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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176429
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】車両用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 15/78 20060101AFI20231206BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231206BHJP
   G06F 11/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G06F15/78 517
B60R16/02 660Q
G06F15/78 520
G06F11/00 606Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088704
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】安田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 智也
【テーマコード(参考)】
5B062
【Fターム(参考)】
5B062AA08
5B062CC05
5B062HH08
5B062JJ06
(57)【要約】
【課題】制御マイコンが起動する以前とその動作が停止する以後とにおいて、監視マイコンのリセットを確実に解除しておくことを保障する車両用電子制御装置を提供する。
【解決手段】車両用の電子制御装置1において、監視マイコン3は、制御マイコン2の動作を監視する。第1、第2レベル設定回路17,18は、それぞれ制御マイコン2、監視マイコン3のリセット端子のレベルを、第1、第2スイッチ7,10のON/OFFにより設定する。電源IC4が出力するリセット信号がハイレベルに変化した時点では、第1スイッチ7がONになっていることで制御マイコン2をリセット状態に維持すると共に、監視マイコン3のリセット状態を解除する。リセット信号がローレベルに変化した時点では、第2スイッチ10がONになっていることで制御マイコン2をリセット状態にすると共に、監視マイコン3のリセットを解除状態に維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御マイコン(2)と、
この制御マイコンの動作を監視する監視マイコン(3)と、
前記制御マイコンのリセット端子のレベルを第1スイッチ(7)のON/OFFにより設定する第1レベル設定回路(17)と、
前記監視マイコンのリセット端子のレベルを第2スイッチ(10)のON/OFFにより設定する第2レベル設定回路(18)と、
前記制御マイコン及び前記監視マイコンにリセット信号を出力するリセット回路(4)と、を備え、
前記第1及び第2レベル設定回路は、前記リセット信号が無効レベルに変化した時点では、前記第1スイッチがONになっていることで前記制御マイコンをリセット状態に維持すると共に、前記監視マイコンのリセット状態を解除し、
前記リセット信号が有効レベルに変化した時点では、前記第2スイッチがONになっていることで前記制御マイコンをリセット状態にすると共に、前記監視マイコンのリセットを解除状態に維持するように構成されている車両用電子制御装置。
【請求項2】
前記第1レベル設定回路は、前記制御マイコンのリセット端子と、リセット有効レベルの電位を付与する第1電位点との間に接続される、前記第1スイッチ及び抵抗素子(8)の直列回路からなり、
前記第2レベル設定回路は、前記監視マイコンのリセット端子と、リセット無効レベルの電位を付与する第2電位点との間に接続される、前記第2スイッチ及び抵抗素子(11)の直列回路からなり、
前記第1スイッチのON/OFFは、前記監視マイコンにより制御され、
前記監視マイコンが前記第1スイッチを制御する信号を出力する第1制御端子は、抵抗素子を介して前記第1スイッチをONにする電位点に接続されており、
前記第2スイッチのON/OFFは、前記制御マイコンにより制御され、
