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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176426
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】両軸受リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
A01K89/015 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088701
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108ED29
(57)【要約】
【課題】ハンドル側のリール本体の軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる。
【解決手段】フレーム11の右側板11Aに回転可能に支持される軸基端部41aと、右カバー12に回転可能に支持されハンドル20と連結する軸先端部41bと、を有し、リール本体10に回転可能に設けられるドライブギア軸41と、軸基端部41aに設けられ、ドライブギア軸41の一方向の回転を規制するローラクラッチ60と、ドライブギア軸41をリール本体10に対して、ドライブギア軸41の軸方向の移動を規制するリテーナ61と、ドライブギア軸41の軸方向において、リテーナ61よりも右側板11A側に配置され、ドライブギア軸41の回転に基づいてクラッチ機構50を断絶状態から伝達状態に切替えるストッパギア62と、を備えた構成の両軸受リールを提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣り用の両軸受リールであって、
ハンドルからスプールへの回転を伝達する伝達状態と、前記ハンドルから前記スプールへの回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチと、
前記スプールを支持するフレームと、前記フレームのハンドル側を覆うカバー部と、を有するリール本体と、
前記フレームに回転可能に支持される第1端部と、前記カバー部に回転可能に支持され前記ハンドルと連結する第2端部と、を有し、前記リール本体に回転可能に設けられるドライブギア軸と、
前記第1端部に設けられ、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第1一方向クラッチと、
前記ドライブギア軸を前記リール本体に対して、前記ドライブギア軸の軸方向の移動を規制する規制部と、
前記ドライブギア軸の軸方向において、前記規制部よりも前記フレーム側に配置され、前記ドライブギア軸の回転に基づいて前記クラッチを前記断絶状態から前記伝達状態に切替える切替部と、
を備えた両軸受リール。
【請求項2】
前記規制部は、周方向の一部に開口部が形成された周壁と、前記周壁のハンドル側端部を塞ぐ側壁と、を備えた筒状に形成され、
前記切替部は、前記周壁の内側に配置されるとともに前記側壁より前記フレーム側に配置され、前記開口部を介して前記規制部の径方向外方に配置されるクラッチツメに噛み合い可能に設けられている、請求項1に記載の両軸受リール。
【請求項3】
前記ドライブギア軸の軸方向において、前記規制部よりも前記フレーム側に配置され、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第2一方向クラッチを備えた、請求項1又は2に記載の両軸受リール。
【請求項4】
前記切替部と、前記第2一方向クラッチとは、一体で構成される、請求項3に記載の両軸受リール。
【請求項5】
魚釣り用の両軸受リールであって、
ハンドルからスプールへの回転を伝達する伝達状態と、ハンドルからスプールへの回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチと、
前記スプールを支持するフレーム、及び、前記フレームのハンドル側を覆うカバー部を有するリール本体と、
前記フレームに回転可能に支持される第1端部、及び、前記カバー部に回転可能に支持され前記ハンドルと連結する第2端部を有し、前記リール本体に回転可能に設けられるドライブギア軸と、
前記第1端部に設けられ前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第1一方向クラッチと、
前記ドライブギア軸を前記リール本体に対して、前記ドライブギア軸の軸方向の移動を規制する規制部と、
