使用する場合、他の装置側での接地の形態によっては、サーボアンプ側でケーブルのシールドをフレームグランドに接続するとかえって外来ノイズの影響を受けやすくなったりEMC特性が劣化したりすることがある。このような問題を解決するために、サーボアンプ側において、ケーブルのシールドをフローティング状態とする。しかしながら単にフローティング状態としただけでは、ケーブルが実質的にアンテナとして機能し、ノイズの発生源となり、また。外来ノイズの影響を受けやすくなる。そこで本態様では、ケーブルのシールドがコネクタのシールド用導体部に電気的に接続するようにした上で、フレームグランドとは別個に設けられてサーボアンプにおいて信号系の回路に接地電位を与えるシグナルグランドに対し、シールド用導体部をカップリング用のコンデンサ(すなわち第1のコンデンサ)を介して接続する。これにより本発明の一態様のサーボアンプでは、他の装置側での接地の形態によらず、ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することができる。信号系の回路とは、例えば、物理層トランシーバや制御回路など、比較的電圧振幅の小さな信号を扱う回路のことである。
【0010】
サーボアンプは、通常、サーボアンプを構成する回路類を筐体に収容した構成を有し、筐体にはフレームグランドが設定されている。本発明の一態様のサーボアンプでは、第1のコンデンサとは異なる第2のコンデンサと抵抗とかなる並列回路を介してシグナルグランドをフレームグランドに接続することが好ましい。このように構成することによって、サーボアンプを構成する信号系の回路の接地電位をより安定させることができる。この場合、コネクタのシールド用導体部は、フレームグランドを経由することなくシグナルグランドに電気的に接続することとなる。
【0011】
通信ケーブルは、一例として、ツイストペアケーブルなどの平衡線路を有するケーブルである。通信ケーブルが平衡線路を有する場合、サーボアンプにおいて、コネクタにおける平衡線路に接続すべき1対のコンタクトと物理層トランシーバとの間にパルストランスが設けられていてもよく、パルストランスが設けられる場合には、パルストランスのセンタータップが少なくとも終端抵抗を介してシールド用導体部に電気的に接続していることが好ましい。あるいは、パルストランスのセンタータップを、終端抵抗と、第1のコンデンサとは異なる第2のコンデンサとを介してシグナルグランドに接続してもよい。このように構成することにより、平衡線路におけるゼロ電位が安定してノイズに対する耐性がさらに向上し、EMC特性の劣化をさらに抑制することができる。通信ケーブルがツイストペアケーブルである場合には、通信ケーブルとサーボアンプとの接続には、例えば、RJ45型のコネクタが用いられる、RJ45型のコネクタが用いられるときは、特にサーボアンプに設けられるコネクタとしてRJ45型のジャックが用いられ、このジャックに設けられる金属製のシェルがシールド用導体部として機能する。
【0012】
通信ケーブルは、USB(ユニバーサル・シリアル・バス(universal serial bus))ケーブルであってもよく、その場合、サーボアンプにはコネクタとしてUSBコネクタが設けられる。あるいは通信ケーブルとして、RS-232、RS-422及びRS-485などの汎用の入出力(I/O)規格に基づくものを用いることができ、その場合、サーボアンプには、コネクタとして。通信ケーブルで用いるプロトコルに適合した入出力コネクタが設けられる。いずれにせよ、本発明の各態様においては、通信ケーブルの種類や他の装置との通信に用いられる通信プロトコルには制約がない。しかしながら本発明は、通信ケーブルとしてシールド付きケーブルを用いるときに生ずる課題を解決しようとするものであるから、通信ケーブルとしてシールド付きケーブルを用いることが好ましい。
【0013】
本発明のさらに別の態様において、サーボアンプは、複数のコネクタを備えて他のサーボアンプとの間でのデイジーチェーン接続が可能であるように構成される。デイジーチェーン接続を可能にすると、上位装置をマスタ装置、各サーボアンプをスレーブ装置とするときに、上位装置での入出力ポート数や全体での配線長などを大幅に削減でき、また上位装置の周辺での通信ケーブルの輻輳を回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、他の装置に対して通信ケーブルによって接続されるサーボアンプにおいて、当該他の装置における接地の形態によらず、流入ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】マスタ装置とスレーブ装置とのデイジーチェーン接続を説明する図である。