前記制御マイコンが前記第2スイッチを制御する信号を出力する第2制御端子は、抵抗素子を介して前記第2スイッチをOFFにする電位点に接続されており、
前記監視マイコンは、リセット状態が解除されると、前記第1スイッチをOFFにすることで前記制御マイコンのリセット状態を解除し、
前記制御マイコンは、リセット状態が解除されると前記第2スイッチをONにする請求項1記載の車両用電子制御装置。
【請求項3】
前記監視マイコンは、前記制御マイコンに異常が発生したことを検出すると、前記第1スイッチを制御して前記制御マイコンをリセット状態にする請求項2記載の車両用電子制御装置。
【請求項4】
ウォッチドッグタイマを用いて、前記異常の発生を検出する請求項3記載の車両用電子制御装置。
【請求項5】
前記リセット回路は、前記監視マイコンに異常が発生したことを検出すると前記リセット信号を有効レベルにする請求項1から4の何れか一項に記載の車両用電子制御装置。
【請求項6】
共通のアノードが、前記リセット回路のリセット信号出力端子に接続され、2つのカソードが、それぞれ前記制御及び監視マイコンのリセット端子に接続される2つのダイオード(5,6)からなるリセット信号分岐回路を備える請求項5記載の車両用電子制御装置。
【請求項7】
電源電圧を監視する電圧監視回路(20)を備え、
前記電圧監視回路は、前記電源電圧が異常になったことを検出すると、前記リセット信号を有効レベルにする請求項1から4の何れか一項に記載の車両用電子制御装置。
【請求項8】
電源電圧を監視する電圧監視回路(20)を備え、
前記電圧監視回路は、前記電源電圧が異常になったことを検出すると、前記リセット信号を有効レベルにする請求項6記載の車両用電子制御装置。
【請求項9】
前記リセット回路、前記電圧監視回路、前記第1及び第2レベル設定回路、並びに前記リセット信号分岐回路が1つのICとして構成されている請求項8記載の車両用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御マイコンの動作を監視マイコンによって監視する車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、制御マイコンの動作を監視マイコンによって監視する際に、ウォッチドッグタイマ;WDTを用いることがある。すなわち、制御マイコンの動作が正常であれば、制御マイコンより継続的に入力されるウォッチドッグ信号によって、監視マイコン内にあるWDTが所定間隔でリセットされる。ウォッチドッグ信号の入力が途切れると、WDTがオーバーフローすることで、制御マイコンの異常が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-166549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成では、ハードウェアの誤差やソフトウェアの違いから、各マイコンが起動するタイミングや、動作を停止するタイミングに差が生じることがある。すると、制御マイコンが監視マイコンよりも先に起動したり、監視マイコンが動作を停止した後に制御マイコンが停止する、といったケースも想定される。すると、監視マイコンが制御マイコンを監視できない時間が発生して、電子制御装置が誤動作するおそれがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御マイコンが起動する以前とその動作が停止する以後とにおいて、監視マイコンのリセットを確実に解除しておくことを保障する車両用電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用電子制御装置によれば、監視マイコンは、制御マイコンの動作を監視する。第1、第2レベル設定回路は、それぞれ制御マイコン、監視マイコンのリセット端子のレベルを、第1、第2スイッチのON/OFFにより設定する。そして、第1及び第2レベル設定回路は、リセット回路が出力するリセット信号が無効レベルに変化した時点では、第1スイッチがONになっていることで制御マイコンをリセット状態に維持すると共に、監視マイコンのリセット状態を解除する。また、リセット信号が有効レベルに変化した時点では、第2スイッチがONになっていることで制御マイコンをリセット状態にすると共に、監視マイコンのリセットを解除状態に維持するように構成されている。