前記ドライブギア軸の軸方向において、前記規制部よりも前記フレーム側に配置され、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第2一方向クラッチと、
を備えた両軸受リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣り用の両軸受リールとして、ハンドルからスプールへの回転を伝達する伝達状態と、ハンドルからスプールへの回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチと、スプールを支持するフレームと、フレームのハンドル側を覆うカバー部と、を有するリール本体と、を備えたものが知られている。このような、両軸受リールでは、ドライブギア軸のフレーム側をローラクラッチで支持する構造において、ドライブギア軸の軸方向でフレーム側からハンドル側に向けてローラクラッチ、リテーナ、ストッパギアの順に配列されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-2062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなローラクラッチで支持する両軸受リールでは、ローラクラッチで支持しない通常の両軸受リールに対して、ストッパギアがハンドル側に配置され、軸方向においてストッパギアに噛み合うクラッチツメやクラッチカム等のクラッチリターン機構の位置もハンドル側となる。そのため、これらクラッチリターン機構を配置するスペースが大きくなり、クラッチリターン機構を収容するハンドル側本体が軸方向でハンドル側に膨れて大型化するという問題があった。ハンドル側本体が大型化すると、ハンドルの位置が釣り竿の固定位置から離れてしまい、両軸受リールの左右の重量バランスが崩れて操作性が低下するおそれがあることから、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、ハンドル側のリール本体の軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる両軸受リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る両軸受リールの態様1は、魚釣り用の両軸受リールであって、ハンドルからスプールへの回転を伝達する伝達状態と、前記ハンドルから前記スプールへの回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチと、前記スプールを支持するフレームと、前記フレームのハンドル側を覆うカバー部と、を有するリール本体と、前記フレームに回転可能に支持される第1端部と、前記カバー部に回転可能に支持され前記ハンドルと連結する第2端部と、を有し、前記リール本体に回転可能に設けられるドライブギア軸と、前記第1端部に設けられ、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第1一方向クラッチと、前記ドライブギア軸を前記リール本体に対して、前記ドライブギア軸の軸方向の移動を規制する規制部と、前記ドライブギア軸の軸方向において、前記規制部よりも前記フレーム側に配置され、前記ドライブギア軸の回転に基づいて前記クラッチを前記断絶状態から前記伝達状態に切替える切替部と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
本発明に係る魚釣り用の両軸受リールによれば、リール本体のハンドル側におけるカバー部内の収容部において、ドライブギア軸の軸方向でフレーム側からハンドル側に向けて第1一方向クラッチ、切替部、規制部の順で配置される。すなわち、本発明では、クラッチをクラッチカムによって戻す切替部を規制部よりフレーム側に近づけた位置に配置することができる。これにより、ハンドル側のリール本体における軸方向の長さを小さく抑えることができ、従来の両軸受リールに比べてリール全体を小型化できる。したがって、本発明では、両軸受リールの左右の重量バランスが崩れて操作性が低下することを抑制できる。
【0008】
(2)本発明の態様2は、態様1の両軸受リールにおいて、前記規制部は、周方向の一部に開口部が形成された周壁と、前記周壁のハンドル側端部を塞ぐ側壁と、を備えた筒状に形成され、前記切替部は、前記周壁の内側に配置されるとともに前記側壁より前記フレーム側に配置され、前記開口部を介して前記規制部の径方向外方に配置されるクラッチツメに噛み合い可能に設けられていることが好ましい。
