(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023176442
(43)【公開日】2023-12-13
(54)【発明の名称】軟質部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20231206BHJP
B43L 19/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B43K29/02 F
B43L19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022088720
(22)【出願日】2022-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】奥原 有人
(57)【要約】
【課題】軟質部材を安定して取付けることができる一方、高い精度の部品寸法管理を必要としない軟質部材の取付構造を提供する。
【解決手段】筒体と、筒体と、弾性材料よりなる軟質部材と、を備える。筒体は、上方に突出する係止部材装着部と、係止部材装着部の上方に設けられる天面部と、を備える。
係止部材は、内孔と、内孔の上方に径方向内方に突出する縮径部と、縮径部の下面に設けられる下面部と、縮径部より下方に形成される筒体装着部と、を備える。軟質部材は、縮径部から上方に突出され熱変色性インキの筆跡を摩擦する摩擦部と、該摩擦部より下方に径方向外方に突出され軸方向のバネ性を有する鍔部と、を備える。筒体装着部は、係止部材装着部に係止されており、鍔部の上部は、下面部に圧接されており、軟質部材の下端部は、天面部に圧接されている
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具の軸筒又はキャップ等である筒体と、前記筒体の上端に装着される係止部材と、熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で該筆跡又は像を熱変色させる弾性材料よりなる軟質部材と、を備え、
前記筒体は、上方に突出する係止部材装着部と、前記係止部材装着部の上方に設けられる天面部と、を備え、
前記係止部材は、軸方向に貫通される内孔と、前記内孔の上方に径方向内方に突出する縮径部と、前記縮径部の下面に設けられる下面部と、前記縮径部より下方に形成される筒体装着部と、を備え、
前記軟質部材は、前記縮径部から上方に突出され前記熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦する摩擦部と、該摩擦部より下方に径方向外方に突出され軸方向のバネ性を有する鍔部と、を備え、
前記筒体装着部は、前記係止部材装着部に係止されており、
前記鍔部の上部は、前記下面部に圧接されており、
前記軟質部材の下端部は、前記天面部に圧接されている
軟質部材の取付構造。
【請求項2】
前記軟質部材の下端部は、前記摩擦部に対して軸方向下方に重複する少なくとも一部の位置に設けられる
請求項1に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項3】
前記筒体は、前記係止部材装着部の下方に形成される段部を備え、
前記係止部材は、前記筒体装着部の下方に形成される当接部を備え、
前記段部と前記当接部とが当接されている
請求項2に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項4】
前記鍔部は、皿バネ形状を有する
請求項1乃至3のいずれかに記載の軟質部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸筒の内部に熱変色性インキを収容し、軸筒の前端のペン先より熱変色性インキが吐出可能に構成し、軸筒の後端に、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な軟質部材(摩擦体)を具備してなる熱変色性筆記具が開示されている。
【0003】
詳細には、特許文献1の
図6に示すように、熱変色性筆記具は、軸筒と、軸筒の後端に螺合により着脱自在に装着される頭冠と、軟質部材(摩擦体)と、を備える。さらに、軸筒には後方に突出する第1の頭冠装着部が設けられ、第1の頭冠装着部外面には第1の雄ねじ部を有し、頭冠は前方に開口する軸筒装着孔が設けられ、軸筒装着孔内面には第1の雄ねじ部に螺合可能な第1の雌ねじ部を有し、頭冠は後端に径方向内方に突出する縮径部が設けられ、軟質部材(摩擦体)は端部に摩擦部が設けられるとともに軸方向中央部に径方向外方に突出する鍔部が設けられる。