【0007】
このように構成すれば、リセット信号が有効レベルにあることで制御及び監視マイコンが共にリセットされている状態から、リセット信号が無効レベルに変化すると、先に監視マイコンのリセット状態が解除される。また、制御及び監視マイコンのリセットが共に解除されており両者が動作している状態から、リセット信号が有効レベルに変化すると、先に制御マイコンがリセット状態になる。したがって、制御マイコンが動作している間は、監視マイコンが確実に動作している状態になるので、監視マイコンは、制御マイコンの動作を漏れなく監視することが可能になる。
【0008】
請求項2記載の車両用電子制御装置によれば、第1レベル設定回路は、制御マイコンのリセット端子と、リセット有効レベルの電位を付与する第1電位点との間に接続される第1スイッチ及び抵抗素子の直列回路で構成される。第2レベル設定回路は、監視マイコンのリセット端子と、リセット無効レベルの電位を付与する第2電位点との間に接続される、第2スイッチ及び抵抗素子の直列回路で構成される。
【0009】
監視マイコンの第1制御端子は、抵抗素子を介して第1スイッチをONにする電位点に接続され、制御マイコンの第2制御端子は、抵抗素子を介して第2スイッチをOFFにする電位点に接続されている。そして、監視マイコンは、リセット状態が解除されると、第1スイッチをOFFにすることで制御マイコンのリセット状態を解除し、制御マイコンは、リセット状態が解除されると第2スイッチをONにする。
【0010】
このように構成すれば、動作用電源が投入された直後で制御及び監視マイコンが共にリセットされている状態では、第1スイッチはON、第2スイッチはOFFになっている。これにより、制御マイコンのリセット端子は有効レベルに位相固定されている。そして、リセット信号が無効レベルに変化するのに応じて監視マイコンのリセット状態は解除されるが、第1スイッチがONになっているので、制御マイコンのリセット端子はリセット有効レベルのままとなりリセット状態が維持される。
【0011】
その後、監視マイコンは、リセット状態が解除されると、第1スイッチをOFFにすることで制御マイコンのリセット状態を解除するので、先に監視マイコンのリセット状態を解除することが可能になる。そして、制御マイコンは、リセット状態が解除されると第2スイッチをONにするので、監視マイコンのリセット端子は無効レベルに位相固定される。したがって、リセット信号が無効レベルから有効レベルに変化するのに応じて制御マイコンはリセット状態になるが、監視マイコンはリセット解除状態が維持される。制御マイコンがリセットされると、第2スイッチをONにする信号の出力が停止されるので第2スイッチがOFFになり、監視マイコンがリセットされる。これにより、先に制御マイコンをリセット状態にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態であり、電子制御装置の構成を示す機能ブロック図
図2】起動時の動作を示すタイミングチャート
図3図2に対応した信号の流れを示す図
図4】終了時の動作を示すタイミングチャート
図5図4に対応した信号の流れを示す図
図6】第2実施形態であり、電源異常時の動作を示すタイミングチャート
図7】電源監視部における電源異常の判定を説明するタイミングチャート
図8】第3実施形態であり、制御マイコンのWDC信号出力が異常で、且つ第2スイッチの制御信号の出力が継続した場合の動作を示すタイミングチャート
図9】監視マイコンによる制御マイコンのWDC信号出力異常の判定を説明するタイミングチャート
図10図8に対応した信号の流れを示す図
図11】第4実施形態であり、制御マイコンのWDC信号出力が異常で、且つ第2スイッチの制御信号の出力が停止した場合の動作を示すタイミングチャート
図12図11に対応した信号の流れを示す図
図13】第5実施形態であり、監視マイコンのWDC信号出力が異常で、且つ第1スイッチの制御信号の出力が継続した場合の動作を示すタイミングチャート
図14】電源ICによる監視マイコンのWDC信号出力異常の判定を説明するタイミングチャート
図15】第6実施形態であり、監視マイコンのWDC信号出力願が異常で、且つ第1スイッチの制御信号の出力が停止した場合の動作を示すタイミングチャート