【0009】
この場合には、周壁をリール本体に支持させることが可能であり、これにより規制部を安定した姿勢でドライブギア軸に対して固定することができるうえ、規制部のフレーム側で周壁と側壁とに囲まれたスペースに切替部を収容できる。そのため、本態様では、切替部を規制部のフレーム側の位置に効率よく配置することができる。しかも、本態様では、周壁の一部に形成される開口部を通じて切替部とクラッチツメを噛み合わせることが可能となる。つまり、クラッチツメやクラッチカムの位置もフレーム側に寄せた位置に配置できるので、ハンドル側のリール本体の軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができる。
【0010】
(3)本発明の態様3は、態様1又は態様2の両軸受リールにおいて、前記ドライブギア軸の軸方向において、前記規制部よりも前記フレーム側に配置され、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第2一方向クラッチを備えたことを特徴としてもよい。
【0011】
この場合には、リール本体のハンドル側におけるカバー部内の収容部において、ドライブギア軸の軸方向でフレーム側からハンドル側に向けて第1一方向クラッチ、切替部(第2一方向クラッチ)、規制部の順で配置される。すなわち、本態様では、第2一方向クラッチが設けられる場合において、第2一方向クラッチを規制部よりフレーム側に近づけた位置に配置することができる。これにより、ハンドル側のリール本体における軸方向の長さを小さく抑えることができ、従来の両軸受リールに比べてリール全体を小型化できる。
【0012】
(4)本発明の態様4は、態様3の両軸受リールにおいて、前記切替部と、前記第2一方向クラッチとは、一体で構成されることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、リール本体のハンドル側におけるカバー部内の収容部において、ドライブギア軸の軸方向でフレーム側からハンドル側に向けて第1一方向クラッチ、切替部及び第2一方向クラッチ、規制部の順で配置される。すなわち、本態様では、第2一方向クラッチを設けても、規制部よりフレーム側に近づけて配置することができる。これにより、ハンドル側のリール本体の軸方向の長さを小さく抑えることができ、従来の両軸受リールに比べてリール全体を小型化できる。さらに、切替部と第2一方向クラッチとを一体で構成することにより、さらにハンドル側のリール本体の軸方向の長さを小さく抑えることができる。
【0014】
(5)本発明に係る両軸受リールの態様5は、魚釣り用の両軸受リールであって、ハンドルからスプールへの回転を伝達する伝達状態と、ハンドルからスプールへの回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチと、前記スプールを支持するフレーム、及び、前記フレームのハンドル側を覆うカバー部を有するリール本体と、前記フレームに回転可能に支持される第1端部、及び、前記カバー部に回転可能に支持され前記ハンドルと連結する第2端部を有し、前記リール本体に回転可能に設けられるドライブギア軸と、前記第1端部に設けられ前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第1一方向クラッチと、前記ドライブギア軸を前記リール本体に対して、前記ドライブギア軸の軸方向の移動を規制する規制部と、前記ドライブギア軸の軸方向において、前記規制部よりも前記フレーム側に配置され、前記ドライブギア軸の一方向の回転を規制する第2一方向クラッチと、を備えたことを特徴としている。
【0015】
本発明に係る両軸受リールによれば、リール本体のハンドル側におけるカバー部内の収容部において、ドライブギア軸の軸方向でフレーム側からハンドル側に向けて第1一方向クラッチ、第2一方向クラッチ、規制部の順で配置される。すなわち、本発明では、クラッチをクラッチカムによって戻す第2一方向クラッチを規制部よりフレーム側に近づけた位置に配置することができる。これにより、ハンドル側のリール本体における軸方向の長さを小さく抑えることができ、従来の両軸受リールに比べてリール全体を小型化できる。したがって、本発明では、両軸受リールの左右の重量バランスが崩れて操作性が低下することを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る両軸受リールによれば、ハンドル側のリール本体の軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による両軸受リールの全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示す両軸受リールの断面図である。