【0004】
前記熱変色性筆記具に取り付けられる軟質部材(摩擦体)は、鍔部が第1の頭冠装着部の後端部と縮径部により挟持されることにより取り付けられる。当該軟質部材(摩擦体)の取付構造によれば、摩擦の際に摩擦体がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の軟質部材の取付構造によれば、鍔部の軸方向寸法(厚み)がばらついて所望の寸法が得られない場合、性能上及び外観上の不具合が発生する虞がある。具体的には、鍔部の軸方向寸法が所望の寸法より小さい場合、頭冠を確実に螺合させても鍔部を確実に挟持することができないため、摩擦時に軟質部材がぐらつく虞がある。
【0007】
一方、鍔部の軸方向寸法が所望の寸法より大きい場合、鍔部は確実に挟持できるものの、頭冠を最後まで螺合させることができないため、頭冠と軸筒の間に隙間ができ、筆記具としての美観を損ねる虞がある。すなわち、鍔部の軸方向寸法には高い精度が要求され、生産性の点で問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軟質部材を安定して取付けることができる一方、高い精度の部品寸法管理を必要としない軟質部材の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筆記具の軸筒又はキャップ等である筒体と、前記筒体の上端に装着される係止部材と、熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で該筆跡又は像を熱変色させる弾性材料よりなる軟質部材と、を備え、前記筒体は、上方に突出する係止部材装着部と、前記係止部材装着部の上方に設けられる天面部と、を備え、前記係止部材は、軸方向に貫通される内孔と、前記内孔の上方に径方向内方に突出する縮径部と、前記縮径部の下面に設けられる下面部と、前記縮径部より下方に形成される筒体装着部と、を備え、前記軟質部材は、前記縮径部から上方に突出され前記熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦する摩擦部と、該摩擦部より下方に径方向外方に突出され軸方向のバネ性を有する鍔部と、を備え、前記筒体装着部は、前記係止部材装着部に係止されており、前記鍔部の上部は、前記下面部に圧接されており、前記軟質部材の下端部は、前記天面部に圧接されている軟質部材の取付構造である。
【0010】
本発明によれば、バネ性を有する鍔部の上部が縮径部の下面部に圧接されており、軟質部材の下端面が筒体の天面に圧接されている。これにより、鍔部に高い精度の寸法管理を必要としなくても軟質部材を安定して取付けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軟質部材を安定して取付けることができる一方、高い精度の部品寸法管理を必要としない軟質部材の取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態における軟質部材の取付状態を示す要部拡大縦断面図である。
【
図2】
図1の軟質部材の取付前の状態を示す要部拡大縦断面図(
図1の分解図)である。
【
図3】本発明の軟質部材の取付構造を採用した熱変色性筆記具の実施の形態を示す正面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態における軟質部材の取付状態を示す要部拡大縦断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における軟質部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の2つの実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態の軟質部材12の取付構造において、「上」とは、筒体11において係止部材装着部11aの先端(天面部11b)側を指し、軟質部材12において摩擦部12a側を指す。一方、「下」とは筒体11において係止部材装着部11aの反対側を指し、軟質部材12において鍔部12b側を指す。また、本発明の実施形態の筆記体において、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。
【0014】
<第1実施形態>
図1乃至
図3に、本発明の第1実施形態を示す。
図1は、本発明の第1実施形態における軟質部材12の取付状態を示す要部拡大縦断面図である。
図2は、
図1の軟質部材12の取付前の状態を示す要部拡大縦断面図であって、
図1の分解図である。