図2】従来のサーボアンプの入出力部分の構成を示すブロック図である。
図3】上位コントローラとサーボアンプとの接続例を示す図である。
図4】本発明の実施の一形態のサーボアンプを示すブロック図である。
図5図4に示すサーボアンプの入出力部分の詳細を示す図である。
図6図4に示すサーボアンプの入出力部分の別の例の詳細を示す図である。
図7】別の実施形態のサーボアンプの入出力部分の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明に基づくサーボアンプは、例えばEtherCAT(登録商標)規格に基づいて、上位装置に対して通信ケーブルを介してデイジーチェーン形態で接続可能なものである。
【0017】
図1は、一般的なデイジーチェーン接続を説明している。デイジーチェーン接続では、1つのマスタ装置71に対して、複数のスレーブ装置72が直列に接続している。直列に接続されたスレーブ装置72のうち1番目のものは、それぞれ通信ケーブル73を介してマスタ装置71と2番目のスレーブ装置72とに接続し、2番目のスレーブ装置72は1番目のスレーブ装置72に接続するともに3番目のスレーブ装置72に接続する。そのためマスタ装置71は、通信ケーブル73が接続されるコネクタ74を1つ備えればよいが、スレーブ装置72は、一般にコネクタ74を2以上備える必要がある。本実施形態においてデイジーチェーン接続を用いるとき、サーボアンプに対する上位装置である上位コントローラがマスタ装置71となり、各サーボアンプがスレーブ装置72となるように、複数のサーボアンプが上位コントローラにデイジーチェーン接続される。上位コントローラとサーボアンプとの接続や、サーボアンプ間の接続に用いられる通信ケーブル83には、例えば、STPケーブルが使用される。
【0018】
参考のため、図2(a)および図2(b)を用いて従来のサーボアンプ90における入出力部の構成例を説明する。これらの図では、通信ケーブルが接続される1つのコネクタ91に関連する部分しか描かれていないが、デイジーチェーン接続を行うサーボアンプ90には通信ケーブル用のコネクタ91は2つ以上設けられる。また、接地に関する配線が破線で示されている。ここでは通信ケーブルにSTPケーブルが用いられるとして、コネクタ91は、シールドタイプのRJ45型ジャックが用いられており、コネクタ91のシェル92は金属製であってSTPケーブルをコネクタ91に接続したときにSTPケーブル内のシールド導体に電気的に接続する。サーボアンプ90の筐体にはフレームグランド(FG)93が設定されている。またサーボアンプ90には、通信ケーブルを介する通信に関して物理層での送受信処理を行う物理層トランシーバ94と、物理層トランシーバ94を含む、サーボアンプ90内の信号系の回路に対して接地電位を与えるシグナルグランド(SG)95が設けられている。
【0019】
図2(a)に示すサーボアンプ90では、コネクタ91のシェル92はフレームグランド93に直接接続し、シグナルグランド95は、抵抗とコンデンサとの並列回路として構成されたRC並列回路96を介してフレームグランド93に接続している。また、図2(b)に示す例ではコネクタ91のシェル92がRC並列回路96を介してフレームグランド93に接続しており、このRC並列回路96に対し、シグナルグランド95はコンデンサ97を介して接続している。コネクタ91のシェル92は、図2(a)の場合には直接、図2(b)の場合にはRC並列回路96内の抵抗を介してフレームグランド93に接続するので、フレームグランド93に対してフローティングとはなっていない。したがって、コネクタ91に接続する通信ケーブルがシールド付きケーブルの場合、ケーブルのシールドもフローティングとならない。
【0020】
図2(a)あるいは図2(b)に示すサーボアンプ90を上位装置である上位コントローラ80に接続する場合に接続の形態について、図3を用いて説明する。サーボアンプ90では、コネクタ91のシェル92(図3では明示せず)がフレームグランド93に直接し、かつ、フレームグランド93は大地Eに接地されているものとする。そしてサーボアンプ90を上位コントローラ80に接続する通信ケーブル85として、シールド付きケーブルが用いられるものとする。図において通信ケーブル85のシールドは符号86により示されている。また破線は接地に関連する配線を示している。
【0021】