図16図15に対応した信号の流れを示す図
図17】第7実施形態であり、電子制御装置の構成を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、電子制御装置1は車両に搭載されるもので、制御マイクロコンピュータ;マイコン2、監視マイコン3及び電源IC4を備えている。電源IC4は、図示しない車両のバッテリからBATT電源の供給を受けて、制御マイコン2及び監視マイコン3に供給する制御電源VCやVREF、及びVCAN等を生成する。電源VREFは、図示しないA/Dコンバータ用の電源であり、電源VCANは、車載LANの一種であるCAN(登録商標)通信用の電源である。車両のイグニッションスイッチのON/OFF信号であるIG信号は、制御マイコン2、監視マイコン3及び電源IC4に入力されている。その他、図示しないが、電子制御装置1はA/DコンバータやCAN通信用のインターフェイスも備えている。
【0014】
電源IC4は、電圧監視部20を内蔵している。電圧監視部20は、電源VCやVREF及びVCANの電圧を監視しており、それらの電圧の何れかが閾値を下回ると、制御マイコン2、監視マイコン3に対するリセット信号を出力する。また、電源IC4は、リセット回路としての機能も有している。リセット信号は、アノードが共通に接続されたダイオード5,6を介して、制御マイコン2、監視マイコン3それぞれに出力される。ダイオード5,6は、リセット信号分岐回路に相当する。
【0015】
ダイオード5のカソードとグランドとの間には、第1スイッチ7及び抵抗素子8の直列回路が接続されており、第1スイッチ7のON,OFFは監視マイコン3により制御される。監視マイコン3が第1スイッチ7を制御する信号を出力する第1制御端子は、抵抗素子9を介して電源VCにプルアップされている。尚、リセット信号に関して言えば、グランドレベルはリセット信号の有効レベルに対応しており、グランドは第1電位点に相当する。
【0016】
ダイオード6のカソードと電源VCとの間には、第2スイッチ10及び抵抗素子11の直列回路が接続されており、第2スイッチ10のON,OFFは制御マイコン2により制御される。制御マイコン2が第2スイッチ10を制御する信号を出力する第2制御端子は、抵抗素子12を介してグランドにプルダウンされている。尚、第1スイッチ7及び10は、制御信号がハイレベルでON,ローレベルでOFFとなる。したがって、電源VCが供給された状態で監視マイコン3、制御マイコンがそれぞれ制御信号を出力していなければ、第1スイッチ7はON,第2スイッチ10はOFFになっている。尚、リセット信号に関して言えば、電源VCの電圧はリセット信号の無効レベルに対応しており、電源VCは第2電位点に相当する。
【0017】
監視マイコン3は、図示しないウォッチドッグタイマを内蔵しており、制御マイコン2は、そのウォッチドッグタイマをリセットする信号をWDC(Watch Dock Clock)信号として周期的に出力する。これにより、監視マイコン3は、制御マイコン2の動作を監視する。上記のWDC信号を出力する端子は、抵抗素子13を介して電源VCにプルアップされている。
【0018】
同様に、電源IC4もウォッチドッグタイマを内蔵しており、監視マイコン3は、そのウォッチドッグタイマをリセットする信号をWDC信号として周期的に出力する。これにより、電源IC4は、監視マイコン3の動作を監視する。上記のWDC信号を出力する端子は、抵抗素子14を介して電源VCにプルアップされている。
【0019】
制御マイコン2及び監視マイコン3は、リセットが解除されて起動するとIG信号がOFFを示すまで、電源VCの電圧を動作可能なレベルに維持させるためのHOLD信号を電源IC4に出力する。それらのHOLD信号は、カソードが共通に接続されたダイオード15,16を介して電源IC4に入力される。尚、第1スイッチ7及び抵抗素子8の直列回路は第1レベル設定回路17を構成し、第2スイッチ10及び抵抗素子11の直列回路は第2レベル設定回路18を構成している。尚、ダイオード5,6,15及び16や、レベル設定回路17及び18を電源IC4に含めるように構成しても良い。
【0020】
次に、本実施形態の作用について説明する。尚、以下では図中の丸数字を()付の数字として記載する。また、図2では、第1、第2スイッチ7,10をそれぞれSW1、SW2としている。