図3は、本発明の軟質部材12の取付構造を採用した熱変色性筆記具10の実施の形態を示す正面図である。
【0015】
本実施形態の軟質部材12の取付構造は、筆記具の軸筒又はキャップ等である筒体11と、筒体11の上端に装着される係止部材13と、熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で該筆跡又は像を熱変色させる弾性材料よりなる軟質部材12と、を備えている。係止部材13は、軟質部材12の下部に設けられた鍔部12bを覆うように筒体11の上端部に取り付けられる。
【0016】
・筒体
筆記具部品である筒体とは、例えば、筆記具の軸筒、又は軸筒のペン先側に着脱自在に設けられるキャップ等を指す。
図1又は
図2に示すように、筒体11は、上方に突出する係止部材装着部11aと、係止部材装着部11aの上方に設けられる天面部11bと、を備える。以下に、筒体11の各構成を詳述する。
【0017】
係止部材装着部11aは、筒体11と一体に形成されることが好ましい。係止部材装着部11aは、筒体がキャップの場合には、キャップの閉塞端側に形成され、筒体が軸筒の場合には、ペン先と反対側の端部(軸筒の尾端)に形成される。
【0018】
図1又は
図2に示すように、係止部材装着部11aの外面には、環状の外向突起11dが設けられる。該外向突起11dと、後述する係止部材13の内向突起13fによって筒体11と係止部材13とが軸方向に抜け止め係止される。なお、外向突起11dは、内向突起13fが環状の突起であった場合、離散した複数個の突起であってもよい。また、外向突起11dは、軸方向に複数個設けられていてもよい。
【0019】
また、筒体11と係止部材13との別の係止手段として、係止部材装着部11aの外面に雄ねじ部(不図示)が設けられていてもよい。この場合、後述する係止部材13の筒体装着部13dの内面には雌ねじ部が設けられる。この場合、鍔部が軸方向のバネ性を有するため、筒体11と係止部材13の螺合状態のゆるみ止め、及び筒体11と係止部材13のがたつき防止の効果を奏する。
【0020】
図1又は
図2に示すように、筒体11は、係止部材装着部11aの上方に天面部11bを備える。天面部11bの上端面は、軸線に対して垂直な平面状であるが、これ以外に、下方に向かうに従い拡径する傾斜面(例えば、円錐凸面)、又は、上方に向かうに従い拡径する傾斜面(例えば、円錐凹面)でもよい。この場合、軟質部材12と天面部11bとの接地面積が増えるため、より強固に軟質部材を取り付けることができる。
【0021】
天面部11bには、軸心部に貫通孔が形成されている。これにより、軟質部材12を取り付ける際に、軟質部材12と天面部11bとの間の空気を圧縮せずに確実に軟質部材12を取り付けることができる。なお、貫通孔を備えず天面部11bが閉鎖している形態でもよい。
【0022】
図1又は
図2に示すように、筒体11は、係止部材装着部11aの下方に形成される段部11cを備える。該段部11cは、後述する係止部材13の当接部13eと当接される。これにより、筒体11と係止部材13とが係止する際に、軸方向の所望の係止位置で確実に係止することができる。
【0023】
筒体11は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS製など)の射出成形により得られる円筒体である。筒体11は、例えば、内部に熱変色性インキが収容され、該インキが吐出可能なペン先を備える熱変色性筆記具の軸筒、熱変色性筆記具の軸筒のペン先側に着脱自在に被着されるキャップ、ペン先を熱変色性筆記具の軸筒の端部より出没させるために軸筒の反ペン先側外面より外方に突出される筒状の操作部、内部に熱変色性インキが収容されていない摩擦具の筒状ホルダー等が挙げられる。筒体11は、金属材料により形成してもよい。
【0024】
・軟質部材
図1又は
図2に示すように、軟質部材12は、縮径部13bから上方に突出され熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦する摩擦部12aと、該摩擦部12aより下方に径方向外方に突出され軸方向のバネ性を有する鍔部12bと、を備える。以下に、軟質部材12の各構成を詳述する。
【0025】
本実施形態では、軟質部材12は、熱変色性インキの筆跡又は像の表面を擦って筆跡又は像を熱変色させる摩擦変色部材が採用される。軟質部材12は、横断面円形状を有する。また、摩擦部12aは、上方に向かうに従い先細状に縮径される凸曲面状の外面を備える。
【0026】
図1又は