図3図2に示す回転伝達機構の要部拡大図である。
図4図3に示すA-A線断面図である。
図5】リテーナの斜視図である。
図6】リテーナのハンドル側から見た平面図である。
図7】ストッパギアの軸方向から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る両軸受リールの実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0019】
図1及び図2に示すように本実施形態の両軸受リール1は、魚釣り用の両軸の電動リールである。
【0020】
<全体構成>
図1に示すように本実施形態の魚釣り用の両軸受リール1は、リール本体10と、リール本体10の側方に配置されたスプール回転用のハンドル20と、を備えている。リール本体10には、回転により釣り糸を繰り出し・巻き取るスプール30が回転自在に装着されている。リール本体10は、竿取付部18を介して釣り竿に装着される。ハンドル20のリール本体10側には、スタードラグ3が配置されている。
【0021】
リール本体10の内部には、モータ15、スプール30に連動して作動する往復移動機構(図示省略)、モータ15及びハンドル20の軸回転をスプール30に伝達する回転伝達機構40、ハンドル20からの回転をスプール30に伝達する伝達状態とハンドル20からスプール30への回転を断絶する断絶状態と、を切替えるクラッチ機構50(図4参照)、クラッチ機構50を制御するクラッチ制御機構(図示省略)等の機構が設けられている。
【0022】
ここで、以下の説明の「左右方向」とは、釣りを行う際に両軸受リール1を備えた釣り竿を持って釣り人から見た状態における左右方向とする。本実施形態では、ハンドル20がリール本体10の右側に位置している。
【0023】
<ハンドル>
ハンドル20は、リール本体10の右側方に突出するドライブギア軸41(後述する)の軸先端部41bに回転不能に装着されたクランクアーム21と、クランクアーム21の軸先端部41b側と反対側の端部にクランクアーム21と直交する方向の軸回りに回転自在に装着されたハンドル把手22と、を有している。
【0024】
<リール本体>
リール本体10は、スプール30を支持するフレーム11と、フレーム11の右側のハンドル側を覆う右カバー12と、フレーム11の左側を覆う左カバー13と、を有している。図2に示すように、フレーム11は、左右方向に所定の間隔をあけて配置された右側板11A及び左側板11Bと、右側板11Aと左側板11Bを連結する複数の連結部材11Cと、を有している。
【0025】
右カバー12は、右側板11Aの外方を右側から覆うように右側板11Aに対して着脱可能に設けられている。左カバー13は、左側板11Bの外方を左側から覆うように左側板11Bに対して着脱可能に設けられている。右側板11Aと右カバー12との間には、それぞれ後述する各種機構を収納するための収納空間S1、S2が形成されている。右カバー12は、左側に開口する凹状をなしている。
ここで、リール本体10のうち収納空間S1を形成するハンドル20側の部分(右側板11A及び右カバー12)を右側リール本体10Aという。
【0026】
右側リール本体10Aは、側面から見て右側板11Aにおけるドライブギア軸41(後述)の装着部分を中心に軸方向外方にも膨出した略楕円形状をなしている。左側板11B及び左カバー13は、側面から見て円形をなしている。
【0027】
図1に示すように、複数(ここでは3箇所)の連結部材11Cは、左右方向に延び、右側板11A及び左側板11Bと一体で形成された板状の部材である。各連結部材11Cは、リール本体10の上部、下部及び後部の3箇所で右側板11Aと左側板11Bとを連結する。両軸受リール1は、連結部材11Cを設けることで、リール本体10に大きな荷重が作用しても撓み等の変形が生じがたく、巻上げ効率の低下が抑制される。下部の連結部材11Cには、竿取付部18が固定されている。竿取付部18は、釣り竿が装着される部分であり、右側板11Aと左側板11Bとの略中間位置において、前後方向に延びている。後部の連結部材11Cには、クラッチ操作部14が設けられている。
【0028】
図2及び図3に示すように、右側板11Aは、ハンドル20が連結される後述するドライブギア軸41の軸基端部41a(第1端部)を回転自在に支持する軸支持部111を有する。右側板11Aは、右側リール本体10Aの内部に設けられる各種の機構が装着される。軸支持部111は、右側に開口する円筒状の凹部を形成している。