【0021】
<マイコン起動時のシーケンス>
図2及び図3に示すように、IG信号がハイレベルになると、電源IC4は、電源VC、VREF及びVCANの供給を開始する。この時点で、第1スイッチ7はONになるので、制御マイコン2のリセット端子はプルダウンされている。
【0022】
その後、電源IC4はリセット信号を解除レベルであるハイレベルにする(1)。それに応じて、監視マイコン3のリセット端子はハイレベルになるので(2)監視マイコン3のリセットは解除され、監視マイコン3が先に起動する。すると、監視マイコン3は第1スイッチ7をOFFにする(3)。これにより、制御マイコン2のリセットが解除されて制御マイコン2が起動する(4)。また、監視マイコン3は、HOLD信号をアクティブレベルであるハイレベルにすると共に、WDC信号の出力を開始する。
制御マイコン2は、起動すると第2スイッチ10をONにして(5)、HOLD信号をハイレベルにすると共に、WDC信号の出力を開始する。
【0023】
<マイコン動作終了時のシーケンス>
図4及び図5に示すように、IG信号がローレベルになると、制御マイコン2及び監視マイコン3はHOLD信号をローレベルにする。これを受けて、電源IC4は、リセット信号をローレベルにする(1)。第2スイッチ10がONしているので、監視マイコン3のリセット端子はプルアップされており、制御マイコン2だけがリセットされる(2)。すると、制御マイコン2からのWDC信号の出力が停止すると共に、第2スイッチ10の制御信号の出力が停止して第2スイッチ10はOFFになる(3)。これにより、監視マイコン3のリセット端子のプルアップ状態が解除されるので、監視マイコン3はリセットされる(4)。すると、WDC信号の出力が停止すると共に、第1スイッチ7の制御信号の出力が停止して第1スイッチ7はONになる(5)。その後、電源IC4が電源VC、VREF及びVCANの供給を停止すると、第1スイッチ7はOFFになる。
【0024】
以上のように本実施形態によれば、車両用の電子制御装置1において、監視マイコン3は、制御マイコン2の動作を監視する。第1、第2レベル設定回路17,18は、それぞれ制御マイコン2、監視マイコン3のリセット端子のレベルを、第1、第2スイッチ7,10のON/OFFにより設定する。そして、電源IC4が出力するリセット信号がハイレベルに変化した時点では、第1スイッチ7がONになっていることで制御マイコン2をリセット状態に維持すると共に、監視マイコン3のリセット状態を解除する。また、リセット信号がローレベルに変化した時点では、第2スイッチ10がONになっていることで制御マイコン2をリセット状態にすると共に、監視マイコン3のリセットを解除状態に維持するように構成されている。
【0025】
このように構成すれば、リセット信号がローレベルにあることでマイコン2及び3が共にリセットされている状態からリセット信号がハイレベルに変化すると、先に監視マイコン3のリセット状態が解除される。また、マイコン2及び3のリセットが共に解除されており両者が動作している状態からリセット信号がローレベルに変化すると、先に制御マイコン2がリセット状態になる。したがって、制御マイコン2が動作している間は、監視マイコン3が確実に動作している状態になるので、監視マイコン3は、制御マイコン2の動作を漏れなく監視することが可能になる。
【0026】
具体的には、第1レベル設定回路17を、制御マイコン2のリセット端子とグランドとの間に接続される第1スイッチ7及び抵抗素子8の直列回路で構成し、第2レベル設定回路18を、監視マイコン3のリセット端子と電源VCとの間に接続される第2スイッチ10及び抵抗素子11の直列回路で構成する。監視マイコン3の第1制御端子を、抵抗素子9を介して電源VCに接続し、制御マイコン2の第2制御端子を、抵抗素子12を介してグランドに接続する。そして、監視マイコン3は、リセット状態が解除されると、第1スイッチ7をOFFにして制御マイコン2のリセット状態を解除し、制御マイコン2は、リセット状態が解除されると第2スイッチ10をONにする。
【0027】