図2に示すように、鍔部12bは、摩擦部12aの下方に一体に形成され、径方向外方に環状に突出される。また、鍔部12bは、上方に向かうに従い拡径する円錐状面からなる。これにより、鍔部12bを上下方向から挟持した際に、鍔部12bはバネ性を有することができる。
【0027】
図1に示すように、軟質部材12の下端部は、摩擦部12aに対して軸方向下方に重複する位置に設けられている。これにより、摩擦部12aを用いて熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦した際に、摩擦部12aから加わった軸方向の力を軟質部材12の下端部で確実に受けることができるため、摩擦時に軟質部材12が軸方向下方に埋没したり、ぐらついたりすることを抑制できる。なお、軟質部材12の下端部は、摩擦部12aに対して軸方向下方に重複する少なくとも一部の位置に設けられていればよい。
【0028】
図2に示すように、鍔部12bは、皿バネ形状を有する。これにより、鍔部12bに容易に且つ確実なバネ性を付与することができ、鍔部12bに高い精度の寸法管理を必要としなくても軟質部材12を安定して取付けることができる。
【0029】
なお、本実施形態における皿バネ形状とは、鍔部12bを上方に向かうに従い拡径する円錐状に形成したものであり、軸方向(即ち、上下方向)に押圧することにより、外力が働いていない自然状態に復元しようとするバネ性を有する形状である。なお、
図2に示す軟質部材12の鍔部12bは、外力が働いていない非圧縮の状態を示している。
【0030】
一方、
図1に示す軟質部材12の鍔部12bは、軸方向の荷重が加わった状態を示している。
図1に示すように、軟質部材12を筒体11と係止部材13によって挟み込み、筒体11と係止部材13とを装着することで、鍔部12b上端(円錐上側)部分と鍔部12b下端(円錐下側)部分との間に荷重を加える。これにより、鍔部12bを上下方向にたわませることができ、鍔部12bにバネ作用が得られ、軟質部材12全体は、常時下方に付勢される。
【0031】
これにより、摩擦部12aを用いて熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦した際に、摩擦部12aから加わった軸方向の力によって摩擦部12aが摩擦動作のたびに軸方向下方に埋没したり、ぐらついたりすることを抑制できる。
【0032】
また、軟質部材12は、軸心に、下方に開口され且つ軸方向に延びる孔部が形成される。孔部は軟質部材12の摩擦部12a近傍形状と略相似形状であり、横断面円形状である。これにより、軟質部材12の使用材料を削減できるとともに、成形不良(ヒケやボイド)の発生を抑制することができる。
【0033】
軟質部材12を構成する材料は、例えば、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又は2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物等が挙げられる。
【0034】
軟質部材12を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。軟質部材12は、これ以外にも、消しゴム、又は携帯情報端末に用いる入力ペンの入力部材等でもよい。また、軟質部材12の上面は凸曲面状の摩擦部12aを有する。
【0035】
・係止部材
筆記具部品である係止部材13は、例えば、筒体がキャップの場合には、キャップの閉塞端側に装着される頭冠を指し、筒体が軸筒の場合には、ペン先と反対側の端部(軸筒の尾端)に装着される尾栓を指す。
【0036】
図1又は
図2に示すように、係止部材13は、軸方向に貫通される内孔13aと、内孔13aの上方に径方向内方に突出する縮径部13bと、縮径部13bの下面に設けられる下面部13cと、縮径部13bより下方に形成される筒体装着部13dと、を備える。以下に、係止部材13の各構成を詳述する。
【0037】
係止部材13は、軸方向に貫通される内孔13aを備える。
図1に示すように、内孔13aの内径は、鍔部12bの外径より大きい。これにより、軟質部材12を係止部材13の内部に収容した状態で筒体11に係止部材13を装着できる。
【0038】
また、内孔13aの上端部内周面に、径方向内方に環状に突出される縮径部13bと、縮径部13bの下面に設けられる下面部13cとが、係止部材13と一体に形成される。
図1に示すように、縮径部13bの内径は、鍔部12bの外径より小さく且つ摩擦部12aの外径より大きい。これにより、摩擦部12aを縮径部13bから上方に突出させた状態で、係止部材13と筒体11とで軟質部材12を取り付けることができる。
【0039】