【0029】
図1及び図2に示すように、糸巻用のスプール30は、右側板11A及び左側板11B間に配置され、右側板11A及び左側板11Bによって回転自在に支持されている。右側板11A及び左側板11B間には、スプール30に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構(図示省略)と、上述したクラッチ操作部14と、が配置される。
【0030】
クラッチ操作部14は、上下に揺動してクラッチ機構50(図4参照)をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換え操作するために設けられている。
【0031】
モータ15は、リール本体10の内部に設けられている。モータ15は、上述した制御部によって制御され、スプール30とともに糸巻き取り方向に回転駆動するように構成されている。
【0032】
図3及び図4に示すように、右側板11Aと右カバー12との間の収納空間S1には、ハンドル20のトルクをスプール30に伝えるための回転伝達機構40と、回転伝達機構40内に設けられたクラッチ機構50と、が配置されている。さらに、収納空間S1には、図1に示すクラッチ操作部14の操作に応じてクラッチ機構50の制御を行うためのクラッチ制御機構(図示省略)と、ドラグ機構と、スプール30の回転時の抵抗力を調整するための制動機構であるキャスティングコントロール機構(図示省略)と、が配置されている。これらクラッチ制御機構、ドラグ機構、及びキャスティングコントロール機構は公知の構造であるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0033】
図1に示すように、リール本体10の上部には、右側板11A及び左側板11Bに固定されたカウンタケース17が設けられている。カウンタケース17には、水深表示用の表示部171、両軸受リール1の各種設定をする際に使用される操作スイッチ172などが設けられている。また、カウンタケース17の内部には、両軸受リール1の各種の制御を行う図示しない制御部が収容されている。
【0034】
<スプール>
スプール30は、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部301と、左右一対のフランジ部302と、を有する。フランジ部302は、糸巻胴部301の両端にそれぞれ径方向外方に一体的に突出して設けられる。スプール30は、フレーム11の左右両側の右側板11A及び左側板11Bに対して軸受を介して回転可能に支持されている。
【0035】
<クラッチ機構>
図4に示すように、クラッチ機構50は、クラッチツメ51やクラッチカム52を備え、後述するドライブギア42(図3参照)を介して伝達されるハンドル20からの回転をスプール30に伝達及び遮断する。ハンドル20からの回転をスプール30に伝達可能な状態がクラッチオン状態であり、ハンドル20からの回転を遮断する状態がクラッチオフ状態である。クラッチオフ状態ではスプール30は自由回転状態となり、釣り糸の繰り出しが可能になる。
【0036】
<回転伝達機構>
次に、回転伝達機構40について、図3に基づいて具体的に説明する。
回転伝達機構40は、スプール30からハンドル20側にトルクが逆に伝達された場合のトルクを規制する機能を含んでいる。回転伝達機構40は、軸先端部41b(第2端部)にハンドル20が固定されたドライブギア軸41と、ドライブギア軸41の軸基端部41a(第1端部)に連結されたドライブギア42と、ドライブギア42に噛み合うピニオンギア(図示省略)と、を有している。
【0037】
ドライブギア軸41は、右側リール本体10A内、すなわち右側板11Aの右側に配置されている。ドライブギア軸41は、左右方向に延び、右カバー12の天面121を軸方向に貫通し、その貫通した軸先端部41bにスタードラグ3やハンドル20が配置されている。ドライブギア軸41は、ハンドル軸に相当し、左右方向、すなわちスプール30の軸方向と平行に配置されている。
ここで、ドライブギア軸41の長手方向(左右方向に延在する方向)を、以下、軸方向とする。
【0038】
ドライブギア軸41は、軸基端部41aが第1軸受64を介して右側板11Aに回転可能に支持され、さらに軸先端部41bが第2軸受65を介して右カバー12の天面121に回転可能に支持されている。軸先端部41bは、ハンドル20に連結されている。軸基端部41aの外径は、ドライブギア軸41における軸基端部41a以外の軸部の外径よりも大きい。