これにより、パワーオンリセットが解除される際には、制御マイコン2よりも先に監視マイコン3のリセット状態を解除することが可能になる。また、リセット信号がローレベルに変化した際には、監視マイコン3よりも先に制御マイコン2をリセット状態にすることが可能になる。
【0028】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
<電源異常時のシーケンス>
図6に示すように、制御マイコン2及び監視マイコン3が正常に動作している状態で、電源VCの電圧は正常であるが、電源VREF,VCANの電圧が低下すると、電源監視部20がそれを検出してリセット信号をローレベルにする(1)。それに伴い、制御マイコンはリセット状態になる(2)。すると、第2制御端子からの、第2スイッチ10をONにしている信号の出力が停止されるので、第2スイッチ10がOFFになる(3)。これにより、監視マイコン3がリセットされる(4)。すると、第1制御端子からの、第1スイッチ7をOFFにしている信号の出力が停止されるので、第1スイッチ7がONになる(5)。尚、ブロック図で示す信号の流れについては、第1実施形態の図5と同様になる。
【0029】
図7に示すように、電源監視部20は、電源IC4が生成している電源電圧が、閾値Voff_th_L以上で、且つ閾値Voff_th_H以下の範囲内にあれば「正常」と判断する。電源投入時であれば電源IC4は、電源電圧が閾値Von_th_Lに達してから、規定されている復帰時間が経過した後にリセット信号をローレベルからハイレベルに変化させる。
【0030】
異常判定閾値Voff_th_Lは閾値Von_th_Lよりも低く設定されており、異常判定閾値Voff_th_Hは閾値Von_th_Hよりも高く設定されている。電源電圧が異常判定閾値Voff_th_L以下になるか、又は異常判定閾値Voff_th_H以上になると「異常」と判断してリセット信号をハイレベルからローレベルに変化させる。このように、正常、異常の閾値にはヒステリシスを持たせている。
【0031】
尚、図6に示すリセット信号のタイミングには、異常が発生した時点から電源IC4内部の遅延時間を含めて示しているが、図7では、原理的な説明のためタイミングに遅延時間を含めていない。また、図6で、異常の発生後にローレベルなったリセット信号は、図7に示すように、電源電圧が正常な状態に復帰し、復帰時間が経過した時点でハイレベルに変化するが、その変化については示していない。逆に言えば、図7では復帰時間を短縮して示している。以降の実施形態についても同様である。
【0032】
以上のように第2実施形態によれば、制御マイコン2及び監視マイコン3が正常に動作している状態で、電源VREF,VCANに異常が発生した場合でも、監視マイコン3より先に制御マイコン2をリセットすることができる。
【0033】
(第3実施形態)
<制御マイコン2のWDC信号異常時のシーケンス;SW2制御信号出力継続>
図8及び図9に示すように、制御マイコン2より入力されているWDC信号が停止し、監視マイコン3内部のウォッチドッグタイマがカウントアップを継続して異常判定閾値に到達すると、監視マイコン3は異常を検出する。最後に入力されたWDC信号の立下りによってウォッチドッグタイマがリセットされてからカウントアップを継続し、異常判定閾値に達するまでの時間が異常検出時間となる。但し、第3実施形態では、WDC信号の出力が停止しても、制御マイコン2の第2制御端子より、第2スイッチ10をONにしている制御信号の出力は継続されている場合を想定する。
【0034】
監視マイコン3が異常を検出すると、図8及び図10に示すように第1スイッチ7をONにする(1)。これにより、制御マイコン2のリセット端子がローレベルになり、制御マイコン2はリセット状態になる(2)。すると、第2制御端子からの、第2スイッチ10をONにしている信号の出力が停止されるので、第2スイッチ10がOFFになる(3)。しかし、電源IC4はリセット信号をハイレベルにしているので、監視マイコン3はリセットされず、動作を継続する。
【0035】
以上のように第3実施形態によれば、制御マイコン2より入力されているWDC信号が停止することで、監視マイコン3が制御マイコン2の異常を検出すると、第1スイッチ7をONにして制御マイコン2をリセット状態にできる。
【0036】
(第4実施形態)
<制御マイコン2のWDC信号異常時のシーケンス;SW2制御信号出力停止>