図3(a)は、上位コントローラ80にフレームグランド83が設定されてフレームグランド83は大地Eに接地され、かつ、コネクタ81のシェルもフレームグランド83に接続されているという、上位コントローラ80の接地形態が本来の形態である場合を示している。この場合、通信ケーブル85のシールド86を介して上位コントローラ80のフレームグランド83とサーボアンプ90のフレームグランド93とが接続し、かつ、フレームグランド83,93が大地Eに接地しているので、通信ケーブル85のシールド86も大地Eと同じ電位に保たれ、外来ノイズの影響を受けにくくなり、また良好なEMC特性を示すようになる。ここで上位コントローラ80側において通信ケーブル85のシールド86が接地していないと、すなわちいわゆる片面接地であると、通信ケーブル85がアンテナとして機能するようになってEMC特性が劣化する。
【0022】
上位コントローラ80のコネクタ81のシェルが上位コントローラ80のフレームグランドに接続していない場合には、図3(b)に示すように、EMC特性の劣化を防ぐために、コネクタ81のシェルを大地Eに直接接地させる配線を設ける必要がある。
【0023】
上位コントローラ80においてコネクタ81のシェルが上位コントローラ80のシグナルグランドに接続されている場合は、上位コントローラ80内でのシグナルグランドとフレームグランドとの関係が不明であって、そのまま通信ケーブル85のシールド86をコネクタ81のシェルに電気的に接続させたときにノイズの流入によって誤動作が生じるおそれがある。その場合には、上位コントローラ80側において、通信ケーブル85のシールド86の端部がコネクタ81のシェルに電気的に接続しないようにし、その代わりに図3(c)に示すようにシールド86の端部を大地Eに直接接地する。
【0024】
上位コントローラ80の設置場所とサーボアンプ90の設置場所との間で大地Eに電位差がある場合、上位コントローラ80側とサーボアンプ90側の両方で通信ケーブル85のシールド86を大地Eに接地した場合、シールド86に電流が流れ、ノイズの影響を受けやすくなるとともにEMC特性が劣化する。その場合は図3(d)に示すように、止むを得ず上述した片面接地とするか、通信ケーブル85としてシールドを備えないケーブル、例えばUTP(Unshielded Twisted Pair:シールドなしツイストペア)ケーブルを使用する。
【0025】
サーボアンプ90の側から見て上位コントローラ80における接地の形態が不明であることが多い。例えば上位コントローラ80において図3(a)~(d)のいずれかの接地形態が採用されているのか、あるいは上位コントローラ80においてそもそも接地に注意が払われているのかどうかが不明であることがある。そしてそのような場合には、サーボアンプ90側で通信ケーブル85のシールド86をフレームグランド93に接続するとかえって外来ノイズの影響を受けやすくなったりEMC特性が劣化したりすることがある。本発明の実施の一形態のサーボアンプは、上位装置に対して例えばシールド付きケーブルである通信ケーブルによって接続されるものであって、上位装置における接地の形態によらず、流入ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することができるようにしたものである。図4は本発明の実施の一形態のサーボアンプの構成を示している。
【0026】
図4に示すサーボアンプ10は、上位コントローラなどの上位装置からの指令に基づいてモータ30のサーボ制御を行なうものである。サーボアンプ10は、上位装置に対して通信ケーブルであるSTPケーブル(シールド付きツイストペアケーブル)によって接続し、STPケーブルとの接続のためにRJ45型のジャックであるコネクタ11を備え、EtherCAT(登録商標)規格に基づいて上位装置との通信を行う。サーボアンプ10は、図1に示すような形態で上位装置に対するデイジーチェーン接続を可能にするために複数のコネクタ11を備えているが、ここでは説明のため、1つのコネクタ11しか描かれていない。コネクタ11はシールド付きのコネクタであって、シールド用導体部である金属製のシェル12を備えており、STPケーブルが接続されたときにSTPケーブルのシールドがシェル12に電気的に接続するように構成されている。STPケーブルの各ツイストペアは平衡線路を構成し、コネクタ11内の1対のコンタクトを介して物理層トランシーバ14に接続する。コネクタ11のコンタクト対と物理層トランシーバ14の間には、図4には不図示のパルストランス41,42(図5参照)が設けられている。