【0039】
ドライブギア42は、外周にギアを有し、このギアがピニオンギアに噛み合っている。ドライブギア42は、ドライブギア軸41の軸先端部41b側において、後述するリテーナ61よりハンドル側に固定され、ドライブギア軸41の回転とともに一体的に回転するように連結されている。ピニオンギアは、回転伝達機構40を構成すると共にクラッチ機構50としても機能する。
このような構成により、クラッチオン状態において、ハンドル20からのトルクがスプール30に直接伝達される。
【0040】
ドライブギア軸41は、軸方向の中央部で右カバー12に固定される筒体44に軸受44Aを介して回転可能に挿通されている。
ドライブギア軸41には、軸基端部41aから軸先端部41bに向けて、ローラクラッチ60(第1一方向クラッチ)、ストッパギア62(切替部、第2一方向クラッチ)、リテーナ61(規制部)、ドライブギア42がその順で配列されている。さらに、ドライブギア42より軸先端部41b側には、複数の金属薄板からなるドラグワッシャや板座金が軸方向に重ね合わせた状態で配置され、ドライブギア軸41に対して回転不能に設けられる。回転伝達機構40では、ドラグワッシャの摩擦力によってハンドル20からスプール30への回転動力が伝達され、ドラグ性能が発揮される。
【0041】
このように構成される両軸受リール1では、ハンドル20、ドライブギア軸41、ドラグワッシャ、ドライブギア42、不図示のピニオンギア、スプール30(クラッチがオン状態)の順でハンドル20からの動力が伝達される。なお、釣り糸が繰り出し方向に強く引かれた場合には、ドラグの圧着力(摩擦力)を上回る力がドライブギア42に掛かり、すなわちスプール30、ピニオンギア、ドライブギア42の順に力が作用する。このとき、ドライブギア42、ドラグワッシャ、板座金の間で滑りが発生し、釣り糸が繰り出すことになる。
【0042】
ここで、右側板11Aに形成される凹状の軸支持部111は、ドライブギア軸41の軸基端部41aを内周側で一方向に回転可能に支持するローラクラッチ60が右側から嵌め込まれている。ドライブギア軸41の軸基端部41aの端面中央には、軸支持部111の底面を向いて開口する円形断面の孔部41fが形成されている。軸支持部111の凹底中央には、凸部112が右側に延びている。凸部112には、第1軸受64が嵌め込まれて支持されている。第1軸受64の外周側には、ドライブギア軸41の孔部41fが係合している。
【0043】
ローラクラッチ60は、ドライブギア軸41の軸基端部41aの外周側に配置され、ドライブギア軸41の一方向の回転を規制する。ローラクラッチ60は、ドライブギア軸41の糸巻き取り方向と反対方向の回転を規制する。ローラクラッチ60は、右側板11Aの凸部112に装着されている。ローラクラッチ60は、径方向から見て、第1軸受64と軸方向に重なる。
【0044】
ローラクラッチ60は、外輪と、複数の転動体と、を有している。外輪は、右側板11Aの軸支持部111に回転不能に装着されている。外輪は、図示しないカム面を内周面に有している。複数の転動体は、円柱状であり、外輪の内周面とドライブギア軸41の軸基端部41aの外周面の間に配置されている。複数の転動体は、ドライブギア軸41の糸巻き取り方向の回転を許容する。なお、ローラクラッチ60は、ドライブギア軸41の軸基端部41aの外周面に固定される内輪を有していてもよい。
【0045】
ローラクラッチ60は、右側板11Aの凹部から抜けないようにリテーナ61によって右側から押さえられている。
リテーナ61は、ドライブギア軸41を右側リール本体10Aに対して、ドライブギア軸41の軸方向への移動を規制する。リテーナ61は、右側板11Aの軸支持部111の外側に右側から嵌め込まれてフレーム11の右側板11Aにねじ等で固定されている。リテーナ61の周壁611とローラクラッチ60との間には、ストッパギア62が介在している。リテーナ61の少なくとも一部は、軸方向において軸基端部41aと重なる。
【0046】
ドライブギア軸41の軸基端部41aは、大径部41cと、外径が大径部41cよりも小さい小径部41dを有している。小径部41dは、大径部41cに隣接して配置されている。リテーナ61の一部(後述する周壁611)は、小径部41dの外周面の少なくとも一部を径方向から囲むように配置されており、軸基端部41aの右側への移動を制限する。
【0047】