また、下面部13cは、本実施形態においては、軸線に対して垂直な平面であるが、これ以外に、下方に向かうに従い拡径する傾斜面(例えば、円錐凹面)、又は、上方に向かうに従い拡径する傾斜面(例えば、円錐凸面)でもよい。この場合、軟質部材12と下面部13cとの接地面積が増えるため、より強固に軟質部材を取り付けることができる。
【0040】
また、係止部材13は、縮径部13bより下方に形成される筒体装着部13dを備える。筒体装着部13dは、係止部材13と一体に形成されることが好ましい。
図1又は
図2に示すように、筒体装着部13dの内面には、環状の内向突起13fが設けられる。該内向突起13fと、前述の筒体11の外向突起11dによって筒体11と係止部材13とが軸方向に抜け止め係止される。なお、内向突起13fは、外向突起11dが環状の突起であった場合、離散した複数個の突起であってもよい。また、内向突起13fは、軸方向に複数個設けられていてもよい。
【0041】
また、前述の通り、筒体11と係止部材13との、別の係止手段として、筒体装着部13dの内面に雌ねじ部(不図示)が設けられていてもよい。この場合、前述の筒体11の係止部材装着部11aの外面には雄ねじ部が設けられる。すなわち、筒体11と係止部材13とが螺合により軸方向に着脱自在に装着されてもよい。この場合、軟質部材12は容易に交換可能となる。
【0042】
筒体装着部13dの内面に雌ねじ部が設けられている場合、係止部材13の外面には、二面幅部やローレット部よりなる回転操作部が形成されることが好ましい。回転操作部を回転操作することにより、筒体11と係止部材13との螺合状態を容易に解除することができ、筒体11と係止部材13とのより容易な着脱が可能になる。回転操作部とは、例えば、スパナ掛け可能な6角形や8角形等の二面幅部、又はローレット部等を挙げることができる。
【0043】
また、
図1又は
図2に示すように、係止部材13は、筒体装着部13dの下方に形成される当接部13eを備える。該当接部13eは、前述の筒体11の段部11cと当接される。これにより、筒体11と係止部材13とが係止する際に、軸方向の所望の係止位置で確実に係止することができる。また、係止部材13の下端の内方角部(当接部13eの内方角部)は、エッジ形状であるが、これ以外に、面取り(R面取り又はC面取り)を設けることもできる。
【0044】
係止部材13は、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS製など)の射出成形により得られる円筒体である。又は係止部材13は、金属材料により形成してもよい。
【0045】
・熱変色性筆記具
図3に、本発明の軟質部材12の取付構造を採用した熱変色性筆記具10の実施の形態を示す。該熱変色性筆記具10は、筒体11(軸筒)に筆記体が軸方向に移動可能に収容され、操作部(クリップ15)を下方に押圧することにより、筆記体のペン先14を軸筒の下端部より外部に出没可能に構成される、出没式筆記具である。筆記体の内部には熱変色性インキが収容され、ペン先14より熱変色性インキが吐出可能に構成される。
【0046】
本発明の実施の形態の熱変色性筆記具10の筒体11の上端部には、
図1及び
図2に示す軟質部材12及び係止部材13が設けられる。本実施形態における筒体11とは、筆記具の軸筒に相当する。
図3に示す熱変色性筆記具10には、
図1及び
図2に示す軟質部材12の取付構造が採用される。
【0047】
筆記体は、ペン先14と、該ペン先14が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管と、該インキ収容管内に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴いペン先14側に移動する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。本実施の形態の熱変色性筆記具10は、筆記体を1本収容しているが、筆記体を2本以上収容する多芯筆記具であってもよい。
【0048】
ペン先14は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、又は金属製のボールペンチップと該ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーと、からなる構成が挙げられる。また、インキ収容管の後端開口部に、インキ収容管と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。
【0049】