【0027】
サーボアンプ10の筐体には保安接地などのためにフレームグランド(FG)13が設定されている。またサーボアンプ10は、上位装置との通信に関して物理層での送受信処理を行う物理層トランシーバ14と、物理層トランシーバ14に接続して上位装置からの指令に基づいてモータ30のサーボ制御に必要な演算を行う制御回路21と、制御回路21からの内部指令に基づいてモータ30を実際に駆動するドライブ回路22とが設けられている。モータ30はエンコーダ付きのモータであって、エンコーダによって検出されたモータ位置は制御回路21にフィードバックされている。また、ドライブ回路22は、インバータ回路などの電力回路を備えており、モータ30を駆動するために必要な電源電圧(駆動用電源電圧)が供給されている。ドライブ回路22は、接地のためにフレームグランド13に接続する。
【0028】
物理層トランシーバ14や制御回路21は比較的小さな信号電圧を扱う信号系の回路であり、これらの回路に対する接地電圧を与えるために、サーボアンプ10にはシグナルグランド(SG)15が設けられている。典型的にはシグナルグランド15は、物理層トランシーバ14や制御回路21などの回路が実装される多層プリント基板においてグランドプレーンとされる配線層によって実現される。シグナルグランド15は、フレームグランド13とは別個に設けられるものであって、抵抗とコンデンサとの並列回路として構成されたRC並列回路16を介してフレームグランド13に接続している。
【0029】
本実施形態のサーボアンプ10では、上位装置側の接地状態がどのようなものであっても対応できるように、STPケーブルのシールドをフローティング状態とする。しかしながら単にフローティング状態としただけでは、STPケーブルが実質的にアンテナとして機能し、ノイズの発生源となり、また。外来ノイズの影響を受けやすくなるから、カップリング用のコンデンサを介してSTPケーブルのシールドがシグナルグランド15に接続されるようにする。そのために図4に示すサーボアンプ10では、コネクタ11においてSTPケーブルのシールドに電気的に接続するシェル12が、コンデンサ17を介してシグナルグランド15に接続する。このようにコンデンサ17を介してSTPケーブルのシールドをシグナルグランド15に接続することにより、このサーボアンプ10では、上位装置での接地の形態によらず、ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することができる。
【0030】
図5は、図4に示すサーボアンプ10におけるコネクタ11の周辺の回路構成を詳細に示した図である。上述したようにコネクタ11はRJ45型のジャックであり、4対8線のSTPケーブルに対応して8個のコンタクトを備えている。図5においてコネクタ11内に描かれた8個の四角はコンタクトを示しており、四角内の数字はコンタクト番号を示している。TX+及びTX-は1対の送信用の信号線を示し、RX+及びRX-は1対の受信用の信号線を示している。コネクタ11における送信用の1対のコンタクトと物理層トランシーバ14の間には、パルストランス41が設けられ、同様に、受信用の1対のコンタクトと物理層トランシーバ14の間には、パルストランス42が設けられている。さらにサーボアンプ10には抵抗R1~R4及びコンデンサC1からなる終端回路43が設けられている。抵抗R1~R4は終端抵抗であり、パルストランス41,42のセンタータップにそれぞれ抵抗R1,R2の一端が接続し、コネクタ11の4番及び5番ピンが共通接続されてそこに抵抗R3の一端が接続し、コネクタ11の7番及び8番ピンが共通接続されてそこに抵抗R4の一端が接続している。抵抗R1~R4の他端は相互に接続しており、そこにコンデンサC1の一端が接続している。コンデンサC1の他端はコネクタ11のシェル12に接続している。上述したようにコネクタ11のシェル12は、カップリング用のコンデンサ17を介してサーボアンプ10にシグナルグランド15に接続しているから、STPケーブルにおける信号線対は、サーボアンプ10のシグナルグランド15に対して高周波的に接地された終端抵抗R1~R4によって終端されていることになる。
【0031】