図5及び図6に示すように、リテーナ61は、周方向の一部に開口部611aが形成された周壁611と、周壁611のハンドル側端部を塞ぐ側壁612と、を備えた筒状に形成されている。リテーナ61は、側壁612をハンドル20側に向けて周壁611の中心がドライブギア軸41と同軸に配置されている(図4参照)。側壁612の中央部には、ドライブギア軸41が通過可能な円形の挿通穴612aが形成されている。図3に示すように、周壁611の内径は、フレーム11の右側板11Aに形成される軸支持部111の外径より大きく、かつストッパギア62の外径よりも大きい。周壁611は、軸支持部111の外側に嵌合される。周壁611の内側には、ストッパギア62が収容された状態で配置されている。すなわち、ストッパギア62は、右側板11Aと側壁612との間に位置する。
【0048】
図3に示すように、側壁612は、挿通穴612aの内周縁から右側板11Aに向けて突出する当接部612bが設けられている。当接部612bは、挿通穴612aの全周にわたって設けられているが、周方向に部分的に設けられていてもよい。当接部612bは、ストッパギア62のハンドル20側の面に当接する。
【0049】
ストッパギア62は、ドライブギア軸41の軸基端部41aにおける大径部41cと小径部41dとの境界部分の段部41eと、リテーナ61の当接部612bと、に挟まれた位置に設けられ、軸方向でハンドル20側への移動が規制されている。このように、右側板11Aの軸支持部111と側壁612との間の軸方向の離間寸法は、少なくともストッパギア62の厚みが確保でき、かつストッパギア62が軸支持部111に設けられるローラクラッチ60に干渉しない寸法であればよい。
【0050】
周壁611の開口部611aは、側壁612側において円周方向に間隔をあけて3箇所に形成されている。周壁611の内側には、開口部611aを通じて、リテーナ61の外側に配置され揺動するクラッチツメ51の一部が進入可能となっている(図4参照)。ここで、図4に示すように、クラッチツメ51は、ドライブギア軸41の軸方向に直交する方向の側面視でストッパギア62と略同じ位置に配置される。すなわち、軸方向でクラッチツメ51は、側壁612よりも右側板11A側に位置している。さらに、クラッチツメ51に係止するクラッチ機構50のクラッチカム52の軸方向の位置も側壁612よりも右側板11A側に位置する。
【0051】
ストッパギア62は、ドライブギア軸41の軸方向において、リテーナ61よりも右側板11A側に配置され、ドライブギア軸41の回転に基づいてクラッチ機構50を断絶状態から伝達状態に切り替える。ストッパギア62は、ドライブギア軸41の軸基端部41aにおける小径部41dに回転不能に固定され、ドライブギア軸41とともに回転する。ストッパギア62は、後述するクラッチ機構50のクラッチツメ51によって一方向の回転が規制されている。そのため、ストッパギア62は、ドライブギア軸41の一方向の回転を規制する。このように本実施形態のストッパギア62は、リターンギアとしての機能も有する。
【0052】
図4及び図7に示すように、ストッパギア62の外周縁には、周方向に間隔をあけて凸状の係止歯621が複数設けられている。複数の係止歯621には、クラッチ機構50のクラッチツメ51が噛み合い可能である。
ストッパギア62は、周壁611の内側に配置されるとともに側壁612より右側板11A側に配置され、開口部611aを介してリテーナ61の径方向外側に配置されるクラッチツメ51に噛み合い可能に設けられている。
【0053】
次に、このように構成される両軸受リール1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0054】
本実施形態による両軸受リール1では、図3に示すように、リール本体10のハンドル側における右カバー12内の収納空間S1において、ドライブギア軸41の軸方向で右側板11A側からハンドル20側に向けてローラクラッチ60、ストッパギア62、リテーナ61の順で配置される。すなわち、本実施形態では、クラッチ機構50をクラッチカム52によって戻すストッパギア62をリテーナ61より右側板11A側に近づけた位置に配置することができる。
これにより、ハンドル20側のリール本体10における軸方向の長さを小さく抑えることができ、従来の両軸受リールに比べてリール全体を小型化できる。したがって、本実施形態では、両軸受リール1の左右の重量バランスが崩れて操作性が低下することを抑制できる。
【0055】
また、本実施形態の両軸受リール1では、リテーナ61は、周方向の一部に開口部611aが形成された周壁611と、周壁611のハンドル側端部を塞ぐ側壁612と、を備えた筒状に形成されている。ストッパギア62は、周壁611の内側に配置されるとともに側壁612より右側板11A側に配置され、開口部611aを介してリテーナ61の径方向外方に配置されるクラッチツメ51に噛み合い可能に設けられている。