ペン先14の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先14の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0050】
・熱変色性インキ
尚、本発明において、熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態又は消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、又は、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独又は併用して構成することができる。
【0051】
また、可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。
【0052】
以上のような構成の軟質部材12の取付構造は、以下のように作用する。
【0053】
図2に示す軟質部材12の取付前の状態から、
図1に示す軟質部材12の取付状態に至る過程を説明する。まず、筒体11の上端の天面部11bに軟質部材12の鍔部12b側を配置する。その後、係止部材13の筒体装着部13dと、筒体11の係止部材装着部11aと、を軸方向に装着することで、係止部材13が筒体11の上端部に抜け止め係止され、
図1の状態となる。
【0054】
そして、筒体装着部13dは、係止部材装着部11aに軸方向に抜け止め係止されるとともに、鍔部12bの上部は、下面部13cに圧接され、軟質部材12の下端部は、天面部11bに圧接される。ここで、鍔部12bは、上方に向かうに従い拡径する円錐凸面からなるため、鍔部12bを上下方向から挟持した際に、鍔部12bはバネ性を有する。
【0055】
これにより、鍔部12bの軸方向寸法(厚み)が所望の寸法よりも小さいことで発生する軟質部材12のぐらつきを抑えることができる。また、鍔部12bの軸方向寸法が所望の寸法より大きいことで発生する係止部材13の筒体11への装着不良を抑制することができる。
【0056】
なお、係止部材13の筒体11への装着不良とは、筒体11と係止部材13とが確実に装着されずに摩擦時に軟質部材12がぐらついたり、段部11cと当接部13eとの間に隙間が空いて、筆記具としてのデザイン上の美観を損ねたりすることを指す。すなわち、本発明の軟質部材12の取付構造によれば、鍔部12bの軸方向寸法には高い精度が要求されず、軟質部材12を筒体11に安定して容易に取り付けることができる。
【0057】
以上の通り、本実施形態の軟質部材12の取付構造によれば、バネ性を有する鍔部12bの上部が縮径部13bの下面部13cに圧接されており、軟質部材12の下端面が筒体11の天面に圧接されている。これにより、鍔部12bに高い精度の寸法管理を必要としなくても軟質部材12を安定して取付けることができる。
【0058】
<第2実施形態>
図4及び
図5に、本発明の第2実施形態を示す。
図4は、本発明の第2実施形態における軟質部材12の取付状態を示す要部拡大縦断面図である。
図5は、本発明の第2実施形態における軟質部材22を示す斜視図である。
【0059】
本発明の第2実施形態における第1実施形態との違いは、軟質部材22の形態のみであり、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。以下に、第2実施形態の軟質部材22の構成について詳述する。
【0060】
・軟質部材
図4又は
図5に示すように、本実施形態の鍔部22bは、摩擦部22aの下方に一体に形成され、鍔部22bの下面は軟質部材22の下端面と一致している。すなわち、鍔部22bの下面と軟質部材22の下端面とが、同一平面上に形成されている。
【0061】
また、鍔部22bは、径方向外方に環状に突出され、鍔部22bの上面には、上方に突出し且つ離散した複数の小突起22cを備える。該小突起22cは、軸心に対して均等割り位置に配置されることが好ましい。なお、本実施形態においては、小突起22cは3個設けてあるが、少なくとも2個備えていればよい。
【0062】
これにより、鍔部22bを上下方向から挟持した際に、小突起22cが圧縮変形されるため、鍔部22b全体として軸方向のバネ性を有する。また、離散した小突起22cを設ける代わりに、鍔部22bの上面に環状突起が設けられていても同様の効果が得られる。
【0063】
図4に示すように、本実施形態の鍔部22bは、第1実施形態と同様に、軸方向(即ち、上下方向)に押圧することにより、外力が働いていない自然状態に復元しようとするバネ性を有する形状である。なお、
図5に示す軟質部材22の鍔部22bは、外力が働いていない非圧縮の状態を示している。