図5に示す回路では、終端回路43内のコンデンサC1の他端がコネクタ11のシェルに接続している。これは、コネクタ11のシェル12がフレームグランド15に接続することを前提とする従来の回路において、終端回路に対する接地点を与える一般的な方法であって、既存のサーボアンプに修正を加えて本発明に基づくサーボアンプとすることを容易にする。しかしながら、図5に示す回路では、コンデンサC1とカップリング用のコンデンサ17とが直列に接続していることになるので、終端抵抗である抵抗R1~R4の他端とシグナルグランド15との間の実効的な静電容量は、カップリング用のコンデンサ17の静電容量よりも小さくなり、回路としての自由度が低下する。そこで、図6に示すように、コンデンサC1の他端をコネクタ11のシェルに接続するのではなく、シグナルグランド15に直接接続するようにしてもよい。図6に示すように構成することによって、コンデンサC1とカップリング用のコンデンサ17の定数選択幅を広げることができる。
【0032】
本実施形態のサーボアンプ10では、上位装置との接続に用いられるSTPケーブルのシールドがコンデンサ17を介してフレームグランド13ではなくシグナルグランド15に接続されるようにすることにより、上位装置における接地形態がどのようなものであっても、流入ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することができる。
【0033】
以上の説明では、STPケーブルを介してサーボアンプ10が上位装置に接続される場合を例に挙げて説明したが、サーボアンプ10の接続先となる装置は上位装置に限定されるものではなく、デイジーチェーン接続される他のサーボアンプなどであってもよい。いずれにせよ、サーボアンプ10が他の装置にSTPケーブルによって接続するときに、STPケーブルのシールドがコンデンサを介してシグナルグランド15に接続されるようにすることによって、相手側の装置における接地形態によらずに流入ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することができる。
【0034】
さらに本発明に基づくサーボアンプ10は、他の装置との接続のための通信ケーブルとしてSTPケーブル以外のケーブルを用いることができる。図6は、本発明の別の実施形態のサーボアンプ10の要部の構成を示している。図6には、説明を容易にするため、サーボアンプ10に設けられるべき制御回路21やドライブ回路22は示されていない。図6に示すサーボアンプ10は、図4に示したものと同様のものであるが、STPケーブルのほかに、汎用の入出力(I/O)ケーブル(例えばRS-485規格によるケーブル)やUSBケーブルも接続可能としたものである。これらのケーブルは、一般に、外装シールドを備えている。図6に示すサーボアンプ10は、RJ45型のジャックであるコネクタ11のほかに、入出力ケーブルが接続されるI/Oコネクタ41及びUSBケーブルが接続されるUSBコネクタ51を備えている。I/Oコネクタ41に対応してRS-485規格などによる通信を処理する物理層トランシーバ44が設けられ、USBコネクタ51に対応してUSBインタフェースによる通信の物理層の送受信処理を行う物理層トランシーバ54が設けられている。物理層トランシーバ14と同様に、物理層トランシーバ44,54もサーボアンプ10のシグナルグランド15に接続している。図4に示すものと同様に、シグナルグランド15は、RC並列回路16を介してサーボアンプ10のフレームグランド13に接続している。
【0035】
I/Oコネクタ41に入出力ケーブルが接続されたときにこの入出力ケーブルのシールドはI/Oコネクタ41のシェル42に電気的に接続し、同様に、USBコネクタ51にUSBケーブルが接続されたときにこのUSBケーブルのシールドはUSBコネクタ51のシェル52に電気的に接続する。そしてこれらのコネクタ41,51のシェル42,52は、RJ45型のジャックであるコネクタ11のシェル12の場合と同様に、それぞれ、カップリング用のコンデンサ47,57を介してシグナルグランド15に接続している。図6に示すサーボアンプ10は、図4に示すサーボアンプ10と同様の効果が得られるともに、入出力ケーブルによって接続される他の装置における接地状態や、USBケーブルによって接続される他の装置における接地状態によらず、流入ノイズによる誤動作やEMC特性の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…サーボアンプ;11,41,51…コネクタ;12,42,52…シェル;13…フレームグランド;14,44,54…物理層トランシーバ;15…シグナルグランド;16…RC並列回路;17,47,57…コンデンサ;30…モータ;41,42…パルストランス;43…終端回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7