【0056】
この場合には、本実施形態では、周壁611をリール本体10に支持させることが可能であり、これによりリテーナ61を安定した姿勢でドライブギア軸41に対して固定することができるうえ、リテーナ61の右側板11A側で周壁611と側壁612とに囲まれたスペースにストッパギア62を収容できる。そのため、本実施形態では、ストッパギア62をリテーナ61の右側板11A側の位置に効率よく配置することができる。しかも、本実施形態では、周壁611の一部に形成される開口部611aを通じてストッパギア62とクラッチツメ51を噛み合わせることが可能となる。つまり、クラッチツメ51やクラッチカムの位置も右側板11A側に寄せた位置に配置できるので、右側リール本体10Aの軸方向の長さをより確実に小さく抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態では、ドライブギア軸41の軸方向において、リテーナ61よりもフレーム側に配置され、ドライブギア軸41の一方向の回転を規制するストッパギア62(第2一方向クラッチ)を備えている。すなわち、本実施形態では、ストッパギア62が第2一方向クラッチと一体で構成されている。
【0058】
これにより、リール本体10のハンドル20側における右カバー12内の収容空間Sにおいて、ドライブギア軸41の軸方向で右側板11A側からハンドル20側に向けてローラクラッチ60、ストッパギア62(及び第2一方向クラッチ)、リテーナ61の順で配置される。すなわち、本実施形態では、第2一方向クラッチを設けても、リテーナ61より右側板11A側に近づけて配置することができる。これにより、右側リール本体10Aの軸方向の長さを小さく抑えることができ、従来の両軸受リールに比べてリール全体を小型化できる。さらに、ストッパギア62と第2一方向クラッチとを一体で構成することにより、さらに右側リール本体10Aの軸方向の長さを小さく抑えることができる。
【0059】
上述のように構成された本実施形態による両軸受リール1では、ハンドル20側の右側リール本体10Aの軸方向の大型化を抑制し、操作性を良好にできる。
【0060】
以上、本発明による両軸受リールの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0061】
例えば、本実施形態では、実施形態では、本発明を電動リールに適用していたが、電動リール以外の両軸受リールに本発明を適用してもよい。
【0062】
本実施形態では、ストッパギア62が第2一方向クラッチの機能(リターンギアに相当)を備えた構成、すなわちストッパギア62とリターンギア(切替部、第2一方向クラッチ)とが一体で構成された一例を示しているが、ストッパギア62とリターンギアとが別体で設けられる構成であってもよい。
あるいは、ストッパギア62に代えてリターンギア(第2一方向クラッチ)が設けられる構成に適用することも可能である。この場合、リール本体10のハンドル側におけるカバー部内の収容部において、ドライブギア軸41の軸方向でフレーム(右側板11A)側からハンドル側に向けてローラクラッチ60(第1一方向クラッチ)、リターンギア(第2一方向クラッチ)、リテーナ61(規制部)の順で配置される。
【0063】
また、本実施形態では、リテーナ61が周壁611と側壁612とを備えた筒状をなし、ストッパギア62が側壁612の右側板11A側に配置され、開口部611aを介してクラッチツメ51に噛み合い可能な構成としているが、これに限定されることはない。例えば、周壁611を備えない側壁612のみのリテーナであってもかまわない。
【符号の説明】
【0064】
1 両軸受リール
10 リール本体
10A 右側リール本体
11 フレーム
11A 右側板
11B 左側板
111 軸支持部
12 右カバー
13 左カバー
14 クラッチ操作部
20 ハンドル
30 スプール
40 回転伝達機構
41 ドライブギア軸
41a 軸基端部(第1端部)
41b 軸先端部(第2端部)
42 ドライブギア
50 クラッチ機構(クラッチ)
51 クラッチツメ
52 クラッチカム
60 ローラクラッチ(第1一方向クラッチ)
61 リテーナ(規制部)
611 周壁
611a 開口部
612 側壁
62 ストッパギア(切替部、第2一方向クラッチ)
S1、S2 収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7