【0064】
一方、
図4に示す軟質部材22の鍔部22bは、軸方向の荷重が加わった状態を示している。
図4に示すように、軟質部材22を筒体11と係止部材13によって挟み込み、筒体11と係止部材13とを装着することで、鍔部22b上端(突起側)部分と鍔部22b下端部分との間に荷重を加える。これにより、鍔部22bを上下方向に圧縮させることができ、鍔部22bにバネ作用が得られ、軟質部材22全体は、常時下方に付勢される。
【0065】
これにより、摩擦部22aを用いて熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦した際に、摩擦部22aから加わった軸方向の力によって摩擦部22aが摩擦動作のたびに軸方向下方に埋没したり、ぐらついたりすることを抑制できる。
【0066】
ここで、本発明の軟質部材12は弾性材料からなるため、第1実施形態のように鍔部が皿バネ形状でなくても、軸方向には一定の弾性を有する。同様に、第2実施形態のように鍔部22bの上面に小突起を有さなくても、軸方向には一定の弾性を有する。
【0067】
しかし、材料特性からくる弾性のみでは鍔部の軸方向の変形量がごく僅かであり、許容できる鍔部の寸法バラつきが小さい。したがって、本発明の特徴である軸方向のバネ性を有する鍔部を備えることで、軟質部材12を安定して取付けることができ、さらに、鍔部の高精度な軸方向寸法管理が不要となるという生産性を向上させる効果も奏する。
【0068】
以上の第1及び第2実施形態の構成より、本開示は、以下の様に表すことができる。
【0069】
本開示は、筆記具の軸筒又はキャップ等である筒体11と、筒体11の上端に装着される係止部材13と、熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で該筆跡又は像を熱変色させる弾性材料よりなる軟質部材12と、を備え、筒体11は、上方に突出する係止部材装着部11aと、係止部材装着部11aの上方に設けられる天面部11bと、を備え、係止部材13は、軸方向に貫通される内孔13aと、内孔13aの上方に径方向内方に突出する縮径部13bと、縮径部13bの下面に設けられる下面部13cと、縮径部13bより下方に形成される筒体装着部13dと、を備え、軟質部材12は、縮径部13bから上方に突出され熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦する摩擦部12aと、該摩擦部12aより下方に径方向外方に突出され軸方向のバネ性を有する鍔部12bと、を備え、筒体装着部13dは、係止部材装着部11aに係止されており、鍔部12bの上部は、下面部13cに圧接されており、軟質部材12の下端部は、天面部11bに圧接されている軟質部材の取付構造である。
【0070】
本開示によれば、バネ性を有する鍔部12bの上部が縮径部13bの下面部13cに圧接されており、軟質部材12の下端面が筒体11の天面に圧接されている。これにより、鍔部12bに高い精度の寸法管理を必要としなくても軟質部材12を安定して取付けることができる。
【0071】
また、軟質部材12の下端部は、摩擦部12aに対して軸方向下方に重複する少なくとも一部の位置に設けられることが好ましい。これにより、擦部を用いて熱変色性インキの筆跡又は像を摩擦した際に、摩擦部12aから加わった軸方向の力を軟質部材の下端部で確実に受けることができるため、摩擦時に軟質部材が軸方向下方に埋没したり、ぐらついたりすることを抑制できる。
【0072】
また、筒体11は、係止部材装着部11aの下方に形成される段部11cを備え、係止部材13は、筒体装着部13dの下方に形成される当接部13eを備え、段部11cと当接部13eとが当接されていることが好ましい。これにより、筒体11と係止部材13とが係止する際に、軸方向の所望の係止位置で確実に係止することができる。
【0073】
また、鍔部12bは、皿バネ形状を有することが好ましい。これにより、鍔部12bに容易に且つ確実なバネ性を備えることができ、鍔部12bに高い精度の寸法管理を必要としなくても軟質部材を安定して取付けることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 熱変色性筆記具
11 筒体
11a 係止部材装着部
11b 天面部
11c 段部
11d 外向突起
12 軟質部材
12a 摩擦部
12b 鍔部
13 係止部材
13a 内孔
13b 縮径部
13c 下面部
13d 筒体装着部
13e 当接部
13f 内向突起
14 ペン先
15 クリップ
22 軟質部材
22a 摩擦部
22b 鍔部
22c 小突起