第4実施形態は、第3実施形態と同様に、制御マイコン2より入力されているWDC信号が停止した場合であるが、第2制御端子より、第2スイッチ10をONにしている制御信号の出力が停止した場合を想定する。図11及び図12に示すように、制御マイコン2より入力されているWDC信号が停止すると共に、上記制御信号の出力が停止すると、第2スイッチ10がOFFになる(1)。ウォッチドッグタイマがカウントアップを継続して異常判定閾値に到達すると、監視マイコン3は異常を検出する。
【0037】
監視マイコン3が異常を検出すると、第1スイッチ7をONにするので(2)、制御マイコン2はリセット状態になる(3)。結果的に、第3実施形態に比較して、第2スイッチ10がOFFになるタイミングが早まる点のみが異なる。
【0038】
(第5実施形態)
<監視マイコン3のWDC信号異常時のシーケンス;SW1制御信号出力継続>
図13及び図14に示すように、監視マイコン3より入力されているWDC信号が停止し、電源IC4内部のウォッチドッグタイマがカウントアップを継続して異常検出時間が経過すると、電源IC4は異常を検出してリセット信号をローレベルにする(1)。これに伴い、制御マイコン2はリセット状態になる(2)。第5実施形態では、WDC信号の出力が停止しても、監視マイコン3の第1制御端子より、第1スイッチ7をOFFにしている制御信号の出力は継続されている場合を想定する。
【0039】
制御マイコン2がリセット状態になると、第2スイッチ10がOFFになる(3)。しかし、電源IC4はリセット信号をローレベルにしているので、監視マイコン3はリセットされる(4)。すると、第1スイッチ7をOFFにしている信号の出力が停止して、第1スイッチ7がONになる(5)。
【0040】
以上のように第5実施形態によれば、監視マイコン3より入力されているWDC信号が停止することで、電源IC4が監視マイコン3の異常を検出すると、監視マイコン3が第1スイッチ7をOFFにしている制御信号の出力を継続していても、監視マイコン3をリセット状態にできる。
【0041】
(第6実施形態)
<監視マイコン3のWDC信号異常時のシーケンス;SW1制御信号出力停止>
第6実施形態は、第5実施形態と同様に、監視マイコン3より入力されているWDC信号が停止した場合であるが、第1制御端子より、第1スイッチ7をOFFにしている制御信号の出力が停止した場合を想定する。
【0042】
図15及び図16に示すように、監視マイコン3より入力されているWDC信号が停止して異常が発生し、監視マイコン3が第1スイッチ7をOFFにしている制御信号の出力を停止すると、第1スイッチ7がONになる(1)。これにより、制御マイコン2のリセット信号がローレベルになり、制御マイコン2はリセットされ(2)、第2スイッチ10がOFFになる(3)。電源IC4内部のウォッチドッグタイマがカウントアップを継続して異常検出時間が経過すると、電源IC4は異常を検出してリセット信号をローレベルにする(4)。これにより、監視マイコン3はリセット状態になる(5)。
【0043】
以上のように第6実施形態によれば、監視マイコン3より入力されているWDC信号が停止することで、電源IC4が監視マイコン3の異常を検出すると、監視マイコン3が第1スイッチ7をOFFにしている制御信号の出力を停止しても、制御マイコン2をリセット状態にできる。
【0044】
(第7実施形態)
図17に示す第7実施形態の電子制御装置1Aでは、プルアップ用の電圧に、制御電源VCに替えて、BATT電源の電圧を抵抗で分圧したものを用いている。
【0045】
(その他の実施形態)
信号の有効レベル、無効レベルのハイ、ローの関係を逆にしても良い。
第1、第2レベル設定回路の構成は、図示したものに限らない。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1は電子制御装置、2は制御マイコン、3は監視マイコン、4は電源IC、5及び6はダイオード、7は第1スイッチ、8は抵抗素子、10は第2スイッチ、1は抵抗素子、15及び16はダイオード、17は第1レベル設定回路、18は第2レベル設定回路、20は電圧監視部を示す。
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